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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180100
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/02 20060101AFI20231213BHJP
   H01H 71/24 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H01H73/02 C
H01H71/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093223
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 一輝
(72)【発明者】
【氏名】中山 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】中 康弘
【テーマコード(参考)】
5G030
【Fターム(参考)】
5G030AA05
5G030AA06
5G030FB13
5G030FB28
5G030FE06
5G030XX05
5G030XX08
5G030YY05
(57)【要約】
【課題】回路遮断器において、限流遮断時に可動接触子の開極位置を簡易な構造で維持することができ、且つ小型機種にも適用可能とする。
【解決手段】固定接触子12は、固定接点33が形成されている。可動接触子13は、回動可能に支持され、径方向の外側に可動接点34が形成され、回動によって可動接点34を固定接点33に接触及び離間させる。磁性体41は、可動接触子13のうち可動接点34と回動中心との間に設けられている。磁性体42は、ミドルカバー22に設けられ、可動接触子13が開極したときに磁性体41に対向する。磁性体41、及び磁性体42は、短絡時の電磁反発力によって可動接触子13が開極したときに、アークによって可動接触子13に流れる通電方向の軸周りに磁路が形成されることで互いに吸着される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点が形成された固定接触子と、
回動可能に支持され、径方向の外側に可動接点が形成され、回動によって前記可動接点を前記固定接点に接触及び離間させる可動接触子と、
前記可動接触子のうち前記可動接点と回動中心との間に設けられた第一の磁性体と、
筐体に設けられ、前記可動接触子が開極したときに前記第一の磁性体に対向する第二の磁性体と、を備え、
前記第一の磁性体、及び前記第二の磁性体は、短絡時の電磁反発力によって前記可動接触子が開極したときに、アークによって前記可動接触子に流れる通電方向の軸周りに磁路が形成されることで互いに吸着されることを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
前記第一の磁性体は、前記可動接触子における軸方向の両側、及び回動方向の閉極側を包囲したコ字状に形成され、
前記第二の磁性体は、前記第一の磁性体における回動方向の開極側を閉塞する平板状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記可動接触子は、短絡電流が流れたとき、トリップ動作するよりも前に、電磁反発力によって開極することを特徴とする請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記可動接触子における径方向の内側に接触して通電経路となる接続板を備えることを特徴とする請求項1に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回動可能に支持された可動接触子を備え、短絡が生じた場合、引外し装置がトリップ動作するよりも前に、電磁反発力によって可動接触子を跳ね上げて開極させる限流式の回路遮断器が知られている。このような回路遮断器として、例えば特許文献1では、電磁反発力によって可動接触子を跳ね上げた限流遮断時に、可動接触子の開極位置を維持するラッチ機構を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2988091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラッチ機構を設ける場合、カム面を有する回動部材や、可動接触子のピンにラッチを押し付けるスプリング等、複雑な構成を追加することになり、ある程度のスペースが必要となるため、小型機種への適用が困難である。
本発明の目的は、回路遮断器において、限流遮断時に可動接触子の開極位置を簡易な構造で維持することができ、且つ小型機種にも適用可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る回路遮断器は、固定接触子と、可動接触子と、第一の磁性体と、第二の磁性体と、を備える。固定接触子は、固定接点が形成されている。可動接触子は、回動可能に支持され、径方向の外側に可動接点が形成され、回動によって可動接点を固定接点に接触及び離間させる。第一の磁性体は、可動接触子のうち可動接点と回動中心との間に設けられている。第二の磁性体は、筐体に設けられ、可動接触子が開極したときに第一の磁性体に対向する。第一の磁性体、及び第二の磁性体は、短絡時の電磁反発力によって可動接触子が開極したときに、アークによって可動接触子に流れる通電方向の軸周りに磁路が形成されることで互いに吸着される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、短絡電流による電磁反発力によって可動接触子が開極したときに、第一の磁性体と第二の磁性体とが互いに吸着されることで、限流遮断時の開極位置を維持することができる。第一の磁性体、及び第二の磁性体は、アークによって可動接触子に流れる通電方向の軸周りに磁路を形成するだけの簡易な構造であるため、小型機種にも適用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】回路遮断器を示す図である。
図2】固定接触子を示す図である。
図3】可動接触子を示す図である。
図4】限流遮断によって開極した状態を示す図である。
図5図4のA-A断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。縦方向の一方は電源側であり、縦方向の他方は負荷側である。
図1は、回路遮断器11を示す図である。
ここでは、縦方向及び奥行方向に沿った断面を、幅方向の一方から見た状態を示しており、説明を簡単にするために開閉機構や操作ハンドルの図示を省略している。回路遮断器11は、ノーヒューズブレーカとも呼ばれ、過負荷や短絡によって異常な過電流を検出したときに、自動的に回路を遮断して過電流による損傷から保護するものである。回路遮断器11は、一極ごとに、固定接触子12と、可動接触子13と、可動ホルダ14と、リード板15と、引外し装置16と、端子板17と、を備えており、これらが極数分だけ幅方向に並んでいる。
【0010】
固定接触子12は、帯状の導電体であり、ケース21のうち縦方向の一方に設けられている。固定接触子12は、曲げ加工により幅方向から見てクランク状に形成されており、縦方向の一方が奥行方向の手前となり、縦方向の他方が奥行方向の奥となる。
図2は、固定接触子12を示す図である。
図中の(a)は、固定接触子12を奥行方向の手前から見た状態を示している。図中の(b)は、固定接触子12を縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示している。固定接触子12は、縦方向の一方に端子穴31が形成されており、端子穴31にねじ端子が嵌め込まれ、電源側の回路が接続される。固定接触子12は、縦方向の他方に、切り起こし加工によって縦方向の一方に向かって突出した突出片32が形成されており、突出片32には、奥行方向の手前側に固定接点33が形成されている。
【0011】
図1の説明に戻る。可動接触子13は、棒状の導電体であり、基端側が回動可能に可動ホルダ14に支持され、径方向外側となる先端側に可動接点34が形成されており、回動によって可動接点34を固定接点33に接触及び離間させる。可動接点34を固定接点33に接触させる回動方向を閉極方向とし、可動接点34を固定接点33から離間させる回動方向を開極方向とする。
図3は、可動接触子13を示す図である。
ここでは、閉極位置にある可動接触子13を、縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示している。可動接触子13は、幅方向に挿通された支軸35によって基端側が可動ホルダ14に回動可能に保持されており、図示しないコイルスプリングによって閉極方向に付勢されている。
【0012】
可動接触子13には、先端側の可動接点34と基端側の回動中心との間に、磁性体41(第一の磁性体)が固定されている。磁性体41は、例えば鉄板であり、曲げ加工によって可動接触子13における軸方向の両側、及び回動方向の閉極側を包囲したコ字状に形成されている。磁性体41の固定は如何なる方法でもよく、例えば接着剤を用いたり、圧入したり、締結具を用いたりする。ここでは、可動接触子13の外周面に対して磁性体41が出っ張る構成にしているが、これに限定されるものではない。可動接触子13の外周面に凹溝を形成し、そこに磁性体41を嵌め込み、可動接触子13の外周面に対して磁性体41が出っ張らないように構成してもよい。
【0013】
ケース21に固定されるミドルカバー22(筐体)には、可動接触子13が開極したときに、磁性体41に対向する磁性体42(第二の磁性体)が固定されている。磁性体42は、例えば鉄板であり、磁性体41における回動方向の開極側を閉塞する平板状に形成されている。磁性体42の固定は如何なる方法でもよく、例えば接着剤を用いたり、圧入したり、締結具を用いたりする。ここでは、ミドルカバー22の内周面に凹溝を形成し、そこに磁性体42を嵌め込み、ミドルカバー22の内周面に対して磁性体42が出っ張らない構成にしているが、これに限定されるものではない。ミドルカバー22の内周面に対して磁性体42が出っ張るように構成してもよい。
【0014】
図中の(a)は、電気的な接続方法の一態様として、配線によって接続される可動接触子13を示している。可動接触子13の基端には、幅方向に並んで一対となる短円柱状の接続端36が形成されており、各接続端36は、対向したリード板15に対して、図示しないリード線によってろう付けされる。
図中の(b)は、電気的な接続方法の他の態様として、摺動接触によって接続される可動接触子13を示している。可動接触子13の基端側は、幅方向に並んだ一対の接続板37に回動可能な状態で接触している。接続板37は、板状の導電体であり、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、可動接触子13を挟んだ状態で幅方向に支軸35が挿通されている。一対の接続板37は、奥行方向の奥側が、縦方向の一方に向かって延びるリード板15に接続される。したがって、一対の接続板37は通電経路の一部となる。
【0015】
図1の説明に戻る。可動ホルダ14は、樹脂製であり、略円筒状に形成され、開閉機構に連動して投入位置と遮断位置との間で回動可能である。幅方向に並んだ各極の可動ホルダ14は、互いに連結されており、その連結部分が回動可能な状態でケース21に保持されている。可動ホルダ14は、円筒面に形成された開口から可動接触子13の先端側が突出しており、可動接触子13の閉極方向への回動を規制している。可動ホルダ14が閉極方向に回動した投入位置にある場合は、閉極位置にある可動接触子13の開極方向への回動を許容する。可動ホルダ14が開極方向に回動した遮断位置にある場合は、開極位置にある可動接触子13の閉極位置への回動を阻止する。
【0016】
リード板15は、板状の導電体であり、ケース21によって支持されている。可動接触子13をリード線によって接続する場合には、接続端36に対向するように、リード板15が幅方向から見てL字状に形成される。一方、可動接触子13を摺動接触によって接続する場合には、リード板15が略平板状に形成される。
引外し装置16は、一般的な熱動式であるため詳細な説明は省略するが、ヒータ板に接したバイメタルが過電流によって生じるジュール熱によって湾曲するときにトリップレバーを外し、開閉機構を介して可動ホルダ14を投入位置から遮断位置まで回動させる。引外し装置16は、熱動式に限定されるものではなく、電磁式や電子式でもよい。
端子板17は、板状の導電体であり、ケース21によって支持されている。端子板17は、縦方向の一方が引外し装置16のヒータ板に接続され、縦方向の他方にねじ端子が嵌め込まれることで負荷側の回路が接続される。
【0017】
図4は、限流遮断によって開極した状態を示す図である。
回路遮断器11は、短絡が生じた場合、引外し装置16がトリップ動作するより前に、電磁反発力によって可動接触子13を跳ね上げて開極させる限流遮断となる。電磁反発力の発生原理としては、固定接点33及び可動接点34の接触点において、電流の集中と拡散が発生することで、逆方向に流れる電流によって互いに離れようとする電磁反発力が発生する。さらに、突出片32と可動接触子13とで、電流が逆方向に流れることにより、やはり互いに離れようとする電磁反発力が発生する。こうした電磁反発力により、可動接触子13が跳ね上がり開極する。
【0018】
限流遮断時には、固定接点33と可動接点34との間に生じるアークにより、太い実線で示すように、電流が流れる。
図5は、図4のA-A断面を示す図である。
ここでは、図4において、可動接触子13、磁性体41、及び磁性体42を通り、可動接触子13に流れる通電方向に直交する断面を、可動接触子13の先端側から見た状態を示す。可動接触子13には、紙面上、手前から奥に向かって電流が流れるため、太い点線で示すように、右ねじの法則によって磁性体41及び磁性体42を通る時計回りの磁路が形成され、磁性体41及び磁性体42が互いに吸着される。
【0019】
《作用効果》
次に、実施形態の主要な作用効果について説明する。
回路遮断器11は、固定接触子12と、可動接触子13と、磁性体41と、磁性体42と、を備える。固定接触子12は、固定接点33が形成されている。可動接触子13は、回動可能に支持され、径方向の外側に可動接点34が形成され、回動によって可動接点34を固定接点33に接触及び離間させる。磁性体41は、可動接触子13のうち可動接点34と回動中心との間に設けられている。磁性体42は、ミドルカバー22に設けられ、可動接触子13が開極したときに磁性体41に対向する。磁性体41、及び磁性体42は、短絡時の電磁反発力によって可動接触子13が開極したときに、アークによって可動接触子13に流れる通電方向の軸周りに磁路が形成されることで互いに吸着される。これにより、短絡電流による電磁反発力によって可動接触子13が開極したときに、磁性体41と磁性体42とが互いに吸着されることで、限流遮断時の開極位置を維持することができる。すなわち、可動接触子13がミドルカバー22に当たって跳ね返り、再び閉極することを抑制できる。磁性体41、及び磁性体42は、アークによって可動接触子13に流れる通電方向の軸周りに磁路を形成するだけの簡易な構造であるため、小型機種にも適用可能となり、汎用性が向上する。
【0020】
磁性体41は、可動接触子13における軸方向の両側、及び回動方向の閉極側を包囲したコ字状に形成されている。磁性体42は、磁性体41における回動方向の開極側を閉塞する平板状に形成されている。これにより、短絡時の電磁反発力によって可動接触子13が開極したときに、アークによって可動接触子13に流れる通電方向の軸周りに磁路を形成することができる。
可動接触子13は、短絡電流が流れたとき、トリップ動作するよりも前に、電磁反発力によって開極する。これにより、限流遮断を行うことができる。そして、アークが消失すると、磁性体41及び磁性体42の吸着力も失われるが、そのときは既に引外し装置16がトリップ動作しているため、可動ホルダ14によって可動接触子13の開極位置が維持される。
回路遮断器11は、可動接触子13における径方向の内側に接触して通電経路となる接続板37を備える。このように、径方向の内側に接続板37が設けられるタイプの可動接触子13にも適用可能となる。
【0021】
次に、比較例について説明する。
これまで、電磁反発力によって可動接触子を跳ね上げた限流遮断時に、可動接触子の開極位置を維持するラッチ機構を設けることが考えられていた。しかしながら、ラッチ機構を設ける場合、カム面を有する回動部材や、可動接触子のピンにラッチを押し付けるスプリング等、複雑な構成を追加することになり、ある程度のスペースが必要となるため、小型機種への適用が困難であった。また、ラッチ機構は、可動接触子における径方向の内側に配置されるため、図3の(b)に示したように、径方向の内側に接続板37を設けるタイプの可動接触子13には適用することが特に困難であった。
【0022】
《変形例》
実施形態では、可動接触子13の側にコ字状の磁性体41を設け、ミドルカバー22の側に平板状の磁性体42を設けているが、これに限定されるものではない。要は、短絡時の電磁反発力によって可動接触子13が開極したときに、アークによって可動接触子13に流れる通電方向の軸周りに磁路が形成されればよい。したがって、双方を入れ替え、可動接触子13の側に平板状の磁性体42を設け、ミドルカバー22の側にコ字状の磁性体41を設けてもよい。
【0023】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0024】
11…回路遮断器、12…固定接触子、13…可動接触子、14…可動ホルダ、15…リード板、16…装置、17…端子板、21…ケース、22…ミドルカバー、31…端子穴、32…突出片、33…固定接点、34…可動接点、35…支軸、36…接続端、37…接続板、41…磁性体、42…磁性体
図1
図2
図3
図4
図5