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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180121
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】外圧式中空糸膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20231213BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D63/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093246
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】谷口 超
(72)【発明者】
【氏名】笠井 重徳
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA02
4D006HA19
4D006JA04A
4D006JA04C
4D006JA10C
4D006JA13C
4D006JA23Z
4D006JA25Z
4D006JA27Z
4D006JB06
4D006MA03
4D006MA33
4D006MC11
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC34
4D006MC39
4D006MC47
4D006MC54
4D006MC58
4D006MC59
4D006MC62
4D006MC63
(57)【要約】
【課題】本発明は、耐久性が高く、内部を通過する流体の圧力分布および速度分布の均一性に優れるとともに、生産効率の高い外圧式中空糸膜モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】一方の端部が閉塞され他方の端部が開口された複数の中空糸膜を束ねた中空糸膜束と、側面に少なくとも1つのノズルを有した筒状体であり、中空糸膜の閉塞された端部および中空糸膜の開口された端部がそれぞれ筒状体の長手方向の両端側に向くように、中空糸膜束を収容するハウジングと、中空糸膜の開口された端部側において、中空糸膜同士、および中空糸膜束とハウジング内壁とを接着固定した第1の接着固定部と、中空糸膜の閉塞された端部側において、中空糸膜同士、および中空糸膜束とハウジング内壁とを接着固定し、中空糸膜束の外周においてハウジングの長手方向に平行な少なくとも1つの貫通孔を有する第2の接着固定部とを備え、第2の接着固定部の外端面と、中空糸膜の閉塞された端部側の端面(閉塞端面)とは離間しており、第2の接着固定部の外端面と、中空糸膜の閉塞された端部側の端面(閉塞端面)との間に、スペーサーが埋設されていることを特徴とする、外圧式中空糸膜モジュール。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部が閉塞され他方の端部が開口された複数の中空糸膜を束ねた中空糸膜束と、
側面に少なくとも1つのノズルを有した筒状体であり、前記中空糸膜の閉塞された端部および前記中空糸膜の開口された端部がそれぞれ前記筒状体の長手方向の両端側に向くように、前記中空糸膜束を収容するハウジングと、
前記中空糸膜の開口された端部側において、前記中空糸膜同士、および前記中空糸膜束と前記ハウジング内壁とを接着固定した第1の接着固定部と、
前記中空糸膜の閉塞された端部側において、前記中空糸膜同士、および前記中空糸膜束と前記ハウジング内壁とを接着固定し、前記中空糸膜束の外周において前記ハウジングの長手方向に平行な少なくとも1つの貫通孔を有する第2の接着固定部とを備え、
前記第2の接着固定部の外端面と、前記中空糸膜の閉塞された端部側の端面(閉塞端面)とは離間しており、
前記第2の接着固定部の外端面と、前記中空糸膜の閉塞された端部側の端面(閉塞端面)との間に、スペーサーが埋設されている
ことを特徴とする、外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記スペーサーは、前記ハウジングの長手方向に直交する方向の断面形状が、輪(円)状、格子状、十字状、放射状、ハニカム状、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる形状である、請求項1に記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【請求項3】
前記スペーサーが、前記第2の接着固定部と同一素材からなる、請求項1または2に記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外圧式中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や表示素子等の電子・電気部品の製造で用いられる超純水を製造するラインにおいては、精密ろ過膜やイオン交換樹脂、逆浸透ろ過膜等を用いて製造した超純水を、ユースポイントに供給する直前に精密ろ過膜又は限外ろ過膜を用いて最終ろ過している。この最終ろ過には、複数の中空糸膜を束ねてなる中空糸膜束をハウジング内に収容し、中空糸膜の外側に被処理水を供給して中空糸膜の内側(中空部)にろ過する外圧式中空糸膜モジュールが主に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の外圧式中空糸膜モジュールは、その長手方向が鉛直方向となるように立設され、ろ水排出用の上部ノズルと被処理水供給用の下部ノズルとが、ハウジングの長手方向に直交する方向に突き出すように、それぞれ鉛直方向上側および鉛直方向下側に配置されている。中空糸膜の中空部は両端とも開口しており、中空糸膜束の端部はいずれも接着固定層によりハウジングに接着固定されている。下部ノズルから供給された被処理水は、ハウジング内で中空糸膜の外側から内側(中空部)へとろ過され、ハウジングの上下両端からろ水が、上部ノズルから排出水が排出される。
【0004】
また、特許文献2に記載の外圧式中空糸膜モジュールは、その長手方向が鉛直方向となるように立設され、排出水排出用のノズルが、ハウジングの長手方向に直交する方向に突き出すように、鉛直方向上側に配置されている。中空糸膜は、中空部の一端は封止され、中空部の他端は開口しており、封止端が鉛直方向下側、開口端が鉛直方向上側となるようにハウジング内で配置されている。また、中空糸膜束の開口端側のみがハウジングに接着固定されている。ハウジングの下端から供給された被処理水は、ハウジングの内壁と中空糸膜の一端を封止する封止部との隙間を通って中空糸膜の外側に供給されて中空糸膜の内側(中空部)へとろ過され、ハウジングの上端からろ水が、ノズルから排出水が排出される。
【0005】
特許文献3に記載の外圧式中空糸膜モジュールでは、特許文献2と同様に、被処理水がハウジングの下端から供給されると、中空糸膜の外側から内側(中空部)へとろ過され、ハウジングの上端からろ水が、ノズルから排出水が排出される構造であるが、中空糸膜束の両端(封止端および開口端)が接着固定部によりハウジングに接着固定されている。また、ハウジングの下端から供給された被処理水は、接着固定部に設けられた貫通孔を通って中空糸膜の外側に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-45453号公報
【特許文献2】特開2015-182056号公報
【特許文献3】特開2017-100105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の外圧式中空糸膜モジュールでは、下部ノズルから被処理水が中空糸膜に対して垂直方向に供給され、上部ノズルから排出水が中空糸膜に対して垂直方向に排出されるため、中空糸膜に対して垂直方向の水圧が加わり、中空糸膜束の両端固定部分に応力が集中し、中空糸膜の端部(根元)で破損が生じやすいという問題がある。
【0008】
特許文献2に記載の外圧式中空糸膜モジュールでは、被処理水が中空糸膜に対して平行に供給されるため、被処理水の供給により生じる上記のような応力の集中は緩和される。しかしながら、排出水の排出により生じる応力の集中は依然として残るため、排出水の排出ノズル付近での最大撓み量が大きくなり、やはり中空糸膜の端部(根元)で破損が生じやすいという問題がある。
【0009】
特許文献3に記載の外圧式中空糸膜モジュールでは、被処理水が中空糸膜に対して平行に供給され、また、中空糸膜束の両端部がハウジングに接着固定されているため、上記のような被処理水の供給により生じる応力の集中は緩和され、最大撓み量も小さくなる。しかしながら、圧力損失を低減し、効率よくろ過を行うためには、更なる改良の余地がある。
また、特許文献3に記載の外圧式中空糸膜モジュールは、純水製造装置で清澄化された原水からエンドトキシン除去を行うろ過装置等に好適に用いられるものであるため、超純水の最終ろ過に用いるためには、使用する中空糸膜について更なる改良が必要である。
【0010】
そこで、本発明は、耐久性が高く、内部を通過する流体の圧力分布および速度分布の均一性に優れるとともに、生産効率の高い外圧式中空糸膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
一方の端部が閉塞され他方の端部が開口された複数の中空糸膜を束ねた中空糸膜束と、
側面に少なくとも1つのノズルを有した筒状体であり、前記中空糸膜の閉塞された端部および前記中空糸膜の開口された端部がそれぞれ前記筒状体の長手方向の両端側に向くように、前記中空糸膜束を収容するハウジングと、
前記中空糸膜の開口された端部側において、前記中空糸膜同士、および前記中空糸膜束と前記ハウジング内壁とを接着固定した第1の接着固定部と、
前記中空糸膜の閉塞された端部側において、前記中空糸膜同士、および前記中空糸膜束と前記ハウジング内壁とを接着固定し、前記中空糸膜束の外周において前記ハウジングの長手方向に平行な少なくとも1つの貫通孔を有する第2の接着固定部とを備え、
前記第2の接着固定部の外端面と、前記中空糸膜の閉塞された端部側の端面(閉塞端面)とは離間しており、
前記第2の接着固定部の外端面と、前記中空糸膜の閉塞された端部側の端面(閉塞端面)との間に、スペーサーが埋設されている
ことを特徴とする、外圧式中空糸膜モジュール。
[2]
前記スペーサーは、前記ハウジングの長手方向に直交する方向の断面形状が、輪(円)状、格子状、十字状、放射状、ハニカム状、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる形状である、[1]に記載の外圧式中空糸膜モジュール。
[3]
前記スペーサーが、前記第2の接着固定部と同一素材からなる、[1]または[2]に記載の外圧式中空糸膜モジュール。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐久性が高く、内部を通過する流体の圧力分布および速度分布の均一性に優れる外圧式中空糸膜モジュールを効率よく生産し、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る外圧式中空糸膜モジュールの一実施形態の概略構造を示す縦断面図である。
図2図1に示す外圧式中空糸膜モジュールを、線A-Aに沿う面により切断したときの断面図である。
図3】(a)~(c)は、本発明に係る外圧式中空糸膜モジュールに用いられるスペーサーの一例を示す斜視図である。
図4】(a)~(d)は、本発明に係る外圧式中空糸膜モジュールに用いられるスペーサーの一例を示す斜視図である。
図5】(a)は、本発明に係る外圧式中空糸膜モジュールに用いられるスペーサーの一例を示す写真である。(b)は、外圧式中空糸膜モジュールに設置した(a)のスペーサーを、外圧式中空糸膜モジュールの長手方向外側から見た写真である。
図6】(a)は、本発明に係る外圧式中空糸膜モジュールに用いられるスペーサーの一例を示す写真である。(b)は、外圧式中空糸膜モジュールに設置した(a)のスペーサーを、外圧式中空糸膜モジュールの長手方向外側から見た写真である。
図7】(a)は、図1に示す外圧式中空糸膜モジュールを製造する際に、貫通孔を作製するために用いる注型治具の一例を示す斜視図である。(b)は、図1に示す外圧式中空糸膜モジュールを製造する際に、第1の接着固定部を作製するために第1の筒状部材の端部に取り付ける、遠心注型のためのカップを示す斜視図である。
図8】実施例および比較例のろ過評価に用いた評価装置を示す模式図である。(a)は実施例1、2で用いた評価装置、(b)は比較例1で用いた評価装置を示す。
図9】実施例3で用いたシミュレーションモデルを示す概略図である。
図10】比較例2で用いたシミュレーションモデルを示す概略図である。
図11】実施例3の変形量解析のシミュレーション結果を示す図である。(a)は斜視図、(b)は断面図である。
図12】比較例2の変形量解析のシミュレーション結果を示す図である。(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0015】
[外圧式中空糸膜モジュール]
本実施形態の外圧式中空糸膜モジュールは、特に、シリコンウェハ、LSI、液晶等製造時の洗浄に用いられる超純水の最終ろ過膜モジュールとして好適に利用されるものである。
本実施形態の外圧式中空糸膜モジュール(以下、単に「中空糸膜モジュール」ともいう。)の一例の構成について、図を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の外圧式中空糸膜モジュールの一例の概略構造を示す縦断面図である。なお、図1においては、その上下方向を矢印で示している。また、以下、図1に示す上下方向を中空糸膜モジュール1の上下方向として説明する。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態の中空糸膜モジュール1は、複数の中空糸膜2が束ねられた中空糸膜束3と、中空糸膜束3を収容する筒状のハウジング4とを備えるものである。
【0018】
中空糸膜2としては、逆浸透膜、ナノ濾過膜、限外ろ過膜、および精密ろ過膜を用いることが出来る。中空糸膜の素材は、特に限定されず、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、セルロース、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、およびポリテトラフルオロエチレン等が挙げられ、また、これらの複合素材も使用することができる。
【0019】
中空糸膜の形状としては、内径が100~3,000μm、外径が200~4,000μmであることが好ましく、より好ましくは内径が200~2,000μm、外径が300~3,000μm、さらに好ましくは内径が400~1,000μm、外径が500~2,000μmである。内径、外径が上記範囲であると、透過流束と耐久性を兼ね備え、超純水の最終ろ過に好適に用いることができる。
【0020】
中空糸膜の分画分子量は、6000以上であることが好ましく、より好ましくは6000超である。中空糸膜の分画分子量が上記範囲であると、シリコンウェハ、LSI、液晶等製造時の洗浄に用いられる超純水の最終ろ過膜モジュールとして好適に使用することができる。一般に、超純水としては、混在する微粒子の数が少なく、また、混在したとしても小さい微粒子のみに抑えられたものが望まれるが、シリコンウェハ、LSI、液晶等製造時の洗浄に用いられる超純水としては、シリコンウェハ等の表面不純物を洗い流すことを使用目的としているため、多量の水量を確保するという観点が優先され、上記範囲の分画分子量を有する高透水性の中空糸膜が好ましく用いられる。また、エンドトキシン除去を目的としたろ過では、注射溶液(の希釈水)や医薬品の容器の洗浄等に使用する蒸留水と同等のものをろ過水として得るのが目的であるため、エンドトキシン量を検出限界以下(陰性)にするという、水質面が透過量よりも優先され、分画分子量が上記範囲よりも小さい中空糸膜が使用されることが多い。一方、シリコンウェハ、LSI、液晶等製造時の洗浄用の超純水のろ過では、除去対象物のサイズがエンドトキシンよりも比較的大きく、また、上述のように多量の水量を確保するという観点から、上記範囲の分画分子量を有する高透水性の中空糸膜が好ましく用いられる。
また、中空糸膜の本数は、中空糸膜の寸法や中空糸膜を収納するハウジングの内断面積にもよるが、より多くのろ水を採水する観点から、5,000~20,000本であることが好ましく、より好ましくは7,000~15,000本、さらに好ましくは9,000~1,3000本である。
【0021】
ハウジング4の両端開口には、配管が接続される開口部(管路)が形成された、断面ロート状の配管接続用のキャップ8a、8bがそれぞれ設けられていてもよい。キャップ8a、8bは、例えば、ナット13によりハウジング4に固定装着されている。
キャップ8a、8bのハウジング4側の端面とハウジング4のキャップ8a、8b側の端面には環状の溝が形成されており、この溝によってOリング14が挟まれている。このOリング14により、ハウジング4の両端とキャップ8a、8bとが液密にシールされる。Oリング14によるシール構造は、具体的には、例えば、特開2017-39122号公報に記載の構造とすることができる。
また、キャップ8a、8bの開口部とそれに接続される配管とは、キャップ8a、8bの開口部の内径と同一の内径を有するパッキンでシール固定されることが好ましい。キャップ8a、8bの開口部の内径とパッキンの内径とが同一であると、内部を流れる流体の該当部に関わる液体の滞留や流体の乱れによる発塵が抑制される。
【0022】
ハウジング4は、ノズル12aと一体成型された第1の筒状部材9aと、ノズル12bと一体成型された第2の筒状部材9bと、第1の筒状部材9aと第2の筒状部材9bとの間に配される直管状の第3の筒状部材10とが互いに接合されて構成されている。ノズル12aとノズル12bとは、それぞれハウジング4の端部の側部に設けられ、ハウジング4の長手方向に直交する方向に突き出すように設けられている。ノズル12aは、外圧ろ過処理の過程において排出水が排出されるノズルである。ノズル12bは、本実施形態の中空糸膜モジュール1では特に使用されないため、その開口は封止されている。
【0023】
本実施形態の中空糸膜モジュール1は、その長手方向が鉛直方向となるように立設され、ノズル12aが鉛直方向上側に配置され、ノズル12bが鉛直方向下側に配置されるように設置される。
【0024】
中空糸膜束3の両端部と第1の筒状部材9aおよび第2の筒状部材9bとの間には、図1に示すように、第1の整流筒11aおよび第2の整流筒11bがそれぞれ装着されていてもよい。
第1の整流筒11aおよび第2の整流筒11bは筒状に形成されたものであり、第1の整流筒11aは、上側のノズル12aのハウジング4の内側面側の開口と中空糸膜束3との間に設けられ、第2の整流筒11bは、下側のノズル12bのハウジング4の内側面側の開口と中空糸膜束3との間に設けられ、それぞれ中空糸膜束3の外周を囲むように設けられている。
第1の整流筒11aおよび第2の整流筒11bは、ノズル12aおよびノズル12bの近傍において、中空糸膜束3とハウジング4の内壁との間隔を保持するために設けられるものである。
第1の整流筒11aの上側端部は、後述する第1の接着固定部5a内で接着固定されていてもよいし、第2の整流筒11bの下側端部は、後述する第2の接着固定部5b内で接着固定されていてもよい。
第1の整流筒11aおよび第2の整流筒11bをハウジング4の両端部に装着することにより、中空糸膜モジュール1の製造において、中空糸膜束3を後述する遠心接着によりハウジング4内に接着固定する場合に、遠心時に中空糸膜束3が下方へと脱落するのを予防することができる。
【0025】
中空糸膜束3の両端部には、各中空糸膜2同士および中空糸膜束3とハウジング4の内壁とをポッティング材によって接着固定する第1の接着固定部5aおよび第2の接着固定部5bが形成されている。
このように中空糸膜束3の両端を接着固定することにより、片端のみを接着固定する場合と比較して、中空糸膜束3の最大撓み量が小さくなり、応力集中が緩和されるため、中空糸膜2の破断を防止することができ、耐久性の高い中空糸膜モジュールとなる。
【0026】
ポッティング材としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、オレフィン系ポリマー、シリコン樹脂、およびフッ素含有樹脂等の高分子材料が好ましい。これらの高分子材料は、1種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
また、これらのポッティング材で構成された第1の接着固定部5aおよび第2の接着固定部5bは、ろ過時に加圧によって生ずる一次側と二次側の差圧に耐え得る耐圧性を有することが必要であり、そのためには適度な硬さを有していることが望ましい。一方、物理洗浄時の流体の流れによる中空糸膜2の破断をより長期間確実に防止するために、適度な柔らかさを有したポッティング材を使用することが望ましい。従って、使用上必要充分な耐圧性を付与し、かつ、確実に膜破断を防止するためには、使用温度範囲で硬度80D~50Aの特性を有するポッティング材を使用することが好ましい。
なお、ここで言う硬度とは、JIS K6253に準拠してデュロメータ硬度計タイプD又はタイプAを実質的に平滑な面を有する資料面に押し当てた時に、10秒後に示した値をいう。この値が80Dを超えると上記の膜破断が起こる場合があり、また、50A未満では耐圧性が不足する場合がある。
【0027】
中空糸膜束3の両端部に形成された第1の接着固定部5aと第2の接着固定部5bとの間の中空糸膜束3の外側には、被処理液が流れ込む領域(以下、「外側領域」という)が形成される。
【0028】
また、図1に示すように、中空糸膜モジュール1を鉛直方向に立設した場合に下側に位置する第2の接着固定部5bには、少なくとも1つの貫通孔6が形成されている。ここで、図2は、図1に示す中空糸膜モジュール1を、線A-Aに沿う面により切断したときの断面図である。
【0029】
貫通孔6は、ハウジング4の長手方向に平行に形成されており、上述した外側領域とキャップ8bの内部とを連通させる孔である。貫通孔6は、図2に示すように、後述する保護部材7とハウジング4の内壁との間の第2の接着固定部5b内に設けられ、中空糸膜束3の外周面に隣接するように配置されることが好ましい。
貫通孔6の形状は、特に限定されないが、例えば、ハウジング4の長手方向に直交する方向の断面形状(開口形状)が円形、楕円形、多角形等であるもの、幅を有する部分円弧状であるもの、円環状であるもの等が挙げられる。
中でも、貫通孔6の開口形状が幅を有する部分円弧状であると、開口形状が円形、楕円形、多角形等である場合と比較して、単位容積当たり多数の中空糸膜2を収容しつつ、貫通孔6の開口面積をより大きくとることが可能となり、単位容積当たりの中空糸膜2の数と中空糸膜束3に供給される被処理水の水量とがバランスよく大きな値となり、より効率よくろ過を行うことができる。
なお、本開示で、幅を有する部分円弧状とは、図2に示すような、ハウジング4の中空部(ハウジングの内壁で画成される領域)の中心を中心とする同心円の部分円弧だけでなく、ハウジングの周方向に沿って延びる形状であればよく、例えば、当該形状を構成する輪郭線が波状やギザ状であるもの等であってもよい。また、部分円弧の端部の形状は、特に限定されず、例えば、図2に示すような丸みを帯びたものであってもよい。
【0030】
貫通孔6の開口形状について、ハウジング4の中空部の中心を中心とした上記部分円弧の中心角は、例えば、貫通孔6を4カ所設ける場合、45~85°であることが好ましく、より好ましくは60~80°、さらに好ましくは70~80°である。
また、上記部分円弧の幅(ハウジングの中空部の径方向の幅)は、ハウジングの中空部の半径をrとして、0.05r~0.25rであることが好ましく、より好ましくは0.07r~0.20r、さらに好ましくは0.09r~0.12rである。
【0031】
貫通孔6の数は、特に限定されないが、後述する開口面積の総和Aをできるだけ大きな値とする観点から、複数個であることが好ましく、2~8個であることがより好ましく、3~6個であることがさらに好ましい。
貫通孔6が複数存在する場合、各開口(ハウジング4の長手方向に直交する方向の断面)の面積はほぼ同じ(±5%の範囲内)であることが好ましい。
また、貫通孔6が複数存在する場合、貫通孔6は、開口がなす円の円周上に等間隔で設けられていることが好ましい。また、貫通孔6が偶数存在する場合、各貫通孔6は、ハウジング4の中空部の中心を中心として点対象であることが好ましい。
【0032】
また、第2の接着固定部5bにおいて、第2の接着固定部5bの外端面5eと、第2の接着固定部5bに埋設されている中空糸膜2の閉塞された端部の端面(閉塞端面)2eとは離間している。なお、第2の接着固定部5bの外端面5eとは、図1に示すように、ハウジング4の長手方向外側(図1の下側)の端面を意味する。
第2の接着固定部5bの外端面5eと中空糸膜2の閉塞端面2eとが離間していることにより、中空糸膜モジュール1の製造における中空糸膜束3の接着固定時に中空糸膜3の中空部へのポッティング材の注入が容易となり、封止不良といった初期欠陥が発生し難くなるため生産効率を高くでき、より安価に大量の製品を提供することができる。
【0033】
第2の接着固定部5bの外端面5eと中空糸膜2の閉塞端面2eとの離間距離は、ポッティング材が接着固定時に所定の場所まで回り込む隙間を確保する観点から、1~10mmであることが好ましく、より好ましくは3~8mm、さらに好ましくは3~5mmである。
なお、上記離間距離とは、20本以上の中空糸膜2について、該中空糸膜2の閉塞端面2eと、第2の接着固定部5bの外端面5eとのハウジング4の長手方向(図1の上下方向)の距離を測定し、平均した値である。
【0034】
第2の接着固定部5bの外端面5eと中空糸膜2の閉塞端面2eとの間には、その一部または全部が第2の接着固定部5bに埋設されるようにして中空糸膜2以外のスペーサーが設置されている。第2の接着固定部5bの外端面5eと中空糸膜2の閉塞端面2eとの間にスペーサーが設置されていると、第2の接着固定部5bが強固になり、ろ過時に加圧によって生ずる一次側と二次側の差圧に対する耐圧性に優れるとともに、中空糸膜束3が堅固に支えられるため、中空糸膜2の破断を長期間確実に防止することができ、耐久性の高い中空糸膜モジュールとすることができる。
上記スペーサーの形状としては、例えば、図1に示すようなスペーサー15や図3~6に示す種々の形状が挙げられる。
スペーサーは、第2の接着固定部5bに一部のみが埋設されて第2の接着固定部5bにから露出している部分があってもよく、また、第2の接着固定部5bに全部が埋設されていてもよいが、第2の接着固定部5bの外端面5eの表面平滑性の観点から、全部が埋設されていることが好ましい。
【0035】
中空糸膜2の閉塞端面2eからスペーサーまでの距離は、特に限定されないが、0~10mmであることが好ましく、より好ましくは0~8mm、さらに好ましくは0~5mmである。中空糸膜2の閉塞端面2eからスペーサーまでの距離が上記範囲であると、中空糸膜束3を堅固かつ均等に支え、中空糸膜2の破断を長期間確実に防止することができ、耐久性の高い中空糸膜モジュールとなる傾向にある。
なお、中空糸膜2の閉塞端面2eからスペーサーまでの距離は、中空糸膜2の閉塞端面2eからスペーサーまでのハウジング4の長手方向(図1の上下方向)の距離の最小値である。
【0036】
第2の接着固定部5bの外端面5eからスペーサーまでの距離は、特に限定されないが、0~10mmであることが好ましく、より好ましくは0~8mm、さらに好ましくは0~5mmである。第2の接着固定部5bの外端面5eからスペーサーまでの距離が上記範囲であると、ろ過時に加圧によって生ずる一次側と二次側の差圧に対する耐圧性に優れ、耐久性の高い中空糸膜モジュールとなる傾向にある。
なお、第2の接着固定部5bの外端面5eからスペーサーまでの距離は、第2の接着固定部5bの外端面5eからスペーサーまでのハウジング4の長手方向(図1の上下方向)の距離の最小値である。
【0037】
スペーサー15の形状は、特に限定されないが、第2の接着固定部5bを強固にし、また、中空糸膜2を均等に支える観点から、ハウジング4の長手方向(図1の上下方向)に直交する方向の断面形状が、輪(円)状、格子状、十字状、放射状、ハニカム状、およびこれらの組み合わせのいずれかであることが好ましい。
また、第2の接着固定部5bをより強固にし、また、中空糸膜2をより均等に支える観点から、スペーサー15の、ハウジング4の長手方向(図1の上下方向)に直交する方向の断面形状の外接円が、中空糸膜束3の、ハウジング4の長手方向(図1の上下方向)に直交する方向の断面形状の外接円と略一致することが好ましい。
なお、「略一致」とは、完全に一致する場合だけでなく、スペーサー15の上記外接円の径と、中空糸膜束3の上記外接円の径との差が、中空糸膜束3の上記外接円の径の±10%未満である場合も含むものとする。
スペーサー15の個数は、特に限定されず、1個のみであっても、複数個であってもよい。
図3及び図4に、本実施形態の外圧式中空糸膜モジュールに用いられるスペーサーの一例を示す。
また、図5及び図6に、本実施形態の外圧式中空糸膜モジュールに用いられるスペーサーの一例の写真(図5(a)及び図6(a))と、該スペーサーを外圧式中空糸膜モジュールに設置した状態(外圧式中空糸膜モジュールの長手方向外側から撮影)の写真(図5(b)及び図6(b))を示す。
【0038】
スペーサー15の素材は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、オレフィン系ポリマー、シリコン樹脂、およびフッ素含有樹脂等の高分子材料が挙げられる。これらの高分子材料は、1種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
スペーサー15の素材は、第2の接着固定部5b(ポッティング材)と同一の素材であってもよいし(図5(a)及び5(b)参照)、異なる素材であってもよいが、第2の接着固定部5b内部の剥離防止の観点から、同一素材であることが好ましい。また、第2の接着固定部5bとは別素材の場合である場合、後述するネット上の保護部材7を切り出して複数枚重ね使用するなど、他の構成部材と同一の素材とすることが望ましい(図6(a)及び6(b)参照)。
【0039】
ハウジング4の長手方向に直交する方向の断面において、ハウジング4の内壁で画成される領域(中空部)の面積(以下、「ハウジング4の内断面積」ともいう。)から、後述する保護部材7の外周面で画成される領域の面積(以下、「保護部材7の内占有面積」ともいう。)を引いた面積Sに対する、貫通孔6の開口面積の総和Aの比率(A/S)は、0.2~0.7であることが好ましく、より好ましくは0.3~0.6、さらに好ましくは0.4~0.5である。A/Sが上記範囲であると、貫通孔6を通って中空糸膜束3に供給される被処理水の水量が多くなり、効率よくろ過を行うことができる。
【0040】
また、各中空糸膜2の貫通孔6が設けられた側の中空部は、第2の接着固定部5bにより閉塞されており、各中空糸膜2の貫通孔6が形成された側とは反対側の中空部は開口されている。ろ過処理が行われる際には、キャップ8bの開口部から被処理水が流入し、その被処理水が貫通孔6を通過して外側領域に供給される。そして、外側領域に供給された被処理水が各中空糸膜2の外表面から染み込み、各中空糸膜2の中空部を通過したろ水がキャップ8aの開口部から排出され、排出水がノズル12aから排出される。
【0041】
また、中空糸膜モジュール1は、中空糸膜束3の外周面に密着した状態で外周面を全周囲にわたって覆うように設けられた保護部材7を備えていてもよい。保護部材7は、第1の接着固定部5aから第2の接着固定部5bに向かって少なくとも所定の長さの端部領域、および第2の接着固定部5bから第1の接着固定部5aに向かって少なくとも所定の長さの端部領域の少なくとも一方に設けられていればよく、図1に示すように、第1の接着固定部5aから第2の接着固定部5bにわたって中空糸膜束3の全長を覆うように配設されていてもよい。
保護部材7は可撓性を有するものであることが好ましく、材質としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等のポリオレフィン、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)等のフッ素樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン等のスーパーエンジニアリング樹脂が挙げられる。
【0042】
また、保護部材7は、ネット状の部材を筒状に形成したものであることが特に好ましい。保護部材7として、ネット状ではなく、シート状の部材を筒状に形成したものを用いる場合には、ろ過効率の低下を招かないように、中空糸膜束3の外周面の略全体ではなく、中空糸膜束3の両端部のみ、または中空糸膜束3の一端部のみに設けることが望ましい。
【0043】
保護部材7がネット状の部材である場合、ネットの線径は0.2~1.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.4~1.2mm、さらに好ましくは0.5~1.0mmである。線径が上記範囲であると、水流による中空糸膜束3の膨らみや曲がりなどの変形に追随し、かつネット自身が破損しにくい。
ネット状の保護部材7の開口形状は、特に限定されず、三角形、四角形(菱形、正方形、長方形、平行四辺形等)、六角形等が挙げられる。
ネットを構成するネット糸の断面は、特に限定されず、円形、三角形、四角形等の多角形、楕円形等の何れであってもよい。
また、ネット状の保護部材7の開口率は、多くの被処理水が効率よく中空糸膜束3に供給されるようにするため、40~90%であることが好ましく、より好ましくは50~80%、さらに好ましくは60~70%である。
なお、開口率とは、平面視において投影されたネット糸の存在しない部分の面積から求められる比率をいう。
保護部材7の両端は、それぞれ第1の接着固定部5aおよび第2の接着固定部5b内に位置し、第1の接着固定部5aおよび第2の接着固定部5bによって固定されている。
【0044】
保護部材7は、中空糸膜束3の少なくとも一方の端部において、中空糸膜束3の外周面に密着した状態で設けられていることが好ましい。上記端部とは、具体的には、第2の接着固定部5bと外側領域との境界と、その境界から外側領域側に所定の長さL1だけ延伸した領域とを含む第1端部領域R1と、第1の接着固定部5aと外側領域との境と、その境界から外側領域側に所定の長さL2だけ延伸した領域とを含む第2端部領域R2である。
第1端部領域R1における境界からの長さL1については、5cm以上であることが望ましい。また、本実施形態の中空糸膜モジュール1においては、上述したようにノズル12aから排出水が排出されるが、排出水がノズル12aから排出される際、ノズル12a付近の中空糸膜2に吸引力が働いて破断傾向が高まり、中空糸膜2が破断しやすくなる場合がある。そのため、第2端部領域R2における境界からの長さL2については、第2端部領域R2の下端が、ノズル12aのハウジング4内側面側の開口の下端よりも下側に位置する長さとすることが望ましい。これにより、ノズル12aから排出水が排出される際に発生する吸引力に起因するノズル12a付近の中空糸膜2の変形を抑制することができ、中空糸膜2の破断をより抑制することができる。
ここで、「保護部材7が中空糸膜束3の外周面に密着した状態」とは、保護部材7の内周の長さをL、保護部材7に接触している中空糸膜2の本数をm、保護部材7内に充填された中空糸膜2の外径をdとしたとき、md/Lを密着率として、md/Lが0.90以上である状態を密着した状態と定義する。密着率は高いほど好ましく、md/Lが0.95以上であることがより好ましい。なお、中空糸膜2の外径に比べて保護部材7の内径が十分大きい場合、理論上、保護部材7に接触可能な最外周部の中空糸膜2の最大本数をMとすると、L≒Mdが成り立つので、md/L≒md/Md=m/Mの近似式が成立する。
また、保護部材7と中空糸膜2とが接触しているとは、中空糸膜束3の最外周部に配置された中空糸膜2と保護部材7とが、第1の接着固定部5aおよび第2の接着固定部5bの厚み方向(中空糸膜2の長手方向)について少なくとも1点以上で接触していることをいう。
【0045】
本実施形態の中空糸膜モジュール1は、貫通孔6の開口面積の総和をA、中空糸膜2の中空部の開口面積の総和をB、キャップ8a、8bの開口部の開口面積をCとしたときに、A、B、Cの関係が、0.5<A/B<1.5、かつ0.5<C/B<1.5であることが好ましい。A/BおよびC/Bが上記範囲であると、特定箇所への応力の集中が低減され、中空糸膜モジュール1の内部を通過する流体の圧力分布および速度分布の均一性が向上する傾向にある。それにより、圧力損失が低減され、より多くのろ水を効率よく採水することができる。
A/Bは、より好ましくは0.8<A/B<1.2、さらに好ましくは0.9<A/B<1.1である。また、C/Bは、より好ましくは0.8<C/B<1.2、さらに好ましく0.9<C/B<1.1はである。
【0046】
本実施形態の中空糸膜モジュールは、モジュールあたりのろ水量(透過水量)が10m/h以上であることが好ましく、より好ましくは12m/h以上、さらに好ましくは16m/h以上である。モジュールあたりのろ水量が上記範囲であると、シリコンウェハ、LSI、液晶等製造時の洗浄に用いられる超純水の最終ろ過膜モジュールとして好適に使用することができる。
【0047】
本実施形態の中空糸膜モジュールは、必要に応じて、上述した各部材の他に、供給水の流れを調整するための邪魔板等を備えていてもよい。
【0048】
[外圧式中空糸膜モジュールの製造方法]
本実施形態の外圧式中空糸膜モジュールの製造方法について、図1に示す外圧式中空糸膜モジュール1の製造方法を例に挙げて説明する。
外圧式中空糸膜モジュール1の製造方法として、例えば、ハウジング4に第1の整流筒11aおよび第2の整流筒11bを取り付け、保護部材7で覆われた中空糸膜束3とスペーサー15をハウジング4内に挿入した後、略円盤状の面上に当該略円盤状の面に平行な断面の形状が円弧状である凸部を少なくとも1つ有する注型治具を、保護部材7とハウジング4との間に凸部が位置するように装着し、保護部材7とハウジング4との間の空隙をポッティング材で充填固化後、注型治具を取り除くことによって、中空糸膜束3の外周面と保護部材7とを密着させた状態とし、かつ、保護部材7の外側に、ハウジング4の長手方向に直交する方向の断面形状が円弧状である少なくとも1つの貫通孔6を開口させる方法が挙げられる。
【0049】
より具体的には、まず、所定の本数の中空糸膜2を束として整え、中空糸膜束3を作製する。この時点で、中空糸膜束3の各中空糸膜2の封止する側の端部の開口を、封止材で予め封止しておいてもよい。
次に、第3の筒状部材10の両端に対して、第1の筒状部材9aおよび第2の筒状部材9bが接合されてハウジング4が形成されるとともに、第1の整流筒11aおよび第2の整流筒11bが取り付けられてモジュールケース本体が形成される。そして、中空糸膜束3の外周面を保護部材7で包み、当該保護部材7で包んだ中空糸膜束3をハウジング4内に封止する側の端部が第2の筒状部材9b側になるように挿入する。
【0050】
その後、第1の筒状部材9a側にはカップ状の接着治具(例えば、図7(b))を取り付け、第2の筒状部材9b側には、スペーサー15を所定の位置に配置した後、略円盤状の面上に当該略円盤状の面に平行な断面の形状が円弧状である凸部を少なくとも1つ有する注型治具(例えば、図7(a))を、注型治具の凸部が保護部材7で包まれた中空糸膜束3の外周面と第2の筒状部材9bとの間に挿入されるようにして取り付け、公知の方法で第1および第2の筒状部材とそれぞれの接着治具とを液密に拘束する。この際、前記凸部を有する治具(例えば、図7(a))の円弧状部分が挿入されることによって、中空糸膜束3の外周面と保護部材7とを密着させた状態となる。前記注型治具の凸部は、貫通孔6の型となる部分でもあり、後述のように、ポッティング材の固化後、注型治具を取り除くことで貫通孔6が形成される。
また、必要に応じて、偏り規制部材として、クロス板(2枚の板を高さ方向に直交する方向の断面が十字状になるように結合または一体成形したもの)をクロス板の高さ方向が中空糸膜束3の長手方向となるようにして中空糸膜束3内に設置してもよい。クロス板は、ポッティング材と同一組成であることが好ましい。
次いで、ハウジング4の両端部にポッティング材を注入することによって第1の接着固定部5aおよび第2の接着固定部5bを形成する。このとき、第2の筒状部材9b側の中空糸膜束3の中空部の開口は、ポッティング材によって閉塞される。その後、注型治具を取り除くことによって貫通孔6を形成する。
【0051】
中空糸膜束3とハウジング4との接着固定は、中空糸膜束3が収容されたハウジング4をノズル12a、12bを鉛直方向上向きにした状態で水平方向に回転させながら接着する遠心接着、またはハウジング4の長手方向を鉛直方向に配置し、ポッティング材をハウジング4の下端から注入する静置接着にて行うことができる。
遠心接着は、中空糸膜束3の両端を同時に接着することができ、また、中空糸膜束3の外表面の被覆層が均一にできるため膜破断を起こし難い反面、多額の設備投資や高速で回転させるための電力が必要となる。ここで、第2の接着固定部5bの外端面と、中空糸膜2の閉塞された端部側の端面(閉塞端面)とが離間した状態とするためには、第2の接着固定部5bの外端面と中空糸膜2の閉塞端面との間に隙間を確保した状態で接着する必要がある。本実施形態と異なりスペーサーを用いない外圧式中空糸膜モジュール1では、上記隙間を確保した状態で遠心接着を行うのは困難であるため、例えば、中空糸膜束3をハウジング4内に収納し、中空糸膜束3が遠心力で移動しないように中空糸膜束3を強固に固定した後、遠心接着する手法、中空糸膜束3をハウジング4内に収納せずにむき出しの状態で把持して遠心接着(1回目)を行った後、ハウジング4内に収納してさらに遠心接着(1回目)を行う手法等をとる必要がある。しかしながら、本実施形態では、スペーサーを中空糸膜束3と注型治具との間に介在させるため、第2の接着固定部5bの外端面と中空糸膜2の閉塞端面とが離間した状態を容易に作り出すことができる。
一方、静置接着は、片側ずつ接着する(第1の接着固定部5aの接着、第2の接着固定部5bの接着の計2回の接着を行う)必要があるため、遠心接着よりも接着に必要な時間は増加するものの、大型の設備投資の必要がなく、簡素な治具で実施できる。ここで、第2の接着固定部5bの外端面と、中空糸膜2の閉塞端面とが離間した状態とするためには、上述のとおり、第2の接着固定部5bの外端面と中空糸膜2の閉塞端面との間に隙間を確保した状態で接着する必要がある。そのため、静置接着にて効率よく接着する方法としては、例えば、第1の接着固定部5aは、後述するように、中空糸膜2の中空部を開口させるために後に端部を切断してしまうため、第1の接着固定部5a側の中空糸膜束3の端部を強固に把持しても問題ないことから、ハウジング4内に中空糸膜束3を収納して中空糸膜束3の第1の接着固定部5a側の端部を強固に把持し、中空糸膜束3を浮かせた状態(第1の接着固定部5a側を上にして中空糸膜束3を上方から吊るした状態)にして中空糸膜束3の下にスペーサー15を設置し、第2の接着固定部5bの接着固定を行った後、第1の接着固定部5aの接着固定を行う方法等が挙げられる。
なお、ポッティング材が硬化した後、必要に応じてオーブン等で加温することにより、硬化促進を図ってもよい。
【0052】
次に、ハウジング4内のポッティング材が硬化したことを確認した後、第1の筒状部材側9aは、接着固定部形成用容器および封止材を取り除くことにより(例えば、第1の接着固定部5aの端部を切断することにより)、中空糸膜束3の中空部を開口させる。第2の筒状部材9b側は、接着固定部形成用容器および注型治具を取り外すことにより、開口形状が円弧状の貫通孔6を形成することができる。
【0053】
最後に、中空糸膜束3が接着固定されたハウジング4の両端部のそれぞれに、キャップ8a、8bをOリング14を介して装着し、ナット13によって締結固定した後、リーク検査、試運転等を実施し、規定通りに製造できていることを確認して中空糸膜モジュール1が完成する。
【実施例0054】
以下、本実施形態について、具体的な実施例および比較例を挙げて説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0055】
以下、実施例および比較例で用いた測定方法および試験方法について説明する。
【0056】
(1)リーク検査
実施例および比較例の外圧式中空糸膜モジュールに対し、リーク検査を以下のようにして行った。
すなわち、ろ水を採水する側のキャップ(比較例1は2つ、その他は1つ)を取り外した後、水槽内に浸漬し、中空糸膜モジュール内部を水で満たした。次いで、供給水を供給する側のキャップ(比較例1はノズル)を封止し、排出水用ノズルから0.3[MPa]の空気圧を印加した。中空糸膜のろ水採水側端面(比較例1は両端面、その他は片端面)を観察し、中空部からの連続気泡発生の有無によりリークの発生を調べた。
【0057】
(2)変形量解析
実施例及び比較例について、第2の接着固定部の変形量をシミュレーションソフトにより試算した。シミュレーションソフトとしては、midas社製の応力解析ソフト「midas-NFX」を用いた。
境界条件は以下の通りとした。
・拘束:第2の接着固定部の外周面(本来ハウジングに接着固定されている面)を完全拘束
・各部品同士の接触:面接触、溶接タイプ
・応力:圧力として第2の接着固定部の外端面のみに0.5MPaを印加
・入力物性値(曲げ弾性率):後述の「(3)曲げ試験」に記載されるように、各構成部分から所定形状の試験片を切り出し、3点曲げ試験にて得られた値(N=5)の平均値を算出して曲げ弾性率(MPa)とし、使用した
【0058】
(3)曲げ試験
上記「(2)変形量解析」に先立ち、第2の接着固定部のうちポッティング材のみで構成される単一材料部分(ポッティング材と同一素材からなるスペーサーも含む)と、第2の接着固定部のうち中空糸膜束が大部分を占有している膜束含有部分(ハウジングの長手方向に直交する方向の断面において、中空糸膜束がその外径からの換算で概ね70%の面積を占有)の2種について3点曲げ試験を行い、シミュレーションに必要な曲げ弾性率(MPa)を求めた。
単一材料部分においては、幅12.7mm、厚み3.2mm、長さ60mm以上の試験片を、膜束含有部分においては、幅15mm、厚さ10mm、長さ60mm以上の試験片をそれぞれ7本ずつ切り出し、以下の機器・条件で測定した。
・測定機器:株式会社島津製作所製 オートグラフAGS-X
・支点間距離;18.6mm
・支点の移動速度:1mm/分
なお、それぞれ7個のデータのうち、最小値と最大値を除いたN=5のデータの平均値を採用することとした。その値は以下の通りである。
・単一材料部分(スペーサーを含む):2,800MPa
・膜束含有部分:75MPa
【0059】
[実施例1(使用例)]
〈外圧式中空糸膜モジュールの製造〉
外圧式中空糸膜モジュール(図1参照)を以下のように製造した。
ポリスルホン製中空糸膜(旭化成株式会社製)11,600本を束ねて中空糸膜束を形成し、内径138mmの筒状に成形されたポリエチレン製ネット(線径0.45mm、開口率55%、保護部材に相当)に挿入した。該ネットに挿入した中空糸膜束を、第1および第2の整流筒(内径140mm)がそれぞれ内側に装着された第1および第2の筒状部材(内径は168mm)と第3の筒状部材(内径154mm)とを有するハウジング内に挿入した。なお、第1の筒状部材は内径40mmの排出水用ノズルを有するものとし、第2筒状部材は封止されたノズルを有するものとした。中空糸膜は、分画分子量6000、内径0.6mm、外径1.00mmであるものを用いた。
第1の筒状部材側の中空糸膜端部は、封止材を用いて中空部を封止すると共に、偏り規制部材として、後述するポッティング材と同一組成のクロス板(高さ63mm×幅136mm×厚み5mmの板2枚を高さ方向に直交する方向の断面が十字状になるように結合したもの)をクロス板の高さ方向が中空糸膜束の長手方向となるようにして中空糸膜束内に配置した。さらに、第1の筒状部材の端部に、図7(b)に示す形状の遠心注型のためのカップを取り付けた。
第2の筒状部材の端部には、ポッティング材と同一素材で図3(a)に示す形状(0.4cm×0.6cm×10cmの角柱部材6本を組み合わせたような形状)のスペーサーを、中空糸膜の第2の筒状部材側の端面と第2の接着固定部の外端面との距離を0.8mmとして、スペーサーと中空糸膜の第2の筒状部材側の端面との距離が0mm(スペーサーと中空糸膜とが実質的に接触している状態)、スペーサーと第2の接着固定部の外端面との距離が0mm(スペーサーの外端面が第2の接着固定部の外端面と一致している状態)となるように配置した。次いで、図7(a)に示す形状の高密度ポリエチレン製の注型治具を取り付けることにより、後述するポッティング材の注型完了後に幅を有する部分円弧状の開口(開口面積800mm、中心角:80°、幅:8mm)を有する貫通孔が4カ所形成されるようにした。その後、第1の筒状部材の端部と同様に、遠心注型のためのカップを取り付けた。
次いで、第1および第2の筒状部材に取り付けたカップにそれぞれポッティング材導入用チューブを取り付けた。ノズルを鉛直方向上向きにした状態でハウジングを水平にして遠心用フレームに固定し、ハウジングを水平方向に回転させることにより、ポッティング材をハウジングの第1および第2筒状部材内に注入した。ポッティング材には、2液性硬化型エポキシ樹脂を用いた。ポッティング材の硬化反応が進行し、流動化が停止した時点で遠心機の回転を停止した。遠心用フレームからハウジングを取り外し、オーブン中で90℃に加熱して完全に硬化させた。
第1の筒状部材側では、カップを取り外し、硬化したポッティング材の外側端部を切断することにより中空糸膜の中空部を開口させた。第2の筒状部材側では、カップおよび注型治具を取り外すことにより、幅を有する部分円弧状の開口(開口面積800mm)を有する貫通孔を4カ所形成した。
次に、ハウジングの両側に、開口部の直径が66mmである図1に示す形状のキャップをOリングを介してナット締結により液密となるように固定し、外圧式中空糸膜モジュールを得た。
この外圧式中空糸膜モジュールの貫通孔の開口面積の総和Aは3,200mm、中空糸膜中空部の開口面積の総和Bは3,280mm、キャップの開口部の開口面積Cは3,421mm、ハウジング(第2の筒状部材)の内断面積から、ネット(保護部材)の内占有面積を引いた面積Sは7,210mmであった。従って、A/Bは0.98、C/Bは1.04、A/Sは0.44であった。
〈外圧式中空糸膜モジュールの運転〉
得られた外圧式中空糸膜モジュールを、図8(a)に示す評価装置に、第1の筒状部材側が鉛直方向上側、第2の筒状部材側が鉛直方向下側となるように取り付けた(図8(a)中、水タンク、ポンプ等は省略)。貫通孔から12.4m/hの流量で供給水を供給し、ノズルから0.4m/hの流量で排出水を排出させ、12m/hの流量のろ水を得る運転を行った。このとき、開口面積から算出される各部位における流体速度(線速)は、貫通孔では1.07m/s、中空糸膜の中空部では1.02m/s、供給水側キャップの開口部では1.00m/s、ろ水側キャップの開口部では0.97m/sであった。
上記の運転条件を維持して連続運転し、1日1回、1回5分程度のリーク検査を行った。1年経過後も中空糸膜の破断によるリークは発生しなかった。
【0060】
[実施例2(使用例)]
表1に示す運転条件とした以外は実施例1と同様にして連続運転を行い、1日1回、1回5分程度のリーク検査を行った。
運転開始から30日経過後も中空糸膜の破断によるリークは発生しなかったため、31日目から供給水量を30%増量して運転を継続したところ(供給水量20.6m/h、排出水量0.6m/h、透過水量20m/h)、91日目に、中空糸膜が1本破断したことによるリークの発生を確認した。その後、破断した中空糸膜を補修してさらに運転を継続したところ、150日目までリークは発生せず、運転を終了した。
【0061】
[実施例3(シミュレーション)]
上記実施例1で製造した外圧式中空糸膜モジュールのうち、図9に示すように第2の接着固定部の半分(ハウジングの長手方向に平行な面で2分割した一方)のみを取り出した計算モデルを構築し、所定水圧を第2の接着固定部の外端面にのみ印加した場合の変形量を試算した。
計算モデルについて、より具体的には、中空糸膜束3の端部とスペーサー15とが埋設された第2の接着固定部5bの半分である。スペーサー15の形状は、上記実施例1で記載した通り、図3aで示される形状とした。第2の接着固定部5bは、大部分が中空糸膜束3で占有され(ハウジングの長手方向に直交する方向の断面において、中空糸膜束がその外径からの換算で概ね70%を占有)、その隙間がポッティング材で固定されている膜束含有部分5bhと、ポッティング材のみの部分である単一材料部分5bm(中空糸膜束を外端面から離間させるために配置された、ポッティング材と同一材料からなるスペーサー15を含む)の2つの部分からなる。
シミュレーション結果(変位分布)を図11に示す。図11(a)は斜視図、図11(b)は断面図(第2の接着固定部を上述のように2分割したときの分割面の図)である。第2の接着固定部の外端面側から見て中央が凹んだ形状となり、外周から中央部へと徐々に変形量が増し、変形量の最大値は中央で0.98mmであった。
【0062】
[比較例1(使用例)]
特許文献1の実施例1に開示されている中空糸膜モジュールを製造し、図8(b)に示す評価装置に、特許文献1の実施例1と同様に、管路10aが鉛直方向上側、管路11aが鉛直方向下側となるように取り付けた(図8(b)中、水タンク、ポンプ等は省略)。この中空糸膜モジュールでは、整流筒28の外壁と胴部13の内壁との間の、ハウジングの長手方向に直行する方向の断面形状が同心円状の隙間部分を、実施例の外圧式中空糸膜モジュールにおける貫通孔に該当する部位とみなした。
各部位の寸法は、特許文献1に開示されている数値と特許文献1の図1、3から比例計算により算出した。これにより、上記隙間部分の同心円状開口の外径および内径はそれぞれ154mm、149.6mm、貫通孔の開口面積の総和Aに相当する面積は1,049mmと計算された。同様にして、中空糸膜の中空部径は0.6mm、本数は11,600本であることから、中空糸膜中空部の開口面積の総和Bは3,280mmと計算された。また、本発明におけるろ水排出側キャップに相当するキャップ10の開口径は比例計算により20mmであるため、ろ水側の開口面積Cは314mm、本発明における被処理水供給側キャップに相当する下部ノズル21の開口21aの径は58mmであるため、被処理水供給側の開口面積Cは2,642mmと算出された。また、ハウジング(ヘッダ部15)の内断面積から、保護部材(ネット状の偏流抑制部29)の内占有面積を引いた面積Sは、ヘッダ部15の内径162mmと、比例計算により算出される偏流抑制部29の外径145.2mmから求め、4,053mmとなった。
このときの各部位における線速、A/B、C/B、A/Sを表1に示す。
この膜モジュールを実施例2と同じ運転条件で連続運転し、1日1回、1回5分程度のリーク検査を行った。
運転開始から30日経過後も中空糸膜の破断によるリークは発生しなかったため、31日目から供給水量を30%増量して運転を継続したところ(供給水量20.6m/h、排出水量0.6m/h、透過水量20m/h)、49日目に、中空糸膜が1本破断したことによるリークの発生を確認した。その後、破断した中空糸膜を補修してさらに運転を継続したところ、77日目にも中空糸膜が1本破断したことによるリークの発生が確認され、運転を終了した。
【0063】
[比較例2(シミュレーション)]
計算モデルを、図10に示すようにスペーサーがなく、また、第2の接着固定部の外端面と中空糸膜束3の閉塞端面とが離間していない状態(中空糸膜束3の閉塞された端部側の端面(閉塞端面)が第2の接着固定部の外端面と一致した膜束含有部分5bhのみである状態)に変更した点以外は実施例3と同じ条件で実施した。
シミュレーション結果(変位分布)を図12に示す。図12(a)は斜視図、図12(b)は断面図(第2の接着固定部を上述のように2分割したときの分割面の図)である。外周から中央部へと徐々に変形量が増している点と変形量の最大値の場所は実施例3と同様であるが、変形量の最大値は2.15mmであり、実施例3の約2倍の最大変形量を示した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の外圧式中空糸膜モジュールは、耐久性が高く、内部を通過する流体の圧力分布および速度分布の均一性に優れ、圧力損失が少ないため、特に、シリコンウェハ、LSI、液晶等製造時の洗浄に用いられる超純水の最終ろ過膜モジュールとして、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 外圧式中空糸膜モジュール
2 中空糸膜
2e 中空糸膜の閉塞端面
3 中空糸膜束
4 ハウジング
5a 第1の接着固定部
5b 第2の接着固定部
5bh 膜束含有部分
5bm 単一材料部分
5e 第2の接着固定部の外端面
6、23、33 貫通孔
7 保護部材
8 キャップ
9a 第1の筒状部材
9b 第2の筒状部材
10 第3の筒状部材
11a 第1の整流筒
11b 第2の整流筒
12 ノズル
13 ナット
14 Oリング
15 スペーサー
21、31、41、51 outlet
22、32、42、52 intlet
53 邪魔板
図1
図2
図3
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図5
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図12