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特開2023-180124情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180124
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20231213BHJP
   G16H 10/00 20180101ALI20231213BHJP
   G16H 50/00 20180101ALI20231213BHJP
【FI】
A61B5/00 G
G16H10/00
G16H50/00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093252
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 秀明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕真
(72)【発明者】
【氏名】堀 隆之
(72)【発明者】
【氏名】金田 麟太郎
(72)【発明者】
【氏名】寺田 努
(72)【発明者】
【氏名】土田 修平
(72)【発明者】
【氏名】モウ コウミン
【テーマコード(参考)】
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB02
4C117XB15
4C117XC11
4C117XD04
4C117XE06
4C117XE13
4C117XE17
4C117XE18
4C117XE19
4C117XE23
4C117XE24
4C117XE26
4C117XE28
4C117XE43
4C117XG19
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報に応じた利用者の理想的な体調に関する情報を適切に推定する。
【解決手段】本願に係る情報処理装置は、生体情報から健康状態を示す健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルを取得する取得部と、利用者の健康情報を機械学習モデルの潜在空間に写像し、潜在空間に写像された利用者の健康情報に対応する第1の健康特徴情報に基づいて、利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報から所望の健康情報に対応する生体情報である理想生体情報を推定する推定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報から健康状態を示す健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルを取得する取得部と、
利用者の健康情報を前記機械学習モデルの潜在空間に写像し、前記潜在空間に写像された前記利用者の健康情報に対応する第1の健康特徴情報に基づいて、前記利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報から前記所望の健康情報に対応する生体情報である理想生体情報を推定する推定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記推定部は、
前記潜在空間における潜在変数の値を前記第1の健康特徴情報から前記所望の健康情報に対応する第2の健康特徴情報まで解釈可能な方向に変化させ、変化させた後の前記潜在変数の値に対応する前記第2の健康特徴情報に基づいて、前記理想生体情報を推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記利用者の生体情報に基づいて推定された前記利用者の健康情報を前記利用者に対して提供する提供部と、
前記利用者から前記所望の健康情報を受け付ける受付部と、
をさらに備え、
前記受付部は、
前記所望の健康情報として、前記利用者により加工された前記利用者の健康情報である加工後の健康情報を受け付ける、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得部は、
前記生体情報に対応する人物の属性に関する属性情報から前記健康情報を推定するよう学習された前記機械学習モデルを取得する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記取得部は、
人物の属性ごとに生成された複数の前記機械学習モデルのうち、前記利用者の属性に対応する一の前記機械学習モデルを取得する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記健康情報は、身体的な健康状態、精神的な健康状態、または、心身双方の健康状態を示す情報である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記健康情報は、健康診断の検査項目に対応する値である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記健康情報は、覚醒度を示す値と感情価を示す値の組である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記生体情報は、心電、心拍、脈拍、発汗、呼吸、脳波、体温、姿勢、活動量、加速度、におい、筋電、表情、皮膚電位、視線、瞬目、瞳孔径、または音声を示す情報である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
情報処理装置が実行するプログラムにより実現される情報処理方法であって、
生体情報から健康状態を示す健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルを取得する取得工程と、
利用者の健康情報を前記機械学習モデルの潜在空間に写像し、前記潜在空間に写像された前記利用者の健康情報に対応する第1の健康特徴情報に基づいて、前記利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報から前記所望の健康情報に対応する生体情報である理想生体情報を推定する推定工程と、
を含む情報処理方法。
【請求項11】
生体情報から健康状態を示す健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルを取得する取得手順と、
利用者の健康情報を前記機械学習モデルの潜在空間に写像し、前記潜在空間に写像された前記利用者の健康情報に対応する第1の健康特徴情報に基づいて、前記利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報から前記所望の健康情報に対応する生体情報である理想生体情報を推定する推定手順と、
をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定のデータから、そのデータの意味的な構造を維持した多様なデータを生成する技術に関する研究が盛んに行われている。例えば、モデルインバージョン(Model inversion)の技術を用いて、GAN(Generative Adversarial Networks)の潜在空間に特定の人物の顔画像を写像して潜在コードを得る。そして、潜在空間上で潜在コードを解釈可能な方向に変化させることで、特定の人物の顔画像に対応する属性を編集し(例えば、年齢を若くする、笑顔を追加する等)、編集された属性に対応する新たな顔画像を生成可能とする技術が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Weihao Xia、他5名、“GAN Inversion: A Survey”、[online]、March 2021、[令和4年5月24日検索]、インターネット<URL:https://arxiv.org/abs/2101.05278v2>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、近年、生体センサの普及に伴い、生体センサによって検出された生体情報を用いた健康管理に対するニーズが高まっている。例えば、利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報に応じた利用者の理想的な体調に関する情報を適切に推定し、利用者に対して提供可能とする技術が求められている。
【0005】
本願は、利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報に応じた利用者の理想的な体調に関する情報を適切に推定することができる情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る情報処理装置は、生体情報から健康状態を示す健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルを取得する取得部と、利用者の健康情報を前記機械学習モデルの潜在空間に写像し、前記潜在空間に写像された前記利用者の健康情報に対応する第1の健康特徴情報に基づいて、前記利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報から前記所望の健康情報に対応する生体情報である理想生体情報を推定する推定部と、を備える。
【0007】
前記推定部は、前記潜在空間における潜在変数の値を前記第1の健康特徴情報から前記所望の健康情報に対応する第2の健康特徴情報まで解釈可能な方向に変化させ、変化させた後の前記潜在変数の値に対応する前記第2の健康特徴情報に基づいて、前記理想生体情報を推定する。
【0008】
本願に係る情報処理装置は、前記利用者の生体情報に基づいて推定された前記利用者の健康情報を前記利用者に対して提供する提供部と、前記利用者から前記所望の健康情報を受け付ける受付部と、をさらに備え、前記受付部は、前記所望の健康情報として、前記利用者により加工された前記利用者の健康情報である加工後の健康情報を受け付ける。
【0009】
前記取得部は、前記生体情報に対応する人物の属性に関する属性情報から前記健康情報を推定するよう学習された前記機械学習モデルを取得する。
【0010】
前記取得部は、人物の属性ごとに生成された複数の前記機械学習モデルのうち、前記利用者の属性に対応する一の前記機械学習モデルを取得する。
【0011】
前記健康情報は、身体的な健康状態、精神的な健康状態、または、心身双方の健康状態を示す情報である。
【0012】
前記健康情報は、健康診断の検査項目に対応する値である。
【0013】
前記健康情報は、覚醒度を示す値と感情価を示す値の組である。
【0014】
前記生体情報は、心電、心拍、脈拍、発汗、呼吸、脳波、体温、姿勢、活動量、加速度、におい、筋電、表情、皮膚電位、視線、瞬目、瞳孔径、または音声を示す情報である。
【0015】
本願に係る情報処理方法は、情報処理装置が実行するプログラムにより実現される情報処理方法であって、生体情報から健康状態を示す健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルを取得する取得工程と、利用者の健康情報を前記機械学習モデルの潜在空間に写像し、前記潜在空間に写像された前記利用者の健康情報に対応する第1の健康特徴情報に基づいて、前記利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報から前記所望の健康情報に対応する生体情報である理想生体情報を推定する推定工程と、を含む。
【0016】
本願に係る情報処理プログラムは、生体情報から健康状態を示す健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルを取得する取得手順と、利用者の健康情報を前記機械学習モデルの潜在空間に写像し、前記潜在空間に写像された前記利用者の健康情報に対応する第1の健康特徴情報に基づいて、前記利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報から前記所望の健康情報に対応する生体情報である理想生体情報を推定する推定手順と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0017】
実施形態の一態様によれば、利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報に応じた利用者の理想的な体調に関する情報を適切に推定することを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る情報処理の概要について説明するための図である。
図2図2は、実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る情報処理の一例について説明するための図である。
図5図5は、実施形態に係る情報処理手順を示すフローチャートである。
図6図6は、感情円環モデル(ラッセルの円環モデル)について説明するための図である。
図7図7は、情報処理装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本願に係る情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを実施するための形態(以下、「実施形態」と呼ぶ)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムが限定されるものではない。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0020】
(実施形態)
〔1.情報処理の概要〕
【0021】
図1は、実施形態に係る情報処理の概要について説明するための図である。図1では、実施形態に係る情報処理装置100によって、実施形態に係る情報処理などが実現されるものとする。図1では、情報処理装置100が、利用者の生体情報から利用者の健康度を推定し、利用者の健康度を理想的な値に近づけた時、利用者の生体情報がどのように変わるのかを可視化して利用者に提供する。
【0022】
ここで、健康度とは、健康状態を示す値である。例えば、健康度は、健康の指標となる値であってよい。具体的には、例えば、健康度は、一般健康診断、特殊健康診断、行政指導による健康診断、がん検診または人間ドッグなどの体の健康診断の各検査項目の数値であってよい。また、健康度は、ストレスチェックなどの心の健康状態を知るための健康診断の各検査項目の数値であってよい。このように、健康度は、身体的な健康状態、精神的な健康状態、または、心身双方の健康状態を示す値であってよい。図1に示す例では、利用者が無理なく健康診断の所定の検査項目の数値を「5」から「10」へと改善したい場合について説明する。
【0023】
図1では、情報処理装置100は、生体情報から健康診断の各検査項目の数値(以下、健康度ともいう)を推定するようあらかじめ学習された機械学習モデルM1を取得する。具体的には、情報処理装置100は、生体情報から生体情報に対応する健康特徴情報を生成する第1のエンコーダと、健康特徴情報から健康特徴情報に対応する健康情報(例えば、健康度)を生成する第1のデコーダとを含む機械学習モデルM1を取得してよい。例えば、情報処理装置100は、生体情報として、心電、心拍、脈拍、発汗、呼吸、脳波、体温、姿勢、活動量、加速度、におい、筋電、表情、皮膚電位、視線、瞬目、瞳孔径、または音声を示す情報(例えば、時系列データ)が入力された場合、生体情報に対応する健康診断の各検査項目の数値を出力するよう学習された機械学習モデルM1を取得してよい。図1に示す例では、情報処理装置100は、心拍数および発汗量を示す情報が入力された場合、健康診断の各検査項目の数値を出力するよう学習された機械学習モデルM1を取得する。
【0024】
また、情報処理装置100は、利用者の生体情報を取得する。図1に示す例では、情報処理装置100は、利用者の生体情報として、利用者の心拍数および発汗量を示す情報を取得する。続いて、情報処理装置100は、機械学習モデルM1を用いて、利用者の生体情報から利用者の健康診断の各検査項目の数値を推定する。例えば、情報処理装置100は、利用者の心拍数および発汗量を示す情報を機械学習モデルM1に入力して、利用者の健康診断の各検査項目の数値を推定する。例えば、情報処理装置100は、利用者の健康診断の所定の検査項目の数値を「5」であると推定する。
【0025】
続いて、情報処理装置100は、推定した利用者の健康診断の各検査項目の数値に関する情報を利用者に対して提供する。例えば、情報処理装置100は、推定した利用者の健康診断の各検査項目の数値を項目ごとにマッピングしたグラフを生成し、生成したグラフを画面に表示してよい。利用者は、画面に表示されたグラフの数値を見て、所定の検査項目の数値が基準値を下回っているため、少し改善したいと思った。このとき、利用者は、情報処理装置100の画面に表示されたグラフの各数値を画面上で加工することができる。情報処理装置100は、利用者の操作に応じて、利用者によって加工された所定の検査項目の数値(以下、加工済み数値ともいう)である「10」を受け付ける。
【0026】
続いて、情報処理装置100は、機械学習モデルM1に対してモデルインバージョンの技術を適用することにより、利用者から受け付けた加工済み数値と、所定の検査項目以外の利用者の健康診断の各検査項目の数値に対応する情報(以下、加工済み健康度ともいう)から、加工済み健康度に対応する生体情報である理想生体情報を推定する。ここで、「モデルインバージョン」とは、機械学習モデルの出力情報を機械学習モデルの潜在空間へ写像する技術のことを指す。具体的には、情報処理装置100は、利用者の生体情報から推定した利用者の健康診断の各検査項目の数値に対応する情報(以下、利用者の健康度ともいう)を機械学習モデルM1の潜在空間に写像する。ここで、「利用者の健康度を機械学習モデルM1の潜在空間に写像する」とは、例えば、利用者の健康度から利用者の健康度に対応する特徴情報を生成し、生成した特徴情報を機械学習モデルM1の潜在空間にマッピングすることに対応する。例えば、情報処理装置100は、第1のデコーダに対応する第2のエンコーダを取得してよい。例えば、第2のエンコーダは、健康情報(例えば、健康度)から健康情報に対応する健康特徴情報を生成するエンコーダであってよい。情報処理装置100は、取得した第2のエンコーダを用いて、利用者の健康度から利用者の健康度に対応する健康特徴情報(以下、第1の健康特徴情報ともいう)を生成してよい。続いて、情報処理装置100は、生成した第1の健康特徴情報を機械学習モデルM1の潜在空間にマッピングしてよい。続いて、情報処理装置100は、潜在空間における潜在変数(健康特徴情報に対応する変数)の値を第1の健康特徴情報から加工済み健康度に対応する健康特徴情報(以下、第2の健康特徴情報ともいう)まで解釈可能な方向に変化させる。これにより、情報処理装置100は、利用者の健康度から加工済み健康度へと連続的に(滑らかに、または、自然に)変化させることができる。すなわち、情報処理装置100は、利用者の健康度から加工済み健康度へのモーフィングを実現可能にする。
【0027】
ここで、「解釈可能な方向」とは、潜在変数に対応する機械学習モデルの出力情報の意味的な構造を維持することができる方向を意味する。例えば、機械学習モデルの出力情報が人物の顔を撮像した画像である場合、画像の意味的な構造とは、画像が人物の顔を含むことに対応する。つまり、「解釈可能な方向」とは、人物の顔であると認識できる画像を維持することができる方向に対応する。例えば、「潜在変数の値を解釈可能な方向に変化させる」ことにより、人物の顔画像であるという意味的な構造を維持しつつ、人物の顔の表情、年齢、性別、髪型、骨格などの人物の顔を構成する属性を変化させた新たな顔画像を生成することができる。また、本実施形態における機械学習モデルM1の出力情報は、利用者の健康度である。つまり、本実施形態における「解釈可能な方向」とは、利用者の健康度であると認識できる健康度を維持することができる方向に対応する。例えば、情報処理装置100は、潜在空間における潜在変数の値を解釈可能な方向に変化させることにより、利用者の健康度であるという意味的な構造を維持しつつ、利用者の健康診断の各検査項目の数値などの利用者の健康に関する属性を変化させた新たな利用者の健康度(例えば、加工済み健康度)を生成することができる。
【0028】
続いて、情報処理装置100は、変化させた後の潜在変数の値に対応する第2の健康特徴情報を取得する。続いて、情報処理装置100は、第2の健康特徴情報に基づいて、第2の健康特徴情報に対応する生体情報を理想生体情報として推定する。例えば、情報処理装置100は、第1のエンコーダに対応する第2のデコーダを取得してよい。例えば、第2のデコーダは、健康特徴情報から健康特徴情報に対応する生体情報を生成するデコーダであってよい。情報処理装置100は、取得した第2のデコーダを用いて、第2の健康特徴情報から第2の健康特徴情報に対応する生体情報を理想生体情報として生成してよい。例えば、情報処理装置100は、理想生体情報として、心拍数を示す数値を「110」(bpm)、発汗量を示す数値を「300」(ml)と推定してよい。
【0029】
続いて、情報処理装置100は、推定した理想生体情報を利用者に対して提供する。例えば、情報処理装置100は、推定した心拍数を示す数値「110」(bpm)および発汗量を示す数値「300」(ml)を画面に表示してよい。
【0030】
このように、情報処理装置100は、あらかじめ学習された機械学習モデルM1の潜在空間に利用者の健康度を写像する。これにより、情報処理装置100は、潜在空間に写像された利用者の健康度に対応する第1の健康特徴情報に基づいて、潜在空間における潜在変数の値を第1の健康特徴情報から徐々に変化させることが可能になる。つまり、情報処理装置100は、利用者の健康度から、利用者の健康度の意味的な構造を維持した多様な健康度(例えば、利用者の健康度を加工した加工済み健康度)を生成可能とすることができる。また、情報処理装置100は、利用者の健康度の意味的な構造を維持した加工済み健康度から、加工済み健康度に対応する生体情報である理想生体情報を推定することができる。これにより、情報処理装置100は、利用者の健康度の意味的な構造を維持した加工済み健康度に基づいて、理想生体情報を適切に推定することができる。したがって、情報処理装置100は、利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報(例えば、加工済み健康度)に応じた利用者の理想的な体調に関する情報(例えば、理想生体情報)を適切に推定することができる。
【0031】
〔2.情報処理システムの構成〕
図2は、実施形態に係る情報処理システム1の構成例を示す図である。図2に示すように、実施形態に係る情報処理システム1には、センサ装置10と生成装置20と情報処理装置100とが含まれる。センサ装置10と生成装置20と情報処理装置100とは、各種の通信ネットワークを介して、有線または無線で互いに通信可能に接続される。なお、図2に示した情報処理システム1には、任意の数のセンサ装置10と、任意の数の生成装置20と、任意の数の情報処理装置100とが含まれていてもよい。
【0032】
センサ装置10は、利用者の生体情報を検出する情報処理装置である。具体的には、センサ装置10は、利用者によって使用されるウェアラブルセンサまたはスマートフォン等の端末装置であってよい。例えば、センサ装置10は、生体センサ素子を備える生体センサ装置であり、人体に装着可能なウェアラブルセンサであってよい。また、センサ装置10は、ヘッドセット型、眼鏡型、シャツ型、または、リストバンド型などであってよい。例えば、生体センサ装置であるセンサ装置10は、センサデータとして、人体の心電、心拍、脈拍、発汗、呼吸、脳波、体温、姿勢、活動量、加速度、におい、筋電、表情、皮膚電位、視線、瞬目、瞳孔径、または音声などをそれぞれ示す電気信号を検出する。また、センサ装置10は、生体センサ素子が検出した電気信号(アナログ信号)をデジタルデータへとAD変換する。また、センサ装置10は、生体情報として、検出した電気信号をAD変換したデジタルデータを生成装置20や情報処理装置100に送信する。なお、センサ装置10が検出可能な生体情報は、心身の健康状態に応じて生じる生理現象に関する情報であればよく、上記の例に限定されるものではない。
【0033】
生成装置20は、生体情報から健康状態を示す健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルM1を生成する情報処理装置である。生成装置20は、機械学習モデルM1の学習に用いられる生体情報を取得する。具体的には、生成装置20は、センサ装置10から生体情報を取得してよい。また、生成装置20は、機械学習モデルM1の学習に用いられる健康情報を取得する。例えば、生成装置20は、健康診断の検査結果に関する情報を管理する外部のサーバ装置から健康診断の検査結果に関する情報を取得してよい。例えば、生成装置20は、健康診断の検査結果に関する情報として、各人の健康診断の各検査項目の数値を取得してよい。生成装置20は、機械学習モデルM1の学習データとして、生体情報と、生体情報に対応する人の健康情報との組を取得する。続いて、生成装置20は、取得した学習データに基づいて、生体情報から健康情報を推定するよう機械学習モデルM1を学習させる。例えば、生成装置20は、生体情報として、心電、心拍、脈拍、発汗、呼吸、脳波、体温、姿勢、活動量、加速度、におい、筋電、表情、皮膚電位、視線、瞬目、瞳孔径、または音声を示す情報(例えば、時系列データ)が入力された場合、生体情報に対応する健康診断の各検査項目の数値を出力するよう機械学習モデルM1を学習させてよい。
【0034】
より具体的には、生成装置20は、取得した学習データに基づいて、生体情報から生体情報に対応する健康特徴情報を生成する第1のエンコーダと、健康特徴情報から健康特徴情報に対応する健康情報を生成する第1のデコーダとを含む機械学習モデルM1を生成してよい。例えば、生成装置20は、生体情報が第1のエンコーダに入力された場合、第1のエンコーダに入力された生体情報に対応する健康情報が第1のデコーダから出力されるように、バックプロパゲーション等を用いて機械学習モデルM1を学習させてよい。
【0035】
また、生成装置20は、学習データとして取得した生体情報に基づいて、生体情報から生体情報に対応する健康特徴情報を生成する第1のエンコーダと、健康特徴情報から健康特徴情報に対応する生体情報を生成する第2のデコーダを生成してよい。例えば、生成装置20は、第1のエンコーダに入力される生体情報と、第2のデコーダが出力する生体情報との類似度が第1の閾値を超えるまで、第1のエンコーダと第2のデコーダをそれぞれ学習させてよい。
【0036】
また、生成装置20は、学習データとして取得した健康情報に基づいて、健康情報から健康情報に対応する健康特徴情報を生成する第2のエンコーダと、健康特徴情報から健康特徴情報に対応する健康情報を生成する第1のデコーダを生成してよい。例えば、生成装置20は、第2のエンコーダに入力される健康情報と、第1のデコーダが出力する健康情報との類似度が第2の閾値を超えるまで、第2のエンコーダと第1のデコーダをそれぞれ学習させてよい。
【0037】
情報処理装置100は、図1で説明した情報処理を実現する情報処理装置である。具体的には、情報処理装置100は、利用者によって使用されるスマートフォン等の端末装置であってよい。情報処理装置100は、生成装置20から機械学習モデルM1を取得する。また、情報処理装置100は、センサ装置10から利用者の生体情報を取得する。続いて、情報処理装置100は、取得した生体情報に基づいて、利用者の健康度を推定する。続いて、情報処理装置100は、推定した利用者の健康度に関する情報を利用者に対して提供する。また、情報処理装置100は、利用者から加工済み健康度を受け付ける。続いて、情報処理装置100は、機械学習モデルM1に対してモデルインバージョンの技術を適用することにより、加工済み健康度から、加工済み健康度に対応する生体情報である理想生体情報を推定する。続いて、情報処理装置100は、推定した理想生体情報を利用者に対して提供する。
【0038】
〔3.情報処理装置の構成〕
図3は、実施形態に係る情報処理装置100の構成例を示す図である。情報処理装置100は、通信部110と、記憶部120と、入力部130と、出力部140と、制御部150とを有する。
【0039】
(通信部110)
通信部110は、NIC(Network Interface Card)やアンテナ等によって実現される。通信部110は、各種ネットワークと有線または無線で接続され、例えば、センサ装置10や生成装置20との間で情報の送受信を行う。
【0040】
(記憶部120)
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。具体的には、記憶部120は、各種プログラム(情報処理プログラムの一例)を記憶する。また、記憶部120は、生体情報から健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルM1に関する情報を記憶する。
【0041】
(入力部130)
入力部130は、利用者から各種操作が入力される。例えば、入力部130は、タッチパネル機能により表示面(例えば出力部140)を介して利用者からの各種操作を受け付けてもよい。また、入力部130は、情報処理装置100に設けられたボタンや、情報処理装置100に接続されたキーボードやマウスからの各種操作を受け付けてもよい。例えば、入力部130は、利用者から画面に表示された利用者の健康情報を加工する操作を受け付けてよい。
【0042】
(出力部140)
出力部140は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等によって実現される表示画面であり、各種情報を表示するための表示装置である。出力部140は、制御部150の制御に従って、各種情報を表示する。例えば、出力部140は、提供部152の制御に従って、提供部152によって生成された利用者の健康診断の各検査項目の数値を項目ごとにマッピングしたグラフを表示してよい。なお、情報処理装置100にタッチパネルが採用される場合には、入力部130と出力部140とは一体化される。また、以下の説明では、出力部140を画面と記載する場合がある。
【0043】
(制御部150)
制御部150は、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、情報処理装置100内部の記憶装置に記憶されている各種プログラム(情報処理プログラムの一例に相当)がRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部150は、コントローラであり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0044】
制御部150は、取得部151と、提供部152と、受付部153と、推定部154を機能部として有し、以下に説明する情報処理の作用を実現または実行してよい。なお、制御部150の内部構成は、図3に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。また、各機能部は、制御部150の機能を示したものであり、必ずしも物理的に区別されるものでなくともよい。
【0045】
(取得部151)
取得部151は、生体情報から健康状態を示す健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルM1を取得する。具体的には、取得部151は、生体情報から生体情報に対応する健康特徴情報を生成する第1のエンコーダと、健康特徴情報から健康特徴情報に対応する健康情報を生成する第1のデコーダとを含む機械学習モデルM1を取得してよい。例えば、健康情報は、健康度であってよい。例えば、健康情報は、健康の指標となる値であってよい。また、健康情報は、健康診断の各検査項目の数値であってよい。より具体的には、取得部151は、生成装置20から機械学習モデルM1を取得してよい。例えば、取得部151は、生体情報から健康度を推定するようあらかじめ学習された機械学習モデルM1を取得してよい。また、取得部151は、生体情報から健康診断の各検査項目の数値を推定するようあらかじめ学習された機械学習モデルM1を取得してよい。また、取得部151は、生体情報として、心電、心拍、脈拍、発汗、呼吸、脳波、体温、姿勢、活動量、加速度、におい、筋電、表情、皮膚電位、視線、瞬目、瞳孔径、または音声を示す情報(例えば、時系列データ)が入力された場合、生体情報に対応する健康診断の各検査項目の数値を出力するよう学習された機械学習モデルM1を取得してよい。また、取得部151は、機械学習モデルM1を取得した場合、取得した機械学習モデルM1に関する情報を記憶部120に格納してよい。
【0046】
(提供部152)
提供部152は、利用者の生体情報に基づいて推定された利用者の健康情報を利用者に対して提供する。具体的には、提供部152は、記憶部120を参照して、取得部151によって取得された機械学習モデルM1を取得してよい。また、提供部152は、センサ装置10から利用者の生体情報を取得してよい。続いて、提供部152は、機械学習モデルM1を用いて、利用者の生体情報から利用者の健康情報を推定してよい。例えば、提供部152は、利用者の健康情報として、利用者の健康度を推定してよい。また、提供部152は、利用者の健康情報として、利用者の健康診断の各検査項目の数値を推定してよい。例えば、提供部152は、利用者の生体情報を機械学習モデルM1に入力して、利用者の健康診断の各検査項目の数値を推定してよい。続いて、提供部152は、推定した利用者の健康診断の各検査項目の数値に関する情報を利用者に対して提供する。例えば、提供部152は、推定した利用者の健康診断の各検査項目の数値を項目ごとにマッピングしたグラフを生成してよい。続いて、提供部152は、生成したグラフを表示するよう出力部140を制御する。なお、提供部152は、グラフを生成する代わりに、推定した利用者の健康診断の各検査項目の数値を項目ごとに並べた表を生成してもよい。提供部152は、表を生成した場合、生成した表を表示するよう出力部140を制御してよい。
【0047】
(受付部153)
受付部153は、利用者から所望の健康情報を受け付ける。例えば、受付部153は、所望の健康情報として、利用者により加工された利用者の健康情報である加工後の健康情報を受け付けてよい。例えば、受付部153は、入力部130を介して、利用者から画面に表示された利用者の健康情報を加工する操作を受け付けてよい。例えば、受付部153は、提供部152によって画面に表示された利用者の健康診断の各検査項目の数値を項目ごとにマッピングしたグラフを加工する操作を受け付けてよい。例えば、受付部153は、画面に表示されたグラフにおける利用者の健康診断の各検査項目の数値のうち、所定の検査項目の数値(例えば、健康度「5」)に対応する点Q1を利用者が指によって長押しする操作を受け付けてよい。続いて、受付部153は、点Q1の位置から、例えば、健康度の値を「+5」だけ変化させた点Q2の位置まで利用者の指を画面上でスライドさせる操作(ドラッグ操作)を受け付けてよい。このように、受付部153は、利用者の健康診断の各検査項目の数値を項目ごとにマッピングしたグラフにおける点Q1の位置に対応する利用者の所定の検査項目の数値を、同グラフにおける点Q2の位置に対応する所定の検査項目の数値(例えば、健康度「10」)に加工する操作を受け付けてよい。また、受付部153は、所定の検査項目の数値を加工する操作と同様に、利用者の健康診断の各検査項目の数値のうち、所定の検査項目の数値以外の数値を加工する操作を受け付けてよい。また、受付部153は、入力部130を介して、利用者から加工後の健康情報を受け付けてよい。例えば、受付部153は、利用者によって加工された所定の検査項目の数値(以下、加工済み数値ともいう)を受け付けてよい。また、受付部153は、加工済み数値と、所定の検査項目以外の利用者の健康診断の各検査項目の数値に対応する情報(以下、加工済み健康度ともいう)を受け付けてよい。
【0048】
また、受付部153は、提供部152によって利用者の健康診断の各検査項目の数値を項目ごとに並べた表が画面に表示された場合は、同表の数値を加工する操作を受け付けてよい。例えば、受付部153は、画面に表示された表における利用者の健康診断の各検査項目の数値のうち、所定の検査項目の数値(例えば、健康度「5」)を「+5」だけ変化させる操作を受け付けてよい。例えば、受付部153は、表のうち、所定の検査項目に対応する項目のセルを利用者が選択した場合、所定の検査項目の数値からの変化量を示す数値(例えば、「+5」、「+10」、…等)を選択可能にプルダウンで表示してよい。続いて、受付部153は、入力部130を介して、プルダウンの中から、利用者によって選択された変化量を示す数値(例えば、「+5」)を受け付けてよい。受付部153は、利用者によって選択された変化量を示す数値(例えば、「+5」)を所定の検査項目の数値(例えば、健康度「5」)に加算した数値(例えば、健康度「10」)を加工済み数値として受け付けてよい。なお、受付部153は、プルダウン形式によらず、利用者から所定の検査項目の数値を加工した数値(例えば、健康度「10」)の入力を受け付けてもよい。
【0049】
(推定部154)
推定部154は、取得部151によって取得された機械学習モデルM1に対してモデルインバージョンの技術を適用することにより、受付部153によって受け付けられた所望の健康情報から所望の健康情報に対応する生体情報である理想生体情報を推定する。この点について、図4を用いて詳しく説明する。図4は、実施形態に係る情報処理の一例について説明するための図である。
【0050】
図4では、提供部152は、機械学習モデルM1の入力情報として、利用者の生体情報を機械学習モデルM1に入力し、機械学習モデルM1の出力情報として、利用者の健康診断の各検査項目の数値に対応する情報(以下、利用者の健康度ともいう)を機械学習モデルM1から出力する。
【0051】
また、図4では、推定部154は、利用者の生体情報から推定した利用者の健康度を機械学習モデルM1の潜在空間に写像する。すなわち、推定部154は、機械学習モデルM1の出力情報に対応する利用者の健康度を機械学習モデルM1の潜在空間に写像する(モデルインバージョン)。具体的には、推定部154は、第1のデコーダに対応する第2のエンコーダを生成装置20から取得してよい。より具体的には、推定部154は、健康情報(例えば、健康度)から健康情報に対応する健康特徴情報を生成する第2のエンコーダを取得してよい。続いて、推定部154は、取得した第2のエンコーダを用いて、利用者の健康度から利用者の健康度に対応する第1の健康特徴情報を生成してよい。推定部154は、生成した第1の健康特徴情報を機械学習モデルM1の潜在空間にマッピングしてよい。図4に示す点P1は、潜在空間における第1の健康特徴情報の位置を示す。また、図4に示すzは、第1の健康特徴情報を示す。
【0052】
続いて、推定部154は、潜在空間における潜在変数(健康特徴情報に対応する変数)の値を第1の健康特徴情報から加工済み健康度に対応する第2の健康特徴情報まで解釈可能な方向に変化させる。図4に示す点P2は、潜在空間における第2の健康特徴情報の位置を示す。また、図4に示すzは、第2の健康特徴情報を示す。続いて、推定部154は、変化させた後の潜在変数の値に対応する第2の健康特徴情報を取得する。続いて、推定部154は、第2の健康特徴情報に基づいて、第2の健康特徴情報に対応する生体情報を理想生体情報として推定する。例えば、推定部154は、第1のエンコーダに対応する第2のデコーダを生成装置20から取得してよい。より具体的には、推定部154は、健康特徴情報から健康特徴情報に対応する生体情報を生成する第2のデコーダを取得してよい。続いて、推定部154は、取得した第2のデコーダを用いて、第2の健康特徴情報から第2の健康特徴情報に対応する生体情報を理想生体情報として生成してよい。
【0053】
〔4.情報処理の手順〕
図5は、実施形態に係る情報処理手順を示すフローチャートである。図5に示すように、情報処理装置100の取得部151は、生体情報から健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルM1を取得する(ステップS101)。また、情報処理装置100の提供部152は、利用者の生体情報に基づいて利用者の健康情報を推定する(ステップS102)。続いて、提供部152は、推定した利用者の健康情報を利用者に対して提供する(ステップS103)。また、情報処理装置100の受付部153は、利用者から所望の健康情報を受け付ける(ステップS104)。また、情報処理装置100の推定部154は、利用者の健康情報に対応する健康特徴情報に基づいて、所望の健康情報に対応する理想生体情報を推定する(ステップS105)。また、提供部152は、推定した理想生体情報を利用者に対して提供する(ステップS106)。
【0054】
〔5.変形例〕
上述した実施形態に係る処理は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0055】
〔5-1.機械学習モデルについて〕
上述した実施形態では、取得部151が、生体情報から健康状態を示す健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルM1を取得する場合について説明したが、取得部151は、生体情報に対応する人物の属性に関する属性情報から健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルM2を取得してよい。例えば、取得部151は、生体情報および生体情報に対応する人物の属性に関する属性情報が機械学習モデルM2に入力された場合、生体情報および属性情報に対応する健康情報を出力するよう学習された機械学習モデルM2を生成装置20から取得してよい。
【0056】
また、取得部151は、人物の属性ごとに生成された複数の機械学習モデルのうち、利用者の属性に対応する一の機械学習モデルM3を取得してよい。例えば、取得部151は、20代の男性の生体情報から健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルM31、50代の女性の生体情報から健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルM32、…のように年齢や性別といった属性ごとに生成された複数の機械学習モデルの中から、利用者の属性に対応する一の機械学習モデルM3を取得してよい。
【0057】
〔5-2.健康度について〕
上述した実施形態では、健康情報が、健康診断の検査項目の数値である場合について説明したが、健康情報は、感情を示す感情情報であってもよい。ここでは、健康情報の他の例として、健康情報が、覚醒度を示す値と感情価を示す値の組(以下、感情情報ともいう)である場合について説明する。
【0058】
ここで、図6を用いて、感情情報について説明する。図6は、感情円環モデル(ラッセルの円環モデルともいう)について説明するための図である。感情円環モデルとは、感情を互いに独立な二次元の軸(Arousal:覚醒度とValence:感情価(快/不快))で表現できるとし、さまざまな感情を二次元軸上に配置したものである。図6は、縦軸を覚醒度、横軸を感情値とした二次元モデルに、各種感情を配置したラッセルの円環モデルを示す。すなわち、感情円環モデルでは、ある感情を示す感情情報は、覚醒度を示す値と感情価を示す値(感情値ともいう)の組で表される。感情円環モデルの円環上には、喜び(happy)、興奮(excited)、緊張(tense)、ストレス(stressed)、悲哀(sad)、穏やか(calm)、リラックス(relaxed)など、さまざまな感情が配置される。
【0059】
具体的には、取得部151は、生体情報に基づいて、感情を示す感情情報を推定する。取得部151は、例えば、生体情報の特徴量を算出し、算出された特徴量に基づいて感情情報を推定してよい。例えば、取得部151は、生体情報の特徴量から感情情報を推定する学習モデルを取得し、当該学習モデルを用いて生体情報の特徴量に基づき感情情報を推定してよい。続いて、取得部151は、生体情報の特徴量に基づいて推定した感情情報が、感情円環モデルの各象限を代表するHAPPY(喜び)、ANGRY(怒り)、SAD(悲しみ)、RELAXED(リラックス)の4つの感情のいずれに該当するかを判定してよい。
【0060】
ここで、一例として、心拍数から感情情報を推定する手法について説明する。この場合、まず、取得部151は、生体情報として、心拍数の時系列データを取得してよい。取得部151は、心拍数の時系列データを周波数解析することで交感神経の影響を受けた周波数成分を抽出してよい。続いて、取得部151は、心拍変動解析の技術を用いて、抽出された周波数成分から特徴量を算出してよい。続いて、取得部151は、心拍変動解析により算出された特徴量から感情情報を推定するよう学習された機械学習モデルM4を生成装置20から取得してよい。なお、機械学習モデルM4は、心拍変動解析により算出された特徴量から感情情報を推定するよう事前に機械学習により生成された機械学習モデルである。続いて、取得部151は、取得した機械学習モデルM4を用いて、心拍変動解析により算出された特徴量から感情情報を推定してよい。例えば、取得部151は、心拍変動解析により算出された特徴量を機械学習モデルM4に入力することにより、感情情報として、覚醒度の推定値と感情価の推定値を算出してよい。続いて、取得部151は、算出した覚醒度の推定値と感情価の推定値の組で表される点が、感情円環モデルのどの象限に位置するかを判定し、各象限を代表するHAPPY(喜び)、ANGRY(怒り)、SAD(悲しみ)、RELAXED(リラックス)の4つの感情のいずれに該当するかを判定してよい。図6では、取得部151は、算出した覚醒度の推定値A1と感情価の推定値V1の組で表される点P3が、感情円環モデルの第1象限に位置すると判定し、HAPPY(喜び)の感情に該当すると判定する。また、取得部151は、算出した覚醒度の推定値と感情価の推定値の組で表される点が、感情円環モデルの円環のどこに位置するかを判定し、円環の位置に対応する感情に該当するかを判定してよい。例えば、取得部151は、算出した覚醒度の推定値A1と感情価の推定値V1の組で表される点P3が、図6に示す感情円環モデルの円環の右上に位置すると判定し、excited(興奮)の感情に該当すると判定する。
【0061】
また、受付部153は、所望の感情情報として、利用者により加工された利用者の感情情報である加工後の感情情報を受け付けてよい。例えば、受付部155は、感情円環モデルを出力部140に表示するよう制御してよい。また、受付部155は、取得部151が推定した利用者の感情情報を出力部140に表示するよう制御してよい。例えば、受付部155は、利用者の感情情報として、利用者の覚醒度の推定値A1と感情価の推定値V1の組で表される点P3の位置を感情円環モデルに重畳して出力部140に表示するよう制御してよい。続いて、受付部153は、入力部130を介して、利用者から画面に表示された利用者の感情情報を加工する操作を受け付けてよい。例えば、受付部153は、利用者の指によって点P3を長押しする操作を受け付けてよい。続いて、受付部153は、点P3の位置から、例えば、覚醒度の値を「+3」、感情価の値を「+3」だけ変化させた点P4の位置まで利用者の指を画面上でスライドさせる操作(ドラッグ操作)を受け付けてよい。このように、受付部153は、感情円環モデルにおける点P3の位置に対応する利用者の感情情報を、感情円環モデルにおける点P4の位置に対応する感情情報に加工する操作を受け付けてよい。また、受付部153は、入力部130を介して、利用者から加工後の感情情報を受け付けてよい。例えば、受付部153は、利用者によって加工された覚醒度の値と、利用者によって加工された感情価の値の組(以下、加工済み感情情報ともいう)を受け付けてよい。また、受付部153は、加工済み感情情報を受け付けてよい。例えば、受付部153は、加工済み感情情報として、感情円環モデルにおける点P4の位置に対応する覚醒度の値と感情価の値の組を受け付けてよい。
【0062】
また、推定部154は、取得部151によって取得された機械学習モデルM4に対してモデルインバージョンの技術を適用することにより、受付部153によって受け付けられた加工済み感情情報から加工済み感情情報に対応する生体情報である理想生体情報を推定してよい。
【0063】
なお、感情情報は覚醒度を示す値と感情価を示す値の組に限られない。感情には様々な表現の仕方が存在する。具体的には、感情情報は、生体情報が入力された場合に、喜び、怒り、悲しみ、リラックスなどの複数の種類の感情それぞれに該当する確率をそれぞれ出力するよう学習された機械学習モデルM5を用いて推定された感情を示す情報であってよい。例えば、感情情報は、喜びの感情が70%であり、怒りの感情が30%であるという感情を示す情報であってよい。
【0064】
〔6.効果〕
上述したように、実施形態に係る情報処理装置100は、取得部151と推定部154を備える。取得部151は、生体情報から健康状態を示す健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルを取得する。推定部154は、利用者の健康情報を機械学習モデルの潜在空間に写像し、潜在空間に写像された利用者の健康情報に対応する第1の健康特徴情報に基づいて、利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報から所望の健康情報に対応する生体情報である理想生体情報を推定する。
【0065】
このように、情報処理装置100は、あらかじめ学習された機械学習モデルの潜在空間に利用者の健康情報を写像する。これにより、情報処理装置100は、潜在空間に写像された利用者の健康情報に対応する第1の健康特徴情報に基づいて、潜在空間における潜在変数の値を第1の健康特徴情報から徐々に変化させることが可能になる。つまり、情報処理装置100は、利用者の健康情報から、利用者の健康情報の意味的な構造を維持した多様な健康情報(例えば、利用者の健康情報を加工した加工済み健康情報)を生成可能とすることができる。また、情報処理装置100は、利用者の健康情報の意味的な構造を維持した加工済み健康情報から、加工済み健康情報に対応する生体情報である理想生体情報を推定することができる。これにより、情報処理装置100は、利用者の健康情報の意味的な構造を維持した加工済み健康情報に基づいて、理想生体情報を適切に推定することができる。したがって、情報処理装置100は、利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報(例えば、加工済み健康情報)に応じた利用者の理想的な体調に関する情報(例えば、理想生体情報)を適切に推定することができる。また、情報処理装置100は、利用者が所望する健康状態を示す所望の健康情報に応じた利用者の理想的な体調に関する情報を適切に推定することができるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0066】
また、推定部154は、潜在空間における潜在変数の値を第1の健康特徴情報から所望の健康情報に対応する第2の健康特徴情報まで解釈可能な方向に変化させ、変化させた後の潜在変数の値に対応する第2の健康特徴情報に基づいて、理想生体情報を推定する。
【0067】
これにより、情報処理装置100は、利用者の健康情報の意味的な構造を維持しつつ、利用者が所望する健康情報に基づいて、理想生体情報を適切に推定することができる。
【0068】
また、実施形態に係る情報処理装置100は、提供部152と受付部153をさらに備える。提供部152は、利用者の生体情報に基づいて推定された利用者の健康情報を利用者に対して提供する。受付部153は、利用者から所望の健康情報を受け付ける。また、受付部153は、所望の健康情報として、利用者により加工された利用者の健康情報である加工後の健康情報を受け付ける。
【0069】
これにより、情報処理装置100は、利用者の健康情報を加工した加工済み健康情報に対応する生体情報である理想生体情報を推定することができる。
【0070】
また、取得部151は、生体情報に対応する人物の属性に関する属性情報から健康情報を推定するよう学習された機械学習モデルを取得する。
【0071】
これにより、情報処理装置100は、利用者の属性を学習した機械学習モデルを用いることで、理想生体情報をより適切に推定することができる。
【0072】
また、取得部151は、人物の属性ごとに生成された複数の機械学習モデルのうち、利用者の属性に対応する一の機械学習モデルを取得する。
【0073】
これにより、情報処理装置100は、利用者の属性に対応する機械学習モデルを用いることで、理想生体情報をより適切に推定することができる。
【0074】
また、健康情報は、身体的な健康状態、精神的な健康状態、または、心身双方の健康状態を示す情報である。
【0075】
これにより、情報処理装置100は、利用者が所望する身体的な健康状態、精神的な健康状態、または、心身双方の健康状態を示す情報に応じた利用者の理想的な体調に関する情報を適切に推定ことができる。
【0076】
また、健康情報は、健康診断の検査項目に対応する値である。
【0077】
これにより、情報処理装置100は、利用者が所望する健康診断の検査項目の数値に応じた利用者の理想的な体調に関する情報を適切に推定ことができる。
【0078】
また、健康情報は、覚醒度を示す値と感情価を示す値の組である。
【0079】
これにより、情報処理装置100は、利用者が所望する覚醒度を示す値と感情価を示す値の組に応じた利用者の理想的な体調に関する情報を適切に推定ことができる。
【0080】
また、生体情報は、心電、心拍、脈拍、発汗、呼吸、脳波、体温、姿勢、活動量、加速度、におい、筋電、表情、皮膚電位、視線、瞬目、瞳孔径、または音声を示す情報である。
【0081】
これにより、情報処理装置100は、利用者の理想的な体調に関する心電、心拍、脈拍、発汗、呼吸、脳波、体温、姿勢、活動量、加速度、におい、筋電、表情、皮膚電位、視線、瞬目、瞳孔径、または音声を示す情報を適切に推定することができる。
【0082】
〔7.ハードウェア構成〕
また、上述してきた実施形態に係る情報処理装置100は、例えば図7に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。図7は、情報処理装置100の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を備える。
【0083】
CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0084】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェイス1500は、所定の通信網を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを所定の通信網を介して他の機器へ送信する。
【0085】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータを入出力インターフェイス1600を介して出力装置へ出力する。
【0086】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、かかるプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0087】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る情報処理装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部150の機能を実現する。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から所定の通信網を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0088】
以上、本願の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0089】
〔8.その他〕
また、上記実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0090】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、上述した実施形態では、生成装置20と情報処理装置100とが別々の装置である場合について説明したが、生成装置20と情報処理装置100とは、一体の装置であってもよい。生成装置20と情報処理装置100が一体の装置である場合、情報処理装置100は、生成装置20の機能を備えてよい。例えば、情報処理装置100は、上述した生成装置20による機械学習モデルM1、第2のエンコーダおよび第2のデコーダを生成する機能を備えてよい。
【0091】
また、上述してきた実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 情報処理システム
10 センサ装置
20 生成装置
100 情報処理装置
110 通信部
120 記憶部
130 入力部
140 出力部
150 制御部
151 取得部
152 提供部
153 受付部
154 推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7