(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180127
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】重機上載用防振材および重機上載用防振体
(51)【国際特許分類】
E01C 9/08 20060101AFI20231213BHJP
E04G 21/24 20060101ALI20231213BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20231213BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
E01C9/08 A
E04G21/24 Z
F16F15/02 K
F16F15/02 Z
F16F7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093257
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】596006536
【氏名又は名称】カネカフォームプラスチックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390041449
【氏名又は名称】株式会社レンタルのニッケン
(71)【出願人】
【識別番号】000225304
【氏名又は名称】株式会社内外テクノス
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小村 倫生
(72)【発明者】
【氏名】成山 公和
(72)【発明者】
【氏名】高田 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】中道 幹芳
【テーマコード(参考)】
2D051
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2D051AA06
2D051AE03
2D051AF03
2D051AF12
2D051AF17
2D051AG03
2D051AG12
2D051AG15
2D051DA12
2D051DB02
2D051DB09
2D051DB15
3J048AA01
3J048BA11
3J048BB10
3J048BD02
3J048DA01
3J066AA26
3J066BA01
3J066BB01
3J066BC03
3J066BE05
(57)【要約】
【課題】重機上載用防振材を防振性能および耐荷重性能の両方に優れたものにする。
【解決手段】重機上載用防振材(10)は、防振材本体(1)の各収容孔(1b)内に荷重支持材(2)が配設される。各荷重支持材(2)は、弾性体(2a)を有し、荷重支持材(2)の面積比率が1.8%~10%である。防振材本体(1)の動的ばね定数が、3×10
6N/m
3~1.3×10
7N/m
3であり、弾性体(2a)の動的ばね定数が、9×10
6N/m
3~2×10
7N/m
3であり、JIS K6254による1t荷重時の弾性体(2a)の歪み量が8%以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容孔が上下方向に沿って貫通して形成された緩衝体である防振材本体と、
前記防振材本体の収容孔内に配設された荷重支持材と、を有し、
前記防振材本体の上面全体の面積に対する全ての荷重支持材の上面の総面積の比率が1.8%~10%であり、
前記荷重支持材は、弾性体を含み、
前記防振材本体の動的ばね定数が、3×106N/m3~1.3×107N/m3であり、
前記弾性体の動的ばね定数が、9×106N/m3~2×107N/m3であり、
JIS K6254による1t荷重時の前記弾性体の歪み量が8%以下である、重機上載用防振材。
【請求項2】
前記荷重支持材は、
(i)前記弾性体のみから構成される、あるいは
(ii)前記弾性体と、前記弾性体と上下方向に重なるように配置され、前記防振材本体及び前記弾性体よりも剛直に構成され、前記荷重支持材の厚みを調整する厚み調整材と、から構成される、請求項1に記載の重機上載用防振材。
【請求項3】
前記荷重支持材は、前記弾性体と前記厚み調整材とから構成されており、
各荷重支持材の体積に対する弾性体の体積の比率は20%以上である、請求項2に記載の重機上載用防振材。
【請求項4】
前記厚み調整材は、コンクリート、金属、木材、及び合成樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の素材からなる、請求項2に記載の重機上載用防振材。
【請求項5】
前記弾性体は、JIS K6301による硬度が63°~65°であり、かつ密度が90Kg/m3~135Kg/m3である合成ゴムからなる、請求項1~4の何れか1項に記載の重機上載用防振材。
【請求項6】
前記防振材本体は、嵩密度が12kg/m3~45kg/m3であり、かつ独立気泡率が80%以上であるポリオレフィン系樹脂発泡体からなる、請求項1~4の何れか1項に記載の重機上載用防振材。
【請求項7】
重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、5.5×106N/m3~3.3×107N/m3である、請求項1~4の何れか1項に記載の重機上載用防振材。
【請求項8】
請求項1~4の何れか1項に記載の重機上載用防振材と、
前記重機上載用防振材を被覆する外装材と、を備える、重機上載用防振体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重機上載用防振材および重機上載用防振体に関する。
【背景技術】
【0002】
建設工事現場では、重機の移動経路または作業箇所に近接して居住地等の振動保全対象が存在する場合、重機からの振動が地面に伝達されるのを低減する重機上載用防振マット(重機上載用防振体と称する場合がある)が使用される。重機の移動経路または作業箇所には、敷鉄板が敷設される。そして、この敷鉄板の下には、重機の走行時の振動を吸収するべく、重機上載用防振マットが敷設されている。当該重機上載用防振マットは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、重機上載用ではないが、一般的な防振マットに使用される防振材が開示されている。当該防振材は、ポリプロピレン系樹脂板状発泡体と硬質樹脂板状発泡体との積層構造を有し、弾性体が少なくともポリプロピレン系樹脂板状発泡体を貫通して配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3152250号
【特許文献2】特開2002-309758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術では、重機上載用防振マットに使用される防振材としては、防振性能および耐荷重性能の点で改善の余地があった。
【0006】
本発明の一態様は、防振性能および耐荷重性能の両方に優れる重機上載用防振材および重機上載用防振体を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、上記課題を解決すべく、防振材本体の各収容孔内に弾性体を有する荷重支持材が配設された重機上載用防振材について鋭意検討した。その結果、本願発明者は、防振材本体上面に対する荷重支持材上面の面積比率、防振材本体の動的ばね定数、弾性体の動的ばね定数、および、弾性体の1t荷重に対する歪み量を特定の数値範囲内とすることにより、防振性能および耐荷重性能の両方に優れる重機上載用防振材を実現できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明の一態様は、以下の構成を含むものである。
【0009】
<1>収容孔が上下方向に沿って貫通して形成された緩衝体である防振材本体と、前記防振材本体の収容孔内に配設された荷重支持材と、を有し、前記防振材本体の上面全体の面積に対する全ての荷重支持材の上面の総面積の比率が1.8%~10%であり、前記荷重支持材は、弾性体を含み、前記防振材本体の動的ばね定数が、3×106N/m3~1.3×107N/m3であり、前記弾性体の動的ばね定数が、9×106N/m3~2×107N/m3であり、JIS K6254による1t荷重時の前記弾性体の歪み量が8%以下である、重機上載用防振材。
【0010】
<2>前記荷重支持材は、(i)前記弾性体のみから構成される、あるいは(ii)前記弾性体と、前記弾性体と上下方向に重なるように配置され、前記防振材本体及び前記弾性体よりも剛直に構成され、前記荷重支持材の厚みを調整する厚み調整材と、から構成される、<1>に記載の重機上載用防振材。
【0011】
<3>前記荷重支持材は、前記弾性体と前記厚み調整材とから構成されており、各荷重支持材の体積に対する弾性体の体積の比率は20%以上である、<2>に記載の重機上載用防振材。
【0012】
<4>前記厚み調整材は、コンクリート、金属、木材、及び合成樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の素材からなる、<2>または<3>に記載の重機上載用防振材。
【0013】
<5>前記弾性体は、JIS K6301による硬度が63°~65°であり、かつ密度が90Kg/m3~135Kg/m3である合成ゴムからなる、<1>~<4>の何れか1つに記載の重機上載用防振材。
【0014】
<6>前記防振材本体は、嵩密度が12kg/m3~45kg/m3であり、かつ独立気泡率が80%以上であるポリオレフィン系樹脂発泡体からなる、<1>~<5>の何れか1つに記載の重機上載用防振材。
【0015】
<7>重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、5.5×106N/m3~3.3×107N/m3である、<1>~<6>の何れか1つに記載の重機上載用防振材。
【0016】
<8><1>~<7>の何れか1つに記載の重機上載用防振材と、前記重機上載用防振材を被覆する外装材と、を備える、重機上載用防振体。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、防振性能および耐荷重性能の両方に優れる重機上載用防振材および重機上載用防振体を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る重機上載用防振体の使用形態を模式的に示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る重機上載用防振体の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る重機上載用防振材の概略構成を示し、301は上面図であり、302は301におけるA-A線断面図である。
【
図4】401~403は、本発明の実施形態に係る重機上載用防振材に備えられた荷重支持材の他の態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る重機上載用防振体20の使用形態を模式的に示す側面図である。
図2は、本実施形態に係る重機上載用防振体20の概略構成を模式的に示す断面図である。なお、本明細書においては特記しない限り、数値範囲を表わす「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)、B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0020】
(重機上載用防振体20の概略)
図1に示すように、本実施形態に係る重機上載用防振体20は、重機23からの振動が地面に伝達されるのを低減するための防振マットである。通常、重機23による作業箇所の床面には、敷鉄板21が敷設される。重機上載用防振体20は、敷鉄板21と床面との間に敷設される。
【0021】
図2に示すように、重機上載用防振体20は、重機上載用防振材10と、外装材11と、を備えている。
【0022】
外装材11は、重機上載用防振材10を被覆する部材である。より具体的には、外装材11は、重機上載用防振材10に適合した形状を成し、重機上載用防振材10よりも僅かに大きな袋状の部材である。具体的には、外装材11は矩形状の袋である。
【0023】
(重機上載用防振材10)
図3は、重機上載用防振材10の概略構成を示し、
図3の301は上面図であり、
図3の302は
図3の301におけるA-A線断面図である。
図2並びに
図3の301および302に示すように、重機上載用防振材10は、防振材本体1と、荷重支持材2と、を備えている。
【0024】
(防振材本体1)
図3の301および302に示すように、防振材本体1は、緩衝体である板状部材1aが上下方向に積層された構成である。
図3の301および302に示すように、防振材本体1の複数の板状部材1aは、それぞれ矩形板形状であり、厚み方向に積層されている。本実施形態に係る重機上載用防振材10において、防振材本体1は、
図3の301および302に示すような、複数の板状部材1aが積層された構成に限定されない。防振材本体1は、緩衝体であり、かつ重機23からの振動が地面に伝達されるのを低減できる構成であればよい。また、
図3の301および302に示す防振材本体1において、板状部材1aの積層数は、3層に限定されない。
【0025】
また、防振材本体1には、平面視矩形の複数の収容孔1bが上下方向(厚み方向)に沿って貫通して形成されている。防振材本体1において、各板状部材1aに形成された収容孔1bは、互いに上下方向に連通している。複数の収容孔1bは、満遍なく均等に配置されている。防振材本体1の各収容孔1bにおいて、当該収容孔1bを構成する側壁の平面視形状は、例えば円形等の矩形以外の形状であってもよい。
【0026】
(荷重支持材2、弾性体2a、厚み調整材2b)
図3の301および302に示すように、重機上載用防振材10は、防振材本体1の各収容孔1b内に充填して配設された荷重支持材2を有しており、各荷重支持材2は、重機23の荷重を支持する。各荷重支持材2は、重機23の荷重による防振材本体1の圧縮変形に伴い、重機23の荷重を支持するように構成されている。
【0027】
各荷重支持材2の厚みは、防振材本体1の厚みと略同一である。
【0028】
各荷重支持材2は、防振材本体1よりもクリープ変形の小さい耐水性の弾性体2aを有することを構成要件としている。弾性体2aは、ブロック状又は板状に形成されており、弾性体2aの平面視形状は、防振材本体1の収容孔1bを構成する側壁の平面視形状と同じ形状になっている。
【0029】
また、各荷重支持材2は、その厚みを調整する厚み調整材2bを有している。厚み調整材2bは、上下方向において2つの弾性体2aにて挟持する状態で配置されている。厚み調整材2bは、ブロック状又は板状に形成されており、厚み調整材2bの平面視形状は、防振材本体1の収容孔1bを構成する側壁の平面視形状と同じ形状になっている。厚み調整材2bは、防振材本体1及び弾性体2aよりも剛直(高剛性)に構成されている。
【0030】
なお、各荷重支持材2は、弾性体2aを備えた構成であればよい。好ましくは、荷重支持材2は、(i)弾性体2aのみから構成される、あるいは(ii)弾性体2aと、弾性体2aと上下方向に重なるように配置され、防振材本体1及び弾性体2aよりも剛直に構成され、荷重支持材2の厚みを調整する厚み調整材2bと、から構成される。荷重支持材2が弾性体2aのみから構成される場合であっても、荷重支持材2は上述した機能を発揮できる。しかし、弾性体2aの部材コスト等といった経済性を鑑み、荷重支持材2は、上述した機能を損なわない程度に、弾性体2aおよび厚み調整材2bを備えた構成であってもよい。例えば、
図3の301および302に示すように、厚み調整材2bの上下に弾性体2aを配置する様態で荷重支持材2を使用することができる。
【0031】
各荷重支持材2は、所定の厚みを有する弾性体2aと厚み調整材2bとが積層して構成される、あるいは、所定の厚みを有する弾性体2aが積層して構成される場合がある。このような場合、弾性体2aと厚み調整材2bとの積層体、または弾性体2a同士の積層体の積層状態は、当該積層体の厚み方向に延びる側壁部の1箇所以上に接着性テープを設けることによって、固定され得る。また、弾性体2aおよび厚み調整材2bの構成は、所定の厚みを有していれば特に限定されず、単層からなる構成であってもよいし、複数の層が積層された積層体の構成であってもよい。
【0032】
具体的な構成として、重機上載用防振材10は、複数の防振材本体1のパネル(例えば面積1.08m2のパネル)のアセンブリとして構成される。そして、1パネルの防振材本体1あたり、所定個数の収容孔1bが設けられる。収容孔1bは、防振材本体1の任意の箇所に設けられる。そして、この収容孔1bに荷重支持材2が充填される。
【0033】
(荷重支持材2の面積比率)
荷重支持材2が重機上載用防振材10の耐荷重性能を発現することができるように、重機上載用防振材10の上面全体の面積に対する、全ての荷重支持材2の上面の総面積の比率(以下、荷重支持材2の面積比率という)は、1.8%~10%、好ましくは3.0%~8.0%、より好ましくは3.5%~6.0%である。換言すれば、重機上載用防振材10の上面全体の面積に対する、全ての収容孔1bの開口部の総面積の比率は、1.8%~10%、好ましくは3.0%~8.0%、より好ましくは3.5%~6.0%である。荷重支持材2の面積比率を1.8%以上に設定したのは、荷重支持材2の面積比率が1.8%未満の場合、重機23の荷重に防振材本体1が耐え得ることができず(重機上載用防振材10の耐荷重性能が劣り)、防振材本体1が潰れ、所望の防振性能が発現でき難い傾向にあるからである荷重支持材2の面積比率を10%以下に設定したのは、荷重支持材2の面積比率が10%を超えると、重機上載用防振材10の耐荷重性能は向上する一方、重機上載用防振材10に占める剛直部材である荷重支持材2の占有率が上がり、重機上載用防振材10としての防振性能が低下する傾向にあるからである。
【0034】
ただし、コストの観点から、荷重支持材2の面積比率はなるべく少ない方が好ましい。
【0035】
(荷重支持材2の他の態様)
図4の401~403は、荷重支持材2の他の態様を示す断面図である。
【0036】
厚み調整材2bが上下方向において2つの弾性体2aで挟持する状態で配置される代わりに、
図4の401に示す荷重支持材2Aのように、弾性体2aが厚み調整材2bの上側に上下に重なるように配置されてもよい。また、
図4の402に示す荷重支持材2Bのように、弾性体2aが厚み調整材2bの下側に上下に重なるように配置されてもよい。さらに、
図4の403に示すように、各荷重支持材2Cが複数の弾性体2aと複数の厚み調整材2bを有し、弾性体2aと厚み調整材2bとが交互に上下に重なるように配置されてもよい。
【0037】
続いて、重機上載用防振材10および重機上載用防振体20の素材及び物性等について説明する。
【0038】
(防振材本体1の素材の製造)
図3の301および302に示す防振材本体1の素材は、重機23の荷重により圧縮変形可能な緩衝体であれば、特に限定されない。防振材本体1の素材は、好ましくはポリオレフィン系樹脂発泡体である。当該ポリオレフィン系樹脂発泡体は、ビーズ発泡法、押出発泡法のいずれによって製造されてもよい。ポリオレフィン系樹脂発泡体は、製造コストの面においてビーズ発泡法によって製造されることが好ましい。
【0039】
ビーズ発泡法によって製造されたポリオレフィン系樹脂発泡体の表面全体には、緻密かつ滑らかなスキン層が形成される。そのため、ビーズ発泡法によって製造されたポリオレフィン系樹脂発泡体においては、カスの発生が少なく、防振材本体1の強度の向上が図れる。
【0040】
ビーズ発泡法によってポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する場合には、まず、ポリオレフィン系樹脂をビーズ状に発泡させてなる発泡性粒子を成形金型内に充填する。続いて、成形金型を所定の温度に加熱し、その後冷却する。そして、成形金型を型開きして、ポリオレフィン系樹脂発泡体を取り出す。
【0041】
押出発泡法によってポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する場合には、まず、必要に応じて気泡調整剤、難燃剤を加えたポリオレフィン系樹脂組成物を押出機に供給し、押出機にて加熱溶融する。続いて、溶融したポリオレフィン系樹脂組成物に発泡剤を圧入し、更に加熱溶融しつつ混練して均一流動組成物を生成する。そして、均一流動組成物をフラットダイ先端のダイオリフィスから押し出し、ガイダーと呼ばれる賦形装置に通すことにより、オレフィン系樹脂発泡体を取り出す。
【0042】
(防振材本体1の素材の形態)
防振材本体1の素材としてのポリオレフィン系樹脂発泡体は、表皮付きであっても、スライスしたものであってもよい。ポリオレフィン系樹脂発泡体は、粘着剤又は粘着テープ等により積層したものであってもよい。ポリオレフィン系樹脂発泡体の形状は、特に制限されないが、加工が容易であることから板状又はブロック状が好ましい。
【0043】
(防振材本体1の素材を構成するポリオレフィン系樹脂)
防振材本体1の素材であるポリオレフィン系樹脂発泡体を構成するポリオレフィン系樹脂(基材樹脂)の具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂;プロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂;等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂は、防振材本体1が所望の防振性能を十分に発揮できる点で好ましい。
【0044】
ポリオレフィン系樹脂の単量体(以下、オレフィン系単量体と称する場合もある)の具体例として、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン-1、イソブテン、ペンテン-1、3-メチル-ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、3,4-ジメチル-ブテン-1、ヘプテン-1、3-メチル-ヘキセン-1、オクテン-1、デセン-1などの炭素数2~12のα-オレフィン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
また、オレフィン系単量体と共重合性を有するその他の単量体としては、例えば、シクロペンテン、ノルボルネン、1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,8,8a,6-オクタヒドロナフタレン等の環状オレフィン;5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等のジエン;等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
(防振材本体1の素材に含まれる添加剤)
防振材本体1の素材であるポリオレフィン系樹脂発泡体は、必要に応じて、帯電防止剤、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。特に、防振材本体1のクリープ特性を改善するために、ポリオレフィン系樹脂発泡体は、無機系フィラーを含有することが好ましい。無機系フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、アルミナ、マイカ、又はガラスバルーン等が挙げられる。無機系フィラーの含有量は、求められるクリープ特性に応じて適宜に設定可能である。
【0047】
(防振材本体1の物性等)
防振材本体1(ポリオレフィン系樹脂発泡体)の動的ばね定数は、3×106N/m3~1.3×107N/m3、好ましくは5×106N/m3~9×106N/m3、より好ましくは6×106N/m3~8×106N/m3である。防振材本体1の動的ばね定数を3×106N/m3以上に設定したのは、防振材本体1の動的ばね定数が3×106N/m3未満であると、重機上載用防振材10によって重機23の荷重を十分に支持することが困難になるからである。防振材本体1の動的ばね定数を1.3×107N/m3以下に設定したのは、防振材本体1の動的ばね定数が1.3×107N/m3を超えると、防振性能が低下する傾向にあるからである。
【0048】
防振材本体1の厚みは、特に限定されないが、好ましくは25mm~300mm、より好ましくは50mm~200mm、さらに好ましくは100mm~150mmである。好ましい設定として、防振材本体1の厚みを25mm以上としたのは、防振材本体1の厚みが25mm未満であると、重機上載用防振材10の防振性能が低下する傾向にあるからである。好ましい設定として、防振材本体1の厚みを300mm以下としたのは、防振材本体1の厚みが300mmを超えると、重機上載用防振材10の防振性能が向上する傾向にあるものの、重機上載用防振材10のコストが増大する傾向にあるからである。
【0049】
なお、防振材本体1の厚みの調整は、単層からなる所定の厚みを呈する防振材本体1を適用する他に、同一厚み又は異なる厚みを呈する板状部材1aを二層以上積層することにより対応が可能である。
【0050】
防振材本体1の素材としてのポリオレフィン系樹脂発泡体の嵩密度は、特に限定されないが、好ましくは12kg/m3~45kg/m3、より好ましくは15kg/m3~40kg/m3、さらに好ましくは20kg/m3~30kg/m3である。好ましい物性の設定として、ポリオレフィン系樹脂発泡体の嵩密度を12kg/m3以上としたのは、ポリオレフィン系樹脂発泡体の嵩密度が12kg/m3未満であると、防振材本体1が重機23の積載荷重を支持するのに十分な強度を確保できないからである。好ましい物性の設定として、ポリオレフィン系樹脂発泡体の嵩密度を45kg/m3以下としたのは、ポリオレフィン系樹脂発泡体の嵩密度を45kg/m3を超えると、防振材本体1が硬くなりすぎて、防振材本体1の動的ばね定数が1.3×107N/m3を超えて、重機上載用防振材10が所望の防振性能及び遮音性能を発揮することが困難になるからである。
【0051】
重機上載用防振材10が所望の防振性能を発揮でき、防振材本体1の動的ばね定数が3×106N/m3~1.3×107N/m3となるように、上述のポリオレフィン系樹脂発泡体の嵩密度の範囲において、各種嵩密度が異なる板状部材1aを二層以上積層して防振材本体1の厚みを調整することもできる。
【0052】
防振材本体1の素材としてのポリオレフィン系樹脂発泡体の独立気泡率は、特に限定されないが、好ましくは、80%以上である。ポリオレフィン系樹脂発泡体の独立気泡率が80%以上であると、防振材本体1の動的ばね定数を3×106N/m3~1.3×107N/m3に容易に設定できる。
【0053】
好ましい実施形態では、防振材本体1は、板状部材1aの単層構造、または板状部材1aが二層以上積層した積層した積層構造を有する、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる。板状部材1aは、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる。また、上記積層構造を有するポリオレフィン系樹脂発泡体においては、板状部材1aの層間において、嵩密度が異なっていてもよい。
【0054】
防振材本体1は、動的ばね定数が3×106N/m3~1.3×107N/m3であることに加え、上述した物性の何れかを有していることが好ましい。特に好ましくは、防振材本体1は、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなり、上記動的ばね定数に関する物性に加え、嵩密度が12kg/m3~45kg/m3であり、かつ独立気泡率が80%以上である。
【0055】
(弾性体2aの素材及び物性等)
弾性体2aは、特に限定されないが、好ましくは防振性能を有するゴム系素材からなる。当該ゴム系素材としては、ニトリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンゴム、エチレン/酢酸ビニルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム等といった合成ゴムが挙げられる。これらの中から、防振性能を発現し、重機上載用防振材10の耐水性を向上することができ、コスト等経済性を鑑みると、弾性体2aの素材は、クロロプレンゴムであることが好ましい。
【0056】
各荷重支持材2の体積に対する弾性体2aの体積の比率(以下、弾性体2aの体積比率という)は、重機23の荷重による防振材本体1の圧縮変形に伴い荷重支持材2が重機23の荷重を支持できる比率であれば、特に限定されない。弾性体2aの体積比率は20%以上であることが好ましく、33%以上であることがより好ましい。好ましい設定として、弾性体2aの体積比率を20%以上としたのは、弾性体2aの体積比率が20%未満である場合、各荷重支持材2の体積に占める厚み調整材2bの体積比率が80%以上となり、荷重支持材2がより剛直となるため、重機上載用防振材10の防振性能が低下する傾向にあるからである。
【0057】
弾性体2aの体積比率の設定上限は、荷重支持材2が耐荷重性能および防振性能を両立して発現できれば、特に規定されない。しかし、弾性体2aの体積比率が上がれば、弾性体2aの使用量が増加する。弾性体2aは比較的高価であるため、弾性体2aの体積比率が上がれば重機上載用防振材10のコストが増加し経済的には良好であるとは言えない場合がある。それゆえ、弾性体2aの体積比率は、20%以上であり、かつ、なるべく低い割合であることが好ましい。弾性体2aの体積比率は、好ましくは84%以下、より好ましくは67%以下である。
【0058】
弾性体2aの動的ばね定数は、9×106N/m3~2.0×107N/m3、好ましくは1×107N/m3~1.6×107N/m3、より好ましくは1.0×107N/m3~1.3×107N/m3である。弾性体2aの動的ばね定数がこのような数値範囲に設定されることによって、重機上載用防振材10が所望の防振性能を発揮できる。
【0059】
25mm厚×100mm幅×100mm長の弾性体2aに対して1t荷重を加えたときの弾性体2aの歪み量(以下、弾性体2aの1t荷重に対する歪み量と称する場合がある)は、8%以下が好ましい。弾性体2aの1t荷重に対する歪み量を8%以下に設定したのは、弾性体2aの1t荷重に対する歪み量が8%を超えると、重機上載用防振材10の許容荷重を超えるためである。なお、「1t荷重に対する歪み量」は、JIS K6254により算出される。
【0060】
弾性体2aの硬度は、特に限定されないが、JIS K6301による硬度が63°~65°であることが好ましい。JIS K6301による硬度が上記数値範囲内であることにより、弾性体2aに対して適度な耐久性能(耐圧性能)を保持できる。
【0061】
弾性体2aの密度は、特に限定されないが、好ましくは90Kg/m3~135Kg/m3、より好ましくは115Kg/m3~125Kg/m3である。好ましい物性の設定として、弾性体2aの密度を90Kg/m3以上としたのは、弾性体2aの密度が90Kg/m3未満であると、弾性体2aが重機23の荷重を支持するのに十分な硬さを確保できないからである。好ましい物性の設定として、弾性体2aの密度を135Kg/m3以下としたのは、弾性体2aの密度が135Kg/m3を超えると、弾性体2aが硬くなりすぎて、重機上載用防振材10が所望の防振性能及び遮音性能を発揮することが困難になるからである。
【0062】
弾性体2aは、動的ばね定数が9×106N/m3~2.0×107N/m3であり、かつ1t荷重に対する歪み量が8%以下であることに加え、上述した物性の何れかを有していることが好ましい。特に好ましくは、弾性体2aは、合成ゴムからなり、上記動的ばね定数および1t荷重に対する歪み量に関する物性に加え、JIS K6301による硬度が63°~65°であり、かつ密度が90Kg/m3~135Kg/m3である。
【0063】
(厚み調整材2bの素材)
厚み調整材2bの素材は、重機23の荷重によって変形しない程度に剛直(高剛性)な素材であれば、特に限定されない。厚み調整材2bは、コンクリート、金属、木材、及び合成樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の素材からなることが好ましい。厚み調整材2bの素材として用いられる合成樹脂は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、又はABS樹脂が挙げられる。これらの樹脂には、フィラー等の補強材や酸化防止剤等の添加剤を含有させてもよい。厚み調整材2bの素材として用いられる合成樹脂は、剛直性を保持できれば、ソリッド状でなくとも、例えば、低い発泡倍率で発泡させたものでもよい。
【0064】
(外装材11)
外装材11の材料は、重機上載用防振材10を被覆することができれば、特に限定されない。外装材11の材料としては、例えば、重機上載用防振材10の製造に好適な、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂の他に、ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂;耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート等のポリカーボネート系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;アクリロニトリル系樹脂;アクリル系及びメタクリル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド系樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;スチレン-ブタジエン共重合体エラストマー、スチレン-イソプレン共重合体エラストマー及びそれらの水添物のスチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体エラストマー(SBBSともいう)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体エラストマー(SEBSともいう)等のスチレン系重合体エラストマー;イソブチレンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレン重合体ゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレンゴム、塩素化ポリプロピレンゴム等の合成ゴム;等が挙げられる。これらは、単体で用いてもよく、2以上の混合物として用いてもよい。また、外装材11の材料としては、ポリウレタン樹脂も挙げられる。
【0065】
例示した合成樹脂の中でも、重機上載用防振体20として緩衝性を付与する上では、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。また、床面との摩擦によりカスが発生し難い観点から、例示した合成樹脂の中でも、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。
【0066】
外装材11を形成する上記合成樹脂には、必要に応じて添加剤を必要量添加することができる。添加剤としは、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、気泡調整剤、収縮防止剤、導電性付与剤等が挙げられる。
【0067】
外装材11の形態としては、重機上載用防振材10を保護できる十分な強度を有するものであればよく、合成樹脂、ゴム、繊維等からなる網状物またはシート等が挙げられる。特に、外装材11の形態は、合成樹脂製シート、合成樹脂製網状物、合成繊維製シート(織布、不織布を含む)、合成繊維製網状物、ゴム製シート、ゴム製網状物、基布を樹脂またはゴムにて被覆してなる複合シート(例えば、ターポリンやゴム引き布)であることが好ましい。なお、埃、塵が付き難く、また引っ掛かりが少ない等の観点から、外装材11は、シート状であることが好ましく、帆布等の形態が好適である。
【0068】
外装材11がシートにて形成されている場合、その厚みは、シートを構成する素材にもよるが、0.3mm以上であることが重機上載用防振材10を保護できる観点から好ましい。かかる観点から、外装材11の厚みは、0.4mm以上がより好ましく、0.6mm以上が特に好ましい。一方、外装材11の厚みの上限は、柔軟性の観点から、1mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましく、0.7mm以下が更に好ましい。
【0069】
外装材11の表面には、接着、縫着等によって把手が取付けられていることが好ましい。この把手の取り付け位置は、外装材11の長辺の一辺からの距離が、重機上載用防振体20を胴と腕との間に挟んで抱え込んだ際に、手が把手に届く範囲内、例えば400~500mmであることが好ましい。
【0070】
また、外装材11の一端部には、一辺から該辺に隣り合う両辺に亘る範囲に重機上載用防振材10を出し入れする開口が形成されている。そして、この開口には、ファスナーが取付けられている。このファスナーの材質は、特に限定されない。錆びが生じないこと、および外装材を廃棄処理する場合に、ファスナーを取外すことなく処理することができることから、該ファスナーの材質は、合成樹脂製の面ファスナーであることが好ましい。
【0071】
上述した外装材11の開口から、重機上載用防振材10を挿入し、ファスナーによって開口を閉塞することによって、重機上載用防振体20(重機上載用防振マット)を得る。このように構成される重機上載用防振体20は、形状が矩形状の板体であって、少なくとも一辺の長さが1.2m以下であること、また、総重量が15kg以下であることが好適である。
【0072】
(重機上載用防振材10の特性)
重機上載用防振材10全体の動的ばね定数は、上述した防振材本体1、弾性体2a、および厚み調整材2bの特性に応じて、適宜設定可能である。重機上載用防振材10全体の動的ばね定数は、5.5×106N/m3~3.3×107N/m3であることが好ましく、6.0×106N/m3~2.3×107N/m3であることがより好ましい。好ましい設定として、重機上載用防振材10全体の動的ばね定数を5.5×106N/m3以上としたのは、重機上載用防振材10全体の動的ばね定数が5.5×106N/m3未満の場合、防振性能は向上する一方で、耐荷重性能が劣る傾向にあるからである。また、好ましい設定として、重機上載用防振材10全体の動的ばね定数を3.3×107N/m3以下としたのは、重機上載用防振材10全体の動的ばね定数が3.3×107N/m3を超える場合、防振性能が劣る傾向にあるためである。
【0073】
(作用効果)
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
【0074】
前述のように、防振材本体1が緩衝体であり、防振材本体1の各収容孔1b内に弾性体2aを有する荷重支持材2が配置されている。防振材本体1の動的ばね定数が、3×106N/m3~1.3×107N/m3であり、弾性体2aの動的ばね定数が、9×106N/m3~2×107N/m3である。また、防振材本体1の上面全体の面積に対する全ての荷重支持材2の上面の総面積の比率が1.8%~10%である。さらに、25mm厚×100mm幅×100mm長の弾性体2aに対して1t荷重を加えたときの弾性体2aの歪み量が8%以下である。そのため、重機上載用防振材10の耐荷重性能を十分に確保しつつ、重機上載用防振材10の防振性能を向上させることができる。
【0075】
また、弾性体2aの体積比率が20%以上であるため、重機上載用防振材10の防振性能の低下を抑えつつ、重機の荷重を支持することができる。
【0076】
つまり、本実施形態によれば、防振性能および耐荷重性能の両方に優れる重機上載用防振材10および重機上載用防振体20を実現できる。
【0077】
特に、本実施形態によれば、重機上載用防振体20、特に重機上載用防振材10の防振効果によって、重機23の作業時の挙動により発生する地面に対する振動を低減する効果(地盤を伝搬する振動のレベルを10dB程度以上低減できる)を発揮できるとともに、外装材11の破損や破れを防ぎ、再利用が可能なものとなる。
【実施例0078】
本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明の重機上載用防振材は、実施例及び比較例の説明に制限されるものではない。
【0079】
重機上載用防振材を構成する構成材料および重機上載用防振材の物性は、それぞれ以下の方法で測定した。
【0080】
(寸法)
防振材本体等の長さ及び幅については、メジャーを用いて寸法測定を実施した。防振材本体等の厚みについては、ダイヤルゲージを用いて寸法測定を実施した。
【0081】
(動的ばね定数)
JIS A 6322に準じて、下記の式より、前記方法で求めた固有振動数を用いて算出した。なお、式中fnは固有振動数(Hz)、Kdは動的ばね定数(N/m3)、Bは単位面積当たりの質量(Kg/m2)である。
fn=1/(2π)√(Kd/B)。
【0082】
(嵩密度および独立気泡率)
防振材本体の素材であるポリエチレン系樹脂発泡体の嵩密度は、ポリオレフィン系樹脂発泡体の重量を体積で除して算出した。ポリエチレン系樹脂発泡体の独立気泡率は、ASTM D 2856に記載の方法にて求めた。
【0083】
(弾性体の硬度)
JIS K6301に準じて、弾性体の硬度を測定した。
【0084】
(弾性体の1t荷重に対する歪み量)
25mm厚×100mm幅×100mm長の弾性体サンプルに対して、JIS K6254により求めた。
【0085】
(防振性能)
試験体である重機上載用防振材を床面に載置し、該重機上載用防振材の上に架台(敷鉄板)を敷置した後、錘を載置し、架台の任意の位置を加振点として、インパルスハンマーで加振した。一方で、床面に対しても任意の位置を加振点として、インパルスハンマーで加振した。そして、床面を加振した際の振動加速度と架台を加振した際の振動加速度との違いを計測し、防振性能としてその効果を評価した。
【0086】
指標:固有値からの振動低減量
◎ :13dB以上、
○ :10dB以上 13dB未満、
△ : 9dB以上 10dB未満、
× : 7dB以上 9dB未満、
××: 7dB未満。
【0087】
(耐荷重性能)
試験体である重機上載用防振材を床面に載置し、該重機上載用防振材の上に架台(敷鉄板)を敷置した後、架台上に錘を載置した。金尺にて該重機上載用防振材の四隅の厚みを測定し、錘載置前の重機上載用防振材の厚みに対する錘載置後の重機上載用防振材の厚みの変化量を算出した。算出変化量より、重機上載用防振材の荷重前初期厚みに対する変化率を求め、該変化率が8%となる許容荷重を求めた。
【0088】
指標
◎ :6,000Kg以上、
○ :4,500Kg以上 6,000Kg未満、
△ :3,800Kg以上 4,500Kg未満、
× :1,500Kg以上 3,800Kg未満、
××:1,500Kg未満。
【0089】
(実施例1)
本実施形態に係る重機上載用防振材10(
図3の301および302参照)を模擬した試験体1を試作した。
【0090】
具体的には、嵩密度25Kg/m3のポリエチレン系樹脂発泡体(東京ブイテック社製ビブランE-38、独立気泡率92%、幅900mm×長さ1200mm×厚み50mm、動的ばね定数2.3×107N/m3)を3枚積層した防振材本体(厚み150mm、動的ばね定数8×106N/m3)を準備した。
【0091】
そして、上記防振材本体の表面の4箇所(幅方向および長さ方向に4分割した端末部;幅方向の端部から225mm、長さ方向の端部から300mmの交点箇所)に100mm角の収容孔を設けた。
【0092】
次いで、クロロプレンゴム(ブリジストン ケービージー(株)社製)からなる弾性体(幅100mm×長さ100mm×厚み25mm、硬度65°)と、厚み調整材としてポリスチレン系樹脂からなる発泡倍率3倍の合成木材(幅100mm×長さ100mm×厚み100mm、8層構成品)とを準備した。そして、合成木材からなる厚み調整材に対して、厚み方向に挟み込む形でクロロプレンゴムからなる弾性体を2個配置し、厚み150mmの荷重支持材を4個準備した。なお、各荷重支持材の体積に対する弾性体の体積の比率は33%であった。また、各荷重支持材に備えられた弾性体の動的ばね定数は1×107N/m3であった。
【0093】
4つの荷重支持材を防振材本体表面の4箇所に設けられた収容孔に装填し試験体1を試作した。試験体1について、荷重支持材の面積比率は3.7%であった。
【0094】
また、試験体1について、重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、1.8×107N/m3であった。
【0095】
試験体1について、防振性能を評価した結果、振動低減量が12dBであった。また、試験体1について、耐荷重性能を評価した結果、許容荷重が4,500Kgであった。
【0096】
(実施例2)
嵩密度16Kg/m3のポリエチレン系樹脂発泡体(東京ブイテック社製ビブランE-60、独立気泡率90%、幅900mm×長さ1200mm×厚み50mm、動的ばね定数9×106N/m3)を3枚積層した防振材本体(厚み150mm、動的ばね定数3×106N/m3)を準備したこと以外、実施例1と同様の方法により、試験体2を試作した。試験体2について、重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、1.3×107N/m3であった。
【0097】
試験体2について、防振性能を評価した結果、振動低減量が13dBであった。また、試験体2について、耐荷重性能を評価した結果、許容荷重が4,200Kgであった。
【0098】
(実施例3)
嵩密度47Kg/m3のポリエチレン系樹脂発泡体(東京ブイテック社製ビブランE-20、独立気泡率95%、幅900mm×長さ1200mm×厚み50mm、動的ばね定数40×106N/m3)を3枚積層した防振材本体(厚み150mm、動的ばね定数13×106N/m3)を準備した。また、荷重支持材中の弾性体について、動的ばね定数が2×107N/m3となるよう弾性体を変更した。これらのこと以外は、実施例1と同様の方法により、試験体3を試作した。試験体3について、重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、3.3×107N/m3であった。
【0099】
試験体3について、防振性能を評価した結果、振動低減量が9dBであった。また、試験体3について、耐荷重性能を評価した結果、許容荷重が8,600Kgであった。
【0100】
(実施例4)
実施例3に対して、荷重支持材の収容孔数を2個とし、該収容孔それぞれに荷重支持材を装填した以外は、実施例3同様の方法により、試験体4を試作した。試験体4について、荷重支持材の面積比率は1.9%であった。試験体4について、重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、2.3×107N/m3であった。
【0101】
試験体4について、防振性能を評価した結果、振動低減量が11dBであった。また、試験体4について、耐荷重性能を評価した結果、許容荷重が4,600Kgであった。
【0102】
(実施例5)
嵩密度16Kg/m3のポリエチレン系樹脂発泡体(東京ブイテック社製ビブランE-60、独立気泡率90%、幅900mm×長さ1200mm×厚み50mm、動的ばね定数9×106N/m3)を3枚積層した防振材本体(厚み150mm、動的ばね定数3×106N/m3)を準備した。荷重支持材の収容孔を10個形成し、各収容孔に10個の荷重支持材を装填した。これらのこと以外は、実施例2と同様の方法により試験体5を試作した。試験体5について、荷重支持材の面積比率は9.3%であった。また、試験体5について、重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、2.8×107N/m3であった。
【0103】
試験体5について、防振性能を評価した結果、振動低減量が9dBであった。また、試験体5について、耐荷重性能を評価した結果、許容荷重が10,200Kgであった。
【0104】
(実施例6)
実施例2に対して、荷重支持材中の弾性体の体積比率を20%とした以外は、実施例2と同様の方法により試験体6を試作した。試験体6について、重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、2.3×107N/m3であった。
【0105】
試験体6について、防振性能を評価した結果、振動低減量が11dBであった。また、試験体6について、耐荷重性能を評価した結果、許容荷重が4,200Kgであった。
【0106】
(実施例7)
実施例2に対して、荷重支持材中の弾性体の体積比率を60%とした以外は、実施例2と同様の方法により試験体7を試作した。試験体7について、重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、9.7×106N/m3であった。
【0107】
試験体7について、防振性能を評価した結果、振動低減量が15dBであった。また、試験体7について、耐荷重性能を評価した結果、許容荷重が4,200Kgであった。
【0108】
(実施例8)
実施例2に対して、荷重支持材を弾性体のみで構成した以外は、実施例2と同様の方法により試験体8を試作した。試験体8について、重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、6.3×106N/m3であった。
【0109】
試験体8について、防振性能を評価した結果、振動低減量が16dBであった。また、試験体8について、耐荷重性能を評価した結果、許容荷重が4,200Kgであった。
【0110】
(比較例1)
実施例2に対して、荷重支持材の収容孔数を12個とし、該収容孔それぞれに荷重支持材を装填した以外は、実施例2と同様の方法により比較試験体1を試作した。比較試験体1について、荷重支持材の面積比率は11.1%であった。比較試験体1について、重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、3.3×107N/m3であった。
【0111】
比較試験体1について、防振性能を評価した結果、振動低減量が8dBであった。また、比較試験体1について、耐荷重性能を評価した結果、許容荷重が10,200Kgであった。
【0112】
(比較例2)
実施例2に対して、荷重支持材の収容孔数を1個として、該収容孔に荷重支持材を装填した以外は、実施例2と同様の方法により比較試験体2を試作した。比較試験体2について、荷重支持材の面積比率は0.9%であった。比較試験体2について、重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、5.5×106N/m3であった。
【0113】
比較試験体2について、防振性能を評価した結果、振動低減量が16dBであった。また、比較試験体2について、耐荷重性能を評価した結果、許容荷重が1,200Kgであった。
【0114】
(比較例3)
嵩密度127Kg/m3のポリエチレン系樹脂発泡体(独立気泡率98%、幅900mm×長さ1200mm×厚み50mm、動的ばね定数60×106N/m3)を3枚積層した防振材本体(厚み150mm、動的ばね定数20×106N/m3)を準備した。また、荷重支持材中の弾性体について、動的ばね定数が4×107N/m3となるよう荷重支持材を構成した。これらのこと以外は、実施例1と同様の方法により比較試験体3を試作した。比較試験体3について、重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、6.0×107N/m3であった。
【0115】
比較試験体3について、防振性能を評価した結果、振動低減量が4dBであった。また、比較試験体3について、耐荷重性能を評価した結果、許容荷重が16,600Kgであった。
【0116】
(比較例4)
実施例3に対して、荷重支持材の収容孔数を1個として、該収容孔に荷重支持材を装填した以外は、実施例3と同様の方法により比較試験体4を試作した。比較試験体4について、荷重支持材の面積比率は0.9%であった。比較試験体4について、重機上載用防振材全体の動的ばね定数は、1.5×107N/m3であった。
【0117】
比較試験体4について、防振性能を評価した結果、振動低減量が13dBであった。また、比較試験体4について、耐荷重性能を評価した結果、許容荷重が2,200Kgであった。
【0118】
なお、試験体1~7、および比較試験体1~4に使用される弾性体について、1t荷重に対する歪み量を測定した。その結果、試験体1~7、および比較試験体1~4において、全ての弾性体の1t荷重に対する歪み量が8%以下であった。
【0119】
試験体1~7、および比較試験体1~4の評価結果および総合評価を表1に示す。なお、総合評価は、以下の基準に基づくものである。
【0120】
〇:防振性能および耐荷重性能の評価が「〇」以上;防振性能および耐荷重性能のうち一方の評価が「◎」かつ他方の評価が「△」以上
△:防振性能および耐荷重性能のうち一方の評価が「〇」かつ他方の評価が「△」
×:防振性能および耐荷重性能のうち1つの評価が「×」以下。
【0121】
【0122】
(実施例1~8の総合評価)
表1に示すように、実施例1の場合には、防振性能についての評価は、〇になり、耐荷重性能についての評価は、〇になった。実施例1の場合には、重機上載用防振材の総合評価は、〇になった。
【0123】
実施例2の場合には、防振性能についての評価は、◎になり、耐荷重性能についての評価は、△になった。実施例2の場合には、重機上載用防振材の総合評価は、〇になった。
【0124】
実施例3の場合には、防振性能についての評価は、△になり、耐荷重性能についての評価は、◎になった。実施例3の場合には、重機上載用防振材の総合評価は、〇になった。
【0125】
実施例4の場合には、防振性能についての評価は、〇になり、耐荷重性能についての評価は、〇になった。実施例4の場合には、重機上載用防振材の総合評価は、〇になった。
【0126】
実施例5の場合には、防振性能についての評価は、△になり、耐荷重性能についての評価は、◎になった。実施例5の場合には、重機上載用防振材の総合評価は、〇になった。
【0127】
実施例6の場合には、防振性能についての評価は、〇になり、耐荷重性能についての評価は、△になった。実施例6の場合には、重機上載用防振材の総合評価は、△になった。
【0128】
実施例7の場合には、防振性能についての評価は、◎になり、耐荷重性能についての評価は、△になった。実施例7の場合には、重機上載用防振材の総合評価は、〇になった。
【0129】
実施例8の場合には、防振性能についての評価は、◎になり、耐荷重性能についての評価は、△になった。実施例8の場合には、重機上載用防振材の総合評価は、〇になった。
【0130】
(比較例1~4の総合評価)
表1に示すように、比較例1の場合には、防振性能についての評価は、×になり、耐荷重性能についての評価は、〇になった。比較例1の場合には、重機上載用防振材の総合評価は、×になった。
【0131】
比較例2の場合には、防振性能についての評価は、◎になり、耐荷重性能についての評価は、××になった。比較例2の場合には、重機上載用防振材の総合評価は、×になった。
【0132】
比較例3の場合には、防振性能についての評価は、××になり、耐荷重性能についての評価は、◎になった。比較例3の場合には、重機上載用防振材の総合評価は、×になった。
【0133】
比較例4の場合には、防振性能についての評価は、◎になり、耐荷重性能についての評価は、×になった。比較例4の場合には、重機上載用防振材の総合評価は、×になった。
【0134】
(まとめ)
実施例1~8のように、次の(i)~(iii)の要件を満たせば、重機上載用防振材が耐荷重性能および防振性能の両方に優れたものになることが判った。(i)荷重支持材の面積比率が1.8%~10%である、(ii)防防振材本体の動的ばね定数が、3×106N/m3~1.3×107N/m3である、(iii)弾性体の動的ばね定数が、9×106N/m3~2×107N/m3である。
【0135】
一方、比較例1~4のように、(i)~(iii)の要件を満たなければ、重機上載用防振材は、耐荷重性能および防振性能の何れかが低下することが判った。