(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180128
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】超電導マグネット装置及びその励磁方法
(51)【国際特許分類】
H01F 6/00 20060101AFI20231213BHJP
H01F 6/02 20060101ALI20231213BHJP
H10N 60/20 20230101ALI20231213BHJP
【FI】
H01F6/00 180
H01F6/00 150
H01F6/02
H01L39/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093258
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柳 圭
(72)【発明者】
【氏名】岩井 貞憲
(72)【発明者】
【氏名】宇都 達郎
【テーマコード(参考)】
4M114
【Fターム(参考)】
4M114AA15
4M114CC03
4M114DA02
4M114DA32
4M114DB52
4M114DB53
4M114DB54
4M114DB63
(57)【要約】
【課題】外部磁界効果により永久電流スイッチのクエンチ発生のリスクを軽減させる超電導マグネット装置を提供する。
【解決手段】超電導マグネット装置10は、磁場15を生成する主コイル12と、この主コイル12と閉回路を形成し常伝導状態/超電導状態が切り替え可能な永久電流スイッチ20と、を備え、この永久電流スイッチ20のインダクタンスは、主コイル12のインダクタンスの0.1%~5%の範囲、さらに好ましくは1%~5%の範囲に設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を生成する主コイルと、
前記主コイルと閉回路を形成し常伝導状態/超電導状態が切り替え可能な永久電流スイッチと、を備え、
前記永久電流スイッチのインダクタンスは、前記主コイルのインダクタンスの0.1%~5%の範囲に設定されている超電導マグネット装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導マグネット装置において、
前記永久電流スイッチのインダクタンスは、前記主コイルのインダクタンスの1%~5%の範囲に設定されている超電導マグネット装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の超電導マグネット装置において、
前記永久電流スイッチにおいて、折返点を始端に超電導線材が二条巻きして成る第1コイルと第2コイルを、それぞれ異なる巻数で構成した超電導マグネット装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の超電導マグネット装置において、
前記永久電流スイッチにおいて、互いに直列接続し磁束を逆方向に発生し打ち消し合う第1コイルと第2コイルを、同心配置した超電導マグネット装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の超電導マグネット装置において、
前記永久電流スイッチにおいて、互いに直列接続し磁束を逆方向に発生し打ち消し合う第1コイルと第2コイルを、積層配置した超電導マグネット装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の超電導マグネット装置の前記永久電流スイッチをOFF状態に設定するステップと、
定格値を超えて設定した励磁電流で前記主コイルを励磁するステップと、
前記永久電流スイッチをON状態に設定し、前記主コイルの励磁電源出力を下げて前記永久電流スイッチに磁気エネルギーを蓄積させるステップと、を含む超電導マグネット装置の励磁方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、永久電流スイッチを用いる超電導マグネット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CuNiマトリクスNbTi線材を巻回させた永久電流スイッチ(PCS)を用いる冷凍機伝導冷却式の超電導マグネット装置においては、この永久電流スイッチもしくはその周辺でクエンチの発生するリスクが高かった。これは、自己磁界効果によってNbTi線材の外側のフィラメントから電流飽和領域が形成され、磁気的不安定性が増すためと考えられている。
【0003】
このような磁気的不安定性を解消するために、永久電流スイッチに巻回される線材に横磁界を掃引し外部磁界効果を発揮させることで、線材に流れる電流を一様化する対応を取り得る。しかし、超電導マグネット装置における従来の永久電流スイッチは、それ自身が磁気エネルギーを持たないように無誘導巻されているため、自身では磁場を発生しない。また、永久電流モード(PCモード)移行中は主コイルから与えられる磁場は一定であり時間的に変化はしない。このため、従来の永久電流スイッチにおいては、元々、外部磁界効果が発揮されることはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超電導マグネット装置の励磁過程は、まず永久電流スイッチをOFF設定にし、励磁電源から励磁電流を供給して主コイルに磁場を発生させ安定させる。しかる後に、永久電流スイッチをON設定に切り替え、電源からの励磁電流の供給を徐々に減らし、永久電流モード(PCモード)に移行し安定させる、といった段階を経る。従来において、永久電流スイッチのクエンチ発生のリスクに対し、上述した励磁工程で横磁界を掃引させる等の外部磁界効果を発揮させるといった、リスクを軽減させる措置は特にとられてこなかった。
【0006】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、外部磁界効果により永久電流スイッチのクエンチ発生のリスクを軽減させる超電導マグネット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る超電導マグネット装置において、磁場を生成する主コイルと、前記主コイルと閉回路を形成し常伝導状態/超電導状態が切り替え可能な永久電流スイッチと、を備え、前記永久電流スイッチのインダクタンスは、前記主コイルのインダクタンスの0.1%~5%の範囲に設定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、外部磁界効果により永久電流スイッチのクエンチ発生のリスクを軽減させる超電導マグネット装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る超電導マグネット装置の構成を示す回路図。
【
図2】(A)超電導マグネット装置に適用される永久電流スイッチの第1実施例を示す構成図、(B)その縦断面図。
【
図3】(A)超電導マグネット装置に適用される永久電流スイッチの第2実施例を示す構成図、(B)その縦断面図。
【
図4】(A)超電導マグネット装置に適用される永久電流スイッチの第3実施例を示す構成図、(B)その縦断面図。
【
図5】(A)実施形態に係る超電導マグネット装置の励磁方法を説明するタイムチャート、(B)従来(永久電流スイッチが無誘導巻)の超電導マグネット装置の励磁工程を比較例として説明するタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る超電導マグネット装置10の構成を示す回路図である。このように超電導マグネット装置10は、磁場15を生成する主コイル12と、この主コイル12と閉回路を形成し常伝導状態/超電導状態が切り替え可能な永久電流スイッチ20と、を備えている。そして、この永久電流スイッチ20のインダクタンスは、主コイル12のインダクタンスの0.1%~5%の範囲、さらに好ましくは1%~5%の範囲に設定されている。
【0011】
主コイル12及び永久電流スイッチ20は、超電導状態に保たれる必要があるため、極低温冷凍機(図示略)やこれらの支持部材(図示略)とともに真空断熱容器19に収容されている。
【0012】
そして超電導マグネット装置10は、主コイル12に対し励磁電源11及び永久電流スイッチ20が並列接続している。励磁過程においては、主コイル12は励磁電源11により励磁される。永久電流モード(PCモード)においては、主コイル12と永久電流スイッチ20とが閉回路を形成する。
【0013】
主コイル12並びに永久電流スイッチ20の第1コイル21及び第2コイル22の超電導線材は、設定温度によって超電導状態と常伝導状態とが切り替わる超電導体(NbTi等)と、設定温度によらず常伝導状態を示すマトリクスと、から構成されている。なお、これらマトリクスと超電導体とは、断面視において海島状に形成されていたり、層状に形成されていたりする。
【0014】
主コイル12のマトリクスは電気抵抗率の低い無酸素銅で構成され、永久電流スイッチ20の第1コイル21及び第2コイル22のマトリクスは無酸素銅よりも電気抵抗率の高い銅合金(例えば、CuNi)で構成されている。このように第1コイル21及び第2コイル22のマトリクスの電気抵抗率を主コイル12のマトリクスよりも高くする理由は、永久電流スイッチ20がOFF設定される(電気抵抗体26で加熱する)励磁過程において、十分大きな電気抵抗値を有する必要があるためである。
【0015】
主コイル12は、超電導線材が一方向に巻回して構成され、電流が流れることで磁場15を生成する。永久電流スイッチ20は、磁束を逆方向に発生して互いに打ち消し合う第1コイル21及び第2コイル22が、有限値の合成インダクタンスをとるように直列接続され、通電すると合成磁束Φを発生する。そして永久電流スイッチ20の発熱部28は、第1コイル21及び第2コイル22に近接配置される電気抵抗体26と、この電気抵抗体26に供給する電力を制御して発熱させ超電導状態の第1コイル21及び第2コイル22を常伝導状態に変化させる電力制御器27と、を有している。
【0016】
ここで、第1コイル21の自己インダクタンスL1、第2コイル22の自己インダクタンスL2とすると、第1コイル21と第2コイル22の相互インダクタンスMは、次式(1)で表される。
M=k√(L1×L2) …(1) (結合係数k:-1<k<1)
【0017】
永久電流スイッチ20のインダクタンスは、第1コイル21及び第2コイル22の合成インダクタンスLYとして次式(2)で表される。その結果、永久電流スイッチ20は、永久電流の定格値IYに対し、次式(3)で表される合成磁束Φを発生する。
LY=L1+L2+2M …(2)
Φ=LY×IY …(3)
【0018】
ここで、上式(1)~(3)を検証する。従来の一般的な永久電流スイッチは、合成磁束Φを極力発生させないように、無誘導巻きで構成されている。このため、L1~L2,k~-1の条件となり、合成インダクタンスLY~0となる。本実施形態では、合成インダクタンスLYが、主コイル12のインダクタンスLXの0.1%~5%範囲の有限値に設定される。そのためには、第1コイル21及び第2コイル22それぞれの自己インダクタンスが異なるように設定するか(L1≠L2)、もしくはL1=L2であっても結合係数kを-1から離して設定することが考えられる。
【0019】
合成インダクタンスLYが、主コイル12のインダクタンスLXの0.1%未満であると、外部磁界効果が不十分となり、永久電流スイッチ20のクエンチ発生のリスクが軽減されない。また、合成インダクタンスLYが、主コイル12のインダクタンスLXの5%を超えると、励磁過程から永久電流モードに切り替えたときに永久電流スイッチに磁気エネルギーが移って、主コイルの電流値が励磁完了直後よりも小さくなってしまう。
【0020】
この合成インダクタンスLYが、主コイル12のインダクタンスLXの0.1%~5%範囲の有限値であることで、永久電流スイッチ20に発生した合成磁束Φは、第1コイル21、第2コイル22及びこれらの引出線を構成する超電導線材に磁場を経験させる。これにより、外部磁界効果により永久電流スイッチ20のクエンチ発生のリスクを軽減することができる。
【0021】
ここで、永久電流スイッチ20をOFF設定とし励磁電源11の出力を増加させる励磁過程で主コイル12に通電する励磁電流の設定値IXとし、永久電流スイッチ20をON設定にして励磁電源11の出力をゼロとした永久電流モード(PCモード)で主コイル12に通電する永久電流の定格値IYとする。すると、エネルギー保存則から、回路に蓄積されるエネルギーEは、次式(4)の関係を満たし、さらにLY/LX=mとして次式(5)に変形される。ただしインダクタンスLXとLYとの結合(相互インダクタンス)は無視した。
E=1/2×LX×IX
2 =1/2×LX×IY
2+1/2×LY×IY
2 …(4)
IX =√(1+m)×IY …(5)
【0022】
上記の式(4)に示すように、励磁過程において主コイル12に蓄積されるエネルギーは、PCモードで永久電流スイッチ20に蓄積されるエネルギーの分だけ過剰に付与されている。また上記の式(5)に示すように、励磁電流の設定値IXは、合成インダクタンスLYの平方根に比例して永久電流の定格値IYよりも大きな値をとることがわかる。このように、本実施形態では、主コイル12を構成する超電導線材に対しても過剰な磁場を経験させることができる。これにより、主コイル12のクエンチ発生のリスクを軽減させることもできる。
【0023】
図2(A)は超電導マグネット装置10に適用される永久電流スイッチ20a(20)の第1実施例を示す構成図であり、
図2(B)はその縦断面図である。永久電流スイッチ20aにおいては、折返点(図示略)を始端に超電導線材が二条巻きして成る第1コイル21と第2コイル22を、それぞれ異なる巻数で構成した。
【0024】
図2(B)に示すように、永久電流スイッチ20aは、軸体31とその両端に設けられたフランジ32とから構成されるボビン30に、超電導線材を巻回させて構成される。第1実施例の永久電流スイッチ20aは、超電導線材の途中部分の折返点を始端として、軸体31の側周面に二条巻きしていく。
【0025】
このように二条巻きされる一方の超電導線材が第1コイル21を構成し、他方の超電導線材が第2コイル22を構成する。そして、この側周面の全面に超電導線材を巻回し一層目としたところで、フランジ32の半径方向に積み増しして同様に二層目を巻回し、以降同じ要領で層数を積み増していく。これにより、断面視において第1コイル21と第2コイル22において電流方向が逆方向となる。
【0026】
そして、最初の数層(図示は10層)は第1コイル21と第2コイル22を一体化して形成していき、その後、第2コイル22の超電導線材のみを巻回し層数を積み増していく。これにより、上式(1)(2)において、結合係数k~-1で、第1コイル21に対し超電導線材の巻数が増えた分だけ第2コイル22の自己インダクタンスL2がL1よりも大きくなり、合成インダクタンスLYを有限値とすることができる。
【0027】
図3(A)は超電導マグネット装置10に適用される永久電流スイッチ20b(20)の第2実施例を示す構成図であり、
図3(B)はその縦断面図である。永久電流スイッチ20bにおいては、第1コイル21と第2コイル22を直列接続させ同心配置し、磁束が逆方向に発生させ互いに打ち消し合うようにした。
【0028】
図3(B)に示すように、第2実施例の永久電流スイッチ20bは、第1コイル21を構成する超電導線材と第2コイル22を構成する超電導線材とが、中心軸及び両端を揃えた状態で、それぞれ別々に独立に逆向きに巻回されている。これにより、上式(1)(2)において、結合係数kが-1より少し大きくなり、第1コイル21に対し径が大きく鎖交磁束量が多い分だけ第2コイル22の自己インダクタンスL
2が大きくなり、合成インダクタンスL
Yを有限値とすることができる。
【0029】
図4(A)は超電導マグネット装置10に適用される永久電流スイッチ20c(20)の第3実施例を示す構成図であり、
図4(B)はその縦断面図である。永久電流スイッチ20cにおいては、第1コイル21と第2コイル22を直列接続させ積層配置し、逆方向に磁束を発生させ互いに打ち消し合うようにした。
【0030】
図4(B)に示すように、第3実施例の永久電流スイッチ20cは、第1コイル21を構成する超電導線材と第2コイル22を構成する超電導線材とが、中心軸及び外周面を揃えた状態で積層し、それぞれ別々に独立に逆向きに巻回されている。これにより第1コイル21と第2コイル22とが同一の空間に配置されていないために、上式(1)(2)において、結合係数kが-1より大きくなり、第1コイル21と第2コイル22の自己インダクタンスL
1,L
2に差がなくても、合成インダクタンスL
Yを有限値とすることができる。
【0031】
図5(A)のタイムチャート(実施例)を参照して実施形態に係る超電導マグネット装置10の励磁方法を説明する(適宜、
図1参照)。
図5(B)のタイムチャート(比較例)は、従来の超電導マグネット装置の励磁方法を示している。なお、従来の超電導マグネット装置は、永久電流スイッチが無誘導巻であることを除いて、実施形態に係る超電導マグネット装置10と共通の構成を有している。
【0032】
まず主コイル12及び永久電流スイッチ20を共に超電導状態を示す温度まで冷却する。次に、発熱部28の電気抵抗体26を発熱Bさせ、永久電流スイッチ20の第1コイル21及び第2コイル22が常伝導状態を示す温度まで昇温させる。これにより永久電流スイッチ20はOFF設定となり、励磁電源11と主コイル12とが接続された回路が形成される。
【0033】
励磁過程においては、永久電流スイッチ20がOFF設定となった時点で励磁電源11を起動し、励磁電源11の電流値A1が正の傾きを有するように、主コイル12に電流を流す。そして、この励磁電流値A1が励磁電流の設定値IX(>IY)に到達したところで回路に流す励磁電流を一定にし、主コイル12の励磁過程が達成される。
【0034】
次に移行過程を説明する。励磁電源11の電流値A1が励磁電流の設定値Ixに到達した後、発熱部28の制御を無効にして発熱Bを停止すると、第1コイル21及び第2コイル22の温度は降下し超電導状態になる。これで、永久電流スイッチ20がON設定になる。
【0035】
次に、電流値A1が負の傾きを有するように励磁電源11が制御される。この過程において、主コイル12の磁場15の変化を妨げるよう主コイル12と永久電流スイッチ20との閉回路に電流が流れる。この電流値A2は、励磁電源11の電流値A1の減少に応じて増加し、励磁電流値A1が0になった時点において永久電流の定格値IYとなる。
【0036】
この時点で、永久電流の定格値IYが流れ続け、主コイル12は磁場15を発生する。そして、この永久電流の定格値IYが流れる永久電流スイッチ20にも合成磁束Φが発生し磁気エネルギーが蓄えられる。実施形態においては、励磁過程において励磁電流の設定値IXが付与され過励磁によって電流IYでの運転時よりも大きな電磁力を経験した主コイル12のクエンチ低減効果が付与される。そして、主コイル12の電流値A3は、移行過程を経て永久電流の定格値IXに自動設定され永久電流モード(PCモード)に入る。このとき、永久電流スイッチ20の経験磁場を変化させることができるために、永久電流スイッチ20にもクエンチ低減効果が付与される。
【0037】
一方において、比較例として
図5(B)に示す従来の超電導マグネット装置では、主コイル12を過励磁する為には、励磁過程において、励磁電源11の電流値A
1を設定値I
Xに引き上げてから永久電流の定格値I
Yにまで降下させるといった特別な操作が必要になる。また、「移行過程」を経て「永久電流モード」に移っても、永久電流スイッチ20の経験磁場を変化させて外部磁界効果を与えることができないため、永久電流スイッチ20にはクエンチ低減効果が付与されない。
【0038】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の超電導マグネット装置によれば、永久電流スイッチのインダクタンスは、前記主コイルのインダクタンスの0.1%~5%の範囲に設定されていることにより、外部磁界効果により永久電流スイッチのクエンチ発生のリスクを軽減させることが可能となる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
10…超電導マグネット装置、11…励磁電源、12…主コイル、15…磁場、19…真空断熱容器、20(20a,20b,20c)…永久電流スイッチ、21…第1コイル、22…第2コイル、26…電気抵抗体、27…電力制御器、28…発熱部、30…ボビン、31…軸体、32…フランジ、A1…励磁電源の電流値、A2…永久電流スイッチの電流値、A3…主コイルの電流値、B…発熱、IX…励磁電流の設定値、IY…永久電流の定格値、Φ…合成磁束、L1…第1コイルの自己インダクタンス、L2…第2コイルの自己インダクタンス、LX…主コイルのインダクタンス、LY…第1コイルと第2コイルの合成インダクタンス、M…第1コイルと第2コイルの相互インダクタンス、k…結合係数。