(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180138
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
B26D 1/20 20060101AFI20231213BHJP
B41J 11/70 20060101ALI20231213BHJP
B26D 7/26 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B26D1/20 A
B41J11/70
B26D7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093275
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 康介
【テーマコード(参考)】
2C058
3C021
3C027
【Fターム(参考)】
2C058AB04
2C058AB12
2C058AC07
2C058AE02
2C058AF31
2C058LA03
2C058LB10
2C058LB24
2C058LB32
2C058LB36
3C021JA03
3C021JA09
3C027SS02
3C027SS03
3C027SS06
(57)【要約】
【課題】可動刃が固定刃に乗り上げてしまった場合であっても、元の位置に復帰できるようにすることを目的とする。
【解決手段】画像記録装置は、記録媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送された記録媒体に画像を記録する画像記録部と、第1刃と第2刃との間に前記記録媒体を挟み込むことで前記記録媒体を切断する切断部とを備え、前記切断部は、前記記録媒体の搬送方向と交差する方向である切断方向に移動し、第1刃を有するカッターユニットと、前記切断方向に延伸して固定された第2刃とを含み、前記第2刃の端部に、前記第1刃の位置を、第1位置から第2位置へと変位可能とする変位部が設けられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された記録媒体に画像を記録する画像記録部と、
第1刃と第2刃との間に前記記録媒体を挟み込むことで前記記録媒体を切断する切断部とを備え、
前記切断部は、
前記記録媒体の搬送方向と交差する方向である切断方向に移動し、第1刃を有するカッターユニットと、
前記切断方向に延伸して固定された第2刃とを含み、
前記第2刃の端部に、前記第1刃の位置を、第1位置から第2位置へと変位可能とする変位部が設けられている、
ことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記変位部として、前記第2刃の端部に切り欠きが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
制御部と、
前記カッターユニットを移動させるための駆動力を供給するモータに係る信号を検知する検知部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記検知部にて検知した信号に基づいて、前記第1刃の前記第2刃への乗り上げが生じたか否かを判定し、前記乗り上げが生じたと判定した場合、前記カッターユニットを前記切り欠きが設けられている位置まで移動させる、
請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記モータの回転軸に取り付けられたエンコーダディスクを有するロータリーエンコーダを含み
前記制御部は、前記ロータリーエンコーダから出力される前記モータの回転数を表す信号に基づいて、前記乗り上げが生じたか否かを判定する
請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記モータの回転軸に取り付けられたエンコーダディスクを有するロータリーエンコーダを含み
前記制御部は、前記ロータリーエンコーダから出力される前記モータの回転量を表す信号に基づいて、前記乗り上げが生じたか否かを判定する
請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記モータを駆動させる電圧を取得する電圧取得部を含み、
前記制御部は、前記電圧を所定の閾値と比較することで、前記乗り上げが生じたか否かを判定する
請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記第1刃は、前記切断方向において、記録媒体切断時の前記カッターユニットが、第3位置から第4位置へ移動する方向である移動方向の前記第4位置側の端部が前記第3位置側の端部より前記第2刃に近づくように傾いており、
前記切り欠きは、前記第2刃の、前記第4位置側の端部に設けられている
請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記切り欠きが、前記第2刃の、切断方向の両端部に設けられている
請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記切り欠きには、角部をR形状に面取りした面取り部が含まれる
請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記第1刃は、丸刃と前記丸刃を固定して支持する支持部材を含んで構成され、
前記変位部として、前記第2刃の前記記録媒体の搬送方向と平行な面上に、前記支持部材をガイドするガイド部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項11】
前記第1刃は、前記切断方向において、記録媒体切断時の前記カッターユニットが、第3位置から第4位置へ移動する方向である移動方向の前記第4位置側の端部が前記第3位置側の端部より前記第2刃に近づくように傾いており、
前記ガイド部は、第2刃の、前記第3位置側の端部に設けられている
請求項10に記載の画像記録装置。
【請求項12】
前記ガイド部は、前記第2刃の一部を折り曲げることにより形成される
請求項10に記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、用紙等をカットするカッター機構を搭載したプリンタ等が知られている。一般的なカッター機構は、例えば、特許文献1に開示されるように、固定刃と固定刃に対してスライド可能な可動刃とで構成されている。そして、記録紙を切断する場合には、可動刃をスライドさせる。これにより、両刃の刃先間で記録紙を挟み込んで切断することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シートを切断する際に、可動刃が固定刃に乗り上げてしまうことがある。従来は、一度、可動刃が固定刃に乗り上げてしまうと、元の位置に復帰できない可能性がある。
【0005】
本開示は、可動刃が固定刃に乗り上げてしまった場合であっても、元の位置に復帰できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の画像記録装置は、記録媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送された記録媒体に画像を記録する画像記録部と、第1刃と第2刃との間に前記記録媒体を挟み込むことで前記記録媒体を切断する切断部とを備え、前記切断部は、前記記録媒体の搬送方向と交差する方向である切断方向に移動し、第1刃を有するカッターユニットと、前記切断方向に延伸して固定された第2刃とを含み、前記第2刃の端部に、前記第1刃の位置を、第1位置から第2位置へと変位可能とする変位部が設けられている、ことを特徴とする。
【0007】
本開示の画像記録装置は、前記変位部として、前記第2刃の端部に切り欠きが設けられているようにしてよい。
【0008】
本開示の画像記録装置は、制御部と、前記カッターユニットを移動させるための駆動力を供給するモータに係る信号を検知する検知部と、をさらに備え、前記制御部は、前記検知部にて検知した信号に基づいて、前記第1刃の前記第2刃への乗り上げが生じたか否かを判定し、前記乗り上げが生じたと判定した場合、前記カッターユニットを前記切り欠きが設けられている位置まで移動させるようにしてよい。
【0009】
本開示の画像記録装置は、前記検知部は、前記モータの回転軸に取り付けられたエンコーダディスクを有するロータリーエンコーダを含み、前記制御部は、前記ロータリーエンコーダから出力される前記モータの回転数を表す信号に基づいて、前記乗り上げが生じたか否かを判定するようにしてよい。
【0010】
本開示の画像記録装置は、前記検知部は、前記モータの回転軸に取り付けられたエンコーダディスクを有するロータリーエンコーダを含み、前記制御部は、前記ロータリーエンコーダから出力される前記モータの回転量を表す信号に基づいて、前記乗り上げが生じたか否かを判定するようにしてよい。
【0011】
本開示の画像記録装置は、前記検知部は、前記モータを駆動させる電圧を取得する電圧取得部を含み、前記制御部は、前記電圧を所定の閾値と比較することで、前記乗り上げが生じたか否かを判定するようにしてよい。
【0012】
本開示の画像記録装置は、前記第1刃は、前記切断方向において、記録媒体切断時の前記カッターユニットが、第3位置から第4位置へ移動する方向である移動方向の前記第4位置側の端部が前記第3位置側の端部より前記第2刃に近づくように傾いており、前記切り欠きは、前記第2刃の、前記第4位置側の端部に設けられているようにしてよい。
【0013】
本開示の画像記録装置は、前記切り欠きが、前記第2刃の、切断方向の両端部に設けられているようにしてよい。
【0014】
本開示の画像記録装置は、前記切り欠きには、角部をR形状に面取りした面取り部が含まれるようにしてよい。
【0015】
本開示の画像記録装置は、前記第1刃は、丸刃と前記丸刃を固定して支持する支持部材を含んで構成され、前記変位部として、前記第2刃の前記記録媒体の搬送方向と平行な面上に、前記支持部材をガイドするガイド部が設けられているようにしてよい。
【0016】
本開示の画像記録装置は、前記第1刃は、前記切断方向において、記録媒体切断時の前記カッターユニットが、第3位置から第4位置へ移動する方向である移動方向の前記第4位置側の端部が前記第3位置側の端部より前記第2刃に近づくように傾いており、前記ガイド部は、第2刃の、前記第3位置側の端部に設けられているようにしてよい。
【0017】
本開示の画像記録装置は、前記ガイド部は、前記第2刃の一部を折り曲げることにより形成されるようにしてよい。
【発明の効果】
【0018】
上記の構成によれば、画像記録装置には、第2刃の端部に変位部が設けられているので、第2刃に第1刃が乗りあがった場合、切り欠きに第1刃を落とすことで、元の位置に復帰させることができる。すなわち、可動刃が固定刃に乗り上げてしまった場合であっても、元の位置に復帰できる。
【0019】
上記の構成によれば、第2刃の一部に切り欠きが設けられているので、第2刃に第1刃が乗りあがった場合、切り欠きに第1刃を落とすことで、元の位置に復帰させることができる。
【0020】
上記の構成によれば、第1刃が第2刃に乗り上げたときだけ、カッターユニットを切り欠きまで移動させるようにすることができるので、第1刃が第2刃に乗り上げていないときの移動距離を短くすることができる。その結果、印刷に係る時間を短縮することが可能となる。
【0021】
上記の構成によれば、ロータリーエンコーダから出力される信号に基づいて乗り上げを検知できるので、画像記録装置の既存の構成に対してわずかな変更を加えるだけで検知部の機能を実現することができる。
【0022】
上記の構成によれば、ロータリーエンコーダから出力される信号に基づいて乗り上げを検知できるので、画像記録装置の既存の構成に対してわずかな変更を加えるだけで検知部の機能を実現することができる。
【0023】
上記の構成によれば、モータを駆動させる電圧を表す信号によってモータの負荷を検知することができるので、より正確に乗り上げを検知することができる。
【0024】
上記の構成によれば、第1刃をこのように傾けることにより、第1刃を元の位置に戻すときに、第1刃の刃先が第2刃に食い込む状態となるのを回避することができ、第1刃の刃先が傷つくことを回避することができる。
【0025】
上記の構成によれば、第2刃に第1刃が乗りあがった場合、第2刃に第1刃が乗りあがった位置から近い方の切り欠きに第1刃を移動させて落とすことができる。よって、第1刃の刃先が第2刃と接触しながら移動する距離を短くすることができる。
【0026】
上記の構成によれば、第1刃を切り欠きに落とした後、元の位置に戻すときに、前記第1刃の刃先が第2刃と接触する部分を面取りすることで、第1刃の刃先が傷つくことを回避することができる。
【0027】
上記の構成によれば、第2刃のシートの搬送方向と平行な面上に、支持部材をガイドするガイド部が設けられているので、第2刃に第1刃が乗りあがった場合、支持部材をガイドして第1刃を落とすことで、第1刃を元の位置に復帰させることができる。
【0028】
上記の構成によれば、第1刃をこのように傾けることにより、ガイド部による支持部材のガイド効果をより高めることができる。
【0029】
上記の構成によれば、第2刃とガイド部とを単一の部材によって形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像記録装置の外観斜視図である。
【
図2】画像記録装置の構造を模式的に示す図である。
【
図3】画像記録装置の主要構成を示す平面図である。
【
図5】画像記録装置のガイドレールの一部を示す拡大断面図である。
【
図7】
図7(A)は、固定刃を、上方向から見た図である。
図7(B)は、固定刃を、左右方向のどちらか一方(例えば、右方向)から見た図である。
【
図9】丸刃の傾きと切り欠きの位置を説明する図である。
【
図10】
図10(A)は、固定刃を、上方向から見た図である。
図10(B)は、固定刃を、左右方向のどちらか一方(例えば、右方向)から見た図である。
【
図11】丸刃の傾きとガイド部の位置を説明する図である。
【
図12】
図12(A)は、固定刃を、上方向から見た図である。
図12(B)は、固定刃を、前方から見た図である。
【
図13】固定刃を左右方向の右方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔実施形態1〕
<画像記録装置の構成>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明において、プリンタ部11において開口13が向く向きを前向き51とし、前向きの反対向きを後向き52とする。前方と後方とを合せて前後方向51、52とする。前後方向51、52と直交する上下の方向を上下方向53、54とする。前後方向51、52および上下方向53、54と直交する方向を左右方向55、56とする。
【0032】
図1に示されるように、画像記録装置10は、下部に設けられたプリンタ部11と、上部に設けられたスキャナ部12と、を一体的に備えた複合機である。画像記録装置10は、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。なお、画像記録装置10は、必ずしもスキャナ部12を有している必要はなく、スキャン機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして実施されてもよい。
【0033】
画像記録装置10は、主にコンピュータなどの外部情報機器(不図示)と接続された状態で使用される。プリンタ部11は、この外部情報機器から受信した印刷データやスキャナ部12で読み取られた原稿の画像データに基づいて、シート16に画像を記録する。すなわち、シート16は、画像を記録する記録媒体として用いられる。画像記録装置10の前面上部に操作パネル19が設けられている。操作パネル19は、各種情報を表示するディスプレイおよび情報の入力を受け付ける入力キーを備えている。画像記録装置10は、操作パネル19から入力された指示情報又は外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどを通じて送信される指示情報に基づいて動作する。
【0034】
スキャナ部12は、プリンタ部11の上方に位置する。スキャナ部12は、いわゆるフラットベッドスキャナである。スキャナ部12は、プリンタ部11の上方に設けられたスキャナ本体12aと、スキャナ本体12aの上方に設けられた原稿カバー12bとを有する。スキャナ本体12aの上面には、原稿が載置されるプラテンガラス(非図示)が設けられている。スキャナ本体12aの内部には、プラテンガラス上の原稿の画像を光学的に読み取り可能なイメージセンサ(図示せず)が設けられている。原稿カバー12bには、画像が読み取られる複数枚の原稿を1枚ずつピックアップして搬送する自動搬送機構であるADF12cが設けられている。
【0035】
[プリンタ部11]
以下、
図1乃至
図3を参照してプリンタ部11の構成が説明される。なお、
図2では、説明の簡略化のために給紙カセット14の図示が省略されている。
【0036】
図1、
図2に示されるように、プリンタ部11は、筐体20を有する。筐体20には、給紙カセット14、給紙カセット15、記録部17(画像記録部の一例)、切断部45、駆動機構101、その他の機能部品が配置されている。筐体20の前面における操作パネル19の下方には、開口13が位置している。開口13は、筐体20の前面において左右方向55、56の略中央に位置している。開口13は、左右方向55、56に長い矩形状に形成されている。開口13は、筐体20の前面において上部から下端まで至っている。
【0037】
筐体20は、開口13から後方へ延びる内部空間20aを有する。内部空間20aは、後述の搬送路21に連通している。内部空間20aの上端は、開口13の上端から後向き52へ延びる上壁部71によって区画されている。内部空間20aは、筐体20の下端まで拡がっている。上壁部71は、操作パネル19の後方に配置された基板収容スペース65と内部空間20aとを仕切っている。詳細は後述するが、基板収容スペース65には、操作パネル19や記録ヘッド37やセンサ38、ロータリーエンコーダ120、モータの駆動回路などと電気的に接続される電子回路が実装される制御基板66が収容される。制御基板66は、画像記録装置10の動作を制御する制御部として機能する。
【0038】
筐体20の前面において、開口13の右方には、開閉カバー41が取り付けられている。
図2および
図3に示されるように、開閉カバー41が開かれると、カートリッジ装着空間が開放され、インクを貯留するインクカートリッジ40が筐体20に対して装着または取り外し可能となる。インクカートリッジ40は、筐体20において記録部17よりも前方に位置する。本実施形態では、色が異なる4種類のインクをそれぞれ保持する4個のインクカートリッジ40が筐体20に装着可能である。各インクカートリッジ40は、チューブ44を通じて記録部17の記録ヘッド37へインクを供給する。
【0039】
図1に示されるように、給紙カセット14および給紙カセット15は、開口13へ挿入された状態で筐体20に装着される。給紙カセット14および給紙カセット15は、筐体20に対して前後方向51、52に沿って挿抜可能である。給紙カセット14は、筐体20に装着された状態において給紙カセット15の下方に位置する。
図2に示されるように、給紙カセット15は、定形のシート16(記録媒体の一例)を複数枚が積載された状態で収容する。シート16の定形とは、日本工業規格のA3サイズ、A4サイズ、B5サイズなどである。給紙カセット15の上部には、排紙トレイ18が位置する。排紙トレイ18は、搬送路21から排出されたシートを支持する。なお、本実施形態では2種類の給紙カセット14および給紙カセット15が設けられているが、給紙カセット14は省略されてもよい。
【0040】
給紙カセット15は、複数のシート16を保持する。給紙カセット15は、画像記録装置10の後方側(
図2における左側)の一部が開口された容器状に形成されている。シート16は、給紙カセット15の内部空間に積層状態で保持される。給紙カセット15の排紙トレイ18は、画像記録装置10の前面側(
図2における右側)に形成されている。
図2は、給紙カセット15が筐体20に挿入された状態を示している。
【0041】
図2に示されるように、筐体20には、給紙カセット15から排紙トレイ18へ搬送路21に沿ってシート16を搬送する搬送部43が配置されている。搬送路21は、筐体20の内部において、給紙カセット15から上向き53かつ前向き51へ湾曲しながらUターンして記録ヘッド37に至り、記録ヘッド37から排紙トレイ18へ向かって前向き51へ直線的に延びる所謂Uターンパスである。このように、画像記録装置10には、記録媒体であるシート16を搬送する搬送部43が設けられている。
【0042】
搬送路21の下流端は、内部空間20aに連通している。給紙カセット15から排紙トレイ18へ向かう向きを搬送方向P1(
図2参照、搬送向きとも称する)と称する。搬送路21には搬送向きP1の上流から、PFローラ対25、記録ヘッド37、およびプラテン36、PFローラ対25、切断部45、第2排出ローラ対28が順に位置する。
【0043】
給紙ローラ32は、給紙カセット15の上方に位置する。給紙ローラ32は、アーム33の先端部に、左右方向55、56を軸線方向として回動可能に設けられている。アーム33の基端部は軸34周りに回動可能である。アーム33が回動することにより、給紙ローラ32が給紙カセット15に対して接離する方向へ移動する。アーム33は、給紙ローラ32の重量により、給紙カセット15へ近づく向きへ回動される。これにより、給紙カセット15に積層状態で載置された複数枚のシート16のうち最上位のシート16に給紙ローラ32が接触する。この状態で給紙ローラ32が回転すると、最上位のシート16が給紙カセット15から搬送路21に送り出される。
【0044】
PFローラ対25は、搬送路21の湾曲部分の搬送向きP1(搬送方向の一例)の下流端付近に位置する。PFローラ対25は、左右方向55、56を軸線方向として回動可能である。
【0045】
第1排出ローラ対27は、搬送路21においてPFローラ対25および記録ヘッド37の搬送向きP1の下流に位置する。第1排出ローラ対27は、不図示のモータの駆動力が伝達されてPFローラ対25と同期して回転する。PFローラ対25により搬送されるシート16は、第1排出ローラ対に挟まれて搬送向きP1へ搬送される。
【0046】
第2排出ローラ対28は、搬送路21において切断部45よりも搬送向きP1の下流に位置する。第2排出ローラ対28は、不図示のモータの駆動力が伝達されて回転する。第2排出ローラ対28は、第1排出ローラ対27に挟まれて搬送向きP1に搬送されるシート16を排紙トレイ18へ搬送する。
【0047】
図2に示されるように、記録部17は、搬送路21において、PFローラ対25と第1排出ローラ対27との間に位置する。記録部17は、搬送路21の上方に位置するキャリッジ35と、搬送路21の下方に位置するプラテン36と、キャリッジ35に搭載された記録ヘッド37と、を有する。
【0048】
図3に示されるように、記録ヘッド37は、インクカートリッジ40からチューブ44を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給され、各インクを微小なインク滴として吐出するいわゆるインクジェット方式のものである。キャリッジ35が左右方向55、56に往復動される間に、記録ヘッド37からインク滴が吐出されることにより、プラテン36上を搬送されるシート16に画像記録が行われる。このように、画像記録装置10には、記録媒体であるシート16に画像を記録する記録部17が設けられている。
【0049】
図3に示されるように、キャリッジ35は、前後方向51、52に離れておりそれぞれが左右方向55、56へ延びるガイドフレーム61、62に支持されている。キャリッジ35は、ガイドフレーム61、62を跨ぐようにして左右方向55、56に往復移動可能に載置されている。後方に配置されたガイドフレーム61は、左右方向55、56の長さがキャリッジ35の往復動範囲よりも長い平板状のものであり、ガイドフレーム61の上面が、キャリッジ35の後端部を摺動自在に支持している。
【0050】
ガイドフレーム62の上面には、ベルト駆動機構46が配置されている。ベルト駆動機構46は、搬送路21の左右方向55、56の両端付近にそれぞれ設けられたプーリ47,48の間に、内側に歯が設けられた無端環状のベルト49が張架されてなる。プーリ47の軸に駆動源であるモータ(不図示)から駆動力が入力されて、プーリ47が回転される。プーリ47の回転によりベルト49が周運動し、その際にプーリ48が従動する。なお、ベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ35に固着するものであってもよい。
【0051】
キャリッジ35は、ベルト49に固着されている。ベルト49が周運動すると、キャリッジ35が縁部63を基準としてガイドフレーム61、62上を往復動する。このようなキャリッジ35に記録ヘッド37が搭載されて、記録ヘッド37が、搬送路21の左右方向55、56を主走査方向として往復動可能となっている。
【0052】
チューブ44は、合成樹脂製のチューブであり、キャリッジ35の往復動に従って撓む可撓性を有する。チューブ44は、4つのインクカートリッジ40に対応して4本が設けられている。各チューブ44の一端は、インクカートリッジ40を収容するケース(不図示)に接続されている。チューブ44の他端は、キャリッジ35において記録ヘッド37と接続されている。
【0053】
図2、
図3に示されるように、記録部17の前方において搬送路21の上方に切断部45が位置している。切断部45は、停止時において画像記録領域A1の左方に位置している。画像記録領域A1は、キャリッジ35と共に往復動される記録ヘッド37からインクが吐出されて、シート16に画像記録が行われる最大幅である。プリンタ部11により記録可能な最大サイズがA4サイズであれば、画像記録領域A1は、A4サイズの幅より若干広い。
【0054】
切断部45は、搬送部43により搬送されるシート16を搬送方向P1と交差する移動方向P2(
図3参照)に沿って切断する。本実施形態では、移動方向P2は、左右方向55,56と平行である。切断部45は、画像記録領域A1より左方の停止位置(
図3において破線で示される切断部45の位置)から右向き56に移動することによってシート16を切断する。切断部45の切断により、例えば、1枚のA4サイズのシート16が2枚のA5サイズのシート16に切断される。
【0055】
切断部45は、左右方向55、56に沿って延びるガイドレール81と、ガイドレール81に案内されて移動するカッターユニット82と、カッターユニット82に搭載される丸刃83と、固定刃95と、を備えている。なお、
図2においては、切断部45は、詳細な構成が省略されて簡略的に示されている。
【0056】
ガイドレール81は、左右方向55、56に沿って延びる扁平形状である。ガイドレール81は、移動方向P2にカッターユニット82を案内する。カッターユニット82は、駆動機構101によって駆動される。
【0057】
駆動機構101は、後述するように、回転軸110と、ギヤ115と、駆動プーリ102および従動プーリ103と、駆動プーリ102及び従動プーリ103に掛け渡されたベルト90と、を有する。駆動機構101は、モータ116の駆動力をカッターユニット82に伝達する。ガイドレール81の左右方向55、56の長さは、搬送路21の左右方向55、56の長さよりも長い。ガイドレール81の左右端は、画像記録領域A1よりも外方へ延びている。
【0058】
図4は、切断部45の構成を示す図であり、切断部を前後方向51,52の後方52から見た図である。同図に示されるように、カッターユニット82は、丸刃83を保持する。丸刃83は、カッターユニット82の下端から下方へ突出した状態で支持されている。丸刃83は円盤形状であり、前後方向51,52を軸線方向として、カッターユニット82によって回転可能に支持されている。丸刃83は、カッターユニット82とともに移動可能に構成されているので、可動刃とも称される。
【0059】
また、同図に示されるように、カッターユニット82の下方に、固定刃95が位置する。固定刃95は、第2排出ローラ対28の回転軸が支持されるサイドフレームに支持され、画像記録領域A1に渡って左右方向55,56に延びている。固定刃95の刃先は、丸刃83に対して後方から当接する。シート16は、丸刃83と固定刃95とに挟み込まれることによって切断される。このように、画像記録装置10には、丸刃83と固定刃95との間に記録媒体であるシート16を挟み込むことで、シート16を切断する切断部45が設けられている。
【0060】
また、カッターユニット82は、その一部がガイドレール81に組付けられている。カッターユニット82は、駆動機構101が有するベルト90の周運動により、ガイドレール81の摺動部104に摺動しながら左右方向55、56に往復動する。すなわち、切断部45によりシート16を切断するとき、カッターユニット82は、シート16の搬送方向P1と交差する方向である左右方向55、56に移動することになる。このため、左右方向55、56は、切断方向とも称される。
【0061】
このように、丸刃83は、通常、左右方向55、56に延伸する固定刃95の刃先と平行に移動することになる。ただし、シート16を切断する際に、丸刃83が固定刃95に乗り上げてしまうことがある。詳細は後述するが、固定刃95の一部(例えば、端部)には、乗り上げた丸刃83の位置(後述する第1位置)を元の位置(後述する第2位置)に変位させるための変位部が設けられている。
【0062】
すなわち、切断部45は、シート16の搬送方向と交差する方向である切断方向に移動し、丸刃83を有するカッターユニット82と、切断方向に延伸して固定された固定刃95とを含み、固定刃95の端部に、丸刃83の位置を、第1位置から第2位置へと変位可能とする変位部が設けられている。
【0063】
図5は、画像記録装置10のガイドレール81の一部を示す拡大断面図である。ガイドレール81は、摺動部104と、支持部105と、連結部106と、を有している。本実施形態では、摺動部104、支持部105、および連結部106は、1枚の鋼板が折り曲げ加工されて形成されている。ガイドレール81の左右方向55、56の両端部は、第2排出ローラ対28の回転軸が支持されるサイドフレームに固定されている。
【0064】
図5に示されるように、モータ116は、支持部105の下方に配置されている。モータ116の回転は、駆動ギヤ118を介してギヤ115に伝達される。モータ116の回転軸110は、支持部105上において、モータ116よりも連結部106に近い位置に配置されている。回転軸110は、上下方向53、54を軸線方向として回転する。
【0065】
回転軸110にはギヤ115が設けられている。ギヤ115は駆動ギヤ118と噛合しており、モータ116から駆動力が伝達されて回転する。ギヤ115の径は、駆動ギヤ118の径より大きく、モータ116の回転は、回転数を減速して回転軸110に伝達される。以下、給紙用モータ、搬送用モータなどのモータと区別するため、適宜、モータ116をカッターユニット用モータ116と称することにする。
【0066】
駆動プーリ102及び従動プーリ103は、ガイドレール81における左右方向55、56の両端部に配置されている。駆動プーリ102は、回転軸110においてギヤ115の上方に設けられている。したがって、駆動プーリ102は、回転軸110を中心としてギヤ115と同期して回転する。従動プーリ103は、回転軸110と平行な支軸107に支持されている。支軸107は、ガイドレールおよびカバー123に設けられた軸受け(不図示)によって支持されている。したがって、駆動プーリ102および従動プーリ103は、上下方向53、54を軸線方向としてそれぞれ回転する。
【0067】
ベルト90は、環状の無端ベルトであり、駆動プーリ102および従動プーリ103に掛け渡されている。ベルト90は、カッターユニット82に連結されている。駆動プーリ102が回転すると、ベルト90が周運動し、従動プーリ103が従動して回転する。
【0068】
[ロータリーエンコーダ120]
図3および
図5に示されるように、切断部45は、カッターユニット82の切断方向への移動量を検知するためのロータリーエンコーダ120を有している。ロータリーエンコーダ120は、モータ116の回転軸110の回転によってパルス信号を出力する。ロータリーエンコーダ120は、モータ116の回転軸110に取り付けられ、回転軸110とともに回転するエンコーダディスク121と、エンコーダディスク121を厚み方向から挟むように設けられた光学センサ122と、を有する。
【0069】
エンコーダディスク121は、回転軸110の上端に取り付けられている。エンコーダディスク121は、上下方向53、54を軸線方向として回転する。エンコーダディスク121は円盤形状であり、光が透過される透過部と光が透過されない非透過部とが円周方向に等ピッチで交互に配置されている。光学センサ122は、エンコーダディスク121に向けて発光部から光を照射し、エンコーダディスク121を通過した光を受光部で受光する。
【0070】
エンコーダディスク121および光学センサ122の上方には、カバー123が配置されている。カバー123は、ガイドレール81のほぼ全体を上方から覆ってガイドレール81に固定されている。したがって、カバー123は、エンコーダディスク121および光学センサ122の全体を覆う。
【0071】
図6は、制御基板66の構成例を示すブロック図である。制御基板66は、CPU(Central Processing Unit)311、ROM(Read Only Memory)312、記憶部の一例であるRAM(Random Access Memory)313、EEPROM(登録商標)314、及びASIC315を有し、これらが内部バス316によって接続されている。ROM312には、CPU311が各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。
【0072】
RAM313は、CPU311が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、又はデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM314には、電源オフ後も保持すべき設定情報が格納される。制御基板66は、ROM312から読み出した制御プログラムに基づいて、給紙用モータ、搬送用モータ、キャリッジモータ用モータ、記録ヘッド37、及びカッターユニット用モータ116等を制御する。
【0073】
ASIC315には、給紙用モータ、搬送用モータ、キャリッジ用モータ、カッターユニット用モータ116、およびロータリーエンコーダ120が接続されている。ASIC315は、各モータに駆動電流または駆動電圧を供給する。制御基板66は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって、各モータの回転を制御する。また、ASIC315は、ロータリーエンコーダ120から出力される信号を検知する。このように、画像記録装置10は、カッターユニット82を移動させるための駆動力を供給するモータ116に係る信号を検知する検知部を有する。ここで、検知部は、一例としてASIC315、ロータリーエンコーダ120などによって構成される。
【0074】
また、ASIC315には、記録ヘッド37、センサ38、および操作パネル19が接続されている。制御基板66は、記録ヘッド37の振動素子に駆動電圧を印加することによって、ノズルからインク滴を吐出させる。さらに、ASIC315は、センサ38から出力される信号、操作パネル19から出力される信号などを検知する。
【0075】
上述したように、丸刃83は、通常、固定刃95の刃先と平行に移動するが、丸刃83が固定刃95に乗り上げてしまうことがある。このような場合、制御基板66は、検知部により検知された、モータ116に係る信号基づいて、丸刃83の固定刃95への乗り上げが生じたか否かを判定する。
【0076】
例えば、ロータリーエンコーダ120から出力される信号に基づいて、丸刃83の固定刃95への乗り上げが生じたか否かが判定される。例えば、ロータリーエンコーダ120から出力される信号であって、カッターユニット用モータ116の回転数または回転量を表す信号に基づいて丸刃83が固定刃95に乗り上げか否かが判定される。
【0077】
例えば、丸刃83が固定刃95に乗り上げた場合、カッターユニット82の移動速度が遅くなるため、カッターユニット用モータ116の単位時間当たりの回転数が低下する。そこで、制御基板66は、ロータリーエンコーダ120から出力されるモータ116の回転数を表す信号に基づいて、乗り上げが生じたか否かを判定するようにしてもよい。
【0078】
また、例えば、丸刃83が固定刃95に乗り上げた場合、カッターユニット82がほぼ移動できない状態になるため、カッターユニット用モータ116の回転量の変化が小さくなる。そこで、制御基板66は、ロータリーエンコーダ120から出力されるモータ116の回転量を表す信号に基づいて、乗り上げが生じたか否かを判定するようにしてもよい。
【0079】
さらに、制御基板66は、カッターユニット用モータ116の駆動電流または駆動電圧に基づいて丸刃83が固定刃95に乗り上げたか否かを判定するようにしてもよい。例えば、丸刃83が固定刃95に乗り上げた場合、丸刃83が固定刃95に強く押し付けられ、カッターユニットに移動が抑制され、結果としてカッターユニット用モータ116の駆動電流または駆動電圧が大きくなる。この場合、例えば、検知部を構成するASIC315において、モータ116の駆動電圧を取得し、取得された駆動電圧を閾値と比較することにより、丸刃83が固定刃95に乗り上げたか否かが判定される。すなわち、検知部は、モータ116を駆動させる電圧を取得する電圧取得部を含み、制御基板66は、電圧を所定の閾値と比較することで、乗り上げが生じたか否かを判定するようにしてもよい。
【0080】
≪固定刃の構成と丸刃の動き≫
[固定刃に切り欠きを設ける例]
次に、
図7を参照して、丸刃83が固定刃95に乗り上げたとき、乗り上げた丸刃83の位置を元の位置に変位させるため構成の例について説明する。
図7(A)は、固定刃95を、上下方向53、54の上方向53から見た図である。
図7(B)は、固定刃95を、左右方向55、56のどちらか一方(例えば、右方向56)から見た図である。
【0081】
図7(A)において、図中下側が固定刃95の刃先となり、シート16を切断するとき、丸刃83は、固定刃95の刃先に沿って図中左右に移動する。ここでは、シート16の切断を開始する前は、丸刃83が図中左に位置し、丸刃が図中右に向かって移動することにより、シート16が丸刃83と固定刃95とに挟み込まれて切断されるものとする。なお、シート16の切断を開始する前の丸刃83およびカッターユニット82の位置は、ホームポジションとも称される。
【0082】
また、固定刃95の一部(この例では、図中右端部)には、切り欠き95aが設けられている。すなわち、画像記録装置10においては、変位部として、固定刃95の端部に切り欠き95aが設けられている。切り欠き95aでは、固定刃95の前後方向51、52の幅が細くなっている。このように、固定刃95の一部に切り欠き95aが設けられているので、固定刃95に丸刃83が乗りあがった場合、切り欠き95aに丸刃83を落とすことで、丸刃83を元の位置に復帰させることができる。
【0083】
図7(B)は、上下方向53、54における丸刃83と固定刃95の位置関係を示している。
図7(B)では、上下方向53、54における、通常時の丸刃83の位置が第2位置として示され、乗り上げ時の丸刃83の位置が第1位置として示されている。
図7(B)に示されるように、通常時、丸刃83の下端部は、固定刃95のやや下に位置している。一方、丸刃83が固定刃95に乗り上げると(乗り上げ時)、丸刃83の下端部は、固定刃の上に位置している。
【0084】
図7(A)において、乗り上げ時の丸刃83が(1)で示されている。上述したように、制御基板66は、丸刃83の固定刃95への乗り上げが生じたと判定した場合、カッターユニット82を変位部まで移動させる。
図7(A)においては、丸刃83が(1)で示される位置から、図中右に移動するように、制御基板66がカッターユニット82の移動を制御する。そして、カッターユニット82が固定刃95の図中右端部まで移動すると、丸刃83が切り欠き95aに落ちる。すなわち、上下方向53、54における丸刃83の位置が、
図7(B)の乗り上げ時の位置から通常時の位置へ変位する。
【0085】
図7(A)においては、切り欠きに落ちた丸刃83の位置が(2)で示されている。
図7(A)に示されるように、固定刃95の切り欠き95aの前後方向51、52の幅は、図中左下から右上に向けて細くなる形状を有している。丸刃83は、切り欠きに落ちた後、切り欠き95aの形状に沿って図中左に向かって移動する。すなわち、制御基板66は、カッターユニット82を、ホームポジションに戻すために図中左に向かって移動させる。
図7(A)においては、切り欠き95aの形状に沿って移動する丸刃83の位置が(3)で示されている。そして、丸刃83は、
図7(A)において、(4)で示される位置に到達し、その後、ホームポジションへ戻る。
【0086】
また、上述したように、制御基板66は、丸刃83の固定刃95への乗り上げが生じたか否かを判定する。制御基板66は、丸刃83の固定刃95への乗り上げが生じたと判定した場合、カッターユニット82を切り欠き95aまで移動させる。例えば、制御基板66は、カッターユニット用モータ116の駆動を制御するPWM制御信号を生成することで、カッターユニット82を切り欠き95aまで移動させ、丸刃83を切り欠き95aに落とす。
【0087】
図8は、固定刃95を、上下方向53、54の上方向53から見た図であり、丸刃83の移動距離を説明する図である。同図に示される通常時移動距離は、通常時、すなわち、丸刃83が固定刃95に乗り上げないときのカッターユニット82および丸刃83の移動距離を示している。乗り上げ時移動距離は、丸刃83が固定刃95に乗り上げたときのカッターユニット82および丸刃83の移動距離を示している。
【0088】
図8に示されるように、通常時、丸刃83は、固定刃95の図中左端部付近のホームポジションから図中右に向かって移動し、シート16を切断する。
図8において点線で示される用紙端は、シート16において、搬送方向と交差する方向である切断方向の右端部を示している。このように、通常時、丸刃83は、ホームポジションから用紙端をわずかに超える位置まで移動する。一方、乗り上げ時、丸刃83は、図中右に向かって移動し、固定刃95の切り欠き95aに対応する位置まで移動する。丸刃83が固定刃95に乗り上げた場合、カッターユニット82を切り欠き95aまで移動させ、丸刃83を切り欠き95aに落とすためである。
【0089】
このようにすることで、丸刃83が固定刃95に乗り上げたときだけ、カッターユニット82を切り欠き95aに対応する位置まで移動させるようにすることができるので、丸刃83が固定刃95に乗り上げていないときの移動距離を短くすることができる。その結果、印刷に係る時間を短縮することが可能となる。
【0090】
図8の例では、切り欠き95aが固定刃95の切断方向における右端部に設けられているが、切り欠き95aが固定刃95の切断方向における両端部に設けられるようにしてもよい。このようにすることで、固定刃95に丸刃83が乗り上がった場合、固定刃95に丸刃83が乗り上がった位置から近い方の切り欠きにカッターユニット82を移動させて、丸刃83を切り欠きに落とすことができる。従って、丸刃83の刃先が固定刃95と接触しながら移動する距離を短くすることができる。
【0091】
また、丸刃83が傾いて取り付けられるようにしてもよい。
図9は、固定刃95を、上下方向53、54の上方向53から見た図であり、丸刃83の傾きと切り欠き95aの位置を説明する図である。
図9の例では、丸刃83は、図中右端部が固定刃95の刃先に近づくように、傾いて取り付けられている。切り欠き95aは、固定刃95の図中右端部に設けられている。
【0092】
切断方向において、カッターユニット82のホームポジションに対応する位置を第3位置とし、用紙端に対応する位置を第4位置とした場合、シート16の切断時に、カッターユニット82は、第3位置から第4位置に移動する。丸刃83は、カッターユニット82の移動方向の第4位置側の端部が第3位置側の端部より固定刃95に近づくように傾いており、切り欠き95aは、固定刃95の、第4位置側の端部に設けられている。このように、丸刃83を傾けることにより、丸刃83を元の位置に戻すときに、丸刃83の刃先が固定刃95に食い込む状態となるのを回避することができ、丸刃83の刃先が傷つくことを回避することができる。
【0093】
さらに、切り欠き95aにおいて、丸刃83の刃先が固定刃95と接触する部分が面取りされるようにしてもよい。例えば、
図7(A)において、丸刃83が(2)で示される位置から(3)で示される位置に移動するときに、丸刃83の刃先が固定刃95と接触するので、この接触する部分が、角部をR形状に面取りした面取り部として構成されるようにしてもよい。このように、丸刃83を切り欠き95aに落とした後、元の位置に戻すときに、丸刃83の刃先が固定刃95と接触する部分を面取りすることで、丸刃83の刃先が傷つくことを回避することができる。
【0094】
[固定刃にガイド部を設ける例]
次に、
図10を参照して、丸刃83が固定刃95に乗り上げたとき、乗り上げた丸刃83の位置を元の位置に変位させるため構成の別の例について説明する。例えば、切り欠きに代えて、変位部としてのガイド部が固定刃95に設けられるようにしてもよい。ガイド部は、例えば、丸刃83の支持部をガイドする部材であり、丸刃83の支持部がガイド部に沿って移動することで固定刃95に乗り上げた丸刃が落ちるように構成される。
【0095】
図10(A)は、固定刃95を、上下方向53、54の上方向53から見た図である。
図10(B)は、固定刃95を、左右方向55、56のどちらか一方(例えば、右方向56)から見た図である。
図10(A)において、シート16の搬送方向は、図中の上下方向に対応する。従って、
図10(A)に示される固定刃95の上面は、シート16の搬送方向と平行な面となる。
【0096】
図10(A)において、図中下側が固定刃95の刃先となり、シート16を切断するとき、丸刃83は、固定刃95の刃先に沿って図中左右に移動する。上述したように、丸刃83は回転可能に取り付けられており、この例では、ベアリングである支持部材83aによって支持されている。また、固定刃95の一部(この例では、図中右端部)には、ガイド部95bが設けられている。ガイド部95bは、固定刃95におけるシート16の搬送方向と平行な面に設けられる。
【0097】
このように、丸刃83を固定して支持する支持部材83aが取り付けられ、変位部として、固定刃95のシート16の搬送方向と平行な面上に、支持部材をガイドするガイド部95bが設けられるようにしてもよい。固定刃95のシート16の搬送方向と平行な面上に、支持部材83a(例えば、ベアリング)をガイドするガイド部95bが設けられているので、固定刃95に丸刃83が乗りあがった場合、支持部材83aをガイドして丸刃83を落とすことができる。これにより、上下方向53、54における、丸刃83の位置を、
図10(B)の第1位置から第2位置に変位させることができる。
【0098】
また、丸刃83が傾いて取り付けられるようにしてもよい。
図11は、固定刃95を、上下方向53、54の上方向53から見た図であり、丸刃83の傾きとガイド部95bの位置を説明する図である。
図11の例では、丸刃83は、図中右端部が固定刃95の刃先に近づくように、傾いて取り付けられている。ガイド部95bは、固定刃95の図中左端部付近に設けられている。
【0099】
図11において、切断方向において、カッターユニット82のホームポジションに対応する位置を第3位置とし、用紙端に対応する位置を第4位置とした場合、シート16の切断時に、カッターユニット82は、第3位置から第4位置に移動する。丸刃83は、カッターユニット82の移動方向の第4位置側の端部が第3位置側の端部より固定刃95に近づくように傾いており、ガイド部95bは、固定刃95の、第3位置側の端部に設けられている。このように、丸刃83を傾けることにより、支持部材83aも傾くことになるので、ガイド部による支持部材のガイド効果をより高めることができる。
【0100】
[固定刃を折り曲げる例]
次に、
図12を参照して、丸刃83が固定刃95に乗り上げたとき、乗り上げた丸刃83の位置を元の位置に変位させるため構成のさらに別の例について説明する。例えば、丸刃の支持部をガイドするガイド部が、固定刃95の一部を折り曲げることによって形成されるようにしてもよい。
【0101】
図12(A)は、固定刃95を、上下方向53、54の上方向53から見た図である。
図12(B)は、固定刃95を、前後方向51、52の前方51から見た図である。
図12(A)に示される例では、固定刃95の図中左端部が折り曲げられることにより、ガイド部95cが形成されている。
図12(B)に示されるように、ガイド部95cは、固定刃95の端部を上に折り曲げることによって形成される。このとき、固定刃95の端部は、丸刃83の支持部材83aをガイドする形状となるように折り曲げられる。
図12(A)の例では、固定刃の左端部が図中右上から左下に傾くように折り曲げられている。
【0102】
これにより、上下方向53、54における、丸刃83の位置を、第1位置から第2位置に変位させることができる。このように、固定刃95の一部を折り曲げてガイド部95cを形成することで、固定刃95とガイド部95cとを単一の部材によって形成することができる。
【0103】
[固定刃の端部を傾斜させる例]
次に、
図13を参照して、丸刃83が固定刃95に乗り上げたとき、乗り上げた丸刃83の位置を元の位置に変位させるため構成のさらに別の例について説明する。
図7を参照して上述した例においては、固定刃95の端部に切り欠き95aを設ける構成を説明した。しかし、切り欠きがなくとも、固定刃95の端部において、刃先が下に向くように傾斜させるようにすれば、乗り上げた丸刃83の位置を元の位置に変位させることが可能である。
【0104】
図13は、固定刃95を左右方向55、56の右方向56から見た図である。同図に示される固定刃95には、右端部の刃先が下方54に向かって傾くように傾斜する傾斜面95dが設けられている。丸刃83が固定刃95に乗り上げたとき、カッターユニット82を、固定刃95の右端部(
図9の第4位置側の端部)まで移動させると、丸刃83の刃先が傾斜面95d上を滑るようにして下方54に導かれることになる。これにより、上下方向53、54における、丸刃83の位置を、第1位置から第2位置に変位させることができる。
【0105】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
10 画像記録装置
16 シート
66 制御基板
81 ガイドレール
82 カッターユニット
83 丸刃
83a 支持部材
95 固定刃
95a 切り欠き
95b ガイド部
95c ガイド部
95d 傾斜面
110 回転軸
116 モータ
120 ロータリーエンコーダ