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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180144
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ロック解除装置及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20231213BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20231213BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093287
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】長橋 怜
(72)【発明者】
【氏名】渥美 克也
(72)【発明者】
【氏名】西出 武史
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 雅也
(72)【発明者】
【氏名】今枝 優介
(72)【発明者】
【氏名】片岡 憲
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087BD02
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】シートの側方からでもシートの後方からでもレバーを容易に揺動可能で、レバー操作性が向上したロック解除装置及び車両用シートを提供する。
【解決手段】シートバック5の上部に取り付けられる支持部材17に、第1レバー21aが第1揺動軸19a周りで、第2レバー21bが第2揺動軸19b周りでシート前後方向に揺動可能に支持される。第1レバー21aは後端部に第1揺動操作部39aを有し、第2レバー21bは前端部に第2揺動操作部39bを有する。リンク23は、第1レバー21aの第1係合ピン45aと係脱可能な第1被係合部39aと、第2レバー21bの第2係合ピン45bと係脱可能な第1被係合部39aとを有する。第1レバー21a又は第2レバー21bが上方に揺動すれば、リンク23を介してワイヤ25が引張られ、シートクッション3に対してシートバック5の傾動を規制するロック装置13のロックが解除される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートにおけるシート前後方向の傾動を規制するロック装置のロックを解除するロック解除装置であって、
シートバックの上部に取り付けられる支持部材と、
前記支持部材におけるシート前側に配置された第1揺動軸と、
前記支持部材におけるシート後側に配置された第2揺動軸と、
第1係合部を有し、前記支持部材に前記第1揺動軸周りでシート前後方向に揺動可能に支持されて第1ロック位置と第1アンロック位置との間を変位する第1レバーと、
第2係合部を有し、前記支持部材に前記第2揺動軸周りでシート前後方向に揺動可能に支持されて第2ロック位置と第2アンロック位置との間を変位する第2レバーと、
前記支持部材に対して往復動することでロック位置とアンロック位置との間を変位し、前記第1係合部と脱離可能に係合する第1被係合部及び前記第2係合部と脱離可能に係合する第2被係合部を有するリンクと、
前記リンクに一端が接続されるとともに前記ロック装置に他端が接続され、前記ロック装置から離れる方向に引張られることで前記ロック装置のロックを解除するワイヤとを備え、
前記第1レバーは、前記第1レバーにおけるシート後側に第1揺動操作部を有し、
前記第2レバーは、前記第2レバーにおけるシート前側に第2揺動操作部を有し、
前記リンクは、
前記第1揺動操作部がシート前側かつ上方に揺動して前記第1レバーが前記第1ロック位置から前記第1アンロック位置へ変位することにより、前記第1係合部と前記第1被係合部との係合及び前記第2係合部と前記第2被係合部との脱離を伴って、前記ロック位置から前記アンロック位置へ変位して前記ワイヤを前記ロック装置から離れる方向に引張り、かつ、
前記第2揺動操作部がシート後側かつ上方に揺動して前記第2レバーが前記第2ロック位置から前記第2アンロック位置へ変位することにより、前記第2係合部と前記第2被係合部との係合及び前記第1係合部と前記第1被係合部との脱離を伴って、前記ロック位置から前記アンロック位置へ変位して前記ワイヤを前記ロック装置から離れる方向に引張るように構成されていることを特徴とするロック解除装置。
【請求項2】
前記リンクは、前記往復動の方向に延び前記第1係合部が往復動可能に保持された第1係合孔と、前記往復動の方向に延び前記第2係合部が往復動可能に保持された第2係合孔とを有し、
前記第1係合孔における上端部が前記第1係合部と係合脱離する前記第1被係合部となり、
前記第2係合孔における上端部が前記第2係合部と係合脱離する前記第2被係合部となる請求項1記載のロック解除装置。
【請求項3】
シートにおけるシート前後方向の傾動を規制するロック装置と、
前記ロック装置のロックを解除する請求項1又は2記載のロック解除装置とを備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
車両のフロアに対してシート前後方向にスライド可能とされたシートクッションと、
前記シートクッションに対してシート前後方向に傾動可能にとされた前記シートバックと、
前記シートクッションのスライドを規制するスライドロック装置とをさらに備え、
前記ロック装置は、前記シートクッションに対して前記シートバックがシート前後方向に傾動することを規制し、
前記シートクッションに対して前記シートバックがシート前側に傾動することに連動して、前記スライドロック装置のロックが解除されるように構成されている請求項3記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロック解除装置及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のロック解除装置が開示されている。このロック解除装置は、シートクッションに対してシートバックがシート前後方向に傾動可能とされた車両用シートに設けられて、シートバックの傾動を規制するロック装置のロックを解除する。
【0003】
このロック解除装置は、シートバックの上部に取り付けられる支持部材と、支持部材におけるシート前側に配置された揺動軸と、支持部材に揺動軸周りにシート前後方向に揺動可能に支持されてロック位置とアンロック位置との間を変位するレバーと、レバーに一端が接続されるとともにロック装置に他端が接続され、ロック装置から離れる方向に引張られることでロック装置のロックを解除するワイヤとを備えている。このレバーはシートバックの肩口に設けられており、レバーにおけるシート前側の端部に揺動軸心があり、レバーにおけるシート後側の端部がレバーを揺動させる揺動操作部となっている。
【0004】
このロック解除装置では、揺動操作部を前方かつ上方に揺動させてレバーをロック位置からアンロック位置まで変位させることにより、ワイヤがロック装置から離れる方向に引張られてロック装置のロックが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-78992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、3列シート車の2列目シート等には、シート後方への乗降を容易にするためにウォークイン機構が設けられる。ウォークイン機構付きのシートでは、シートクッションがフロアに対してシート前後方向にスライド可能とされ、シートバックの前倒しに連動して、シートクッションのスライドを規制するスライドロック装置のロックが解除される。
【0007】
しかし、上記従来のロック解除装置をウォークイン機構付きの車両用シートに適用した場合、シートバックの肩口に設けられたレバーを後部座席の乗員が後方から操作する際、例えばレバーにおけるシート後側の揺動操作部の下方に親指を引掛け、手首を掌屈しつつ前方かつ上方にその揺動操作部を揺動させる必要がある。このため、シート後方からのレバー操作は必ずしも容易ではなく、改良の余地がある。なお、シートの側方からなら、揺動操作部の下方に手指を引掛けてその揺動操作部を前方かつ上方に容易に揺動させることができる。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、シートの側方からでもシートの後方からでもレバーを容易に揺動させることができ、レバー操作性が向上したロック解除装置及び車両用シートを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のロック解除装置は、車両用シートにおけるシート前後方向の傾動を規制するロック装置のロックを解除するロック解除装置であって、
シートバックの上部に取り付けられる支持部材と、
前記支持部材におけるシート前側に配置された第1揺動軸と、
前記支持部材におけるシート後側に配置された第2揺動軸と、
第1係合部を有し、前記支持部材に前記第1揺動軸周りでシート前後方向に揺動可能に支持されて第1ロック位置と第1アンロック位置との間を変位する第1レバーと、
第2係合部を有し、前記支持部材に前記第2揺動軸周りでシート前後方向に揺動可能に支持されて第2ロック位置と第2アンロック位置との間を変位する第2レバーと、
前記支持部材に対して往復動することでロック位置とアンロック位置との間を変位し、前記第1係合部と脱離可能に係合する第1被係合部及び前記第2係合部と脱離可能に係合する第2被係合部を有するリンクと、
前記リンクに一端が接続されるとともに前記ロック装置に他端が接続され、前記ロック装置から離れる方向に引張られることで前記ロック装置のロックを解除するワイヤとを備え、
前記第1レバーは、前記第1レバーにおけるシート後側に第1揺動操作部を有し、
前記第2レバーは、前記第2レバーにおけるシート前側に第2揺動操作部を有し、
前記リンクは、
前記第1揺動操作部がシート前側かつ上方に揺動して前記第1レバーが前記第1ロック位置から前記第1アンロック位置へ変位することにより、前記第1係合部と前記第1被係合部との係合及び前記第2係合部と前記第2被係合部との脱離を伴って、前記ロック位置から前記アンロック位置へ変位して前記ワイヤを前記ロック装置から離れる方向に引張り、かつ、
前記第2揺動操作部がシート後側かつ上方に揺動して前記第2レバーが前記第2ロック位置から前記第2アンロック位置へ変位することにより、前記第2係合部と前記第2被係合部との係合及び前記第1係合部と前記第1被係合部との脱離を伴って、前記ロック位置から前記アンロック位置へ変位して前記ワイヤを前記ロック装置から離れる方向に引張るように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のロック解除装置では、第1レバーが第1ロック位置から上方に揺動して第1アンロック位置に変位すれば、第1係合部と第1被係合部との係合及び第2係合部と第2被係合部との脱離を伴って、リンクがロック位置からアンロック位置に変位する。また、第2レバーが第2ロック位置から上方に揺動して第2アンロック位置に変にすれば、第2係合部と第2被係合部との係合及び第1係合部と第1被係合部との脱離を伴って、リンクがロック位置からアンロック位置に変位する。ロック位置からアンロック位置に変位するリンクは、ワイヤをロック装置から離れる方向に引張る。これにより、ロック装置のロックが解除され、シートにおけるシート前後方向の傾動が可能となる。
【0011】
本発明のロック解除装置では、支持部材におけるシート前側に配置された第1揺動軸周りで第1レバーがシート前後方向に揺動し、その第1レバーにおけるシート後側に第1揺動操作部がある。そして、第1揺動操作部がシート前側かつ上方に揺動することで第1レバーが第1ロック位置から第1アンロック位置に変位する。この第1レバーに対しては、シートの側方から揺動操作しやすい。すなわち、例えばシートの側方にいる乗員は、第1レバーにおけるシート後側の第1揺動操作部の下方に手指を引掛けてその第1揺動操作部をシート前側かつ上方に容易に揺動させることができる。このため、例えば車外からシートの後方に乗り込もうとする乗員が第1レバーを容易に揺動操作することができる。
【0012】
また、支持部材におけるシート後側に配置された第2揺動軸周りで第2レバーがシート前後方向に揺動し、その第2レバーにおけるシート前側に第2揺動操作部がある。そして、第2揺動操作部がシート後側かつ上方に揺動することで第2レバーが第2ロック位置から第2アンロック位置に変位する。この第2レバーに対しては、シートの側方からでもシートの後方からでも揺動操作しやすい。すなわち、例えばシートの後方にいる乗員は、第2レバーにおけるシート前側の第2揺動操作部の下方に手指を引掛けてその第2揺動操作端部をシート後側かつ上方に容易に揺動させることができる。このため、例えばシートの後方にいる乗員が前方のシートを前方に倒して車両から降りる際に第2レバーを容易に揺動操作することができる。シートの側方からであっても、第2レバーにおけるシート前側の第2揺動操作部の下方に手指を引掛けてその第2揺動操作部をシート後側かつ上方に容易に揺動させることができる。
【0013】
したがって、本発明のロック解除装置は、シートの側方からでもシートの後方からでもレバーを容易に揺動させることができ、レバー操作性が向上する。
【0014】
リンクは、往復動の方向に延び第1係合部が往復動可能に保持された第1係合孔と、往復動の方向に延び第2係合部が往復動可能に保持された第2係合孔とを有することが好ましい。第1係合孔における上端部が第1係合部と係合脱離する第1被係合部となり得る。また、第2係合孔における上端部が第2係合部と係合脱離する第2被係合部となり得る。
【0015】
この場合、第1レバーの第1揺動操作部がシート前側かつ上方に揺動する際、第1レバーの第1係合部と第1被係合部としての第1係合孔の上端部との係合、及び第2レバーの第2係合部と第2被係合部としての第2係合孔の上端部との脱離を伴って、リンクがロック位置からアンロック位置に変位する。
【0016】
また、第2レバーの第2揺動操作部がシート後側かつ上方に揺動する際、第2レバーの第2係合部と第2被係合部としての第2係合孔の上端部との係合、及び第1レバーの第1係合部と第1被係合部としての第1係合孔の上端部との脱離を伴って、リンクがロック位置からアンロック位置に変位する。
【0017】
本発明の車両用シートは、シートにおけるシート前後方向の傾動を規制するロック装置と、
前記ロック装置のロックを解除する本発明のロック解除装置とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の車両用シートは、シートにおけるシート前後方向の傾動がロック装置により規制される。このロック装置のロックは、本発明のロック解除装置により解除される。
【0019】
したがって、本発明の車両用シートは、シートの側方からでもシートの後方からでもロック解除装置のレバーを容易に揺動操作することができ、レバー操作性が向上する。
【0020】
本発明の車両用シートは、車両のフロアに対してシート前後方向にスライド可能とされたシートクッションと、シートクッションに対してシート前後方向に傾動可能に取り付けられたシートバックと、シートクッションのスライドを規制するスライドロック装置とをさらに備えることが好ましい。ロック装置は、シートクッションに対してシートバックがシート前後方向に傾動することを規制し得る。シートクッションに対してシートバックがシート前側に傾動することに連動して、スライドロック装置のロックが解除されるように構成されていることが好ましい。
【0021】
この場合、ロック解除装置によりロック装置のロックが解除されると、シートクッションに対してシートバックがシート前側に傾動し得る。シートクッションに対してシートバックがシート前側に傾動すれば、それに連動してスライドロック装置のロックが解除され、シートクッションがシート前側にスライドし得る。シートバックがシート前側に傾動するとともに、シートクッションがシート前側にスライドすれば、そのシートの後方への乗降が容易となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のロック解除装置及びそのロック解除装置を備える本発明の車両用シートは、シートの側方からでもシートの後方からでもレバーを容易に揺動させることができ、レバー操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施例の車両用シートの斜視図である。
図2図2は、実施例のロック解除装置の斜視図である。
図3図3は、実施例のロック解除装置の分解斜視図である。
図4図4は、実施例のロック解除装置に係り、第1レバーが第1ロック位置にあり、第2レバーが第2ロック位置にある状態を部分的に示す斜視図である。
図5図5は、実施例のロック解除装置に係り、第1レバーが第1アンロック位置にあり、第2レバーが第2ロック位置にある状態を部分的に示す斜視図である。
図6図6は、実施例のロック解除装置に係り、第1レバーが第1ロック位置にあり、第2レバーが第2アンロック位置にある状態を部分的に示す斜視図である。
図7図7は、実施例のロック解除装置に係り、第1レバーが第1ロック位置にあり、第2レバーが第2アンロック位置にある状態を模式的に示す側面図である。
図8図8は、実施例のロック解除装置の作動説明図であり、図8の(A)は第1レバーが第1ロック位置にあり、第2レバーが第2ロック位置にある状態を模式的に示し、図8の(B)は第1レバーが第1ロック位置にあり、第2レバーが第2アンロック位置にある状態を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のロック解除装置及びそのロック解除装置を具備する本発明の車両用シートを具体化した実施例を、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(実施例)
図1に示すように、車両用シート1(以下、単にシート1と称する、)は、シート1に着座する乗員の着座部となるシートクッション3と、背もたれ部となるシートバック5とを有する。このシート1は、3列シート車の2列目の左側座席位置に搭載される。このため、シート前後方向は車両の前後方向に一致する。以下の説明において、前後方向は、シート前後方向又は車両の前後方向を意味する。また、左右方向は車幅方向に一致し、左右は車両前方を向いた状態での左右を意味する。シート1の左側は車外側、シート1の右側は車室内側となる。
【0026】
車両のフロアには左右一対のロアレール7aが固定され、シートクッション3の下部には左右一対のアッパーレール7bが固定される。アッパーレール7bは、ロアレール7aに対してスライド可能に組付けられる。これにより、シート1は、車両のフロアに対して、シート前後方向にスライド可能に取り付けられる。シートクッション3又はアッパーレール7bと、車両のフロア又はロアレール7aとの間には図示しない引張りコイルばねが装着される。この引張りコイルばねにより、シートクッション3はシート前側に付勢される。
【0027】
シートバック5は、シートクッション3の後端部に取り付けられたリクライニング機構9により、シートクッション3に対してシート前後方向に傾動可能に取り付けられている。シートクッション3とシートバック5との間には図示しないねじりコイルばねが装着されており、このねじりコイルばねにより、シートバック5はシート前側に倒れるように付勢されている。
【0028】
シートクッション3のスライドは、スライドロック装置11のロックにより規制される。スライドロック装置11は、ロアレール7aとアッパーレール7bとの間に介装されている。シートバック5の傾動は、ロック装置13のロックにより規制される。ロック装置13はリクライニング機構9に内蔵されている。ロック装置13のロックは、ロック解除装置15により解除される。シートクッション3の下部に設けられたワイヤボックス17の作動等により、シートクッション3に対してシートバック5がシート前側に傾動することに連動して、スライドロック装置11のロックが解除される。その構成の詳細については後述する。
【0029】
ロック解除装置15は、シートバック5の上部に取り付けられている。具体的には、シートバック5の左側の肩口6にロック解除装置15が取り付けられている。図2及び図3に示すように、ロック解除装置15は、支持部材17と、第1揺動軸19aと、第2揺動軸19bと、第1レバー21aと、第2レバー21bと、リンク23と、ワイヤ25とを備えている。
【0030】
支持部材17は、シートバック5の骨格をなす図示しないバックフレームに取り付けられている。支持部材17は、第1開口部27aと、第2開口部27bと、左右一対の第1貫通孔29aと、左右一対の第2貫通孔29bとを有している。第1開口部27aは支持部材17の後側に配置され、第2開口部27bは支持部材17の前側に配置されている。第1貫通孔29aは支持部材17の前側に配置され、第2貫通孔29bは支持部材17の後側に配置されている。
【0031】
第1レバー21aは、第1基部31aと、第1本体部33aと、第1基部31a及び第1本体部33aをつなぐ第1連結部35aとを有し、これらが一体に形成されている。第1基部31aは支持部材17の前側に配置され、第1本体部33aは第1開口部27aに収容されている。第1レバー21aの前端部で、第1基部31aの前端部には、左右一対の第1挿通孔37aが形成されている。
【0032】
第1貫通孔29a及び第1挿通孔37aには、第1揺動軸19aが挿通されている。これにより、第1レバー21aが、支持部材17に第1揺動軸19a周りでシート前後方向に揺動可能に支持されている。第1レバー21aは、第1レバー21aの後端部に第1揺動操作部39aを有する。すなわち、第1本体部33aの後端部が第1揺動操作部39aとなる。
【0033】
第1揺動軸19aには第1ねじりコイルばね41aが外装されている。第1ねじりコイルばね41aの一端は第1レバー21aに固定され、第1ねじりコイルばね41aの他端は支持部材17に固定されている。第1ねじりコイルばね41aは、第1レバー21aの後側、すなわち第1揺動操作部39aを下方に揺動させる方向に付勢する。なお、第1揺動操作部39aの下方への揺動は、第1基部31aの下面が支持部材17に当接することで規制される。これにより、図2及び図4に示すように、第1レバー21aが第1ロック位置に保持される。
【0034】
第1基部31aは、第1挿通孔37aの後側に第1保持孔43aを有する。第1保持孔43aには、第1係合ピン45aが固定されている。第1係合ピン45aは本発明における「第1係合部」の一例である。
【0035】
第2レバー21bは、第2基部31bと、第2本体部33bと、第2基部31b及び第2本体部33bをつなぐ第2連結部35bとを有し、これらが一体に形成されている。第2基部31bは支持部材17の後側に配置され、第2本体部33bは第2開口部27bに収容されている。第2レバー21bの後端部で、第2基部31bの後端部には、左右一対の第2挿通孔37bが形成されている。
【0036】
第2貫通孔29b及び第2挿通孔37bには、第2揺動軸19bが挿通されている。これにより、第2レバー21bが、支持部材17に第2揺動軸19b周りでシート前後方向に揺動可能に支持されている。第2レバー21bは、第2レバー21bの前端部に第2揺動操作部39bを有する。すなわち、第2本体部33bの前端部が第2揺動操作部39bとなる。
【0037】
第2揺動軸19bには第2ねじりコイルばね41bが外装されている。第2ねじりコイルばね41bの一端は第2レバー21bに固定され、第2ねじりコイルばね41bの他端は支持部材17に固定されている。第2ねじりコイルばね41bは、第2レバー21bの前側、すなわち第2揺動操作部39bを下方に揺動させる方向に付勢する。なお、第2揺動操作部39bの下方への揺動は、第2基部31bの下面が支持部材17に当接することで規制される。これにより、図2及び図4に示すように、第2レバー21bが第2ロック位置に保持される。
【0038】
第2基部31bは第2保持孔43bを有する。第1レバー21a及び第2レバー21bが支持部材17に支持された状態において、前後方向において対応する位置で、第1保持孔43aが右、第2保持孔43bが左となるように、両者が左右方向に並んでいる。第2保持孔43bには、第2係合ピン45bが固定されている。第2係合ピン45bは本発明における「第2係合部」の一例である。
【0039】
シート前後方向において、第1保持孔43a及び第2保持孔43bの位置、すなわち第1係合ピン45a及び第2係合ピン45bの位置は、第1挿通孔37aと第2挿通孔37bとのほぼ中間位置、すなわち第1揺動軸19aと第2揺動軸19bとのほぼ中間位置にリンク23が配置されるように設定されている。言い換えれば、第1レバー21aの揺動によるリンク23の変位量と、第2レバー21bの揺動によるリンク23の変位量とがほぼ同等となり、第1レバー21aの操作荷重と第2レバー21bの操作荷重とがほぼ同等となるように設定されている。
【0040】
第2レバー21bにおける第2基部31b及び第2連結部35bには、第1レバー21aにおける第1基部31a及び第1連結部35aとの間で、お互いの揺動を許容する開口部47が形成されている。
【0041】
リンク23は、左右方向において、右側に配置された第1側板49aと、左側に配置された第2側板49bとを有する。第1側板49aと、第2側板49bとは、上下及び左右の4つの接続部51により一体に形成されている。第1側板49a及び第2側端49bは、その下方部に接続孔53を有する。
【0042】
第1側板49aは、上下方向に長く延びる第1係合孔55aを有する。第1係合孔55aには、第1係合ピン45aが上下方向に往復動可能に保持されている。第1係合孔55aにおける上端部が第1係合ピン45aと係合脱離する第1被係合部57aとなる。第2側板49bは、上下に長く延びる第2係合孔55bを有する。第2係合孔55bには、第2係合ピン45bが上下方向に往復動可能に保持されている。第2係合孔55bにおける上端部が第2係合ピン45bと係合脱離する第2被係合部57bとなる。
【0043】
これにより、第1レバー21aの第1揺動操作部39aがシート前側かつ上方に揺動して第1ロック位置から第1アンロック位置に変位すれば、第1レバー21aの第1係合ピン45aと第1被係合部57aとの係合、及び第2レバー21bの第2係合ピン45bと第2被係合部57bとの脱離を伴って、リンク23がロック位置からアンロック位置に変位する。
【0044】
また、第2レバー21bの第2揺動操作部39bがシート後側かつ上方に揺動して第2ロック位置から第2アンロック位置に変位すれば、第2レバー21bの第2係合ピン45bと第2被係合部57bとの係合、及び第1レバー21aの第1係合ピン45aと第1被係合部57aとの脱離を伴って、リンク23がロック位置からアンロック位置に変位する。
【0045】
ワイヤ25はその一端に接続部59を有する。接続部59は、リンク23の接続孔53に係脱可能に接続されている。ワイヤ25の他端は、リクライニング機構9に内蔵されたロック装置13に接続されている。ワイヤ25は、ロック装置13に近づく方向に付勢されている。リクライニング機構9は図示しない接続ワイヤを介してワイヤボックス17に接続されている。また、スライドロック装置11も図示しない接続ワイヤを介してワイヤボックス17に接続されている。
【0046】
リンク23がロック位置からアンロック位置に変位することで、ワイヤ25がロック装置13から離れる方向である上方に引張られ、ロック装置13のロックが解除される。ロック装置13のロックが解除されれば、リクライニング機構9が作動し、図示しないねじりコイルばねによりシートクッション3に対してシートバック5がシート前側に倒れる。シートバック5が前方に倒れれば、リクライニング機構9により図示しない接続ワイヤが引張られる。それに連動して、ワイヤボックス17により図示しない接続ワイヤが引張られ、スライドロック装置11のロックが解除される。これにより、図示しない引張りコイルばねによりシートクッション3がシート前側に移動する。
【0047】
上記構成を有するロック解除装置15では、図5に示すように、第1レバー21aが第1ロック位置から上方に揺動して第1アンロック位置に変位すれば、第1係合ピン45aと第1被係合部57aとの係合及び第2係合ピン45bと第2被係合部57bとの脱離を伴って、リンク23がロック位置からアンロック位置に変位する。
【0048】
また、図6図8に示すように、第2レバー21bが第2ロック位置から上方に揺動して第2アンロック位置に変にすれば、第2係合ピン45bと第2被係合部57bとの係合及び第1係合ピン45aと第1被係合部57aとの脱離を伴って、リンク23がロック位置からアンロック位置に変位する。なお、図8は車両の前方から見た図である。図8は、各部材の作動を模式的に説明するためのもので、各部材の形状は実際の形状と異なる。
【0049】
ロック位置からアンロック位置に変位するリンク23は、ワイヤ25をロック装置13から離れる方向に引張る。これにより、ロック装置13のロックが解除され、シートクッション3に対してシートバック5が前倒れするとともに、シートバック5と共にシートクッション3が前方に移動し、3列目のシートに対する乗降が容易になる。
【0050】
このロック解除装置15では、支持部材17におけるシート前側に配置された第1揺動軸19a周りで第1レバー21aがシート前後方向に揺動し、その第1レバー21aにおけるシート後側に第1揺動操作部39aがある。そして、第1揺動操作部39aがシート前側かつ上方に揺動することで第1レバー21aが第1ロック位置から第1アンロック位置に変位する。この第1レバー21aに対しては、シート1の側方から揺動操作しやすい。すなわち、例えば車外にいる乗員は、第1レバー21aにおけるシート後側の第1揺動操作部39aの下方に手指を引掛けてその第1揺動操作部39aをシート前側かつ上方に容易に揺動させることができる。このため、例えば車外から3列目のシートに乗り込もうとする乗員が第1レバー21aを容易に揺動操作することができる。
【0051】
また、支持部材17におけるシート後側に配置された第2揺動軸19b周りで第2レバー21bがシート前後方向に揺動し、その第2レバー21bにおけるシート前側に第2揺動操作部39bがある。そして、第2揺動操作部39bがシート後側かつ上方に揺動することで第2レバー21bが第2ロック位置から第2アンロック位置に変位する。この第2レバー21bに対しては、シート1の側方からでもシート1の後方からでも揺動操作しやすい。すなわち、例えば3列目のシートにいる乗員は、第2レバー21bにおけるシート前側の第2揺動操作部39bの下方に手指を引掛けてその第2揺動操作端部39bをシート後側かつ上方に容易に揺動させることができる。このため、例えば3列目のシートにいる乗員が前方のシート1を前方に倒して車両から降りる際に第2レバー21bを容易に揺動操作することができる。シート1の側方からであっても、第2レバー21bにおけるシート前側の第2揺動操作部39bの下方に手指を引掛けてその第2揺動操作部39bをシート後側かつ上方に容易に揺動させることができる。
【0052】
したがって、このロック解除装置15は、シート1の側方からでもシート1の後方からでもレバーを容易に揺動させることができ、レバー操作性が向上する。
【0053】
リクライニング機構9に内蔵されたロック装置13を作動させるためには、比較的大きな力が必要となる。この点、このロック解除装置15によれば、装置の大型化やレバーの操作荷重の増大を避けつつ、第1レバー21a又は第2レバー21bの揺動に伴って、ワイヤ25による必要な引張力を発生させることができる。
【0054】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0055】
実施例では、シートクッション3に対してシートバック5が傾動するシート1、及びそのシートバック5の傾動を規制するロック装置13のロックを解除するロック解除装置15に本発明を適用したが、シート全体が車両のフロアに対して前方に傾動するシート、及びそのシート全体の傾動を規制するロック装置を解除するロック解除装置に本発明を適用してもよい。
【0056】
実施例では、シートバック5の車外側の肩口6にロック解除装置15を配置するが、ロック解除装置15の位置はこれに限定されない。例えば、シートバック5の車外側の肩口6とともに室内側の肩口にもロック解除装置を配置してもよい。あるいは、シートバックの背面や側面の上部にロック解除装置15を配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば3列シート車の2列目シート等、特にウォークイン機構を備えた車両用シートに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1…シート
3…シートクッション
5…シートバック
11…スライドロック装置
13…ロック装置
15…ロック解除装置
17…支持部材
19a…第1揺動軸、19b…第2揺動軸
21a…第1レバー、21b…第2レバー
23…リンク
25…ワイヤ
39a…第1揺動操作部、39b…第2揺動操作部
45a…第1係合ピン(第1係合部)、45b…第2係合ピン(第2係合部)
55a…第1係合孔、55b…第2係合孔
59a…第1被係合部、59b…第2被係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8