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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180145
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】陰圧式固定具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20231213BHJP
   A61F 5/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
A61F5/01 N
A61F5/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093288
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000112381
【氏名又は名称】ファミリー・サービス・エイコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 幸司
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098BB09
4C098BB11
4C098BB16
4C098BC06
4C098BC15
4C098BC44
(57)【要約】
【課題】太さが異なる患部への装着時においても係止部材を確実に係止することが可能であると共に、関節分を曲げた状態で患部を固定することが可能な陰圧式固定具を提供すること。
【解決手段】台形の袋状に形成された外側袋体10と、外側袋体10の内部空間に位置決め状態で収容された袋体22に形成された各々の区画24に発泡樹脂製ビーズ26が充填されたビーズ充填体20と、外側袋体10とビーズ充填体20から排気し、外側袋体10の外からの空気の流入の可否が切り替え可能な逆止弁付排気口30と、外側袋体10の外表面にビーズ充填体20の区分方向と水平面内で直交する方向に所要間隔をあけた複数箇所に取り付けられた面ファスナ40を具備し、平面視台形の高さ方向中央部分の直近位置における2本の面ファスナ40の配設間隔L2が、他の位置における面ファスナ40の配設間隔L1よりも幅広であることを特徴とする陰圧式固定具100である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を通過させない材料からなるシート体により台形の袋状に形成された外側袋体と、
前記外側袋体の内部空間に位置決めされた状態で収容され、メッシュ素材により形成された袋体が、前記台形の上底と下底とを結ぶ直線によって複数の区画に区分されていると共に、各前記区画に発泡樹脂製ビーズが充填されたビーズ充填体と、
前記外側袋体の外表面に装着され、前記外側袋体および前記ビーズ充填体から排気を可能にすると共に、前記外側袋体の外からの空気の流入の可否が切り替え可能な逆止弁付排気口と、
前記外側袋体の前記外表面に前記ビーズ充填体の区分方向と水平面内で交差する方向に所要間隔をあけた複数箇所に取り付けられた係止部材と、を具備し、
前記台形の高さ方向中央部分の直近位置における2本の前記係止部材の配設間隔が、他の位置における前記係止部材の前記配設間隔よりも広くなっていることを特徴とする陰圧式固定具。
【請求項2】
前記係止部材は、面ファスナであって、雌型面ファスナが前記外側袋体上に縫製され、雄型面ファスナの長手方向における第1端部が前記外側袋体の外周縁部分で縫製され、前記第1端部から前記長手方向における第2端部の部分が前記外側袋体からはみ出していることを特徴とする請求項1記載の陰圧式固定具。
【請求項3】
前記雄型面ファスナは、前記雌型面ファスナに対して屈曲した状態で前記外側袋体に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の陰圧式固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は陰圧式固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折時等において病院に到着するまでの間等において、患部を動かないように固定するために用いられる陰圧式固定具としては、例えば特許文献1(特許第6539933号公報)に開示されているような構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6539933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ビーズ体の充填体が内蔵されている袋体の内部空気を排出することで任意形態を保持する担架の構成が開示されている。このような担架の構成に基づいて骨折部位を固定保持する陰圧式固定具(簡易ギプス)とすることが可能である。しかしながら、特許文献1に開示されている袋体は平面視長方形に形成されているため、体との付け根部分と先端部とで太さが大きく異なる腕や脚に袋体を巻回させると、巻回後の係止がうまく行えないという課題がある。また、係止部材が袋体に等間隔で取り付けられているため、腕や脚の関節を曲げた状態で患部を固定することができないといった課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、体との付け根部分と先端部とで太さが大きく異なる腕や脚の患部への装着時においても係止部材を確実に係止することが可能であると共に、関節を曲げた状態で患部を固定することが可能な陰圧式固定具の提供を目的としている。
【0006】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意研究を行った結果、以下の構成に想到した。すなわち、気体を通過させない材料からなるシート体により台形の袋状に形成された外側袋体と、前記外側袋体の内部空間に位置決めされた状態で収容され、メッシュ素材により形成された袋体が、前記台形の上底と下底とを結ぶ直線によって複数の区画に区分されていると共に、各前記区画に発泡樹脂製ビーズが充填されたビーズ充填体と、前記外側袋体の外表面に装着され、前記外側袋体および前記ビーズ充填体から排気を可能にすると共に、前記外側袋体の外からの空気の流入の可否が切り替え可能な逆止弁付排気口と、前記外側袋体の前記外表面に前記ビーズ充填体の区分方向と水平面内で交差する方向に所要間隔をあけた複数箇所に取り付けられた係止部材と、を具備し、前記台形の高さ方向中央部分の直近位置における2本の前記係止部材の配設間隔が、他の位置における前記係止部材の前記配設間隔よりも広くなっていることを特徴とする陰圧式固定具である。
【0007】
これにより、体との付け根部分と先端部とで太さが大きく異なる腕や脚の患部への装着時においても係止部材を確実に係止することが可能であると共に、関節を曲げた状態で患部を固定することが可能になる。
【0008】
また、前記係止部材は、面ファスナであって、雌型面ファスナが前記外側袋体上に縫製され、雄型面ファスナの長手方向における第1端部が前記外側袋体の外周縁部分で縫製され、前記第1端部から前記長手方向における第2端部の部分が前記外側袋体からはみ出していることが好ましい。また、前記雄型面ファスナは、前記雌型面ファスナに対して屈曲した状態で前記外側袋体に取り付けられていることがより好ましい。
【0009】
これらにより、患部への巻回後における面ファスナの係合が容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる陰圧式固定具の構成を採用することにより、体との付け根部分と先端部とで太さが大きく異なる腕や脚の患部への装着時においても係止部材を確実に係止することが可能であると共に、関節を曲げた状態で患部を固定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態における陰圧式固定具の正面図である。
図2】本実施形態における陰圧式固定具の背面図である。
図3】本実施形態における陰圧式固定具の内部構造を示す説明図である。
図4】使用状態の一例を示す説明図その1である。
図5】使用状態の一例を示す説明図その2である。
図6】使用状態の一例を示す説明図その3である。
図7】逆止弁付排気口と排気ポンプの連結部の拡大図である。
図8】排気ポンプの連結部を逆止弁付排気口に連結した状態を示す説明図である。
図9】逆止弁付排気口の調整状態を示す説明図である。
図10】排気ポンプで袋体内部の空気を排出している状態を示す説明図である。
図11】排気後、陰圧式固定具のビーズ充填体が硬化した状態を示す説明図である。
図12】患部との接触面にガーゼを取り付けた状態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明における陰圧式固定具の実施形態について図面に基づいて具体的に説明する。本実施形態における陰圧式固定具100は、図1図3に示すように、外側袋体10と、ビーズ充填体20、逆止弁付排気口30および係止部材としての面ファスナ40を具備している。
【0013】
本実施形態における外側袋体10は、気体を通過させない材料からなる第1シート体12および第2シート体14により形成されている。このような材料としては、ポリ塩化ビリニデン(PVDC)やポリビニルアルコール(PVA)等を例示することができるが、他の公知の材料を用いることもできる。本実施形態における第1シート体12および第2シート体14は平面視等脚台形に形成されており、シート体の厚さ方向に積層させて外周縁を縫製や接着することで袋状に形成されている。
【0014】
第1シート体12と第2シート体14で外側袋体10を形成する前に、第1シート体12の内側面にはビーズ充填体20が縫製または接着等の公知の手法により取り付けられている。本実施形態におけるビーズ充填体20は、メッシュ素材により形成された袋体22が所要幅間隔で複数の区画24に区分されており、それぞれの区画24に発泡樹脂製ビーズ26が適宜充填されたものである。発泡樹脂製ビーズ26としては発泡ポリスチレン等を例示することができるが、他の公知の材料を用いることもできる。
【0015】
本実施形態における袋体22は、外側袋体10を平面視した際の台形と相似形状に形成されており、外側袋体10の内部空間に隙間を生じさせない大きさに形成されていることが好ましい。本実施形態におけるビーズ充填体20の区画24は、図1の透視線である破線で示すように外側袋体10の上底16と下底18とを結ぶ直線によって区分されている。このようにして形成されたビーズ充填体20は、第1シート体12の内側面における収容位置がずれないように位置決めされた状態で取り付けられている。
【0016】
また、外側袋体10の第1シート体12には、外側袋体10の内部空間と外部空間とを連通し、外側袋体10の内部空間への外側袋体10の外からの空気の流入の可否が切り替え可能な逆止弁付排気口30が装着されている。逆止弁付排気口30には後述する排気ポンプ50が連結されている。使用者USRが切替ダイヤル32を操作して逆止弁付排気口30に内蔵されている図示しない逆止弁をオンにすると、外側袋体10の内部空間の空気の排出は許容し、外側袋体10の内部空間への外側袋体10の外からの空気の流入が防止される。これにより、後述する排気ポンプ50を用いれ外側袋体10の内部空間を減圧することができる。これとは反対に使用者USRが図示しない逆止弁をオフにすると、外側袋体10の内部空間への外側袋体10の外からの空気の流入が許容され、外側袋体10の内部空間の減圧状態を解除することができる。
【0017】
そして、外側袋体10の第1シート体12には、面ファスナ40が取り付けられている。本実施形態における面ファスナ40は、雌型面ファスナ42と雄型面ファスナ44を有している。雌型面ファスナ42は、外側袋体10の上底16および下底18と平行に第1シート体12の全幅方向にわたって取り付けられている。雄型面ファスナ44は、各々の雌型面ファスナ42の一方の端部から第1シート体12の外側にはみ出した状態で取り付けられている。雄型面ファスナ44は、外側袋体10への取り付け部分である長手方向の第1端部44Aの位置よりも第2端部44Bの位置の方が上底16の側に位置して(台形の脚に水平面内で直交する方向に取り付けられて)いる。すなわち雄型面ファスナ44は、雌型面ファスナ42に対して屈曲した状態で外側袋体10に取り付けられている。
【0018】
このような雄型面ファスナ44によれば、外側袋体10を患部に巻回した後において、雄型面ファスナ44の長手方向中心線を雌型面ファスナ42の長手方向中心線に一致させることができる。これにより雌型面ファスナ42と雄型面ファスナ44の重複面積が増え、確実な係止が可能になる点で好都合である。
【0019】
本実施形態における面ファスナ40は、外側袋体10に収容されたビーズ充填体20の区画24の区分方向に対し水平面内で直角に公差する方向に沿った4箇所に取り付けられている。また、外側袋体10平面視した際の形態である等脚台形の高さ方向中央部分(上底16と下底18の中間位置から)の直近位置における2本の面ファスナ40の配設間隔L1が他の位置における面ファスナ40の配設間隔L2よりも十分に広くなっている。このように等脚台形(外側袋体10)の高さ方向中央部分の直近位置における2本の面ファスナ40の配設間隔L1を広くしたことにより、この部分で患部を屈曲させた状態で固定することができる。
【0020】
次に本実施形態における陰圧式固定具100の使用方法について説明する。本実施形態においては、使用者USRの脚に陰圧式固定具100が装着される形態についての説明を行う。図4に示すように、外側袋体10を第2シート体14が上面になるように設置する。使用者USRは脚を第2シート体14の上面に載置する。次に使用者USRは図5に示すように、使用者USRの脚に外側袋体10を巻回して、雌型面ファスナ42に雄型面ファスナ44を係止させる。図6に示すようにすべての面ファスナ40が係止されたら、図7および図8に示すように排気ポンプ50のチューブ52を逆止弁付排気口30に連結する。逆止弁付排気口30への排気ポンプ50の連結が完了した後、図9に示すように、使用者USRは切替ダイヤル32を矢印Aの向きに回転させて内蔵されている図示しない逆止弁を作動状態にする。
【0021】
次に使用者USRは図10に示すように、排気ポンプ50を操作して外側袋体10の内部空間の排気を行う。外側袋体10の内部空間の空気を外側袋体10の外部に排出をすると、図11に示すように、ビーズ充填体20の発泡樹脂製ビーズ26どうしが密着してビーズ充填体20が硬化する。ビーズ充填体20は第2シート体14の内側面に対して位置決めされた状態で固定されているため、当初位置が維持され、排気を行う前における患部の状態で適切に患部を固定することができる。図11に示すように、逆止弁付排気口30からチューブ52を取り外しても、逆止弁の作用により外側袋体10の内部空間への空気の流入が防止され、ビーズ充填体20の硬化状態が維持される。
【0022】
このようにして患部を固定した状態で病院などの搬送先に到着した後は、使用者または医師等が切替ダイヤル32を図9中における矢印Aと逆方向に回転させれば、逆止弁を解除することができる。これにより逆止弁付排気口30から外側袋体10の内部空間に外部の空気の流入が許容され、硬化状態だったビーズ充填体20も柔軟性を回復し、患部の固定を解除することができる。この後、使用者USRまたは医師等が面ファスナ40の係合を解除して患部への処置を行うことができる。
【0023】
以上に、本発明にかかる陰圧式固定具100について実施形態に基づいて説明をしたが、本発明の技術的範囲は、以上の実施形態に限定されるものではない。すなわち、発明の要旨を変更しない範囲における適宜変更を施した構成は、本発明の技術的範囲に属する。例えば、本実施形態においては、外側袋体10の平面視形状が等脚台形に形成された形態について説明しているが、外側袋体10の平面視形状は台形であればよい。
【0024】
また、本実施形態におけるビーズ充填体20は、外側袋体10の上底16と下底18とに直交する直線によって袋体22を複数の区画24に区分した形態について説明しているが、この形態に限定されるものではない。袋体22を上底16と下底18と非直交な直線で複数の区画24に区分した形態を採用することもできる。また、区画24を形成する直線と面ファスナ40の配設方向の直線とは水平面内において所要角度で交差していればよく、互いに直交している必要はない。
【0025】
また、本実施形態における係合部材は、雌型面ファスナ42と雄型面ファスナ44からなる面ファスナ40を用いた形態について説明しているが、係合部材は面ファスナ40に限定されるものではない。係合部材としてベルトとバックル等を用いた形態を採用することもできる。要は、陰圧式固定具100を患部に巻回した状態を維持することができれば具体的な形態は特に限定されるものではない。
【0026】
また、本実施形態における雄型面ファスナ44は、雌型面ファスナ42の長手方向の中心線に対し、雄型面ファスナ44の長手方向の中心線が屈曲した状態で外側袋体10に取り付けられているが、この形態に限定されるものではない。雌型面ファスナ42または雄型面ファスナ44の一方が他方に対して十分の幅広に形成した形態を採用することもできる。この場合においては、雌型面ファスナ42の長手方向中心線および雄型面ファスナ44の長手方向中心線が同一直線上または平行になるように配設された形態を採用することもできる。
【0027】
また、本実施形態においては、外側袋体10を直接患部に巻回する形態について説明しているが、図12に示すように、患部との接触面である第2シート体14の表面に積層ガーゼ等に代表される患部接触シート60を載置して使用することもできる。また、患部接触シート60の位置ずれを防止するために、患部接触シート60と第2シート体14の表面に対となる係合部材(図示はせず)を配設することもできる。このような係合部材としては係止部材と同様に面ファスナを採用することができる。このような患部接触シート60を採用することで、患部に出血がある場合であっても陰圧式固定具100の汚損を防止することができ、感染症対策にもなる。
【0028】
さらに以上の実施形態において説明した変形例を適宜組み合わせた形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0029】
10:外側袋体
12:第1シート体,14:第2シート体,16:上底,18:下底
20:ビーズ充填体
22:袋体,24:区画,26:発泡樹脂製ビーズ
30:逆止弁付排気口
32:切替ダイヤル
40:面ファスナ
42:雌型面ファスナ,
44:雄型面ファスナ,44A:第1端部,44B:第2端部
50:排気ポンプ
52:チューブ
60:患部接触シート
100:陰圧式固定具
USR:使用者
L1,L2:面ファスナの配設間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12