(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180158
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】鉄道車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B61D 27/00 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
B61D27/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093311
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】藤木 克洋
(57)【要約】
【課題】室内熱交換器を通過する空気の量が減少しにくく、吹き出し口に向かう結露水の飛散が抑えられるにも関わらず、メンテナンスが容易な鉄道車両用空調装置を提供する。
【解決手段】鉄道車両用空調装置600において、室内熱交換器124は、筐体の内部における空気の流れAFが通過する位置に配置される。ドレンパン152は、筐体の内部における室内熱交換器124の下方に配置される。室内熱交換器124の下端部124eと、ドレンパン152の底面152aとの間に、第1間隙GP1が確保されている。閉塞部材300は、ドレンパン152の底面152aに弾性的に密接する弾性密接部390と、室内熱交換器124の荷重の少なくとも一部を弾性密接部390に伝える態様で、弾性密接部390と室内熱交換器124との間を閉塞している閉塞部310とを有し、室内熱交換器124に対して着脱可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に設置され、各々前記鉄道車両の車室に通じるリターン口及び吹き出し口が形成されている筐体と、
前記筐体に収容され、前記リターン口から前記吹き出し口に向かう空気の流れを前記筐体の内部に形成する室内ファンと、
前記筐体の内部における前記空気の流れが通過する位置に配置され、前記空気と冷媒との熱交換を行う室内熱交換器と、
前記筐体の内部における前記室内熱交換器の下方に配置され、前記室内熱交換器で結露した結露水を受け止めるドレンパンと、
を備え、
前記室内熱交換器の下端部が前記ドレンパンの底面から離間して該底面よりも上方に配置されている鉄道車両用空調装置であって、
前記ドレンパンの前記底面に弾性的に密接する弾性密接部と、前記室内熱交換器の荷重の少なくとも一部を前記弾性密接部に伝える態様で、前記弾性密接部と前記室内熱交換器との間を閉塞している閉塞部とを有し、前記室内熱交換器に対して着脱可能な閉塞部材、
を備える、鉄道車両用空調装置。
【請求項2】
前記吹き出し口は、前記ドレンパンの前記底面と等しい高さの位置、又は前記ドレンパンの前記底面よりも低い位置に形成されている、
請求項1に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項3】
前記閉塞部は、
前記弾性密接部に押し当たる押し当たり部と、
前記室内熱交換器に着脱可能に固定される固定部と、
前記押し当たり部と前記固定部とをつなぐ本体部と、
を有する、請求項1又は2に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項4】
前記室内熱交換器は、前記ドレンパンの前記底面に対面する下面と、前記室内熱交換器の厚さ方向に関して前記下面とは反対側の上面とを有し、前記吹き出し口に近づくに従って、前記ドレンパンの前記底面に近づく向きに傾斜して配置されており、
前記固定部は、前記上面に着脱可能に固定され、
前記本体部は、
前記押し当たり部から前記上面に近づく向きに延びた第1板状部と、
前記第1板状部の端部から前記固定部に向かって折れ曲がった第2板状部と、
を有する、請求項3に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項5】
前記第1板状部は、前記室内熱交換器の、前記上面と前記下面とをつなぐ下端面との間に間隙を確保した状態で前記下端面と対面しており、
前記閉塞部材は、
前記下端面に接触した状態で前記間隙に配置され、前記下端面の前記結露水を、前記弾性密接部を通じて前記ドレンパンの前記底面へ案内する介在部、
をさらに有する、請求項4に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項6】
前記弾性密接部は、
前記ドレンパンの前記底面に密接する密接部と、
前記密接部と一体に形成され、前記押し当たり部と嵌合する嵌合部と、
を有する、請求項3に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項7】
前記ドレンパンは、前記室内熱交換器と前記室内ファンとの間の位置において前記底面から立ち上がった止水壁を有し、
前記閉塞部材は、前記止水壁から離間して配置されている、
請求項3に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項8】
前記閉塞部材は、前記弾性密接部と前記閉塞部とが一体に形成された合成樹脂製の部材によって構成されている、
請求項1又は2に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項9】
前記ドレンパンは、前記室内熱交換器と前記室内ファンとの間の位置において前記底面から立ち上がった止水壁を有し、
前記閉塞部材は、前記止水壁から離間して配置されている、
請求項8に記載の鉄道車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の車室を空調する鉄道車両用空調装置は、鉄道車両に設置される筐体と、筐体に収容される空調機器とを備える。空調機器には、車室の空気と熱交換する室内熱交換器と、その熱交換を促進する室内ファンとが含まれる。
【0003】
筐体には、各々鉄道車両の車室に通じるリターン口及び吹き出し口が形成されている。室内ファンは、リターン口から吹き出し口に向かう空気の流れを筐体の内部に形成する。その空気の流れが通過する位置に、室内熱交換器が配置される。また、室内熱交換器の下方には、室内熱交換器で結露した結露水を受け止めるドレンパンが配置される。
【0004】
特許文献1に開示されるように、鉄道車両用空調装置においては、室内熱交換器の下端部とドレンパンの底面との間に間隙が確保された構成を有するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
室内ファンによって形成される空気の流れが仮に上記間隙を通過すると、その分、室内熱交換器を通過する空気の量が減少する。このため、室内熱交換器における熱交換の効率が悪化する。また、室内熱交換器の下端部に集まった結露水が、空気の流れと一緒に吹き出し口に向かって飛散することもあり得る。吹き出し口に向かって飛散した結露水は、ダクトに侵入し異臭を発生させる原因となり得る。
【0007】
そこで、室内熱交換器の下端部とドレンパンの底面との間隙をパッキンで塞ぐことが考えられる。しかし、その場合、鉄道車両用空調装置のメンテナンスの容易性が損なわれてしまう。
【0008】
本開示の目的は、室内熱交換器を通過する空気の量が減少しにくく、吹き出し口に向かう結露水の飛散が抑えられるにも関わらず、メンテナンスが容易な鉄道車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示に係る鉄道車両用空調装置は、
鉄道車両に設置され、各々前記鉄道車両の車室に通じるリターン口及び吹き出し口が形成されている筐体と、
前記筐体に収容され、前記リターン口から前記吹き出し口に向かう空気の流れを前記筐体の内部に形成する室内ファンと、
前記筐体の内部における前記空気の流れが通過する位置に配置され、前記空気と冷媒との熱交換を行う室内熱交換器と、
前記筐体の内部における前記室内熱交換器の下方に配置され、前記室内熱交換器で結露した結露水を受け止めるドレンパンと、
を備え、
前記室内熱交換器の下端部が前記ドレンパンの底面から離間して該底面よりも上方に配置されている鉄道車両用空調装置であって、
前記ドレンパンの前記底面に弾性的に密接する弾性密接部と、前記室内熱交換器の荷重の少なくとも一部を前記弾性密接部に伝える態様で、前記弾性密接部と前記室内熱交換器との間を閉塞している閉塞部とを有し、前記室内熱交換器に対して着脱可能な閉塞部材、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る鉄道車両用空調装置によれば、閉塞部が弾性密接部と室内熱交換器との間を閉塞しているので、室内熱交換器を通過する空気の量が減少しにくく、吹き出し口に向かう結露水の飛散が抑えられる。また、閉塞部材が室内熱交換器に対して着脱可能であるため、本開示に係る鉄道車両用空調装置はメンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係る鉄道車両用空調装置の平面図
【
図2】実施形態1に係る鉄道車両用空調装置の主要部の構成を示す概念図
【
図3】実施形態2に係る鉄道車両用空調装置の主要部の構成を示す概念図
【
図4】実施形態3に係る鉄道車両用空調装置の主要部の構成を示す概念図
【
図5】実施形態4に係る鉄道車両用空調装置の主要部の構成を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、実施形態に係る鉄道車両用空調装置について説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。
【0013】
[実施形態1]
図1に示すように、本実施形態に係る鉄道車両用空調装置600は、鉄道車両に設置される筐体200と、筐体200に収容され、鉄道車両の車室としての客室を空調する空調機器100とを備える。筐体200及び空調機器100は、鉄道車両の屋根部分に配置される。
【0014】
空調機器100は、各々冷媒を用いて冷凍サイクルを構成する2系統の冷凍サイクル装置110及び120を有する。
【0015】
一方の冷凍サイクル装置110は、冷媒を圧縮する圧縮機111と、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器としての機能を有する室外熱交換器112と、凝縮された冷媒を膨張させる膨張器113と、膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器としての機能を有する室内熱交換器114とを有する。室内熱交換器114は、客室から吸い込まれた空気と冷媒との熱交換を行う。圧縮機111、室外熱交換器112、及び膨張器113は、室内熱交換器114と一緒に冷凍サイクルを構成する共同機器群である。
【0016】
他方の冷凍サイクル装置120も同様に、圧縮機121、凝縮器としての機能を有する室外熱交換器122、膨張器123、及び蒸発器としての機能を有する室内熱交換器124を有する。室内熱交換器124は、客室から吸い込まれた空気と冷媒との熱交換を行う。圧縮機121、室外熱交換器122、及び膨張器123は、室内熱交換器124と一緒に冷凍サイクルを構成する共同機器群である。
【0017】
また、空調機器100は、室内熱交換器114及び124と客室の空気との熱交換を促進する室内ファン130、並びに室外熱交換器112及び122と鉄道車両の外部の空気との熱交換を促進する室外ファン140を備える。
【0018】
以下の説明を容易にするために、鉄道車両の長さ方向に平行なX軸、鉄道車両の幅方向に平行なY軸、及び鉛直方向に平行なZ軸を有する右手系のXYZ直交座標を定義する。鉛直上方に向かう方向が、Z軸プラス方向である。
【0019】
筐体200は、Z軸に平行な平面視において、長辺がX軸に平行で短辺がY軸に平行な長方形状に形成されている。筐体200は、底板を有する箱状の基枠210と、基枠210の上部開口を塞ぐことにより、空調機器100を収容するための収容空間を、基枠210と共に画定する天板220とを有する。
図1では、筐体200の内部を示すため、天板220については一部のみを示す。
【0020】
また、筐体200は、基枠210と天板220とで画定される収容空間を、X軸方向に並ぶ室内機室S1、室外機室S2、及び圧縮機室S3に仕切る仕切板231及び232を有する。
【0021】
室内機室S1に、室内熱交換器114及び124、並びに室内ファン130が収容されている。室外機室S2には、室外熱交換器112及び122、膨張器113及び123、並びに室外ファン140が収容されている。圧縮機室S3には、圧縮機111及び121が収容されている。
【0022】
室内機室S1における筐体200の底面には、各々鉄道車両の客室に通じるリターン口241、242、及び吹き出し口250が開口している。
【0023】
吹き出し口250は、室内機室S1におけるY軸方向の中央部分に配置されている。一方のリターン口241は、室内機室S1におけるY軸方向の一端部に配置されている。他方のリターン口242は、室内機室S1におけるY軸方向の他端部に配置されている。
【0024】
上述した室内ファン130は、吹き出し口250の位置に配置されている。具体的には、室内ファン130は吹き出し口250に当てがわれている。一方の室内熱交換器114は、一方のリターン口241と吹き出し口250との間に配置されている。他方の室内熱交換器124は、他方のリターン口242と吹き出し口250との間に配置されている。
【0025】
室内ファン130は、リターン口241及び242から吹き出し口250に向かう空気の流れAFを室内機室S1に形成する。
【0026】
具体的には、室内ファン130は、リターン口241及び242を通じて、客室の空気を室内機室S1へと吸い上げる。一方のリターン口241から吸い上げられた空気は、一方の室内熱交換器114を通過し、他方のリターン口242から吸い上げられた空気は、他方の室内熱交換器124を通過する。また、室内ファン130は、室内熱交換器114及び124を通過した空気を、吹き出し口250を通じて再び客室に戻す。
【0027】
蒸発器として機能している室内熱交換器114及び124が客室の空気と熱交換する際、室内熱交換器114及び124の表面に、空気中の水分が結露する。室内熱交換器114及び124の表面に結露した水分である結露水は、室内熱交換器114及び124から滴下する。
【0028】
そこで、空調機器100は、室内機室S1における一方の室内熱交換器114の下方に配置されたドレンパン151と、室内機室S1における他方の室内熱交換器124の下方に配置されたドレンパン152とを備える。ドレンパン151は、室内熱交換器114から滴下する結露水を受け止める。ドレンパン152は、室内熱交換器124から滴下する結露水を受け止める。
【0029】
室内熱交換器114及びドレンパン151の周囲の構造と、室内熱交換器124及びドレンパン152の周囲の構造とは同じである。そこで以下、代表して、室内熱交換器124及びドレンパン152の周囲の構造を詳細に説明する。
【0030】
図2に示すように、ドレンパン152は、筐体200の底面211に載っている。ドレンパン152は、室内熱交換器124で結露した結露水が滴下する底面152aと、底面152aからZ軸方向に立ち上がった止水壁152bとを有する。
図2には、室内熱交換器124と、
図1に示した室内ファン130との間に配置される止水壁152bを示す。
【0031】
止水壁152bの上端には、室内熱交換器124に近づく向き、具体的には、Y軸マイナス方向に折り曲げられた水返し部152cが形成されている。
【0032】
室内熱交換器124は、ドレンパン152の底面152aに対面する下面124aと、室内熱交換器124の厚さ方向に関して下面124aとは反対側の上面124bとを有する。また、室内熱交換器124は、上面124bと下面124aとをつなぐ端面を有する。
図2には、室内熱交換器124の端面のうち、下端面124c及び上端面124dを示す。上端面124dは、X軸方向に直角な室内熱交換器124の長さ方向に関して、下端面124cとは反対側の位置にある。
【0033】
室内熱交換器124は、吹き出し口250に近づくに従って、下面124aがドレンパンの底面152aに近づく向きに傾斜して配置されている。下端面124cは、上端面124dよりも下方に位置する。
【0034】
但し、室内熱交換器124の下端部124eは、ドレンパン152の底面152aから離間して、底面152aよりも上方に配置されている。具体的には、室内熱交換器124の下端部124eと、ドレンパン152の底面152aとの間に、第1間隙GP1が確保されている。
【0035】
この理由の1つは、鉄道車両の進行に伴うZ軸方向の揺れによって下端部124eがドレンパン152の底面152aに損傷を与えてしまうことを回避することにある。なお、本実施形態において、室内熱交換器124の下端部124eとは、具体的には、室内熱交換器124の下面124aと下端面124cとの境界に位置する角部を指す。
【0036】
一方、仮に空気の流れAFが第1間隙GP1を通過すると、その分、室内熱交換器124を通過する空気の量が減少する。このため、室内熱交換器124における熱交換の効率が悪化する。
【0037】
また、室内熱交換器124の下端部124eに集まった結露水が、空気の流れAFと一緒に、吹き出し口250に向かって飛散することもあり得る。吹き出し口250に向かって飛散した結露水は、ダクトに侵入し異臭を発生させる原因となり得る。なお、
図2においては、吹き出し口250を破線で示している。また、
図2では、室内ファン130の図示を省略している。
【0038】
特に、本実施形態に係る筐体200においては、
図2において破線で示すように、吹き出し口250は、ドレンパン152の底面152aと等しい高さの位置、又はドレンパン152の底面152aよりも低い位置に形成されている。このため、仮に結露水の飛散が生じると、その飛散した結露水が吹き出し口250に侵入しやすい。
【0039】
そこで、第1間隙GP1をパッキンで塞ぐことが考えられる。しかし、その場合、室内熱交換器124、ドレンパン152等のメンテナンスの容易性が損なわれる。このような事情に鑑みて、本実施形態に係る鉄道車両用空調装置600は、室内熱交換器124を通過する空気の量が減少しにくく、吹き出し口250に向かう結露水の飛散が抑えられるにも関わらず、メンテナンスを容易に行えるようにするために、閉塞部材300を備える。
【0040】
閉塞部材300は、ドレンパン152の底面152aに弾性的に密接する弾性密接部390と、室内熱交換器124の荷重の一部を弾性密接部390に伝える態様で、弾性密接部390と室内熱交換器124との間を閉塞している閉塞部310とを有する。第1間隙GP1における空気の流れAFの通過は、閉塞部310によって抑制される。
【0041】
弾性密接部390は、合成樹脂、具体的には、エラストマーによって形成されている。エラストマーとしては熱可塑性エラストマーが好ましい。弾性密接部390は、スポンジ、断熱材等に比べると吸水しにくいので、スポンジ、断熱材等を用いる場合に比べると、結露水を吸水することに起因する異臭の発生が生じにくい。閉塞部310は、金属、具体的には、ステンレス鋼によって形成されている。
【0042】
閉塞部310は、弾性密接部390に押し当たる押し当たり部320と、室内熱交換器124に着脱可能に固定される固定部330と、押し当たり部320と固定部330とをつなぐ本体部340とを有する。固定部330は、室内熱交換器124の上面124bに、ねじCLによって着脱可能に固定される。
【0043】
本体部340は、押し当たり部320から上面124bに近づく向きに延びた第1板状部350と、第1板状部350の端部から固定部330に向かって折れ曲がった第2板状部360とを有する。
【0044】
なお、押し当たり部320、固定部330、及び本体部340は、いずれも室内熱交換器124に沿ってX軸方向に延在している。押し当たり部320、固定部330、及び本体部340は、ステンレス製の板金をL字状に折り曲げた一体のアングル材によって構成されている。
【0045】
弾性密接部390は、ドレンパン152の底面152aに密接する密接部391と、密接部391と一体に形成された嵌合部392とを有する。密接部391は、X軸方向に延在する中空管状をなす。嵌合部392は、押し当たり部320及び第1板状部350の一部に密着した状態で、これら押し当たり部320及び第1板状部350の一部と嵌合する。
【0046】
また、本実施形態に係る鉄道車両用空調装置600は、空気の流れAFの、室内熱交換器124と天板220との間の通過を抑制するために、上方用閉塞部材400も備える。上方用閉塞部材400も閉塞部材300と同じ構成を有する。
【0047】
具体的には、上方用閉塞部材400は、天板220に弾性的に密接する上方用弾性密接部490と、上方用弾性密接部490と室内熱交換器124との間の第3間隙GP3を閉塞している上方用閉塞部410とを有する。第3間隙GP3における空気の流れAFの通過は、上方用閉塞部410によって阻止される。
【0048】
上方用閉塞部410は、上方用弾性密接部490に押し当たる上方用押し当たり部420と、室内熱交換器124に着脱可能に固定される上方用固定部430と、上方用押し当たり部420と上方用固定部430とをつなぐ上方用本体部440とを有する。上方用固定部430は、室内熱交換器124の下面124aに、ねじCLによって着脱可能に固定される。
【0049】
上方用本体部440は、上方用押し当たり部420から下面124aに近づく向きに延びた上方用第1板状部450と、上方用第1板状部450の端部から上方用固定部430に向かって折れ曲がった上方用第2板状部460とを有する。
【0050】
上方用弾性密接部490は、天板220に密接する上方用密接部491と、上方用密接部491と一体に形成された上方用嵌合部492とを有する。上方用密接部491は、X軸方向に延在する中空管状をなす。上方用嵌合部492は、上方用押し当たり部420及び上方用第1板状部450の一部に密着した状態で、これら上方用押し当たり部420及び上方用第1板状部450の一部と嵌合する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、閉塞部310が弾性密接部390と室内熱交換器124との間を閉塞しているので、室内熱交換器124の下端部124eとドレンパン152の底面152aとの間における空気の流れAFの通過が、閉塞部310によって抑制される。このため、室内熱交換器124における熱交換の効率の低下が抑えられ、かつ室内熱交換器124の下端部124eに集まった結露水の、吹き出し口250に向かう飛散が抑えられる。
【0052】
また、閉塞部材300は、止水壁152b及び水返し部152cよりもY軸マイナス方向に配置されている。つまり、閉塞部材300は、止水壁152b及び水返し部152cから離間して配置されている。このため、閉塞部材300から止水壁152b及び水返し部152cへの結露水の伝わりが断たれる。この結果、結露水が止水壁152bよりも吹き出し口250に近い位置に流出する可能性が一層低減される。
【0053】
また、閉塞部材300は、ねじCLによって室内熱交換器124に固定されるため、室内熱交換器124に対して着脱可能である。上方用閉塞部材400についても同様である。このため、メンテナンスの際には、閉塞部材300及び上方用閉塞部材400を室内熱交換器124から取り外すことができる。従って、閉塞部材300、上方用閉塞部材400のメンテナンスを容易に行えるのは勿論、室内熱交換器124、ドレンパン152等のメンテナンスも容易に行える。
【0054】
また、上方用閉塞部材400は、閉塞部材300と同じ構成を有する。つまり、上方用閉塞部材400と閉塞部材300とで、構成部品の共通化を図ることができる。このため、上方用閉塞部材400が閉塞部材300とは異なる構成を有する場合に比べると、部品の点数の削減及び部品の管理の容易化を図ることができる。
【0055】
[実施形態2]
図2に示したように、第1板状部350は、室内熱交換器124の下端面124cとの間に第2間隙GP2を確保した状態で、下端面124cと対面している。この第2間隙GP2に、ドレンパン152への結露水の流下を促すための介在部を設けてもよい。以下、その具体例を述べる。
【0056】
図3に示すように、本実施形態に係る閉塞部材300は、第2間隙GP2に配置される介在部としての中空部370をさらに備える。中空部370は、下端面124cに沿ってX軸方向に延在する中空管状をなす。
【0057】
中空部370は、弾性密接部390の嵌合部392から、室内熱交換器124の下端面124cに向かって突出している。中空部370は、下端面124cに接触しているため、下端面124cの結露水を、弾性密接部390を通じてドレンパン152の底面152aへ案内する役割を果たす。
【0058】
つまり、下端面124cの結露水は、中空部370及び弾性密接部390を伝ってドレンパン152の底面152aへ流下する。このため、本実施形態によれば、室内熱交換器124の、特に下端面124c及び下端部124eに結露水が留まりにくい。従って、室内熱交換器124にかびが発生しにくく、かつ結露水の排出が円滑に行われる。
【0059】
なお、中空部370は、弾性密接部390と一体に形成されており、弾性を有する。中空部370は、加圧され圧縮された状態で、下端面124cと嵌合部392との間に介在している。このため、鉄道車両の進行に伴って揺れが発生しても、中空部370の位置がずれにくい。他の構成及び効果は、実施形態1の場合と同様である。
【0060】
[実施形態3]
第2間隙GP2に配置する介在部は、中空部370に限られない。以下、介在部の他の具体例を述べる。
【0061】
図4に示すように、本実施形態に係る閉塞部材300は、第2間隙GP2に配置される介在部としての返し部380を複数備える。各々X軸方向に延在する複数、具体的には3つの返し部380が、室内熱交換器124の厚さ方向に並んでいる。
【0062】
各々の返し部380は、弾性密接部390と一体に形成されており、弾性を有する。各々の返し部380は、弾性密接部390の嵌合部392から、室内熱交換器124の下端面124cに向かって延在しており、下端面124cを弾性的に押圧した状態で下端面124cに接触している。
【0063】
各々の返し部380も、
図3に示す中空部370と同様、下端面124cの結露水を、弾性密接部390を通じてドレンパン152の底面152aへ案内する役割を果たす。つまり、下端面124cの結露水は、返し部380及び弾性密接部390を伝ってドレンパン152の底面152aへ流下する。このため、実施形態2と同様の効果が得られる。
【0064】
[実施形態4]
上記実施形態1-3に係る閉塞部材300と同様の機能を有するものを、一体の合成樹脂の成形体によって実現することもできる。以下、その具体例を述べる。
【0065】
図5に示すように、本実施形態に係る閉塞部材500は、ドレンパン152の底面152aに弾性的に密接する弾性密接部520と、室内熱交換器124の荷重の一部を弾性密接部520に伝える態様で、弾性密接部520と室内熱交換器124との間を閉塞している閉塞部510とを有する点で、上記実施形態1-3に係る閉塞部材300と共通する。
【0066】
但し、本実施形態に係る閉塞部材500は、弾性密接部520と閉塞部510とが一体に形成された合成樹脂製、具体的には、ポリウレタン製の部材によって構成されている。つまり、閉塞部材500の全体が弾性を有する。
【0067】
閉塞部材500は、ドレンパン152の底面152aに弾性的に密接する第1側面と、室内熱交換器124の下端面124cに弾性的に密接する第2側面と、第1側面と第2側面とをつなぐ第3側面とを有し、X軸方向を高さ方向とする三角柱の形状に形成されている。第1側面は、弾性密接部520に形成され、第2側面及び第3側面は、閉塞部510に形成されている。
【0068】
本実施形態によっても、閉塞部510が弾性密接部520と室内熱交換器124との間を閉塞しているので、室内熱交換器124の下端部124eとドレンパン152の底面152aとの間における空気の流れAFの通過が、閉塞部510によって阻止される。
【0069】
以上、実施形態1-4について説明した。実施形態1-4では、閉塞部310、510がそれぞれ室内熱交換器124の荷重の一部を弾性密接部390、520に伝える構成を例示した。閉塞部310、510がそれぞれ室内熱交換器124の荷重の全部を弾性密接部390、520に伝える構成を採ってもよい。この他、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、実施形態1-4に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0070】
以下、本開示の諸態様を付記する。
【0071】
(付記1)
鉄道車両に設置され、各々前記鉄道車両の車室に通じるリターン口及び吹き出し口が形成されている筐体と、
前記筐体に収容され、前記リターン口から前記吹き出し口に向かう空気の流れを前記筐体の内部に形成する室内ファンと、
前記筐体の内部における前記空気の流れが通過する位置に配置され、前記空気と冷媒との熱交換を行う室内熱交換器と、
前記筐体の内部における前記室内熱交換器の下方に配置され、前記室内熱交換器で結露した結露水を受け止めるドレンパンと、
を備え、
前記室内熱交換器の下端部が前記ドレンパンの底面から離間して該底面よりも上方に配置されている鉄道車両用空調装置であって、
前記ドレンパンの前記底面に弾性的に密接する弾性密接部と、前記室内熱交換器の荷重の少なくとも一部を前記弾性密接部に伝える態様で、前記弾性密接部と前記室内熱交換器との間を閉塞している閉塞部とを有し、前記室内熱交換器に対して着脱可能な閉塞部材、
を備える、鉄道車両用空調装置。
【0072】
(付記2)
前記吹き出し口は、前記ドレンパンの前記底面と等しい高さの位置、又は前記ドレンパンの前記底面よりも低い位置に形成されている、
付記1に記載の鉄道車両用空調装置。
【0073】
(付記3)
前記閉塞部は、
前記弾性密接部に押し当たる押し当たり部と、
前記室内熱交換器に着脱可能に固定される固定部と、
前記押し当たり部と前記固定部とをつなぐ本体部と、
を有する、付記1又は2に記載の鉄道車両用空調装置。
【0074】
(付記4)
前記室内熱交換器は、前記ドレンパンの前記底面に対面する下面と、前記室内熱交換器の厚さ方向に関して前記下面とは反対側の上面とを有し、前記吹き出し口に近づくに従って、前記ドレンパンの前記底面に近づく向きに傾斜して配置されており、
前記固定部は、前記上面に着脱可能に固定され、
前記本体部は、
前記押し当たり部から前記上面に近づく向きに延びた第1板状部と、
前記第1板状部の端部から前記固定部に向かって折れ曲がった第2板状部と、
を有する、付記3に記載の鉄道車両用空調装置。
【0075】
(付記5)
前記第1板状部は、前記室内熱交換器の、前記上面と前記下面とをつなぐ下端面との間に間隙を確保した状態で前記下端面と対面しており、
前記閉塞部材は、
前記下端面に接触した状態で前記間隙に配置され、前記下端面の前記結露水を、前記弾性密接部を通じて前記ドレンパンの前記底面へ案内する介在部、
をさらに有する、付記4に記載の鉄道車両用空調装置。
【0076】
(付記6)
前記弾性密接部は、
前記ドレンパンの前記底面に密接する密接部と、
前記密接部と一体に形成され、前記押し当たり部と嵌合する嵌合部と、
を有する、付記3から5のいずれか1項に記載の鉄道車両用空調装置。
【0077】
(付記7)
前記ドレンパンは、前記室内熱交換器と前記室内ファンとの間の位置において前記底面から立ち上がった止水壁を有し、
前記閉塞部材は、前記止水壁から離間して配置されている、
付記3から6のいずれか1項に記載の鉄道車両用空調装置。
【0078】
(付記8)
前記閉塞部材は、前記弾性密接部と前記閉塞部とが一体に形成された合成樹脂製の部材によって構成されている、
付記1又は2に記載の鉄道車両用空調装置。
【0079】
(付記9)
前記ドレンパンは、前記室内熱交換器と前記室内ファンとの間の位置において前記底面から立ち上がった止水壁を有し、
前記閉塞部材は、前記止水壁から離間して配置されている、
付記8に記載の鉄道車両用空調装置。
【符号の説明】
【0080】
100 空調機器、110,120 冷凍サイクル装置、111,121 圧縮機、112,122 室外熱交換器、113,123 膨張器、114,124 室内熱交換器、124a 下面、124b 上面、124c 下端面、124d 上端面、124e 下端部、130 室内ファン、140 室外ファン、151,152 ドレンパン、152a 底面、152b 止水壁、152c 水返し部、200 筐体、210 基枠、211 底面、220 天板、231,232 仕切板、241,242 リターン口、250 吹き出し口、300 閉塞部材、310 閉塞部、320 押し当たり部、330 固定部、340 本体部、350 第1板状部、360 第2板状部、370 中空部(介在部)、380 返し部(介在部)、390,520 弾性密接部、391 密接部、392 嵌合部、400 上方用閉塞部材、410 上方用閉塞部、420 上方用押し当たり部、430 上方用固定部、440 上方用本体部、450 上方用第1板状部、460 上方用第2板状部、490 上方用弾性密接部、491 上方用密接部、492 上方用嵌合部、500 閉塞部材、510 閉塞部、600 鉄道車両用空調装置、AF 空気の流れ、CL ねじ、GP1 第1間隙、GP2 第2間隙(間隙)、GP3 第3間隙、S1 室内機室、S2 室外機室、S3 圧縮機室。