(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180173
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】表面処理組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/14 20060101AFI20231213BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20231213BHJP
C08F 8/36 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C09D133/14
C09K3/00 R
C08F8/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093345
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古市 真梨
(72)【発明者】
【氏名】境原 由次
【テーマコード(参考)】
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038GA09
4J038NA06
4J100AL08P
4J100BA31P
4J100BA32H
4J100BA56H
4J100CA01
4J100CA31
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA33
4J100HA61
4J100HC72
4J100JA01
(57)【要約】
【課題】表面自由エネルギーが低い固体の表面への適用において、処理された固体表面が乾燥状態となっても高い親水化効果を有する、表面処理組成物、表面処理方法、固体表面親水化方法、及び固体表面親水化処理キットを提供する。
【解決手段】〔1〕下記の成分(A)~(C)を含有する、表面処理組成物、〔2〕前記〔1〕に記載の表面処理組成物を固体表面へ適用する工程を含む、表面処理方法、〔3〕下記の成分(A)及び成分(B)のいずれか一方を適用した固体表面に、成分(A)及び成分(B)の他方を適用する工程を含む、固体表面親水化方法、並びに、〔4〕下記の成分(A)を含有する組成物I、及び下記の成分(B)を含有する組成物IIを含む、固体表面親水化処理キットである。
(A)イオン性基としてベタイン基のみを有するポリマー
(B)ベタイン基を除くイオン性基と疎水性基とを含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマー
(C)電解質
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~成分(C):
(A)イオン性基としてベタイン基のみを有するポリマー
(B)ベタイン基を除くイオン性基と疎水性基とを含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマー
(C)電解質
を含有する、表面処理組成物。
【請求項2】
成分(A)がベタイン基を有する構成単位(a1)を含み、該ベタイン基を有する構成単位(a1)が下記式(1)で表される、請求項1に記載の表面処理組成物。
【化1】
〔式(1)中、
R
1~R
3は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1もしくは2のアルキル基を示し、
R
4は、炭素数1以上4以下のアルキレン基、又は-Y
1-OPO
3
--Y
2-を示し、Y
1及びY
2は、同一又は異なって、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、
R
5及びR
6は、同一又は異なって、炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
X
1は、酸素原子又はNR
7基を示し、R
7は、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
X
2は、R
4が炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、R
17SO
3
-、又はR
17COO
-を示し、R
17は水酸基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、X
2は、R
4が-Y
1-OPO
3
--Y
2-のとき、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示す。〕
【請求項3】
成分(A)の全構成単位中のベタイン基を有する構成単位(a1)の含有量が、50mol%以上である、請求項2に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
成分(A)のベタイン基がスルホベタイン基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項5】
成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量の質量比〔(B)/(A)〕が、0.001以上1未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項6】
成分(C)の含有量が、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項7】
成分(B)が疎水性基を有する構成単位(b2)を含み、成分(B)の全構成単位中の疎水性基を有する構成単位(b2)の含有量が0.02mol%以上70mol%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項8】
成分(A)及び成分(B)の合計含有量が、0.05質量%以上15質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項9】
臨界表面張力γCが45dyn/cm未満である固体の表面処理に用いる、請求項1~8のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項10】
前記表面処理組成物が親水化処理組成物である、請求項1~9のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の表面処理組成物を固体表面へ適用する工程を含む、表面処理方法。
【請求項12】
下記の成分(A)及び成分(B)のいずれか一方を適用した固体表面に、成分(A)及び成分(B)の他方を適用する工程を含む、固体表面親水化方法。
(A)イオン性基としてベタイン基のみを有するポリマー
(B)ベタイン基を除くイオン性基と疎水性基とを含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマー
【請求項13】
成分(B)を適用した固体表面に、成分(A)を適用する工程を含む、請求項12に記載の固体表面親水化方法。
【請求項14】
下記の成分(A)を含有する組成物I、及び下記の成分(B)を含有する組成物IIを含む、固体表面親水化処理キット。
(A)イオン性基としてベタイン基のみを有するポリマー
(B)ベタイン基を除くイオン性基と疎水性基とを含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理組成物及び表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体表面の処理方法としては、親水化処理、撥水化処理といった固体表面の濡れを制御する方法が知られている。中でも、固体表面の親水化処理は、固体表面の水に対する接触角を低下させ、固体表面を水に対して濡れ易くすることにより、該処理後の固体表面に汚れが付着した際には、汚れが洗浄時に落ち易くなる効果や汚れの再付着を防止する効果が期待できる他、ガラス、鏡等の防曇、帯電防止、熱交換器のアルミニウムフィンの着霜防止、浴槽及びトイレ表面等の防汚性付与等の効果が期待できるため、様々な産業分野で用いられ、固体表面の処理及び方法の検討が進められてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、優れた親水化能力を長期間発揮する親水化処理剤を含有する親水化処理組成物の提供を目的として、ベタイン基を含む構成単位と芳香族基を有する構成単位とを含む共重合体、アニオン性界面活性剤及び水を含有する親水化処理剤組成物、及び該親水化処理剤組成物を固体表面へ塗布する親水化処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体表面の親水化処理においては、前述のとおり、様々な産業分野において効果が期待できることから、種々の材質の固体表面への適用が求められる。特にポリプロピレンのような表面自由エネルギーが低い固体の表面に対しても、高い親水化効果が求められる。
特許文献1の技術では、種々の材質の固体表面に親水性を付与することができるものの、表面自由エネルギーが低くて濡れ難い性質を有する固体の表面に対する親水化効果が未だ十分でない。
また、固体表面に表面処理組成物を適用して処理した直後においては、処理された固体表面が水により湿潤状態にある場合には高い親水化効果を有していても、その後に処理された固体表面が乾燥状態になると、親水化効果が低下することが判明した。そのため、表面処理組成物や表面処理方法の親水化効果の更なる向上が求められている。
本発明は、表面自由エネルギーが低い固体の表面への適用において、処理された固体表面が乾燥状態となっても高い親水化効果を有する、表面処理組成物、表面処理方法、固体表面親水化方法、及び固体表面親水化処理キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、イオン性基としてベタイン基のみを有するポリマー、ベタイン基を除くイオン性基と疎水性基とを含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマー、及び必要に応じて電解質を用いることにより、前記課題を解決できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は下記[1]~[4]を提供する。
[1]次の成分(A)~成分(C):
(A)イオン性基としてベタイン基のみを有する構成単位ポリマー
(B)ベタイン基を除くイオン性基と疎水性基と含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマー
(C)電解質
を含有する、表面処理組成物。
[2]前記[1]に記載の表面処理組成物を固体表面へ適用する工程を含む、表面処理方法。
[3]下記の成分(A)及び成分(B)のいずれか一方を適用した固体表面に、成分(A)及び成分(B)の他方を適用する工程を含む、固体表面親水化方法。
(A)イオン性基としてベタイン基のみを有するポリマー
(B)ベタイン基を除くイオン性基と疎水性基とを含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマー
[4]下記の成分(A)を含有する組成物I、及び下記の成分(B)を含有する組成物IIを含む、固体表面親水化処理キット。
(A)イオン性基としてベタイン基のみを有するポリマー
(B)ベタイン基を除くイオン性基と疎水性基とを含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマー
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面自由エネルギーが低い固体の表面への適用において、処理された固体表面が乾燥状態となっても高い親水化効果を有する、表面処理組成物、表面処理方法、固体表面親水化方法、及び固体表面親水化処理キットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[表面処理組成物]
本発明の表面処理組成物は、次の成分(A)~成分(C):
(A)イオン性基としてベタイン基のみを有するポリマー
(B)ベタイン基を除くイオン性基と疎水性基とを含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマー
(C)電解質
を含有する。
【0010】
本発明の表面処理組成物によれば、表面自由エネルギーが低い固体の表面への適用において、処理された固体表面が乾燥状態となっても高い親水化効果を奏することができる。このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
従来、固体表面に表面処理組成物を適用して処理した直後においては、処理された固体表面が水により湿潤状態にある場合には、親水的なベタイン基を有するポリマー薄膜が該固体表面に均一に吸着することができるため、高い親水化効果を発現することができる。しかしながら、処理された固体表面の乾燥過程においては親水的なベタイン基を有するポリマー薄膜が液滴化し、いわゆる脱濡れ現象が起こり、該ポリマーの親水的なベタイン基による親水化効果が十分に発揮することができなくなることがあった。
本発明の表面処理組成物では、成分(B)が疎水性基を含むことにより、表面自由エネルギーが低い固体の表面に対する親和性が高くなるため、処理された固体表面が乾燥状態になったとしても脱濡れ現象が起こり難く、成分(B)のポリマー薄膜が固体表面に均一に吸着した状態を保つことができると考えられる。そして、成分(B)のイオン性基と成分(A)のベタイン基との静電的相互作用により、成分(B)を介して成分(A)のポリマー薄膜も固体表面に均一に吸着することとなり、成分(A)の親水的なベタイン基による親水化効果が効果的に発揮され、表面自由エネルギーが低い固体の表面への適用においても高い親水化効果を奏することができると考えられる。
また、本発明において、成分(C)は、表面処理組成物中の成分(A)の溶解性を向上させ、配合安定性の向上に寄与し、固体表面を均一に処理することができ、その結果、処理後の固体の表面外観を良好にすることができ、親水化効果を向上させることができると考えられる。
【0011】
本発明において「固体表面」とは、固体と大気との界面を意味する。
前記固体としては、特に制限はなく、ガラス、陶器、磁器、琺瑯、タイル、セラミックス、木材;アルミニウム、ステンレス、真鍮等の金属;ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、FRP等の合成樹脂;木綿、絹、羊毛等の天然繊維;ポリエステル、ナイロン、レーヨン等の合成繊維;毛髪、皮膚、爪、歯などが挙げられる。前記固体表面の形状は、特に制限はない。
【0012】
本発明において、固体の表面自由エネルギーの指標、すなわち、固体の表面の濡れ性の指標には、臨界表面張力γCを用いる。
臨界表面張力γCは、臨界表面張力γCの値よりも低い表面張力を有する液体はその固体に対して濡れる性質を有することを意味する。すなわち、臨界表面張力γCの大きな固体は多くの液体に濡れ易い性質を有し、臨界表面張力γCの小さな固体は濡れ難い性質を有することを意味する。臨界表面張力γCは、測定対象の固体表面に対し、表面張力γLが既知の液体を用いて接触角θを測定し、表面張力γLと接触角θの余弦(cosθ)をプロットし、cosθ=1への外挿値を臨界表面張力γcとするZisman法を用いて測定することができる。
本発明の表面処理組成物は、臨界表面張力γCが45dyn/cm未満である固体の表面処理に用いることが好ましい。本発明の表面処理組成物は、臨界表面張力γCが45dyn/cm未満の固体表面であっても、前述のとおり、成分(B)が疎水性基を有する構成単位を含むことにより、処理された固体表面が乾燥状態になったとしても脱濡れ現象が起こり難く、成分(A)のベタイン基と成分(B)のイオン性基との静電的相互作用により、成分(B)を介して成分(A)のポリマー薄膜も固体表面に均一に吸着することとなり、成分(A)の親水的なベタイン基による親水化効果が効果的に発揮され、該固体表面への適用においても高い親水化効果を奏することができると考えられる。当該観点から、本発明の表面処理組成物は親水化処理組成物として用いることが好ましい。
また、上記の観点から、本発明の表面処理組成物を適用する固体の臨界表面張力γCは、より好ましくは40dyn/cm未満、更に好ましくは35dyn/cm未満、より更に好ましくは32dyn/cm未満、より更に好ましくは30dyn/cm未満であり、そして、好ましくは5dyn/cm以上、より好ましくは10dyn/cm以上、更に好ましくは20dyn/cm以上である。
なお、以下の記載において、表面自由エネルギーが低い固体の表面への適用において、処理された固体表面が乾燥状態における親水化効果を単に「親水化効果」と表記する。
【0013】
<成分(A)>
成分(A)は、親水化効果を高める観点から、イオン性基としてベタイン基のみを有するポリマーである。
本発明において「ベタイン基」とは、カチオン部位とアニオン部位とを有する官能基であって、該官能基全体としては電荷をもたない官能基を意味する。
ベタイン基のカチオン部位とは、正電荷を帯びた原子団であり、好ましくはカチオン性基である。
本発明において「カチオン性基」とは、カチオン基、又は、イオン化されてカチオン基になり得る基をいう。カチオン性基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基が挙げられる。これらの中でも、ベタイン基のカチオン部位は、親水化効果を高める観点から、好ましくは第四級アンモニウム基である。
ベタイン基のアニオン部位とは、負電荷を帯びた原子団であり、好ましくはアニオン性基である。
本発明において「アニオン性基」とは、アニオン基、又は、イオン化されてアニオン基になり得る基をいう。アニオン性基としては、カルボキシ基(-COOM1)、スルホン酸基(-SO3M1)、リン酸基(-OPO3M1
2)等が挙げられる。前記化学式中、M1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。
【0014】
〔構成単位(a1)〕
成分(A)は、親水化効果を高める観点から、好ましくはベタイン基を有する構成単位(a1)(以下、「構成単位(a1)」ともいう)を含む。
なお、本発明において「ベタイン基を有する構成単位(a1)」とは、カチオン部位とアニオン部位とを有する官能基を有し、該構成単位全体としては電荷をもたない構成単位を意味する。
また、成分(A)は、イオン性基としてベタイン基のみを有するポリマーであるため、イオン性基としてアニオン性基のみを有する構成単位、及びイオン性基としてカチオン性基のみを有する構成単位のいずれも含まれない。
成分(A)は、構成単位(a1)のみからなる単独重合体、及び構成単位(a1)と構成単位(a1)以外の他の構成単位(以下、「構成単位(a2)」ともいう)とを含む共重合体のいずれでもよい。成分(A)が共重合体である場合、構成単位(a2)は、イオン性基を有する構成単位以外の構成単位であれば特に限定されない。また、成分(A)が共重合体である場合、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。
【0015】
成分(A)のベタイン基は、親水化効果を高める観点から、好ましくはスルホベタイン基、ホスホベタイン基、又はカルボベタイン基であり、より好ましくはスルホベタイン基又はホスホベタイン基であり、更に好ましくはスルホベタイン基であって、これらのベタイン基のカチオン部位は好ましくは第四級アンモニウム基である。
ベタイン基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0016】
構成単位(a1)は、親水化効果を高める観点から、好ましくは下記式(1)で表される。
【0017】
【化1】
〔式(1)中、
R
1~R
3は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1もしくは2のアルキル基を示し、
R
4は、炭素数1以上4以下のアルキレン基、又は-Y
1-OPO
3
--Y
2-を示し、Y
1及びY
2は、同一又は異なって、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、
R
5及びR
6は、同一又は異なって、炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
X
1は、酸素原子又はNR
7基を示し、R
7は、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
X
2は、R
4が炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、R
17SO
3
-、又はR
17COO
-を示し、R
17は水酸基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、X
2は、R
4が-Y
1-OPO
3
--Y
2-のとき、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示す。〕
【0018】
構成単位(a1)は、好ましくは、スルホベタイン基、ホスホベタイン基、又はカルボベタイン基を有する構成単位である。
構成単位(a1)は、1種であってもよく、2種以上の異なる構成単位であってもよい。
構成単位(a1)は、例えば、下記式(1’)で表されるモノマー(a1’)由来の構成単位である。
【0019】
【化2】
〔式(1’)中、R
1~R
6、X
1、X
2は前記と同じである。〕
【0020】
式(1)及び(1’)中、R1~R6、X1、X2の具体例又は好ましい態様は、親水化効果を高める観点から、以下のとおりである。
R1及びR2は、好ましくは水素原子である。
R3は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X1は、好ましくは酸素原子である。
R4は、好ましくは炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、更に好ましくは炭素数2のアルキレン基である。
R5及びR6は、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X2は、R4が炭素数1以上4以下のアルキレン基のとき、R17SO3
-、又はR17COO-を示し、好ましくはR17SO3
-である。R17は水酸基を有してもよい炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキレン基又は炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、更に好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、より更に好ましくは炭素数3のアルキレン基である。
X2は、R4が-Y1-OPO3
--Y2-のとき、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1以上4以下の炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。
【0021】
構成単位(a1)は、好ましくは、N-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、N-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等のスルホベタイン基を有するモノマー;2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等のホスホベタイン基を有するモノマー;N-カルボキシメチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、N-カルボキシメチル-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等のカルボベタイン基を有するモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より好ましくはスルホベタイン基を有するモノマー及びホスホベタイン基を有するモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、更に好ましくはスルホベタイン基を有するモノマー由来の構成単位であり、より更に好ましくはN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン、及びN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインからなる群から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、より更に好ましくはN-(3-スルホプロピル)-N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン由来の構成単位である。
【0022】
成分(A)の全構成単位中の構成単位(a1)の含有量は、親水化効果を高める観点から、好ましくは50mol%以上、より好ましくは60mol%以上、更に好ましくは70mol%以上、より更に好ましくは80mol%以上、より更に好ましくは85mol%以上、より更に好ましくは90mol%以上、より更に好ましくは95mol%以上、より更に好ましくは97mol%以上であり、そして、上限は100mol%である。
なお、成分(A)の全構成単位中の各構成単位の含有量はNMR等の分析により測定することができる。また、成分(A)の製造時の各モノマーの仕込み比より算出することもできる。
【0023】
〔構成単位(a2)〕
成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(a1)以外の他の構成単位(構成単位(a2))と含んでもよい。構成単位(a2)は、1種であってもよく、2種以上の異なる構成単位であってもよい。
構成単位(a2)としては、(メタ)アクリル酸エステル、アルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、スチレン系モノマー等のノニオン性のモノマーなどの他のモノマー由来の構成単位が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル等の炭素数1以上30以下の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル(アルキレンオキシドの平均付加モル数は好ましくは2以上30以下である。);メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル(アルキレンオキシドの平均付加モル数は好ましくは2以上30以下である。);フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレート等のフェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル(アルキレンオキシドの平均付加モル数は好ましくは2以上30以下である。)などが挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0025】
アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1以上22以下のアルキル基を有するN―アルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン等が挙げられる。
【0026】
成分(A)の全構成単位中の構成単位(a2)の含有量は、親水化効果を高める観点から、好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下、更に好ましくは30mol%以下、より更に好ましくは20mol%以下、より更に好ましくは15mol%以下、より更に好ましくは10mol%以下、より更に好ましくは5mol%以下、より更に好ましくは3mol%以下、より更に好ましくは1mol%以下であり、他の構成単位の含有量は0mol%であってもよい。
【0027】
(成分(A)の製造)
成分(A)の製造方法は特に制限はなく、例えば、下記の(x1)、(y1)の方法が挙げられる。
(x1)前記式(1’)で表されるモノマー(a1’)及び必要に応じて他のモノマーを含む原料モノマーを重合する方法
(y1)下記式(1’-1)で表されるモノマー及び必要に応じて他のモノマーを含む原料モノマーを重合した後、ベタイン化剤によってベタイン化する方法
これらの中でも、モノマーの入手性及び製造の容易性の観点から、(y1)の方法が好ましい。
【0028】
【化3】
〔式(1’-1)中、R
1~R
6、X
1は式(1)と同じであり、好ましい態様も式(1)と同じである。〕
【0029】
(y1)の方法を用いる場合であって、例えば構成単位(a1)がスルホベタイン基を有するモノマー由来の構成単位である場合は、前記式(1’-1)で表されるモノマーを含む原料モノマーを重合した後、ベタイン化剤として下記式(1’-2)で表される化合物又は下記式(1’-3)で表される化合物を反応させてベタイン化することができ、中でも、下記式(1’-2)で表される化合物が好ましい。
【0030】
【化4】
〔式(1’-2)中、nは1又は2であり、好ましくは1である。〕
【0031】
Z-R17-SO3M2 (1’-3)
〔式(1’-3)中、ZはCl又はBr、好ましくはClであり、R17は水酸基を有してもよい炭素数2以上4以下のアルキレン基、好ましくは2-ヒドロキシプロピレン基、M2はNa又はKを示す。〕
【0032】
成分(A)の重量平均分子量は、親水化効果を高める観点から、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは5,000以上、より更に好ましくは10,000以上、より更に好ましくは30,000以上、より更に好ましくは40,000以上であり、そして、表面処理組成物の配合安定性の観点、及び良好な美観を有する処理表面を形成する観点から、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下、更に好ましくは500,000以下、より更に好ましくは200,000以下、より更に好ましくは100,000以下、より更に好ましくは80,000以下である。成分(A)の重量平均分子量は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0033】
<成分(B)>
成分(B)は、固体表面における脱濡れを抑制し、親水化効果を高める観点から、ベタイン基を除くイオン性基と疎水性基とを含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマーである。成分(B)は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。
【0034】
成分(B)のイオン性基は、アニオン性基又はカチオン性基である。アニオン性基及びカチオン性基は、前述のとおりである。
【0035】
成分(B)の疎水性基は、下記の(i)~(iii)からなる群から選ばれる少なくとも1種の1価の基である。
(i)ポリマー主鎖にエステル結合を介して結合してなる、1価の炭化水素基(ただし、炭化水素基の炭素数が6以上である場合には、前記炭化水素基は置換基としてヒドロキシ基を有してもよい)
(ii)ポリマー主鎖から炭素-炭素結合で分岐してなる、1価の炭化水素基(ただし、メチル基を除く)
(iii)ポリマー主鎖に酸素原子及び窒素原子からなる群から選ばれる少なくとも1つを有してもよい2価の炭素数1以上の連結基を介して結合してなる、1価の炭化水素基(ただし、メチル基を除く)
【0036】
前記(i)~(iii)の炭化水素基としては、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基;シクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。
前記炭化水素基は、本発明の効果を損なわない範囲で、置換基を有してもよい。
前記炭化水素基における置換基としては、ハロゲン原子;オキシエチレン基、オキシプロピレン基等のオキシアルキレン基等が挙げられる。
また、前記炭化水素基の炭素数が6以上である場合には、前記炭化水素基における置換基はヒドロキシ基であってもよい。この場合のヒドロキシ基の数は、好ましくは1又は2である。
【0037】
前記炭化水素基としては、具体的には、アルキル基;フェニル基、オルトトリル基,メタトリル基,パラトリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;アルケニル基;アルキニル基等が挙げられる。これらの中でも、前記炭化水素基は、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、フェニル基,オルトトリル基,メタトリル基,パラトリル基、ビフェニル基及びベンジル基からなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基及びベンジル基からなる群から選ばれる1種以上である。
【0038】
前記(i)の炭化水素基の炭素数は、固体表面における脱濡れを抑制し、その結果として親水化効果を高める観点から、1以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは18以下である。
前記(ii)及び(iii)の炭化水素基の炭素数は、固体表面における脱濡れを抑制し、その結果として親水化効果を高める観点から、2以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは18以下である。
【0039】
成分(B)は、固体表面における脱濡れを抑制し、親水化効果を高める観点から、好ましくはベタイン基を除くイオン性基を有する構成単位(b1)(以下、「構成単位(b1)」ともいう)と疎水性基を有する構成単位(b2)(以下、「構成単位(b2)」ともいう)とを少なくとも含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマーであり、より好ましくは、構成単位(b1)としてアニオン性基を有する構成単位(b1-I)と疎水性基を有する構成単位(b2)とを少なくとも含むアニオン性ポリマーBI(以下、「アニオン性ポリマーBI」ともいう)、又は、構成単位(b1)としてカチオン性基を有する構成単位(b1-II)と疎水性基を有する構成単位(b2)とを少なくとも含むカチオン性ポリマーBII(以下、「カチオン性ポリマーBII」ともいう)である。
成分(B)は、合成ポリマー及び天然由来ポリマーのいずれでもよい。
構成単位(b1)及び構成単位(b2)は、それぞれ、1種であってもよく、2種以上の異なる構成単位であってもよい。
【0040】
成分(B)が疎水性基として前記(i)の1価の基又は前記(ii)の1価の基を有する場合、成分(B)は、好ましくは合成ポリマーであり、より好ましくはビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物等のビニル単量体の付加重合により得られるビニル系ポリマーである。
【0041】
成分(B)が疎水性基として前記(iii)の1価の基を有する場合、成分(B)は、好ましくは天然由来ポリマーであり、より好ましくは天然物から抽出、精製等の操作により得られるポリマーを化学的に変性されてなるものであり、更に好ましくは主鎖が多糖又は多糖誘導体から構成されている変性多糖類である。
多糖としては、例えば、セルロース、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、デンプン等が挙げられ、好ましくはセルロースである。
多糖誘導体としては、例えば、セルロース誘導体、グアーガム誘導体、タラガム誘導体、ローカストビーンガム誘導体、デンプン誘導体等が挙げられ、好ましくはセルロース誘導体である。また、多糖誘導体としては、例えば、前記多糖をヒドロキシアルキル化したヒドロキシアルキル化多糖等が好ましく挙げられる。ヒドロキシアルキル化多糖の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルデンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルデンプン等が挙げられる。これらの中でも、多糖誘導体は、親水化効果を高める観点から、好ましくはヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはヒドロキシエチルセルロースである。
【0042】
成分(B)が天然由来ポリマーである場合には、成分(B)は、疎水性基の導入剤(以下、「疎水化剤」ともいう)及びカチオン性基の導入剤(以下、「カチオン化剤」ともいう)を用いて多糖又は多糖誘導体に疎水性基及びカチオン性基を導入されてなるものが好ましい。
疎水化剤は、好ましくはグリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)ヒドロカルビルエーテル及び末端エポキシ炭化水素からなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはグリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)アルキルエーテル及び末端エポキシアルカンからなる群から選ばれる1種以上であり、疎水性基による作用を十分に発揮させる観点からは、更に好ましくはグリシジルアルキルエーテルである。疎水化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
カチオン化剤としては、例えば、グリシジルトリアルキルアンモニウムクロリド、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムクロリドが挙げられる。これらの中でも、カチオン化剤は、原料の入手の容易性及び化学的安定性の観点、並びにヒドロキシアルキルセルロースとの反応時に塩が副生しない観点から、好ましくはグリシジルトリアルキルアンモニウムクロリドである。カチオン化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
成分(B)の全構成単位中の構成単位(b1)の含有量は、成分(A)のベタイン基との静電的相互作用により、親水化効果を高める観点から、好ましくは0.5mol%以上、より好ましくは1mol%以上、更に好ましくは2mol%以上、より更に好ましくは3mol%以上、より更に好ましくは10mol%以上、より更に好ましくは20mol%以上、より更に好ましくは50mol%以上、より更に好ましくは60mol%以上であり、そして、好ましくは99mol%以下、より好ましくは95mol%以下、更に好ましくは93mol%以下、より更に好ましくは80mol%以下、より更に好ましくは75mol%以下である。
成分(B)の全構成単位中の構成単位(b2)の含有量は、親水化効果を高める観点から、好ましくは0.02mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上、更に好ましくは0.5mol%以上、より更に好ましくは1mol%以上、より更に好ましくは5mol%以上、より更に好ましくは15mol%以上、より更に好ましくは20mol%以上であり、そして、好ましくは80mol%以下、より好ましくは75mol%以下、更に好ましくは70mol%以下、より更に好ましくは50mol%以下、より更に好ましくは40mol%以下である。
成分(B)の全構成単位中の構成単位(b1)及び構成単位(b2)の合計含有量は、親水化効果の観点から、好ましくは1mol%以上、より好ましくは3mol%以上、更に好ましくは4mol%以上、より更に好ましくは15mol%以上、より更に好ましくは40mol%以上、より更に好ましくは70mol%以上、より更に好ましくは80mol%以上、より更に好ましくは90mol%以上、より更に好ましくは95mol%以上であり、成分(B)の全構成単位中の構成単位(b1)及び構成単位(b2)の合計含有量は、100mol%であってもよい。
なお、成分(B)の全構成単位中の各構成単位の含有量はNMR等の分析により測定することができる。また、成分(B)の製造時の各モノマーの仕込み比より算出することもできる。
【0044】
〔アニオン性ポリマーBI〕
構成単位(b1)のイオン性基がアニオン性基である場合、成分(B)は、好ましくは構成単位(b1)としてアニオン性基を有する構成単位(b1-I)と疎水性基を有する構成単位(b2)とを少なくとも含むアニオン性ポリマーBIである。
アニオン性ポリマーBIは、合成ポリマー又は天然由来ポリマーが挙げられるが、親水化効果を高める観点から、好ましくは合成ポリマーであり、より好ましくはビニル系ポリマーであり、更に好ましくは、構成単位(b1-I)としてアニオン性基含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位と、構成単位(b2)として疎水性基含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位とを少なくとも含むアニオン性ビニル系ポリマー(以下、「アニオン性ビニル系ポリマーBI-1」ともいう)である。
【0045】
アニオン性基含有重合性不飽和モノマーは、成分(A)のベタイン基との静電的相互作用により、親水化効果を高める観点から、好ましくはカルボキシ基含有重合性不飽和モノマー、スルホン酸基含有重合性不飽和モノマー、及びリン酸基含有重合性不飽和モノマーからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはカルボキシ基含有重合性不飽和モノマーであり、更に好ましくは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及び2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸からなる群から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
アニオン性基含有重合性不飽和モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
疎水性基含有重合性不飽和モノマーは、固体表面における脱濡れを抑制し、その結果として親水化効果を高める観点から、疎水性として前記(i)の1価の基又は前記(ii)の1価の基をポリマー骨格に導入することができるものが好ましい。前記と同様の観点から、疎水性基含有重合性不飽和モノマーは、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル、スチレン系ポリマー、及びオレフィンからなる群から選ばれる1種以上である。
(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系モノマーは、前述の成分(A)で例示したものと同様のものが好ましく挙げられる。
オレフィンの炭素数は、好ましくは4以上10以下、より好ましくは4以上8以下である。オレフィンとしては、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、ジイソブチレン(2,4,4-トリメチルペンテン-1及び2,4,4-トリメチルペンテン-2の異性体混合物)等が挙げられる。
オレフィンは、好ましくは1-ブテン、イソブテン、及びジイソブチレンからなる群から選ばれる1種以上である。
疎水性基含有重合性不飽和モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
これらの中でも、疎水性基含有重合性不飽和モノマーは、固体表面における脱濡れを抑制し、その結果として親水化効果を高める観点から、更に好ましくは炭素数1以上30以下の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、より更に好ましくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、及び(メタ)アクリル酸ベンジルからなる群から選ばれる1種以上である。
【0048】
成分(B)がアニオン性ポリマーBIである場合、該成分(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(b1-I)及び構成単位(b2)以外の他の構成単位を含有してもよい。他の構成単位としては、前述のアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン等のノニオン性のモノマー;後述のカチオン性基含有重合性不飽和モノマーなどの他のモノマー由来の構成単位が挙げられる。
【0049】
成分(B)がアニオン性ポリマーBIである場合、成分(B)は、親水化効果を高める観点から、好ましくはカルボキシ基を有するビニル系ポリマーであり、より好ましくは(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸/スチレン共重合体、マレイン酸/ジイソブチレン共重合体、マレイン酸/スチレン共重合体、及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及び(メタ)アクリル酸/スチレン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。
【0050】
成分(B)がアニオン性ポリマーBIである場合、アニオン性ポリマーBIの全構成単位中の構成単位(b1-I)の含有量は、成分(A)のベタイン基との静電的相互作用により、親水化効果を高める観点から、好ましくは3mol%以上、より好ましくは5mol%以上、更に好ましくは10mol%以上、より更に好ましくは20mol%以上、より更に好ましくは30mol%以上、より更に好ましくは40mol%以上、より更に好ましくは50mol%以上、より更に好ましくは60mol%以上であり、そして、好ましくは95mol%以下、より好ましくは93mol%以下、更に好ましくは85mol%以下、より更に好ましくは80mol%以下、より更に好ましくは75mol%以下である。
成分(B)はアニオン性ポリマーBIである場合、アニオン性ポリマーBIの全構成単位中の構成単位(b2)の含有量は、固体表面における脱濡れを抑制し、親水化効果を高める観点から、そして、好ましくは3mol%以上、より好ましくは5mol%以上、更に好ましくは15mol%以上、より更に好ましくは20mol%以上、より更に好ましくは25mol%以上であり、そして、好ましくは95mol%以下、より好ましくは90mol%以下、更に好ましくは80mol%以下、より更に好ましくは70mol%以下、より更に好ましくは60mol%以下、より更に好ましくは50mol%以下、より更に好ましくは40mol%以下である。
成分(B)がアニオン性ポリマーBIである場合、アニオン性ポリマーBIの全構成単位中の構成単位(b1-I)及び構成単位(b2)の合計含有量は、親水化効果の観点から、好ましくは70mol%以上、より好ましくは80mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、より更に好ましくは95mol%以上であり、成分(B)の全構成単位中の構成単位(b1-I)及び構成単位(b2)の合計含有量は、100mol%であってもよい。
なお、アニオン性ポリマーBIの全構成単位中の各構成単位の含有量はNMR等の分析により測定することができる。また、アニオン性ポリマーBIの製造時の各モノマーの仕込み比より算出することもできる。
【0051】
〔カチオン性ポリマーBII〕
構成単位(b1)のイオン性基がカチオン性基である場合、成分(B)は、好ましくは構成単位(b1)としてカチオン性基を有する構成単位(b1-II)と疎水性基を有する構成単位(b2)とを少なくとも含むカチオン性ポリマーBIIである。
ここで、「カチオン性基」とは、前述のとおり、カチオン基、又は、イオン化されてカチオン基になり得る基をいう。
カチオン性ポリマーBIIは、合成ポリマー又は天然由来ポリマーが挙げられる。
【0052】
カチオン性ポリマーBIIが合成ポリマーである場合には、カチオン性ポリマーBIIは、親水化効果を高める観点から、好ましくはビニル系ポリマーであり、より好ましくは、構成単位(b1-II)としてカチオン性基含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位と、構成単位(b2)として疎水性基含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位と、を少なくとも含むカチオン性ビニル系ポリマーである。
カチオン性基含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位は、好ましくは下記式(2)で表されるカチオン性基を有する構成単位である。
【0053】
【化5】
〔式(2)中、
R
8~R
10は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1もしくは2のアルキル基を示し、
X
3は、酸素原子又はNR
18基を示し、R
18は、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、
R
11は、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示し、
X
4は、N
+R
12R
13R
14X
5又はNR
15R
16を示し、R
12~R
16は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、X
5は陰イオンを示す。〕
【0054】
構成単位(b1-II)は、例えば、下記式(2’)で表されるモノマー(b1-II’)由来の構成単位である。
【0055】
【化6】
〔式(2’)中、R
8~R
11、X
3、X
4は前記と同じである。〕
【0056】
式(2)及び(2’)中、R8~R11、X3、X4の具体例又は好ましい態様は、成分(A)のベタイン基との静電的相互作用により、親水化効果を高める観点から、以下のとおりである。
R8及びR9は、好ましくは水素原子である。
R10は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X3は、好ましくは酸素原子である。
R11は、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2のアルキレン基である。
X4は、N+R12R13R14X5が好ましく、R12、R13、R14は、前記と同様の観点から、好ましくはそれぞれメチル基又はエチル基であり、より好ましくはR12、R13、及びR14のいずれか一つはエチル基である。
R15及びR16は、親水化効果を高める観点及び四級化反応の容易性の観点から、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
X5は、好ましくはハロゲンイオン又はC2H5SO4
-であり、より好ましくはC2H5SO4
-である。
【0057】
カチオン性基含有重合性不飽和モノマー由来の構成単位は、成分(A)のベタイン基との静電的相互作用により、親水化効果を高める観点から、好ましくは,N,N-(ジアルキルアミノ)アルキル(メタ)アクリル酸又はその四級化物由来の構成単位であり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3-(ジメチルアミノ)プロピル、及びこれらの四級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル又はそのジエチル硫酸塩由来の構成単位である。
カチオン性基含有重合性不飽和モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
疎水性基含有重合性モノマーは、固体表面における脱濡れを抑制し、その結果として親水化効果を高める観点から、疎水性基として前記(i)の1価の基又は前記(ii)の1価の基をポリマー骨格に導入することができるものが好ましい。前記と同様の観点から、疎水性基含有重合性不飽和モノマーは、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル、スチレン系ポリマー、及びオレフィンからなる群から選ばれる1種以上である。
(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系モノマーとしては、前述の成分(A)で例示したものと同様のものが好ましく挙げられる。
オレフィンとしては、前述のアニオン性ポリマーBIで例示したものと同様のものが好ましく挙げられる。
疎水性基含有重合性不飽和モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
これらの中でも、疎水性基含有重合性不飽和モノマーは、固体表面における脱濡れを抑制し、親水化効果を高める観点から、更に好ましくは炭素数1以上30以下の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、より更に好ましくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、及び(メタ)アクリル酸ベンジルからなる群から選ばれる1種以上である。
【0060】
成分(B)がカチオン性ポリマーBIIである場合、該成分(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(b1-II)及び構成単位(b2)以外の他の構成単位を含有してもよい。他の構成単位としては、前述のアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン等のノニオン性のモノマー;前述のアニオン性基含有重合性不飽和モノマーなどの他のモノマー由来の構成単位が挙げられる。
【0061】
成分(B)がカチオン性ポリマーBIIである場合、カチオン性ポリマーBIIの全構成単位中の構成単位(b1-II)の含有量は、成分(A)のベタイン基との静電的相互作用により、親水化効果を高める観点から、好ましくは3mol%以上、より好ましくは5mol%以上、更に好ましくは10mol%以上、より更に好ましくは20mol%以上、より更に好ましくは30mol%以上、より更に好ましくは40mol%以上、より更に好ましくは50mol%以上、より更に好ましくは60mol%以上であり、そして、好ましくは95mol%以下、より好ましくは93mol%以下、更に好ましくは85mol%以下、より更に好ましくは80mol%以下、より更に好ましくは75mol%以下である。
成分(B)はカチオン性ポリマーBIIである場合、カチオン性ポリマーBIIの全構成単位中の構成単位(b2)の含有量は、固体表面における脱濡れを抑制し、親水化効果を高める観点から、好ましくは5mol%以上、より好ましくは15mol%以上、更に好ましくは20mol%以上、より更に好ましくは25mol%以上であり、そして、好ましくは95mol%以下、より好ましくは90mol%以下、更に好ましくは80mol%以下、より更に好ましくは70mol%以下、より更に好ましくは60mol%以下、より更に好ましくは50mol%以下、より更に好ましくは40mol%以下である。
成分(B)がカチオン性ポリマーBIIである場合、カチオン性ポリマーBIIの全構成単位中の構成単位(b1-II)及び構成単位(b2)の合計含有量は、親水化効果の観点から、好ましくは70mol%以上、より好ましくは80mol%以上、更に好ましくは90mol%以上、より更に好ましくは95mol%以上、より更に好ましくは97mol%以上、より更に好ましくは99mol%以上であり、成分(B)の全構成単位中の構成単位(b1-II)及び構成単位(b2)の合計含有量は、100mol%であってもよい。
なお、カチオン性ポリマーBIIの全構成単位中の各構成単位の含有量はNMR等の分析により測定することができる。また、カチオン性ポリマーBIIの製造時の各モノマーの仕込み比より算出することもできる。
【0062】
カチオン性ポリマーBIIが天然由来ポリマーである場合には、該カチオン性ポリマーBIIは、天然物から抽出、精製等の操作により得られるポリマーを化学的に変性されてなるものであり、好ましくは主鎖が多糖又は多糖誘導体から構成されている変性多糖類である。多糖としては、例えば、セルロース、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、デンプン等が挙げられ、好ましくはセルロースである。多糖誘導体としては、例えば、セルロース誘導体、グアーガム誘導体、タラガム誘導体、ローカストビーンガム誘導体、デンプン誘導体等が挙げられ、好ましくはセルロース誘導体である。
これらの中でも、カチオン性ポリマーBIIは、より好ましくはアルキルカチオン変性ヒドロキシアルキルセルロース(以下、「変性ヒドロキシアルキルセルロース」ともいう)である。変性ヒドロキシアルキルセルロースは、アンヒドログルコースを構成単位とし、カチオン性基を有する構成単位(b1-II)と疎水性基を有する構成単位(b2)とを少なくとも含むポリマーである。変性ヒドロキシアルキルセルロースは、カチオン性基及び疎水性基は同じ構成単位中に存在してもよく、また、カチオン性基及び疎水性基がそれぞれ異なる構成単位中に存在してもよい。
また、カチオン性基及び疎水性基は同じ構成単位中に存在する場合、変性ヒドロキシアルキルセルロースのカチオン性基及び疎水性基は、親水化効果を高める観点から、ヒドロキシアルキルセルロースの構成単位であるアンヒドログルコースが有する、異なる水酸基から水素原子を除いた基と結合していることが好ましい。すなわち、変性ヒドロキシアルキルセルロースは、一つの側鎖上にカチオン性基及び疎水性基を有するものではないことが好ましい。換言すれば、カチオン性基及び疎水性基が、ヒドロキシアルキルセルロースの異なる側鎖上に結合していることが好ましい。
【0063】
変性ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基に、下記式(3)で表される疎水性基を含む1価の基、及びカチオン性基を含む1価の基が結合しているものが好ましい。ヒドロキシアルキルセルロースは、好ましくはヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはヒドロキシエチルセルロースである。
【0064】
【化7】
〔式(3)中、Zは単結合、又は酸素原子を有する炭化水素基を示し、R
31は疎水性基を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。〕
【0065】
変性ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基に、前記式(3)で表される疎水性基を含む1価の基が結合している。
R31は、親水化効果を高める観点から、好ましくは炭化水素基、より好ましくはアルキル基又はアルケニル基、更に好ましくはアルキル基、より更に好ましくは直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、より更に好ましくは直鎖状のアルキル基である。
R31の炭素数は、親水化効果を高める観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上、より更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは18以下、より更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下である。
R31は、炭化水素基の炭素数が最大となるように定義される。従って、式(3)において、Z中のR31と結合する原子は、例えば酸素原子、カーボネート炭素、水酸基が結合している炭素原子、ヒドロキシアルキル基が結合している炭素原子等である。
【0066】
Zは、単結合、又は酸素原子を有する炭化水素基を表す。前記炭化水素基は、好ましくはアルキレン基であり、アルキレン基の一部のメチレン基がエーテル結合で置換されていてもよく、メチレン基の一部が、カルボニル基(-C(=O)-)で置換されていてもよく、アルキレン基の一部の水素原子が、水酸基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基で置換されていてもよい。
Zが酸素原子を有する炭化水素基(以下、炭化水素基(Z)ともいう。)である場合、炭化水素基(Z)は、好ましくはエポキシ基由来の基、オキシグリシジル基由来の基、又はカルボン酸(もしくはその無水物)由来の基を含み、より好ましくはオキシグリシジル基由来の基を含む。
式(3)で表される基は、親水化効果を高める観点から、好ましくは下記式(3-1)、(3-1’)、(3-2)、及び(3-2’)のいずれかで表される基を含み、より好ましくは少なくとも式(3-1)又は(3-2)で表される基を含み、疎水性基による作用を十分に発揮させる観点からは、更に好ましくは少なくとも式(3-1)で表される基を含む。
【0067】
【化8】
〔式(3-1)、(3-1’)、(3-2)、及び(3-2’)中、R
31は式(3)におけるR
31と同義であり、R
32はそれぞれ独立に、炭素数2以上4以下のアルキレン基を示し、n1はアルキレンオキシ基(-R
32-O-)の平均付加モル数を示し、n1は0以上30以下の整数であり、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。〕
【0068】
式(3-1)、(3-1’)、(3-2)、及び(3-2’)におけるR31の好ましい態様は、式(3)中のR31と同じである。式(3-1)、(3-1’)、(3-2)、及び(3-2’)からR31を除いた基は、炭化水素基Zの好ましい態様である。
R32は、それぞれ独立に、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、より好ましくはエチレン基である。R32の炭素数は、好ましくは2以上3以下である。R32が複数存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
n1は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは1以下であり、そして、0以上であってもよく、0であることが更に好ましい。
【0069】
式(3-1)及び式(3-1’)は、好ましくはグリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)ヒドロカルビルエーテルに由来する基であり、Zがオキシグリシジル基又は(ポリ)アルキレンオキシグリシジル基由来の基である。式(3-1)又は式(3-1’)で表される基は、疎水化剤として、グリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)ヒドロカルビルエーテル、好ましくはグリシジル((ポリ)アルキレンオキシ)アルキルエーテル、より好ましくはグリシジルアルキルエーテルを用いることによってヒドロキシアルキルセルロースに導入することができる。
式(3-2)及び式(3-2’)は、Zがエポキシ基に由来する基である。式(3-2)及び式(3-2’)で表される基は、疎水化剤として、末端エポキシ炭化水素、好ましくは末端エポキシアルカンを用いることによってヒドロキシアルキルセルロースに導入することができる。
【0070】
変性ヒドロキシアルキルセルロースは、上述したヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基に、カチオン性基を含む1価の基が結合している。
前記水酸基は、セルロースに結合したヒドロキシアルキル基が有する水酸基と、セルロースの構成単位であるグルコースが有する水酸基(ヒドロキシアルキル基が結合していない水酸基)とを含む。
変性ヒドロキシアルキルセルロースが有するカチオン性基を含む1価の基は、好ましくは第四級アンモニウム基を含む1価の基であり、より好ましくは下記式(4-1)又は式(4-2)で表される1価の基であり、更に好ましくは下記式(4-1)で表される1価の基である。
【0071】
【化9】
〔式(4-1)及び式(4-2)中、R
41~R
43はそれぞれ独立に、炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、X
-はアニオンを示し、tは0以上3以下の整数を示し、*はヒドロキシアルキルセルロースの水酸基から水素原子を除いた基との結合位置を示す。〕
【0072】
R41~R43は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐の炭化水素基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、更に好ましくはR41~R43の全てがメチル基又はエチル基であり、より更に好ましくはR41~R43の全てがメチル基である。
tは、好ましくは1以上3以下の整数、より好ましくは1又は2、更に好ましくは1である。
X-は、第四級アンモニウムカチオンの対イオンであり、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下のカルボン酸イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン)、及びハロゲン化物イオンが挙げられる。
これらの中でも、製造の容易性及び原料入手容易性の観点から、X-は、好ましくはメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、塩化物イオン、及び臭化物イオンからなる群から選ばれる1種以上であり、得られる変性ヒドロキシアルキルセルロースの水溶性及び化学的安定性の観点から、より好ましくは塩化物イオンである。
X-は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0073】
式(4-1)又は式(4-2)で表される基は、カチオン化剤を用いることによってヒドロキシアルキルセルロースに導入することができる。カチオン化剤としては、例えば、グリシジルトリアルキルアンモニウムクロリド、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムクロリドが挙げられる。これらの中でも、カチオン化剤は、原料の入手の容易性及び化学的安定性の観点、並びにヒドロキシアルキルセルロースとの反応時に塩が副生しない観点から、好ましくはグリシジルトリアルキルアンモニウムクロリドである。
カチオン化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
成分(B)が変性ヒドロキシアルキルセルロースである場合、変性ヒドロキシアルキルセルロースの全構成単位中の構成単位(b1-II)の含有量は、成分(A)のベタイン基との静電的相互作用により、親水化効果を高める観点から、好ましくは1mol%以上、より好ましくは2mol%以上、更に好ましくは3mol%以上であり、そして、好ましくは30mol%以下、より好ましくは20mol%以下、更に好ましくは10mol%以下、より更に好ましくは5mol%以下ある。
なお、変性ヒドロキシアルキルセルロースの全構成単位中の構成単位(b1-II)の含有量は、実施例に記載のとおり、ケルダール法により算出することができる。
成分(B)が変性ヒドロキシアルキルセルロースである場合、変性ヒドロキシアルキルセルロースの全構成単位中の構成単位(b2)の含有量は、固体表面における脱濡れを抑制し、親水化効果を高める観点から、好ましくは0.02mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上、更に好ましくは0.5mol%以上、より更に好ましくは1mol%以上であり、そして、好ましくは30mol%以下、より好ましくは20mol%以下、更に好ましくは10mol%以下、より更に好ましくは5mol%以下、より更に好ましくは3mol%以下である。
なお、変性ヒドロキシアルキルセルロースの全構成単位中の構成単位(b2)の含有量は、実施例に記載のとおり、Zeisel法により算出することができる。
【0075】
成分(B)の重量平均分子量は、親水化効果を高める観点、表面処理組成物の吸着性の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは5,000以上、より更に好ましくは10,000以上、より更に好ましくは30,000以上、より更に好ましくは55,000以上であり、そして、表面処理組成物の配合安定性の観点、及び処理後の固体の表面外観を良好にする観点から、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下、更に好ましくは500,000以下、より更に好ましくは200,000以下、より更に好ましくは100,000以下、より更に好ましくは70,000以下である。成分(B)の重量平均分子量は実施例に記載の方法により測定することができる。変性ヒドロキシアルキルセルロースとして、製品を入手して使用する場合には、製造社の公表値を用いてもよい。
【0076】
<成分(C)>
本発明の表面処理組成物は、成分(C)として電解質を含有する。
本発明において、成分(C)は、成分(A)及び成分(B)以外の成分である。
本発明において、成分(C)は、表面処理組成物中の成分(A)の溶解性を向上させ、配合安定性の向上に寄与し、固体表面を均一に処理することができ、その結果、処理後の固体の表面外観を良好にすることができ、親水化効果を向上させることができると考えられる。
【0077】
本発明において「電解質」とは、水中でイオン解離する化合物を意味する。
成分(C)としては、配合安定性を向上させる観点、処理後の固体の表面外観を良好にする観点、及び親水化効果を高める観点から、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基、及びこれらの塩が挙げられる。
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸;ポリグルタミン酸等のポリカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;メタンスルホン酸、N-メチルタウリン、スルファミン酸、キシレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸;ラウリル硫酸等の硫酸エステル;メチルリン酸、エチルリン酸等の有機リン酸エステルなどが挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、炭酸、チオシアン酸、リン酸等が挙げられる。
有機塩基としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
無機塩基としては、カリウム、ナトリウム、リチウムといったアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。また、無機塩基としてアンモニアを用いてもよい。
塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム、塩化アンモニウム、炭酸ナトリウム、リン酸二カリウム、硫酸モノエタノールアミン等が挙げられる。
これらは、それぞれ1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
成分(C)は、表面処理組成物の製造の際には、上記の有機酸又は無機酸と有機塩基又は無機塩基とを配合して、表面処理組成物中にて塩を形成するようにしてもよい。
【0078】
これらの中でも、成分(C)は、表面処理組成物の配合安定性の観点から、好ましくは分子量200以下の低分子電解質であり、より好ましくは塩であり、更に好ましくは水溶性無機塩であり、より更に好ましくはアルカリ金属塩及び第2族元素の金属塩からなる群から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化マグネシウムからなる群から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは塩化ナトリウム及び塩化カリウムからなる群から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは塩化ナトリウムである。
水溶性無機塩の20℃における水100gに対する溶解度は、好ましくは10g以上、より好ましくは20g以上、更に好ましくは30g以上である。
【0079】
〔水性媒体〕
本発明の表面処理組成物は、好ましくは水性媒体を含有する。水性媒体としては、水;エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数6以下の低分子ジオール及びトリオールが挙げられる。中でも、前記表面処理組成物は水を含むことが好ましい。
【0080】
〔他の成分〕
本発明の表面処理組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)~成分(C)以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、両性界面活性剤、酸化防止剤、シリコーン、芳香族アルコール、成分(A)及び(B)以外のポリマー、油剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤、抗フケ剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、パール剤、セラミド類、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0081】
本発明の表面処理組成物の製造は、例えば、成分(A)~成分(C)及び必要に応じて他の成分を配合し、公知の撹拌装置等を用いて混合することにより製造できる。
【0082】
本発明の表面処理組成物中の成分(A)の含有量又は配合量は、親水化効果を高める観点、表面処理組成物の配合安定性の観点、及び処理後の固体の表面外観を良好にする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、より更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1.5質量%以下である。
【0083】
本発明の表面処理組成物中の成分(B)の含有量又は配合量は、親水化効果を高める観点、表面処理組成物の配合安定性の観点、及び処理後の固体の表面外観を良好にする観点から、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0.05質量%以下、より更に好ましくは0.01質量%以下である。
【0084】
本発明の表面処理組成物中の成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量の質量比〔(B)/(A)〕(以下、「質量比〔(B)/(A)〕」と表記する)は、親水化効果を高める観点から、好ましくは0.0005以上、より好ましくは0.001以上であり、そして、好ましくは1未満、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.05以下、より更に好ましくは0.01以下である。
【0085】
前記表面処理組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計含有量又は合計配合量は、親水化効果を高める観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上であり、そして、表面処理組成物の配合安定性及び取扱い容易性の観点、並びにコストの観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
【0086】
本発明の表面処理組成物中の成分(C)の含有量又は配合量は、表面処理組成物の配合安定性の観点、処理後の固体の表面外観を良好にする観点、及び親水化効果を高める観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、そして、配合性及びコストの観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
【0087】
本発明の表面処理組成物中の水性媒体の含有量又は配合量は、水性媒体として水を用いる場合には、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下である。
【0088】
[表面処理方法]
本発明の表面処理方法は、処理対象物として固体表面に前記表面処理組成物を適用することが好ましい。すなわち、本発明の表面処理方法は、前記表面処理組成物を固体表面へ適用する工程(以下、「工程1」ともいう)を含むことが好ましい。
前記表面処理組成物を適用する固体は、前述のとおりである。
【0089】
工程1における前記表面処理組成物の固体表面への適用方法は特に制限はないが、例えば、下記の(1-i)~(1-iii)の方法が挙げられる。
(1-i)表面処理組成物に固体を浸漬させる方法
(1-ii)表面処理組成物を固体表面に噴霧又は塗布する方法
(1-iii)表面処理組成物を用いて固体表面を濯ぐ方法
前記表面処理組成物を固体表面に適用する際の周辺環境温度は、親水化効果を高める観点、及び作業容易性の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
前記(1-i)の方法における浸漬する時間は、親水化効果を高める観点、及び経済性の観点から、好ましくは0.1分以上、より好ましくは0.3分以上、更に好ましくは0.5分以上、より更に好ましくは1分以上であり、そして、好ましくは60分以下、より好ましくは50分以下である。
前記(1-ii)の方法における噴霧又は塗布する方法は、固体表面の広さ(面積)等に応じて適宜選択できる。また、噴霧した後、スポンジ等を用いて薄く塗りのばしてもよい。
本発明の表面処理組成物の固体表面への適用量は、例えば、該固体表面がポリプロピレンの場合、好ましくは1m2あたり20mL以上5,000mL以下である。
前記(1-iii)の方法における濯ぐ方法は、固体表面に前記表面処理組成物を流しながら
処理する方法が好ましい。処理対象物として固体表面が汚れている場合は、該固体表面に表面処理組成物を流しながら洗浄してもよい。
【0090】
工程1は、親水化効果を高める観点から、表面処理組成物を固体表面に適用した後に、表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を接触させる工程1’であることが好ましい。工程1’において水性媒体を接触させることにより、固体表面に付着した表面処理組成物中に含まれる成分(C)の濃度が低下し、成分(B)のイオン性基と成分(A)のベタイン基との静電的相互作用により、成分(B)を介して成分(A)のポリマー薄膜も固体表面に均一に吸着することとなり、成分(A)に含まれる親水的なベタイン基により固体表面に高い親水性を付与することができる。
工程1’において水性媒体を接触させる方法としては特に制限はないが、例えば、表面処理組成物が適用された固体表面を水性媒体に浸漬させる方法、表面処理組成物が適用された固体表面に水性媒体を噴霧又は塗布する方法、表面処理組成物が適用された表面を常法に従い水性媒体で濯ぐ方法が挙げられる。これらの中でも、操作容易性の観点から、表面処理組成物が適用された表面を常法に従い水性媒体で濯ぐ方法が好ましい。
工程1’で用いる水性媒体は、例えば水が好ましい。該水性媒体として用いる水は、特に限定されず、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
工程1’で用いる水性媒体の量は、例えば、水性媒体を接触させる方法が水性媒体で濯ぐ方法である場合には、工程1’で適用する表面処理組成物100質量部に対して、好ましくは500質量部以上、より好ましくは1000質量部以上、更に好ましくは1500質量部以上であり、そして、好ましくは5000質量部以下、より好ましくは4000質量部以下、更に好ましくは3000質量部以下である。
【0091】
[固体表面親水化方法]
本発明の固体表面親水化方法(以下、「本発明の親水化方法」ともいう)は、下記の成分(A)及び成分(B)のいずれか一方を適用した固体表面に、成分(A)及び成分(B)の他方を適用する工程(以下、「工程I」ともいう)を含む方法である。すなわち、本発明の親水化方法は、下記の成分(B)を適用した固体表面に、下記の成分(A)を適用する工程(以下、「工程I-1」ともいう)、又は、下記の成分(A)を適用した固体表面に、下記の成分(B)を適用する工程(以下、「工程I-2」)である。
(A)イオン性基としてベタイン基のみを有するポリマー
(B)ベタイン基を除くイオン性基と疎水性基とを含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマー
【0092】
本発明の親水化方法によれば、表面自由エネルギーが低い固体の表面への適用において、処理された固体表面が乾燥状態となっても高い親水化効果を奏することができる。このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
前述したように、従来、処理された固体表面の乾燥過程においては親水的なベタイン基を有するポリマー薄膜が液滴化し、いわゆる脱濡れ現象が起こり、該ポリマーの親水的なベタイン基による親水化効果が十分に発揮することができなくなることがあった。
本発明の親水化方法では、成分(A)及び成分(B)のいずれか一方を適用した固体表面に、成分(A)及び成分(B)の他方を適用する工程Iを含む。成分(B)が疎水性基を含むことにより、表面自由エネルギーが低い固体の表面に対する親和性が高くなるため、処理された固体表面が乾燥状態になったとしても脱濡れ現象が起こり難く、成分(B)のポリマー薄膜が固体表面に均一に吸着した状態を保つことができると考えられる。そして、成分(A)及び成分(B)のいずれか一方を適用した固体表面に、成分(A)及び成分(B)の他方を適用する、すなわち、成分(A)と成分(B)とを別々に適用することにより、これらの成分が固体表面に適用された後において、成分(B)のイオン性基と成分(A)のベタイン基との静電的相互作用により、成分(B)を介して成分(A)のポリマー薄膜も固体表面に均一に吸着することとなり、成分(A)の親水的なベタイン基による親水化効果が効果的に発揮され、表面自由エネルギーが低い固体の表面への適用においても高い親水化効果を奏することができると考えられる。
【0093】
本発明の親水化方法に用いる成分(A)及び成分(B)、並びに固体表面についての説明は、前述した表面処理組成物の項における説明と同様であり、成分(A)及び成分(B)、並びに固体表面の好ましい態様も前述した表面処理組成物の項における態様と同様であるため省略する。
【0094】
本発明の親水化方法に用いる成分(A)の量に対する成分(B)の量の質量比〔(B)/(A)〕(質量比〔(B)/(A)〕)は、親水化効果を高める観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは3、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.2以下である。
【0095】
本発明の親水化方法は、親水化効果をより高める観点からは、成分(B)を適用した固体表面に、成分(A)を適用する工程I-1を含む方法であることが好ましい。これにより、成分(B)の疎水性基の固体表面に対する吸着効果が高まり、成分(B)のイオン性基と成分(A)のベタイン基との静電的相互作用によるポリイオンコンプレックスが速やかに形成されるため、成分(A)の親水的なベタイン基による親水化効果がより効果的に発揮されると考えられる。
【0096】
(工程I-1-1)
本発明の親水化方法が、成分(B)を適用した固体表面に、成分(A)を適用する工程I-1を含む方法である場合、成分(B)を適用した固体表面は、親水化効果を高める観点から、工程I-1の前に成分(B)を固体表面に適用する工程(以下、「工程I-1-1」ともいう)を含むことにより形成することが好ましい。
【0097】
〔組成物II〕
工程I-1-1における成分(B)の固体表面への適用方法としては、成分(B)を含有する組成物II(以下、「組成物II」ともいう)を用いることが好ましい。
組成物IIは、成分(C)として電解質を含有してもよい。本発明において、成分(C)は、成分(B)を適用した固体表面に成分(A)を均一に適用することができ、その結果、成分(A)の適用後の固体の表面外観を良好なものとし、親水化効果をより向上させることができると考えられる。
本発明の親水化方法に用いる成分(C)についての説明は、前述した表面処理組成物の項における説明と同様であり、成分(C)の好ましい態様も前述した表面処理組成物の項における態様と同様であるため省略する。
組成物IIは、好ましくは水性媒体を含有する。水性媒体としては、前述した表面処理組成物の項で例示したものと同様のものが例示される。中でも、組成物IIは水を含有することが好ましい。
組成物IIは、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(B)以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、両性界面活性剤、酸化防止剤、シリコーン、芳香族アルコール、成分(B)以外のポリマー、油剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤、抗フケ剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、パール剤、セラミド類、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
組成物IIの製造は、例えば、成分(B)及び必要に応じて他の成分を配合し、公知の撹拌装置等を用いて混合することにより製造できる。
【0098】
本発明に係る組成物II中の成分(B)の含有量又は配合量は、親水化効果を高める観点、及び処理後の固体の表面外観を良好にする観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、より更に好ましくは0.02質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1.5質量%以下である。
本発明に係る組成物IIが成分(C)を含有する場合、該組成物II中の成分(C)の含有量又は配合量は、組成物の配合安定性の観点、処理後の固体の表面外観を良好にする観点、及び親水化効果を高める観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、より更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上であり、そして、配合性及びコストの観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
本発明に係る組成物II中の水性媒体の含有量又は配合量は、水性媒体として水を用いる場合には、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下である。
【0099】
工程I-1-1における組成物IIの固体表面への適用方法は特に制限はないが、例えば、前述の表面処理方法の項で例示した(1-i)~(1-iii)の表面処理組成物の適用方法と同様の方法が挙げられる。組成物IIの固体表面への適用方法の好ましい態様は、(1-i)~(1-iii)の表面処理組成物の適用方法の好ましい態様と同様であるため省略する。
工程I-1-1における組成物IIを適用する際の周辺環境温度は、親水化効果を高める観点、及び作業容易性の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
工程I-1-1における組成物IIの固体表面への適用量は、例えば、該固体表面がポリプロピレンの場合、好ましくは1m2あたり20mL以上5,000mL以下である。
【0100】
工程I-1-1は、親水化効果を高める観点から、成分(B)を固体表面に適用した後に、成分(B)が適用された固体表面に水性媒体を接触させる工程I’-1-1であることが好ましい。工程I’-1-1において水性媒体を接触させることにより、固体表面の余剰の成分(B)を、水性媒体を用いて除去することができ、続く工程I-1により適用される成分(A)に含まれる親水的なベタイン基による固体表面への親水性付与効果をより向上させることができる。
水性媒体を接触させる方法としては特に制限はないが、例えば、成分(B)が適用された固体表面を水性媒体に浸漬させる方法、成分(B)が適用された固体表面に水性媒体を噴霧又は塗布する方法、成分(B)が適用された表面を常法に従い水性媒体で濯ぐ方法が挙げられる。これらの中でも、操作容易性の観点から、成分(B)が適用された表面を常法に従い水性媒体で濯ぐ方法が好ましい。
工程I’-1-1で用いる水性媒体は、例えば水が好ましい。該水性媒体として用いる水は、特に限定されず、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
工程I’-1-1で用いる水性媒体の量は、例えば、水性媒体を接触させる方法が水性媒体で濯ぐ方法である場合には、工程I’-1-1で適用する成分(B)1質量部に対して、好ましくは500質量部以上、より好ましくは1000質量部以上、更に好ましくは1500質量部以上であり、そして、好ましくは5000質量部以下、より好ましくは4000質量部以下、更に好ましくは3000質量部以下である。
さらに、必要に応じて、工程I-1に供する前に成分(B)を適用した固体表面を乾燥させてもよい。かかる乾燥方法としては、自然乾燥又はブロー乾燥が好ましい。
【0101】
(工程I-1)
〔組成物I〕
工程I-1において、成分(B)を適用した固体表面への成分(A)の適用方法としては、成分(A)を含有する組成物I(以下、「組成物I」ともいう)を用いることが好ましい。
組成物Iは、好ましくは成分(C)として電解質を含有する。本発明において、成分(C)は、成分(B)を適用した固体表面に成分(A)を均一に適用することができ、その結果、成分(A)の適用後の固体の表面外観を良好なものとし、親水化効果をより向上させることができると考えられる。
本発明の親水化方法に用いる成分(C)についての説明は、前述した表面処理組成物の項における説明と同様であり、成分(C)の好ましい態様も前述した表面処理組成物の項における態様と同様であるため省略する。
組成物Iは、好ましくは水性媒体を含有する。水性媒体としては、前述した表面処理組成物の項で例示したものと同様のものが例示される。中でも、組成物Iは水を含有することが好ましい。
組成物Iは、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、両性界面活性剤、酸化防止剤、シリコーン、芳香族アルコール、成分(A)以外のポリマー、油剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤、抗フケ剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、パール剤、セラミド類、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
組成物Iの製造は、例えば、成分(A)及び必要に応じて他の成分を配合し、公知の撹拌装置等を用いて混合することにより製造できる。
【0102】
本発明に係る組成物I中の成分(A)の含有量又は配合量は、親水化効果を高める観点、及び処理後の固体の表面外観を良好にする観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、より更に好ましくは0.02質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1.5質量%以下である。
本発明に係る組成物Iが成分(C)を含有する場合、該組成物I中の成分(C)の含有量又は配合量は、組成物の配合安定性の観点、処理後の固体の表面外観を良好にする観点、及び親水化効果を高める観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、より更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上であり、そして、配合性及びコストの観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
本発明に係る組成物I中の水性媒体の含有量又は配合量は、水性媒体として水を用いる場合には、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下である。
【0103】
工程I-1における成分(B)を適用した固体表面への組成物Iの適用方法は特に制限はないが、例えば、前述の表面処理方法の項で例示した(1-i)~(1-iii)の表面処理組成物の適用方法と同様の方法が挙げられる。成分(B)を適用した固体表面への組成物I-1の適用方法の好ましい態様は、(1-i)~(1-iii)の表面処理組成物の適用方法の好ましい態様と同様であるため省略する。
工程I-1における組成物Iを適用する際の周辺環境温度は、親水化効果を高める観点、及び作業容易性の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
工程I-1における成分(B)を適用した固体表面への組成物Iの適用量は、例えば、該固体表面がポリプロピレンの場合、好ましくは1m2あたり20mL以上5,000mL以下である。
【0104】
工程I-1は、親水化効果を高める観点から、成分(B)を適用した固体表面に成分(A)を適用した後に、成分(A)を適用した固体表面に水性媒体を接触させる工程I’-1であることが好ましい。工程I’-1において水性媒体を接触させることにより、固体表面の余剰の成分(A)を、水性媒体を用いて除去することができる。
また、組成物I及び組成物IIの少なくともいずれかが成分(C)を含有する場合には、工程I’-1により、固体表面に適用された成分(C)の濃度が低下し、成分(A)及び成分(B)のポリイオンコンプレックスの形成が促進されて、成分(B)を介して成分(A)のポリマー薄膜も固体表面に均一に吸着することとなり、成分(A)に含まれる親水的なベタイン基による固体表面への親水性付与効果をより向上させることができる。当該観点からは、組成物I及び組成物IIの少なくともいずれかは、成分(C)を含有することが好ましく、組成物Iは成分(C)を含有することがより好ましい。
【0105】
水性媒体を接触させる方法としては特に制限はないが、例えば、成分(A)が適用された固体表面を水性媒体に浸漬させる方法、成分(A)が適用された固体表面に水性媒体を噴霧又は塗布する方法、成分(A)が適用された表面を常法に従い水性媒体で濯ぐ方法が挙げられる。これらの中でも、操作容易性の観点から、成分(A)が適用された表面を常法に従い水性媒体で濯ぐ方法が好ましい。
工程I’-1で用いる水性媒体は、例えば水が好ましい。該水性媒体として用いる水は、特に限定されず、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
工程I’-1で用いる水性媒体の量は、例えば、水性媒体を接触させる方法が水性媒体で濯ぐ方法である場合には、工程1’-1で適用する成分(A)1質量部に対して、好ましくは500質量部以上、より好ましくは1000質量部以上、更に好ましくは1500質量部以上であり、そして、好ましくは5000質量部以下、より好ましくは4000質量部以下、更に好ましくは3000質量部以下である。
【0106】
本発明の親水化方法は、親水化効果の観点から、成分(A)を適用した固体表面に、成分(B)を適用する工程I-2を含む方法であってもよい。
【0107】
(工程I-2-1)
本発明の親水化方法が、成分(A)を適用した固体表面に、成分(B)を適用する工程I-2を含む方法である場合、成分(A)を適用した固体表面は、親水化効果を高める観点から、工程I-2の前に成分(A)を固体表面に適用する工程(以下、「工程I-2-1」ともいう)を含むことにより形成することが好ましい。
工程I-2-1における成分(A)の固体表面への適用方法としては、前述の成分(A)を含有する組成物Iを用いることが好ましい。
なお、工程I-2-1で用いられる組成物Iについての説明は、前述の工程I-1の項における説明と同様であり、組成物Iの好ましい態様も前述の工程I-1の項における態様と同様であるため省略する。
【0108】
工程I-2-1における組成物Iの固体表面への適用方法は特に制限はないが、例えば、前述の表面処理方法の項で例示した(1-i)~(1-iii)の表面処理組成物の適用方法と同様の方法が挙げられる。組成物Iの固体表面への適用方法の好ましい態様は、(1-i)~(1-iii)の表面処理組成物の適用方法の好ましい態様と同様であるため省略する。
工程I-2-1における組成物Iを適用する際の周辺環境温度は、親水化効果を高める観点、及び作業容易性の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
工程I-2-1における組成物Iの固体表面への適用量は、例えば、該固体表面がポリプロピレンの場合、好ましくは1m2あたり20mL以上5,000mL以下である。
【0109】
工程I-2-1は、親水化効果を高める観点から、成分(A)を固体表面に適用した後に、成分(A)が適用された固体表面に水性媒体を接触させる工程I’-2-1であってもよい。工程I’-2-1において水性媒体を接触させることにより、固体表面の余剰の成分(A)を、水性媒体を用いて除去することができる。
水性媒体を接触させる方法としては特に制限はないが、例えば、成分(A)が適用された固体表面を水性媒体に浸漬させる方法、成分(A)が適用された固体表面に水性媒体を噴霧又は塗布する方法、成分(A)が適用された表面を常法に従い水性媒体で濯ぐ方法が挙げられる。これらの中でも、操作容易性の観点から、成分(A)が適用された表面を常法に従い水性媒体で濯ぐ方法が好ましい。
工程I’-2-1で用いる水性媒体は、例えば水が好ましい。該水性媒体として用いる水は、特に限定されず、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
工程I’-2-1で用いる水性媒体の量は、例えば、水性媒体を接触させる方法が水性媒体で濯ぐ方法である場合には、工程I’-2-1で適用する成分(A)1質量部に対して、好ましくは500質量部以上、より好ましくは1000質量部以上、更に好ましくは1500質量部以上であり、そして、好ましくは5000質量部以下、より好ましくは4000質量部以下、更に好ましくは3000質量部以下である。
さらに、必要に応じて、工程I-2に供する前に成分(A)を適用した固体表面を乾燥させてもよい。かかる乾燥方法としては、自然乾燥又はブロー乾燥が好ましい。
【0110】
(工程I-2)
工程I-2において、成分(A)を適用した固体表面への成分(B)の適用方法としては、成分(B)を含有する組成物II(以下、「組成物II」ともいう)を用いることが好ましい。
なお、工程I-2で用いられる組成物IIについての説明は、前述の工程I-1-1の項における説明と同様であり、組成物IIの好ましい態様も前述の工程I-1-1の項における態様と同様であるため省略する。
【0111】
工程I-2における成分(A)を適用した固体表面への組成物IIの適用方法は特に制限はないが、例えば、前述の表面処理方法の項で例示した(1-i)~(1-iii)の表面処理組成物の適用方法と同様の方法が挙げられる。成分(A)を適用した固体表面への組成物IIの適用方法の好ましい態様は、(1-i)~(1-iii)の表面処理組成物の適用方法の好ましい態様と同様であるため省略する。
工程I-2における組成物IIを適用する際の周辺環境温度は、親水化効果を高める観点、及び作業容易性の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
工程I-2における成分(A)を適用した固体表面への組成物IIの適用量は、例えば、該固体表面がポリプロピレンの場合、好ましくは1m2あたり20mL以上5,000mL以下である。
【0112】
工程I-2は、親水化効果を高める観点から、成分(A)を適用した固体表面に成分(B)を適用した後に、成分(B)を適用した固体表面に水性媒体を接触させる工程I’-2であることが好ましい。工程I’-2において水性媒体を接触させることにより、固体表面の余剰の成分(B)を、水性媒体を用いて除去することができる。
また、組成物I及び組成物IIの少なくともいずれかが成分(C)を含有する場合には、工程I’-2により、固体表面に適用された成分(C)の濃度が低下し、成分(A)及び成分(B)のポリイオンコンプレックスの形成が促進されて、成分(B)を介して成分(A)のポリマー薄膜も固体表面に均一に吸着することとなり、成分(A)に含まれる親水的なベタイン基による固体表面への親水性付与効果をより向上させることができる。当該観点からは、組成物I及び組成物IIの少なくともいずれかは、成分(C)を含有することが好ましく、組成物Iは成分(C)を含有することがより好ましい。
【0113】
水性媒体を接触させる方法としては特に制限はないが、例えば、成分(B)が適用された固体表面を水性媒体に浸漬させる方法、成分(B)が適用された固体表面に水性媒体を噴霧又は塗布する方法、成分(B)が適用された表面を常法に従い水性媒体で濯ぐ方法が挙げられる。これらの中でも、操作容易性の観点から、成分(B)が適用された表面を常法に従い水性媒体で濯ぐ方法が好ましい。
工程I’-2で用いる水性媒体は、例えば水が好ましい。該水性媒体として用いる水は、特に限定されず、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
工程I’-2で用いる水性媒体の量は、例えば、水性媒体を接触させる方法が水性媒体で濯ぐ方法である場合には、工程I’-2で適用する成分(B)1質量部に対して、好ましくは500質量部以上、より好ましくは1000質量部以上、更に好ましくは1500質量部以上であり、そして、好ましくは5000質量部以下、より好ましくは4000質量部以下、更に好ましくは3000質量部以下である。
【0114】
[固体表面親水化キット]
前述の組成物I及び組成物IIは、固体表面親水化処理キットとして提供することができる。すなわち、本発明の固体表面親水化処理キット(以下、「本発明のキット」ともいう)は、下記の成分(A)を含有する組成物I、及び下記の成分(B)を含有する組成物IIを含む。
(A)イオン性基としてベタイン基のみを有するポリマー
(B)ベタイン基を除くイオン性基と疎水性基とを含み、該疎水性基を側鎖に有するポリマー
なお、本発明のキットに用いられる組成物I及び組成物IIについての説明は、前述した固体表面親水化方法の項における説明と同様であり、組成物I及び組成物IIの好ましい態様も前述した固体表面親水化方法の項における態様と同様であるため省略する。
【実施例0115】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、各種測定は、以下の方法により行った。
【0116】
(成分(A)の重量平均分子量)
〔構成単位(a1)のみからなる単独重合体の重量平均分子量〕
ゲル浸透クロマトグラフィー法を用いて下記の測定条件により測定した。
〔測定条件〕
カラム:「TSKgel α-M」(東ソー(株)製)を2本直列に連結
カラム温度:40℃
溶離液:0.15mol/L Na2SO4、1質量%CH3COOH水溶液
流速:1.0mL/min
検出器:示差屈折率検出器
サンプルサイズ:5mg/mL
標準物質:プルラン
【0117】
〔構成単位(a1)と構成単位(a2)とを含む共重合体の重量平均分子量〕
静的光散乱法(SLS)を用いて下記の測定条件で静的光散乱を測定し、Zimm-plotを作製して求めた。なお、分子量の算出に必要な屈折率の濃度増分は、示差屈折率計「DRM3000」(大塚電子(株)製)を用いて測定した。
〔測定条件〕
装置:光散乱光度計「DLS-7000」(大塚電子(株)製)
波長:632.8nm(ヘリウムーネオンレーザー)
散乱角:30°から150°まで10°おきに測定
平均温度:25℃
溶媒:2,2,2-トリフルオロエタノール
【0118】
(成分(B)の重量平均分子量)
〔アニオン性ビニル系ポリマーBI-1の重量平均分子量〕
ゲル浸透クロマトグラフィー法を用いて下記の測定条件により測定した。
〔測定条件〕
カラム:「TSKgel α-M」(東ソー(株)製)を2本直列に連結
カラム温度:40℃
溶離液:60mmol/L H3PO4、50mmol/L LiBr、DMF溶液
流速:1.0mL/min
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリスチレン
【0119】
〔変性ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量〕
ゲル浸透クロマトグラフィー法を用いて下記の測定条件により測定した。
〔測定条件〕
カラム:「TSKgel α-M」(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
溶離液:50mmol/L LiBr、1%CH3COOH、エタノール/水=3/7溶液
流速:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリエチレングリコール
【0120】
(変性ヒドロキシアルキルセルロースの全構成単位中の構成単位(b1-II)及び構成単位(b2)の含有量)
〔前処理〕
粉末状の変性ヒドロキシアルキルセルロース2gを100gの水に溶かした後、水溶液を透析膜「スペクトラ/ポア7」(分画分子量1,000、フナコシ(株)製)に入れ、2日間透析を行った。得られた水溶液を一晩、凍結乾燥機(東京理化器械(株)製「FDU1100」)を用いて凍結乾燥することで精製した変性ヒドロキシアルキルセルロースを得た。
【0121】
〔ケルダール法によるカチオン性基を有する構成単位(b1-II)の含有量の算出〕
精製した変性ヒドロキシアルキルセルロースの200mgを精秤し、硫酸10mLとケルダール錠(Merck社製)1錠を加え、ケルダール分解装置(BUCHI社製「K-432」)にて加熱分解を行った。分解終了後、サンプルにイオン交換水30mLを加え、自動ケルダール蒸留装置(BUCHI社製「K-370」)を用いてサンプルの窒素含量(質量%)を求め、変性ヒドロキシアルキルセルロースの全構成単位中の構成単位(b1-II)の含有量を算出した。
【0122】
〔Zeisel法による疎水性基を有する構成単位(b2)の含有量の算出〕
以下に、疎水化剤としてラウリルグリシジルエーテルを用いた場合を例に、構成単位(b2)の含有量の算出方法を説明する。なお、他の疎水化剤を使用した場合も、検量線用の試料(ヨードアルカン等)を適宜選択することによって測定可能である。
精製した変性ヒドロキシアルキルセルロース200mg、アジピン酸(東京化成工業(株)製)220mgを10mLバイアル((株)マルエム製「マイティーバイアルNo.3」)に精秤し、内標溶液(テトラデカン(富士フイルム和光純薬(株)製)/o-キシレン(東京化成工業(株)製)=1/25(v/v))3mL及びヨウ化水素酸(富士フイルム和光純薬(株)製)3mLを加えて密栓した。また、変性ヒドロキシアルキルセルロースの代わりに1-ヨードドデカン(富士フイルムワコーケミカル(株)製)を2、4、又は9mg加えた検量線用の試料を調製した。各試料をスターラーチップにより撹拌しながら、ブロックヒーター(PIERCE社製「Reacti-ThermIII Heating/Stirring module」)を用いて160℃、2時間の条件で加熱した。試料を放冷した後、上層(o-キシレン層)を回収し、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所「GC-2010 plus」)にて、1-ヨードドデカン量を分析した。
【0123】
・GC分析条件
カラム:「HP-1」(長さ:30m、液相膜厚:0.25μL、内径:32mm)(アジレント社製)
スプリット比:20
カラム温度:100℃(2min)→10℃/min→300℃(15min)
インジェクター温度:300℃
検出器:FID
検出器温度:330℃
打ち込み量:2μL
GCにより得られた1-ヨードドデカンの検出量から、サンプル中のアルキル基の質量を求め、変性ヒドロキシアルキルセルロースの全構成単位中の構成単位(b2)の含有量を算出した。
【0124】
製造例1(ポリマーA1の製造)
(工程A-1)
内容量500mLのセパラブルフラスコにエタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)87.70g、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)40.00gを入れ、窒素バブリングによって脱気を行った。その後、セパラブルフラスコ内の内容物を63℃まで昇温し、そこにV―65B(商品名、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、富士フイルム和光純薬(株)製)0.63g及びエタノール5.00gを混合させた溶液を添加し重合を開始した。重合開始から6時間経た後、ヘキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)にて再沈殿を行った。析出したポリマーを80℃で真空乾燥させてポリマーを得た。
(工程A-2)
内容量200mLのセパラブルフラスコに、工程A-1で得られたポリマー10.00g、トリフルオロエタノール(東京化成工業(株)製)40.00gを入れポリマーを溶解させた。その後、セパラブルフラスコ内の内容物を50℃まで昇温し、そこに1,3-プロパンスルトン(東京化成工業(株)製)8.55gを30分かけて滴下して反応を行った。滴下終了後、50℃で5時間熟成させた後に、メタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)にて再沈殿を行った。析出したポリマーを80℃で真空乾燥させてポリマーA1(ポリ(N-(3-スルホプロピル)-N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン))を得た。ポリマーA1の構成単位(a1)及び構成単位(a2)の含有量及び重量平均分子量は、表1に示す。
【0125】
製造例2(ポリマーA2の製造)
(工程A-1)
内容量500mLのセパラブルフラスコにエタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)180.42g、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)71.14g、メタクリル酸ベンジル(富士フイルム和光純薬(株)製)8.86gを入れ、窒素バブリングによって脱気を行った。その後、セパラブルフラスコ内の内容物を63℃まで昇温し、そこにV―65B(富士フイルム和光純薬(株)製)1.25g及びエタノール5.00gを混合させた溶液を添加し重合を開始した。重合開始から6時間経た後、ヘキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)にて再沈殿を行った。析出したポリマーを80℃で真空乾燥させてポリマーを得た。
(工程A-2)
内容量200mLのセパラブルフラスコに、工程A-1で得られたポリマー10.00g、トリフルオロエタノール(東京化成工業(株)製)40.00gを入れポリマーを溶解させた。その後、セパラブルフラスコ内の内容物を50℃まで昇温し、そこに1,3-プロパンスルトン(東京化成工業(株)製)7.60gを30分かけて滴下して反応を行った。滴下終了後、50℃で5時間熟成させた後に、メタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)にて再沈殿を行った。析出したポリマーを80℃で真空乾燥させてポリマーA2((N-(3-スルホプロピル)-N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン/メタクリル酸ベンジル共重合体)を得た。ポリマーA2の構成単位(a1)及び構成単位(a2)の含有量及び重量平均分子量は、表1に示す。
【0126】
製造例3(ポリマーB1の製造)
内容量300mLのセパラブルフラスコにエタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)64.34g、メタクリル酸(富士フイルム和光純薬(株)製)15.98g、メタクリル酸ベンジル(富士フイルム和光純薬(株)製)14.02gを入れ、窒素バブリングによって脱気を行った。その後、セパラブルフラスコ内の内容物を63℃まで昇温し、そこにV―65B(富士フイルム和光純薬(株)製)0.66g及びエタノール5.00gを混合させた溶液を添加し重合を開始した。重合開始から6時間経た後、ヘキサン(富士フイルム和光純薬(株)製)にて再沈殿を行った。析出したポリマーを80℃で真空乾燥させてポリマーを得た。ポリマーB1(メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体)の構成単位(b1)の含有量及び構成単位(b2)の含有量、並びに重量平均分子量は、表1に示す。
【0127】
製造例4(ポリマーB3の製造)
特開2020-070428号公報に記載の方法にて合成し、粉末状のポリマーB3変性ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化剤:グリシジルトリアルキルアンモニウムクロリド、疎水化剤:グリシジルラウリルエーテル)を得た。ポリマーB3の構成単位(b1)の含有量及び構成単位(b2)の含有量、並びに重量平均分子量は、表1に示す。
【0128】
実施例及び比較例に用いる上記以外の他のポリマーは、以下のものを用いた。
ポリマーB2:メタクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体(Evonik Industries製「EUDRAGIT S 100」)
ポリマーB4’:ポリアクリル酸部分中和物(The Dow Chemical Company製「ACUSOL 445G Polymer」)
なお、ポリマーB4’の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法を用いて下記の測定条件により測定した。
〔測定条件〕
カラム:「TSKgel G4000PWXL」+「TSKgel G2500PWXL」(東ソー(株))
カラム温度:40℃
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1(体積比)
流速:1.0mL/min
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:プルラン
【0129】
実施例1-1~1-8、比較例1-1~1-4
表1に示す配合組成に従って、各表面処理組成物を調製し、各表面処理組成物を用いて以下の方法により表面処理を行い、以下の評価を実施した。
表面処理組成物の調製は、成分(A)として各ベタインポリマー、成分(C)として塩化ナトリウム、及び水を混合し、そこに予め調製した成分(B)として各疎水性基含有イオン性ポリマーの1質量%水溶液を加えて、調製した。なお、成分(B)はイオン性基に対して等モルの水酸化ナトリウム又は塩酸により中和して使用した。
なお、比較例1-1の場合には成分(B)を用いずに、比較例1-2の場合には成分(A)を用いずに、比較例1-3の場合には成分(C)を用いずに、調製した。
比較例1-4の場合には、成分(B)として疎水性を有さないポリアクリル酸部分中和物を用いた。
表1中の各成分の配合量は、いずれも有効成分量(質量%)である。
(工程1’)
内容量300mLのビーカーに、調製した表面処理組成物10mLを添加し、基板(ポリプロピレン(臨界表面張力γC:28dyn/cm)の板)(縦50mm×横25mm×厚さ1mm)のを5分間浸漬した後、基板を液から取り出し、イオン交換水200mLを用いて10秒間濯いだ。その後、30秒間風乾し、次いで25℃及び50%RHの環境下にて17時間静置して乾燥させて、表面処理基板を得た。
【0130】
(親水化効果の評価)
〔接触角の測定〕
実施例1-1~1-8及び比較例1-1~1-4で得られた各表面処理基板の超純水に対する静止接触角を、自動接触角計(協和界面科学(株)製「DM-701」)を用いて、添加量10μL、添加6秒後の条件にて測定した。測定は、2枚のテストピースを用いて、1枚のテストピース当たり5回行い、10個の測定値の平均値を乾燥状態における接触角とした。結果を表1に示す。
接触角が小さいほど、親水化性能に優れる。
【0131】
(配合安定性の評価)
実施例1-1~1-8及び比較例1-1~1-4で調製した各表面処理組成物10mLの調製直後の表面処理組成物の状態を目視観察し、下記の評価基準に従い、配合安定性を評価した。結果を表1に示す。下記の評価基準で3であれば配合安定性に優れる。下記の評価基準で3であれば実用上特に好適であり、下記の評価基準で2であれば実用上問題なく使用できる。
〔評価基準〕
3:析出物が認められず、均一で透明な状態である。
2:析出物が認められるが、微細で全体に均一に分散し、白濁した状態である。
1:析出物が認められ、局所的に凝集(分離)又は沈殿している。
【0132】
(処理後の表面外観の評価)
実施例1-1~1-8及び比較例1-1~1-4で得られた各表面処理基板の表面の析出物の有無を目視観察し、下記の評価基準に従い、処理後の表面外観を評価した。結果を表1に示す。下記の評価基準でAであれば実用上好適である。
〔評価基準〕
A:析出物が確認されず、表面は均一で透明である。
B:析出物が確認され、表面は白くくすんだ状態である。
【0133】
【0134】
表1より、実施例の表面処理組成物は、比較例と比べて接触角が小さく、親水化効果が高く、配合安定性に優れ、良好な美観を有する処理表面を形成することができることが分かる。
【0135】
実施例2-1
表2に示す配合組成に従って、組成物I及び組成物IIをそれぞれ調製し、以下の方法により固体表面の親水化処理を行った。
組成物Iは、成分(A)としてポリマーA1、成分(C)として塩化ナトリウム、及び水を混合して調製した。
組成物IIは、成分(B)としてポリマーB1及び水を混合して調製した。なお、ポリマーB1はカルボキシ基に対して等モルの水酸化ナトリウムにより中和して用いた。
表2中の各成分の配合量は、いずれも有効成分量(質量%)である。
【0136】
(工程I’-1-1)
内容量300mLのビーカーに、調製した組成物II 10mLを添加し、基板(ポリプロピレン(臨界表面張力γC:28dyn/cm)の板)(縦50mm×横25mm×厚さ1mm)を5分間浸漬した後、組成物II中から基板を取り出した。
次いで、イオン交換水200mLを用いて10秒間濯いだ後、30秒間風乾することで、成分(B)を適用した基板を得た。
(工程I’-1)
別途、内容量300mLのビーカーに、調製した組成物I 10mLを添加し、工程I’-1-1で得られた成分(B)を適用した基板を5分間浸漬した後、組成物I中から基板を取り出した。
次いで、イオン交換水200mLを用いて10秒間濯いだ後、30秒間風乾し、25℃及び50%RHの環境下にて17時間静置して乾燥させて、親水化処理基板を得た。
【0137】
(親水化効果の評価)
実施例2-1で得られた親水化処理基板の超純水に対する静止接触角を、自動接触角計(協和界面科学(株)製「DM-701」)を用いて、添加量10μL、添加6秒後の条件にて測定した。測定は、2枚のテストピースを用いて、1枚のテストピース当たり5回行い、10個の測定値の平均値を乾燥状態における接触角とした。結果を表2に示す。
接触角が小さいほど、親水化性能に優れる。
【0138】
(処理後の表面外観の評価)
実施例2-1で得られた親水化処理基板の表面の析出物の有無を目視観察し、下記の評価基準に従い、処理後の表面外観を評価した。結果を表2に示す。下記の評価基準でAであれば実用上好適である。
〔評価基準〕
A:析出物が確認されず、表面は均一で透明である。
B:析出物が確認され、表面は白くくすんだ状態である。
【0139】
【0140】
表2より、実施例の親水化方法は、親水化効果が高いことが分かる。