(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180186
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】炉頂カバー、及び誘導炉
(51)【国際特許分類】
F27B 14/12 20060101AFI20231213BHJP
F27B 14/18 20060101ALI20231213BHJP
H05B 6/24 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
F27B14/12
F27B14/18
H05B6/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094810
(22)【出願日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2022092737
(32)【優先日】2022-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】古田倫靖
(72)【発明者】
【氏名】吉村彰記
【テーマコード(参考)】
3K059
4K046
【Fターム(参考)】
3K059AB00
3K059AB09
3K059AB16
3K059AD34
3K059AD40
3K059CD44
3K059CD52
3K059CD72
4K046AA01
4K046BA01
4K046BA02
4K046CB06
4K046CB15
4K046CB16
4K046CD02
4K046CE05
(57)【要約】
【課題】炉頂部の膨張による亀裂等の損傷を低減する炉頂カバー、及び炉頂カバーが設置された誘導炉を提供すること。
【解決手段】炉頂カバー1は、カバー部材10と、少なくとも一部がカバー部材10に形成され、誘導炉50の炉体51と係合可能な係合部2を備える。カバー部材10は、出湯口52を取り付け可能な出湯口用凹部3と、炉頂部70への設置面である底面5と、炉頂部70への組込状態において、炉体51の内周面と対向する外周壁6と、炉頂部70に合わせて開口7を形成する内周壁8を備える。係合部2は、少なくとも出湯口用凹部3と底面5との間にある。係合部2が炉体51と係合すると、炉頂カバー1は炉体51に対して第一方向への相対的な移動が規制される。係合部2が炉体51から離間すると、炉頂カバー1は炉体51から分離可能であり、誘導炉50の内部を開放可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の誘導炉における炉頂部に組込可能であって、
カバー部材と、
少なくとも一部が前記カバー部材に形成され、前記誘導炉の炉体の被係合部と係合可能な係合部を備え、
前記カバー部材は、
出湯口を取り付け可能な出湯口用凹部と、
前記炉頂部への設置面である底面と、
前記炉頂部への組込状態において、
前記炉体の内周面と対向する外周壁と、
開口を形成する内周壁を備え、
前記カバー部材は、定形耐火物によって形成され、
前記誘導炉の円筒中心軸と、前記開口の開口中心軸とは略同一線上にあり、
前記円筒中心軸に沿う方向を第一方向とし、前記第一方向と直交する方向を第二方向とし、
前記係合部は、少なくとも前記出湯口用凹部と前記底面との間にあって、
前記係合部が前記炉体と係合すると、前記炉体に対して前記第一方向への相対的な移動が規制され、
前記係合部が前記炉体から離間すると、前記炉体から分離可能であり、前記誘導炉の内部を開放可能である炉頂カバー。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記開口中心軸を中心とする周方向に、複数に分割された分割カバー部材を備え、
前記係合部は、それぞれの前記分割カバー部材の前記外周壁から、前記第二方向に突出する凸部であり、
それぞれの前記分割カバー部材は、前記円筒中心軸を中心とする径方向において、異なる方向へ移動させることにより、前記凸部が前記炉体の前記内周面に形成される前記被係合部に係合可能である請求項1に記載の炉頂カバー。
【請求項3】
前記分割カバー部材が前記炉頂部に組み込まれた状態において、
前記周方向において、隣接する前記分割カバー部材との間に生じる隙間に取り付けられ、前記炉頂部の一部を覆う補助カバー部材を備え、
前記補助カバー部材は、定形耐火物によって形成され、前記周方向に隣接する前記分割カバー部材との間で、少なくとも一部が接触するか又は所定量以下の隙間を有する請求項2に記載の炉頂カバー。
【請求項4】
前記補助カバー部材は、前記炉頂部に組み込まれた状態において、前記周方向における側面が、前記径方向に沿って互いに平行な補助カバー側面である請求項3に記載の炉頂カバー。
【請求項5】
前記補助カバー部材と前記分割カバー部材が前記炉頂部に組み込まれた状態で、
前記周方向において、前記補助カバー部材と隣接して対向する前記分割カバー部材の分割カバー側面は、前記補助カバー側面と平行であり、
前記補助カバー側面と前記分割カバー側面とは、互いに面接触を含む接触をするか又は所定量以下の隙間を有する請求項4に記載の炉頂カバー。
【請求項6】
前記補助カバー部材は、
前記炉頂部に組み込まれると前記炉体の前記内周面と対向する補助カバー外周壁と、
前記補助カバー外周壁から前記第二方向に突出する補助凸部を備え、
前記補助カバー部材は、前記分割カバー部材が前記炉頂部に組み込まれた状態で、前記径方向に移動させることによって、前記補助凸部が前記炉体の前記内周面に形成される前記被係合部に係合可能である請求項5に記載の炉頂カバー。
【請求項7】
前記補助カバー部材は、前記補助カバー側面に前記第二方向に突出する補助側凸部を備え、
前記分割カバー部材は、前記分割カバー側面に分割カバー凹部を備え、
前記補助カバー部材は、前記分割カバー部材が前記炉頂部に組み込まれた状態で、前記径方向に移動させることによって、前記補助側凸部が前記分割カバー凹部に係合可能である請求項6に記載の炉頂カバー。
【請求項8】
前記係合部は、係合凹部と係合部材を備え、
前記係合凹部は、前記第二方向において、前記カバー部材の前記外周壁から前記内周壁の途中までに形成される凹みであり、
前記係合部材は、前記第二方向において、前記炉体の外周面から前記内周面までに貫通して形成された前記被係合部、及び前記係合凹部に係合可能である請求項1に記載の炉頂カバー。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれかに記載の炉頂カバーと、
前記炉体と、
前記炉体の内部に設置されるスリーブ材と、
前記炉体の内周と前記スリーブ材との間を埋める不定形耐火物と、
前記出湯口を備え、
前記炉頂カバーは、少なくとも一部が前記スリーブ材と前記出湯口との間に組み込まれ、
前記係合部が、前記被係合部に係合されると、
前記炉頂カバーは、前記炉体に対して前記第一方向への相対的な移動が規制され、
前記係合部が、前記被係合部との係合状態から解除されると、
前記炉頂カバーは、前記出湯口と共に前記炉体から分離可能であり、前記炉体の内部から前記スリーブ材を取り外し可能となる誘導炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導炉の炉頂部に組込可能な炉頂カバーと、炉頂カバーが組み込まれた誘導炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導炉は、るつぼ等の定形耐火物を使用した際にるつぼ等に投入された金属を溶解する際に高熱となることに伴い発生する課題があった。るつぼ内の金属を溶解する際、るつぼが高温となり、炉頂部分も高温となるため、炉体内部のるつぼもしくはスリーブ材が膨張して亀裂が発生する不具合が生じうる。特に、スリーブ材が膨張することに伴い、出湯口が浮き上がって金属溶湯の出湯がうまくできないという問題が想定される。
【0003】
この課題を解決するために、るつぼ型誘導炉における炉頂部を冷却するための炉頂カバーが提案されている。例えば、特許文献1によれば、
図20に示すように、炉頂カバー820は、空洞820aを有する薄い鋼材からなるリング状体821の側部に装着された鋼材からなる筒体822とからなる。空洞820aは冷却水の通水口として用いられるもので、冷却水の入口部823、出口部824を有し、しかも補強機能を有する仕切板825で所定間隔毎に仕切られる。この場合、仕切板825は底より所定の高さの位置に二個の通水口826を有している。上記リング状体821は、出湯口を覆うごとく延在しており、この延在部の空洞は通水口827を介してリング状体821の空洞と連通している。
【0004】
この構成によれば、空洞820aはリング状体821の内部全体に広がっており、冷却水は空洞820a全体に広がる。るつぼ型誘導炉に対し、冷却したい部分は高温になりやすい内周に近い部分であり、この場合耐火れんがも冷却対象に含まれる。なお、説明のため、
図20に記載する符号は特許文献1に記載されている図面の符号と異なっているが、構成要素とその機能は同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来例では空洞820aはるつぼ型誘導炉の内周から遠い外周部にまで広がっており、冷却水が外周部にまで広がる。よって、本来冷却したい部分以外にも冷却水が広がるため、冷却効果の低下が予測される。また、従来例の構成では、出湯口の周辺には冷却水が行き渡らないため、出湯口周辺に対する冷却効果は期待できない。よって、出湯口が浮き上がるという課題に対しては何ら解決されていない。
【0007】
本発明の目的は、従来の課題を解決すべくなされたものであり、出湯口を含めた炉頂部の膨張による亀裂等の損傷を低減する炉頂カバー、及び炉頂カバーが組み込まれた誘導炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係る炉頂カバーは、円筒状の誘導炉における炉頂部に組込可能であって、カバー部材と、少なくとも一部が前記カバー部材に形成され、前記誘導炉の炉体の被係合部と係合可能な係合部を備え、前記カバー部材は、出湯口を取り付け可能な出湯口用凹部と、前記炉頂部への設置面である底面と、前記炉頂部への組込状態において、前記炉体の内周面と対向する外周壁と、開口を形成する内周壁を備え、前記カバー部材は、定形耐火物によって形成され、前記誘導炉の円筒中心軸と、前記開口の開口中心軸とは略同一線上にあり、前記円筒中心軸に沿う方向を第一方向とし、前記第一方向と直交する方向を第二方向とし、前記係合部は、少なくとも前記出湯口用凹部と前記底面との間にあって、前記係合部が前記炉体と係合すると、前記炉体に対して前記第一方向への相対的な移動が規制され、前記係合部が前記炉体から離間すると、前記炉体から分離可能であり、前記誘導炉の内部を開放可能である。
【0009】
これによれば、炉頂カバーは、係合部が少なくとも出湯口用凹部と底面との間にあって、係合部が炉体と係合すると、炉体に対して第一方向への相対的な移動が規制される。よって、炉頂カバーは、炉頂部の周辺が高温になって炉頂部が膨張しても、炉頂部の亀裂、及び浮き上がりを抑制することができる。少なくとも、出湯口用凹部と底面との間は係合部が形成されるので、出湯口が浮き上がることが抑制される。
【0010】
係合部が炉体から離間すると、炉頂カバーは炉体から分離可能であり、誘導炉の内部を開放可能である。よって、誘導炉の内部を修繕、或いは内部部品等を交換するときに、炉頂カバーを取り外すことによって、炉内の内部部品等を容易に取り出すことができる。
【0011】
さらに、カバー部材は、定形耐火物によって形成されるので、誘導加熱が加わることを抑制できる。よって、エネルギー損失を低減することができるので、炉内の金属を効率的に溶解することができる。
【0012】
また、前記炉頂カバーは、前記カバー部材が前記開口中心軸を中心とする周方向に、複数に分割された分割カバー部材を備え、前記係合部は、それぞれの前記分割カバー部材の前記外周壁から、前記第二方向に突出する凸部であり、それぞれの前記分割カバー部材は、前記円筒中心軸を中心とする径方向において、異なる方向へ移動させることにより、前記凸部が前記炉体の前記内周面に形成される前記被係合部に係合可能でもよい。
【0013】
この場合、分割カバー部材は、円筒中心軸を中心とする径方向において、異なる方向へ移動させることにより、凸部が炉体の内周面に形成される被係合部に係合可能である。よって、凸部は周方向に渡って被係合部と係合可能なので、分割カバー部材が炉頂部の亀裂、及び浮き上がりをより抑制することができる。
【0014】
また、前記炉頂カバーは、前記分割カバー部材が前記炉頂部に組み込まれた状態において、前記周方向に隣接する前記分割カバー部材との間に生じる隙間に取り付けられ、前記炉頂部の一部を覆う補助カバー部材を備え、前記補助カバー部材は、定形耐火物によって形成され、前記周方向に隣接する前記分割カバー部材との間で、少なくとも一部が接触するか又は所定量以下の隙間を有してもよい。
【0015】
この場合、炉頂部は、周方向において分割カバー部材と補助カバー部材とによって覆われるので、炉頂カバーは、炉頂部の亀裂、及び浮き上がりをより抑制することができる。
【0016】
また、前記炉頂カバーの前記補助カバー部材は、前記炉頂部に組み込まれる状態において、前記周方向における側面が、前記径方向に沿って互いに平行な補助カバー側面でもよい。この場合、補助カバー部材は、炉頂部に分割カバー部材が組み込まれた状態で、径方向へ移動させて炉頂部に組み込むことができる。
【0017】
また、前記炉頂カバーは、前記補助カバー部材と前記分割カバー部材が前記炉頂部に組み込まれた状態で、前記周方向において、前記補助カバー部材と隣接して対向する前記分割カバー部材の分割カバー側面は、前記補助カバー側面と平行であり、前記補助カバー側面と前記分割カバー側面とは、互いに面接触を含む接触をするか又は所定量以下の隙間を有してもよい。
【0018】
この場合、周方向に隣接して対向する補助カバー部材と分割カバー部材とは、補助カバー側面と分割カバー側面とが平行なので、互いに接触するか所定量以下の隙間にすることができる。よって、炉頂カバーは、分割カバー部材と補助カバー部材が、周方向において連続して炉頂部を覆うので、周方向の全体において、炉頂部における亀裂、及び浮き上がりを抑制することができる。
【0019】
また、前記炉頂カバーは、前記補助カバー部材が、前記炉頂部に組み込まれると前記炉体の前記内周面と対向する補助カバー外周壁と、前記補助カバー外周壁から前記第二方向に突出する補助凸部を備え、前記補助カバー部材は、前記分割カバー部材が前記炉頂部に組み込まれた状態で、前記径方向に移動させることによって、前記補助凸部が前記炉体の前記内周面に形成される前記被係合部に係合可能でもよい。
【0020】
この場合、補助カバー部材は、分割カバー部材が炉頂部に組み込まれた状態で、補助凸部が炉体の被係合部に係合可能なので、炉頂カバーは、分割カバー部材と補助カバー部材が、炉頂部の亀裂、及び浮き上がりをより抑制することができる。
【0021】
また、前記炉頂カバーは、前記補助カバー部材が、前記補助カバー側面に前記第二方向に突出する補助側凸部を備え、前記分割カバー部材は、前記分割カバー側面に分割カバー凹部を備え、前記補助カバー部材は、前記分割カバー部材が前記炉頂部に組み込まれた状態で、前記径方向に移動させることによって、前記補助側凸部が前記分割カバー凹部に係合可能でもよい。
【0022】
この場合、補助カバー部材は、分割カバー部材が炉頂部に組み込まれた状態で、径方向に移動させることによって、補助側凸部が分割カバー凹部に係合可能なので、補助カバーと分割カバーとが一体化することで、炉頂部の亀裂、及び浮き上がりをより抑制することができる。
【0023】
また、前記炉頂カバーは、前記係合部が係合凹部と係合部材を備え、前記係合凹部は、前記第二方向において、前記カバー部材の前記外周壁から前記内周壁の途中までに形成される凹みであり、前記係合部材は、前記第二方向において、前記炉体の外周面から前記内周面までに貫通して形成された前記被係合部、及び前記係合凹部に係合可能でもよい。
【0024】
この場合、係合部材は、炉体の外周面から挿入することによって、炉体の被係合部及び係合凹部に係合可能である。よって、炉頂カバーは、簡単な施工作業で炉頂部に組込可能であり、炉頂部の亀裂、及び浮き上がりを抑制することができる。
【0025】
本発明の第二の態様に係る誘導炉は、前記炉頂カバーと、前記炉体と、前記炉体の内部に設置されるスリーブ材と、前記炉体の内部と前記スリーブ材との間を埋める不定形耐火物と、前記出湯口を備え、前記炉頂カバーは、少なくとも一部が前記スリーブ材と前記出湯口との間に組み込まれ、前記係合部が、前記被係合部に係合されると、前記炉頂カバーは、前記炉体に対して前記第一方向への相対的な移動が規制され、前記係合部が、前記被係合部との係合状態から解除されると、前記炉頂カバーは、前記出湯口と共に前記炉体から分離可能であり、前記炉体の内部から前記スリーブ材を取り外し可能となる。
【0026】
この場合、誘導炉は、係合部が炉体に形成される被係合部に係合されると、炉頂カバーが炉体に対して第一方向への相対的な移動が規制される。よって、誘導炉は、炉頂カバーが炉頂部の亀裂、及び浮き上がりを抑制することができる。
【0027】
さらに、誘導炉は、係合部が被係合部との係合状態から解除されると、炉頂カバーが出湯口と共に炉体から分離可能であり、炉体の内部からスリーブ材を取り外し可能となる。よって、誘導炉は、炉体内部の修繕作業、或いは内部部品の交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の誘導炉50aに、本発明の第一実施形態の炉頂カバー1aが組み込まれた状態の斜視図を断面図にして示した図である。
【
図2】
図1における正面図に相当し、円筒中心軸C1において切断した断面図である。
【
図4】
図2において、炉体51から出湯口52と炉頂カバー1aを取り外した状態を示した図である。
【
図5】
図4の状態から、炉体51の内部のスリーブ材55を着脱する状態を示した図である。
【
図6】本発明の第一実施形態の炉頂カバー1aにおける第一分割カバー部材20a、第二分割カバー部材20b、及び補助カバー部材23aを示した図であり、(a)は斜視図で、(b)は平面図である。
【
図7】本発明の第一実施形態の炉頂カバー1aにおいて、第一分割カバー部材20a、第二分割カバー部材20bを炉頂部70に組み込む手順を示した、
図2におけるA視図に相当する図であり、(a)は第一分割カバー部材20a、第二分割カバー部材20bを組み込む前の炉頂部70を示し、(b)は第一分割カバー部材20a、第二分割カバー部材20bを炉頂部70に載置する状態を示し、(c)は第一分割カバー部材20a、第二分割カバー部材20bを径方向に移動させ、さらに補助カバー部材23を組み込む状態を示す。
【
図8】
図7に対応する断面図であり、(a)は
図7の断面I-Iを示す断面図であり、(b)は
図7の断面II-IIを示す断面図であって、出湯口52を組み込む前の状態を示し、(c)は(b)に対して出湯口52が組み込まれた状態を示す。
【
図9】本発明の第二実施形態の炉頂カバー1bを示す図であり、第一分割カバー部材20a、第二分割カバー部材20bと、補助カバー部材23bを示し、(a)は斜視図であり、(b)は平面図である。
【
図10】本発明の第二実施形態の炉頂カバー1bを示す図であり、
図7(b)の状態からさらに補助カバー部材23bを組み込む手順を示し、(a)は第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bとの間に補助カバー部材23bを挿入し、矢印U1及び矢印U2の方向へ移動させる状態を示し、(b)は補助カバー部材23bを組み込んだ状態を示す。
【
図11】(a)は
図10(a)における断面III-IIIを示す断面図であり、(b)は
図10(b)における断面IV-IVを示す断面図である。
【
図12】本発明の第三実施形態の炉頂カバー1cを示し、第三分割カバー部材20c、第四分割カバー部材20dと補助カバー部材23cを炉頂部70に組み込む手順を示した、
図2におけるA視図に相当する図であり、(a)は第三分割カバー部材20c、第四分割カバー部材20dを示し、(b)は第三分割カバー部材20c、第四分割カバー部材20dを炉頂部70に載置して矢印H1、矢印H2の径方向へ移動させる状態を示し、(c)は第三分割カバー部材20cを矢印R1の方向へ回転させ、第四分割カバー部材20dを矢印R2の方向に回転させた後に、補助カバー部材23cを矢印U1の径方向に移動させて組み込む状態を示す。
【
図13】本発明の第四実施形態の炉頂カバー1dの第五分割カバー部材20e、第六分割カバー部材20f、及び第七分割カバー部材20gを示す平面図である。
【
図14】本発明の第四実施形態の炉頂カバー1dにおいて、第五分割カバー部材20e、第六分割カバー部材20f、及び第七分割カバー部材20gと、補助カバー部材23dを炉頂部70に組み込む手順を示した、
図2におけるA視図に相当する図であり、(a)は第五分割カバー部材20eを矢印D1の径方向に移動させて組み込む状態を示し、(b)は次に第六分割カバー部材20fを矢印D2の径方向へ移動させて組み込む状態を示し、(c)は第六分割カバー部材20fを矢印R1の方向へ回転させ、第七分割カバー部材20gを矢印D3の径方向へ移動した後に矢印R2の方向へ回転させ、補助カバー部材23dを矢印H2の径方向へ移動させて組み込む状態を示す。
【
図15】本発明の第五実施形態の炉頂カバー1eを示す図であり、第八分割カバー部材20h、第九分割カバー部材20jと、補助カバー部材23eを示し、(a)は斜視図であり、(b)は平面図である。
【
図16】本発明の第五実施形態の炉頂カバー1eを示す図であり、第二実施形態の炉頂カバー1bにおける
図10に相当する図である。
【
図17】(a)は
図16(a)における断面V-Vを示す断面図であり、(b)は
図16(b)における断面VI-VIを示す断面図である。
【
図18】本発明の第六実施形態の炉頂カバー1f、及び炉頂カバー1fが組み込まれた誘導炉50eを示した図であり、第一実施形態の
図2に相当する断面図である。
【
図19】本発明の第六実施形態の炉頂カバー1fにおけるカバー部材10fを示した図であり、(a)斜視図であり、(b)は平面図である。
【
図20】従来例の炉頂カバー820を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照し、本発明を具現化した炉頂カバー1、及び誘導炉50を説明する。なお、発明を実施するための形態、及び参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。本発明はこれらに限定されるものではない。図面に記載されている構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0030】
<誘導炉50の構成>
はじめに、
図1から
図4までを参照して、炉頂カバー1が組み込まれる誘導炉50の構成の概要を説明する。誘導炉50は、るつぼ型誘導炉を例にして説明する。
図1及び
図2に示すように、誘導炉50は、円筒状に形成され、円筒中心を円筒中心軸C1とする。円筒中心軸C1に沿う方向を第一方向とし、第一方向と直交する方向を第二方向とする。第一方向が鉛直方向に沿う方向である場合を想定し、第一方向を上下方向とし、上側と下側を定義する。炉頂カバー1は、炉頂部70の上側に設置される。炉頂カバー1は、第二方向へ広がる平面方向において、ドーナツ状に形成される。第二方向において、円筒中心軸C1に向かう側を内側とし、反対側を外側とする。
【0031】
図1及び
図2に示すように、誘導炉50の内部は、円筒中心軸C1の周りにスリーブ材55が取り付けられ、底の部分に内底材61が形成されて、材料を入れて溶かして保持するための容器(るつぼ)が形成される。材料は例えばアルミニウム等の軽金属材料、或いは鋳鉄材料等の金属材料である。スリーブ材55の周りは、バック材56によって覆われ、さらに外側にコイルセメント58によって固定されたコイル57が形成される。コイル57の周りは継鉄59に覆われ、さらに鋼板60によって外殻が形成される。
【0032】
スリーブ材55は定型材であり、バック材56は不定型材である。スリーブ材55の材料は、アルミナ、シリカ、マグネシア等の耐火物である。バック材56は、粉状のアルミナ、シリカ、マグネシア等であり、スリーブ材55とコイルセメント58との間に挿入して固められる。内底材61は、スリーブ材55と同等の成分を持つ不定型材であり、材質も同様である。コイルセメント58の上側は、定型材によるコイル押さえ54が形成される。
【0033】
誘導炉50は、上側に、るつぼにて溶解した金属を注ぐための出湯口52が形成される。後述するように、炉頂カバー1は、出湯口52を取り付け可能な出湯口用凹部3を備える。
【0034】
内底材61の下側は、バック材56と同様の不定形材である基底材62が形成され、さらに下側は底板レンガ63が形成される。鋼板60の上側寄りには、鉄板ステージ64が平面方向に広がる方向に形成される。
【0035】
図4は、炉体51から炉頂カバー1を取り外した状態を示す。ここで、誘導炉50のうち、炉体51と炉体51の内部部品等を次のように区別して定義する。炉体51は、鋼板60によって形成される外殻と、鉄板ステージ64と、コイルセメント58によって固定されたコイル57と、コイル57の周りを覆う継鉄59と、底板レンガ63と、コイル押さえ54からなる。炉体51の内部部品等は、炉頂カバー1と、スリーブ材55と、バック材56と、内底材61と、基底材62である。
【0036】
誘導炉50には、スリーブ材55と内底材61によって形成されたるつぼに、溶解するための金属材料を投入する。コイル57に交流電流を流すとるつぼ内に磁場が発生し、電磁誘導によって、投入されている金属材料に電流が流れ、金属自体の電気抵抗によって発熱して溶解する。金属が溶解するときの温度は摂氏1500度程度となる。この発熱によってるつぼ内は高温となり、特に、るつぼに近い位置の温度上昇が激しく、スリーブ材55の温度上昇が最も激しい。従って、炉頂部70のうち、スリーブ材55の上側部分において膨張、亀裂等が発生しやすい。スリーブ材55が膨張して出湯口52に直接影響を与えると、出湯口52が浮き上がって出湯の際に支障をきたすことになる。
【0037】
なお、仮に炉頂カバー1を形成するカバー部材10が金属材料の場合、誘導加熱が発生して高温となると共に、るつぼ内の金属を溶解するためのエネルギーが損失することに繋がる。本発明の炉頂カバー1は、以上の課題を解決するものである。
【0038】
<炉頂カバー1の全ての実施形態に共通の構成>
次に、本発明の第一の態様に係る炉頂カバー1において、各実施形態に共通の構成を説明する。第一実施形態の炉頂カバー1aを示す
図1から
図6までを例に参照して説明する。炉頂カバー1は、円筒状の誘導炉50における炉頂部70に組込可能である。炉頂カバー1は、カバー部材10と、少なくとも一部がカバー部材10に形成され、誘導炉50の炉体51と係合可能な係合部2を備える。
【0039】
図2及び
図6の例に示すように、カバー部材10は、出湯口52を取り付け可能な出湯口用凹部3と、炉頂部70への設置面である底面5と、炉頂部70への組込状態において、炉体51の内周面と対向する外周壁6と、開口7を形成する内周壁8を備える。
図2及び
図4に示すように、炉体51の炉頂部70における内周面は、コイル押さえ54の内周面が相当し、炉頂部開口71を形成する。カバー部材10は、定形耐火物によって形成される。定形耐火物は、例として珪石質煉瓦、粘土質煉瓦、ジルコニア質煉瓦、高アルミナ質煉瓦、マグネシア質煉瓦、マグクロ質煉瓦、マグカーボン質煉瓦、アルミナカーボン質煉瓦等が使用され、他の材料でもよい。なお、定形耐火物にはセラミックスを含む。
【0040】
図1及び
図2に示すように、誘導炉50の円筒中心軸C1と、開口7の開口中心軸C2とは略同一線上にある。円筒中心軸C1に沿う方向を第一方向とし、第一方向と直交する方向を第二方向とする。係合部2は、少なくとも出湯口用凹部3と底面5との間にある。係合部2が炉体51と係合すると、炉頂カバー1は炉体51に対して第一方向への相対的な移動が規制される。係合部2が炉体51から離間すると、炉頂カバー1は炉体51から分離可能であり、誘導炉50の内部を開放可能である。
【0041】
図2に示すように、炉頂カバー1のカバー部材10における底面5は、スリーブ材55及びバック材56とモルタル53、パッチング材もしくは湿式の粉材等を介して接触するか、或いはモルタル53等を介さずに直接接触する。外周壁6と炉頂部開口71を形成するコイル押さえ54の内周面との間は、対向するのみでモルタル53等の接着作用を有するものは介さない。また、係合部2と、炉体51に形成される被係合部65、又は後述する
図18に示す被係合部66との間においても同様に、モルタル53等の接着作用を有するものは使用しない。よって、炉頂カバー1は、係合部2が炉体51から離間すれば、スリーブ材55及びバック材56との間のモルタル等を剥がすのみで炉体51から取り外すことができる。
【0042】
<炉体51内部の修繕、部品交換について>
図4及び
図5を参照して、炉体51の内部の修繕、或いは内部部品を交換する場合について説明する。誘導炉50は、炉体51の内部が高温にさらされる過酷な環境下のため、内部の構造物或いは部品が損傷し、修繕等が必要となる場合がある。
図2を例に説明すると、高温となる金属溶湯に直接晒されるのは、スリーブ材55及び内底材61、及び炉頂カバー1である。交換或いは修繕が必要となるのは、金属溶湯に直接晒される部品等に加え、隣接するバック材56、基底材62、さらに、コイルセメント58にまで及ぶ場合がある。本発明の炉頂カバー1は、炉体51から取り外すことが可能なため、炉体51内部の修繕、部品交換等が可能である。
【0043】
図5に示すように、
図4の状態からスリーブ材55を抜き取ると、不定形耐火物であるバック材56と内底材61と基底材62は粉状になって炉体51の内部に残るが、外部に掻き出すことができる。すると、炉体51の内部が露出した状態となり、コイルセメント58等の修繕が可能となる。スリーブ材55が損傷している場合は、スリーブ材55を交換して、炉体51へ施工する。
【0044】
<炉頂カバー1の全ての実施形態に共通の構成による効果>
以上説明した炉頂カバー1に共通の構成によれば、以下の効果を奏する。例として
図1から
図6までに示すように、炉頂カバー1は、係合部2が少なくとも出湯口用凹部3と底面5との間にあって、係合部2が炉体51と係合すると、炉体51に対して第一方向への相対的な移動が規制される。よって、炉頂カバー1は、炉頂部70及び周辺が高温になって膨張しても、炉頂部70の亀裂、及び浮き上がりを抑制することができる。少なくとも、出湯口用凹部3と底面5との間は係合部2が形成されるので、出湯口52が浮き上がることが抑制される。
【0045】
また、カバー部材10は、定形耐火物によって形成されるので、誘導加熱が加わることを抑制できる。よって、エネルギー損失を低減することができるので、炉内の金属を効率的に溶解することができる。
【0046】
また、
図4及び
図5に示すように、係合部2が炉体51から離間すると、炉頂カバー1は炉体51から分離可能であり、誘導炉50の内部を開放可能である。よって、誘導炉50の内部を修繕、或いは交換するときに、炉頂カバー1を取り外すことによって、炉内の構造物を容易に取り出すことができる。
【0047】
また、誘導炉50は、炉体51の内部部品等を含めて工場で生産されて流通する場合と、炉体51のみの状態で工場から出荷され、使用される現場で炉体51の内部部品等が施工される場合がある。本発明の炉頂カバー1は、炉体51に対して組込が可能なため、特に後者の場合に有効である。
【0048】
また、炉体51内部を修繕等する場合、誘導炉50の全体を工場へ輸送する必要が無く、使用される現場で作業することができる。炉体51の内部部品の交換が必要な場合は、交換部品のみを工場から輸送し、使用される現場で施工して炉頂カバー1を組み込むことができる。
【0049】
<<炉頂カバー1の複数の実施形態に共通する構成と効果>>
次に、本発明の第一の態様に係る炉頂カバー1において、複数の実施形態に共通する構成とその効果を説明する。なお、すでに説明した共通の構成、及び効果は説明を省略する。
【0050】
<第一実施形態の炉頂カバー1aから第五実施形態の炉頂カバー1eまでに共通の構成>
本発明の第一の態様に係る第一実施形態の炉頂カバー1aから第五実施形態の炉頂カバー1eまでに共通する構成を説明する。
図6等に示すように、炉頂カバー1のカバー部材10は、開口中心軸C2を中心とする周方向に、複数に分割された分割カバー部材20を備える。係合部2は、それぞれの分割カバー部材20の外周壁6から、第二方向に突出する凸部11である。
図7、
図10、
図12、
図14、及び
図16に示すように、それぞれの分割カバー部材20は、円筒中心軸C1を中心とする径方向において、異なる方向へ移動させることにより、凸部11が、炉体51の内周面に形成される被係合部65である溝部に係合可能である。
図4、及び
図7等の破線で示すように、被係合部65である溝部は、コイル押さえ54の内周面の全周に渡って形成されている。
【0051】
また、
図6、
図7、
図9、
図10、
図12、
図14、及び
図16に示すように、炉頂カバー1は、分割カバー部材20が炉頂部70に組み込まれた状態において、周方向において、隣接する分割カバー部材20との間に生じる隙間に取り付けられ、炉頂部70の一部を覆う補助カバー部材23を備える。補助カバー部材23は、定形耐火物によって形成され、周方向に隣接する分割カバー部材20との間で、少なくとも一部が接触するか又は所定量以下の隙間を有する。
【0052】
また、
図6、
図7、
図9、
図10、
図12、
図14、及び
図16に示すように、炉頂カバー1の補助カバー部材23は、炉頂部70に組み込まれる状態において、周方向における側面が、径方向に沿って互いに平行な補助カバー側面24である。
【0053】
また、
図6、
図7、
図9、
図10、
図12、
図14、及び
図16に示すように、炉頂カバー1は、補助カバー部材23と分割カバー部材20が炉頂部70に組み込まれた状態で、周方向において、補助カバー部材23と隣接して対向する分割カバー部材20の分割カバー側面14が、補助カバー側面24と平行である。補助カバー側面24と分割カバー側面14とは、互いに面接触を含む接触をするか又は所定量以下の隙間を有する。
【0054】
<第一実施形態の炉頂カバー1aから第五実施形態の炉頂カバー1eまでに共通の構成による効果>
以上説明した構成によれば、以下の効果を奏する。
図7、
図10、
図12、
図14、及び
図16に示すように、分割カバー部材20は、円筒中心軸C1を中心とする径方向において、異なる方向へ移動させることにより、凸部11が炉体51の内周面に形成される被係合部65である溝部に係合可能である。よって、炉頂カバー1は、凸部11が周方向に渡って被係合部65である溝部と係合可能なので、炉頂部70の亀裂、及び浮き上がりをより抑制することができる。
【0055】
また、分割カバー部材20は、一体で形成される場合に比べてそれぞれがコンパクトであり軽量である。よって、輸送及び取扱いが容易である。係合部2である凸部11は、分割カバー部材20の外周壁6において一体で形成されるので、係合用の部品を用意する必要が無く、コストの低減が可能である。さらに、炉頂カバー1は、定形耐火物のみで形成されるので、誘電加熱される可能性が低い。
【0056】
また、
図6等に示すように、炉頂部70は、周方向において分割カバー部材20と補助カバー部材23とによって覆われるので、炉頂カバー1は、炉頂部70の亀裂、及び浮き上がりをより抑制することができる。
【0057】
また、分割カバー部材20と補助カバー部材23は、炉体51から取り外す作業が容易である。
図7等に示す例では、分割カバー部材20は、まず補助カバー部材23を取り外した後に、組み付け時とは逆の方向に移動させることにより取り外すことができる。詳細は、各個別の実施形態において説明する。
【0058】
また、
図6等に示すように、炉頂カバー1の補助カバー部材23は、周方向における側面が、径方向に沿って互いに平行な補助カバー側面24なので、炉頂部70に分割カバー部材20が組み込まれた状態で、径方向へ移動させて炉頂部70に組み込むことができる。後述するように、補助カバー部材23が補助凸部27を備える場合、径方向へ移動させることにより補助凸部27を被係合部65である溝部に係合させることができる。
【0059】
また、
図6等に示すように、周方向に隣接して対向する補助カバー部材23と分割カバー部材20とは、補助カバー側面24と分割カバー側面14とが平行なので、互いに面接触を含む接触をするか所定量以下の隙間にすることができる。よって、炉頂カバー1は、分割カバー部材20と補助カバー部材23が、周方向において連続して炉頂部70を覆うので、周方向の全体において、炉頂部70における亀裂、及び浮き上がりを抑制することができる。
【0060】
<第二実施形態の炉頂カバー1bから第五実施形態の炉頂カバー1eまでに共通の構成と効果>
次に、本発明の第一の態様に係る第二実施形態の炉頂カバー1bから第五実施形態の炉頂カバー1eまでに共通する構成を説明する。
図9等に示すように、炉頂カバー1の補助カバー部材23は、炉頂部70に組み込まれた状態で炉体51の内周面と対向する補助カバー外周壁26と、補助カバー外周壁26から第二方向に突出する補助凸部27と、周方向において互いに平行な補助カバー側面24を備える。
【0061】
図10等に示すように、補助カバー部材23は、分割カバー部材20が炉頂部70に組み込まれた状態で、径方向に移動させることによって、補助凸部27が炉体51の内周面に形成される被係合部65である溝部に係合可能である。
【0062】
以上説明した構成によれば、以下の効果を奏する。炉頂カバー1の補助カバー部材23は、分割カバー部材20が炉頂部70に組み込まれた状態で、補助凸部27が炉体51の被係合部65である溝部に係合可能である。よって、炉頂カバー1は、分割カバー部材20と補助カバー部材23が、炉頂部70の亀裂、及び浮き上がりをより抑制することができる。
【0063】
<<各実施形態に固有の構成と効果>>
次に、本発明の第一の態様に係る第一実施形態の炉頂カバー1aから第六実施形態の炉頂カバー1fまでのそれぞれに固有の構成と効果を説明する。なお、すでに説明した共通の構成とその効果は説明を省略する。
【0064】
<第一実施形態の炉頂カバー1aの構成>
図6から
図8までを参照して、本発明の第一の態様に係る第一実施形態の炉頂カバー1aを説明する。炉頂カバー1aは、二個の分割カバー部材20である第一分割カバー部材20a、第二分割カバー部材20b、及び二個の補助カバー部材23aを備える。
図6に示すように、第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bは、平面視で内側が凹んだ半月状の形状である。
図7(c)に示すように、二個の補助カバー部材23aは、炉頂部70に組み込んだ状態において、円筒中心軸C1に対して対称の形状である。
図6(b)、
図7(c)に示すように、第一分割カバー部材20a、第二分割カバー部材20bは、炉頂部70に組み込まれたとき、周方向の分割カバー側面14が径方向に沿って互いに平行になるよう形成される。補助カバー部材23aは、上述した補助カバー側面24が形成される。
【0065】
補助カバー部材23aは、
図7(c)に示すように、炉頂部70に組み込んだ状態で、第一分割カバー部材20a及び第二分割カバー部材20bの間の隙間に対応した形状である。すなわち、補助カバー部材23aは、炉頂部70に生じる隙間を覆うように取り付けられる。
【0066】
図6に示すように、第一分割カバー部材20aには、出湯口52を取り付け可能な出湯口用凹部3が形成される。第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bは、外周壁6から第二方向へ向かって係合部2である凸部11が形成される。補助カバー部材23aには、他の実施形態において形成される補助凸部27は形成されない。
【0067】
図6(b)に示すように、第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bの凸部11は、それぞれ外周壁6から図示の左側及び右側へ向かって突出するが、
図7(b)において図示する上下方向へは突出しない。
図7(b)に示すように、第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bとを周方向の側面において接触させたとき、凸部11の外側輪郭は炉頂部開口71の範囲内に形成される。凸部11が外周壁6から突出する量は、炉体51に形成される被係合部65である溝部の深さ以下である。凸部11は以上のように形成されるので、次に説明するように、分割カバー部材20を炉頂部70に組み込むことができる。
【0068】
次に、炉頂カバー1aを炉頂部70へ組み込む手順を説明する。
図4及び
図7(a)に示すように、炉頂カバー1aは、炉頂部70において、コイル押さえ54によって形成される炉頂部開口71に組み込まれる。
【0069】
まず、
図7(b)に示すように、第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bを炉頂部開口71の内部に挿入する。次に、第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bを、それぞれ径方向のうちの矢印H1と矢印H2の方向へ移動させて、凸部11を被係合部65である溝部に係合させ、
図7(c)に状態にする。
【0070】
次に、第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bとの間に生じた隙間に対して、二個の補助カバー部材23aを取り付ける。このとき、補助カバー部材23aは、炉体51の被係合部65である溝部に係合させる必要はないので、第一方向の上側から装着可能である。
【0071】
図8は、
図7(b)における断面I-I、及び
図7(c)における断面II-IIを示す。
図8(a)に示すように、第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bを、上側から炉頂部開口71に挿入して炉頂部70に載置させる。次に、
図8(b)に示すように、凸部11を被係合部65である溝部に係合させ、
図8(c)に示すように出湯口52を出湯口用凹部3に取り付ける。
図8(a)から
図8(b)に移る段階において、分割カバー部材20の底面5と炉頂部70との間にモルタル53等を介してもよい。モルタル53は底面5と炉頂部70との間の隙間を埋めるためである。加えて、接着効果も期待できる。また、補助カバー部材23と炉頂部70との間も、モルタル53等を介してもよい。
【0072】
炉頂部70から炉頂カバー1aを取り外すときは、以上説明した手順とは逆の順番で取り外しを行う。すなわち、最初に補助カバー部材23aを取り外し、次に第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bのいずれか一方を径方向に移動して外し、次に他方を径方向に移動して外す。
【0073】
<第一実施形態の炉頂カバー1aの効果>
以上説明した構成によれば、以下の効果を奏する。炉頂カバー1aは、第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20b、及び二個の補助カバー部材23が炉頂部70を全周に渡って覆うので、炉頂部70における亀裂、及び浮き上がりを抑制することができる。
【0074】
また、カバー部材10は、二個の分割カバー部材20を炉頂部開口71に挿入して径方向のうちの矢印H1と矢印H2の方向へ移動させるのみなので、組み付け作業が容易である。矢印H1の方向と矢印H2の方向は、互いに180度反転する方向なので、移動させる際の角度調整等が容易である。また、補助カバー部材23は、第一方向の上側から取り付け可能なので、組み付け作業が容易である。
【0075】
なお、第一実施形態の炉頂カバー1aは、補助カバー部材23aを備える場合について説明したが、補助カバー部材23が無くてもよい。第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bとの周方向における隙間は、凸部11を被係合部65である溝部に係合させる際の移動量によって発生するものであり、周方向の全体に対する割合は少ない。よって、補助カバー部材23が無い場合であっても、炉頂カバー1aは、周方向の全体において、炉頂部70における亀裂、及び浮き上がりを抑制することができる。
【0076】
また、補助カバー部材23aは、周方向の側面が径方向に沿って互いに平行な補助カバー側面24である場合について説明したが、必ずしも平行でなくてもよい。仮に、第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bとの間の隙間が径方向に沿って平行に形成されない場合は、補助カバー部材23aは隙間の形状に合わせて形成してもよい。他の実施形態における補助凸部27を備えないので、径方向に移動させて組み込む必要が無く、平面形状には自由度がある。
【0077】
<第二実施形態の炉頂カバー1bの構成>
次に、
図9から
図11までを参照して、本発明の第一の態様に係る第二実施形態の炉頂カバー1bを説明する。炉頂カバー1bは、炉頂カバー1aに対して、補助カバー部材23の構成が異なる。補助カバー部材23bは、補助カバー部材23aとは異なり、補助カバー外周壁26から第二方向へ突出する補助凸部27を備える。補助凸部27は、炉体51における被係合部65である溝部に挿入可能な形状及び寸法である。他の実施形態における補助凸部27も同様である。
【0078】
図9に示すように、炉頂カバー1bは、炉頂カバー1aと同様の第一分割カバー部材20a、第二分割カバー部材20bに加えて、二個の補助カバー部材23bを備える。二個の補助カバー部材23bは、炉頂部70に組み込んだ状態において、円筒中心軸C1に対して対称の形状である。補助カバー部材23bは、第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bが炉頂部70に組み込まれたときに生じる周方向の隙間に対応した寸法で形成される。
図9に示すように、補助カバー部材23bの周方向における側面は補助カバー側面24であって互いに平行であり、対向する分割カバー側面14とも平行である。
【0079】
図10及び
図11を参照して、補助カバー部材23bを組み込む手順を説明する。
図10(a)及び
図11(a)は、
図7(c)の状態に対応する図である。第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bとが炉頂部70に組み込まれた後に、補助カバー部材23bを上側から炉頂部70に挿入する状態を示す。次に、二個の補助カバー部材23bは、それぞれ
図10(a)に示すように、径方向のうちの矢印U1の方向と矢印U2の方向へ移動させて、
図11(b)に示すように、補助凸部27を被係合部65である溝部に係合させる。補助カバー部材23bの補助カバー側面24は、径方向に沿って互いに平行なので、第一分割カバー部材20aと第二分割カバー部材20bとの間の隙間に対して、径方向のうちの矢印U1の方向と矢印U2の方向へ移動可能である。
【0080】
図10(b)及び
図11(b)は、補助カバー部材23bが炉頂部70に組み込まれた状態を示す。補助カバー部材23bの補助カバー側面24と、第一分割カバー部材20a及び第二分割カバー部材20bのそれぞれの分割カバー側面14とが面接触する状態となる。
図7(b)に示す矢印H1の方向及び矢印H2の方向と、
図10(a)に示す矢印U1の方向及び矢印U2の方向とは、互いに直交する。炉頂部70から炉頂カバー1bを取り外す場合は、以上説明した手順の逆を行う。
【0081】
<第二実施形態の炉頂カバー1bの効果>
以上説明した構成によれば、以下の効果を奏する。
図10に示すように、炉頂カバー1bは、炉頂部70に組み込まれた状態において、補助カバー部材23bが周方向の隙間を埋め、かつ炉体51と係合するので、周方向の全体を隙間なく覆い、炉頂部70における亀裂、及び浮き上がりをより抑制することができる。なお、補助カバー部材23bと、第一分割カバー部材20a及び第二分割カバー部材20bとは、必ずしも補助カバー側面24と分割カバー側面14とが接触する必要はなく、各部品の寸法誤差、及び反り等の変形、組み付け誤差等を考慮した所定量以下の隙間があってもよい。
【0082】
また、第一分割カバー部材20a及び第二分割カバー部材20bを組み付ける際に移動させる矢印H1及び矢印H2の方向と、補助カバー部材23bを移動させる矢印U1及び矢印U2の方向とは直交するので、施工時の角度調整等が容易である。
【0083】
<第三実施形態の炉頂カバー1cの構成>
次に、
図12を参照して、本発明の第一の態様に係る第三実施形態の炉頂カバー1cを説明する。炉頂カバー1cは、第三分割カバー部材20c、第四分割カバー部材20d、及び一個の補助カバー部材23cを備える。第三分割カバー部材20c及び第四分割カバー部材20dは、第一分割カバー部材20a及び第二分割カバー部材20bに対して周方向における側面の形状が異なる。
図12(c)に示すように、補助カバー部材23cの周方向における側面は補助カバー側面24であって互いに平行であり、対向する分割カバー側面14とも平行である。
【0084】
図12を参照して、炉頂カバー1cを炉頂部70に組み込む手順を説明する。
図12(a)は、第三分割カバー部材20c及び第四分割カバー部材20dの平面形状を示す。
図12(b)に示すように、第三分割カバー部材20c及び第四分割カバー部材20dは、炉頂部開口71に挿入するとき、周方向の側面は互いに面接触することなく、一部のみで接触する。第一分割カバー部材20a及び第二分割カバー部材20bと同様に、凸部11の外側輪郭は炉頂部開口71の範囲内に形成される。第三分割カバー部材20c及び第四分割カバー部材20dは、炉頂部開口71に挿入後、それぞれ径方向のうちの矢印H1の方向と矢印H2の方向へ移動させて、凸部11を被係合部65である溝部に係合させる。
【0085】
次に、
図12(c)に示すように、第三分割カバー部材20cを矢印R1の方向に回転させ、第四分割カバー部材20dを矢印R2の方向に回転させて、一方の周方向の側面が互いに面接触する状態にする。このとき、他方の周方向の側面は互いに平行になるよう形成される。次に、補助カバー部材23cを第三分割カバー部材20cと第四分割カバー部材20dとの間の隙間に挿入し、径方向のうちの矢印U1の方向へ移動させて補助凸部27を被係合部65である溝部に係合させる。他方の周方向の側面が分割カバー側面14となり、補助カバー側面24と面接触する状態となる。補助カバー部材23cの補助カバー側面24は互いに平行である。補助カバー部材23cは、第三分割カバー部材20cと第四分割カバー部材20dとの間の隙間に対して、径方向のうちの矢印U1の方向へ移動させることで、補助凸部27を炉体51の被係合部65である溝部に係合可能である。炉頂部70から炉頂カバー1cを取り外す場合は、以上説明した手順の逆を行う。
【0086】
<第三実施形態の炉頂カバー1cの効果>
以上説明した構成によれば、以下の効果を奏する。
図12に示すように、炉頂カバー1cのカバー部材10は、二個の分割カバー部材20と一個の補助カバー部材23cからなるので、少ない部品点数である。分割カバー部材20を炉頂部70に組み込む過程において、回転方向への移動を伴うことにより、一個の補助カバー部材23cによって、周方向に生じる隙間を埋めることができる。よって、部品管理等のコスト低減と、炉頂部70に組み込む作業工数を低減して、周方向の全体において、炉頂部70における亀裂、及び浮き上がりを抑制することができる。
【0087】
補助カバー部材23cは、第三分割カバー部材20cと第四分割カバー部材20dとの間の周方向の隙間を埋め、さらに補助凸部27が被係合部65である溝部に係合するので、周方向の全体を隙間なく覆い、炉頂部70における亀裂、及び浮き上がりをより抑制することができる。なお、補助カバー部材23cと、第三分割カバー部材20c及び第四分割カバー部材20dとは、必ずしも補助カバー側面24と分割カバー側面14とが接触する必要はなく、各部品の寸法誤差、及び反り等の変形、組み付け誤差等を考慮した所定量以下の隙間があってもよい。
【0088】
また、補助カバー部材23cの組み付け作業は、第三分割カバー部材20c及び第四分割カバー部材20dを組み付ける際に移動させる矢印H1及び矢印H2の方向と、補助カバー部材23cを移動させる矢印U1の方向とが直交するので、施工時の角度調整等が容易である。
【0089】
なお、以上説明した第一実施形態の炉頂カバー1aから第三実施形態の炉頂カバー1cまでにおいて、それぞれの分割カバー部材20を複数個同時に炉頂部開口71に載置してから組み込む例を示したが、これに限定されない。例えば、分割カバー部材20をそれぞれ一個ずつ順番に炉頂部開口71に載置して炉体51に組み込んでもよい。その場合、炉頂部開口71に対して、複数個の分割カバー部材20を同時に載置する場合に比べて、載置できる範囲の自由度が大きくなるので、分割カバー部材20の平面方向の形状を変えてもよい。
【0090】
<第四実施形態の炉頂カバー1dの構成>
次に、
図13及び
図14を参照して、本発明の第一の態様に係る第四実施形態の炉頂カバー1dを説明する。
図13に示すように、炉頂カバー1dは、第五分割カバー部材20e、第六分割カバー部材20f、第七分割カバー部材20g、及び一個の補助カバー部材23dを備える。第五分割カバー部材20eから第七分割カバー部材20gまでは、いずれも扇形状の形状である。
図14(c)に示すように、補助カバー部材23dの周方向の側面は補助カバー側面24であって互いに平行であり、対向する分割カバー側面14とも平行である。
【0091】
炉頂カバー1dは、すでに説明した他の実施形態とは、分割カバー部材20を組み込む際の移動方向が異なる。
図14を参照して、炉頂カバー1dを炉頂部70に組み込む手順を説明する。
図14(a)に示すように、まず、第五分割カバー部材20eを炉頂部開口71に挿入し、径方向のうちの矢印D1の方向へ移動させて凸部11を被係合部65である溝部に係合させる。次に、
図14(b)に示すように、第六分割カバー部材20fを傾けながら炉頂部開口71に挿入し、径方向のうちの矢印D2の方向に移動させて凸部11を被係合部65である溝部に係合させる。
【0092】
次に、
図14(c)に示すように、第六分割カバー部材20fを矢印R1の方向へ回転させて、周方向の側面を第五分割カバー部材20eに接触させる。次に、第七分割カバー部材20gを斜めにして炉頂部開口71に挿入後、径方向のうちの矢印D3の方向へ移動させて凸部11を被係合部65である溝部に係合させる。次に、第七分割カバー部材20gを矢印R2の方向へ回転させて、周方向の側面を第五分割カバー部材20eに接触させる。
【0093】
さらに、補助カバー部材23dを第六分割カバー部材20fと第七分割カバー部材20gとの隙間に挿入し、径方向のうちの矢印H2の方向へ移動させながら補助凸部27を被係合部65である溝部に係合させる。
図14(c)に示すように、補助カバー部材23dは、補助カバー部材23b及び補助カバー部材23cと同様に、補助カバー外周壁26と、補助凸部27と、補助カバー側面24を備える。補助カバー部材23dの補助カバー側面24は径方向に沿って互いに平行なので、第六分割カバー部材20fと第七分割カバー部材20gとの間の隙間に対して、径方向のうちの矢印H2の方向へ移動可能である。
【0094】
<第四実施形態の炉頂カバー1dの効果>
以上説明した構成によれば、以下の効果を奏する。
図14に示すように、炉頂カバー1dの分割カバー部材20と補助カバー部材23dは、それぞれ径方向のうちの斜めの方向である矢印D1から矢印D3までと、矢印H2の方向へ移動させながら組み込むことで、周方向に隙間が無い状態で炉頂部70を覆うことができる。よって、炉頂カバー1dは、周方向の全体において、炉頂部70における亀裂、及び浮き上がりを抑制することができる。なお、周方向における補助カバー部材23dの補助カバー側面24と分割カバー部材20の分割カバー側面14との間の隙間は、炉頂カバー1b及び炉頂カバー1cと同様である。
【0095】
<第五実施形態の炉頂カバー1eの構成>
次に、
図15から
図17までを参照して、第五実施形態の炉頂カバー1eを説明する。炉頂カバー1eは、炉頂カバー1bに対して次の点が異なる。炉頂カバー1eは、補助カバー部材23eが、補助カバー側面24に第二方向に突出する補助側凸部28を備える。第八分割カバー部材20h及び第九分割カバー部材20jは、分割カバー側面14に分割カバー凹部29を備える。補助カバー部材23eは、第八分割カバー部材20h及び第九分割カバー部材20jが炉頂部70に組み込まれた状態で、径方向に移動させることによって、補助側凸部28が分割カバー凹部29に係合可能である。
【0096】
図15に示すように、補助側凸部28は補助凸部27と第一方向において同一の高さに形成され、第二方向に沿ってリブ状に形成される。
図15及び
図17に示すように、分割カバー凹部29は、補助側凸部28が係合可能なように溝状に形成される。
【0097】
図16及び
図17を参照して、補助カバー部材23eの取付手順を説明する。補助カバー部材23eは、補助カバー部材23bに対して補助側凸部28が形成されるため、第一方向から装着するときに制約がある。
図16(a)及び
図17(a)に示すように補助カバー部材23eは、第一方向の上側から下側へ装着するときに、第八分割カバー部材20h及び第九分割カバー部材20jが無い領域、すなわち、内周壁8の内側へ挿入する必要がある。
【0098】
二つのうち一方の補助カバー部材23eは、炉頂部70の高さまで挿入した後に、補助側凸部28を分割カバー凹部29に挿入しながら径方向であるU1の方向へ移動させる。次に、他方の補助カバー部材23eを同様に挿入して径方向であるU2の方向へ移動させる。なお、内周壁8の寸法と補助カバー部材23cの寸法関係によっては、二つの補助カバー部材23eはそれぞれ一つずつ取り付ける必要な場合がある。炉頂部70から補助カバー部材23e及び第八分割カバー部材20hと第九分割カバー部材20jを取り外すときは、以上説明した手順の逆を行えばよい。
【0099】
なお、炉頂カバー1eは炉頂カバー1bに対して、補助カバー部材23eに補助側凸部28が形成され、第八分割カバー部材20h等に分割カバー凹部29が形成される例を示したが、他の実施形態である炉頂カバー1a、炉頂カバー1c、及び炉頂カバー1dのいずれかに形成されてもよい。
【0100】
<第五実施形態の炉頂カバー1eの効果>
以上説明した構成によれば、以下の効果を奏する。補助カバー部材23eは、第八分割カバー部材20h及び第九分割カバー部材20jが炉頂部70に組み込まれた状態で、径方向に移動させることによって、補助側凸部28が第八分割カバー部材20h及び第九分割カバー部材20jと係合可能である。よって、補助カバー部材23eと第八分割カバー部材20h及び第九分割カバー部材20jとが一体化することで、炉頂部70の亀裂、及び浮き上がりをより抑制することができる。
【0101】
<第六実施形態の炉頂カバー1fの構成>
次に、
図18及び
図19を参照して、本発明の第一の態様に係る第六実施形態の炉頂カバー1fを説明する。炉頂カバー1fは、他の実施形態とは構成が異なる。炉頂カバー1fの係合部2は、係合凹部21と係合部材22を備える。
図18及び
図19(b)に示すように、係合凹部21は、第二方向においてカバー部材10fの外周壁6から内周壁8の途中までに形成される凹みである。係合部材22は、第二方向において、炉体51の外周面から内周面までに貫通して形成された被係合部66である係合穴、及び係合凹部21に係合可能である。
【0102】
図18に示すように係合部材22は、例としてボルトである。係合凹部21は例として、ボルトが螺合可能な雌ネジが形成される。係合部材22は、ボルトの他に圧入ピンでもよい。その場合、係合凹部21は、圧入ピンがホールドされる穴径に形成される。
【0103】
炉頂カバー1fを炉頂部70に組み込む手順を説明する。まず、炉頂カバー1fは、第一方向の上側から炉頂部開口71に挿入する。次に、
図18に示すように、係合部材22を炉体51の被係合部66である係合穴と係合凹部21に係合する。次に、出湯口用凹部3に出湯口52を取付ける。炉頂カバー1fは、係合部材22を係合凹部21及び被係合部66である係合穴から抜き取ると、炉頂部70から取り外し可能である。誘導炉50eは、炉頂部70から炉頂カバー1fを取り外せば、内部が開放されて内部部品の交換、修繕等を行うことができる。
【0104】
<第六実施形態の炉頂カバー1fの効果>
以上説明した構成によれば、以下の効果を奏する。炉頂カバー1fは、係合部材22を炉体51の外周面から挿入することによって、炉体51及び係合凹部21に係合可能なので、簡単な施工作業で炉頂部70の亀裂、及び浮き上がりを抑制することができる。また、炉頂カバー1fは炉頂部70から容易に取り外しできるので、炉体51内部の部品交換、内部の修繕等を容易に行うことができる。さらに、係合凹部21は、外周壁6から開口して内周壁8の途中までに形成される凹みなので、係合部材22が金属製であっても炉内の金属溶湯と接触しないので、誘導加熱が低減される。なお、係合部材22は、セラミックス等の非金属製であってもよい。
【0105】
<誘導炉50の構成>
次に、本発明の第二の態様に係る誘導炉50を説明する。概要はすでに説明したが、
図2等に示すように、誘導炉50は、炉頂カバー1と、炉体51と、炉体51の内部に設置されるスリーブ材55と、炉体51の内周を形成するコイルセメント58とスリーブ材55との間を埋める不定形耐火物であるバック材56と、出湯口52を備える。なお、炉頂カバー1には、全ての実施形態の炉頂カバー1aから炉頂カバー1fまでが含まれる。
【0106】
炉頂カバー1は、少なくとも一部がスリーブ材55と出湯口52との間に組み込まれる。係合部2が、炉体51に形成される被係合部65、66に係合されると、炉頂カバー1は、炉体51に対して第一方向への相対的な移動が規制される。係合部2が、被係合部65又は被係合部66との係合状態から解除されると、炉頂カバー1は、出湯口52と共に炉体51から分離可能であり、炉体51の内部からスリーブ材55を取り外し可能となる。
【0107】
<誘導炉50の構成の効果>
以上説明した構成によれば、以下の効果を奏する。誘導炉50は、係合部2が炉体51に形成される被係合部65、66に係合されると、炉頂カバー1の炉体51に対する第一方向への相対的な移動が規制される。よって、炉頂部70の亀裂、及び浮き上がりを抑制することができる。
【0108】
さらに、誘導炉50は、係合部2が被係合部65、66との係合状態から解除されると、炉頂カバー1が出湯口52と共に炉体51から分離可能であり、炉体51の内部からスリーブ材55を取り外し可能となる。よって、炉体51内部の修繕作業、或いは内部部品の交換を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0109】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f 炉頂カバー
2 係合部
3 出湯口用凹部
5 底面
6 外周壁
7 開口
8 内周壁
10、10f カバー部材
11 凸部
14 分割カバー側面
20 分割カバー部材
21 係合凹部
22 係合部材
23、23a、23b、23c、23d、23e 補助カバー部材
24 補助カバー側面
26 補助カバー外周壁
27 補助凸部
28 補助側凸部
29 分割カバー凹部
50、50a、50e 誘導炉
51 炉体
52 出湯口
55 スリーブ材
65 被係合部
66 被係合部
70 炉頂部
C1 円筒中心軸
C2 開口中心軸