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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180187
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
   F28F 13/06 20060101AFI20231213BHJP
   F28D 7/08 20060101ALI20231213BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231213BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20231213BHJP
【FI】
F28F13/06
F28D7/08
B33Y10/00
B33Y80/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101436
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2022092816の分割
【原出願日】2022-06-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】519366237
【氏名又は名称】NatureArchitects株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134094
【弁理士】
【氏名又は名称】倉持 誠
(72)【発明者】
【氏名】須藤 海
(72)【発明者】
【氏名】新谷 国隆
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA17
3L103BB05
3L103BB39
3L103DD04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流体が交わる領域で流体同士の衝突や流体流れの淀みが生じない熱交換用の構造体を提供する。
【解決手段】或る方向にスパイラル状に延びる複数の第1の流路12aが互いに連通して形成される第1の流路空間と、上記或る方向にスパイラル状に延びる複数の第2の流路14aが互いに連通して形成される第2の流路空間とを互いに隔てた隔壁構造10を含む熱交換用の構造体1が提供される。複数の第1の流路12aのうち互いに隣接する2つの第1の流路12aは、第1の流路12aが延びる方向に沿って見たときに、一方は第1の方向に旋回し、他方は第1の方向とは反対方向である第2の方向に旋回し、複数の第2の流路14aのうち互いに隣接する2つの第2の流路14aは、第2の流路14aが延びる方向に沿って見たときに、一方は第1の方向に旋回し、他方は第1の方向とは反対方向である第2の方向に旋回するように形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る方向にスパイラル状に延びる複数の第1の流路が互いに連通して形成される第1の流路空間と、前記或る方向にスパイラル状に延びる複数の第2の流路が互いに連通して形成される第2の流路空間とを互いに隔てた状態で形成する隔壁構造を含む熱交換用の構造体であって、
複数の前記第1の流路のうち互いに隣接する2つの前記第1の流路は、前記第1の流路が延びる方向に沿って見たときに、一方の前記第1の流路は第1の方向に旋回し、他方の前記第1の流路は前記第1の方向とは反対方向である第2の方向に旋回するように形成されており、
複数の前記第2の流路のうち互いに隣接する2つの前記第2の流路は、前記第2の流路が延びる方向に沿って見たときに、一方の前記第2の流路は第1の方向に旋回し、他方の前記第2の流路は前記第1の方向とは反対方向である第2の方向に旋回するように形成されている、構造体。
【請求項2】
前記隔壁構造は、前記第1の方向に旋回する前記第1の流路及び前記第2の流路を形成する第1のヘリコイド曲面に基づいて形成された第1の流路要素と、前記第2の方向に旋回する前記第1の流路及び前記第2の流路を形成する第2のヘリコイド曲面に基づいて形成された第2の流路要素とが互い違いに配置された構成を有する、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記隔壁構造は、単位体積において前記第1の流路が占める容積と前記第2の流路が占める容積との比が一定となるように形成されている、請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
前記隔壁構造は、単位体積において前記第1の流路が占める容積と前記第2の流路が占める容積との比が異なるように形成されている、請求項1に記載の構造体。
【請求項5】
前記隔壁構造は、単位体積において前記第1の流路が占める容積と前記第2の流路が占める容積との比が前記第1及び第2の流路が延びる方向に沿って変化するように形成されている、請求項1に記載の構造体。
【請求項6】
前記隔壁構造は、前記第1及び第2の流路が直線状又は曲線状に延びるように形成されている、請求項1に記載の構造体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の構造体を含む熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は構造体に関し、より詳しくは、熱交換等の用途に用いることが可能な構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、それぞれ、各種周期極小曲面によって隔てられた2つの流路を有する熱交換器が開示されている。特許文献1,2に開示された構造によれば、2つの流路を隔てる隔壁に周期極小曲面を用いてその比表面積を大きくすることで、熱交換効率の向上を図ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0033070号明細書
【特許文献2】米国特許第10704841号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示された構造のうち、特にGyroid曲面に基づいて形成された構造では、ある1つの方向にスパイラル状に延びる複数の流路をその延伸方向に沿って見たとき、それらの複数の流路のうち互いに隣接する2つの流路は共に同じ方向(例えば、時計周り)に旋回するように形成される。そのため、それらの2つの流路を流れる流体が交わる領域では、各流路を流れる流体同士が互いに逆向きに衝突し、その領域において流体流れに淀みが生じ得る。このようにして流体の流れが阻害されることは、熱交換効率の低下(熱伝達率の増大に寄与しない圧力損失の増大、換言すれば圧力損失と熱伝達率とのトレードオフの悪化)を生じさせる要因となる。
【0005】
特許文献1,2に開示されたその他の周期極小曲面に基づいて形成された構造においても、互いに隣接する2つの流路を流れる流体が交わる領域における流れ方向が揃っていないため、それらの流体が交わる領域では流体同士の衝突や流体流れの淀みが生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、或る方向にスパイラル状に延びる複数の第1の流路が互いに連通して形成される第1の流路空間と、前記或る方向にスパイラル状に延びる複数の第2の流路が互いに連通して形成される第2の流路空間とを互いに隔てた状態で形成する隔壁構造を含む熱交換用の構造体が提供される。複数の第1の流路のうち互いに隣接する2つの第1の流路は、第1の流路が延びる方向に沿って見たときに、一方の第1の流路は第1の方向に旋回し、他方の第1の流路は第1の方向とは反対方向である第2の方向に旋回するように形成されている。複数の第2の流路のうち互いに隣接する2つの第2の流路は、第2の流路が延びる方向に沿って見たときに、一方の第2の流路は第1の方向に旋回し、他方の第2の流路は第1の方向とは反対方向である第2の方向に旋回するように形成されている。
【0007】
本開示の他の特徴事項および利点は、例示的且つ非網羅的に与えられている以下の説明及び添付図面から理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る構造体を示す斜視図である。
図2】図(a)は隔壁構造を成す第1の流路要素を示す斜視図であり、図(b)は隔壁構造を成す第2の流路要素を示す斜視図である。
図3図1に示した構造体の上面に表れる断面を示す図である。
図4図1に示した構造体の第1の流路空間に第1の流体を充填した状態を示す図である。
図5図1に示した構造体の第2の流路空間に第2の流体を充填した状態を示す図である。
図6】他の形状及び構成を有する流路要素からなる他の隔壁構造を例示する概念図である。
図7】本開示の一実施形態に係る構造体の第1の変形例を示す斜視図である。
図8】隔壁構造内の第1の流路の断面積及び第2の流路に関する他の構成例を示す図である。
図9】本開示の一実施形態に係る構造体の第2の変形例を示す斜視図である。
図10】本開示の一実施形態に係る構造体の第3の変形例を示す斜視図である。
図11】本開示の一実施形態の第4の変形例に係る構造体を一部破断した状態で示す斜視図である。
図12図11に示した構造体の全体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0010】
最初に、本開示の一実施形態に係る構造体1の全体構成について説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る構造体を示す斜視図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の構造体1は、互いに隔てられた2つの流路空間12,14を形成する隔壁構造10を含んでいる。本実施形態の説明においては、図1に示すように構造体1の横方向をx軸、縦方向をy軸、奥行き方向をz軸として座標系を定義する。
【0012】
隔壁構造10は、第1の流体を通す複数の第1の流路12a(図3等参照)が互いに連通して形成される第1の流路空間12と、第2の流体を通す複数の第2の流路14a(図3等参照)が互いに連通して形成される第2の流路空間14とを形成している。それらの2つの流路空間12,14は隔壁構造10によって互いに隔てられており、2つの流路空間12,14をそれぞれ流れる第1及び第2の流体が互いに混じることはない。本実施形態の隔壁構造10は、後述するように、延伸方向(図示z方向)に沿って見たときに第1の方向(例えば反時計回り)に旋回するヘリコイド曲面に所定の厚みを有するように形成された第1の流路要素10A(図2(a)参照)と、上記延伸方向に沿って見たときに第2の方向(例えば時計回り)に旋回するヘリコイド曲面に所定の厚みを有するように形成された第2の流路要素10B(図2(b)参照)とが、格子状に互い違いに配置された構成を有している。
【0013】
図1においては、図示と説明の明瞭のために、立方体形状の構造体1の各面において各流路空間が開放した状態で描画されているが、各流路空間は、第1及び第2の流体を構造体1内で流す方向に応じて、各面に表れる端部が閉鎖される。例えば、第1の流体と第2の流体を図1の構造体1内を図示奥行方向(z軸方向)に流す場合には、構造体1の図示左右方向の各面(yz平面)及び図示上下方向の各面(xz平面)に表れる端部が閉鎖される。
【0014】
このように構成された本実施形態の構造体1によれば、図1の図示手前側端面(xy平面)から隔壁構造10の第1の流路空間12内に流入した第1の流体は、第1の流路空間12を通り、図1の図示奥側端面において第1の流路空間12から外部に流出する。第1の流体はこれとは逆方向に流すことも可能である。他方、図1の図示手前側端面(xy平面)から隔壁構造10の第2の流路空間14内に流入した第2の流体は、第2の流路空間内14を通り、図1の図示奥側端面において第2の流路空間14から外部に流出する。第2の流体もこれとは逆方向に流すことも可能である。第1の流体と第2の流体は、隔壁構造10の第1及び第2の流路空間12,14内を同じ方向に流してもよいし、互いに逆方向に流してもよい。
【0015】
第1の流路空間12を流れる第1の流体と、第2の流路空間14を流れる第2の流体とに温度差がある場合、一方の流体が有する熱が、各流路空間12,14を隔てる隔壁構造10の壁を伝導して、他方の流体へ伝達する。これにより、一方の流体が他方の流体によって加熱され、逆に他方の流体が一方の流体によって冷却される熱交換が行われる。このように、本実施形態の構造体1は熱交換の用途として機能し得る。本例の構造体1は、例えば、各種工業用の熱交換器や、航空エンジン、発電プラント等で用いられる熱交換器にも適用可能である。
【0016】
次に、本実施形態の構造体1における隔壁構造10について説明する。図2(a)は隔壁構造を成す第1の流路要素を示す斜視図であり、図2(b)は隔壁構造を成す第2の流路要素を示す斜視図である。
【0017】
本実施形態における隔壁構造10は、螺旋状に延伸する各流路12a,14aを延伸方向(図1におけるz軸に沿う方向)に沿って見たときに第1の方向(例えば反時計回り)に旋回するヘリコイド曲面に所定の厚みtを有するように形成された第1の流路要素10Aと、上記延伸方向に沿って見たときに第1の方向とは反対方向である第2の方向(例えば反時計回り)に旋回するヘリコイド曲面に所定の厚みtを有するように形成された第2の流路要素10Bとが、格子状に互い違いに配置された構成となっている。
【0018】
図2(a)に示すように、第1の流路要素10Aは、延伸方向に反時計回りに螺旋状に旋回しながら延びるヘリコイド曲面(常螺旋面)に一定の厚みtを持たせた形状に形成された構造を、そのヘリコイド曲面の中心軸を中心軸とする直方体状に切り出した形状を有する。ヘリコイド曲面は延伸方向に見たときに円形の形状を有するが、第1の流路要素10Aはそれを直方体形状に切り出した形状を有しているので、第1の流路要素10Aは延伸方向に見たときに正方形の形状を有する。図示するように、第1の流路要素10Aは、ヘリコイド曲面から成る隔壁によって、図の実線の補助線で示される第1の流路12aと、図の点線の補助線で示される第2の流路14aとを画定している。第1の流路要素10Aによって形成される第1の流路12a及び第2の流路14aは、延伸方向に沿って見たおきに反時計回りに旋回しながら延伸方向にスパイラル状に延びている。
【0019】
一方、図2(b)に示すように、第2の流路要素10Bは、第1の流路要素10Aを鏡映反転させた形状を有しており、第1の流路要素10Aと第2の流路要素10Bとは互いにキラリティを有する関係にある(互いにキラルである)。したがって、第2の流路要素10Bは、上記延伸方向に反時計回りに螺旋状に旋回しながら延びるヘリコイド曲面(常螺旋面)に一定の厚みtを持たせた形状に形成された構造を、そのヘリコイド曲面の中心軸を中心軸とする直方体状に切り出した形状を有する。第2の流路要素10Bによって形成される第1の流路12a及び第2の流路14aは、延伸方向に見たときに時計回りに旋回しながら延伸方向にスパイラル状に延びている。第2の流路要素10Bのヘリコイド曲面の旋回方向は第1の流路要素10Aの螺旋面の旋回方向とは反対方向であるが、第2の流路要素10Bの延伸方向に延びる常螺旋面のピッチや常螺旋面に持たせた厚みt等の各部寸法は第1の流路要素10Aのそれらと同じである。
【0020】
隔壁構造10は、上述した第1の流路要素10Aと第2の流路要素10Bとを、各流路12a,14aの延伸方向(図1におけるz軸に沿う方向)に対して直交する方向(図1におけるxy平面)において格子状に互い違いに隣接するように配置された構成を有している。ただし、第1の流路要素10Aと第2の流路要素10Bとは、直方体形状の延伸方向の各々の側面のうち、側面に現れる隔壁断面形状が互いにキラルである側面同士が接するように配置される。これにより、第1の流路要素10Aと第2の流路要素10Bとは、互いに逆方向に旋回するヘリコイド曲面から成る隔壁同士が連続して、各要素10A.10Bが画定する第1の流路12a同士が連通するとともに、各要素10A.10Bが画定する第2の流路14a同士が連通する。
【0021】
本実施形態における隔壁構造10は、第1の流路要素10Aと第2の流路要素10Bとがこのように格子状に互い違いに隣接するように配置された構成であることにより、上述したように、第1の流体を通す複数の第1の流路12a(図3等参照)が互いに連通して形成される第1の流路空間12と、第2の流体を通す複数の第2の流路14a(図3等参照)が互いに連通して形成される第2の流路空間14とを形成している。
【0022】
続いて、隔壁構造10に形成された第1の流路12a及び第2の流路14aの構成についてより詳しく説明する。図3は、図1に示した構造体の上面に表れる断面を示す図である。
【0023】
図3を参照すると、図3に示すxz平面に沿った断面においては、本実施形態の構造体1の隔壁構造10は、第1の流路要素10Aと第2の流路要素10Bとが、互いに対応する流路壁が接するように、図示横方向(x方向)及び図示紙面方向(y方向)において交互に配置された構成を備えている。図中、第1の流路要素10Aと第2の流路要素10Bとの構成上の境界が、理解の容易のために一点鎖線で示されている。図3から分かるように、各流路要素10A,10Bの第1の流路12aは図示横方向(x方向)において互いに連通し、また、各流路要素10A,10Bの第2の流路14aも図示横方向(x方向)において互いに連通している。同様に、各流路要素10A,10Bの第1の流路12aは図示紙面方向(z方向)においても互いに連通し、各流路要素10A,10Bの第2の流路14aも図示紙面方向(z方向)においても互いに連通している。これらの第1の流路12aは、互いに連通して複雑で入り組んだラビリンスを成す、第1の流体を通す第1の流路空間12を形成している。また、これらの第2の流路14aは、互いに連通して複雑で入り組んだラビリンスを成す、第2の流体を通す第2の流路空間14を形成している。
【0024】
上述したように、第1の流路要素10Aの第1及び第2の流路12a.14aと第2の流路要素10Bの第1及び第2の流路12a.14aとは、延伸方向に沿って見たときに互いに逆方向に旋回するように形成されている。これにより、図3に示す隔壁構造10において、第1及び第2の流体がそれぞれ第1及び第2の流路12a,14a内を図示矢印で示す方向(z方向)に流れるとした場合、隣接する第1の流路要素10Aと第2の流路要素10Bとが互いに接する領域では、各々の第1の流路12aを互いに逆方向に旋回しながら流れる第1の流体は、流れ方向が順方向に揃うように合流し、また、各々の第2の流路14aを互いに逆方向に旋回しながら流れる第2の流体は、流れ方向が順方向に揃うように合流する。そして、第1の流体はさらに下流側に流れ、下流側に位置する流路壁によって、第1の流路要素10Aの第1の流路12aと、第2の流路要素10Bの第1の流路12aとに分流される。第2の流体も同様に、さらに下流側に流れ、下流側に位置する流路壁によって、第1の流路要素10Aの第2の流路14aと、第2の流路要素10Bの第2の流路14aとに分流される。第1及び第2の流体は、隣接する第1の流路12a同士ないし第2の流路14a同士の間で合流と分流とをこのように繰り返しながら、隔壁構造10内を延伸方向下流側に流れる。
【0025】
図4は、図1に示した構造体の第1の流路空間に第1の流体を充填した状態を示す図であり、図5は、図1に示した構造体の第2の流路空間に第2の流体を充填した状態を示す図である。図4には、構造体1の隔壁構造10に形成された複数の第1の流路12aが互いに連通して形成された第1の流路空間12に第1の流体が通ることが示されている。また、図5には、構造体1の隔壁構造10に形成された複数の第2の流路14aが互いに連通して形成された第2の流路空間14に第2の流体が通ることが示されている。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の構造体1は、或る所定の方向(例えば、図1等に示すy方向)にスパイラル状に延びる複数の第1の流路12aが互いに連通して形成される第1の流路空間12と、上記方向にスパイラル状に延びる複数の第2の流路14aが互いに連通して形成される第2の流路空間14とを互いに隔てた状態で形成する隔壁構造10を含む。複数の第1の流路12aのうち互いに隣接する2つの第1の流路12aは、上記方向に沿って見たときに、一方の第1の流路12aは第1の方向(例えば、反時計回り)に旋回し、他方の第1の流路は第1の方向とは反対方向である第2の方向(例えば、時計回り)に旋回するように形成されている。複数の第2の流路14aのうち互いに隣接する2つの第2の流路14aも同様に、上記方向に沿って見たときに、一方の第2の流路14aは第1の方向(例えば、反時計回り)に旋回し、他方の第2の流路14aは第1の方向とは反対方向である第2の方向(例えば、時計回り)に旋回するように形成されている。
【0027】
このように構成された本実施形態の構造体1によれば、隔壁構造10内の互いに隣接する2つの第1の流路12aをそれぞれ互いに逆方向に旋回しながら上記方向に流れる第1の流体は、流れ方向が順方向に揃うように合流した後、その下流側に位置する流路壁によって、2つの第1の流路12aに分流され、これらの合流と分流とを繰り返しながら上記方向の下流側に流れていく。同様に、隔壁構造10内の互いに隣接する2つの第2の流路14aをそれぞれ互いに逆方向に旋回しながら上記方向に流れる第2流体は、流れ方向が順方向に揃うように合流した後、その下流側に位置する流路壁によって、2つの第2の流路14aに分流され、これらの合流と分流とを繰り返しながら上記方向の下流側に流れていく。
【0028】
互いに隣接する2つの第1の流路12aを流れる第1の流体が合流する領域、及び、互いに隣接する2つの第2の流路14aを流れる第2の流体が合流する領域では、流れ方向が順方向に揃うように流体が合流するので、互いに逆方向に旋回する流体同士が衝突して合流する従来技術に比べて、流体の流れが阻害され得ることを抑えることができ、また、流体が合流する領域に流体流れの淀みが生じ得ることを抑えることができる。そのため、本実施形態の構造体1は、熱交換器として用いられたときに、流体流れの阻害や淀みに起因して生じ得る圧力損失の増大を抑えることができ、ひいては熱交換効率をより高めることができる。
【0029】
なお、上記では理解の容易化のために、本実施形態における隔壁構造10が第1の流路要素10Aと第2の流路要素10Bとが格子状に互い違いに配置された構成であると説明したが、これは、それぞれ個別に成形された第1の流路要素10Aと第2の流路要素10Bとを格子状に互い違いに組み合わせて隔壁構造10を作製することを必ずしも意味するものではない。隔壁構造10は、個別に成形された第1の流路要素10Aと第2の流路要素10Bとを格子状に互い違いに接合して組み合わせて作製しても良いが、この他にも、第1の流路要素10Aと第2の流路要素10Bとが格子状に互い違いに組み合わせたように構成される隔壁構造10を、鋳造技術、3D印刷技術、光硬化性樹脂を用いた光造形技術等の利用可能な製造技術を用いて一体的に作製することも可能である。
【0030】
また上記の例では、各流路要素10A,10Bが、常螺旋面の中心軸に沿って直方体状に切り出された形状を有し、延伸方向に延びる常螺旋面のピッチや常螺旋面に持たせた厚みt等の各部寸法が第1の流路要素10Aのそれらと同じである旨を説明したが、流路要素10A,10Bの形状や構成はこれに限られない。第1及び第2の流路要素10A,10Bは、隣接する第1及び第2の流路要素10A,10Bの側面に現れる隔壁断面形状が互いにキラルである側面同士が接するように配置され、かつ第1及び第2の流路要素10A,10B同士を空間内に隙間なく充填できるように構成されていれば、常螺旋面の中心軸に沿って延びる任意の面(平面あるいは曲面)によって側面が画定された任意の形状を有していてもよい。各流路要素のそのような形状としては、常螺旋面の中心軸に対して直交する面における形状が矩形形状や三角形形状であるものの他、下記に図6を参照して例示するような形状も含まれる。
【0031】
図6は、他の形状及び構成を有する流路要素からなる他の隔壁構造を例示する概念図である。図6(a),(b)はそれぞれ隔壁構造を延伸方向(図1のz方向に相当)に沿って見たときの図を示している。図6(a),(b)では図の見易さのため参照符号10A,10Bがそれぞれ1つずつ示されているが、流路要素10A,10Bは格子状に互い違いに配置されている。
【0032】
図6(a)の例では、流路要素10A,10Bの各々が、それぞれ任意の形状の4つの側面を有し、隣接する10A,10Bは少なくとも互いに接する側面断面が互いにキラルである形状を有している。各々の流路要素10A,10Bは、互いの隙間を埋めた状態で全体として略直方体状の隔壁構造を形成している。
【0033】
図6(b)は、流路要素10A,10Bが中空円筒状の隔壁構造を構成する例を示している。図6(b)の例では、流路要素10A,10Bの各々が、中空円筒の内径側の円周曲面の一部である円周側の円弧状曲面と、外径側の円周曲面の一部である外径側の円弧状曲面と、中空円筒の径方向の平面の一部である平面側面とによって画定される形状を有している。各流路要素10A,10Bの大きさは、内径側に配置されたものから外径側に配置されたものになるにしたがって、次第に大きくなっている。図6(b)の例でも、隣接する流路要素10A,10Bは少なくとも互いに接する側面断面が互いにキラルである形状を有している。各々の流路要素10A,10Bは、互いの隙間を埋めた状態で全体として中空円筒状の隔壁構造を形成している。
【0034】
[変形例]
次に、本実施形態の構造体1の変形例について説明する。
【0035】
<第1の変形例>
図7は、本開示の一実施形態に係る構造体の第1の変形例を示す斜視図である。
【0036】
本変形例の構造体1Aにおける隔壁構造20は、図1等に示した隔壁構造10と同様に、第1の流体を通す複数の第1の流路が互いに連通して形成される第1の流路空間22と、第2の流体を通す複数の第2の流路が互いに連通して形成される第2の流路空間24とを形成している。それらの2つの流路空間22,24は隔壁構造20によって互いに隔てられており、2つの流路空間22,24をそれぞれ流れる第1及び第2の流体が互いに混じることはない。本変形例の隔壁構造20も、複数の第1の流路のうち互いに隣接する2つの第1の流路は、延伸方向に沿って見たときに、一方の第1の流路は第1の方向(例えば、反時計回り)に旋回し、他方の第1の流路は第1の方向とは反対方向である第2の方向(例えば、時計回り)に旋回するように形成されている。複数の第2の流路のうち互いに隣接する2つの第2の流路も同様に、延伸方向に沿って見たときに、一方の第2の流路は第1の方向(例えば、反時計回り)に旋回し、他方の第2の流路は第1の方向とは反対方向である第2の方向(例えば、時計回り)に旋回するように形成されている。本変形例の構造体1Aにおいても、各流路は延伸方向(図示z方向)に沿って直線状に延びている。
【0037】
各流路空間22,24が、第1及び第2の流体を構造体1A内で流す方向に応じて、各面に表れる端部が閉鎖されること(例えば、第1の流体と第2の流体を図7の構造体1A内を図示奥行方向(z軸方向)に流す場合には、構造体1Aの図示左右方向の各面(yz平面)及び図示上下方向の各面(xz平面)に表れる端部が閉鎖されること)、及び本変形例の構造体1Aが熱交換の用途に用いることが可能なことは、構造体1に関して上述した通りである。
【0038】
このように構成された本変形例の構造体1Aも、上述した構造体1と同様に、隣接する流路同士が合流する領域では流れ方向が順方向に揃うように流体が合流するので、流体の流れが阻害され得ることを抑えることができ、また、流体が合流する領域に流体流れの淀みが生じ得ることを抑えることができる。そのため、本変形例の構造体1Aも、熱交換器として用いられたときに、流体流れの阻害や淀みに起因し得る圧力損失の増大を抑えることができ、ひいては熱交換効率をより高めることができる。
【0039】
本変形例の構造体1Aは、各流路を形成するヘリコイド曲面のおけるピッチが上述した構造体1と相違している。このようにヘリコイド曲面のピッチを変えることにより、その壁面によって画定される各流路の断面積(あるいは「単位体積に占める各流路の容積」。以下同じ)を調節することができる。これにより、各流路を流れる流体に生じ得る圧力損失と熱交換効率とのトレードオフを勘案して、所望の熱交換特性を発揮し得る断面積を有する各流路を設計することが可能となる。
【0040】
なお、図7に示した変形例では、第1の流路空間22を成す第1の流路の断面積と、第2の流路空間24を成す第2の流路の断面積との比が等しい例を示したが、第1の流路の断面積と第2の流路の断面積との比が異なるように、各流路を形成するヘリコイド曲面のピッチを変化させてもよい。第1の流路の断面積と第2の流路の断面積との比は、延伸方向に沿って一定に異なるようにしてもよいし、延伸方向に沿って連続的に変化するように異なっていてもよい。
【0041】
図8に、隔壁構造内の第1の流路の断面積及び第2の流路に関する他の構成例を示す。図8(a),(b)は、それぞれ1つの流路要素を参照して、隔壁構造内の第1の流路の断面積と第2の流路の断面積との比が異なる例を示している。図8(a)は、隔壁構造内の第1の流路12aの断面積と第2の流路14aの断面積との比が延伸方向に沿って一定に異なる例を示している。また、図8(b)は、隔壁構造内の第1の流路12aの断面積と第2の流路14aの断面積との比が延伸方向に沿って連続的に変化するように異なる例を示している。図8(a),(b)に示した例は一例に過ぎず、例えば、隔壁構造の延伸方向の一部では第1の流路12aの断面積と第2の流路14aの断面積との比が同じであるが、他の一部では断面積の比が一定に異なる、もしくは連続的あるいは段階的に変化して異なるようにしてもよい。
【0042】
また、上記ではヘリコイド曲面(常螺旋面)に一定の厚みtを持たせた形状に形成される例を示したが、常螺旋面からなる流路壁の厚みtは一定であることに限られない。流路壁の厚みtは、隔壁構造10内において部分的に異なっていてもよい。一例として、図8(c)に示すように、隔壁構造10の延伸方向に沿って流路壁の厚みtが連続的あるいは段階的に変化してもよい。図8(c)に示す例では、隔壁構造10の延伸方向に沿って流路壁の厚みtが連続的に変化している。この例では、第1の流路12aの断面積と第2の流路14aの断面積は図示z方向へ行くに連れて次第に小さくなるが、それらの比は一定に保たれている。このような構成とすることにより、隔壁構造内において各流路を流れる流体の流量や、隔壁を伝導する熱の熱伝導率に変化をもたらすことができ、隔壁構造に熱交換特性の分布を持たせることができる。
【0043】
<第2の変形例>
図9は、本開示の一実施形態に係る構造体の第2の変形例を示す斜視図である。
【0044】
本変形例の構造体1Bにおける隔壁構造30は、図7に示した構造体1Aの隔壁構造20を基本形とし、それに対して変形が加えられた形状を有している。本変形例における隔壁構造30も、第1の流体を通す複数の第1の流路が互いに連通して形成される第1の流路空間32と、第2の流体を通す複数の第2の流路が互いに連通して形成される第2の流路空間34とを互いに隔てるように形成されている。本変形例の隔壁構造30も、複数の第1の流路のうち互いに隣接する2つの第1の流路は、延伸方向に沿って見たときに、一方の第1の流路は第1の方向(例えば、反時計回り)に旋回し、他方の第1の流路は第1の方向とは反対方向である第2の方向(例えば、時計回り)に旋回するように形成されている。複数の第2の流路のうち互いに隣接する2つの第2の流路も同様に、延伸方向に沿って見たときに、一方の第2の流路は第1の方向(例えば、反時計回り)に旋回し、他方の第2の流路は第1の方向とは反対方向である第2の方向(例えば、時計回り)に旋回するように形成されている。
【0045】
具体的には、第1に、本変形例の隔壁構造30は、延伸方向(z方向)に延びる各流路を形成するヘリコイド曲面のその延伸方向におけるピッチが、隔壁構造30の延伸方向における一端側(例えば図示左側)から隔壁構造30の中央部へ向かうに連れて次第に小さくなり、次に隔壁構造30の中央部から隔壁構造30の延伸方向における他端側(例えば図示右側)へ向かうに連れて次第に大きくなるように変化するように形成されている。
【0046】
第2に、隔壁構造30は、延伸方向における一端側(例えば図示左側)から隔壁構造30の中央部へ向かうに連れて隔壁構造30の径が次第に小さくなり、次に隔壁構造30の中央部から隔壁構造30の延伸方向における他端側(例えば図示右側)へ向かうに連れて隔壁構造30の径が次第に大きくなるように変化するように形成されている。これにより、隔壁構造30の内部では、隔壁構造30の延伸方向における一端側(例えば図示左側)から隔壁構造30の中央部へ向かうに連れて各流路要素の径(したがって各流路の径)が次第に小さくなり、次に隔壁構造30の中央部から隔壁構造30の延伸方向における他端側(例えば図示右側)へ向かうに連れて各流路要素の径(したがって各流路の径)が次第に大きくなっている。
【0047】
第3に、隔壁構造30は、各流路要素の図示x方向における幅(したがって各流路の図示x方向における幅)が、図示x方向の奥側から手前側に向かうに連れて次第に狭くなるように形成されている。各流路要素の図示y方向における幅(したがって各流路の図示y方向における幅)は一定である。そのため、各流路要素において形成される流路の形状は、図示x方向の奥側では図示xy方向に等しい寸法を有するのに対し、図示x方向手前側に向かうに連れて図示x方向の寸法がより小さい縦長の形状になる。
【0048】
本変形例における隔壁構造30では、延伸方向(z方向)に延びる各流路のうち、図示xy平面における中央部付近の流路はz方向に沿って直線状に延び、図示xy平面において隔壁構造30の中央部から外周部にかけて配置された流路は外周部に近い流路ほど曲率が大きく湾曲した状態に延びている。このように、本明細書及び図面において開示される構造体の隔壁構造に形成される各流路の「延伸方向」は、直線状に延びる方向の他、曲線状に延びる方向をも意味する。
【0049】
このように構成された本変形例の構造体1Bによれば、構造体1,1Aが有する上述した作用効果に加え、隔壁構造30内に形成される各流路の断面積(単位体積当たりの容積)や各流路の形状を隔壁構造30内において変化させることができ、その結果として、構造体1Bを熱交換器として用いた場合に構造体1B内において熱交換特性の分布を持たせることが可能である。
【0050】
<第3の変形例>
図10は、本開示の一実施形態に係る構造体の第3の変形例を示す斜視図である。
【0051】
本変形例の構造体1Cにおける隔壁構造40も、図7に示した構造体1Aの隔壁構造20を基本形とし、それに対して変形が加えられた形状を有している。本変形例における隔壁構造40も、第1の流体を通す複数の第1の流路が互いに連通して形成される第1の流路空間42と、第2の流体を通す複数の第2の流路が互いに連通して形成される第2の流路空間44とを互いに隔てるように形成されている。本変形例の隔壁構造40も、複数の第1の流路のうち互いに隣接する2つの第1の流路は、延伸方向に沿って見たときに、一方の第1の流路は第1の方向(例えば、反時計回り)に旋回し、他方の第1の流路は第1の方向とは反対方向である第2の方向(例えば、時計回り)に旋回するように形成されている。複数の第2の流路のうち互いに隣接する2つの第2の流路も同様に、延伸方向に沿って見たときに、一方の第2の流路は第1の方向(例えば、反時計回り)に旋回し、他方の第2の流路は第1の方向とは反対方向である第2の方向(例えば、時計回り)に旋回するように形成されている。
【0052】
具体的には、図7に示した構造体1Aの隔壁構造20は延伸方向(z方向)に直線状に延びているのに対し、本変形例の構造体1Cにおける隔壁構造40は全体としてyz平面内で湾曲した形状を有している。そのため、隔壁構造40内に形成された各流路は、隔壁構造40全体の湾曲と同様に湾曲して曲線状に延びている。図10には隔壁構造40が一方向に二次元的に湾曲した例が示されているが、本変形例における構造体1Cの湾曲はこれに限られず、例えば任意の方向に三次元的に延びる曲面に沿って湾曲した構成としてもよい。
【0053】
このように構成された本変形例の構造体1Cによれば、構造体1,1Aが有する上述した作用効果に加え、構造体1Cを例えば熱交換器として用いる際に内部の流路を曲線状に延伸させる必要がある場合等において、所望の曲線に沿って延伸させた流路を内部に形成することが可能となる。
【0054】
<第4の変形例>
図11は、本開示の一実施形態の第4の変形例に係る構造体を一部破断した状態で示す斜視図であり、図12図11に示した構造体の全体を示す斜視図である。
【0055】
図11に示すように、本変形例の構造体1Dにおける隔壁構造50も、上述した実施形態及び各変形例における隔壁構造と同様に、第1の流体を通す複数の第1の流路が互いに連通して形成される第1の流路空間52と、第2の流体を通す複数の第2の流路が互いに連通して形成される第2の流路空間54とを互いに隔てるように形成されいる。本変形例の隔壁構造50も、複数の第1の流路のうち互いに隣接する2つの第1の流路は、延伸方向に沿って見たときに、一方の第1の流路は第1の方向(例えば、反時計回り)に旋回し、他方の第1の流路は第1の方向とは反対方向である第2の方向(例えば、時計回り)に旋回するように形成されている。複数の第2の流路のうち互いに隣接する2つの第2の流路も同様に、延伸方向に沿って見たときに、一方の第2の流路は第1の方向(例えば、反時計回り)に旋回し、他方の第2の流路は第1の方向とは反対方向である第2の方向(例えば、時計回り)に旋回するように形成されている。
【0056】
本変形例おける隔壁構造50は、図10に示した隔壁構造40と同様に全体として平面内で湾曲した形状を有しているとともに、図示右側の側面において窪んだ形状を有している。これにより、隔壁構造40内に形成された各流路は、隔壁構造40の全体形状に従って湾曲しているとともに、隔壁構造40の窪みがある領域では各流路の径(流路断面積ないし単位体積当たりの容積)が窪みの無い他の領域に比べて小さくなっている。
【0057】
図11及び図12を参照すると、構造体1Dはさらに、隔壁構造50を収容する空間を形成する周囲壁面56を有する。周囲壁面56は、隔壁構造50の延伸方向に沿った側面全体に接している。周囲壁面56が隔壁構造50に接する部分では、隔壁構造50の第1及び第2の流路の端部が周囲壁面56によって閉じられている。
【0058】
周囲壁面56は、隔壁構造50の図示下側の端部との間に、第1の入口空間53bと第2の出口空間55cとを形成している。それらの空間53b,55cは、周囲壁面56内に形成された仕切り壁56aによって互いに隔てられた状態で仕切られている。隔壁構造50の図示下側の端部のうち、第1の入口空間53bに露出している部分では、各々の第2の流路の開口部が閉じるように形成され、第2の出口空間55cに露出している部分では、各々の第1の流路の開口部が閉じるように形成されている。周囲壁面56の第1の入口空間53bに連通する部分には第1の入口開口部53aが形成され、周囲壁面56の第2の出口空間55cに連通する部分には第2の出口開口部55dが形成されている。
【0059】
また、周囲壁面56は、隔壁構造50の図示左上側の端部との間に、第2の入口空間55bと第1の出口空間53cとを形成している。それらの空間55b,53cは、周囲壁面56内に形成された仕切り壁56aによって互いに隔てられた状態で仕切られている。隔壁構造50の図示左上側の端部のうち、第2の入口空間55bに露出している部分では、各々の第1の流路の開口部が閉じるように形成され、第1の出口空間53cに露出している部分では、各々の第2の流路の開口部が閉じるように形成されている。周囲壁面56の第2の入口空間55bに連通する部分には第2の入口開口部55aが形成され、周囲壁面56の第1の出口空間53cに連通する部分には第1の出口開口部53dが形成されている。
【0060】
このように構成された構造体1Dによれば、例えば、第1の入口開口部53aから構造体1D内に第1の流体を流入させると、第1の流体は第1の入口空間53aを経て隔壁構造50の図示下側の端面において開口している各々の第1の流路から隔壁構造50内に流入し、隔壁構造50内の全体にわたって連通している第1の流路空間52を通って、隔壁構造50の図示左上側の端面から第1の出口空間53c内に流れ出て、最後に第1の出口開口部53dから構造体1Dの外部に流出する。このとき、第1の入口空間53aは、流入してきた第1の流体を隔壁構造50の端面に開口した各々の第1の流路に分配するように機能し、第1の出口空間53cは、隔壁構造50の各々の第1の流路から流出してきた第1の流体を第1の出口開口部53dへ向けて集約するように機能する。
【0061】
一方、第2の入口開口部55aから構造体1D内に第2の流体を流入させると、第2の流体は第2の入口空間55bを経て隔壁構造50の図示左上側の端面において開口している各々の第2の流路から隔壁構造50内に流入し、隔壁構造50内の全体にわたって連通している第2の流路空間54を通って、隔壁構造50の図示下側の端面から第2の出口空間55c内に流れ出て、最後に第2の出口開口部55dから構造体1Dの外部に流出する。このとき、第2の入口空間55bは、流入してきた第2の流体を隔壁構造50の端面に開口した各々の第2の流路に分配するように機能し、第2の出口空間55cは、隔壁構造50の各々の第2の流路から流出してきた第2の流体を第2の出口開口部55dへ向けて集約するように機能する。
【0062】
第1の流路空間52に流れる第1の流体と、第2の流路空間54を流れる第2の流体とに温度差がある場合、一方の流体が有する熱が、各流路空間52,54を隔てる隔壁構造50の壁を伝導して、他方の流体へ伝達する。これにより、一方の流体が他方の流体によって加熱され、逆に他方の流体が一方の流体によって冷却される熱交換が行われる。このように、本変形例の構造体1Dは熱交換の用途として機能し得る。本変形例の構造体1Dは、例えば、各種工業用の熱交換器や、航空エンジン、発電プラント等で用いられる熱交換器にも適用可能である。
【0063】
本変形例の隔壁構造50も、複数の第1の流路のうち互いに隣接する2つの第1の流路が互いに逆方向に旋回しながら延伸方向に延び、複数の第2の流路のうち互いに隣接する2つの第2の流路が互いに逆方向に旋回しながら延伸方向に延びる構成を有していることから、隣接する流路同士が合流する領域では流れ方向が順方向に揃うように流体が合流するので、流体同士が衝突して流体の流れが阻害されることを抑えることができ、また、流体が合流する領域に流体流れの淀みが生じ得ることを抑えることができる。そのため、本変形例の構造体1Dは、熱交換器として用いられたときに、流体流れの阻害や淀みに起因し得る圧力損失の増大や熱伝達率の低下等を抑えることができ、ひいては熱交換効率をより高めることができる。
【0064】
なお、上記では、第1の流体を第1の入口開口部53aから構造体1D内に流入させて第1の出口開口部53dから構造体1Dの外部に流出させ、また、第2の流体を第2の入口開口部55aから構造体1D内に流入させて第2の出口開口部55dから構造体1Dの外部に流出させる場合について説明したが、第1及び第2の流体をそれぞれ逆方向に流してもよい。すなわち、第1の流体を第1の出口開口部53dから構造体1D内に流入させて第1の入口開口部53aから構造体1Dの外部に流出させ、また、第2の流体を第2の出口開口部55dから構造体1D内に流入させて第2の入口開口部55aから構造体1Dの外部に流出させてもよい。
【0065】
本実施形態及び各変形例の構造体の一部又は全部は、例えば、付加製造技術を用いて樹脂材料もしくは金属材料等によって形成することが可能である。付加製造技術としては、一例として、3D印刷技術、光硬化性樹脂を用いた光造形技術等を用いることができる。ただし、本実施形態の構造体の製造に付加製造技術を用いることは必須ではなく、構造体が他の製造技術(例えば、切削、鋳造、モールド成形、射出成形、粉末圧縮成形、レーザー加工等)で製造できる形状である場合には、付加製造技術以外のこれらの製造技術を用いて製造してもよい。
【0066】
以上、開示の実施形態及び変形例を通じて本開示を説明したが、上述の実施形態及び変形例は、請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本開示の実施形態及び変形例の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本開示の技術的範囲に含まれ得る。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12