(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180205
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】液晶レンズ装置及び広角中心窩レンズ装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20231213BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1347
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181161
(22)【出願日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2022093039
(32)【優先日】2022-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 創太
(72)【発明者】
【氏名】無量林 圭吾
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA42
2H088GA02
2H088HA03
2H088HA06
2H088JA29
2H189AA21
2H189CA36
2H189JA25
2H189LA05
2H189LA08
2H189MA15
(57)【要約】
【課題】光学性能の低下を抑えながら任意の位置にレンズ効果を発生させることができる液晶レンズ装置及びこれを用いた広角中心窩レンズ装置を提供する。
【解決手段】液晶レンズ装置10は、液晶セル11、複数の超音波発生素子18を有する超音波ユニット12、駆動回路14、駆動回路14を介して超音波ユニット12を制御する制御部15を有する。複数の超音波発生素子18からの超音波を重ね合わせることにより、液晶セル11の任意の位置に凸レンズまたは凹レンズとなる1または複数のレンズ領域を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置され、対面する面に配向膜が形成された一対の透明な基板と前記一対の透明な基板の間に設けられた液晶からなる液晶層とを有する液晶セルと、
前記液晶セルの周面に設けられた複数の超音波発生素子を有し、前記超音波発生素子が前記液晶セルの周縁から前記液晶層に超音波を与える超音波ユニットと、
前記液晶層の1または複数のレンズとするレンズ領域の中心位置が腹または節となる定在波を前記超音波発生素子からの各超音波の重ね合わせにより形成するように、前記レンズ領域の位置に基づいて複数の前記超音波発生素子からの超音波の位相及び出力タイミングを制御する制御部と
を備えることを特徴とする液晶レンズ装置。
【請求項2】
前記レンズ領域のレンズとしての焦点距離に応じて、超音波を出力する前記超音波発生素子の個数または前記超音波発生素子から出力される超音波の振幅を増減することを特徴とする請求項1に記載の液晶レンズ装置。
【請求項3】
前記レンズ領域の大きさに応じて前記超音波の周波数を増減することを特徴とする請求項1に記載の液晶レンズ装置。
【請求項4】
前記液晶セルは、平面視正方形であり、各周面に前記超音波発生素子がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液晶レンズ装置。
【請求項5】
前記液晶セルは、平面視円形であり、周面に前記超音波発生素子がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液晶レンズ装置。
【請求項6】
対向配置され、対面する面に配向膜が形成された一対の透明な基板と前記一対の透明な基板の間に設けられた液晶からなる第1液晶層を有する第1液晶セル及び第2液晶層を有する第2液晶セルと、
前記第1液晶セルの周面に設けられ、前記第1液晶セルの周縁から前記第1液晶層に超音波を与える複数の第1超音波発生素子と、前記第2液晶セルの周面に設けられ、前記第2液晶セルの周縁から前記第2液晶層に超音波を与える複数の第2超音波発生素子とを有する超音波ユニットと、
前記第1液晶層または前記第2液晶層の一方の液晶層に凸レンズとするレンズ領域の中心位置が腹となる定在波を、他方の液晶層に凹レンズとする第2レンズ領域の中心位置が節となる定在波を複数の超音波の重ね合わせによりそれぞれ形成するように、前記第1液晶層におけるレンズ領域の位置に基づいて複数の前記第1超音波発生素子からの超音波の位相及び出力タイミングを制御するとともに、前記第2液晶層におけるレンズ領域の位置に基づいて複数の前記第2超音波発生素子からの超音波の位相及び出力タイミングを制御する制御部と
を備えることを特徴とする広角中心窩レンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶レンズ装置及び広角中心窩レンズ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人の眼をモデルにして、視野が広く、しかも注目領域である中心部では高い解像度が得られる広角中心窩レンズと称される光学系が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、一対の基板の間に液晶層を設け、一対の基板に設けた電極から液晶層に電圧を印加する液晶レンズが知られている(特許文献2を参照)。この液晶レンズでは、電圧によって液晶分子の配向を制御することによって、任意の位置の被写体像の1又は複数箇所を拡大又は縮小する。
【0003】
また、超音波発生素子の振動で液晶レンズを共振させて、超音波の振動強度に応じて液晶層の厚みを変化させることによって、液晶レンズの焦点距離を変化させる液晶レンズが特許文献3によって知られている。特許文献3に記載される液晶レンズは、液晶レンズの共振周波数と一致する周波数の超音波を発生させる円環形状の超音波発生素子を、液晶層の周囲を囲むようにして、液晶層を挟む一方の基板上に設けている。
【0004】
さらに、矩形状の液晶セルを設けた基板上に複数の超音波発生素子を設け、それらの超音波発生素子により液晶セルを共振させることで格子状のたわみ振動を発生させて、液晶分子の配向を2次元的かつ周期的に変化させる液晶分子配向制御方法が知られている(例えば特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-56849号公報
【特許文献2】国際公開第2012/153837号
【特許文献3】特開2018-92069号公報
【特許文献4】特開2018-31818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に記載されるような液晶レンズを用いた広角中心窩レンズでは、メカニカルな機構を不要としながら、高倍率とする注目領域をイメージサークル内で移動させることができるとともにその倍率を変化させることができる。しかしながら、電極に電圧を印加するための配線が、レンズ効果に異方性を発生させる原因となり、レンズとしての光学性能を低下させる要因となっていた。また、特許文献3に記載される液晶レンズでは、液晶レンズの共振を利用しているため任意の位置にレンズ効果を発生させることはできない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光学性能の低下を抑えながら任意の位置にレンズ効果を発生させることができる液晶レンズ装置及びこれを用いた広角中心窩レンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液晶レンズ装置は、対向配置され、対面する面に配向膜が形成された一対の透明な基板と前記一対の透明な基板の間に設けられた液晶からなる液晶層とを有する液晶セルと、前記液晶セルの周面に設けられた複数の超音波発生素子を有し、前記超音波発生素子が前記液晶セルの周縁から前記液晶層に超音波を与える超音波ユニットと、前記液晶層の1または複数のレンズとするレンズ領域の中心位置が腹または節となる定在波を前記超音波発生素子からの各超音波の重ね合わせにより形成するように、前記レンズ領域の位置に基づいて複数の前記超音波発生素子からの超音波の位相及び出力タイミングを制御する制御部とを備えるものである。
【0009】
本発明の広角中心窩レンズ装置は、対向配置され、対面する面に配向膜が形成された一対の透明な基板と前記一対の透明な基板の間に設けられた液晶からなる第1液晶層を有する第1液晶セル及び第2液晶層を有する第2液晶セルと、前記第1液晶セルの周面に設けられ、前記第1液晶セルの周縁から前記第1液晶層に超音波を与える複数の第1超音波発生素子と、前記第2液晶セルの周面に設けられ、前記第2液晶セルの周縁から前記第2液晶層に超音波を与える複数の第2超音波発生素子とを有する超音波ユニットと、前記第1液晶層または前記第2液晶層の一方の液晶層に凸レンズとするレンズ領域の中心位置が腹となる定在波を、他方の液晶層に凹レンズとする第2レンズ領域の中心位置が節となる定在波を複数の超音波の重ね合わせによりそれぞれ形成するように、前記第1液晶層におけるレンズ領域の位置に基づいて複数の前記第1超音波発生素子からの超音波の位相及び出力タイミングを制御するとともに、前記第2液晶層におけるレンズ領域の位置に基づいて複数の前記第2超音波発生素子からの超音波の位相及び出力タイミングを制御する制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液晶セルの周囲に設けた複数の超音波発生素子から液晶層に入力される超音波を重ね合わせてレンズとなるレンズ領域を形成するので、光学性能の低下を抑えながら任意の位置にレンズ効果を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る液晶レンズ装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】液晶セルと超音波発生素子とを示す斜視図である。
【
図3】液晶セルにおける液晶分子の配向を模式的に示す説明図である。
【
図4】液晶セルを円板状にした例を示す平面図である。
【
図5】超音波の定在波によって凸レンズとなるレンズ領域を形成した状態を示す説明図である。
【
図6】超音波の定在波によって凹レンズとなるレンズ領域を形成した状態を示す説明図である。
【
図7】各超音波のピークが所定の中心位置で重なるように初期位相が制御された状態を示す説明図である。
【
図8】中心位置Pを中心に凸レンズとなるレンズ領域を形成するように各超音波の出力タイミングが制御された状態を示す説明図である。
【
図9】中心位置Pを中心に凹レンズとなるレンズ領域を形成するように各超音波の出力タイミングが制御された状態を示す説明図である。
【
図10】正方形状の液晶セルにおいて凸レンズとなるレンズ領域を形成する際に液晶層に入力される各超音波を示す説明図である。
【
図11】円板状の液晶セルにおいて中心位置P
1、P
2を中心とする2個の凸レンズとなるレンズ領域を形成する際に液晶層に入力される各超音波を示す説明図である。
【
図12】液晶セルを用いた広角中心窩レンズ装置の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1において、液晶レンズ装置10は、大別してレンズユニットU1と、制御ユニットU2とを備える。レンズユニットU1は、レンズとなる液晶セル11と、超音波ユニット12とを有する。また、制御ユニットU2は、超音波ユニット12を駆動する駆動回路14と、駆動回路14を介して超音波ユニット12を制御する制御部15とを有する。超音波ユニット12には、超音波を発生して出力する複数の超音波発生素子(以下、単に「発生素子」と称する)18が設けられている。各発生素子18は、液晶セル11に取り付けられている。この液晶レンズ装置10は、複数の発生素子18からの超音波で液晶セル11の任意の位置に凸レンズまたは凹レンズとなる1または複数のレンズ領域を形成する。
【0013】
図2において、レンズユニットU1の液晶セル11は、一対の基板21、22と、これらの基板21、22の間に形成された液晶層23とを有している。基板21、22は、光学的に透明な材料で板状に形成されている。この例では、基板21、22は、各辺の長さがDsの正方形のガラスプレートである。したがって、液晶セル11は、平面視した形状が正方形である。基板21、22の外側の面(液晶層23と反対側の面)の一方が光の入射面となり、他方が射出面となる。
【0014】
基板21、22は、所定の間隔をあけて互いに一方の面を対面させた状態で平行に配置されており、それらの周縁がシール材24によって封止されている。液晶層23は、基板21、22及びシール材24の間に形成された空間内に液晶を満たすことで形成されている。液晶層23は、この例ではネマティック液晶から構成される。基板21と基板22との間隔が一定にされている。したがって、この例では、液晶層23は、一定の厚みを有し、断面が基板21、22とほぼ同サイズの正方形の板状になっている。
【0015】
基板21、22の互いに対向する内面には、配向膜25がそれぞれ形成されている。
図3に模式的に示すように、配向膜25は、液晶層23を構成する液晶分子27を90度のプレチルト角で垂直配向する。これにより、液晶層23中で、超音波によって圧力変動しない部分においては、液晶分子27が90度のプレチルト角で垂直配向される。
【0016】
図2に示されるように、入射面及び射出面に直交する面であって、液晶層23の周囲となる液晶セル11の周りの4つの面(以下、周面と称する)28には、超音波ユニット12の複数の発生素子18がそれぞれ設けられている。この例では、4つの周面28のそれぞれに5個の発生素子18が設けられている。この例では、周面28のそれぞれにおいて、5個の発生素子18が一定のピッチで設けられ、各周面28に設けた発生素子18のピッチを等しくすることで、レンズユニットU1は、液晶セル11の中心を通る軸周りに回転対称な形状、配置になっている。
【0017】
なお、液晶セル11の形状、発生素子18の配置、発生素子18の個数等は、上記のものに限定されない。例えば、液晶セル11の平面視した形状が三角形や、五角形等の多角形であってもよい。また、
図4に示すレンズユニットU1のように、円板状(平面視円形)の液晶セル11Aの周面に、周方向に所定のピッチで複数の発生素子18を配列した構成としてもよい。
図4の例では、一定のピッチで12個の発生素子18を液晶セル11Aの周囲に均等に配置している。
【0018】
発生素子18は、例えば圧電(ピエゾ)素子等で構成されており、駆動回路14から入力される駆動信号に基づいた超音波を出力する。発生素子18は、それが出力する超音波を液晶セル11の周縁から液晶層23に与えるように、周面28に取り付けられている。この例では、発生素子18の一端(出力端)をシール材24に密着させて取り付けており、発生素子18からの超音波がシール材24を介して液晶層23に伝えられる。液晶層23に伝えられた超音波は、液晶層23を構成する液晶を媒質として液晶層23中を伝播する。なお、発生素子18の取り付け手法は、液晶セル11の周縁から液晶層23に超音波を与えることができれば、これに限らない。例えば発生素子18の一端が液晶層23に露呈するように取り付けてもよいし、発生素子18と液晶層23との間に空気層等の空隙(隙間)があってもよい。また、発生素子18の出力端を液晶セル11の周面28を構成する基板21及び基板22の一方または両方の端面に密着させて取り付けて超音波を基板21、22の一方または両方に伝えることによって、液晶セル11の周縁から超音波を基板21、22の一方または両方を伝播させて、その超音波の振動を液晶層23に与えてもよい。
【0019】
制御部15は、レンズ領域を形成する際には、超音波ユニット12から複数の発生素子18を選択し、駆動回路14を介して選択した発生素子18を駆動する。選択する発生素子18は、2個以上であればよく、超音波ユニット12の全ての発生素子18でもよい。レンズ領域の等方的な形成すなわちレンズ領域によるレンズ効果を等方的にする観点からは、形成すべきレンズ領域に向けて異なる方向から、またより多くの方向から超音波が伝播するように、複数の発生素子18を選択するのがよい。この例のように、正方形の液晶セル11の周面28に発生素子18を設けた場合には、4つの周面28に設けられた発生素子18をそれぞれ選択するのがよい。また、上記のような観点から、液晶セルを多角形状にして各周面に発生素子18を設ける場合には、液晶セルの多角形の頂点の数が多くなるほどレンズ効果の等方性の程度が高くなるため、頂点を多くすることが好ましく、液晶セル11Aのように円形状にすることは特に好ましい。
【0020】
レンズ領域を形成する際に、制御部15は、レンズ領域の中心位置と、レンズ領域を凸レンズとするか凹レンズとするかによって、選択された発生素子18からの超音波の初期位相、出力タイミングを制御する。各発生素子18は、同じ周波数fの超音波を出力する。
【0021】
液晶層23中では、超音波によって生じる音響放射圧によって、液晶層23を構成する液晶分子に傾きが生じる。音響放射圧の変動(振幅)が大きいほど液晶分子が初期の垂直方向から水平方向に向けて倒れ、その倒れ角度が大きくなる。この結果、液晶セル11の入射面から射出面に透過する光については、液晶分子の倒れ角度に応じて、その光路長に変化が生じる。
【0022】
図5及び
図6は、液晶層23に超音波の共鳴現象によって生じる定在波Swが形成されている場合を示している。以下、超音波及びその定在波の波形に関しては、特に言及しない場合は、超音波の媒質すなわち液晶層23の液晶の圧力(音圧)の変化(疎密の変化)を示すものとして説明及び図示する。例えば、超音波の定在波において、「腹」は、圧力変動が最大(圧力の振幅が最大)となる位置であり、「節」は、圧力変動が最小ないし変化しない位置である。また、超音波のピーク(極大)、ボトム(極小)は、圧力(媒質の圧力)が極大、極小になる部分であり、超音波の振動の中心は、圧力の振幅の中心であって圧力の変化が「0」の部分である。なお、音響放射圧の変動は、超音波の定在波の腹の位置で最大となり節の位置で最小ないしは0となる。
【0023】
図5に示されるように、超音波の定在波Swの腹となる位置を中心に、その両側に向かって液晶分子の倒れ角度が連続的に漸減し、レンズ効果を有するレンズ領域が形成される。レンズ効果は、液晶分子の倒れ角度が大きいほど光路長が短くなることによるものである。この場合のレンズ領域は凸レンズとして機能する。また、
図6に示されるように、超音波の定在波Swの節となる位置に注目すると、その位置を中心として両側に向かって液晶分子の倒れ角度が連続的に漸増するレンズ領域が形成される。この場合のレンズ領域は、凹レンズとして機能する。
【0024】
制御部15は、液晶層23中において、選択した発生素子18からの各超音波による定在波の腹または節がレンズ領域の中心位置となるように、選択した発生素子18からの各超音波の初期位相を決める。レンズ領域を凸レンズとして機能させる場合には、そのレンズ領域の中心位置が定在波の腹に、凹レンズとして機能させる場合には、そのレンズ領域の中心位置が定在波の節となるようにする。
【0025】
図7に模式的に示す例では、レンズ領域となる中心位置Pで定在波Swの腹が形成されるように、対向する位置から液晶層23に入力される各超音波S1、S2の初期位相が制御された状態を示している。このように制御された対向する発生素子18のうちの一方が逆位相となるように、初期位相をさらにπだけ遅れる(または進む)ように制御することで、中心位置Pに超音波の定在波Swの節が形成されるように制御できる。
【0026】
図8は、制御部15が、
図5に示されるように各超音波の初期位相を制御するとともに、各超音波の出力タイミングを制御して、発生素子18からの各超音波S1a、S2aのピークを中心位置Pのみで重ね合わせた状態を示している。このような制御では、中心位置Pをピークとする山状の超音波の定在波Swaが生じる。この定在波Swaによって、中心位置Pを中心として、
図5に示される場合と同様な凸レンズとして機能するレンズ領域が形成される。発生素子18からの各超音波S1a、S2aのボトムを中心位置Pのみで重ね合わせて谷状の超音波の定在波を生じさせても、同様に凸レンズとして機能するレンズ領域が形成される。このように、レンズ領域の中心位置Pが定在波の腹すなわち中心位置Pから外側に向かって圧力(音響放射圧)の振幅が漸減する定在波を形成することによって、凸レンズとして機能するレンズ領域が形成される。
【0027】
図9は、制御部15が、定在波Swbの節が中心位置Pとなるように各超音波の初期位相を制御するとともに、出力タイミングを制御して、発生素子18からの各超音波S1b、S2bの振動の中心を中心位置Pのみで重ね合わせる例を示している。このような制御では、中心位置Pで液晶の圧力変動が「0」となり、その中心位置Pから一方の向きに圧力が漸減し、他方の向きに圧力が漸増するS字状の超音波の定在波Swbが生じる。この定在波Swbによって、
図6に示される場合と同様な凹レンズとして機能するレンズ領域が形成される。このように、レンズ領域の中心位置Pが定在波の節すなわち中心位置Pを中心にして一方向に圧力(音響放射圧)の振幅が漸増する定在波を形成することによって、凹レンズとして機能するレンズ領域が形成される。なお、
図8、
図9のいずれの例の場合にも、制御部15は、半波長分の超音波S1b、S2bを出力するように制御している。
【0028】
なお、発生素子18が出力する超音波の振幅、周波数(波長)の制御により、屈折率の高低(焦点距離の長短)、レンズ領域の大きさを制御できる。例えば、超音波の振幅すなわち音圧を大きくするほど、レンズ領域の屈折率の絶対値を大きくできる。また、超音波の周波数を小さく、すなわち液晶中の超音波の波長を大きくするほどレンズ領域を広くできる。レンズ領域の屈折率は、選択する発生素子18、すなわち重ね合わせる超音波の数によって生成される定在波の振幅を増減することによっても調整できる。
【0029】
次に、上記のように構成される液晶レンズ装置10において、液晶セル11の任意の位置に1つのレンズ領域を形成する場合について説明する。まず、凸レンズとして機能するレンズ領域を形成する場合を説明する。なお、
図1に示される正方形の液晶セル11の場合を例に説明するが、円板状の液晶セル11Aの場合についても同様である。
【0030】
以下では、説明を簡単にするために、発生素子18は、直接に液晶層23に超音波を伝達するものとして説明する。また、XY平面が液晶セル11(基板21)の表面に平行なXY座標を用いて液晶セル11、液晶層23における各位置を表し、形成するレンズ領域の中心位置をPとし、その中心位置Pの座標を(XP,YP)とする。また、各発生素子18の取り付けられた周面28における位置すなわち液晶層23への超音波の入力位置をQi(iは、1、2、・・・)とし、入力位置Qiの座標を(Xi,Yi)とする。さらに、入力位置Qiにある発生素子18を特に区別する場合には、発生素子18iとして説明する。
【0031】
中心位置Pを中心として凸レンズとなるレンズ領域を形成する場合には、超音波ユニット12のうちから2個以上の発生素子18を選択し、選択した各発生素子18からの超音波のピーク同士またはボトム同士が中心位置Pで互いに重なるように、それらの各発生素子18から半波長分の超音波を出力するように駆動する。各発生素子18から超音波を出力した場合に、凹と凸とが繰り返したフレネルレンズ状のレンズ効果がレンズ領域に生じることが予想されるが、そのときにおいても最大となる音響放射圧によって、凸レンズとなるレンズ効果が支配的になってレンズ領域を凸レンズとみなすことができればよい。このため、発生素子18から出力する超音波は厳密に半波長分とする必要はない。なお、凹レンズとなるレンズ領域を形成する場合についても同様である。
【0032】
入力位置Qiにおける超音波(Si)は、振幅Ai、角振動数ω(=2πf)、初期位相φiを用いて式(1)で表される。振幅Aiは、各発生素子18で同じでも異なっていてもかまわないが、選択した各発生素子18からの超音波のピーク同士またはボトム同士が中心位置Pで重った際すなわち増加的干渉によって生じる定在波の振幅が形成すべき凸レンズの焦点距離に応じたものとなるように調整される。
Si=Ai・sin(ωt+φi)・・・(1)
【0033】
初期位相φiは、ピーク同士を重ねる場合には、発生素子18iからの超音波のピークが、他の選択した各発生素子18iからの超音波のピークと中心位置Pで互いに重なるように設定される。ボトム同士を重ねる場合には、初期位相φiは、発生素子18iからの超音波のボトムが、他の選択した各発生素子18iからの超音波のボトムと中心位置Pで互いに重なるように設定される。発生素子18は、例えば、それに入力される駆動信号と同じ周波数と位相を持つ超音波を発生する。このため、選択された各発生素子18に入力する駆動信号の位相を調整することによって、選択した各発生素子18からの超音波のピーク同士またはボトム同士が中心位置Pで互いに重なるように初期位相φiの調整が可能である。
【0034】
具体的には、各超音波のピーク同士またはボトム同士を中心位置Pで互いに重ねるためには、発生素子18iの入力位置Qiから中心位置Pまでの距離をLiとし、超音波が液晶層23を移動する速度をv(m/s)としたとき(入力位置Qiから中心位置Pまでの到達時間はTi=Li/vとなる)、時刻t=Ti+n・T+t0のそれぞれにおいて、中心位置Pで超音波の位相がピーク同士の場合には「π/2+2π・m」、ボトム同士の場合には「3π/2+2π・m」となるように式(1)の初期位相φiを調整する。ここで、周期T(s)は発生素子18iが発するオンオフからなる一定の超音波の出力パターンの発生周期であり、nとmは、0以上の整数である。また、t0は、所望の位置にレンズ効果を生み出すための周期Tの超音波の出力パターンを切り替える際の基準となる任意の時刻である。
【0035】
また、ここでは説明を容易にするために、超音波が発生素子18iから中心位置Pに到る途上、速度vで液晶層23だけを移動する場合を想定して説明しているが、液晶層23以外にシール材24や発生素子18iと液晶層23(及びシール材24)との間に空気層等による空隙がある場合には、そのシール材24や空気層を通過する際に、超音波の速度vがその通過する媒質によって変化することを考慮する必要がある。また、発生素子18iから基板21、22に直接に超音波を伝えて、その超音波が基板21、22を媒質として伝播する場合には、速度vを基板21、22内における超音波の速度とする。
【0036】
選択した発生素子18iからは、周期T(s)で、ピークまたはボトムを中心とする半波長分の超音波を出力する。このときに、時刻tが「n・T+Ti-ΔT+t0≦t≦n・T+Ti+ΔT+t0」となる期間に超音波を出力し、時刻tが「n・T+t0≦t≦n・T+Ti-ΔT+t0」及び「n・T+Ti+ΔT+t0≦t≦(n+1)T+t0」となる期間では超音波を出力しないよう、選択した発生素子18iを制御する。
【0037】
上記時間ΔTは、上述のように発生素子18から超音波の長さ(半波長)の1/2を出力する時間として規定されるものである。すなわち、時間ΔTは、発生素子18が1/4波長分の超音波を出力する時間であって、液晶層23中を超音波が1/4波長分移動するのに要する時間である。上述のように、発生素子18から出力する超音波は厳密に半波長分とする必要がないので、時間ΔTについても、厳密でなくてよい。時間ΔTは、超音波の周波数fから予め得られる。周期Tは、例えば超音波が液晶層23中を液晶セル11の一辺の長さ(Ds)を進むのに要する時間(T=Ds/v)として予め決められる。
【0038】
上記のように時刻tが「n・T+Ti-ΔT+t0≦t≦n・T+Ti+ΔT+t0」となる期間だけ、選択した発生素子18iから周期Tごとに位相の調整を行った超音波を出力することによって、任意の中心位置Pのレンズ領域に凸レンズを生成することができる。
【0039】
上記のようにして、選択した発生素子18iから超音波を出力することで、中心位置Pにおいて選択した全ての発生素子18からの超音波のピーク同士またはボトム同士が同時に重なり、中心位置Pとして凸レンズとなるレンズ領域が形成される。選択した各発生素子18iからは、周期Tで繰り返し超音波が出力され、短い周期Tで繰り返し超音波の音圧のピーク同士またはボトム同士が重なるため、定常的にレンズ領域が形成される。この結果、このように形成されるレンズ領域をレンズとして用いることができる。
【0040】
周期Tを上記のように決めた場合には、中心位置Pを、液晶セル11の一辺の長さがDsの正方形に内接する円内に設定することができる。なお、周期Tを、液晶層23中を液晶セル11の対角線の長さだけ進むのに要する時間(T=21/2・Ds/v)またはそれ以上とすれば、中心位置Pを液晶セル11の全域に設定することができる。円板状の液晶セル11Aの場合には、周期Tを、その液晶層23中を液晶セル11Aの直径の長さだけ進むのに要する時間またはそれ以上とすれば、中心位置Pを液晶セル11Aの全域に設定することができる。
【0041】
上記では、中心位置Pのレンズ領域に凸レンズ効果を発生させる場合について説明しているが、時刻t=Ti+n・Tごとに中心位置Pにおいて、選択した発生素子18の一部からの超音波の位相が「0+2π・m」となり、残りの一部からの超音波の位相が逆位相すなわち「π+2π・m」となるように式(1)の初期位相φiを調整することで、中心位置Pのレンズ領域に凹レンズ効果を発生させることが可能である。この場合、振動中心を中心とする半波長分の超音波を出力する。
【0042】
発生素子18の配列が回転対称である構成において、凹レンズ効果を発生させる場合、任意に選択した1つの発生素子18に対して特定の位置関係(対向関係)にある他の発生素子18も選択し、それらを上記のような位相関係となるように駆動することが好ましい。特定の位置関係にある発生素子18は、上記回転対称の対称軸を挟んで反対側に配された発生素子18であり、より詳細には、選択した1つの発生素子(以下、着目発生素子と称する)18と回転対称な位置にある発生素子18のうち、着目発生素子18との距離が最大となる発生素子18である。例えば、nを2、3・・・として、正(2n)角形や円形の液晶セルの周面28にそれぞれ発生素子18を配した場合には、1つの着目発生素子18に対して特定の位置関係のものとして1つの発生素子18が選択される。一方、正三角形や正五角形のように、正(2n-1)角形の液晶セル11の周面28にそれぞれ発生素子18を配した場合には、1つの着目発生素子18に対して特定の位置関係のものとして2つの発生素子18が選択される。このように特定の位置関係のものとして2個の発生素子18を選択した場合には、これら2個の発生素子18からの超音波の振幅を、着目発生素子18からの超音波の振幅の半分とすればよい。
【0043】
図10は、発生素子18
1、18
3、18
4、18
11、18
13、18
15を選択して、中心位置Pにレンズ領域を形成する際に、入力位置Q
1、Q
3、Q
4、Q
11、Q
13、Q
15から液晶層23に入力される超音波を模式的に示している。この
図10に示されるように、入力位置Q
1、Q
3、Q
4、Q
11、Q
13、Q
15からは、周期Tで繰り返し、半波長分の超音波が液晶層23に入力される。この例では、ピークを中心とする半波長分の超音波を入力している。
【0044】
このように入力される各超音波は、上述のように出力タイミングがそれぞれ制御されることで、入力位置Q1、Q3、Q4、Q11、Q13、Q15から中心位置Pまでの距離に応じた時間T1、T3、T4、T11、T13、T15によって、発生タイミングがずらされている。例えば、入力位置Q3からの超音波は、入力位置Q1からの超音波に対して時間(T1-T3)だけ遅れて液晶層23に入力される。このようにして、発生素子181、183、184、1811、1813、1815からの全ての超音波のピークが同時に中心位置Pで重なる。これに、各超音波の増加的干渉により中心位置Pをピークとする山状の定在波が形成される。
【0045】
そして、発生素子181、183、184、1811、1813、1815から、周期Tで繰り返し半波長分の超音波が液晶層23に入力されることにより、中心位置Pをピークとする山状の定在波が継続的に形成される。この結果、中心位置Pを中心に凸レンズとなるレンズ領域が継続的に形成された状態になる。なお、液晶層23にピークを中心とする半波長分の超音波を入力して凸レンズとなるレンズ領域を形成しているが、ボトム(極小)を中心とする半波長分の超音波を入力してもよい。
【0046】
凹レンズとなるレンズ領域を形成する場合には、選択した複数の発生素子18iの初期位相を凸レンズとなるレンズ領域を形成する際の初期位相から、一部の発生素子18iについてはπ/2だけ進め、残りの一部についてはπ/2だけ遅らせたものとし、上記のように一部の発生素子18iからの超音波と残りの一部の発生素子18iからの超音波とを逆位相をとすればよい。この場合には、振動の中心を中心とした半波長分の複数の超音波が液晶層23にそれぞれ入力される。そして、半波長分の各超音波の全ての振動の中心が中心位置Pで互いに重なり、これらの増加的干渉により形成される定在波によって凹レンズとなるレンズ領域が形成される。この場合にも、周期Tで繰り返し半波長分の超音波が液晶層23に入力されることにより、凹レンズとなるレンズ領域が継続的に形成された状態になる。
【0047】
凸レンズとなるレンズ領域、凹レンズとなるレンズ領域のいずれを形成する場合にも、発生素子181、183、184、1811、1813、1815から出力される超音波の初期位相、出力タイミングを変えることによって、中心位置Pを変えて、その中心位置Pを中心にレンズ領域を形成することができる。また、例えば、発生素子181、183、184、1811、1813、1815から出力される超音波の一部または全部から出力される超音波の振幅を増減すれば、形成されるレンズ領域による焦点距離を変化させることができる。
【0048】
図11は、円板状(平面視円形)の液晶セル11Aを用いて、中心位置P
1、P
2を中心とする2個の凸レンズとなるレンズ領域を形成する例を示している。発生素子18
i及び入力位置Q
iについては、上記の例と同様に付して説明する。
図11の例では、i=3,4,6,9,10,12の発生素子18
iを選択している。
【0049】
2個のレンズ領域を形成する場合には、選択した発生素子18からは中心位置P1を中心にレンズ領域を形成する超音波(以下、第1超音波と称する)G1と、中心位置P2を中心にレンズ領域を形成する超音波(以下、第2超音波と称する)G2とを、選択した複数の発生素子18から液晶層23に周期Tでそれぞれ繰り返し入力する。この例では、第1超音波G1、第2超音波G2は、どちらも凸レンズとなるレンズ領域を形成するので、いずれも例えばピークを中心とする半波長分の超音波である。
【0050】
なお、第1超音波G1、第2超音波G2は、ボトムを中心とする半波長分の超音波としてもよく、それらの一方をピークを中心とする半波長分の超音波、他方をボトムを中心とする半波長分の超音波としてもよい。また、この例では、第1超音波G1を出力する発生素子18と第2超音波G2を出力する発生素子18とを同一のものとしているが、第1超音波G1を出力する発生素子18に対して第2超音波G2を出力する発生素子18の一部または全部を異なるものとしてもよい。
【0051】
第1超音波G1の初期位相φ1iは、発生素子18iからの超音波のピークが、他の選択した各発生素子18iからの超音波のピークと中心位置P1で互いに重なるように設定される。また、この第1超音波G1は、時刻tが「n・T+T1i-ΔT+t0≦t≦n・T+T1i+ΔT+t0」となる期間に出力され、時刻tが「n・T+t0≦t≦+n・T+T1i-ΔT+t0」及び「n・T+T1i+ΔT+t0≦t≦(n+1)T+t0」となる期間では超音波が出力されないように、選択した発生素子18iが制御される。なお、時間T1iは、液晶層23中において超音波が入力位置Qiから中心位置P1まで進むのに要する時間である。
【0052】
第2超音波G2の初期位相φ2iは、発生素子18iからの超音波のピークが、他の選択した各発生素子18iからの超音波のピークと中心位置P1で互いに重なるように設定される。したがって、第1超音波G1と第2超音波G2とを出力する場合に初期位相の設定が切り替えられる。また、この第2超音波G2は、時刻tが「n・T+T2i-ΔT+t0≦t≦n・T+T2i+ΔT+t0」となる期間に出力され、時刻tが「n・T+t0≦t≦+n・T+T2i-ΔT+t0」及び「n・T+T2i+ΔT+t0≦t≦(n+1)T+t0」となる期間では超音波が出力されないように、選択した発生素子18iが制御される。なお、時間T2iは、液晶層23中において超音波が入力位置Qiから中心位置P2まで進むのに要する時間である。
【0053】
上記のようにして選択した各発生素子18からの第1超音波G1、第2超音波G2が液晶層23に周期Tで繰り返し入力される。これにより、第1超音波の全てが同時に中心位置P1で繰り返し重なる。また、第2超音波の全てが同時に中心位置P2で重なる。これにより、中心位置P1を中心に凸レンズとなるレンズ領域が形成されると同時に中心位置P2を中心に凸レンズとなるレンズ領域が形成される。
【0054】
上記では、凸レンズとなる2個のレンズ領域を形成する例について説明しているが、第1超音波G1、第2超音波G2の波形を上記のように変えることで、凹レンズとなる2個のレンズ領域を形成したり、凸レンズ及び凹レンズとなる2個のレンズ領域を形成したりすることもできる。また、正方形の液晶セル11を用いた場合についても、同様に複数のレンズ領域を形成することができる。さらに、3個以上のレンズ領域を形成することもできる。
【0055】
液晶レンズ装置10は、上記のように任意の位置にレンズ効果を有するレンズ領域を形成することができるとともに、光が透過する液晶セル11内には、レンズ効果に異方性を生じさせる電極や配線が設けられていないため、光学性能の低下を抑えられている。また、発生素子18から出力する超音波の位相、出力タイミングの制御によって、レンズ領域の形成位置を変えられるため、その位置を高精度で制御する場合であっても、レンズ効果に異方性を生じさせる電極や配線の増加がなく、さらなる光学性能の低下を招くことがない。
【0056】
上記のように構成される液晶レンズ装置を用いて広角中心窩レンズ装置を構成することができる。
図12に一例を示すように、広角中心窩レンズ装置30は、物体側から順番に集光レンズ群31、レンズユニットU1Aの液晶セル32、レンズユニットU1Bの液晶セル33、結像レンズ群34が光軸方向に離して配置されたレンズ系と、レンズユニットU1A、U1Bに対応して設けられた駆動回路37a、37bと、制御部38とを有している。集光レンズ群31は、レンズ系を広角化するための1枚または複数枚のレンズから構成される。また、結像レンズ群34は、レンズ系の像を像面(図示省略)に結像させる1枚または複数枚のレンズから構成される。
【0057】
レンズユニットU1A、U1Bは、上記のレンズユニットU1と同様に超音波ユニットを含んで構成される。液晶セル32、33は、レンズ系の光軸に対して基板が垂直にそれぞれ配されている。制御部38は、液晶セル32、33に設けた超音波ユニットの複数の発生素子(図示省略)を駆動回路37a、37bを介してそれぞれ駆動する。これにより、レンズ系において高い解像度あるいは高倍率で観察しようとする注目領域に対応する液晶セル32、33の位置にレンズ領域をそれぞれ形成する。このときに、制御部38は、液晶セル32のレンズ領域を凸レンズ、液晶セル33のレンズ領域を凹レンズとする。これにより、注目領域の像倍率を凸レンズと凹レンズとの組み合わせにより周囲の領域よりも高くする。なお、これとは逆に、液晶セル32のレンズ領域を凹レンズ、液晶セル33のレンズ領域を凸レンズとすることで、注目領域の像倍率を周囲の領域よりも低くすることができる。
【0058】
上記のような広角中心窩レンズ装置30では、凸レンズ及び凹レンズとなる各レンズ領域の形成位置を精度よく制御する必要があるが、このように制御する場合であっても、上述のように光学性能のさらなる低下を招くことがない。また、各レンズ領域の位置及びレンズパワーを変化させることで、注目領域の位置を移動させ、また注目領域の像倍率を変えて注目領域の像を拡大または縮小することができる。さらには、複数の注目領域のそれぞれの像倍率を高くあるいは低くしたり、それらの注目領域の像倍率を互いに異なったものとしたりすることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 液晶レンズ装置
11、11A、32、33 液晶セル
12 超音波ユニット
15、38 制御部
18 超音波発生素子
21、22 基板
23 液晶層
30 広角中心窩レンズ装置