(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180216
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ダイナミック2D心臓MRIの交互交差取得を通したプロスペクティブスライストラッキング(PST)
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
A61B5/055 370
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023074620
(22)【出願日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】22177768
(32)【優先日】2022-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516308401
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】カール-フィリップ クンツェ
(72)【発明者】
【氏名】ラドヒューネ ネジ
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA09
4C096AA11
4C096AC04
4C096AD14
4C096AD27
4C096BA06
4C096DC23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】心臓のMR画像を生成する。
【解決手段】本方法は、基準心拍中に心臓の2D基準画像の第1のセットを収集し再構成し、第1のセットは、心臓を通る第1の基準平面の位置に沿って収集される第1の基準画像を含む、過程と、第2の心拍中に心臓の2D画像の第2のセットを収集する過程と、を含み、第2のセットを収集する過程は、第1の基準平面に沿って収集される第2のセット中の第1の画像を収集する過程と、第1の基準画像と第2のセット中の第1の画像とに基づいて、第1の基準平面の位置の画像面における心臓の第1のインプレイン変位を決定する過程と、決定した第1のインプレイン変位に基づいて、第2のセット中の第1の画像に交差して収集する第2のセット中の第2の画像に関するシフトさせた平面の位置を決定する過程と、シフトさせた平面の位置に沿って第2の画像を収集し再構成する過程と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓のMR画像を生成する方法であって、
基準心拍中に心臓の2D基準画像の第1のセットを収集し再構成し、前記第1のセットは、心臓を通る第1の基準平面の位置に沿って収集される第1の基準画像を含む、過程と、
第2の心拍中に心臓の2D画像の第2のセットを収集する過程と、を含み、
前記第2のセットを収集する過程は、
前記第1の基準平面に沿って収集される前記第2のセット中の第1の画像を収集する過程と、
前記第1の基準画像と前記第2のセット中の前記第1の画像とに基づいて、前記第1の基準平面の位置の画像面における心臓の第1のインプレイン変位を決定する過程と、
決定した前記第1のインプレイン変位に基づいて、前記第2のセット中の前記第1の画像に交差して収集する前記第2のセット中の第2の画像に関するシフトさせた平面の位置を決定する過程と、
前記シフトさせた平面の位置に沿って前記第2の画像を収集し再構成する過程と、を含み、
2D画像の前記第1のセットのすべての画像及び2D画像の前記第2のセットのすべての画像は、診断的に関連する画像である、方法。
【請求項2】
前記第2のセットがN個の画像を含み、
前記第2のセット中の付加画像(2~N)は、これら付加画像それぞれの平面の位置が互いに平行であると共に前記第1の基準平面の位置と交差し、
前記付加画像それぞれの前記平面の位置は、前記第1のインプレイン変位に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のセットを収集し再構成する過程は、前記基準心拍中にN個の基準画像を収集し再構成する過程を含み、
前記第2のセットがN個の画像を含んでおり、その画像nの画像面の位置が前記第1のセット及び前記第2のセット中の画像n+1の画像面の位置に交差し、この場合のnは1からN-1までの整数であり、
前記第2のセット中の画像n+1に関し決定される前記シフトさせた平面の位置は、前記第1のセット中の画像n及び前記第2のセット中の画像nで決定される、対応するインプレイン変位に基づいて、決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のセット及び前記第2のセット中のすべての前記第2の画像が、心臓の長軸に沿った平面の位置又は心臓の短軸に沿った平面の位置を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のセット及び前記第2のセットそれぞれの中の奇数画像番号をもつ画像が心臓の長軸に沿った心臓の画像を表現し、前記第1のセット及び前記第2のセットそれぞれの中の偶数画像番号をもつ画像が心臓の短軸に沿った心臓の画像を表現する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のセット中の前記第2の画像及び別の前記基準画像は、心臓内で同じ解剖学的位置を実質的に有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のセット及び前記第2のセット中の収集された画像それぞれの最終版を再構成する過程をさらに含み、
前記最終版は、それぞれ、前記第1の画像及び前記第1の基準画像と比較して高い解像度を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のセット及び前記第2のセット中の各画像は、シングルショットグラジエントエコー撮像シーケンスで収集される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の基準画像及び前記第1の画像に関しマッチング処理を使用し、
このマッチング処理において、前記第1の基準画像の少なくともサブセットと前記第1の画像の少なくともサブセットとを比較してインプレイン変位を決定する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の心拍中に心臓の2D画像の前記第2のセットを収集する過程とその一連の全過程は、継続する心拍に対しいくらでも繰り返される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
当該方法が、少なくとも部分的にMR造影剤の投与時に適用され、収集される画像データが心臓への造影剤の流入を表現する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
制御モジュールを含み、心臓のMR画像を生成するように構成されたMR撮像システムであって、
前記制御モジュールは、MR画像を生成するために、
基準心拍中に心臓の2D基準画像の第1のセットを収集し再構成し、
第2の心拍中に心臓の2D画像の第2のセットを収集する、ように構成され、
前記第1のセットは、心臓を通る第1の基準平面の位置に沿って収集される第1の基準画像と、前記第1の基準平面の位置と交差する第2の基準平面の位置で収集される少なくとも1つの別の基準画像と、を含み、前記別の基準画像が心臓の所定の解剖学的領域を表現し、
前記第2の心拍中に心臓の2D画像の前記第2のセットを収集するときに、前記制御モジュールは、
前記第1の基準平面に沿って収集される前記第2のセット中の第1の画像を収集し、
前記第1の基準画像と前記第2のセット中の前記第1の画像とに基づいて、前記第1の基準平面の位置の画像面における心臓の第1のインプレイン変位を決定し、
決定した前記第1のインプレイン変位に基づいて、心臓の前記第2の基準平面の位置と平行に収集する前記第2のセット中の第2の画像に関するシフトさせた平面の位置を決定し、
前記シフトさせた平面の位置に沿って前記第2の画像を収集し再構成する、ように構成され、
2D画像の前記第1のセットのすべての画像及び2D画像の前記第2のセットのすべての画像は、診断的に関連する画像である、MR撮像システム。
【請求項13】
請求項2~11のいずれか1項に記載の方法を実行するようにさらに構成されている、請求項12に記載のMR撮像システム。
【請求項14】
プログラムコードを含むコンピュータプログラムであって、前記プログラムコードがMR撮像システムの制御ユニットによって実行されると、該MR撮像システムが請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行する、コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを含む担体であって、電子信号、光信号、無線信号、及びコンピュータ可読記憶媒体のうちの1つである、担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、心臓のMR画像を生成する方法、これに対応するMR撮像システム、プログラムコードからなるコンピュータプログラム、コンピュータプログラムを含んだ担体に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイナミック2D心臓MRI(磁気共鳴撮像)は、動的時系列の収集(acquisitions)間で呼吸運動によって影響を受ける。どのような2D-MR撮像でも、呼吸運動の影響は2つのカテゴリーに分類することができる:1)撮像された2D平面の中での動態間の心臓の動き(in-plane/インプレイン)と、2)収集間の撮像された2D平面の内外への心臓の動き(through-plane/スループレイン)である。インプレイン(面内)及びスループレイン(面通過)運動の影響及び視認性は、解剖学的構造及び所定のスライス位置によって変わり得るが、いずれも通常、心臓MRI(特に短軸)で使用される標準スライス方向において重大である。さらに、両分類の重大な運動は、深呼吸時に断続的に、すなわち不規則で予測不能に、出現し得る。
【0003】
インプレイン運動は画像ベースの運動補正によって遡及的に補正できるが、スループレイン運動には、収集自体が動作する部分をもはや含んでおらず、遡及的な画像ベースの運動補正が不可能であり、そして、何らかの形式のプロスペクティブ(予測)補正(例えば、スライストラッキング)を必要とする、という問題がある。心臓内の同じ箇所の長いダイナミックデータウィンドウを通例で含む灌流定量化には、スループレイン運動が特に有害である。
【0004】
プロスペクティブ運動補正は、個々の収集それぞれの前に別々のナビゲータ収集を使用して達成されることが多い。このナビゲータからの情報を使用して、受容ウィンドウ外のデータを排斥し、及び/又は、ナビゲータによって示される運動に従って次の収集のスライス位置をシフトさせることができる。
【0005】
セグメント化3D心臓撮像の場合、これを横隔膜の1Dコーン/ペンシルビームナビゲータとすることができ、各方向の運動を推定し、続く画像収集に予測的に影響させるか(すなわち、シフト)、遡及的にデータを補正する。
【0006】
ダイナミック2D撮像の場合、1D横隔膜ナビゲータによるプロスペクティブスライストラッキングが可能であるが、いくつかの問題が残っている。
1)断続的な又は特異な深呼吸イベントをカバーしない、横隔膜運動と心筋運動との間の一定のトラッキング因子の想定、あるいは、潜在的に不正確な学習フェーズの必要性。
2)1Dナビゲータと、ダイナミック撮像で通常使用される逆位又は飽和先行パルスとの間の複雑な相互作用で、実際の診断画像収集に影響を及ぼす可能性のある追加のリストアパルスの使用が必要である。
3)横隔膜フィートヘッド運動を心筋短軸スライスに適用すると、その向きは個々の解剖学的構造に依存し、フィートヘッドが必ずしもスループレイン運動に対する唯一の寄与ではない。
【0007】
以上のとおり、上記の問題を克服すること、発生するスループレイン運動を効果的な方法で克服することのできる心臓のMR撮像方法を提供することが必要である。
【発明の概要】
【0008】
この課題は、独立形式請求項の特徴によって解決される。さらなる態様が従属形式請求項に記載されている。
【0009】
第1の態様によれば、心臓のMR画像を生成する方法が提供される。この方法は、基準心拍中に心臓の2D基準画像の第1のセットを収集して再構成する過程を含む。この第1のセットは、心臓を通る第1の基準平面の位置に沿って収集された第1の基準画像からなる。さらに、心臓の2D画像の第2のセットを第2の心拍中に収集する。この第2のセットの収集は、第1の基準平面に沿って収集される第2のセット中の第1の画像を収集する過程を含む。第1の基準画像と第2のセット中の第1の画像に基づいて、第1の基準平面の位置の画像面の心臓について第1のインプレイン変位を決定する。そして、第1の基準画像と第2のセット中の第1の画像とから決定された第1のインプレイン変位に基づいて、第2のセット中の第1の画像に交差して収集する第2のセット中の第2の画像について、シフトさせた平面の位置を決定する。さらに、シフトさせた平面の位置に沿った第2の画像を収集して再構成する。2D画像の第1のセットのすべての画像と2D画像の第2のセットのすべての画像とは、診断上関連する画像である。
【0010】
第2のセット中の第2の画像はセットそれぞれの中の第1の画像と交差しているので、各セットの第1の画像におけるスループレイン運動を決定することができる。画像面が交差しているので、各セットの対応する第2の画像でインプレイン運動であればスループレイン運動になる。第2の心拍中に第2のセット中の第2の画像が決定される前に、インプレイン変位は、各種のマッチングアルゴリズムを用いて決定することができる。マッチングアルゴリズムにおいて、第1の基準画像又はこの画像中の何らかの解剖学的ランドマークが、同じ平面の位置に沿って収集される第2のセット中の第1の画像と比較される。交差する方向では、これが、第2の画像の画像の向きでスループレインの動きに相当し、したがって、第2のセット中の第2の画像に関する第2の又はシフトさせた平面の位置を決めるときに、当該変位を考慮することができる。
【0011】
好ましくは、前記第2のセットがN個の画像を含んでいるとすると、第2のセット中の付加画像2~Nに関して、これら付加画像それぞれの平面の位置は、互いに平行であり、第1の基準平面の位置と交差する。この場合、付加画像それぞれの平面の位置は、第1のインプレイン変位に基づいて決定し得る。第2のセット中の付加画像はすべて、心臓を通る平行な平面であり、例えば、心臓を通る異なる位置で見た心臓の短軸像である。これらすべての画像について、対応する第1の画像から決定したインプレイン変位が、第2の心拍における画像面を設定し適合させるのに役立ち、したがって、実質的に同じ解剖学的領域が画像の第1のセットと対比した画像中に示される。
【0012】
別の態様において、基準心拍中にN個の基準画像を収集し再構成することを含む方法で、第1のセットを収集し再構成することが可能である。この場合、画像の第2のセットもN個の画像からなる。両方のセットに関し、画像nの画像面の位置は、両方のセットにおいて画像n+1の画像面の位置と交差していることが可能で、nは、1からN-1までの整数である。この場合、第1のセット中の画像n及び第2のセット中の画像nで決定された対応するインプレイン変位に基づいて、第2のセット中の画像n+1に関してシフトさせた平面の位置を決定する。これにより、第2の心拍における第2のセットの各画像を、現在と直前の心拍における先行画像に基づいて補正することができる。このことは、各連続画像が直前の画像と交差する画像面を有することで可能になる。すなわち、第1の画像面が短軸像であれば後続の画像面は長軸像であり、あるいは、その逆である。
【0013】
ここで、第1のセット中の第2の画像及び第2のセット中の第2の画像はいずれも、心臓の長軸又は心臓の短軸に沿うような、同じ画像面に沿った平面の位置を有することが可能である。この場合、その間の画像は交差した画像面を有する。
【0014】
また、第1及び第2のセットそれぞれの中の奇数画像番号を有する画像は、心臓の長軸に沿った心臓の画像を表現する、ということが可能である。この場合、第1及び第2のセットそれぞれの中の偶数画像番号を有する画像は、心臓の短軸に沿った心臓の画像を表現する。同様に、奇数画像番号を有する画像は短軸像、偶数画像番号を有する画像は長軸像としてもよい。
【0015】
好ましくは、第2のセット中の第2の画像及び付加基準画像は、実質的に心臓内の同じ解剖学的位置を有する。このことは、対応する第1の画像から決定されるインプレイン運動が、交差する平面における第2の画像に関する画像面の位置及びスループレイン運動を取得するのに役立つことから、可能になる。
【0016】
また、上記方法は、第1及び第2のセットにおいて収集された画像の各々の最終版を再構成する過程を含むことができる。この場合、最終版は、それぞれ、インプレイン変位を決定するために使用した第1の画像及び第1の基準画像と比較して高い解像度を有する。各セット中の第1の画像の再構成とインプレイン変位の決定は第2の心拍中に起きなければならず、それにより第2の画像を画像の第2のセットにおいて収集することができるので、高速撮像シーケンスと再構成が必要である。一例を挙げると、撮像シーケンスには、各画像を再構成するために使用されるMR信号を1つの励起RFパルスの後に取得する撮像シーケンスを利用することができる。すなわち、撮像シーケンスは、シングルショット撮像シーケンスとすることができ、好ましくはグラジエントエコー式の撮像シーケンスとし得る。
【0017】
また、マッチング処理を、第1の基準画像及び第1の画像に使用することができる。この処理において、第1の基準画像の少なくとも1つのサブセットを第1の画像の少なくとも1つのサブセットと比較し、これら2つの画像におけるインプレイン変位を決定する。このインプレイン変位は、次に続く画像のスループレイン変位に相当する。
【0018】
第2の心拍中に2D画像の第2のセットを収集する過程とその一連の全過程は、継続する心拍に対しいくらでも繰り返すことができる。また、本方法の各過程は、MR造影剤の投与時に適用することができ、第1及び第2のセットの収集画像がMR造影剤の心臓への流入を表現するということが可能である。
【0019】
また、相応のMR撮像システムが提供され、この撮像システムは、心臓のMR画像を生成するように構成される。この場合、撮像システムは、上述したように又は以下でさらに詳述するように作動可能な制御ユニットを含む。
【0020】
また、プログラムコードを含むコンピュータプログラムが提供され、このプログラムコードは、MR撮像システムの制御ユニットによって実行されると、MR撮像システムに、上述した又は以下でさらに詳述する方法を実行させる。
【0021】
また、上記コンピュータプログラムの担体が提供され、この担体は、電子信号、光信号、無線信号、及びコンピュータ可読記憶媒体のうちの1つである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の以上の及びその他の特徴及び効果は、次の図面を参照する以下の詳細な説明から明らかとなる。図中、類似の参照符号は類似の要素を表す。
【
図1】心臓のMR撮像において生じるスループレインの動きを最適補正して心臓のMR画像を生成することができるMRシステムの概略図。
【
図2】同じ心拍中に後続の画像面の位置を先行の画像面と交差するように決定する方法の概略図。
【
図3】1回の長軸画像収集後の3回の短軸画像収集の第1の概略図。
【
図4】スループレイン運動を考慮するために、異なる心拍の画像をどのように収集して処理するかを示す概略図。
【
図5】スループレインアーチファクトを回避しながら心臓のMR画像を決定するために必要ないくつかの過程を含むフローチャートの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下に述べる実施の形態の説明が限定の意図をもつと捉えるべきではないのはもちろんである。本発明の範囲は、ここに説明する実施の形態又は図面によって限定されるべきではなく、それらは単なる例示である。
【0024】
図面は、模式的、概要的な表現であると解釈されるべきであり、図示された要素は必ずしも原寸に比例して(正確な縮尺で)示されているわけではない。むしろ、種々の要素は、それらの機能及び汎用性が当分野で通常の知識をもつ者に明らかであるように表されている。図面に示しそしてここに説明する機能ブロック、デバイス(装置)、物理的又は機能的ユニットのコンポーネントの間の接続や連結は、間接的な接続や連結でも実施することができる。コンポーネント間の連結は、有線又は無線接続を通して確立され得る。機能ブロックは、ハードウエア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの組み合わせで実施することができる。
【0025】
図1は、分極場B0を生成する磁石10を備えたMRシステム1の概略図を示す。テーブル11上に横たわる被検体12をMRシステム1の中央へ移動させ、RF励起後のMR信号が受信コイル2によって検出される。受信コイル2は個々のコイルセクションからなり、コイルセクションのそれぞれは、対応する検出チャネル3と結びつけられている。RFパルス及び磁場勾配を印加することにより、被検体12において、特に受信コイル2内に位置する部位(本例では心臓)において、核スピンが励起され、位置コード化され、リラクゼーションによって誘導される電流を検出することができる。MR画像を生成する方法と、RFパルスのシーケンス及び磁場勾配のシーケンスを用いてMR信号を検出する方法とは、当技術分野において知られているので詳細な説明は省略する。
【0026】
MRシステムは、MRシステムを制御するために使用される制御モジュール13を含む。制御モジュール13は、磁場勾配を制御しスイッチングする勾配制御ユニット14と、撮像シーケンスのためにRFパルスを制御し生成するRF制御ユニット15と、を含む。印加RFパルス及び磁場勾配のシーケンスを制御して、勾配制御ユニット14及びRF制御ユニット15を制御する、画像シーケンス制御ユニット16が設けられる。メモリ17において、MRシステムの作動に必要なコンピュータプログラムとMR画像を生成するために必要な撮像シーケンスとを、生成されたMR画像と共に記憶することができる。生成されたMR画像はディスプレイ18に表示することができ、入力ユニット19が提供され、MRシステムのユーザによってMRシステムの機能を制御するために使用される。処理ユニット20は、
図1に示す各機能ユニットの作動を管理し、メモリ17に記憶された命令を実行可能な1つ以上のプロセッサを含む。メモリには、処理ユニット20によって実行されるプログラムコードが入っている。処理ユニットは、検出された画像に基づいて、MR画像を再構成することができる。
【0027】
以下の開示において、運動が起こっていても心臓に関して同じ画像面を収集できるようにスループレイン運動を考慮することを可能にする方法について説明する。特に、制御モジュール13は、後述のとおりに作動するように構成される。
【0028】
時間的に互いに前後した同じ向きの平行平面のダイナミック2D画像スキャンを実行する代わりに、短軸像のような対象の向きの収集と、この対象の向きと交差する診断的に関連した画像の向きの収集とを、交互に行うことが提案される。
【0029】
図2は、連続した交差潅流(パーフルージョン)スライスの図を示す。画像セットの第1の画像の例として、画像22は、長軸に沿った2つ又は3つの心室、すなわち長軸像であり、これに短軸像を示す画像23が続き、そして、長軸スライス位置で4つの心室像の画像24及び短軸画像25が続き、これらは、同じ心拍中の1つの時間ウィンドウで互いに前後して収集される。各画像において、次に続く画像の平面の位置が示されており、これは、画像22の場合、平面の位置が線31で表され、画像23の画像面を示している、ということである。同様にして画像23の場合、第3の画像24の平面の位置を表す平面位置(線)32が示されている。画像24では平面位置33が示され、画像25では平面位置34が示され、これは、画像22で示された同様の平面で、次の心拍で収集される可能性をもつ。
【0030】
このような処理で、後続の交差した向きの画像を再構成することにより、それを先行する心拍の同じ向きのいくつかの任意の基準と整合させることにより、そして、それにより得られたシフトを、次の交差収集にプロスペクティブに(前向きに/予測的に)適用することにより、スライス位置に関するプロスペクティブスライス補正を、後続の心拍について得ることができる。これについては以下に
図4を参照してより詳細に説明する。
図2において、第1の画像中の2つの矢印28,29は、後続の短軸スライス(画像面31、画像23のスライス位置を選択された基準にアジャストするために使用される)に交差する運動の投影を表す。この方法により、画像23に表示される短軸像は、検査全体を通して同じ解剖学的位置で収集され、すべての残りのインプレイン運動を遡及的に補正することができる。連続したスライス収集の間の時間は短いが、前のスライスの予備的で低解像度の再構成にかかる時間と、続くスライス位置を調整するためのその基準に対するマッチングとが、通常採用される飽和回復(SR)準備によって可能とされ、約50ms以上の次のデータ収集の開始前の時間を残す。交差の向きは、いくつかの異なる方法で適用することができる。
【0031】
第1の例が
図3に示され、他の例が
図4に示されている。両方の例において、心拍ごとにN個の2Dスライス画像がダイナミック潅流実験において収集されている。
図3は、2つの心室又は3つの心室又は4つの心室などの長軸像である第1の画像41を示し、これにN-1個の短軸スライスが続き、これらは、各心拍において同じ第1の長軸スライスに従ってプロスペクティブにシフトさせてある。このことは、画像42,43,44が収集される前に、画像41が、先行する心拍で取得された同じ画像と比較され、これら2つの画像の比較に基づいており、そしてインプレイン運動がこの画像面の位置に関して決定可能であることを意味する。線47によって示される次の平面が交差しており、スライス位置は対応して適合させることができる。
【0032】
図4は、異なる画像がどのように収集され、後処理がどのように行われるかを説明する一種のフローチャートを示している。第1の心拍において、画像51~54が収集される。このときの画像スライス位置56~59は、後続の画像スライスが互いに交差するようになっている。図示の例で、画像51は長軸像であり、画像52は短軸像であり、画像53は長軸像であり、画像54は短軸像である。つまり、交差位置は交互方式で収集される。この第1の過程の後、第2の過程において、これら画像は、最初の位置の第1の心拍の基準画像として再構成もされる。第1の画像セット中の画像51~54は、基準画像セットの役割をもつ。
【0033】
第3の過程において、すべての残りの心拍について、基準画像セットと同じ順番で同じスライス位置が使用され、この第3の過程の最初に、過程3-aにおいて、画像61が、患者の呼吸運動を考慮して、直前の心拍における前回の収集に対して潜在的にシフトさせたスライス位置で収集され、好ましくは低解像度で再構成される。次に続く画像62~64が収集される前に、過程3-bにおいて矢印80によって示すように、画像61は、画像51とマッチングさせる。このマッチングは、完全な画像51と画像61、又はこれら画像のサブセットに基づき得る。次の過程3-cにおいて、後続のスライス位置に関するスループレイン運動に相当するインプレイン運動変位を計算し、そして過程3-dにおいて、次に続くスライス位置、すなわち画像62の生成に使用する平面位置65、をシフトさせて過程3-b及び過程3-cの基準位置とマッチングさせる。以上に説明したのと同じ過程3-a~dが、後続の画像に適用される。すなわち、画像62を画像52と比較してこれらの画像に示されたインプレイン運動を決定し、この運動は、画像63に関するスループレイン運動に対応するので、その結果、画像63が収集される前に画像面の位置を適合させることができる。
図4において画像62から画像64の間に示す各矢印についても、過程a~dが繰り返される。同じ処理を第3の心拍の画像スライスに適用することができ、このときには第2の心拍の画像が基準画像の役割をもつ。代案として、第1の心拍の画像が基準画像の役割をもつ。
【0034】
図3に示す例に適用すると、次のようになり得る。画像51~54が
図4に示すとおり収集されるか、又は、画像51のみが収集され、第2の心拍において、
図3に示す画像41が決定され、異なる短軸像42、短軸像43、又は短軸像44が
図3に象徴されるように収集される前に過程a~dを実行することができる。
【0035】
さらなる過程として、第3の過程の過程a~dの後、第4の過程において、全収集サイクルの終了時に、それぞれのスライス及び心拍のすべてて全画像のフル解像度版を再構成することが可能である。最終的な診断画像再構成の後回しは、画像62を収集する前に必要となるフル解像度再構成及びマッチングがリアルタイムでは時間がかかりすぎることから、有益である。
【0036】
横隔膜サロゲートからではなく、心臓自体の画像から2D画像スライスに交差して運動が推定され、1Dナビゲータで可能である精度よりも正確にスループレイン運動を決定することができる。先行する完全に診断用の収集がナビゲーションの基礎であるから、追加のデータ収集が必要ない。このことは、さらに、実際の灌流収集時のナビゲータリストアパルスの潜在的干渉を回避し、横隔膜運動と心臓運動との間の関係に関する学習された又は先験的な仮定を含まない。
【0037】
図5は、上述した過程の一部をまとめたものである。第1の過程S81において、心臓の2D基準画像の第1のセットが収集され、画像51~54によって示したように再構成される。このとき、少なくとも第1の基準画像51が提供される。過程S82において、第2のセットが収集され、
図3に示した画像41~44又は
図4に示した画像61~64のいずれかである。第2のセットを収集するこの過程は、過程S83を含み、過程S83において、第1の基準平面に沿って第2のセット中の第1の画像が収集され、つまり、基準セット中の第1の画像と同じ画像面に沿って第2の心拍中の第1の画像が収集される。過程S84において、第1の基準画像及び第2のセット中の第1の画像に基づいて、すなわち、画像61及び画像51又はこれら画像のサブセットに基づいて、第1のインプレイン変位が決定される。この第1のインプレイン変位に基づいて、第2のセット中の第1の画像と交差して収集されるべき第2のセット中の第2の画像に関し、シフトさせた平面の位置を決定することが可能である。これが過程S85であり、次の過程S86において、シフトさせた平面の位置に沿って第2の画像を収集し再構成することができる。2D画像の第1のセット中のすべての画像と2D画像の第2のセット中のすべての画像は、診断的に関連する画像である。
【0038】
最後に、上述した本発明は、適用分野の1つとして灌流ベースの画像に有用な、同じスライス位置で心臓の画像を生成する効果的な方法を提供する。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【外国語明細書】