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2023-180224ラップフィルム巻回体の包装容器、及びこれを用いたラップフィルム巻回体の包装物
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  • -ラップフィルム巻回体の包装容器、及びこれを用いたラップフィルム巻回体の包装物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180224
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ラップフィルム巻回体の包装容器、及びこれを用いたラップフィルム巻回体の包装物
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/34 20060101AFI20231213BHJP
   B65D 25/52 20060101ALI20231213BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B65D25/34 B
B65D25/52 E
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088067
(22)【出願日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2022092769
(32)【優先日】2022-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000177911
【氏名又は名称】山下印刷紙器株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】八十 康浩
(72)【発明者】
【氏名】礒田 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】山本 智司
(72)【発明者】
【氏名】舞 幹子
(72)【発明者】
【氏名】花田 朋広
【テーマコード(参考)】
3E062
4J038
【Fターム(参考)】
3E062AA01
3E062AB13
3E062AC05
3E062JA04
3E062JA08
3E062JB23
3E062JC01
3E062LA01
3E062LA13
3E062LA17
3E062LA25
3E062LA30
4J038CG001
4J038CJ031
4J038NA10
4J038PB02
4J038PC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ニス塗布層の耐摩耗性が高く、作製時の品質安定性に優れ、流通時や使用時にはラップフィルムの巻き戻り防止効果が高い、ラップフィルム巻回体の包装容器、及び包装物等を提供する。
【解決手段】ラップフィルムFのロール体であるラップフィルム巻回体Rを収容可能な包装容器1であって、ラップフィルム巻回体から引き出したラップフィルムを係止可能なニス塗布層40が設けられ、ニス塗布層が、下記要件(i)及び/又は(iii)を満たすことを特徴とする。
(i)JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて幅25mmのニス塗布層サンプル片及びラップフィルムを用いて測定したラップフィルム貼り付け直後の90度剥離強度Tiが0.04N/25mm未満。
(iii)水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づくニス塗布層の表面自由エネルギーの分散成分γsdが、30以上。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラップフィルムがロール状に巻き取られたラップフィルム巻回体を収容可能な、包装容器であって、
前板及び上部開口を有する包装容器本体と、前記上部開口を開閉自在に覆う蓋部とを備え、
前記包装容器本体の前記前板には、前記ラップフィルム巻回体から引き出した前記ラップフィルムを係止可能なニス塗布層が設けられており、
前記ニス塗布層が、下記要件(i)及び/又は下記要件(iii)を満たすことを特徴とする、
包装容器。
(要件i)
JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて幅25mmのニス塗布層サンプル片及びラップフィルムを用いて測定したラップフィルム貼り付け直後の90度剥離強度Tiが0.04N/25mm未満である。
(要件iii)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく前記ニス塗布層の表面自由エネルギーの分散成分γsdが、30以上である。
【請求項2】
前記ニス塗布層が、下記要件(ii)を満たすことを特徴とする
請求項1に記載の包装容器。
(要件ii)
JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて幅25mmのニス塗布層サンプル片及びラップフィルムを用いて測定した90度剥離強度において、ラップフィルム貼り付け直後の90度剥離強度Tiと、貼り付けから3日後の90度剥離強度T3dとが、[(T3d-Ti)/Ti]×100≧40を満たす。
【請求項3】
前記ニス塗布層が、前記要件(i)及び前記要件(iii)を満たすことを特徴とする
請求項1に記載の包装容器。
【請求項4】
前記ニス塗布層が、下記要件(iv)を満たすことを特徴とする
請求項1に記載の包装容器。
(要件iv)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく前記ニス塗布層の表面自由エネルギーの極性成分γshが、6以下である。
【請求項5】
前記ラップフィルムと前記ニス塗布層が、下記要件(v)を満たすことを特徴とする
請求項1に記載の包装容器。
(要件v)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく表面自由エネルギーにおいて、前記ニス塗布層の表面自由エネルギーの分散成分γsdと前記ラップフィルムの分散成分γsdとの比が0.65以上である。
【請求項6】
前記ラップフィルムと前記ニス塗布層が、下記要件(vi)を満たすことを特徴とする
請求項1に記載の包装容器。
(要件vi)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく表面自由エネルギーにおいて、前記ニス塗布層の表面自由エネルギーの極性成分γshと前記ラップフィルムの極性成分γshとの比が0.50以上である。
【請求項7】
切り線を含んでなるフラップをさらに備え、少なくとも前記フラップの前面に前記ニス塗布層が設けられていることを特徴とする
請求項1に記載の包装容器。
【請求項8】
前記ラップフィルムが、ポリ塩化ビニリデンフィルムであることを特徴とする
請求項1に記載の包装容器。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の包装容器と、
前記包装容器の前記包装容器本体内に収容されたラップフィルム巻回体と、
を備えることを特徴とする、
ラップフィルム巻回体の包装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラップフィルム巻回体の包装容器に関し、特に食品包装用のラップフィルムを巻回した筒状のラップフィルム巻回体を収納する包装容器、及びラップフィルム巻回体の包装物等に関する。
【背景技術】
【0002】
ラップフィルムは、通常、紙や樹脂製の芯体に巻回されて筒状のラップフィルム巻回体を構成し、その状態で直方体状の包装容器に収納される。従来、この種のラップフィルム用包装容器として、包装容器本体の前板にニスが塗布されており、ラップフィルム巻回体から引き出したラップフィルムを前板に十分に密着させ係止することで、ラップフィルム切断後にラップフィルム巻回体側にラップフィルムが巻き戻ってしまうことを防止する機構が採用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-034043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ニス塗布層に対するラップフィルムの密着強度が高すぎると、ラップフィルムを引き出す際にラップフィルムがニス塗布層から容易に剥がれず、無理な応力が生じてラップフィルムの縦裂けが発生し、さらには、ラップフィルムがそのままラップフィルム巻回体に巻き戻ってしまう場合がある。一方で、ニス塗布層に対するラップフィルムの密着強度が低すぎると、包装容器の蓋を開けた際の風圧等でラップフィルムが容易に舞い上がってしまい、ラップフィルムがそのままラップフィルム巻回体に巻き戻ってしまう場合がある。
【0005】
また、ラップフィルムへの密着強度が高いニス塗布層は、ラップフィルム以外の物質への密着強度も高い傾向にある。そのため、ラップフィルムへの密着強度が高いニス塗布層を採用すると、ニス塗布層が形成されている板紙から包装容器を作製する際に、工程内でゴムベルト等との摩擦による摩耗が発生し易く、この摩擦によるニス塗布層の摩耗によってラップフィルムへの密着強度の低下を誘発し、その結果、品質のばらつきを生じさせる要因になり得る。このような問題を回避して高品質な包装容器を安定的に製造するためには、ラップフィルムへの密着強度が低いニス塗布層を採用することが求められる。しかしながら、ラップフィルムへの密着強度が低いニス塗布層を単に採用すると、上述したとおり流通時や使用時にラップフィルムの縦裂けや巻き戻り等の不具合が生じ易くなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、ニス塗布層の耐摩耗性が高く、包装容器の作製時の品質安定性に優れ、かつ、流通時や使用時にはラップフィルムの巻き戻り防止効果が高い、ラップフィルム巻回体の包装容器、及びこれを用いたラップフィルム巻回体の包装物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、ラップフィルム巻回体を収容する包装容器において、ラップフィルムへの初期の密着強度が低く品質安定性を高めることができるとともに流通時や使用時にはラップフィルムの高い巻き戻り防止効果を発現可能な、新たな設計を見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
【0008】
[1]
ラップフィルムがロール状に巻き取られたラップフィルム巻回体を収容可能な、包装容器であって、
前板及び上部開口を有する包装容器本体と、前記上部開口を開閉自在に覆う蓋部とを備え、
前記包装容器本体の前記前板には、前記ラップフィルム巻回体から引き出した前記ラップフィルムを係止可能なニス塗布層が設けられており、
前記ニス塗布層が、下記要件(i)及び/又は下記要件(iii)を満たすことを特徴とする、
包装容器。
(要件i)
JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて幅25mmのニス塗布層サンプル片及びラップフィルムを用いて測定したラップフィルム貼り付け直後の90度剥離強度Tiが0.04N/25mm未満である。
(要件iii)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく前記ニス塗布層の表面自由エネルギーの分散成分γsdが、30以上である。
【0009】
[2]
前記ニス塗布層が、下記要件(ii)を満たすことを特徴とする
[1]に記載の包装容器。
(要件ii)
JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて幅25mmのニス塗布層サンプル片及びラップフィルムを用いて測定した90度剥離強度において、ラップフィルム貼り付け直後の90度剥離強度Tiと、貼り付けから3日後の90度剥離強度T3dとが、[(T3d-Ti)/Ti]×100≧40を満たす。
【0010】
[3]
前記ニス塗布層が、前記要件(i)及び前記要件(iii)を満たすことを特徴とする
[1]又は[2]に記載の包装容器。
【0011】
[4]
前記ニス塗布層が、下記要件(iv)を満たすことを特徴とする
[1]~[3]のいずれか一項に記載の包装容器。
(要件iv)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく前記ニス塗布層の表面自由エネルギーの極性成分γshが、6以下である。
【0012】
[5]
前記ラップフィルムと前記ニス塗布層が、下記要件(v)を満たすことを特徴とする
[1]~[4]のいずれか一項に記載の包装容器。
(要件v)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく表面自由エネルギーにおいて、前記ニス塗布層の表面自由エネルギーの分散成分γsdと前記ラップフィルムの分散成分γsdとの比が0.65以上である。
【0013】
[6]
前記ラップフィルムと前記ニス塗布層が、下記要件(vi)を満たすことを特徴とする
[1]~[5]のいずれか一項に記載の包装容器。
(要件vi)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく表面自由エネルギーにおいて、前記ニス塗布層の表面自由エネルギーの極性成分γshと前記ラップフィルムの極性成分γshとの比が0.50以上である。
【0014】
[7]
切り線を含んでなるフラップをさらに備え、少なくとも前記フラップの前面に前記ニス塗布層が設けられていることを特徴とする
[1]~[6]のいずれか一項に記載の包装容器。
【0015】
[8]
前記ラップフィルムが、ポリ塩化ビニリデンフィルムであることを特徴とする
[1]~[7]のいずれか一項に記載の包装容器。
【0016】
[9]
[1]~[8]のいずれか一項に記載の包装容器と、
前記包装容器の前記包装容器本体内に収容されたラップフィルム巻回体と、
を備えることを特徴とする
ラップフィルム巻回体の包装物。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ニス塗布層の耐摩耗性が高く、包装容器の作製時の品質安定性に優れ、かつ、流通時や使用時にはラップフィルムの巻き戻り防止効果が高い、ラップフィルム巻回体の包装容器、及びこれを用いたラップフィルム巻回体の包装物等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ラップフィルム用の包装容器1の外観を示す斜視図である。
図2】ラップフィルム用の包装容器1の展開図である。
図3】開封状態のラップフィルム用の包装容器1を示す斜視図である。
図4】開封する際のラップフィルム用の包装容器1を示す斜視図である。
図5】ニス塗布層40の形成個所を示す前板14の正面図である。
図6】フラップ50及び切り線51が設けられたラップフィルム用の包装容器1を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0020】
(1)ラップフィルム用の包装容器
図1はラップフィルム用の包装容器1の外観を示す斜視図であり、図2図1のラップフィルム用の包装容器1の表面側の展開図である。図3は蓋部を開けた状態のラップフィルム用の包装容器1を示す斜視図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、ラップフィルム用の包装容器1は、全体が直方体形状を有し、例えば掩蓋片10、蓋板11、脇掩蓋片12等からなる蓋部13と、前板14、底板15、後板16、側板17、折返し片18、上部開口19a等からなる上部開口した包装容器本体19と、開封片20とを有している。なお、折返し片18は、前板14の裏面(内面)側に折り返されるものであり、図1に示す外観には現れない。
【0022】
図3に示すように、包装容器本体19は、上部開口19aを有する直方体状に形成され、例えば透明のラップフィルムFが円筒状の芯体に巻かれたラップフィルム巻回体Rを上部開口19aから収納できる。ラップフィルムFは、例えば引裂強度が6cN以下のものであってもよい。
【0023】
図1に示すように蓋部13の蓋板11は、後板16の上端縁から前方に延びて包装容器本体19の上部開口19aを覆っている。掩蓋片10は、蓋板11の前端縁から前板14側に延びて前板14の前面を覆っている。
【0024】
なお、ラップフィルム用の包装容器1を構成する原紙としては、例えば、ボール紙、コートボール紙、段ボール等が挙げられるが、これらに限定されず、当業界で公知の紙類を適宜選択して用いることができる。原紙は、これらの素材に、エンボス加工、印刷加工、ポリエチレン等を用いたラミネート加工が施されたものであっても構わない。
【0025】
開封片20は、包装容器本体19の前板14の前面下部に位置し、ラップフィルム用の包装容器1の長手方向に沿って帯状に形成されている。開封片20は、掩蓋片10の先端縁に切り取り線21を介して接続されている。開封前において、開封片20の裏面側は図2に示す前板14の複数の接着部22に接着しており、これにより、包装容器本体19の上部開口19aは蓋部13によって覆われている。そして、図4に示すように、開封片20を切り取り線21に沿って切り取ることによって、蓋部13は包装容器本体19の上部開口19aに対して開閉自在となり、包装容器本体19が開封される。
【0026】
掩蓋片10の先端部の裏側には、図3及び図4に示すように包装容器本体19のラップフィルム巻回体Rから引き出されたラップフィルムFを切断する切断部としての鋸刃30が設けられている。鋸刃30は、ラップフィルム用の包装容器1(掩蓋片10)の長手方向の両側端に亘って形成されている。鋸刃30は、開封片20を切り取った時に、掩蓋片10の先端縁から下方に突出する位置に形成されている。なお、この鋸刃30等の切断部の材質は、金属、プラスチック、バルカナイズドファイバー等の、従来公知のものであれば特に制限はなく、また、切断部の形状も、直線状、V状、アーチ状、M字状等の、従来公知のものであれば特に制限はない。
【0027】
図2及び図3に示すように前板14の表面には、ラップフィルム巻回体Rから引き出されたラップフィルムFを仮留めするニス塗布層40が形成されている。ラップフィルム巻回体Rから引き出されたラップフィルムFは、掩蓋片10を介してニス塗布層40に押圧されることで、ニス塗布層40に仮留めされる。ニス塗布層40は、例えばUV硬化のニスにより形成され、弱い粘着性を有する。ニス塗布層40は、ラップフィルム用の包装容器1の長手方向に連続する細長形状に有している。
【0028】
好ましい一態様として、ニス塗布層40は、ラップフィルムFの幅Dより狭い中央領域に形成されている。例えば、図5に示すように、ニス塗布層40は、その長手方向の両側端40aがラップフィルムFの両側端F1に対応する位置から少なくとも10mm以上内側にあり、長手方向の長さがラップフィルムFの幅Dの1/4以上の長さである。また、好ましい一態様として、ニス塗布層40の側端40aとラップフィルムFの側端F1との距離Lは、10mm以上であってもよく、好ましくは15mm以上、さらに好ましくは18mm以上である。
【0029】
また、好ましい一態様として、ニス塗布層40は、蓋板11により包装容器本体19の上部開口19aを覆ったときの掩蓋片10の鋸刃30の切断位置(刃の根元)から包装容器本体19の上部開口19a側に10mm以上離れた位置に形成されている。よって、ニス塗布層40と鋸刃30の刃の根元との距離Eは、10mm以上であってもよく、好ましくは14mm以上、さらに好ましくは18mm以上である。また、ニス塗布層40の上下方向の幅Hも同様に、2mm以上であってもよく、10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましく、4mm程度がさらに好ましい。また、長手方向において前記範囲の中で幅Hを変更してもよい。
【0030】
掩蓋片10を介して押圧されたラップフィルムFは、前板14に配置されているニス塗布層40に貼り付いている。次の使用時には、ラップフィルムFをニス塗布層40から剥がし、所望長さをラップフィルム巻回体Rからさらに引き出し、蓋部13を閉めた状態で鋸刃30により切断することで、所定長さのラップフィルムFを得ることができる。
【0031】
本実施形態によれば、ニス塗布層40が、前板14の長手方向に沿って連続しラップフィルムFの幅Dより狭い細長形状を有し、ラップフィルムFの側端F1に対応する部分にニス塗布層40が形成されていない。よって、仮に輸送時等にラップの側端F1に傷ができていても、次に新しいラップフィルムFを引き出す際に、ニス塗布層40の接着力により傷を起点としてラップフィルムFが側端F1から裂けることを抑制できる。また、ニス塗布層40のラップフィルムFの巻き戻り防止の性能も維持できる。
【0032】
特に、ニス塗布層40が、その長手方向の両側端40aがラップフィルムFの両側端F1に対応する位置から少なくとも10mm以上内側にあり、長手方向の長さがラップフィルムFの幅Dの1/4以上の長さがあると、ラップフィルムFの側端F1からの裂けをより確実に抑制できる。
【0033】
さらに、蓋板11により包装容器本体19の上部開口19aを覆ったときに、掩蓋片10の鋸刃30の位置から包装容器本体19の上部開口19側に10mm以上離れた位置にニス塗布層40が形成されているので、切断後にラップフィルムFの先端部がニス塗布層40により仮留めされない。よって、新しいラップフィルムFを引き出す際に仮にラップフィルムFの先端に鋸刃30による傷があったとしても、ニス塗布層40の接着力により傷を起点にラップフィルムFが先端から裂けることを抑制できる。加えて、ラップフィルムFの先端部にニス塗布層40に仮留めされないつまみ代ができるので、ラップフィルムFのつまみやすさを向上できる。さらに、前板14の上端縁(図2に示す折り返し部14a)からニス塗布層40の上部開口側の端までの距離を1mm以上にすると、ラップフィルムFを引き出すときにラップフィルムFがニス塗布層40に接触して引き出し難くなることを抑制でき、より良好な引出性を維持できる。
【0034】
ニス塗布層40の上下方向の幅Hが、2mm以上、10mm以下であるので、ニス塗布層40の幅Hが適切になる。つまり、ニス塗布層40の幅Hが2mm以上であるので、切断後のラップフィルムFを十分に仮留めでき、ラップフィルムFの巻き戻りを抑制することができる。また、ニス塗布層40の幅Hが10mm以下であるので、ニス塗布層40からラップフィルムFを剥がす操作を短時間で行うことができ、ラップフィルムFを取り出す作業性を向上できる。
【0035】
特に、ラップフィルムFの引裂強度が6cN以下である場合には、ラップフィルムFが裂けやすい傾向にあるため、本実施形態の好ましい一態様のようにニス塗布層40の形成領域を所定の位置や範囲に定めてラップフィルムFの裂けを抑制するメリットは大きい。
【0036】
また、以上の実施形態において、図6に示すように前板14に前方に浮き上がるフラップ50を設けてもよい。フラップ50は、例えば前板14に切り線51を入れることにより形成され、折返し板18を前板14の裏面側に折り曲げる際に生じる応力を利用して前板14の前方へ浮き上がらせた状態に設置可能である。このような機構と本実施形態におけるニス塗布層40の併用により、ラップフィルムFをよりつまみやすくすることができる。
【0037】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0038】
(2)90度剥離強度
本実施形態におけるニス塗布層40は、下記の要件(i)及び/又は下記要件(iii)を満たす。
(要件i)
JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて幅25mmのニス塗布層サンプル片及びラップフィルムを用いて測定したラップフィルム貼り付け直後の90度剥離強度Tiが0.04N/25mm未満である。
(要件iii)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく前記ニス塗布層の表面自由エネルギーの分散成分γsdが、30以上である。
【0039】
ラップフィルム貼り付け直後の90度剥離強度Tiが上記の要件(i)を満たすことにより、引き出されたラップフィルムFのニス塗布層40への密着が過度とならず、ラップフィルムFの縦裂けによる巻き戻りを防ぐことができ、かつ、ラップフィルム用の包装容器1の作製時の摩擦による摩耗を抑制することもできる。好ましくは、90度剥離強度Tiは0.03N/25mm未満である。
【0040】
具体的には、ラップフィルム貼り付け直後の90度剥離強度Tiが0.04N/25mm未満であると、ニス塗布層40を前板14全体に形成したとしてもラップフィルムFのニス塗布層40に対する密着力を十分に小さく保つことができ、ラップフィルムFを引き出す際にニス塗布層40にラップフィルムFが強く密着することに起因する縦裂けや巻き戻りの発生を抑制することができる。なお、測定に使用するサンプルは市場での流通時の保管期間のばらつきを均すため、40℃で4週間加速試験を行ったサンプルで測定することが好ましい。
【0041】
ラップフィルム貼り付け直後の90度剥離強度Tiは、ニス塗布層40のUV照射量や乾燥速度等の成膜条件、ニス塗布層40の版深、ニス塗布層40のパターン、及びニス成分の調整等で調整することができる。
【0042】
なお、後述する実施例では、90度剥離強度試験において、測定サンプルとしてニス塗布層40の中央部分の所定の幅(後述する実施例では、25mm)を採取して用いているが、同一の測定サンプルが取得困難な場合は、代替方法を採ることができる。例えば、ニス塗布層40がニス塗布部とニス非塗布部とが交互に存在するような間欠模様であれば、複数のニス塗布部が形成するニス塗布パターン全体の輪郭を想定し、その輪郭線が取り囲む部分を測定サンプルとみなせばよい。また、ニス非塗布部がニス塗布部に囲まれている場合は、ニス塗布部が取り囲む部分を測定サンプルとみなせばよい。なお、測定領域の所定の幅(後述する実施例では、25mm)が得られない場合には、測定値に基づき、所定の幅とした場合の換算を行えばよい。通常、商品と使用される際はラップフィルムFが長時間ニス塗布層40に付着した状態でラップフィルム用の包装容器1の蓋部13が開けられるため、このときの風圧等でニス塗布層40からラップフィルムFが剥がれ易く、ラップフィルムFが長時間ニス塗布層40に付着した状態での剥離力が高いほど、商品として優れる巻き戻り防止性を有する傾向にある。
【0043】
また、本実施形態におけるニス塗布層40は、下記の要件(ii)を満たすことが好ましい。
(要件ii)
JIS Z-0237:2009「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて幅25mmのニス塗布層サンプル片及びラップフィルムを用いて測定した90度剥離強度において、ラップフィルム貼り付け直後の90度剥離強度Tiと、貼り付けから3日後の90度剥離強度T3dとが、[(T3d-Ti)/Ti]×100≧40(%)を満たす。
【0044】
上記の要件(ii)中の式は、ラップフィルムFの貼り付け直後の90度剥離強度Tiに対する貼り付けから3日後の90度剥離強度T3dの増加率が40%以上であることを表している。当該増加率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは100%以上であり、特に好ましくは200%以上である。
【0045】
本実施形態において、サンプル片とラップフィルムとの90度剥離強度は、ニス塗布層40に密着させたラップフィルムFを、ニス塗布層40に対して垂直に90度引っ張った際の剥離強度を意味しており、上述のJIS Z-0237:2009における90°引きはがし粘着力に相当する。なお、詳細な試験条件は、後述する実施例の通りである。
【0046】
通常、商品使用時にニス塗布層40に長時間ラップフィルムFが貼り付いた状態でラップフィルム用の包装容器1の蓋部13が開けられる。その際の風圧でラップフィルムFがニス塗布層40から剥離して巻き戻る現象が生じ得る。そのため、ニス塗布層40へのラップフィルムFの貼り付けから3日後の90度剥離強度T3dが高いほど、高い巻き戻り防止効果を期待することができる。一方で、ラップフィルムFの貼り付け直後の90度剥離強度Tiが低いほど、ラップフィルム用の包装容器1の作製時のニス塗布層40の摩擦による摩耗が低減されるため、高い品質安定性が期待される。したがって、[(T3d-Ti)/Ti]×100≧40の式を満たすとき、優れた品質安定性と高い巻き戻り防止効果を発現することが可能となり、従来にはない高性能高品質のラップフィルム用の包装容器1を得ることができる。なお、90度剥離強度Tiよりも高い90度剥離強度T3dが発現されるメカニズムは、十分に解明されてはいないが、例えばラップフィルムFとニス塗布層40の化学的相互作用が時間経過により安定化するためであると考えられる。なお、ラップフィルムFの貼り付けから3日後の90度剥離強度T3dは、0.03N/25mm以上が好ましく、より好ましくは0.04N/25mm以上、さらに好ましくは0.05N/25mm以上、特に好ましくは0.06N/25mm以上である。
【0047】
(3)Owens and Wendt法に基づく表面自由エネルギー
また、本実施形態におけるニス塗布層40は、上記の要件(i)に代えて、或いは上記の要件(i)と共に、下記の要件(iii)を満たすことが好ましい。
(要件iii)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく前記ニス塗布層の分散成分の表面自由エネルギーγsdが、30以上である。
【0048】
ニス塗布層40のOwens and Wendt法に基づく表面自由エネルギーにおける分散成分γsdが上記の要件(iii)を満たすことにより、ラップフィルムFとニス塗布層40の親和性が高められ、両者の瞬間的な接触面積を大きくすることができるため、巻き戻りの発生を抑制することができる。本実施形態におけるニス塗布層40のOwens and Wendt法に基づく表面自由エネルギーにおける分散成分γsdは、30以上が好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上、特に好ましくは37以上、最も好ましくは40以上である。この範囲にあると、ラップフィルムFの一部分がニス塗布層40の表面に接触した際、ニス塗布層40の表面に濡れ広がるごとくラップフィルムFがニス塗布層40に密着してフィルムが瞬間的にニス塗布層40の表面の多くの面積と接触する傾向が強くなる。従来であれば物理的な力でラップフィルムFをニス塗布層40の表面のより多くの面積に対して押し付けなければ、ニス塗布層40の巻き戻り防止効果を十分に得ることが難しかったが、このようにニス塗布層40の表面自由エネルギーの分散成分γsdを最適化することにより、高い巻き戻り防止効果を得ることが可能になる。したがって、上述したようにラップフィルム貼り付け直後の90度剥離強度Tiが従来よりも低くても、ラップフィルムFの巻き戻り防止効果が十分に発現する。
【0049】
ここで一般的に、物体表面には表面自由エネルギーが存在し、当該表面自由エネルギーは、各種理論式に基づいて分散成分項と極性成分項に分けて説明することができる。そして、例えば固体表面に液体を滴下した際、この分散成分項と極性成分項の値と割合が大きく異なる場合には、固体表面上に液体は濡れ広がらずに球形に近い形態をとる。反対に、分散成分項と極性成分項の値と割合が近い場合には、固体表面上に液体が濡れ広がり、小さい接触角となることが知られている。そのため、固体同士の表面接触にあたり、ラップフィルムFの分散成分項と極性成分項に近いニス塗布層40を形成することで、ニス塗布層40表面にラップフィルムFを瞬間的に濡れ広がるがごとく密着させることができる。このようにニス塗布層40の分散成分項と極性成分項を最適化することで、ラップフィルムFのニス塗布層40への瞬間的な密着を生じさせ、従来技術よりも低い90度剥離強度Tiであっても、ニス塗布層40による巻き戻り防止効果を十分に得ることができる。さらに、ユーザーが蓋部13をしっかり押さえずにラップフィルムFを切断する際にも、ラップフィルムFが瞬間的に濡れ広がることでニス塗布層40との広い密着面を確保できるため、従来技術よりも低い90度剥離強度Tiであっても、ニス塗布層40による巻き戻り防止効果を十分に得ることができる。
【0050】
Owens and Wendt法では、表面自由エネルギーγが、分散成分γdと、水素結合及び双極子・双極子相互作用に基づく極性成分γhとからなるとし、表面自由エネルギーγを下記一般式1で表している。なお、固体表面の表面エネルギーをγs、固体の分散成分をγsd、固体の極性成分をγshとすると、固体表面の表面エネルギーをγsは下記一般式2で表すことができる。また、液体表面の表面エネルギーをγl、液体の分散成分をγld、液体の極性成分をγlhとすると、液体表面の表面エネルギーをγlは、下記一般式3で表すことができる。
γ = γd + γh ・・・(1)
γs= γsd+ γsh ・・・(2)
γl= γld+ γlh ・・・(3)
【0051】
また、接触角をθとしたとき、一般式(2)及び一般式(3)より、下記一般式(4)が成り立つ。
【数1】
【0052】
したがって、γl項が既知の液体である、水及びジヨードメタンの2種類の液体を用いてそれぞれのニス塗布層40の表面に対する接触角θを測定して求めれば、上述した表面自由エネルギーの分散成分γsdと極性成分γshに関する連立方程式を解くことができる。なお、本式の詳細については(D.Owens,R.Wendt,J.Appl.Polym.Sci,13,1741(1969))を参考にすることができる。
【0053】
このようにしてニス塗布層40の表面自由エネルギーの分散成分γsdと極性成分γshとを算出することができる。
【0054】
ここで、接触角θの測定は、ペンダントドロップ法を用いて行うことができ、表面張力及び界面張力の測定は液適法を用いて行うことができる。いずれも、協和界面科学株式会社製動的接触角計DM501を用いて測定することができる。
【0055】
また、本実施形態におけるニス塗布層40は、下記の要件(iv)を満たすことがより好ましい。
(要件iv)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく前記ニス塗布層の表面自由エネルギーの極性成分γshが、6以下である。
【0056】
本実施形態におけるニス塗布層40のOwens and Wendt法に基づく表面自由エネルギーにおける極性成分γshは、6以下が好ましく、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下、特に好ましくは3以上、最も好ましくは2以下である。この範囲にあると、ラップフィルムFの一部分がニス塗布層40の表面に接触した際、ニス塗布層40の表面に濡れ広がるごとくラップフィルムFがニス塗布層40に密着してフィルムが瞬間的にニス塗布層40の表面の多くの面積と接触する傾向がより強くなる。従来であれば物理的な力でラップフィルムFをニス塗布層40の表面のより多くの面積に対して押し付けなければ、ニス塗布層40の巻き戻り防止効果を十分に得ることが難しかったが、このようにニス塗布層40の表面自由エネルギーの極性成分γshを最適化することにより、より高い巻き戻り防止効果を得ることが可能になる。したがって、上述したようにラップフィルム貼り付け直後の90度剥離強度Tiが従来よりも低くても、ラップフィルムFの巻き戻り防止効果がより十分に発現する。
【0057】
また、ラップフィルムFの表面自由エネルギーについても、ニス塗布層40と同様に、Owens and Wendt法に基づく表面自由エネルギーの分散成分γsdと水素結合と双極子・双極子相互作用に基づく極性成分γshとを、水とジヨードメタンを用いて測定することができる。
【0058】
ここで、本実施形態におけるニス塗布層40とラップフィルムFとは、下記の要件(v)を満たすことがさらに好ましい。
(要件v)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく表面自由エネルギーにおいて、前記ニス塗布層の表面自由エネルギーの分散成分γsdと前記ラップフィルムの分散成分γsdとの比が0.65以上である。
【0059】
すなわち、ニス塗布層40の分散成分γsdとラップフィルムFの分散成分γsdとの比を求めた際に(ここで求める比は、1.00より小さな小数、すなわち純小数とする。)、0.65以上であることが好ましく、より好ましくは0.70以上、さらに好ましくは0.75以上、特に好ましくは0.80以上である。ニス塗布層40とラップフィルムFの分散成分の比が1.00に近いほど、ニス塗布層40に対するラップフィルムFの濡れ広がりが良好になり、巻き戻り防止性を著しく向上させることが可能となる。なお、ニス塗布層40とラップフィルムFの分散成分の比が小さくなると90度剥離強度Tiが高くなる場合もあり得るが、この好適態様では、先にも述べたとおり、初期の90度剥離強度Tiが比較的に低いため、引き出されたラップフィルムFのニス塗布層40への密着が過度とならず、ラップフィルムFの縦裂けによる巻き戻りを防ぐことができ、かつ、ラップフィルム用の包装容器1の作製時の摩擦による摩耗を抑制することもできる。
【0060】
また、本実施形態におけるニス塗布層40とラップフィルムFとは、下記の要件(vi)を満たすことがさらに好ましい。
(要件vi)
水とジヨードメタンの接触角から求めたOwens and Wendt法に基づく表面自由エネルギーにおいて、前記ニス塗布層の表面自由エネルギーの極性成分γshと前記ラップフィルムの極性成分γshとの比が0.50以上である。
【0061】
すなわち、ニス塗布層40の極性成分γshとラップフィルムFの極性成分γshとの比を求めた際に(ここで求める比は、1.00より小さな小数、すなわち純小数とする。)、0.50以上であることが好ましく、より好ましくは0.55以上、さらに好ましくは0.60以上、特に好ましくは0.65以上である。ニス塗布層40とラップフィルムFの極性成分の比が1.00に近いほど、ニス塗布層40に対するラップフィルムFの濡れ広がりが良好になり、巻き戻り防止性を著しく向上させることが可能となる。なお、ニス塗布層40とラップフィルムFの極性成分の比が小さくなると90度剥離強度Tiが高くなる場合もあり得るが、この好適態様では、先にも述べたとおり、初期の90度剥離強度Tiが比較的に低いため、引き出されたラップフィルムFのニス塗布層40への密着が過度とならず、ラップフィルムFの縦裂けによる巻き戻りを防ぐことができ、かつ、ラップフィルム用の包装容器1の作製時の摩擦による摩耗を抑制することもできる。
【0062】
(6)ニス
ニス塗布層40を構成するニスとしては、特に限定されないが、紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂組成物が好ましく用いられる。紫外線硬化性樹脂組成物は、この種の用途において各種のものが知られており、それらを特に制限なく用いることができる。ニス塗布層40の耐摩耗性やラップフィルムFへの密着強度等の観点から、以下の各成分を含有する紫外線硬化性樹脂組成物がより好ましい。
・アミン基含有スチレン(メタ)アクリル樹脂
・植物油変性(メタ)アクリレート
・(メタ)アクリレート化合物
・光重合開始剤
・脂肪酸エステル
・その他成分
【0063】
・アミン基含有スチレン(メタ)アクリル樹脂
アミン基含有スチレン(メタ)アクリル樹脂としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
【0064】
アミン基含有スチレン(メタ)アクリル樹脂の具体例としては、市販製品として、例えば、荒川化学工業社製のビームセット271(固形分50%(アクリレート化合物希釈)、同ビームセット267F、(固形分40%(アクリレート化合物希釈)、同ビームセット255(固形分50%(アクリレート化合物希釈))等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で使用してもよく、また2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0065】
アミン基含有スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、ニスの総質量に対して合計で10~30質量%が好ましく、15~25質量%がより好ましい。
【0066】
・植物油変性(メタ)アクリレート
植物油変性(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、エポキシ化植物油変性アクリレートが好ましい。
【0067】
前記エポキシ化植物油変性アクリレートの具体例としては、PHOTOMER3005(IGM Resins B.V.社製)、EB860、EB5848(ダイセル・オルネクス(株)社製)、MIRAMER PE3130(MIWON社製)、LAROMER EA9101(BASF社製)、CN111(SARTOMER社製)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で使用してもよく、また2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0068】
植物油変性(メタ)アクリレートの含有割合は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、ニスの総質量に対して合計で5~20質量%が好ましく、7~15質量%がより好ましい。
【0069】
・(メタ)アクリレート化合物
(メタ)アクリレート化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。なお、前記した植物油変性(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリレート化合物の1種であるが、本明細書においては、植物油変性(メタ)アクリレート化合物として扱い、(メタ)アクリレート化合物には含まないものとする。また、以降において、「PO」は「プロピレンオキサイド」を、「EO」は「エチレンオキサイド」を表す。
【0070】
(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、EO変性(2)ノニルフェノールアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1、3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン等の単官能(メタ)アクリレート化合物;
1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(300)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性(2)1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート化合物;
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート化合物;
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能(メタ)アクリレート化合物;
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能(メタ)アクリレート化合物;
等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で使用してもよく、また2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。なお、官能基数としては、2官能以上を含むことが好ましい。なお、「n官能(メタ)アクリレート化合物」とは、(メタ)アクリロイル基をn個有する(メタ)アクリレート化合物を意味する。
【0071】
また、(メタ)アクリレート化合物として、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等も用いることができる。
【0072】
ウレタンアクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類とを反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの等がある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
【0073】
ポリエステルアクリレートは、例えば、多塩基酸及び多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリカルボン酸と、水酸基含有(メタ)アクリレート等とを反応させて得ることができる。
【0074】
エポキシアクリレートは、例えばエポキシ樹脂のグリシジル基を(メタ)アクリル酸でエステル化して、官能基を(メタ)アクリレート基としたものが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物等がある。
【0075】
上記(メタ)アクリレート化合物は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0076】
上記(メタ)アクリレート化合物の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、ニスの総質量に対して合計で45~75質量%が好ましく、50~70質量%がより好ましい。
【0077】
・光重合開始剤
光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
【0078】
光重合開始剤の具体例としては、水素引き抜き型光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、p-クロルベンゾフェノン、テトラクロロベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチルージフェニルサルファイド、2-イソプロピルチオシサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、アセトフェノン・アリールケトン系開始剤、4,4'-ビス(ジエチルアニノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p-ジメチルアミノアセトフェノン・ジアルキルアミノアリールケトン系開始剤、チオキサントン、キサントン系・そのハロゲン置換・多環カルボニル系開始剤等が挙げられる。また、開裂型光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α-アクリルベンゾイル・ベンゾイン系、ベンジル、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、ベンジルメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニルー2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、4-(2-アクロイルーオキシエトキシ)フェニル-2-ヒドロキシ-2-プロピルケトン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルアシルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられるが、これらに特に限定されない。光重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0079】
光重合開始剤の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、ニスの総質量に対して合計で5~15質量%が好ましい。
【0080】
なお、上述したニスは、硬化性をより良好なものにするために光重合開始助剤を含有していてもよい。光重合開始助剤の具体例としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、脂肪族アミン、4,4''-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジブチルエタノールアミン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で使用してもよく、また2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0081】
ニスの総質量に対す光重合開始助剤の含有割合は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、ニスの総質量に対して合計で0.1~5質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。
【0082】
・脂肪酸エステル
脂肪酸エステルとしては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
【0083】
脂肪酸エステルの具体例としては、ラウリン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で使用してもよく、また2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0084】
脂肪酸エステルの含有割合は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、ニスの総質量に対して合計で0.5~3.0質量%が好ましく、0.8~2.8質量%がより好ましい。
【0085】
・その他成分
上述したニスは、必要に応じて本発明の効果が低下しない範囲で、上記各成分以外に、各種公知の添加剤、例えばレベリング剤、抗菌剤、帯電防止剤、界面活性剤、消泡剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ワックス、スリップ剤等を含有していてもよい。
【0086】
(7)紫外線硬化方法
紫外線照射により紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させる方法としては、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンイオンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、ヘリウムネオンレーザ、クリプトンイオンレーザ、各種半導体レーザ、YAGレーザ、発光ダイオード、CRT光源、プラズマ光源、電子線、γ線、ArFエキシマーレーザ、KrFエキシマーレーザ、F2レーザ等の各種光源によるエネルギーの付与により、紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。また、紫外線硬化型樹脂組成物を塗工する際の膜厚(硬化後の膜厚)は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、一般的には0.1~100μmであり、好ましくは0.5~80μmであり、より好ましくは1~60μmであり、さらに好ましくは2~50μmであり、より好ましくは3~40μmであり、特に好ましくは4~30μmであり、殊に好ましくは5~20μmであり、最も好ましくは6~10μmである。これらの膜厚範囲であれば、硬化阻害がなく、紫外線の照射時間が短縮でき、生産性が良好であり、かつコスト的にも優れ、ラップフィルム用の包装容器1に紙を用いる場合は、紙表面の凹凸を吸収して平滑なニス表面を作ることができ、より、ラップフィルムFとの密着が良好になる。
【0087】
(8)ニスの塗布方法
ニスの塗布方法としては、例えばロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等の公知手段を適宜採用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
(9)ラップフィルム
ラップフィルムFとしては、例えば、ポリ塩化ビニリデン系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポチエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリメチルペンテン系フィルム、ポリエステル系フィルム、及びエチレン酢酸ビニル共重合体系フィルム等が挙げられるが、これらに特に限定されない。ニス塗布層40の耐摩耗性やラップフィルムFへの密着強度等の観点から、特にポリ塩化ビニリデン系樹脂のラップフィルムに適用する場合に、本発明の効果が顕著に発現される傾向にある。なお、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を用いる場合、特に限定されないが、上述した好ましい表面自由エネルギーの関係を実現する観点から、塩化ビニリデンの含有量が例えば72mol%~93mol%であるものが好ましい。
【0089】
また、ラップフィルムFは、特に制限されないが、必要に応じて各種添加剤を含有してもよい。前記添加剤は、特に制限されず、例えば、エポキシ化植物油等の公知の安定剤、及びクエン酸エステル、二塩基酸エステル、セチル化脂肪酸グリセライド等の公知の可塑剤等が挙げられる。エポキシ化植物油としては、特に限定されないが、一般的に、食用油脂をエポキシ化して製造されるものが挙げられる。具体的には、例えば、エポキシ化大豆油(ESO)、エポキシ化アマニ油が挙げられる。また、クエン酸エステルは、特に限定されないが、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、アセチルクエン酸トリ-n-(2-エチルヘキシル)等が挙げられる。二塩基酸エステルとしては、特に限定されないが、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジn-ヘキシル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸エステル系;アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、アゼライン酸オクチル等のアゼライン酸エステル系;セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等のセバシン酸エステル系等が挙げられる。アセチル化脂肪酸グリセライドとしては、特に限定されないが、グリセリンジアセチルモノラウレート等が挙げられる。
【0090】
ラップフィルムFは、前記エポキシ化植物油、クエン酸エステル、二塩基酸エステル及びアセチル化脂肪酸グリセライド以外の配合物(以下、「その他の配合物」という。)、例えば可塑剤、安定剤、耐候性向上剤、染料又は顔料等の着色剤、防曇剤、抗菌剤、滑剤、核剤、ポリエステル等のオリゴマー、MBS(メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体)等のポリマー等を含有してもよい。
【0091】
前記可塑剤としては、特に限定されないが、具体的には、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、グリセリン、グリセリンエステル、ワックス、流動パラフィン、及びリン酸エステル等が挙げられる。
【0092】
前記安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、2,5-t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4'-チオビス-(6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)ブロピオネート、及び4,4'-チオビス-(6-t-ブチルフェノール)等の酸化防止剤;ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、オレイン酸塩、リシノール酸塩、2-エチル-ヘキシル酸塩、イソデカン酸塩、ネオデカン酸塩、及び安息香酸カルシウム等の熱安定剤が挙げられる。
【0093】
前記耐候性向上剤としては、特に限定されないが、具体的には、エチレン-2-シアノ-3,3'-ジフェニルアクリレート、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾリトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、及び2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0094】
前記染料又は顔料等の着色剤としては、特に限定されないが、具体的には、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、及びベンガラ等が挙げられる。
【0095】
前記防曇剤としては、特に限定されないが、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0096】
前記抗菌剤としては、特に限定されないが、具体的には、銀系無機抗菌剤等が挙げられる。
【0097】
前記滑剤としては、特に限定されないが、具体的には、エチレンビスステロアミド、ブチルステアレート、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル等の脂肪酸炭化水素系滑剤、高級脂肪酸滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、及び脂肪酸エステル滑剤等が挙げられる。
【0098】
前記核剤としては、特に限定されないが、具体的には、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。
【0099】
前記その他の配合物の含有量は、特に限定されないが、ラップフィルムFに対して5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。
【実施例0100】
以下、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0101】
実施例及び比較例における測定方法及び評価方法は、下記の通りである。
1.ニス塗布層サンプルの作成
坪量550g/m2のコートボール(板紙)を材料とし、図2に示す、長手方向約310mm幅のラップフィルム収納用台紙に、表1に記載のUV硬化ニスを塗布し、175W/cmのUVランプを2灯照射して硬化させてニス塗布層を作製した後、ラップフィルム収納用台紙に刃付けをして、サックマシンによるラップフィルム収納用台紙の組み立てを行い、ニス塗布層を有する、ラップフィルム用の包装容器を作製した。
【0102】
2.評価方法
(a)90度剥離強度用試験片の作成
ニス塗布層の幅25mmのサンプル片の選定は、切り取ったときにニス塗布層が存在する領域から選ぶことが可能である。ニス塗布層が間欠しており測定領域の幅25mmが得られない場合には、測定値について比例計算を行い、25mm換算を行う。最後に、サンプル片の裏面(ニスを塗布した面の裏面)に両面テープを貼り付ける。1個の包装容器から幅25mmのサンプル片がニス塗布層の長辺方向に沿って複数個得られる場合には、複数個サンプリングしてもよい。なお、試験片は作成後、流通での保管期間のばらつきを少なくするため、ラップフィルムとニス塗布層を40±2℃、10±10%RHで4週間状態調整を行ったのち、90度剥離強度測定を行った。なお、ニス塗布層の状態調整はサックマシンで組み立てを行った化粧箱のまま実施した。すなわち、状態調整中にニス塗布層にホコリ等の付着物が付かないように、開封片20が付いた状態で状態調整を行い、状態調整後に切り取り線21に沿って開封片20を切り取り、ニス塗布層の評価を行う。
【0103】
(b)90度剥離試験用のフィルム片の作成
前記(a)にて40±2℃、10±10%RHで4週間状態調整を行ったラップフィルム(旭化成ホームプロダクツ社製、商品名:サランラップ)を幅25mm、長さ100mmの大きさに切り出した。このとき、長さ方向をフィルム引き出し方向に一致させた。長さ方向の一端側につかみ代として全面粘着面である付箋(3M社製 商品名:ポスト・イット(幅25mm、長さ15mm))を貼り付けた。このとき、粘着付箋の幅方向とラップフィルム片の幅方向を一致させて貼り付けた。なお、室内環境は、23±2℃、50±10%RHの条件とした。
【0104】
(c)ニス塗布層のサンプル片とラップフィルム片の圧着
前記(a)にて40±2℃、10±10%RHで4週間状態調整を行ったニス塗布層が上に向くようにニス塗布層のサンプル片を鉄板の上に置く。このとき、前記両面テープを鉄板に貼り付ける。次にラップフィルム片の長さ方向の端のうち、紙テープを貼り付けた端とは反対側の端部分をニス塗布層に被せる。このとき、ラップフィルム片の幅25mmとニス塗布層のサンプル片の幅25mmとが一致する方向で被せる。この結果、サンプル片Aの全面がラップフィルム片で被せられる。なお、ニス塗布層のサンプル片に密着するラップフィルム片の面は、ラップフィルム下側(巻き芯方向を向く面)とする。そして、JIS Z-0237:2009に記載の2kgのローラー圧着装置を用いて、ローラーをラップフィルム片の幅方向に10±0.5mm/sの速度で合計2往復転がし、ラップフィルム片とニス塗布層とを圧着させ、測定用圧着品を作製した。
【0105】
(d)90度剥離強度Tiの測定
ニス塗布層のサンプル片を貼着した面の法線が上方向を向くように、鉄板を台に固定し、測定用圧着品Aのラップフィルム片の紙テープ側を、鉄板よりも上方にあるオートグラフ(島津製作所社製、型番AG-IS 5KN MS型(耐ヨーク仕様))のロードセル接続の治具で保持し、300mm/分の引っ張り速度で、90度剥離試験を行う。測定値は最大値とする。n=5で測定を行い、算術平均値を測定値とした。なお、測定は23±2℃、50±10%RHの恒温室内で実施した。なお、ロードセル接続の治具で保持する方法としては、一般的な引張試験機用のパンタグラフ式つかみ具でつかむ方法、平面形つかみ具でつかむ方法のほか、ロードセルにボルトを取り付け、ボルトの下部面に両面テープで貼りつける方法等があり、ロードセルにて適切に剥離強度を測定できる方法であればいずれの方法で行っても問題ないが、つかみ具が振れる等してノイズの影響が大きく出る場合は、ユニバーサルジョイントを介さず、ボルトを直接ロードセルに取り付けて、その下部面に両面テープを貼りつけて、そこにラップフィルム片の紙テープ側を貼りつけて測定することが好ましい。
【0106】
(e)接触角測定
前記(a)にて40±2℃、10±10%RHで4週間状態調整を行ったラップフィルム(旭化成ホームプロダクツ社製、商品名:サランラップ)、及び、前記(a)にて40±2℃、10±10%RHで4週間状態調整を行ったニス塗布層に対して、協和界面科学株式会社製動的接触角計DMo-501を用いて、2μmの精製水(トラスコ社製、品番:W-20)、及び、2μmのジヨードメタン(東京化成工業株式会社製、純度98.0%以上)をそれぞれニス塗布層及びラップフィルムに滴下して2秒経過後の接触角を、解析ソフトウェア(FAMAS)を用いて自動計測によるθ/2法で求め、任意の10か所で接触角を測定し、その算術平均値を測定値とした。また、測定は23±2℃、50±10%RHの恒温室内で実施し、液滴の作製はメーカー純正の耐熱ガラス製注射筒とステンレス製針を用いた。なお、ニス塗布層の選定については、作製する液滴が完全にニス塗布層上に形成される場所から選ぶ必要がある。例えばニス塗布層がドット模様等2μmの液滴が完全にニス塗布層上に形成されない場合は滴下量を少なくして形成される液滴サイズを小さくしてもよい。また、ラップフィルムはニス塗布層に接触する側を選定する。なお、静電気による液滴への影響を除くため、ラップフィルム、及び、ニス塗布層に対して測定前に理研精工株式会社製のマスコット除電器にて除電を行った。そして、測定した水とジヨードメタンの接触角測定結果より、各表面自由エネルギーの分散成分γsdと極性成分γshを求めた。なお、ラップフィルムの分散成分γsdは47、極性成分γshは3であった。
【0107】
(f)巻き戻り評価
前記(a)にてラップフィルム用の包装容器にラップフィルム(旭化成ホームプロダクツ社製、商品名:サランラップ)を収納して40±2℃、10±10%RHで4週間状態調整を行った後、15±2℃、70±5%RHの恒温室内で測定用サンプルを2時間状態調整行った。その後、同環境下で、ラップフィルムを約40cm引き出し、鋸刃で切断後、蓋を開けた直後に、家庭用ドライヤー(株式会社日立製作所製 HD-N1240、600W)を用い、ラップフィルムのカット端面にラップが剥離する方向に送風する動作を20回(約8m分)実施したときの、ニス塗布層とラップフィルムとの密着状態を確認した。評価は次のように行った。〇の数を試行数20で割り、巻き戻り率(%)を算出した。なお、巻き戻り評価はn=30で行い、算術平均値を測定値とした。
〇:10秒以上剥がれない
×:10秒以内に剥がれた
【0108】
(g)外観評価
ニス塗布層の傷発生の有無を目視にて確認した。なお、目視にて確認し難い場合は、拡大鏡観察、実態顕微鏡観察、デジタルマイクロスコープ観察、レーザ顕微鏡観察等の既知の表面形態観察手法を用いて傷の有無を確認してもよい。
【0109】
(実施例1~2、比較例1)
表1に、UV硬化ニスの配合組成を示す。
また、表2に、90度剥離試験、表面自由エネルギー、巻き戻り評価、外観評価の結果を示す。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
表2から明らかなとおり、本発明のニス塗布層を有するラップフィルム用の包装容器は、ニス塗布層の耐摩耗性が高く、包装容器の作製時の品質安定性に優れ、かつ、流通時や使用時にはラップフィルムの優れた巻き戻り防止効果を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、ラップフィルム用の包装容器において、ラップフィルムの巻き戻りを抑制する際に有用である。
【符号の説明】
【0114】
1 ラップフィルム用の包装容器
10 掩蓋片
11 蓋板
12 脇掩蓋片
13 蓋部
14 前板
14a 前板折り返し部
15 底板
16 後板
17 側板
18 折返し片
19 包装容器本体
19a 上部開口
20 開封片
21 切り取り線
22 接着部
30 鋸刃
40 ニス塗布層
40a 側端
50 フラップ
51 切り線
R ラップフィルム巻回体
F ラップフィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6