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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180255
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】毛髪染色用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20231213BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20231213BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/87
A61K8/891
A61K8/88
A61Q5/06
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023094914
(22)【出願日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2022-0069623
(32)【優先日】2022-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0056323
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン-ウク・チョ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC062
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC542
4C083AC692
4C083AD071
4C083AD091
4C083AD131
4C083AD132
4C083AD151
4C083BB21
4C083BB34
4C083CC32
4C083CC33
4C083CC36
4C083CC38
4C083DD06
4C083DD31
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】本発明は、塩基性染料または直接染料の安定性を確保しながらも、これと同時に塩基性染料または直接染料の付着性を向上させた毛髪用組成物に関する。本発明の毛髪用組成物は、アレルギー及び刺激の原因となる酸化染毛剤を含まなくても、塩基性染料または直接染毛剤だけでも優れた染毛力及び色相保持力を提供することができ、陽イオンポリマーをさらに処方することにより、優れた発色力及び色相保持力を示すことができる。
【解決手段】本発明の一つの観点は、発色力及び色相保持力の向上のために、塩基性染料(basic dye)及び直接染料(direct dye)よりなる群から選ばれる1以上の染料及び陽イオンポリマーを含む毛髪用組成物を提供することである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性染料(basic dye)及び直接染料(direct dye)よりなる群から選ばれる1種以上の染料及び陽イオンポリマーを含む、毛髪用組成物。
【請求項2】
前記陽イオンポリマーは、ポリウレタン,アクリル系ポリマー、シリコーン(silicones)、ポリアミド、ポリエーテルポリウレタン及びポリクオタニウム よりなる群から選ばれる1種以上のものである、請求項1に記載の毛髪用組成物。
【請求項3】
前記陽イオンポリマーは、ポリウレタン-10を含むものである、請求項1に記載の毛髪用組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の毛髪用組成物を含む、毛髪製剤。
【請求項5】
前記毛髪製剤は、シャンプー、コンディショナー、トリートメント、毛髪染色用製剤、ヘアアンプル、ヘアトナー及びヘア固定剤の製品から選ばれるものである、請求項4に記載の毛髪製剤。
【請求項6】
毛髪製剤は、毛髪染色用製剤であるものである、請求項4に記載の毛髪製剤。
【請求項7】
前記毛髪染色用製剤は、
(i)塩基性染料(basic dye)及び直接染料(direct dye)よりなる群から選ばれる1種以上を含む第1剤及び(ii)アルカリ剤またはアルカリ性還元剤を含む第2剤を含み、
前記第1剤と第2剤は、分離されて含まれており、
前記第1剤と第2剤は、使用直前に混合したり、塗り重ねたりして用いられ、
前記第1剤と第2剤を混合したり塗り重ねたりしたときのpHが8~14であり、
前記第1剤、第2剤、または第1剤及び第2剤に陽イオンポリマーを含む、請求項6に記載の毛髪染色用製剤。
【請求項8】
前記第1剤は、塩基性染料と直接染料を両方とも含む、請求項7に記載の毛髪染色用製剤。
【請求項9】
前記毛髪染色用製剤は、酸化染毛剤を実質的に含まない(ここで、前記実質的に含まないということは、酸化染毛剤の含量が製剤成分の総含量に対して1重量%以下であることを意味する)、請求項7に記載の毛髪染色用製剤。
【請求項10】
前記毛髪染色用製剤は、酸化剤を実質的に含まない(ここで、前記実質的に含まないということは、酸化剤の含量が製剤成分の総含量に対して1重量%以下であることを意味する)、請求項7に記載の毛髪染色用製剤。
【請求項11】
前記第1剤のpHは、4~9である、請求項7に記載の毛髪染色用製剤。
【請求項12】
前記第1剤のpHは、4~7.5である、請求項7に記載の毛髪染色用製剤。
【請求項13】
前記アルカリ剤は、アミン化合物及び/又は無機化合物である、請求項7に記載の毛髪染色用製剤。
【請求項14】
前記毛髪染色用製剤を用いて毛髪を染色した後に、色相測定用色差計Hunter LabのLabSacnXEを用いて測定した、染色前後の毛髪の色差値(ΔE)が25以上である、請求項7に記載の毛髪染色用製剤。
【請求項15】
前記毛髪染色用製剤を用いて毛髪を染色した後に、染色された毛髪にシャンプー洗浄を5回行った後、色相測定用色差計HunterLab社製のLabSacnXEを用いて測定した、シャンプー前及びシャンプー5回後の毛髪の色差値(ΔE)が6以下である、請求項7に記載の毛髪染色用製剤。
【請求項16】
前記陽イオンポリマーは、全体の毛髪染色用製剤の総重量に対して0.1~5重量%にて含まれる、請求項7に記載の毛髪染色用製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用組成物に関する。より詳細に、本発明は、刺激性のある酸化染料の代わりに、塩基性染料または直接染料を含み、発色力及び色相保持力がより一層向上した毛髪染色用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に用いられる、毛髪を染色する染色薬は、p-フェニレンジアミンもしくはこの誘導体、アミノフェノール系が主として用いられる酸化染毛剤に代表され得る。酸化染毛剤を用いる染毛剤は、酸化染料から構成された第1剤と、酸化染料の酸化縮合反応を通じた発色及び毛髪の脱色のための酸化剤が含まれている第2剤と、から構成され、酸化剤としては、主として過酸化水素水が用いられる。酸化染料を含む染毛剤は、染毛後の色相の保持能が抜群であり、多彩なカラーを実現するのに長所がある
【0003】
しかしながら、酸化染毛剤に用いられる酸化染料は、通常の染料とは異なり、酸化染料と過酸化水素水との酸化縮合反応を通じて色相を発現するため、アレルギー、刺激の原因物質であると言われており、第2剤に含まれている過酸化水素水もまた強い刺激性の物質である。したがって、酸化染を用いる相当数の人々が使用中もしくは使用後に皮膚刺激、吹き出物、発疹、膨れ上がり、呼吸障害などの様々な症状を訴えたりもする。
【0004】
一方、このようなアレルギー、刺激の懸念が顕著に少ない毛髪染毛用染料として、直接染料(Direct dye)、塩基性染料(Basic dye、Cationic dye)を毛髪染色用製品に用いている。これらの染料を適用した製品は、ほとんどが酸化剤を用いない製品であって、赤色、青色、黄色などのファッション用製品に主として用いており、使用前に脱色剤を用いて毛髪を明るく脱色してから用いる製品である。これに対し、白髪カバー用製品として用いたとき、染毛効果が著しく低いため、満足のいく効果が得られ難いという問題がある。
【0005】
理由としては、染料前駆体(中間体)とカプラー(調色剤)が毛髪の中に深く浸透して縮合を通じて発色する酸化染料に比べて相対的に分子量が多い塩基性染料は、キューティクルのある正常毛髪の内部に浸透し難く、陰イオンを帯びている毛髪の表面に陽イオン性質をもった塩基性染料が付着する形態で染毛を行うことになるが、表面に付着する度合いに限界があり、使用後に洗浄のためにシャンプーを用いるとなると、シャンプーに含まれている陰イオン界面活性剤を介して毛髪に付着した塩基性染料が脱落し易い虞があるため、白髪カバー用製品に優れた効果が得られ難い。直接染料もまた、毛髪の内部に浸透可能であるものの、相対的に毛髪の深くに浸透して固定され難く、シャンプーによる洗浄によって脱落し易いという問題がある。
【0006】
これを解決すべく、アルカリ性還元剤を含むベースカラー染料液のpHを7.5~9に調整して染料の浸透能を高めた後、カテキン水溶液を塗布して遠赤外線を照射する技術が開発されたが、これは、貯蔵安定性が低く、染色過程が複雑であるため、実際に製品化させるのには限界があるという問題がある。
【0007】
この明細書の全般にわたって複数の文献が参照され、その引用が表示されている。引用された文献の開示の内容は、その全体としてこの明細書に参照として取り込まれて本発明が属する技術分野のレベル及び本発明の内容がより一層明確に説明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2016-0085702号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10-2013-0033291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アレルギー及び刺激の原因となる酸化染毛剤を含まず、塩基性染料及び/又は直接染料だけでも優れた染毛力及び色相保持力を提供することのできる毛髪用組成物を提供するところにある。
【0010】
本発明の他の目的は、塩基性染料及び/又は直接染料を含む毛髪染色用組成物において、陽イオンポリマーをさらに処方して染毛力及び色相保持力がより一層向上した毛髪染色用組成物及び製剤を提供するところにある。
【0011】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によりなお一層明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの観点は、発色力及び色相保持力の向上のために、塩基性染料(basic dye)及び直接染料(direct dye)よりなる群から選ばれる1以上の染料及び陽イオンポリマーを含む毛髪用組成物を提供することである。
【0013】
本発明は、塩基性染料または直接染料を含む毛髪用組成物に陽イオンポリマーをさらに処方して、従来の欠点である発色力及び色相保持力をより一層改善することができるという知見に基づいて完成されたものである。
【0014】
一態様において、前記陽イオンポリマーは、アクリル系ポリマー、シリコーン(silicones)、ポリアミド、ポリエーテルポリウレタン、ポリクオタニウム(Polyquaternium)及びポリウレタンよりなる群から選ばれる1種以上であり得る。
【0015】
好ましい態様において、前記陽イオンポリマーは、リンカーの長い陽イオンポリマー、例えば、ポリウレタン-10(Polyurethane-10)であり得る。前記リンカーとは、ポリマー主鎖と陽イオン性官能基とをつなぐ鎖を意味するが、通常、毛髪に用いられる陽イオンポリマーはリンカーが短いため、嵩高い染料が毛髪に付着していると、毛髪と結合し難いという問題があり得る。これに対し、本発明の毛髪用組成物は、リンカーの長い陽イオンポリマーを含むので、染料と毛髪に同時に結合することができる。したがって、顕著に優れた発色力及び色相保持力を示せることが予想され、上記の理論に制限されるものではない。本発明において予想されるリンカーの長い陽イオンポリマーの作用原理は、図1に示されている。
【0016】
本発明の組成物おいて、リンカーの長い陽イオンポリマーは、染色効果を強化させることができ、毛髪コーティングを通じて染色効果をより一層長持ちさせることができる。好ましくは、陽イオンポリマーとしてポリウレタン-10が使用可能である。ポリウレタン-10を用いる場合、長いリンカーを介して染料と毛髪に同時に働くので、アクリル系ポリマー、シリコーン(silicones)、ポリアミド、ポリエーテルポリウレタン及び/又はポリクオタニウムなどといったように、他の陽イオンポリマーを用いる場合よりもより一層優れた効果、例えば、さらに優れた発色力及び色相保持力を示すことができる。前記ポリウレタン-10としては、商用化されて販売中の原料が使用可能である。
【0017】
本発明の他の観点は、前記毛髪用組成物を含む毛髪製剤を提供することである。
【0018】
前記毛髪製剤は、シャンプー、コンディショナー、トリートメント、毛髪染色用製剤、ヘアアンプル、ヘアトナー及びヘア固定剤の製品から選ばれ得、好ましくは、毛髪染色用製剤であり得る。
【0019】
一態様において、前記毛髪染色用製剤は、1剤形からなり得、2剤形以上の剤形からなり得る。好ましくは2剤形であり得、さらに好ましくは、アルカリ剤と分離されて保管、流通及び/又は販売され得る。アルカリ剤との分離保管により原料の分解を抑えて染色力の増大効果をより一層増大させることができる。
【0020】
一態様において、前記毛髪染色用製剤は、(i)塩基性染料(basic dye)及び直接染料(direct dye)よりなる群から選ばれる1以上を含む第1剤及び(ii)アルカリ剤またはアルカリ性還元剤を含む第2剤を含み、前記第1剤と第2剤は、分離されて含まれており、前記第1剤と第2剤は、使用直前に混合したり塗り重ねたりして用いられ、前記第1剤と第2剤を混合したり塗り重ねたりしたときのpHが8~14、pHが8~12、pHが11±1、またはpHが11±0.5であり得、前記第1剤、第2剤、または第1剤及び第2剤に陽イオンポリマーを含み得る。
【0021】
一態様において、前記陽イオン性ポリマーは、毛髪染色用製剤成分の総含量に対して、0.01~20重量%含まれ得、好ましくは0.1~15重量%含まれ得、さらに好ましくは0.1~5重量%含まれ得る。前記含量の範囲内で陽イオン性ポリマーが含まれると、染色力の増大及び/又は色相保持の効果がより一層促進される。
【0022】
本発明者らは、既存の塩基性染料または直接染料を含む染毛剤の場合、良好な染色効果を示せない原因が、染料の毛髪への付着力に劣っているか、あるいは、染料とアルカリ剤とが混合された形態で一緒に含まれていることにあるということを究明し、この問題を解決できるように本発明の製剤を構成するに至った。
【0023】
本発明に用いられる前記塩基性染料(basic dyeまたはcationic dye)は、分子内にアミノ基、または置換アミノ基を有し、水溶液中で陽イオンになる染料であり、従来より塩基性染料として知られているものが、特に制限なしに使用可能である。塩基性染料は、水溶液中で陽イオンになるため、毛髪の表面のケラチンタンパク質のマイナス部分とイオン結合することにより染着する。その具体例としては、例えば、ベージックブルー7(C.I.42595)、ベージックブルー16(C.I.12210)、ベージックブルー22(C.I.61512)、ベージックブルー26(C.I.44045)、ベージックブルー99(C.I.56059)、ベージックブルー117、ベージックバイオレット10(C.I.45170)、ベージックバイオレット14(C.I.42515)、ベージックブラウン16(C.I.12250)、ベージックブラウン17(C.I.12251)、ベージックレッド2(C.I.50240)、ベージックレッド12(C.I.48070)、ベージックレッド22(C.I.11055)、ベージックレッド51、ベージックレッド76(C.I.12245)、ベージックレッド118(C.I.12251:1)、ベージックオレンジ31、ベージックイエロー28(C.I.48054)、ベージックイエロー57(C.I.12719)、ベージックイエロー87、ベージックブラック2(C.I.11825)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、もしくは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、これらに何ら限定されるものではなく、一般に、塩基性染料として広く知られている染料がいずれも使用可能である。
【0024】
本発明者らが究明したところによれば、塩基性染料または直接染料は、中性に近いほど(pH 4~9、さらに好ましくはpH 4~7.5)安定しており、この範囲よりもpHが低ければ、または、高ければ、保管中に染料が分解されて元の色とは異なる色を示したり色を失ったりしてしまう。したがって、塩基性染料または直接染料は、アルカリまたはアルカリ性還元剤を含む第2剤と分離して含めなければならず、使用前に染色効果を強化させるために、アルカリ剤またはアルカリ性還元剤を含む第2剤と混合したり、順次に毛髪に塗布したりすることが好ましい。
【0025】
本発明の第2剤に含まれるアルカリ剤としては、一般に、化粧品に広く用いられるアルカリ剤がいずれも使用可能であり、特に制限なしに使用可能である。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アンモニア、炭酸アンモニウム、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、トロメタミンなどが使用可能であり、1種以上混合して使用可能である。これらの他にも、チオグリコレート類、無機系スルフィット類などのアルカリ性還元剤もまた、特別な限定なしに用いても類似の効果が得られる。
【0026】
好ましい態様において、前記第2剤に含まれるアルカリ剤は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アンモニア、炭酸アンモニウム、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、トロメタミンなどのアミン化合物であり得るが、この場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機系アルカリ剤を含む場合よりもさらに優れた染色性能を有することができる。
【0027】
本発明の前記第1剤は、塩基性染料の代わりに、直接染料(direct dye)が使用可能である。なお、第1剤は、塩基性染料と直接染料を両方とも含み得る。
【0028】
前記直接染料は、HC染料とも呼ばれるが、これは、公知の「HC」を接頭辞として有する染料であり、分子径が小さい染料であるため、毛髪の内部に浸透して水素結合や分子間引力によって染着する。その具体例としては、例えば、HCブルーNo.2、HCブルーNo.8、HCオレンジNo.1、HCオレンジNo.2、HCレッドNo.1、HCレッドNo.3、HCレッドNo.7、HCレッドNo.8、HCレッドNo.10、HCレッドNo.11、HCレッドNo.13、HCレッドNo.16、HCバイオレットNo.2、HCイエローNo.2、HCイエローNo.5、HCイエローNo.6、HCイエローNo.7、HCイエローNo.9、HCイエローNo.12などが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、これらに何ら限定されるものではなく、一般に、直接染料として広く知られている染料がいずれも使用可能である。
【0029】
本発明の毛髪染色用製剤は、前記第1剤及び第2剤のどちらにも酸化染毛剤及び/又は酸化剤を実質的に含まないことがある。
【0030】
ここで、語句「実質的に含まない」は、当該成分が完全に欠如するか、あるいは、効果が当該成分が完全に欠如した場合と同一であり得る程度に当該成分をほとんど含有しないことであり得る。換言すれば、成分または要素を「実質的に含まない」製剤は、この測定可能な効果がない限り、このような項目を依然として実際的に含有し得る。語句「実質的に含まない」は、特に断りのない限り、製剤成分の総含量に対して1重量%以下、0.5重量%以下または0.3重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、0.05重量%以下または0.03重量%以下を意味し、さらに好ましくは0.01重量%以下を意味する。
【0031】
前記酸化染毛剤とは、通常、酸化されて発色する1種以上の酸化染料前駆体を含むという概念であるが、酸化染料前駆体としては、パラフェニレンジアミン、パラトルイレンジアミン、2-クロロ-パラフェニレンジアミン、2,3-ジメチル-パラフェニレンジアミン、2,6-ジメチル-パラフェニレンジアミン、2,6-ジエチル-パラフェニレンジアミン、2,5-ジメチル-パラフェニレンジアミン、N,N-ジメチル-パラフェニレンジアミン、N,N-ジエチル-パラフェニレンジアミン、N,N-ジプロピル-パラフェニレンジアミン、4-アミノ-N,N-ジエチル-3-メチルアニリン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、4-アミノ-N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-3-メチルアニリン、4-アミノ-3-クロロ-N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-アニリン、2-β-ヒドロキシエチル-パラフェニレンジアミン、2-フルオロ-パラフェニレンジアミン、2-イソプロピル-パラフェニレンジアミン、N-(β-ヒドロキシプロピル)-パラフェニレンジアミン、2-ヒドロキシメチル-パラフェニレンジアミン、N,N-ジメチル-3-メチル-パラフェニレンジアミン、N-(β-、γ-ジヒドロキシプロピル)-パラフェニレンジアミン、N-(4'-アミノフェニル)-パラフェニレンジアミン、N-フェニル-パラフェニレンジアミン、2-β-ヒドロキシエチルオキシ-パラフェニレンジアミンなどのパラフェニレンジアミン系の染料やこれらの酸塩、パラアミノフェノール、4-アミノ-3-メチルフェノール、4-アミノ-3-フルオロフェノール、4-アミノ-3-ヒドロキシメチルフェノール、4-アミノ-2-メチルフェノール、4-アミノ-2-ヒドロキシメチルフェノール、4-アミノ-2-メトキシメチルフェノール、4-アミノ-2-アミノメチルフェノール、4-アミノ-2-(β-ヒドロキシエチルアミノメチル)フェノール、4-アミノ-2-フルオロフェノールなどのパラアミノフェノール系の染料やこれらの酸塩、2-アミノフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、2-アミノ-6-メチルフェノール、5-アセトアミド-2-アミノフェノールなどのo-アミノフェノール(オルトアミノフェノール)系の染料やこれらの酸塩などが挙げられ、その他のヘテロ環を含む染料である2,5-ジアミノピリジンなどのピリジン誘導体、2,4,5,6-テトラアミノピリミジン、4-ヒドロキシ-2,5,6-トリアミノピリミジンなどのピリミジン誘導体、4,5-ジアミノ-1-メチルピラゾール、3,4-ジアミノピラゾール、4,5-ジアミノ-1-(4'-クロロベンジル)ピラゾールなどのピラゾール誘導体などが挙げられる。前記酸化染料前駆体を酸化させる酸化剤としては、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属ブロメート、ペルボラート及びペルサルフェートなどが挙げられる。
【0032】
本発明の好ましい態様において、本発明の前記第1剤は、中性pHであり、第2剤は、アルカリpHを有することを特徴とする。
【0033】
前述したように、本発明においては、相対的に安全であると言われている塩基性染料及び/又は直接染料の毛髪への付着効果を強化させるために、塩基性染料と直接染料が1種以上混合されたり単独で含まれたりした第1剤とアルカリ剤が含まれている第2剤とから構成しているが、色々な種類の塩基性染料及び直接染料の場合、中性pH領域において染料の安定性が確保可能である。ここで、中性pHとは、pH 4~pH 9、好ましくは、pH 4~7.5を意味し、塩基性染料及び直接染料の場合、相対的に高いかもしくは低いpH(pH 9超え、pH 4未満)においては、加水分解などの理由で染料の長期安定性が確保され難いという欠点がある。
【0034】
また、塩基性染料は、低いpH(例えば、pH 2~4未満)において過酸化水素水と一緒に保管されれば、過酸化水素の酸化反応によって分解されてしまうという問題がある。なお、塩基性染料や直接染料の場合、pHが低くなれば低くなるほど、水における溶解性が低下するため、長期経時において染料が析出される可能性がある。
【0035】
第2剤のアルカリpHは、pH 7超えを意味し、第1剤及び第2剤を混合した後のpHが少なくとも7、好ましくは、混合した後のpHが8~14、pHが8~12、pHが11±1、またはpHが11±0.5になり得る程度のアルカリ性を有することを意味する。
【0036】
このように、混合液のpHをアルカリ条件にする場合、塩基性染料及び/又は直接染料の染色効果を格段に改善することができるという長所がある。アルカリ条件になると、陽イオン染料が毛髪の表面に強いイオン結合をもって付着するという効果があり、アルカリ条件下で毛髪の表面のキューティクルが軟化し、スウェリングして毛髪の内部に直接染料や塩基性染料が浸透し易くなって、染色の効果が著しく増大されるという効果があり、染色した色相の保持にも有効である。
【0037】
具体的に、水溶液上で陽イオン性質を有する塩基性染料は、陰イオン性質を有する毛髪の表面と結合をしたり、内部に浸透をしたりするが、塩基性染料は、分子量が大きいため、容易に浸透したり、多量が毛髪に付着したりし難い。本発明者らは、アルカリ条件下で染色をすれば、毛髪の表面と塩基性染料との結合力が上がり、アルカリ成分により毛髪のキューティクルが膨潤して塩基性染料が内部にさらに浸透し易く、表面にも結合可能な面積が大きくなって、染色効果が増大されるということを究明した。次いで、弱酸性であるシャンプーを用いると、毛髪の表面のキューティクルが整えられて内部に入り込んだ塩基性染料が脱落し難くなる。
【0038】
本発明の毛髪染色用製剤は、発色及び染毛後の色相の保持能が既存の市販用製品よりも遥かに優れている。現在市販中の塩基性染料が適用された製品は、一般に、色差値(ΔE)が25よりも低く、シャンプー1~2回ほどでほとんどの染色された塩基性染料が毛髪から脱落する。
【0039】
これに対し、本発明の毛髪染色用製剤を用いて毛髪を染色した後に、色相測定用色差計としてHunterLab社製のLabSacn(登録商標) XEを用いて測定した、染色前後の毛髪の色差値(ΔE)は、25以上であることを特徴とする。毛髪の色差値(ΔE)が25以上である範囲は、色差値が、例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50以上である範囲を網羅する意味である。さらに好ましくは、本発明の製剤を用いて染色の前/後に測定した色差値(ΔE)は、30~50であり得る。
【0040】
また、本発明の毛髪染色用製剤を用いて毛髪を染色した後に、染色された毛髪にシャンプー洗浄を1回行った後、色相測定用色差計HunterLab社製のLabSacn(登録商標) XEを用いて測定した、シャンプー前及び後の毛髪の色差値(ΔE)は、3以下、好ましくは、2以下、1以下、0.5以下、または0.1以下であり得る。
【0041】
本発明の毛髪染色用製剤を用いて毛髪を染色した後に、染色された毛髪にシャンプー洗浄を3回行った後、色相測定用色差計HunterLab社製のLabSacn(登録商標) XEを用いて測定した、シャンプー前及びシャンプー3回後の毛髪の色差値(ΔE)は、5以下、好ましくは、4以下、3以下、2以下、1以下、0.5以下、または0.1以下であり得る。
【0042】
本発明の毛髪染色用製剤を用いて毛髪を染色した後に、染色された毛髪にシャンプー洗浄を5回行った後、色相測定用色差計HunterLab社製のLabSacn(登録商標) XEを用いて測定した、シャンプー前及びシャンプー5回後の毛髪の色差値(ΔE)が、6以下、例えば、5、4、3、2または1以下であり得る。
【0043】
色差値は、CIE 1976 L*a*b*の色空間(カラースペース)において色調タブが示すL*、a*、b*の座標値を測定し、下記の算出公式によって計算することができる。
【0044】
【数1】
【0045】
本発明の毛髪染色用製剤は、第1剤及び第2剤を毛髪に用いる直前に混合して用いる方式により使用され得、第1剤を先に毛髪に塗布し、第2剤を塗り重ねる方式、または第2剤を先に毛髪に塗布し、第1剤を塗り重ねる方式により使用され得る。このように、染料が含まれている第1剤を先に毛髪に塗布し、アルカリ剤が含まれている第2剤を塗り重ねたり、順番を逆にしたりしても、使用の際にpH条件がアルカリであるため、染色効果は、混合使用と略同様に優れていることを示す。
【発明の効果】
【0046】
本発明の毛髪用組成物は、アレルギー及び刺激の原因となる酸化染毛剤を含まなくても、塩基性染料または直接染毛剤だけでも優れた染毛力及び色相保持力を提供することができ、陽イオンポリマーをさらに処方することにより、優れた発色力及び色相保持力を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】リンカーの長い陽イオンポリマーが染料及び毛髪に同時に働く原理を示す模式図である。
図2】陽イオンポリマーの添加に伴う染色効果を評価した結果を示すものである。
図3】陽イオンポリマーの添加に伴う色相保持効果を評価した結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明をさらに詳しく説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例により何ら制限されないということは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0049】
実施例
この実施例に用いられた物質及び試薬は、化粧品原料の製造社及び商業用供給業者から購入して使用し、実施例に表記された含量は、重量%に基づくものである。
【0050】
1.陽イオンポリマーの添加に伴う染色効果及び色相保持効果
陽イオンポリマーを添加しなかった比較組成物1と陽イオンポリマー(ポリクオタニウム-6またはポリウレタン-10)を添加した染毛剤組成物をそれぞれ組成物X及び組成物Yとして、陽イオンポリマーの添加に伴う染色効果を評価した。具体的に、下記のようにして製造した。
【0051】
(1)比較組成物1
第1剤:セテアリルアルコールをメインとするクリーム剤に、染料成分であるベージックブラウン16、ベージックブルー99、HCブルー16を、総量をクリーム剤の1%にするように混合して投入し、ベンジルアルコール、グリセリンを総量の5%以下にして製造した。
【0052】
第2剤:セテアリルアルコールをメインとするクリーム剤であって、第1剤と1:1にて混合したときにpH 11になるようにアルカリ剤であるエタノールアミンの含量を調整して投入して製造した。
【0053】
(2)組成物X
第1剤:セテアリルアルコールをメインとするクリーム剤に、染料成分であるベージックブラウン16、ベージックブルー99、HCブルー16を、総量をクリーム剤の1%にするように混合して投入し、ベンジルアルコール、グリセリンを総量の5%以下に、陽イオンポリマー(ポリクオタニウム-6)を5%以下に含めて製造した。
【0054】
第2剤:セテアリルアルコールをメインとするクリーム剤であって、第1剤と1:1にて混合したときにpH 11になるようにアルカリ剤であるエタノールアミンの含量を調整して投入して製造した。
【0055】
(3)組成物Y
第1剤:セテアリルアルコールをメインとするクリーム剤に、染料成分であるベージックブラウン16、ベージックブルー99、HCブルー16を、総量をクリーム剤の1%にするように混合して投入し、ベンジルアルコール、グリセリンを総量の5%以下に、陽イオンポリマー(ポリウレタン-10)を5%以下に含めて製造した。
【0056】
第2剤:セテアリルアルコールをメインとするクリーム剤であって、第1剤と1:1にて混合したときにpH 11になるようにアルカリ剤であるエタノールアミンの含量を調整して投入して製造した。
【0057】
前記製造した比較組成物1と組成物X及びYに対して、下記の評価方法に従って染色効果及び色相保持効果を測定し、その結果をそれぞれ図2及び図3に示した。
【0058】
-染色条件:実験用の白毛の毛束(トレス)(人毛、Shanghai Canyu Trading Co.,Ltd.)に染色の直前に前記第1剤、第2剤を同量混合して塗布し、30℃の温度及び60%の湿度の条件下で30分間放置し、流れる微温水にて洗い流した後、完全に乾燥させた。
【0059】
-染色効果:HunterLab社製のAgera(登録商標)分光光度計を用いて、染色前後の色相の変化をdEを基準として測定した(色相の変化が大きければ大きいほど、染色効果に優れていることを意味する)。
【0060】
-色相保持効果:染色後の色相保持効果を比較するために、シャンプー洗浄前を基準としてシャンプー洗浄の回数に応じた色相の変化を測定した(色相の変化が小さければ小さいほど、色相保持効果に優れていることを意味する)。本出願人のチャーミンググリーンシャワーシャンプーを用いて、毛束(トレス)にシャンプーを毛束(トレス)の約1/10g塗布した後、毛髪のこすりマッサージを1分間行った。その後、微温水(約30℃)にてシャンプーを完全に洗い流し、毛髪を完全に乾燥させた後、色相の変化を測定した。
【0061】
ポリクオタニウム-6またはポリウレタン-10は両方とも略同じ機能を行うことができるが、陽イオンポリマーとしてポリクオタニウム-6を添加した組成物Xの染色効果(図2)及び色相保持効果(図3)は、陽イオンポリマーを添加しなかった比較組成物1と有意な差を示さなかった。これに対し、陽イオンポリマーとしてポリウレタン-10を添加した組成物Yの場合、比較組成物1及び組成物Xよりもさらに優れた染色効果を示しており(図2)、特に、比較組成物1及び組成物Xと比べて格段に優れた色相保持効果を発揮することが確認された(図3)。
図1
図2
図3
【外国語明細書】