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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180262
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】組成物および物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
C08L83/06
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091037
(22)【出願日】2022-06-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100206324
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知弘
(72)【発明者】
【氏名】サフラネシン,アメネ
(72)【発明者】
【氏名】クズネトソフ,ヴォロディミル
(72)【発明者】
【氏名】バチャ,ルボシュ
(72)【発明者】
【氏名】ガムスイェガー,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナー,ハンネス
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP062
4J002CP181
4J002FD142
4J002GN00
4J002GP00
4J002GP02
(57)【要約】
【課題】本開示は、着氷防止性能および透明性を両立可能な膜を形成しうる組成物を提供すること、好ましくは、さらに耐候性にも優れた膜を形成しうる組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の組成物は、有機シラン化合物(A)を含み、
前記有機シラン化合物(A)は、
フルオロポリエーテル基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(A1)と、エポキシ環および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)との反応物(A3)を含み、
前記フルオロポリエーテル基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(A1)と、前記エポキシ基および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)とは異なる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機シラン化合物(A)を含み、
前記有機シラン化合物(A)は、
フルオロポリエーテル基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(A1)と、エポキシ環および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)との反応物(A3)を含み、
前記フルオロポリエーテル基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(A1)と、前記エポキシ基および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)とは異なる、組成物。
【請求項2】
前記有機シラン化合物(A)は、エポキシ基および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フルオロポリエーテル基を有するシラン化合物(A1)は、式(1)または(2):
【化1】
[式中:
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-であり;
F2は、-Rf -R-O-であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1であり;
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
式(1)または式(2)のそれぞれにおいて、少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記フルオロポリエーテル基を有するシラン化合物(A1)は、式(1b)または式(2b):
【化2】
[式中:
はフルオロポリエーテル基を含む一価の有機基であり;
1’はフルオロポリエーテル基を含む二価の有機基であり;
前記フルオロポリエーテル基は、各出現においてそれぞれ独立して、
式:-(OC12m31-(OC10m32-(OCm33-(OC10 m34-(OCm35-(OCFm36
[式中、m31、m32、m33、m34、m35及びm36は、独立に、0又は1以上の整数であり;
10は、独立にH、F又はClであり;
各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基であり;
は、独立に、含シラン反応性架橋基であり;
は、独立に、一価の基であり;
式(1b)または式(2b)のそれぞれにおいて、XおよびXの少なくとも1つは、水酸基または加水分解基が結合したSi原子を含む1価の基である。]
で表される化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記フルオロポリエーテル基を有するシラン化合物(A1)に由来する単位の含有率は、前記有機シラン化合物(A)中、0.1質量%以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記エポキシ基および加水分解性シリル基を含有するシリコーン化合物(A2)は、式(3):
【化3】
[式中:
Mは、(Rs1 SiO1/2)で表される1価の基であり;
Dは、(Rs1 SiO2/2)で表される2価の基であり;
Tは、(Rs1SiO3/2)で表される3価の基であり;
Qは、(SiO4/2)で表される4価の基であり;
s1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、加水分解性基、-Xs1-NRs2 、-Xs1-COOH、エポキシ環を有する基、1価の有機基または-Xs1-SiRs3 n11s4 3-n11であり;
s2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-20アルキル基であり;
s3は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり;
s4は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-20アルキル基であり;
s1は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基であり;
n11は、1~3の整数であり;
a1は、3~60の整数であり;
b1は、10~1,100の整数であり;
c1は、0~30の整数であり;
d1は、0~15の整数であり;
c1+d1は、1以上であり;
ただし、少なくとも1つのRs1がエポキシ環を含み、少なくとも1つの別のRs1が水酸基または加水分解性基である。]
で表される化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
架橋剤(B)をさらに含み、前記架橋剤(B)は、エポキシ基および加水分解性シリル基の少なくとも一方と反応しうる基を2以上有する化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋剤(B)において、エポキシ基および加水分解性シリル基の少なくとも一方と反応しうる基は、-ORb5、カルボキシ基、-NRb5 および-SiRb6 n6b7 3-n6からなる群より選ばれる少なくとも1種(ただし、Rb5は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-20アルキル基であり;Rb6は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり;Rb7は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-20アルキル基であり;n6は1~3の整数である)である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記架橋剤(B)は、前記有機シラン化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
触媒(C)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
主剤(I)および硬化剤(II)を含む2成分形硬化性組成物であり、
前記主剤(I)が前記有機シラン化合物(A)をを含み、
前記硬化剤(II)が架橋剤(B)を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
基材と、
前記基材上に設けられ、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物から形成される膜と、を備える、物品。
【請求項13】
前記膜の対水接触角が100°以上である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記膜のヘイズが1以下である、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
以下の方法により評価される前記膜の着氷性指標が650kPa以下である、請求項12に記載の物品。
[着氷性指標の評価方法]
ステンレス基板上に前記膜を形成し、前記膜上に、内底面積110mmの底のないセルを、前記膜と前記セルの底部とが接触するように配置する。次いで、セル内に水0.5mLを入れ、水を膜とを接触させ、前記ステンレス基板を-32℃に冷却してセル内の水を凍結させる。前記セルに、膜表面と並行な方向に荷重を加え、前記セルを10mm/分の速度で移動させ、氷が動き始めた時の荷重を、着氷性指標とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティングや成形体に用いられる有機シラン化合物として、エポキシ基を有する有機シラン化合物が知られている。
【0003】
特許文献1には、含フッ素アミド化合物、含フッ素オルガノ水素シロキサン及び一分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、触媒量の白金族元素と、一分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基とをそれぞれ一個以上有するオルガノシロキサンとを含む硬化性組成物が記載されている。
【0004】
特許文献2には、エポキシ基含有環状オルガノシロキサンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-95615号公報
【特許文献2】特開2016-204288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2記載のような有機シラン化合物をコーティングに用いた場合、着氷防止性能や透明性が十分とはいえない場合があり得ることを見出した。
【0007】
本開示における課題は、着氷防止性能および透明性を両立可能な膜を形成しうる組成物を提供することにあり、好ましくは、さらに耐候性にも優れた膜を形成しうる組成物を提供することにある。また、本開示における別の課題は、かかる組成物を用いた物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の態様を含む。
[1]
有機シラン化合物(A)を含み、
前記有機シラン化合物(A)は、
フルオロポリエーテル基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(A1)と、エポキシ環および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)との反応物(A3)を含み、
前記フルオロポリエーテル基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(A1)と、前記エポキシ基および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)とは異なる、組成物。
[2]
前記有機シラン化合物(A)は、エポキシ基および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)をさらに含む、[1]に記載の組成物。
[3]
前記フルオロポリエーテル基を有するシラン化合物(A1)は、式(1)または(2):
【0009】
【化1】
[式中:
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-であり;
F2は、-Rf -R-O-であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1であり;
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
式(1)または式(2)のそれぞれにおいて、少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される少なくとも1種の化合物を含む、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]
前記フルオロポリエーテル基を有するシラン化合物(A1)は、式(1b)または式(2b):
【0010】
【化2】
[式中:
はフルオロポリエーテル基を含む一価の有機基であり;
1’はフルオロポリエーテル基を含む二価の有機基であり;
前記フルオロポリエーテル基は、各出現においてそれぞれ独立して、
式:-(OC12m31-(OC10m32-(OCm33-(OC10 m34-(OCm35-(OCFm36
[式中、m31、m32、m33、m34、m35及びm36は、独立に、0又は1以上の整数であり;
10は、独立にH、F又はClであり;
各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基であり;
は、独立に、含シラン反応性架橋基であり;
は、独立に、一価の基であり;
式(1b)または式(2b)のそれぞれにおいて、XおよびXの少なくとも1つは、水酸基または加水分解基が結合したSi原子を含む1価の基である。]
で表される化合物を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の組成物。
[5]
前記フルオロポリエーテル基を有するシラン化合物(A1)に由来する単位の含有率は、前記有機シラン化合物(A)中、0.1質量%以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の組成物。
[6]
前記エポキシ基および加水分解性シリル基を含有するシリコーン化合物(A2)は、式(3):
【0011】
【化3】
[式中:
Mは、(Rs1 SiO1/2)で表される1価の基であり;
Dは、(Rs1 SiO2/2)で表される2価の基であり;
Tは、(Rs1SiO3/2)で表される3価の基であり;
Qは、(SiO4/2)で表される4価の基であり;
s1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、加水分解性基、-Xs1-NRs2 、-Xs1-COOH、エポキシ環を有する基、1価の有機基または-Xs1-SiRs3 n11s4 3-n11であり;
s2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-20アルキル基であり;
s3は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり;
s4は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-20アルキル基であり;
s1は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基であり;
n11は、1~3の整数であり;
a1は、3~60の整数であり;
b1は、10~1,100の整数であり;
c1は、0~30の整数であり;
d1は、0~15の整数であり;
c1+d1は、1以上であり;
ただし、少なくとも1つのRs1がエポキシ環を含み、少なくとも1つの別のRs1が水酸基または加水分解性基である。]
で表される化合物を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の組成物。
[7]
架橋剤(B)をさらに含み、前記架橋剤(B)は、エポキシ基および加水分解性シリル基の少なくとも一方と反応しうる基を2以上有する化合物を含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載の組成物。
[8]
前記架橋剤(B)において、エポキシ基および加水分解性シリル基の少なくとも一方と反応しうる基は、-ORb5、カルボキシ基、-NRb5 および-SiRb6 n6b7 3-n6からなる群より選ばれる少なくとも1種(ただし、Rb5は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-20アルキル基であり;Rb6は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり;Rb7は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-20アルキル基であり;n6は1~3の整数である)である、[7]に記載の組成物。
[9]
前記架橋剤(B)は、前記有機シラン化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下である、[7]または[8]に記載の組成物。
[10]
触媒(C)をさらに含む、[1]~[9]のいずれか1つに記載の組成物。
[11]
主剤(I)および硬化剤(II)を含む2成分形硬化性組成物であり、
前記主剤(I)が前記有機シラン化合物(A)をを含み、
前記硬化剤(II)が架橋剤(B)を含み、
前記架橋剤は、エポキシ基および加水分解性シリル基の少なくとも一方と反応しうる基を2以上有する化合物を含む、[1]~[10]のいずれか1つに記載の組成物。
[12]
基材と、
前記基材上に設けられ、[1]~[11]のいずれか1つに記載の組成物から形成される膜と、を備える、物品。
[13]
前記膜の対水接触角が100°以上である、[12]に記載の物品。
[14]
前記膜のヘイズが1以下である、[12]または[13]に記載の物品。
[15]
以下の方法により評価される前記膜の着氷性指標が650kPa以下である、[12]~[14]のいずれか1つに記載の物品。
[着氷性指標の評価方法]
ステンレス基板上に前記膜を形成し、前記膜上に、内底面積110mmの底のないセルを、前記膜と前記セルの底部とが接触するように配置する。次いで、セル内に水0.5mLを入れ、水を膜とを接触させ、前記ステンレス基板を-32℃に冷却してセル内の水を凍結させる。前記セルに、膜表面と並行な方向に荷重を加え、前記セルを10mm/分の速度で移動させ、氷が動き始めた時の荷重を、着氷性指標とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示の組成物によれば、着氷防止性能および透明性を両立可能な膜を提供し得、好ましくは、さらに耐候性にも優れた膜を形成しうる組成物を提供しうる。また、かかる膜を有する物品を提供しうる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において用いられる場合、「加水分解性シリル基」は、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子を表す。
【0014】
本明細書において用いられる場合、「加水分解性基」は、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離しうる基を意味する。加水分解性基の例としては、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、ハロゲン(これらの式中、Rは、置換または非置換のC1-4アルキル基を表す)などが挙げられ、好ましくは-OR(すなわち、アルコキシ基)である。Rの例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等の非置換アルキル基;クロロメチル基等の置換アルキル基が含まれる。それらのなかでも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。加水分解性シリル基における水酸基は、特に限定されないが、加水分解性基が加水分解して生じたものであってよい。
【0015】
本明細書において用いられる場合、「有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。有機基としては、特に記載が無い限り、炭化水素基又はその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端又は分子鎖中に、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。尚、単に「有機基」と示す場合、1価の有機基を意味する。また、「2価の有機基」とは、炭素を含有する2価の基を意味する。かかる2価の有機基としては、特に限定されないが、有機基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0016】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0017】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員のヘテロアリール基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる。
【0018】
本明細書において用いられる場合、「アルキル基」としては、特に記載が無い限り、例えば、C1-12(好ましくはC1-6、より好ましくはC1-3、さらに好ましくはC)のアルキル基(例、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)が挙げられる。当該「アルキル基」は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよいが、好ましくは、直鎖状である。また、当該「アルキル基」は官能基を含んでいてもよい。
【0019】
以下、本開示の組成物について説明する。
【0020】
本開示の組成物は、
有機シラン化合物(A)を含み、
上記有機シラン化合物(A)は、
フルオロポリエーテル基を有するシラン化合物(A1)と、エポキシ基および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)との反応物(A3)を含み、
上記フルオロポリエーテル基を有するシラン化合物(A1)と、上記エポキシ基および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)とは異なる。
【0021】
これにより、着氷防止性能と透明性を両立しうる膜を提供しうる。
【0022】
本開示の組成物は、架橋剤(B)をさらに含んでいてもよく、触媒(C)をさらに含んでいてもよい。
【0023】
[有機シラン化合物(A)]
上記有機シラン化合物(A)は、有機基が結合したSi原子を少なくとも有する化合物であり、フルオロポリエーテル基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(A1)(以下、「フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A1)」ともいう)と、エポキシ基および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)(以下、「エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)」ともいう)との反応物(A3)を含む。
一の態様において、上記反応物(A3)は、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A1)の加水分解性シリル基と、エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)の加水分解性シリル基とが反応した反応物であってよい。
一の態様において、有機シラン化合物(A)は、加水分解性シリル基を有することが好ましい。
【0024】
フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A1)と、エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)とは異なる。一の態様において、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A1)は、好ましくはエポキシ基を含まない。別の態様において、エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)は、好ましくはフルオロポリエーテル基(例えば、後述するPFPEで表される基)を含まず、より好ましくはフッ素原子を含まない。
【0025】
反応物(A3)において、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A1)に由来する単位は、エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)に由来する単位100質量部に対して、好ましくは5質量部以上100質量部以下、より好ましくは10質量部以上70質量部以下、さらに好ましくは20質量部以上60質量部以下でありうる。
【0026】
上記有機シラン化合物(A)は、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A1)と、エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)との反応物(A3)に加えて、エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)をさらに含んでいてもよい。これにより、本開示の組成物と基材との密着性および溶剤やその他の材料との相溶性が良好になりうる。
【0027】
上記有機シラン化合物(A)において、上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A1)に由来する単位の含有率は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上1.7質量%以下でありうる。
【0028】
上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A1)は、好ましい態様において、下記式(1)又は(2):
【0029】
【化4】
[式中:
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-であり;
F2は、-Rf -R-O-であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1であり;
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0030】
上記式(1)において、RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-である。
【0031】
上記式(2)において、RF2は、-Rf -R-O-である。
【0032】
上記式において、Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基である。
【0033】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6アルキル基、特に直鎖又は分枝鎖のC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特に直鎖のC1-3アルキル基である。
【0034】
上記Rfは、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはCFH-C1-15パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-16パーフルオロアルキル基である。
【0035】
上記C1-16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF、-CFCF、又は-CFCFCFである。
【0036】
上記式において、Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基である。
【0037】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基における「C1-6アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0038】
上記Rfは、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-6アルキレン基であり、より好ましくはC1-6パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-3パーフルオロアルキレン基である。
【0039】
上記C1-6パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基、具体的には-CF-、-CFCF-、又は-CFCFCF-である。
【0040】
上記式において、pは、0又は1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0041】
上記式において、qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0042】
上記式(1)及び(2)において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基である。
【0043】
は、好ましくは、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中:
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上である。a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基(以下、「PFPE」で表される基ともいう)である。
【0044】
Faは、好ましくは、水素原子又はフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。
【0045】
a、b、c、d、e及びfは、好ましくは、それぞれ独立して、0~100の整数であってもよい。
【0046】
a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下又は30以下であってもよい。
【0047】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよく、環構造を含んでいてもよい。例えば、-(OC12)-は、-(OCFCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC10)-は、-(OCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-及び-(OCFCF(C))-のいずれであってもよい。-(OC)-(即ち、上記式中、RFaはフッ素原子である)は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-及び-(OCFCF(CF))-のいずれであってもよい。-(OC)-は、-(OCFCF)-及び-(OCF(CF))-のいずれであってもよい。
【0048】
上記環構造は、下記三員環、四員環、五員環、又は六員環であり得る。
【0049】
【化5】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0050】
上記環構造は、好ましくは四員環、五員環、又は六員環、より好ましくは四員環、又は六員環であり得る。
【0051】
環構造を有する繰り返し単位は、好ましくは、下記の単位であり得る。
【化6】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0052】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。上記繰り返し単位を直鎖状とすることにより、膜(表面処理層)の表面滑り性、摩耗耐久性等を向上させることができる。
【0053】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。上記繰り返し単位を分枝鎖状とすることにより、膜(表面処理層)の動摩擦係数を大きくすることができる。
【0054】
一の態様において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)~(f6)のいずれかで表される基である。
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは0又は1である。];
-(OC-(OCFa -(OC-(OCF- (f2)
[式中、RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、好ましくはフッ素原子であり、c及びdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、e及びfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、e及びfの和は2以上であり、
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【0055】
【化7】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0056】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。上記式(f1)におけるOCは、好ましくは、(OCFCFCF)、(OCF(CF)CF)または(OCFCF(CF))であり、より好ましくは、(OCFCFCF)である。上記式(f1)における(OC)は、好ましくは、(OCFCF)または(OCF(CF))であり、より好ましくは、(OCFCF)である。一の態様において、eは0である。別の態様において、eは1である。
【0057】
上記式(f2)において、e及びfは、それぞれ独立して、好ましくは5~200、より好ましくは10~200の整数である。また、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OC-(OC-(OC-(OCF-で表される基であり、より好ましくは-(OCFCFCFCF-(OCFCFCF-(OCFCF-(OCF-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC-(OCF-で表される基であってもよい。さらに別の態様において、上記式(f2)は、-(OC-(OCFCF(CRFad10-(OCFCF(CF))d11-(OCFCF-(OCF-であってもよい。d10およびd11は、それぞれ独立して、0~200の整数であり、好ましくは5~200、より好ましくは10~200の整数である。ただし、d10及びd11の和は、0~200であり、好ましくは5~200、より好ましくは10~200である。
【0058】
上記式(f3)において、Rは、好ましくは、OCであり、別の態様において、
OCFである。上記(f3)において、Rは、好ましくは、OC、OC及びOCから選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OC及びOCから選択される基である。OC、OC及びOCから独立して選択される2又は3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、及び-OCOCOC-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC、OC、OC、OC10及びOC12は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC-OC-又は-(OC-OC-である。
【0059】
上記式(f4)において、R、R及びgは、上記式(f3)の記載と同意義であり、同様の態様を有する。R6’、R7’及びg’は、それぞれ、上記式(f3)に記載のR、R及びgと同意義であり、同様の態様を有する。Rは、好ましくは、
【0060】
【化8】
[式中、*は、結合位置を示す。]
であり、より好ましくは
【0061】
【化9】
[式中、*は、結合位置を示す。]
である。
【0062】
上記式(f5)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0063】
上記式(f6)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0064】
一の態様において、上記Rは、上記式(f1)で表される基である。
【0065】
一の態様において、上記Rは、上記式(f2)で表される基である。
【0066】
一の態様において、上記Rは、上記式(f3)で表される基である。
【0067】
一の態様において、上記Rは、上記式(f4)で表される基である。
【0068】
一の態様において、上記Rは、上記式(f5)で表される基である。
【0069】
上記Rにおいて、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1~10であり、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.2~2であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、さらにより好ましくは0.2~0.85である。e/f比を10以下にすることにより、この化合物から得られる膜(表面処理層)の滑り性、摩耗耐久性及び耐ケミカル性がより向上する。e/f比がより小さいほど、膜の滑り性及び摩耗耐久性はより向上する。一方、e/f比を0.1以上にすることにより、化合物の安定性をより高めることができる。e/f比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上する。
【0070】
上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。本明細書において、RF1及びRF2の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0071】
別の態様において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0072】
別の態様において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0073】
上記式(1)及び(2)において、RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり、少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。RSiは、基材との接着性に寄与し、上記基材の材料と化学的に反応してもよい。
【0074】
好ましい態様において、RSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0075】
好ましい態様において、RSiは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、又は(S4):
【0076】
【化10】
で表される基である。
【0077】
上記式中、R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0078】
11は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0079】
11は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0080】
上記式中、R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0081】
12において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0082】
上記式中、n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、RSiが式(S1)又は(S2)で表される基である場合、式(1)及び式(2)の末端のRSi部分(以下、単に式(1)及び式(2)の「末端部分」ともいう)において、n1が1~3である(SiR11 n112 3-n1)単位が少なくとも1つ存在する。即ち、かかる末端部分において、すべてのn1が同時に0になることはない。換言すれば、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。
【0083】
n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0084】
上記式中、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は2価の有機基である。かかる2価の有機基は、好ましくは-R28-O-R29-(式中、R28及びR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又はC1-20アルキレン基であり、xは0又は1である。)である。かかるC1-20アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。かかるC1-20アルキレン基は、好ましくはC1-10アルキレン基、より好ましくはC1-6アルキレン基、さらに好ましくはC1-3アルキレン基である。
【0085】
一の態様において、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキレン-又は-O-C1-6アルキレン-である。
【0086】
好ましい態様において、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は直鎖のC1-6アルキレン基であり、好ましくは単結合又は直鎖のC1-3アルキレン基、より好ましくは単結合又は直鎖のC1-2アルキレン基であり、さらに好ましくは直鎖のC1-2アルキレン基である。
【0087】
上記式中、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基である。かかるC1-20アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0088】
好ましい態様において、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は直鎖のC1-6アルキル基であり、好ましくは水素原子又は直鎖のC1-3アルキル基、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0089】
上記式中、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数である。
【0090】
好ましい態様において、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2~10の整数、好ましくは2~6の整数である。
【0091】
上記式中、R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11 n112 3-n1である。かかるハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。好ましい態様において、R14は、水素原子である。
【0092】
上記式中、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、C1-6アルキレン基又はC1-6アルキレンオキシ基である。
【0093】
一の態様において、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、C1-6アルキレン基又はC1-6アルキレンオキシ基である。
【0094】
好ましい態様において、R15は、単結合である。
【0095】
一の態様において、式(S1)は、下記式(S1-a)である。
【0096】
【化11】
[式中、
11、R12、R13、X11、及びn1は、上記式(S1)の記載と同意義であり;
t1及びt2は、各出現においてそれぞれ独立して、1以上の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは2~10の整数、例えば1~5の整数又は2~5の整数であり;
t1及びt2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0097】
好ましい態様において、式(S1)は、下記式(S1-b)である。
【0098】
【化12】
[式中、R11、R12、R13、X11、n1及びtは、上記式(S1)の記載と同意義である]
【0099】
上記式中、Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR21 p122 q123 r1である。
【0100】
上記Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR21 p122 q123 r1)に結合する。
【0101】
好ましい態様において、Zは、2価の有機基である。
【0102】
好ましい態様において、Zは、Zが結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0103】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1-O-(CHz2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3-フェニレン-(CHz4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0104】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz3-フェニレン-(CHz4-、好ましくは-フェニレン-(CHz4-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0105】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0106】
上記R21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1’-SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’である。
【0107】
上記Z1’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1’として記載する構造は、右側が(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)に結合する。
【0108】
好ましい態様において、Z1’は、2価の有機基である。
【0109】
好ましい態様において、Z1’は、Z1’が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1’-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0110】
上記Z1’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1’-O-(CHz2’-(式中、z1’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3’-フェニレン-(CHz4’-(式中、z3’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0111】
好ましい態様において、Z1’は、C1-6アルキレン基又は-(CHz3’-フェニレン-(CHz4’-、好ましくは-フェニレン-(CHz4’-である。Z1’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0112】
別の好ましい態様において、上記Z1’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1’は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z1’は、-CHCH-であり得る。
【0113】
上記R21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1”-SiR22” q1”23” r1”である。
【0114】
上記Z1”は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1”として記載する構造は、右側が(SiR22” q1”23” r1”)に結合する。
【0115】
好ましい態様において、Z1”は、2価の有機基である。
【0116】
好ましい態様において、Z1”は、Z1”が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1”-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0117】
上記Z1”は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1”-O-(CHz2”-(式中、z1”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3”-フェニレン-(CHz4”-(式中、z3”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0118】
好ましい態様において、Z1”は、C1-6アルキレン基又は-(CHz3”-フェニレン-(CHz4”-、好ましくは-フェニレン-(CHz4”-である。Z1”がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0119】
別の好ましい態様において、上記Z1”は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1”は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z1”は、-CHCH-であり得る。
【0120】
上記R22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0121】
上記R22”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0122】
上記R22”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0123】
上記R23”は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0124】
上記R23”において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0125】
上記q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q1”とr1”の合計は、(SiR22” q1”23” r1”)単位において、3である。
【0126】
上記q1”は、(SiR22” q1”23” r1”)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0127】
上記R22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0128】
22’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0129】
22’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0130】
上記R23’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0131】
23’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0132】
上記p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p’、q1’とr1’の合計は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位において、3である。
【0133】
一の態様において、p1’は、0である。
【0134】
一の態様において、p1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1’は、3である。
【0135】
一の態様において、q1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0136】
一の態様において、p1’は0であり、q1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0137】
上記R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0138】
22は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0139】
22は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0140】
上記R23は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0141】
23において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0142】
上記p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p1、q1とr1の合計は、(SiR21 p122 q123 r1)単位において、3である。
【0143】
一の態様において、p1は、0である。
【0144】
一の態様において、p1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1は、3である。
【0145】
一の態様において、q1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0146】
一の態様において、p1は0であり、q1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0147】
上記式中、Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0148】
上記Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0149】
上記Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0150】
上記式中、Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0151】
上記Rc1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0152】
上記k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k1、l1とm1の合計は、(SiRa1 k1b1 l1c1 m1)単位において、3である。
【0153】
一の態様において、k1は、(SiRa1 k1b1 l1c1 m1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。好ましい態様において、k1は、3である。
【0154】
上記式(1)及び(2)において、RSiが式(S3)で表される基である場合、好ましくは、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0155】
好ましい態様において、式(S3)で表される基は、-Z-SiR22 q123 r1(式中、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1は、0~2の整数である。)、-Z1’-SiR22’ q1’23’ r1’(式中、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1’は、0~2の整数である。)、又は-Z1”-SiR22” q1”23” r1”(式中、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1”は、0~2の整数である。)のいずれか1つを有する。Z、Z1’、Z1”、R22、R23、R22’、R23’、R22”、及びR23”は、上記と同意義である。
【0156】
好ましい態様において、式(S3)において、R21’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21’において、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0157】
好ましい態様において、式(S3)において、R21が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21において、p1’は、0であり、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0158】
好ましい態様において、式(S3)において、Ra1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、p1は、0であり、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0159】
好ましい態様において、式(S3)において、k1は2又は3、好ましくは3であり、p1は0であり、q1は2又は3、好ましくは3である。
【0160】
d1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-CR31 p232 q233 r2である。
【0161】
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(CR31 p232 q233 r2)に結合する。
【0162】
好ましい態様において、Zは、2価の有機基である。
【0163】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5-O-(CHz6-(式中、z5は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7-フェニレン-(CHz8-(式中、z7は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0164】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz7-フェニレン-(CHz8-、好ましくは-フェニレン-(CHz8-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0165】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0166】
31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2’-CR32’ q2’33’ r2’である。
【0167】
2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z2’として記載する構造は、右側が(CR32’ q2’33’ r2’)に結合する。
【0168】
上記Z2’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5’-O-(CHz6’-(式中、z5’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7’-フェニレン-(CHz8’-(式中、z7’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0169】
好ましい態様において、Z2’は、C1-6アルキレン基又は-(CHz7’-フェニレン-(CHz8’-、好ましくは-フェニレン-(CHz8’-である。Z2’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0170】
別の好ましい態様において、上記Z2’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2’は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z2’は、-CHCH-であり得る。
【0171】
上記R32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。
【0172】
上記Zは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR34 n235 3-n2)に結合する。
【0173】
一の態様において、Zは酸素原子である。
【0174】
一の態様において、Zは2価の有機基である。
【0175】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5”-O-(CHz6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0176】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-、好ましくは-フェニレン-(CHz8”-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0177】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0178】
上記R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0179】
34は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0180】
34は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0181】
上記R35は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0182】
上記R35において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0183】
上記式中、n2は、(SiR34 n235 3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、RSiが式(S4)で表される基である場合、式(1)及び式(2)の末端部分において、n2が1~3である(SiR34 n235 3-n2)単位が少なくとも1つ存在する。即ち、かかる末端部分において、すべてのn2が同時に0になることはない。換言すれば、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。
【0184】
n2は、(SiR34 n235 3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0185】
上記R33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0186】
上記R33’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(C2st1-(O-C2st2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0187】
一の態様において、R33’は、水酸基である。
【0188】
別の態様において、R33’は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0189】
上記q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q2’とr2’の合計は、(CR32’ q2’33’ r2’)単位において、3である。
【0190】
q2’は、(CR32’ q2’33’ r2’)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0191】
32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。かかる-Z-SiR34 n235 3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0192】
上記R33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0193】
上記R33において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(C2st1-(O-C2st2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0194】
一の態様において、R33は、水酸基である。
【0195】
別の態様において、R33は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0196】
上記p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p2、q2及びr2の合計は、(CR31 p232 q233 r2)単位において、3である。
【0197】
一の態様において、p2は、0である。
【0198】
一の態様において、p2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p2は、3である。
【0199】
一の態様において、q2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0200】
一の態様において、p2は0であり、q2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0201】
上記Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。かかる-Z-SiR34 n235 3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0202】
上記Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0203】
上記Rf1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(C2st1-(O-C2st2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0204】
一の態様において、Rf1は、水酸基である。
【0205】
別の態様において、Rf1は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0206】
上記k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k2、l2及びm2の合計は、(CRd1 k2e1 l2f1 m2)単位において、3である。
【0207】
上記式(1)及び(2)において、RSiが式(S4)で表される基である場合、好ましくは、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0208】
一の態様において、RSiが式(S4)で表される基である場合、n2が1~3、好ましくは2又は3、より好ましくは3である(SiR34 n235 3-n2)単位は、式(1)及び式(2)の各末端部分において、2個以上、例えば2~27個、好ましくは2~9個、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~3個、特に好ましくは3個存在する。
【0209】
好ましい態様において、式(S4)において、R32’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32’において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0210】
好ましい態様において、式(S4)において、R32が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0211】
好ましい態様において、式(S4)において、Re1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0212】
好ましい態様において、式(S4)において、k2は0であり、l2は2又は3、好ましくは3であり、n2は、2又は3、好ましくは3である。
【0213】
上記Rg1及びRh1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1、-Z-SiRa1 k1b1 l1c1 m1、-Z-CRd1 k2e1 l2f1 m2である。ここに、R11、R12、Ra1、Rb2、Rc1、Rd1、Re1、Rf1、n1、k1、l1、m1、k2、l2、及びm2は、上記と同意義である。
【0214】
好ましい態様において、Rg1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1である。
【0215】
上記Zは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR11 n112 3-n1)に結合する。
【0216】
一の態様において、Zは酸素原子である。
【0217】
一の態様において、Zは2価の有機基である。
【0218】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5”-O-(CHz6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0219】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-、好ましくは-フェニレン-(CHz8”-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0220】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0221】
一の態様において、RSiは、式(S2)、(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。これらの化合物は、高い表面滑り性を有する膜(表面処理層)を形成することができる。
【0222】
一の態様において、RSiは、式(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に複数の加水分解性基を有することから、基材に強く密着し、高い摩耗耐久性を有する膜(表面処理層)を形成することができる。
【0223】
一の態様において、RSiは、式(S3)又は(S4)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に、一のSi原子又はC原子から分岐した複数の加水分解性基を有し得ることから、さらに高い摩耗耐久性を有する膜を形成することができる。
【0224】
一の態様において、RSiは、式(S1)で表される基である。
【0225】
一の態様において、RSiは、式(S2)で表される基である。
【0226】
一の態様において、RSiは、式(S3)で表される基である。
【0227】
一の態様において、RSiは、式(S4)で表される基である。
【0228】
一の態様において、RSiは、式(S5)で表される基である。
【0229】
一の態様において、上記式(1)および(2)に含まれる加水分解性基は、他の加水分解性基と縮合していてもよい。この場合、上記式(1)または(2)に含まれる加水分解性基は、縮合に関与した部分を除いた2価の基であり得、式(1)または(2)において、加水分解性がかかる2価の基に置換されたものも、化合物(1)または(2)に含まれる。後述する式(1a)および(2a)に含まれる加水分解性基も同様である。
【0230】
上記式(1)及び(2)において、Xは、主に撥水性及び表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル部(RF1及びRF2)と基材との結合能を提供する部(RSi)とを連結するリンカーと解される。従って、当該Xは、式(1)及び(2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であってもよく、いずれの基であってもよい。
【0231】
上記式(1)において、αは1~9の整数であり、βは1~9の整数である。これらα及びβは、Xの価数に応じて変化し得る。α及びβの和は、Xの価数と同じである。例えば、Xが10価の有機基である場合、α及びβの和は10であり、例えばαが9かつβが1、αが5かつβが5、又はαが1かつβが9となり得る。また、Xが2価の有機基である場合、α及びβは1である。
【0232】
上記式(2)において、γは1~9の整数である。γは、Xの価数に応じて変化し得る。即ち、γは、Xの価数から1を引いた値である。
【0233】
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基でありうる。
【0234】
上記Xにおける2~10価の有機基は、好ましくは2~8価の有機基である。一の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは2~4価の有機基であり、より好ましくは2価の有機基である。別の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは3~8価の有機基、より好ましくは3~6価の有機基である。
【0235】
一の態様において、Xは、単結合又は2価の有機基であり、αは1であり、βは1である。
【0236】
一の態様において、Xは、単結合又は2価の有機基であり、γは1である。
【0237】
一の態様において、Xは3~6価の有機基であり、αは1であり、βは2~5である。
【0238】
一の態様において、Xは3~6価の有機基であり、γは2~5である。
【0239】
一の態様において、Xは、3価の有機基であり、αは1であり、βは2である。
【0240】
一の態様において、Xは、3価の有機基であり、γは2である。
【0241】
が、単結合又は2価の有機基である場合、式(1)及び(2)は、下記式(1a)及び(2a)で表される。
【0242】
【化13】
【0243】
式(1a)または式(2a)のそれぞれにおいて、少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0244】
一の態様において、Xは単結合である。
【0245】
別の態様において、Xは2価の有機基である。
【0246】
一の態様において、Xとしては、例えば、単結合又は下記式:
-(R51p5-(X51q5
[式中:
51は、単結合、-(CHs5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CHs5-であり、
s5は、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数、さらにより好ましくは1又は2であり、
51は、-(X52l5-を表し、
52は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-Si(R53-、-(Si(R53O)m5-Si(R53-、-CONR54-、-O-CONR54-、-NR54-及び-(CHn5-からなる群から選択される基を表し、
53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基を表し、好ましくはフェニル基又はC1-6アルキル基であり、より好ましくはメチル基であり、
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基(好ましくはメチル基)を表し、
m5は、各出現において、それぞれ独立して、1~100の整数、好ましくは1~20の整数であり、
n5は、各出現において、それぞれ独立して、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
l5は、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
p5は、0又は1であり、
q5は、0又は1であり、
ここに、p5及びq5の少なくとも一方は1であり、p5又はq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の有機基が挙げられる。ここに、X(典型的にはXの水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、Xは、これらの基により置換されていない。
【0247】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、-(R51p5-(X51q5-R52-である。R52は、単結合、-(CHt5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CHt5-である。t5は、1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。ここに、R52(典型的にはR52の水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、R56は、これらの基により置換されていない。
【0248】
好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-R51-X53-R52-、又は
-X54-R52
[式中、R51及びR52は、上記と同意義であり、
53は、
-O-、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-Si(R53-、
-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-O-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-O-(CHu5-Si(R53-O-Si(R53-CHCH-Si(R53-O-Si(R53-、
-O-(CHu5-Si(OCHOSi(OCH-、
-CONR54-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-CONR54-(CHu5-N(R54)-、又は
-CONR54-(o-、m-又はp-フェニレン)-Si(R53
(式中、R53、R54及びm5は、上記と同意義であり、
u5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。)を表し、
54は、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-CONR54-(CHu5-(Si(R54O)m5-Si(R54-、
-CONR54-(CHu5-N(R54)-、又は
-CONR54-(o-、m-又はp-フェニレン)-Si(R54
(式中、各記号は、上記と同意義である。)
を表す。]
であり得る。
【0249】
より好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-、
-(CHs5-X53-(CHt5
-X54-、又は
-X54-(CHt5
[式中、X53、X54、s5及びt5は、上記と同意義である。]
である。
【0250】
より好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-(CHt5-、又は
-X54-(CHt5
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0251】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合
1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-、又は
-(CHs5-X53-(CHt5
[式中、
53は、-O-、-CONR54-、又は-O-CONR54-であり、
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基を表し、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数である。]
であり得る。
【0252】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
-(CHs5-O-(CHt5
-CONR54-(CHt5
[式中、
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基を表し、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数である。]
であり得る。
【0253】
一の態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-(CHs5-O-(CHt5-、
-(CHs5-(Si(R53O)m5-Si(R53-(CHt5-、
-(CHs5-O-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-(CHt5-、又は
-(CHs5-O-(CHt5-Si(R53-(CHu5-Si(R53-(Cv52v5)-
[式中、R53、m5、s5、t5及びu5は、上記と同意義であり、v5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。]
である。
【0254】
上記式中、-(Cv2v)-は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、例えば、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)-、-CH(CH)CH-であり得る。
【0255】
上記Xは、それぞれ独立して、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基(好ましくは、C1-3パーフルオロアルキル基)から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。一の態様において、Xは、非置換である。
【0256】
尚、上記Xは、各式の左側がRF1又はRF2に結合し、右側がRSiに結合する。
【0257】
一の態様において、Xは、それぞれ独立して、-O-C1-6アルキレン基以外であり得る。
【0258】
別の態様において、Xとしては、例えば下記の基が挙げられる:
【0259】
【化14】
【0260】
【化15】
[式中、R41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基、又はC1-6アルコキシ基、好ましくはメチル基であり;
Dは、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CFO(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH4-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、及び
【0261】
【化16】
(式中、R42は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6のアルキル基又はC1-6のアルコキシ基、好ましくはメチル基又はメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。)
から選択される基であり、
Eは、-(CH-(nは2~6の整数)であり、
Dは、分子主鎖のRF1又はRF2に結合し、Eは、RSiに結合する。]
【0262】
上記Xの具体的な例としては、例えば:
単結合、
-CHOCH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CHSi(CHOSi(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHOSi(CHOSi(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)10Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)20Si(CH(CH-、
-CHOCFCHFOCF-、
-CHOCFCHFOCFCF-、
-CHOCFCHFOCFCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF-、
-CHOCHCFCFOCFCF-、
-CHOCHCFCFOCFCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCFCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF-、
-CHOCHCHFCFOCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCFCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCFCF-、
-CHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-CH-、
-CHOCH(CHCHSi(OCHOSi(OCH(CHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHCHOSi(OCHCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHCHOSi(OCHCH(CH-、
-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-CO-、
-CONH-、
-CONH-CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CONH-(CHNH(CH-、
-CONH-(CHNH(CH-、
-CHO-CONH-(CH-、
-CHO-CONH-(CH-、
-S-(CH-、
-(CHS(CH-、
-CONH-(CHSi(CHOSi(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHOSi(CHOSi(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)10Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)20Si(CH(CH-、
-C(O)O-(CH-、
-C(O)O-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-CH(CH)-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-CH(CH)-CH-、
-OCH-、
-O(CH-、
-OCFHCF-、
【0263】
【化17】
などが挙げられる。
【0264】
さらに別の態様において、Xは、それぞれ独立して、式:-(R16x1-(CFR17y1-(CHz1-で表される基である。式中、x1、y1及びz1は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、x1、y1及びz1の和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0265】
上記式中、R16は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、-NR18-(式中、R18は、水素原子又は有機基を表す)又は2価の有機基である。好ましくは、R18は、酸素原子又は2価の極性基である。
【0266】
上記「2価の極性基」としては、特に限定されないが、-C(O)-、-C(=NR19)-、及び-C(O)NR19-(これらの式中、R19は、水素原子又は低級アルキル基を表す)が挙げられる。当該「低級アルキル基」は、例えば、C1-6アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピルであり、これらは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0267】
上記式中、R17は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は低級フルオロアルキル基であり、好ましくはフッ素原子である。当該「低級フルオロアルキル基」は、例えば、C1-6、好ましくはC1-3フルオロアルキル基、好ましくはC1-3パーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、さらに好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0268】
さらに別の態様において、Xの例として、下記の基が挙げられる:
【0269】
【化18】
[式中、
41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基、又はC1-6アルコキシ基好ましくはメチル基であり;
各X基において、Tのうち任意のいくつかは、分子主鎖のRF1又はRF2に結合する以下の基:
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CFO(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH4-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、又は
【0270】
【化19】
[式中、R42は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6のアルキル基又はC1-6のアルコキシ基、好ましくはメチル基又はメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。]
であり、別のTのいくつかは、分子主鎖のRSiに結合し、存在する場合、残りのTは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基、C1-6アルコキシ基又はラジカル捕捉基又は紫外線吸収基である。
【0271】
ラジカル捕捉基は、光照射で生じるラジカルを捕捉できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、安息香酸エステル類、サリチル酸フェニル類、クロトン酸類、マロン酸エステル類、オルガノアクリレート類、ヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類、又はトリアジン類の残基が挙げられる。
【0272】
紫外線吸収基は、紫外線を吸収できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾトリアゾール類、ヒドロキシベンゾフェノン類、置換及び未置換安息香酸もしくはサリチル酸化合物のエステル類、アクリレート又はアルコキシシンナメート類、オキサミド類、オキサニリド類、ベンゾキサジノン類、ベンゾキサゾール類の残基が挙げられる。
【0273】
好ましい態様において、好ましいラジカル捕捉基又は紫外線吸収基としては、以下の式で表される基が挙げられる。
【0274】
【化20】
【0275】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、3~10価の有機基であり得る。
【0276】
さらに別の態様において、Xの例として、下記の基が挙げられる:
【0277】
【化21】
[式中、R25、R26及びR27は、それぞれ独立して2~6価の有機基であり、
25は、少なくとも1つのRF1に結合し、R26及びR27は、それぞれ、少なくとも1つのRSiに結合する。]
【0278】
一の態様において、上記R25は、単結合、C1-20アルキレン基、C3-20シクロアルキレン基、C5-20アリーレン基、-R57-X58-R59-、-X58-R59-、又は-R57-X58-である。上記、R57及びR59は、それぞれ独立して、単結合、C1-20アルキレン基、C3-20シクロアルキレン基、又はC5-20アリーレン基である。上記X58は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-又は-COO-である。
【0279】
一の態様において、上記R26及びR27は、それぞれ独立して、炭化水素、又は炭化水素の端又は主鎖中にN、O及びSから選択される少なくとも1つの原子を有する基であり、好ましくは、C1-6アルキル基、-R36-R37-R36-、-R36-CHR38 -などが挙げられる。ここに、R36は、それぞれ独立して、単結合又はC1-6アルキル基、好ましくはC1-6アルキル基である。R37は、N、O又はSであり、好ましくはN又はOである。R38は、-R45-R46-R45-、-R46-R45-又は-R45-R46-である。ここに、R45は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基である。R46は、N、O又はSであり、好ましくはOである。
【0280】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、3~10価の有機基であり得る。
【0281】
さらに別の態様において、Xの例として、下記:
【0282】
【化22】
[式中、Xは、単結合または2価の有機基である。]
で表される基が挙げられる
【0283】
上記Xは、イソシアヌル環に直接結合する単結合または二価の連結基である。Xとしては、単結合、アルキレン基、または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、C1-10アルキレン基、または、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価のC1-10炭化水素基がより好ましい。
【0284】
としては、下記式:
-(CX121122x1-(Xa1y1-(CX123124z1
(式中、X121~X124は、それぞれ独立して、H、F、OH、または、-OSi(OR121(式中、3つのR121は、それぞれ独立して、C1-4アルキル基である。)であり、
上記Xa1は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、または、-NHC(=O)NH-であり(各結合の左側がCX121122に結合する。)、
x1は0~10の整数であり、y1は0または1であり、z1は1~10の整数である。)
で表される基が更に好ましい。
【0285】
上記Xa1としては、-O-または-C(=O)O-が好ましい。
【0286】
上記Xとしては、下記式:
-(CFm11-(CHm12-O-(CHm13
(式中、m11は1~3の整数であり、m12は1~3の整数であり、m13は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CFm14-(CHm15-O-CHCH(OH)-(CHm16
(式中、m14は1~3の整数であり、m15は1~3の整数であり、m16は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CFm17-(CHm18
(式中、m17は1~3の整数であり、m18は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CFm19-(CHm20-O-CHCH(OSi(OCH)-(CHm21
(式中、m19は1~3の整数であり、m20は1~3の整数であり、m21は1~3の整数である。)
で表される基、または、
-(CHm22
(式中、m22は1~3の整数である。)
で表される基が特に好ましい。
【0287】
上記Xとして、特に限定されないが、具体的には、
-CH-、-C-、-C-、-C-、-C-O-CH-、-CO-O-CH-CH(OH)-CH-、-(CFn5-(n5は0~4の整数である。)、-(CFn5-(CHm5-(n5およびm5は、それぞれ独立して、0~4の整数である。)、-CFCFCHOCHCH(OH)CH-、-CFCFCHOCHCH(OSi(OCH)CH
等が挙げられる。
【0288】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、2又は3価の有機基であり得る。
【0289】
好ましい態様において、上記フルオロポリエーテル基含有化合物は、式(1b)または式(2b):
【0290】
【化23】
【0291】
[式中:
はフルオロポリエーテル基を含む一価の有機基であり;
1’はフルオロポリエーテル基を含む二価の有機基であり;
上記フルオロポリエーテル基は、各出現においてそれぞれ独立して、
式:-(OC12m31-(OC10m32-(OCm33-(OC10 m34-(OCm35-(OCFm36
[式中、m31、m32、m33、m34、m35及びm36は、独立に、0又は1以上の整数であり;
10は、独立にH、F又はClであり;
各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基であり;
は、独立に、含シラン反応性架橋基であり;
は、独立に、一価の基であり;
式(1b)または式(2b)のそれぞれにおいて、XおよびXの少なくとも1つは、水酸基または加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。]
で表される化合物であり得る。
【0292】
としては、フルオロポリエーテル基を含む一価の有機基(但し、ウレタン結合を含むものを除く)が好ましい。
【0293】
1’としては、フルオロポリエーテル基を含む二価の有機基(但し、ウレタン結合を含むものを除く)が好ましい。
【0294】
10としては、Fが好ましい。
【0295】
m31~m36は、それぞれ、0~200の整数であることが好ましく、0~100の整数であることがより好ましい。m31~m36は、合計で、1以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましい。m31~m36は、合計で、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。m31~m36は、合計で、10~200であることが好ましく、10~100であることがより好ましい。
【0296】
上記フルオロポリエーテル基において、各繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよく、環構造を含んでいてもよいが、好ましくは直鎖状である。例えば、-(OC12)-は、-(OCFCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCFCF(CF))-等であってもよいが、好ましくは-(OCFCFCFCFCFCF)-である。-(OC10)-は、-(OCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCF(CF))-等であってもよいが、好ましくは-(OCFCFCFCFCF)-である。-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-及び-(OCFCF(C))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCFCFCFCF)-である。-(OC)-は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-及び-(OCFCF(CF))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCFCFCF)-である。また、-(OC)-は、-(OCFCF)-及び-(OCF(CF))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCFCF)-である。
【0297】
上記環構造は、下記三員環、四員環、五員環、又は六員環であり得る。
【0298】
【化24】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0299】
上記環構造は、好ましくは四員環、五員環、又は六員環、より好ましくは四員環、又は六員環であり得る。
【0300】
環構造を有する繰り返し単位は、好ましくは、下記の単位であり得る。
【0301】
【化25】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0302】
一の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、-(OCm34-(OCm35-(式中、m34は1~200の整数であり、m35は0または1である)で表される鎖である。上記フルオロポリエーテル基における(OC)は、好ましくは、(OCFCFCF)、(OCF(CF)CF)又は(OCFCF(CF))であり、より好ましくは、(OCFCFCF)である。上記フルオロポリエーテル基における(OC)は、好ましくは、(OCFCF)または(OCF(CF))であり、より好ましくは、(OCFCF)である。m34は、5~200の整数であることが好ましく、10~200の整数であることがより好ましい。一の態様において、m35は0である。別の態様において、m35は1である。
【0303】
別の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、-(OCm33-(OCm34-(OCm35-(OCFm36-(式中、m33及びm34は、それぞれ、0~30の整数であり、m35及びm36は、それぞれ、1~200の整数である。m33~m36は、合計で、5以上である。各繰り返し単位の存在順序は任意である)で表される鎖である。m35及びm36は、それぞれ、5~200の整数であることが好ましく、10~200の整数であることがより好ましい。m33~m36は、合計で、10以上であることが好ましい。上記フルオロポリエーテル基は、-(OCFCFCFCFm33-(OCFCFCFm34-(OCFCFm35-(OCFm36-であることが好ましい。一の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、-(OCm35-(OCFm36-(式中、m35及びm36は、それぞれ、1~200の整数である。各繰り返し単位の存在順序は任意である)で表される鎖であってもよい。m35及びm36は、それぞれ、5~200の整数であることが好ましく、10~200の整数であることがより好ましい。
【0304】
さらに別の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、-(Rm1-Rm2m37-で表される基である。式中、Rm1は、OCF又はOCであり、好ましくはOCである。式中、Rm2は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせである。好ましくは、Rm1は、OC、OC及びOCから選択される基であるか、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせである。OC、OC及びOCから独立して選択される2又は3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、及び-OCOCOC-等が挙げられる。上記m37は、2以上の整数であり、好ましくは3以上の整数であり、より好ましくは5以上の整数であり、100以下の整数であり、好ましくは50以下の整数である。上記式中、OC、OC、OC、OC10及びOC12は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、フルオロポリエーテル基は、好ましくは、-(OC-OCm37-又は-(OC-OCm37-である。
【0305】
さらに別の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、-(Rm1-Rm2m37-Rr’-(Rm1’-Rm2’m37’-で表される基である。式中、式中、Rm1は、OCF又はOCであり、Rm2は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、Rm1’は、OCF又はOCであり、Rm2’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、m37は、2~100の整数であり、m37’は、2~100の整数であり、Rr’は、
【0306】
【化26】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。]。
m1、Rm2及びm37は、上記と同意義であり、同様の態様を有する。Rm1’、Rm2’及びm37’は、それぞれ、上記Rm1、Rm2及びm37と同意義であり、同様の態様を有する。
【0307】
r’は、好ましくは、
【0308】
【化27】
[式中、*は、結合位置を示す。]
であり、より好ましくは
【0309】
【化28】
[式中、*は、結合位置を示す。]
である。
【0310】
さらに別の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、-(OC12m31-(OC10m32-(OCm33-(OCm34-(OCm35-(OCFm36-(式中、m35は、1以上200以下の整数であり、m31、m32、m33、m34、及びm36は、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、m31、m32、m33、m34、m35及びm36の和は少なくとも1であり、また、m31、m32、m33、m34、m35又はm36を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)で表される基である。m35は、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。m31、m32、m33、m34、m35及びm36の和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0311】
さらに別の態様において、上記フルオロポリエーテル基は、-(OC12m31-(OC10m32-(OCm33-(OCm34-(OCm35-(OCFm36-(式中、m36は、1以上200以下の整数であり、m31、m32、m33、m34、及びm35は、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、m31、m32、m33、m34、m35及びm36の和は少なくとも1であり、また、m31、m32、m33、m34、m35又はm36を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)で表される基である。m36は、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。m31、m32、m33、m34、m35及びm36の和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0312】
上記フルオロポリエーテル基において、m36に対するm35の比(以下、「m35/m36比」という)は、0.1~10であり、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.2~2であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、さらにより好ましくは0.2~0.85である。m35/m36比を10以下にすることにより、膜(表面処理層)の滑り性、摩擦耐久性及び耐ケミカル性がより向上する。m35/m36比がより小さいほど、上記膜(表面処理層)の滑り性及び摩擦耐久性はより向上する。一方、m35/m36比を0.1以上にすることにより、化合物の安定性をより高めることができる。m35/m36比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上する。
【0313】
上記フルオロポリエーテル基は、下記式
式:-(OCFCFCX11 n11(OCFCF(CF))n12(OCFCFn13(OCFn14(OCn15
(式中、n11、n12、n13、n14及びn15は、独立に、0又は1以上の整数であり、
11は独立にH、F又はClであり、
各繰り返し単位の存在順序は任意である。)
で表される鎖、及び、下記式
式:-(OCF-R11f10
(式中、R11は、OC、OC及びOCから選択される基であり、f10は、2~100の整数である)
で表される鎖からなる群より選択される少なくとも1種の鎖であってもよい。
【0314】
11としては、Fが好ましい。
【0315】
n11~n15は、それぞれ、0~200の整数であることが好ましい。n11~n15は、合計で、2以上であることが好ましく、5~300であることがより好ましく、10~200であることが更に好ましく、10~100であることが特に好ましい。
【0316】
11は、OC、OC及びOCから選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせである。OC、OC及びOCから独立して選択される2又は3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、及び-OCOCOC-等が挙げられる。上記fは、2~100の整数、好ましくは2~50の整数である。上記式中、OC、OC及びOCは、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、式:-(OC-R11f10-は、好ましくは、式:-(OC-OCf10-又は式:-(OC-OCf10-である。
【0317】
上記イソシアヌル化合物において、フルオロポリエーテル基部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。上記数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0318】
別の態様において、フルオロポリエーテル基部分の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0319】
別の態様において、フルオロポリエーテル基部分の数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0320】
としては、
式:R-(ORa10-L-
(式中、(ORa10は上記フルオロポリエーテル基であり、
は、アルキル基又はフッ素化アルキル基であり、
Lは単結合又は二価の連結基である。)
で表される一価の有機基であることが好ましい。
【0321】
1’としては、
式:-L’-(ORa10-L-
(式中、(ORa10は上記ポリエーテル鎖であり、
Lは、独立に、単結合又は二価の連結基であり、
L’は、独立に、単結合又は二価の連結基であり、
Lが式(2b)の右側のイソシアヌル環に結合し、L’が左側のイソシアヌル環に結合する。)
で表される一価の有機基であることが好ましい。
【0322】
の炭素数としては、1~16が好ましく、1~8が好ましい。
【0323】
としては、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、直鎖又は分枝鎖の炭素数1~16のアルキル基又はフッ素化アルキル基であることが好ましく、直鎖又は分枝鎖の炭素数1~8のアルキル基又はフッ素化アルキル基であることがより好ましく、直鎖又は分枝鎖の炭素数1~6のアルキル基又はフッ素化アルキル基であることが更に好ましく、直鎖又は分枝鎖の炭素数1~3のアルキル基又はフッ素化アルキル基であることが更により好ましく、直鎖の炭素数1~3のアルキル基又はフッ素化アルキル基であることが特に好ましい。
【0324】
は、炭素数1~16のフッ素化アルキル基であることが好ましく、CFH-C1-15フルオロアルキレン基又は炭素数1~16のパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~16のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。
【0325】
炭素数1~16のパーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖の炭素数1~6、特に炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、具体的には-CF、-CFCF、又は-CFCFCFである。
【0326】
Lは、式(1b)のイソシアヌル環に直接結合する単結合又は二価の連結基である。Lとしては、単結合、アルキレン基、又は、エーテル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、又は、エーテル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基がより好ましい。
【0327】
Lとしては、
式:-(CX221222o10-(Lp10-(CX223224q10
(式中、X221~X224は、独立に、H、F、OH、又は、-OSi(OR225であり(ここに、3つのR225は独立に炭素数1~4のアルキル基である。)、
は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、又は、-NHC(=O)NH-(各結合の左側がCX221222に結合)、
o10は0~10の整数、
p10は0又は1、
q10は1~10の整数)
で表される基が更に好ましい。
【0328】
L’としては、
-(CX226227r10-(CX221222o10-(Lp10-(CX223224q10
(式中、X221~X224、L、o10、p10及びq10は、上記Lにおける規定と同意義であり、
226及びX227は、独立に、H、F又はClであり、好ましくはFであり、
r10は1~6の整数であり、
-(CX226227r10-が(ORa10に結合し、(CX223224q10がイソシアヌル環に結合する。)
で表される基が更に好ましい。
【0329】
としては、-O-又は-C(=O)O-が好ましい。
【0330】
Lとしては、
式:-(CFm31-(CHm32-O-(CHm33
(式中、m31は1~3の整数、m32は1~3の整数、m33は1~3の整数)
で表される基、
式:-(CFm34-(CHm35-O-CHCH(OH)-(CHm36
(式中、m34は1~3の整数、m35は1~3の整数、m36は1~3の整数)
で表される基、
式:-(CFm37-(CHm38
(式中、m37は1~3の整数、m38は1~3の整数)
で表される基、
-(Rm1-Rm2m37-Rr’-(Rm1’-Rm2’m37’-で表される基、又は、
式:-(CFm39-(CHm40-O-CHCH(OSi(OCH)-(CHm41
(式中、m39は1~3の整数、m40は1~3の整数、m41は1~3の整数)
で表される基が特に好ましい。
【0331】
Lとして、特に限定されないが、具体的には、-C-、-C-、-C-O-CH-、-CO-O-CH-CH(OH)-CH-、-(CFn10-(n10は0~4の整数)、-CH-、-C-、-(CFn10-(CHm10-(n10、m10は独立していずれも0~4の整数)、-CFCFCHOCHCH(OH)CH-、-CFCFCHOCHCH(OSi(OCH)CH-等が挙げられる。
【0332】
は、一価の含シラン反応性架橋基である。
【0333】
上記含シラン反応性架橋基は、基材との接着性に寄与する。上記架橋性基は、上記基材の材料と化学的に反応してもよい。
【0334】
一の態様において、上記含シラン反応性架橋基としては、
式:-L-{Si(Rs10(Rt10(Ru10(Rv10n10
(式中、Lは単結合又は二価の連結基、
、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、水酸基又は加水分解性基であり;好ましくは、R、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミノ基、炭素数1~10のアセトキシ基、炭素数3~10のアリル基、又は炭素数3~10のグリシジル基であり;より好ましくは、R、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミノ基、炭素数1~10のアセトキシ基、又は炭素数3~10のアリル基である。
は、同一又は異なり、-O-、-NH-、-C≡C-、又は、シラン結合である。
s10、t10及びu10は、同一又は異なり0又は1であり、v10は0~3の整数であり、n10は、1~20の整数である。n10が1である場合、s10+t10+u10は3であり、v10は0である。n10が2~20である場合、s10+t10+u10は、同一又は異なり0~2であり、v10は、同一又は異なり0~2であり、v10が1以上の整数である場合、少なくとも2個のSiはRを介して、直鎖、梯子型、環状、又は複環状に結合している。)
で表される基が好ましい。R、R及びRは、Siに結合している1価の基である。Rは、2個のSiに結合している2価の基である。
【0335】
、R及びRは、同一又は異なり、少なくとも1つは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数1~10のアミノ基であり、それ以外は炭素数1~10のアセトキシ基、炭素数3~10のアリル基、又は炭素数3~10のグリシジル基であることが好ましく;R、R及びRは、同一又は異なり、少なくとも1つは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数1~10のアミノ基であり、それ以外は炭素数1~10のアセトキシ基、又は炭素数3~10のアリル基であることがより好ましく;R、R及びRは、同一又は異なり、水酸基または炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましく;R、R及びRは、同一又は異なり、炭素数1~4のアルコキシ基であることがより更に好ましい。n10が2~20である場合、s10+t10+u10は、同一又は異なり、0~2であり、v10は0~2であることが好ましい。
【0336】
、R及びRにおいて、ハロゲンとしては、Cl、Br又はIが好ましく、Clがより好ましい。
【0337】
、R及びRにおいて、アルコキシ基の炭素数は、1~5であることが好ましい。上記アルコキシ基は鎖状でも、環状でも、分岐していてもよい。また、水素原子がフッ素原子等に置換されていてもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピロキシ基、又はブトキシ基が好ましく、より好ましくは、メトキシ基、又はエトキシ基である。
【0338】
は、同一又は異なり、-O-、-NH-、-C≡C-、又は、シラン結合である。Rとしては、-O-、-NH-、又は、-C≡C-が好ましい。Rは、2個のSiに結合している2価の基であり、Rによって2以上のケイ素原子がRを介して、直鎖、梯子型、環状、又は複環状に結合することができる。nが2以上の整数である場合、ケイ素原子同士で結合していてもよい。
【0339】
一の態様において、Xは、式:
-L-{Si(Rs10(Rt10(Ru10(Rd’v10n10
(式中、Lは単結合又は二価の連結基であり、
、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、水酸基又は加水分解性基であり;好ましくは、R、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミノ基、炭素数1~10のアセトキシ基、炭素数3~10のアリル基、又は炭素数3~10のグリシジル基であり;より好ましくは、R、R及びRは、同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミノ基、炭素数1~10のアセトキシ基、又は炭素数3~10のアリル基であり、
d’は、同一又は異なり、-Z-SiRd2 p11d3 q11d4 r11
(式中、Zは、同一又は異なり、単結合又は二価の連結基であり、
d2は、同一又は異なり、Rd”であり、
d”は、Rd’と同意義であり、
d’中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり、
d3は、同一又は異なり、水酸基又は加水分解性基であり、
d4は、同一又は異なり、水素原子又は低級アルキル基であり、
p11は、同一又は異なり、0~3の整数であり、
q11は、同一又は異なり、0~3の整数であり、
r11は、同一又は異なり、0~3の整数であり、
ただし、p11、q11及びr11の和は3である。)
で表される基であり、
s11、t11及びu11は、同一又は異なり0又は1であり、
v11は0~3の整数であり、
n10は、1~20の整数である。)
で表される含シラン反応性架橋基である。
【0340】
式中、Zは、同一又は異なり、単結合又は二価の連結基を表す。
【0341】
Zとして、具体的には、-C-、-C-、-CO-O-CH-CH(OH)-CH-、-CH-、-C-等が挙げられる。
【0342】
式中、Rd2は、同一又は異なり、Rd”を表す。Rd”は、Rd’と同意義である。
【0343】
d’中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個である。即ち、上記Rd’において、Rd2が少なくとも1つ存在する場合、Rd’中にZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子が2個以上存在するが、かかるZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数は最大で5個である。なお、「Rd’中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」とは、Rd’中において直鎖状に連結される-Z-Si-の繰り返し数と等しくなる。
【0344】
例えば、下記にRd’中においてZ基を介してSi原子が連結された一例を示す。
【0345】
【化29】
【0346】
上記式において、*は、主鎖のSiに結合する部位を意味し、…は、ZSi以外の所定の基が結合していること、即ち、Si原子の3本の結合手がすべて…である場合、ZSiの繰り返しの終了箇所を意味する。また、Siの右肩の数字は、*から数えたZ基を介して直鎖状に連結されたSiの出現数を意味する。即ち、SiでZSi繰り返しが終了している鎖は「Rd’中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」が2個であり、同様に、Si、Si及びSiでZSi繰り返しが終了している鎖は、それぞれ、「Rd’中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」が3、4及び5個である。なお、上記の式から明らかなように、Rd’中には、ZSi鎖が複数存在するが、これらはすべて同じ長さである必要はなく、それぞれ任意の長さであってもよい。
【0347】
好ましい態様において、下記に示すように、「Rd’中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」は、すべての鎖において、1個(左式)又は2個(右式)である。
【0348】
【化30】
【0349】
一の態様において、Rd’中のZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数は1個又は2個、好ましくは1個である。
【0350】
式中、Rd3は、同一又は異なり、水酸基又は加水分解性基を表す。水酸基は、特に限定されないが、加水分解性基が加水分解して生じたものであってよい。
【0351】
好ましくは、Rd3は、-OR(式中、Rは、置換又は非置換のC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基を表す)である。
【0352】
式中、Rd4は、同一又は異なり、水素原子又は低級アルキル基を表す。該低級アルキル基は、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0353】
式中、p11は、同一又は異なり、0~3の整数であり;q11は、同一又は異なり、0~3の整数であり;r11は、同一又は異なり、0~3の整数である。ただし、p11、q11及びr11の和は3である。
【0354】
好ましい態様において、R中の末端のR’(R’が存在しない場合、R)において、上記q11は、好ましくは2以上、例えば2又は3であり、より好ましくは3である。
【0355】
好ましい態様において、Rは、末端部に、少なくとも1つの、-Si(-Z-SiRd3 q11d4 r11又は-Si(-Z-SiRd3 q11d4 r11、好ましくは-Si(-Z-SiRd3 q11d4 r11を有し得る。式中、(-Z-SiRd3 q11d4 r11)の単位は、好ましくは(-Z-SiRd3 )である。さらに好ましい態様において、Rの末端部は、すべて-Si(-Z-SiRd3 q11d4 r11であることが好ましく、より好ましくは-Si(-Z-SiRd4 であり得る。末端部の各Siに結合したRd3を多くするほど、基材への密着性が高くなり、優れた耐久性を得ることができる。
【0356】
好ましい態様において、式中、水酸基又は加水分解性基を有するSi原子の数は、式(1b)においては、好ましくは1~6個、より好ましくは2~4個、さらに好ましくは3個であり得、式(2b)においては、好ましくは2~12個、より好ましくは4~8個、さらに好ましくは6個であり得る。
【0357】
好ましい態様において、v10は3であり、Rは、それぞれ独立して、-Z-SiRd3 q11d4 r11である。
【0358】
は、式(α1)の環に直接結合する単結合又は二価の連結基である。Lとしては、単結合、アルキレン基、又は、エーテル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、又は、エーテル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基がより好ましい。
【0359】
として、具体的には、-C-、-C-、-C-O-CH-、-CO-O-CH-CH(OH)-CH-、-CH-、-C-等が挙げられる。
【0360】
上記含シラン反応性架橋基としては、-L-SiR 、-L-Si(OR60、-L-Si(NR60 、-L-Si(OCOR60(各式中、Lは上述のとおり、Rはハロゲン原子、R60は独立に炭素数1~4のアルキル基)が挙げられる。
【0361】
一の態様において、上記含シラン反応性架橋基としては、
式:-L-{C(Ra6s6(Rb6t6(Rc6u6(Rd6v6n6
(式中、Lは単結合又は二価の連結基、
a6、Rb6及びRc6は、同一又は異なり、水素原子、水酸基または加水分解性基であり;好ましくは、Ra6、Rb6及びRc6は、同一又は異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミノ基、炭素数1~10のアセトキシ基、炭素数3~10のアリル基、炭素数3~10のグリシジル基、OCOR67(式中、R67は、炭素数1~6のアルキル基)、OH又は-Y-SiR65 j666 3-j6であり;より好ましくは、Ra6、Rb6及びRc6は、同一又は異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアミノ基、炭素数1~10のアセトキシ基、炭素数3~10のアリル基、OCOR67(式中、R67は、炭素数1~6のアルキル基)、OH又は-Y-SiR65 j666 3-j6である。
d6は、同一又は異なり、-O-、-NH-、-C≡C-、又は、-Z-CR61 p662 q663 r6である。
は、同一又は異なり、酸素原子又は2価の有機基である。
式中、R61は、同一又は異なり、Rd6’を表す。
d6’は、Rd6と同意義である。
d6中、Z基を介して直鎖状に連結されるCは最大で5個である。
62は、同一又は異なり、-Y-SiR65 j666 3-j6である。
は、同一又は異なり、2価の有機基である。
65は、同一又は異なり、水酸基又は加水分解性基である。
66は、同一又は異なり、水素原子又は低級アルキル基である。
j6は、(-Y-SiR65 j666 3-j6)単位毎に独立して、1~3の整数である。
63は、同一又は異なり、水素原子又は低級アルキル基である。
p6は、同一又は異なり、0~3の整数である。
q6は、同一又は異なり、0~3の整数である。
r6は、同一又は異なり、0~3の整数である。
s6、t6及びu6は、同一又は異なり0又は1であり、v6は0~3の整数であり、n6は、1~20の整数である。
ただし、式中、少なくとも2つの(-Y-SiR65 j666 3-j6)が存在する。)
で表される基が好ましい。
【0362】
は、式(α1)又は式(α2)の環に直接結合する単結合又は二価の連結基である。Lとしては、単結合、アルキレン基、又は、エーテル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、又は、エーテル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基がより好ましい。
【0363】
として、具体的には、-C-、-C-、-C-O-CH-、-CO-O-CH-CH(OH)-CH-、-CH-、-C-等が挙げられる。
【0364】
、R、R、Ra6、Rb6及びRc6において、ハロゲンとしては、Cl、Br又はIが好ましく、Clがより好ましい。
【0365】
、R、R、Ra6、Rb6及びRc6において、アルコキシ基の炭素数は、1~5であることが好ましい。上記アルコキシ基は鎖状でも、環状でも、分岐していてもよい。また、水素原子がフッ素原子等に置換されていてもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピロキシ基、又はブトキシ基が好ましく、より好ましくは、メトキシ基、又はエトキシ基である。
【0366】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHg10-O-(CHh10-(式中、g10は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、h10は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、又は、-フェニレン-(CHi10-(式中、i10は、0~6の整数である)であり、より好ましくはC1-3アルキレン基である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0367】
式中、R61は、各出現においてそれぞれ独立して、Rd6’を表す。Rd6’は、Rd6と同意義である。
【0368】
d6中、Z基を介して直鎖状に連結されるCは最大で5個である。即ち、上記Rd6において、R61が少なくとも1つ存在する場合、Rd6中にZ基を介して直鎖状に連結されるSi原子が2個以上存在するが、かかるZ基を介して直鎖状に連結されるC原子の数は最大で5個である。なお、「Rd6中のZ基を介して直鎖状に連結されるC原子の数」とは、Rd6中において直鎖状に連結される-Z-C-の繰り返し数と等しくなる。
【0369】
好ましい態様において、下記に示すように、「Rd6中のZ基を介して直鎖状に連結されるC原子の数」は、すべての鎖において、1個(左式)又は2個(右式)である。
【0370】
【化31】
【0371】
一の態様において、Rd6中のZ基を介して直鎖状に連結されるC原子の数は1個又は2個、好ましくは1個である。
【0372】
式中、R62は、-Y-SiR65 j666 3-j6を表す。
【0373】
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表す。
【0374】
好ましい態様において、Yは、C1-6アルキレン基、-(CHg11-O-(CHh11-(式中、g11は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、h11は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-フェニレン-(CHi11-(式中、i11は、0~6の整数である)である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0375】
一の態様において、Yは、C1-6アルキレン基又は-フェニレン-(CHi11-であり得る。Yが上記の基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0376】
上記R65は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基を表す。上記「加水分解性基」としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0377】
好ましくは、R65は、-OR(式中、Rは、置換又は非置換のC1-3アルキル基、より好ましくはエチル基又はメチル基、特にメチル基を表す)である。
【0378】
上記R66は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は低級アルキル基を表す。該低級アルキル基は、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0379】
j6は、(-Y-SiR65 j666 3-j6)単位毎に独立して、1~3の整数を表し、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0380】
上記R63は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は低級アルキル基を表す。該低級アルキル基は、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0381】
式中、p6は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;q6は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;r6は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、p6、q6及びr6の和は3である。
【0382】
好ましい態様において、Rd6中の末端のRd6’(Rd6’が存在しない場合、Rd6それ自体)において、上記q6は、好ましくは2以上、例えば2又は3であり、より好ましくは3である。
【0383】
一の態様において、X基は、式:
-L-{Si(Rs10(Rt10(Ru10(Rv10n10、又は
-L-{C(Ra6s6(Rb6t6(Rc6u6(Rd6v6n6
(式中、各記号は、上記と同意義である。)
で表される基である。
【0384】
一の態様において、Xは、独立に、上記ポリエーテル鎖を含む一価の有機基であってよい。上記有機基の好適な基は、Rと同じである。
【0385】
別の態様において、Xは、独立に、上記含シラン反応性架橋基であってもよい。
【0386】
別の態様において、Xは、独立に、シリコーン残基、シルセスキオキサン残基及びシラザン基からなる群より選択される少なくとも1種の基であってもよい。
【0387】
上記シリコーン残基としては、次の基が挙げられる。
【0388】
【化32】
【0389】
【化33】
【0390】
【化34】
【0391】
【化35】
【0392】
【化36】
【0393】
各式中、Lは単結合又は二価の連結基、n6は1~20の整数、m6は0~10の整数、R81は、各々独立して、一価の基であり、各基が有するR81のうち、少なくとも1つは反応性基である。
【0394】
各基に含まれる複数のR81は、各々独立して、一価の基であり、上記反応性基であってもよいし、上記反応性基以外の基であってもよい。但し、各基に含まれる複数のR81のうち、少なくとも1つは、上記反応性基である。
【0395】
上記反応性基としては、H、ハロゲン原子又は-OR82(R82は炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基)、-L-SiR (Lは単結合又は炭素数1~10のアルキレン基、Rはハロゲン原子)、-L-Si(OR60(Lは上記のとおり、R60は独立に炭素数1~4のアルキル基)、-L-Si(NR60 (L及びR60は上記のとおり)、-L-Si(OCOR60(L及びR60は上記のとおり)及びこれらの基のいずれかを含む基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0396】
上記反応性基以外の基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン化アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン化アルキルエーテル基、アルキルアミド基、ハロゲン化アルキルアミド基、ウリル基、ハロゲン化ウリル基、ウレア基、ハロゲン化ウレア基、-CONRCOR(R及びRは独立にH、アルキル基又はハロゲン化アルキル基)、糖鎖を含む基、アルキレンポリエーテル基、アレーン基、ハロゲン化アレーン基、ヘテロ環を含む基、アリール基、及び、ハロゲン化アリール基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0397】
は、式(1b)又は式(2b)の環に直接結合する単結合又は二価の連結基である。Lとして好適なものは、上述したとおりである。
【0398】
上記シリコーン残基としては、また、次の基も挙げられる。
【0399】
【化37】
【0400】
【化38】
【0401】
【化39】
【0402】
【化40】
【0403】
【化41】
【0404】
【化42】
【0405】
【化43】
【0406】
【化44】
【0407】
【化45】
【0408】
各式中、Lは単結合又は二価の連結基、R83は、各々独立して、一価の基であり、各基が有するR83のうち、少なくとも1つは反応性基である。
【0409】
各基に含まれる複数のR83は、各々独立して、一価の基であり、上記反応性基であってもよいし、上記反応性基以外の基であってもよい。但し、各基に含まれる複数のR83のうち、少なくとも1つは、上記反応性基である。
【0410】
上記反応性基としては、-H、-OR84(R84は炭素数1~4のアルキル基)、ハロゲン原子、-OH、-O-CR84=CH(R84は上記のとおり)、-OCOR84(R84は上記のとおり)、-OCOORj2(Rj2はアルキル基又はハロゲン化アルキル基)、-NR84 (R84は上記のとおり)及びこれらの基のいずれかを含む基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0411】
上記反応性基以外の基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン化アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン化アルキルエーテル基、アルキルアミド基、ハロゲン化アルキルアミド基、ウリル基、ハロゲン化ウリル基、ウレア基、ハロゲン化ウレア基、-CONRCOR(R及びRは独立にH、アルキル基又はハロゲン化アルキル基)、糖鎖を含む基、アルキレンポリエーテル基、アレーン基、ハロゲン化アレーン基、ヘテロ環を含む基、アリール基、及び、ハロゲン化アリール基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0412】
は、式(α1)又は式(α2)の環に直接結合する単結合又は二価の連結基である。Lとして好適なものは、上述したとおりである。
【0413】
上記シルセスキオキサン残基としては、次の基が挙げられる。
【0414】
【化46】
【0415】
【化47】
【0416】
【化48】
【0417】
【化49】
【0418】
【化50】
【0419】
各式中、Lは単結合又は二価の連結基、R85は、各々独立して、一価の基であり、各基が有するR85のうち、少なくとも1つは反応性基、p10は独立して0~5000の整数である。
【0420】
各基に含まれる複数のR85は、各々独立して、一価の基であり、上記反応性基であってもよいし、上記反応性基以外の基であってもよい。但し、各基に含まれる複数のR85のうち、少なくとも1つは、上記反応性基である。
【0421】
上記反応性基としては、-H、-OR84(R84は炭素数1~4のアルキル基)、ハロゲン原子、-OH、-O-CR84=CH(R84は上記のとおり)、-OCOR84(R84は上記のとおり)、-OCOORj2(Rj2はアルキル基又はハロゲン化アルキル基)、-NR84 (R84は上記のとおり)及びこれらの基のいずれかを含む基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0422】
上記反応性基以外の基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン化アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン化アルキルエーテル基、アルキルアミド基、ハロゲン化アルキルアミド基、ウリル基、ハロゲン化ウリル基、ウレア基、ハロゲン化ウレア基、-CONRCOR(R及びRは独立にH、アルキル基又はハロゲン化アルキル基)、糖鎖を含む基、アルキレンポリエーテル基、アレーン基、ハロゲン化アレーン基、ヘテロ環を含む基、アリール基、及び、ハロゲン化アリール基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0423】
は、式(1b)又は式(2b)の環に直接結合する単結合又は二価の連結基である。Lとして好適なものは、上述したとおりである。
【0424】
は、上述したポリエーテル鎖を含む一価の有機基、含シラン反応性架橋基、シリコーン残基、シルセスキオキサン残基及びシラザン基とは異なる基であってもよい。
【0425】
すなわち、Xは、独立に、H、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン化アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン化アルキルエーテル基、アルキルアミド基、ハロゲン化アルキルアミド基、ウリル基、ハロゲン化ウリル基、ウレア基、ハロゲン化ウレア基、-OCOORj2(Rj2はアルキル基又はハロゲン化アルキル基)、-CONRCOR(R及びRは独立にH、アルキル基又はハロゲン化アルキル基)、糖鎖を含む基、アルキレンポリエーテル基、アレーン基、ハロゲン化アレーン基、ヘテロ環を含む基、アリール基、ハロゲン化アリール基、シリコーン残基(但し反応性基を有するものを除く)及びシルセスキオキサン残基(但し反応性基を有するものを除く)からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0426】
上記シリコーン残基(但し反応性基を有するものを除く)としては、次の基が挙げられる。なお、上記反応性基とは、R85を構成し得る反応性基として例示したものである。
【0427】
【化51】
【0428】
【化52】
【0429】
【化53】
【0430】
【化54】
【0431】
【化55】
【0432】
【化56】
【0433】
【化57】
【0434】
【化58】
【0435】
【化59】
【0436】
各式中、Lは単結合又は二価の連結基、R86は、各々独立して、一価の反応性基以外の基である。
【0437】
上記反応性基以外の基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン化アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン化アルキルエーテル基、アルキルアミド基、ハロゲン化アルキルアミド基、ウリル基、ハロゲン化ウリル基、ウレア基、ハロゲン化ウレア基、-CONRCOR(R及びRは独立にH、アルキル基又はハロゲン化アルキル基)、糖鎖を含む基、アルキレンポリエーテル基、アレーン基、ハロゲン化アレーン基、ヘテロ環を含む基、アリール基、及び、ハロゲン化アリール基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0438】
は、式(1b)又は式(2b)の環に直接結合する単結合又は二価の連結基である。Lとしては、単結合、アルキレン基、又は、エーテル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、又は、エーテル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基がより好ましい。
【0439】
として、具体的には、-C-、-C-、-C-O-CH-、-CO-O-CH-CH(OH)-CH-等が挙げられる。
【0440】
上記シルセスキオキサン残基(但し反応性基を有するものを除く)としては、次の基が挙げられる。なお、上記反応性基とは、R85を構成し得る反応性基として例示したものである。
【0441】
【化60】
【0442】
【化61】
【0443】
【化62】
【0444】
【化63】
【0445】
【化64】
【0446】
各式中、Lは単結合又は二価の連結基、R86は、各々独立して、一価の反応性基以外の基、p10は独立して0~5000の整数である。
【0447】
上記反応性基以外の基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン化アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ハロゲン化アルキルエーテル基、アルキルアミド基、ハロゲン化アルキルアミド基、ウリル基、ハロゲン化ウリル基、ウレア基、ハロゲン化ウレア基、-CONRCOR(R及びRは独立にH、アルキル基又はハロゲン化アルキル基)、糖鎖を含む基、アルキレンポリエーテル基、アレーン基、ハロゲン化アレーン基、ヘテロ環を含む基、アリール基、及び、ハロゲン化アリール基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0448】
は、式(α1)又は式(α2)の環に直接結合する単結合又は二価の連結基である。Lとして好適なものは、上述したとおりである。
【0449】
上記シラザン基としては、次の基が挙げられる。
【0450】
【化65】
【0451】
【化66】
【0452】
各式中、Lは単結合又は二価の連結基、mは2~100の整数、nは100以下の整数、R87は、各々独立して、H、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、炭素数5~12のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、アルキルシリル基、アルキルシアノ基、炭素数1~4のアルコキシ基である。
【0453】
は、式(α1)又は式(α2)の環に直接結合する単結合又は二価の連結基である。Lとしては、単結合、アルキレン基、又は、エーテル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、又は、エーテル結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基がより好ましい。
【0454】
として、具体的には、-C-、-C-、-C-O-CH-、-CO-O-CH-CH(OH)-CH-等が挙げられる。
【0455】
上記シラザン基としては、具体的には、次の基が挙げられる。
【0456】
【化67】
【0457】
【化68】
【0458】
【化69】
【0459】
【化70】
【0460】
【化71】
【0461】
【化72】
【0462】
【化73】
【0463】
上記化合物において、Rの平均分子量は、特に限定されるものではないが、500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。
【0464】
上記化合物は、特に限定されるものではないが、5×10~1×10の平均分子量を有し得る。なかでも、好ましくは2,000~30,000、より好ましくは2,500~12,000の平均分子量を有することが、耐UV性及び摩擦耐久性の観点から好ましい。なお、本開示において「平均分子量」は数平均分子量を言い、「平均分子量」は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0465】
一の態様において、化合物(A1)は、好ましくは式(1)で表される化合物、より好ましくは式(1a)で表される化合物、さらに好ましくは式(1b)で表される化合物であり得、別の態様において、化合物(A1)は、好ましくは式(2)で表される化合物、より好ましくは式(2a)で表される化合物、さらに好ましくは式(2b)で表される化合物でありうる。
【0466】
上記式(1)又は式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、特に限定されるものではないが、5×10~1×10の平均分子量を有し得る。かかる範囲のなかでも、2,000~32,000、より好ましくは2,500~12,000の平均分子量を有することが、摩耗耐久性の観点から好ましい。なお、かかる「平均分子量」は、数平均分子量を言い、「平均分子量」は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0467】
化合物(A1)における、式(1)または式(2)で表される化合物の合計の含有率は、好ましくは80質量%以上100質量%以下、より好ましくは90質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下でありうる。
【0468】
上記エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)は、式(3):
【0469】
【化74】
【0470】
[式中:
Mは、(Rs1 SiO1/2)で表される1価の基であり;
Dは、(Rs1 SiO2/2)で表される2価の基であり;
Tは、(Rs1SiO3/2)で表される3価の基であり;
Qは、(SiO4/2)で表される4価の基であり;
s1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、加水分解性基、-Xs1-NRs2 、-Xs1-COOH、エポキシ環を有する基、1価の有機基または-Xs1-SiRs3 n11s4 3-n11であり;
s2は、水素原子またはC1-20アルキル基であり;
s3は、水酸基または加水分解性基であり;
s4は、C1-20のアルキル基であり;
s1は、2価の有機基であり;
n11は、1~3の整数であり;
a1は、3~60の整数であり;
b1は、10~1,100の整数であり;
c1は、0~30の整数であり;
d1は、0~15の整数であり;
c1+d1は、1以上であり;
ただし、少なくとも1つのRs1がエポキシ環を含み、少なくとも1つの別のRs1が水酸基または加水分解性基である。]
で表される化合物を含むことが好ましい。
【0471】
上記エポキシ環を有する基としては、エポキシ基(単環のエポキシ基);エポキシシクロヘキシル基、エポキシノルボルニル基等の多環のエポキシ基等が挙げられる。
【0472】
上記加水分解性基としては、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)が挙げられ、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0473】
SiO1/2は、Si原子にO原子が結合し、Si原子が、O原子を介して結合する他の原子と、O原子を共有していることを表す。SiO1/2、SiO2/2、SiO3/2は、それぞれ、Si原子が該O原子を1個、2個または3個有することを意味する。
【0474】
上記式(3)において、Rs1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、-Xs1-COOH、エポキシ環を有する基、加水分解性基、1価の有機基、-Xs1-NRs2 または-Xs1-SiRs3 n11s4 3-n11である。ただしRs2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-20アルキル基であり;Rs3は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり;Rs4は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-20アルキル基であり;Xs1は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基である。
【0475】
上記加水分解性基としては、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)が挙げられ、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0476】
s1において、上記1価の有機基は、好ましくはC1-400炭化水素基、より好ましくはC1-400脂肪族炭化水素基である。上記炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基)に含まれる-CH-は、-O-、-CO-、-NRj3-(Rj3は、水素原子;置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)に置き換わっていてもよく、かかる炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基)に含まれる水素原子は、水酸基、カルボキシ基、エポキシ環を有する基に置換されていてもよい。上記炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基)は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、上記炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基)は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。上記エポキシ環を有する基は、上記と同意義である。
【0477】
1の態様において、上記C1-400炭化水素基は、C1-30脂肪族炭化水素基であってよく、C1-25脂肪族炭化水素基であってよい。別の態様において、上記C1-400炭化水素基は、C1-300脂肪族炭化水素基であってよく、C10-150脂肪族炭化水素基であってよく、C15-120脂肪族炭化水素基であってよい。さらに別の態様において、上記C1-400炭化水素基は、C10-50脂肪族炭化水素基であってよく、C15-40脂肪族炭化水素基であってよい。
【0478】
上記式中、Xs1は、各出願においてそれぞれ独立して、好ましくは-Rs8-Ox10-Rs9-(式中、Rs8及びRs9は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又はC1-20アルキレン基であり、x10は0又は1である。)である。かかるC1-20アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。かかるC1-20アルキレン基は、好ましくはC1-10アルキレン基、より好ましくはC1-6アルキレン基、さらに好ましくはC1-3アルキレン基である。
【0479】
上記式中、Rs2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数C1-20アルキル基である。かかるC1-20アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖又は分子鎖のC1-16アルキル基、更に直鎖又は分枝鎖のC1-6アルキル基、特に直鎖又は分枝鎖のC1-3アルキル基であり、好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特に直鎖のC1-3アルキル基である。
【0480】
上記式中、Rs3は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基である。かかる加水分解性基としては、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)が挙げられ、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0481】
上記式中、Rs4は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-20アルキル基である。かかるC1-20アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは直鎖又は分子鎖のC1-16アルキル基、更に直鎖又は分枝鎖のC1-6アルキル基、特に直鎖又は分枝鎖のC1-3アルキル基であり、好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特に直鎖のC1-3アルキル基である。
【0482】
上記-Xs1-NRs2 、1価の有機基または-Xs1-SiRs3 n11s4 3-n11は、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。かかる置換基としては、ハロゲン原子、1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員のヘテロアリール基、水酸基、加水分解性及びエポキシ基が挙げられる。かかる加水分解性基としては、-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)が挙げられ、より好ましくは-OR(即ち、アルコキシ基)である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。
【0483】
s1としては、以下の式で表される基が挙げられる。
【0484】
【化75】
【0485】
上記式中、Rj5は、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す。Rj5としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rj5は、メチル基であり、別の態様において、Rj5は、エチル基である。
【0486】
m50は、6~20の整数を示し、好ましくは8~18の整数を示す。n50は、2~18の整数を示し、好ましくは4~8の整数を示す。o50は、0~30の整数を示し、好ましくは2~20の整数、とりわけ5~15の整数を示す。p50は、0~30の整数を示し、好ましくは0~10の整数を示す。q50は、0~30の整数を示し、好ましくは2~20の整数、とりわけ5~15の整数を示す。r50は、0~30の整数を示し、好ましくは0~10の整数を示す。s50は、0~10の整数、好ましくは1~5の整数を示す。t50は、1~20の整数、好ましくは1~10の整数を示す。u50は、1~10の整数、好ましくは2~4の整数を示す。v50は、1~10の整数を示し、好ましくは2~5の整数を示す。w50は、1~6の整数を示し、好ましくは1~3の整数を示す。
【0487】
式(3)において、少なくとも1つのRs1がエポキシ環を含み、少なくとも1つの別のRs1が水酸基または加水分解性基である。上記エポキシ環は、単環のエポキシ環であってよく、エポキシシクロデカン環、エポキシノルボルナン環等の多環のエポキシ環であってよい。Rs1におけるエポキシ環を含む基には、Rs1がエポキシ基である場合;Rs1で表される-Xs1-NRs2 、1価の有機基または-Xs1-SiRs3 n11s4 3-n11の置換基がエポキシ基である場合;およびRs1に含まれる-CH-が-O-に置き換えられることによって、エポキシ基となっている場合のいずれも含まれる。
【0488】
エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)におけるエポキシ当量(エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)の分子量/1分子のエポキシ基含有シリコーン化合物(A2)に含まれるエポキシ環の個数)は、例えば50g/eq以上1,000g/eq以下、より好ましくは100g/eq以上800g/eq以下、さらに好ましくは200g/eq以上600g/eq以下である。
【0489】
式(3)において、さらに別の少なくとも1つのRs1が、水酸基を置換基として有する有機基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチルプロピル基、アルコキシシリルアルキル、ドデシル基又はアミノアルキル基からなる群より選択される基を有することが好ましい。
【0490】
a1は、3~60の整数を示し、好ましくは3~40の整数、より好ましくは3~24の整数を示す。b1は、10~1,100の整数を示し、好ましくは30~920、より好ましくは50~820の整数を示す。c1は、0~30の整数を示し、好ましくは0~20の整数を示す。d1は、0~15の整数を示し、好ましくは0~12の整数を示す。ただし、c1とd1の合計は1以上である。c1+d1の合計が1以上であるため、エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)は、分岐構造を含むこととなる。
【0491】
a1、b1、c1、d1は、上記組成物に含まれるエポキシ基含有シリコーン化合物(A2)における平均値であると理解され得る。
【0492】
式(3)において、M、D、T、Qの結合順序は、任意である。一態様において、M、D、T、Qは、ランダムに分布していてよ。例えば、個別のM、D、T、Qがランダムに結合していてよく、個別のM、D、T、Qが交互に配置されていてもよく、任意の数のM、D、TまたはQを含むブロックが任意に連続していてもよい。また、M、D、T、Qは、または式(3)において分布勾配を形成してもよく、とりわけ、あらゆる混合形態を形成してもよい。
【0493】
エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)は、側鎖変性シロキサンも、α,ω変性シロキサンも含み得る。エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)は、分岐構造を含むため、純粋な直鎖状構造と比べて、置換可能性がより多く、変性度がより高くなり得るともいえる。それによって、長く連続したシロキサン主鎖を有する構造が得られる。シロキサン中の官能基の数がより多いと、得られる膜(表面処理層)における架橋密度がより高くなり得、膜(表面処理層)の耐性(強度)がより向上し得るとともに、顕著な付着防止作用が期待される。
【0494】
エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)は、シロキサン部分で単分岐(いわゆるモノT構造又はモノQ構造)又は多分岐(いわゆるマルチT構造又はマルチQ構造)したオルガノ変性シロキサンであることが好ましい。
【0495】
エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)は、例えば国際公開第2011/088937号、欧州特許第2176319号明細書、欧州特許第2159248号明細書に記載されており、使用することができる。
【0496】
エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)の平均分岐度は、好ましくは1超、より好ましくは1.25超である。
【0497】
平均分岐度Kは、本開示の範囲では、M単位の数(a1)と、T単位の数(c1)及びQ単位の数(d1)の合計との比[a1/(c1+d1)]であると理解される。単位の名称は、国際的に認知された命名法に相当し、例えばその名称は、Thieme Toempp Online, Georg Thieme Verlag, 2008で調べることもできる。分岐度は、それぞれの単位に割り当てられている29Si NMRスペクトルにおけるピークの面積積分の比を定めることによって決定される。
【0498】
エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)における直接連続するD単位の平均数F1は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。
【0499】
上記係数F1は、本開示の範囲では、直接連続するD単位の平均数を意味し、D単位の数(b1)、T単位の数(c1)、Q単位の数(d1)に基づいて、b1/(1+2×c1+3×d1)として計算されると理解される。係数F1は、エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)のシリコーン特性を表す。F1は、それぞれの単位に割り当てられた29Si-NMRスペクトルにおけるピークの面積積分の比を形成することによって決定される。
【0500】
エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)の重量平均分子量は、好ましくは1,000~70,000、より好ましくは1,500~50,000、更に好ましくは2,000~35,000である。
【0501】
エポキシ基含有シリコーン化合物(A2)の粘度は、好ましくは50mPa・s以上5,000mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以上3,500mPa・s以下、更に好ましくは150mPa・s以上2,000mPa・s以下である。式(3)で表されるシリコーン化合物の粘度は、DIN 53015に準拠し、25℃で測定できる。
【0502】
上記反応物(A3)は、上記化合物(A1)と(A2)とを反応させることにより製造されうる。かかる反応は、反応溶剤の存在下または無溶剤下で実施してよい。一の態様において、反応温度は、好ましくは20℃以上150℃以下、より好ましくは50℃以上130℃以下であってよく、反応時間は、好ましくは10分以上50時間以下であってよい。上記反応溶剤としては、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン、メチノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフロオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロー3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)-ペンタン、パーフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン等のフッ素系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸tert-ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、酢酸ジエチル等のカルボン酸エステル;炭酸ジメチル、炭酸エチレン等の炭酸エステル;γ-ブチルラクトン等の環状エステル等のエステル系溶媒、アルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン等の脂肪族炭化水素溶剤、ベンゼン、トルエン、ナフサカット等の芳香族炭化水素溶剤を用いてよい。
【0503】
上記有機シラン化合物(A)において、上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A1)と、エポキシ環含有シリコーン化合物(A2)との反応物(A3)の含有率は、好ましくは1質量%以上50質量%以下、より好ましくは2質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上20質量%以下でありうる。
【0504】
本開示の組成物の不揮発分中、上記有機シラン化合物(A)の含有率は、好ましくは60質量%以上99質量%以下、より好ましくは70質量%以上95質量%以下であり得る。
本開示の組成物において、不揮発分は、組成物の全量から溶剤(D)を除いた部分としてよい。
【0505】
[架橋剤(B)]
本開示の組成物は、架橋剤(B)をさらに含んでいてもよい。これにより、有機シラン化合物(A)が硬化されうる。一の態様において、かかる架橋剤は、エポキシ基および加水分解性シリル基の少なくとも一方と反応しうる基を2個以上有する化合物(B1)を含むことが好ましい。
【0506】
上記エポキシ基および加水分解性シリル基の少なくとも一方と反応しうる基としては、-ORb5、カルボキシ基、エポキシ基、-NRb5 および-SiRb6 n6b7 3-n6からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。ただし、Rb5は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-20アルキル基であり;Rb6は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり;Rb7は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-20アルキル基であり;n6は1~3の整数でありうる。
【0507】
上記架橋剤(B)において、エポキシ基および加水分解性シリル基の少なくとも一方と反応しうる基の個数は、1分子中に2個以上であり、例えば6個以下、さらに4個以下であってよい。
【0508】
上記架橋剤(B)としては、
・1分子中に、シラノール基を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物、
・後述する式(B3)~(B5)で表される有機ケイ素化合物
等を挙げることができる。
【0509】
1分子中に、シラノール基を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物:
上記有機ケイ素化合物において、2個のシラノール基は、分子主鎖の両末端に存在することが好ましい。ここで、分子主鎖とは、該有機ケイ素化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表す。
【0510】
上記分子主鎖の両末端にシラノール基を有する化合物としては、例えば、以下の式(B1)または(B2)で表される化合物を挙げることができる。
【0511】
【化76】
【0512】
上記式(B1)または(B2)中、Rb11は、各出現においてそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~8の1価炭化水素基である。Rb11としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;およびこれらの基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子で置換した基(例えば、クロロメチル基、ブロモエチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基、ノナフルオロヘキシル基)が挙げられる。
【0513】
上記炭化水素基の置換基としては、-ORb5、カルボキシ基、エポキシ基、-NRb5 および-SiRb6 n6b7 3-n6からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。Rb5、Rb6、Rb7は、上記と同意義である。
【0514】
上記式(B1)または(B2)中、Rb12は、各出現においてそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~20であり、好ましくは、炭素原子数2~10の2価炭化水素基である。Rb12としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等のアリーレン基;これらの基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子等で置換した基;およびこれらの置換または非置換のアルキレン基、アリーレン基の組合せが例示される。この中で、Rb12としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基およびフェニレン基が好ましく、特にエチレン基、プロピレン基、ブチレン基およびフェニレン基が好ましい。分子内にシラノール基を有する化合物としては、Rb11 SiO1/2、Rb11 SiO2/2、Rb11SiO3/2、およびSiO単位の1種または2種以上の組合せとシラノール基との結合で構成される樹脂状化合物が挙げられる。上記樹脂状化合物中の構成単位同士は、直接結合していてもよいし、2価以上の炭化水素基を介して結合していてもよい。
【0515】
上記炭化水素基の置換基としては、-ORb5、カルボキシ基、エポキシ基、-NRb5 および-SiRb6 n6b7 3-n6からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。Rb5、Rb6、Rb7は、上記と同意義である。
【0516】
上記式(B1)または(B2)中、β1は、各出現においてそれぞれ独立して、1以上の整数である。β1は、好ましくは、2以上、より好ましくは、5以上であり、好ましくは、50以下、より好ましくは、20以下である。
【0517】
上記1分子中にシラノール基を少なくとも2有する有機ケイ素化合物(具体的には、式(B1)または(B2)で表される化合物)は、分子構造中にPFPE構造を有しないことが好ましい。
【0518】
式(B3)、(B4)、または(B5)で表される有機ケイ素化合物:
【0519】
【化77】
【0520】
上記式(B3)および(B4)中、Rb13は、水素原子または1価の有機基である。上記Rb13は、加水分解性シリル基と反応し得る部分である。
【0521】
上記Rb13は、1価の有機基であることが好ましい。
【0522】
上記Rb13-は、より好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、CH-、C-、C-、CFCH-、CHCO-、CH=C(CH)-、CHCHC(CH)=N-、(CHN-、(CN-、CH=C(OC)-、(CHC=C(OC17)-、または
【化78】
である。
【0523】
上記式(B3)および(B4)中、Rb14は、各出現においてそれぞれ独立して、1価の有機基である。Rb14は、置換または非置換の1価の炭化水素基であることが好ましく、置換または非置換の1価のC1-12炭化水素基であることがより好ましい。Rb14は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;および、これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子等で置換した基(例えば、クロロメチル基、ブロモエチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等を挙げることができる。
【0524】
上記炭化水素基の置換基としては、-ORb5、カルボキシ基、エポキシ基、-NRb5 および-SiRb6 n6b7 3-n6からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。Rb5、Rb6、Rb7は、上記と同意義である。
【0525】
一の態様において、Rb14は、下記一般式で表される基であり得る。
Rf-Rb15
上記式中、Rfは1価のフッ素化ポリエーテル基である。上記Rfとしては、上記PFPEのCF末端にCFO-、CFCFO-、CFCFCFO-、(CFCFO-、またはCFCFCFCFO-等が結合された構造のものが例示される。
【0526】
上記Rb15は、2価の有機基である。2価の有機基は上記と同意義である。
【0527】
上記Rb15は、例えば、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子およびイオウ原子の1種または2種以上を含有していてもよく、アミド結合またはスルホンアミド結合を含有してもよい、置換または非置換の2価の炭化水素基であり得る。該2価の炭化水素基の炭素数は2~20であることが好ましい。ここで、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子またはイオウ原子を介在せず、かつアミド結合またはスルホンアミド結合を含有しない、置換または非置換の2価の炭化水素基の具体例としては、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基;シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等のアリーレン基;これらアルキレン基とアリーレン基との組み合わせ;および、これらアルキレン基およびアリーレン基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0528】
上記2価の炭化水素基において、酸素原子は-O-として、窒素原子は-NRb51-(Rb51は水素原子またはC1-10アルキル基またはC1-10アリール基)または-N=として、ケイ素原子は-SiRb52b53-(Rb52、Rb53は、各出現においてそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基またはアリール基)として、イオウ原子は-S-として含まれ得る。また、上記2価の炭化水素基において、アミド結合は-C(=O)NRb51-(Rb51は上記と同じ)として、またスルホンアミド結合は-SONRb51-(Rb51は上記と同じ)として含まれ得る。このような2価の炭化水素基の具体例としては、下記のものが挙げられる。なお、下記式でMeはメチル基、Phはフェニル基を表し、また下記の各式において、左側(各式のJ)にRf基が結合する。
【0529】
上記炭化水素基の置換基としては、-ORb5、カルボキシ基、エポキシ基、-NRb5 および-SiRb6 n6b7 3-n6からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。Rb5、Rb6、Rb7は、上記と同意義である。
【0530】
【化79】
[式中、Jは結合部位を示す。]
【0531】
上記式(B3)および(B4)中、β2は、各出現においてそれぞれ独立して、2または3であり、β3は、各出現においてそれぞれ独立して、2または3である。
【0532】
上記式(B5)中、Rb13、Rb14は上記と同意義である。上記式(B5)中、Rb16-は、各出現においてそれぞれ独立して、Rb18-Rb17-を表す。
【0533】
上記Rb17は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基を表す。2価の有機基は上記のとおりである。
【0534】
上記Rb17は、好ましくは、C1-10アルキレン基、または、炭素原子数1~10であり主鎖中に窒素原子または酸素原子を含む基である。
【0535】
上記Rb17は、より好ましくは、
1-3アルキレン基、
CHCH-NH-CHCHCH、または
CH-O-CHCHCHである。
【0536】
上記Rb18は、反応性官能基である。上記Rb18は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基、ビニル基、またはメルカプト基であり、より好ましくは、アミノ基である。
【0537】
上記式(B5)中、β4は2以上の整数、好ましくは2または3、より好ましくは3である。上記式(B5)中、β5は0以上の整数、好ましくは0または1である。上記式(B5)中、β6は、1または2、好ましくは1である。但し、β4、β5およびβ6の和は4である。
【0538】
上記式(B5)中、好ましくは、β4は、2または3、β5は、0または1、かつβ6は、1または2であり、より好ましくは、β4は、3、β5は、0かつ、β6は、1である。
【0539】
好ましくは、上記架橋剤(B)は、式(B3)、または式(B5)で表される化合物であり、一態様において、より好ましくは式(B5)で表される化合物であり、別の態様において、より好ましくは式(B3)で表される化合物である。
【0540】
一の態様において、架橋剤(B)は、分子鎖中にPFPEで表される基を有しない。
【0541】
一の態様において、架橋剤(B)の分子量は、1,000以下であり、好ましくは600以下、より好ましくは400以下である。架橋剤の分子量の下限値は、50以上であってもよく、100以上であってもよい。
【0542】
好ましい態様において、上記架橋剤(B)は、テトラエトキシシラン、テトラトリメトシキシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ-n-オクチルトリエトキシシラン、およびトリデカフルオロ-n-オクチルトリメトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1である。
【0543】
上記架橋剤(B)は、有機シラン化合物(A)とともに用いることが好ましい。この場合、架橋剤(B)のSi原子に結合した-O-Rb13と、有機シラン化合物(A)に含まれる加水分解性シリル基とが架橋反応(縮合反応)し得る。
【0544】
上記架橋剤(B)において、式(B1)、(B2)、(B3)、(B4)または(B5)で表される化合物の合計の含有率は、例えば50質量%以上100質量%以下、好ましくは70質量%以上100質量%以下であり得る。
【0545】
上記架橋剤(B)は、アミン架橋剤(B6)またはエポキシ架橋剤(B7)を含んでいてもよい。一態様において、上記架橋剤(B)は、式(B1)、(B2)、(B3)、(B4)または(B5)で表される化合物に加えて、アミン架橋剤(B6)、エポキシ架橋剤(B7)を含んでいてもよい。
【0546】
上記アミン架橋剤(B6)は、代表的には、1分子中に2以上のアミノ基を有する多官能アミン化合物であり、脂肪族多官能アミン化合物、芳香族多官能アミン化合物、脂環式多官能アミン化合物、環状多官能アミン化合物のいずれであってもよく、脂肪族多官能アミン化合物、芳香族多官能アミン化合物および脂環式多官能アミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種とダイマー酸との縮合物;脂肪族多官能アミン化合物、芳香族多官能アミン化合物および脂環式多官能アミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアダクト体;脂肪族多官能アミン化合物、芳香族多官能アミン化合物および脂環式多官能アミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種とケトンとの反応物(ケチミン)も多官能アミン化合物に含まれる。
【0547】
上記脂肪族多官能アミン化合物としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0548】
上記芳香族多官能アミン化合物としては、メタキシリレンジアミン、キシリレンジアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルメチルアミン、キシリレンジアミン3量体、キシリレンジアミン誘導体、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0549】
上記脂環式多官能アミン化合物としては、N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0550】
上記環状多官能アミン化合物としては、ピペリジン、N,N-ジメチルピペラジン、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート等が挙げられる。
【0551】
上記アダクト体としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の多官能エポキシ化合物とのアダクト体等が挙げられる。上記ダイマー酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸の2量化物や、その水素添加物等が挙げられる。上記ケトンとしては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0552】
上記アミン架橋剤(B6)に含まれるアミノ基の個数は、2~3個であってよい。
【0553】
エポキシ架橋剤(B7)は、代表的には、1分子中に2以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物であり得、脂肪族多官能エポキシ化合物、芳香族多官能エポキシ化合物、脂環式多官能エポキシ化合物のいずれであってもよい。
【0554】
上記脂肪族多官能エポキシ化合物としては、1,4-ブタンジオールジグリシジル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0555】
上記芳香族他官能エポキシ化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビフェニルジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0556】
上記脂環式多官能エポキシ化合物としては、2,2’-ビス(4-グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-5,5-スピロ-(3,4-エポキシシクロヘキサン)-1,3-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2-シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのε-カプロラクトン変性物、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0557】
水添型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、又はイソシアヌレート環を含有するエポキシ樹脂あるいは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、前記各種エポキシ樹脂の芳香環を水素添加した水添型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を使用できる。
【0558】
エポキシ架橋剤(B7)に含まれるエポキシ基の個数は、2~3個であってよい。
【0559】
エポキシ架橋剤(B7)としては、市販品を用いてもよく、具体的には、セロキサイド(登録商標)2021P、同2081、EHPE(登録商標)3150(以上、ダイセル社製)、エポジール(登録商標)733、同749、同750、同762(以上エボニック社製)等が挙げられる。
【0560】
上記架橋剤(B)は、本態様の組成物中、有機シラン化合物(A)100質量部に対して、好ましくは5質量部以上60質量部以下、含むことができ、より好ましくは10質量部以上45質量部以下、さらに好ましくは15質量部以上35質量部以下である。
【0561】
上記架橋剤(B)は、本態様の組成物100質量部中、例えば5~60質量部の範囲含むことができ、具体的には、10~45質量部の範囲含むことができる。
【0562】
[触媒(C)]
本開示の組成物は、さらに触媒(以下、「触媒(C)」と称することがある)を含み得る。上記触媒により、有機シラン化合物(A)と架橋剤との縮合反応が促進される。
【0563】
上記触媒としては、金属系触媒、有機酸系触媒、無機酸系触媒、塩基系触媒(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)等を用いることができる。
【0564】
上記有機酸系触媒としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸、リン酸を有する化合物を挙げることができ、具体的には、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トルエンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等を挙げることができる。
【0565】
上記無機酸系触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等を挙げることができる。
【0566】
上記触媒は、金属系触媒であることが好ましい。
【0567】
一の態様において、上記金属系触媒に含まれる金属原子としては、例えば、チタン、ジルコニウム、亜鉛およびスズ等を挙げることができる。これらの金属原子の中で、スズ、チタン、またはジルコニウムを用いることが好ましい。
【0568】
本態様において、上記金属系触媒としては、テトラn-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ノルマルブチルジルコネート、ノルマルプロピルジルコネート、ジブチルスズジメトキシド、ジオクチルスズジカルボキシレートおよびジラウリン酸ジブチルスズからなる群より選ばれる少なくとも1を用いることが好ましく、テトライソプロピルチタネート、ジオクチルスズジカルボキシレートおよびノルマルプロピルジルコネートからなる群より選ばれる少なくとも1であることがより好ましい。上記のような金属系触媒を用いると、有機シラン化合物(例えば、上記反応物(A3)、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A1)、エポキシ基含有シリコーン化合物(A2))と架橋剤との縮合反応が促進される。上記のような金属系触媒は、硬化性組成物に溶解または分散しやすく、均一な反応の促進に寄与し得る。上記のような金属系触媒を含む本態様の硬化性組成物は、異物が少なく、透明性の高い硬化性組成物の硬化物の形成に寄与し得る。
【0569】
本態様の触媒(C)は、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A1)とともに用いることが好ましい。
【0570】
本態様の触媒(C)は、有機シラン化合物(A)および架橋剤(B)とともに用いることが好ましい。
【0571】
本態様において、上記触媒(C)の含有量は、組成物中、有機シラン化合物(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~5.0質量部、より好ましくは0.07~3質量部である。
【0572】
上記触媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を同時に用いてもよい。
【0573】
[溶媒(D)]
本開示の組成物は、溶媒(D)をさらに含んでいてもよい。溶媒(D)を含むことにより、組成物の取り扱い性が良好になる。このような組成物を用いて層を形成すると、形成された層は連続した薄膜となり得る。また、このような組成物は、任意の膜厚の薄膜の形成に寄与し得る。
【0574】
上記溶媒(D)としては、炭化水素溶剤;ハロゲン化炭化水素溶剤;エステル系溶剤;エーテル系溶剤;ケトン系溶剤;アミド系溶剤;アセトニトリル等のニトリル系溶剤;テトラメチル尿素またはジメチルプロピレン尿素(DMPU)等の尿素系溶剤;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド系溶剤;スルホラン等のスルホン系溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤;1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフロオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロー3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)-ペンタン、パーフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン等のフッ素系溶剤;アミン系溶剤;カルボン酸無水物;ニトロ化合物等が挙げられる。また、高圧下では、上記溶媒(D)は、二酸化炭素等であってもよい。
【0575】
上記炭化水素溶剤としては、アルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン等の脂肪族炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、ナフサカット等の芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸tert-ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、酢酸ジエチル等のカルボン酸エステル;炭酸ジメチル、炭酸エチレン等の炭酸エステル;γ-ブチルラクトン等の環状エステル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、t-ブチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等が挙げられる。
上記ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等が挙げられる。
上記アミド系溶剤としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のカルボン酸アミド;N-メチル-2-ピロリドン等の環状アミド等が挙げられる。
【0576】
上記溶剤(D)の含有量は、有機ケイ素化合物(A)および必要に応じて用いられる架橋剤(B)および触媒(C)の合計量100質量部に対して、好ましくは1~300質量部、より好ましくは20~200質量部、さらに好ましくは50~100質量部である。
【0577】
上記組成物は、上記有機シラン化合物(A)、架橋剤(B)、触媒(C)及び溶媒(D)以外に、その他の任意成分を含んでいてもよい。かかる任意成分としては、安定化材(脱水剤、モレキュラーシーブ、硫酸マグネシウムまたはオルソギ酸メチル)、粘度調節剤、フィラー、蛍光剤、保存安定剤、充填剤、着色剤、耐熱性向上剤、耐寒性向上剤、防錆剤、接着性向上剤、液状補強剤、可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤、接着促進剤、共架橋剤、難燃剤、脱泡添加剤、アミンエポキシド反応のための硬化促進剤、抗菌剤および防腐剤、染料、着色剤および顔料、凍結防止剤、殺菌剤および/または反応希釈剤および錯化剤、噴霧助剤、湿潤剤、香料、光保護剤、ラジカル捕捉剤、UV吸収剤および安定剤、とりわけ熱および/もしくは化学負荷ならびに/または紫外線および可視光による負荷に対する安定剤、例えば、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物(以下、「含フッ素オイル」と言う)を含む群から選択される1種または複数の物質が挙げられる。
【0578】
上記UV吸収剤および安定剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、ヒドロキシフェニルトリアジン類、環状イミノエステル類、シアノアクリレート類、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類、シュウ酸アニリド類等が挙げられる。
【0579】
上記ベンゾフェノン類としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0580】
上記ベンゾトリアゾール類としては、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールに由来する単位を含む重合体、2-(2’-ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールに由来する単位を含む重合体等が挙げられる。
【0581】
上記ヒドロキシフェニルトリアジン類としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノール、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノール、2-[4-([2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-[4-([2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-([2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ジフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-([2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられ、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールおよび2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールに由来する単位を有する重合体も挙げられる。
【0582】
上記環状イミノエステル類としては、2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-m-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2,2’-p,p’-ジフェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)等が挙げられる。
【0583】
上記シアノアクリレート類としては、1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼン等が挙げられる。
【0584】
上記ヒンダードアミン類としては、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、セバシン酸モノ(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、セバシン酸モノ(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、2,2,6,6-テトラメチル-4-メタクリロイルオキシピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-メタクリロイルオキシピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアミノ-4,6-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-1-シクロヘキシルオキシピペリジル)アミノ)-1,3,5-トリアジン、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザビスピロ[5.1.11.2]-ヘンイコサン-21-オンとエピクロロヒドリンのオリゴマー等が挙げられる。
【0585】
上記シュウ酸アニリド類としては、N-(4-ドデシルフェニル)-N’-(2-エトキシフェニル)シュウ酸、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシフェニル)シュウ酸等が挙げられる。
【0586】
上記UV吸収剤および安定剤としては、市販品を用いてもよく、具体的には、チヌビン(登録商標)400、同405、同479、同152、同292(以上、BASF社製)、ホスタビン(登録商標)3400、同3206、同3070(以上、クラリアント社製)、アデカスタブ(登録商標)LA-82、同87(以上、ADEKA社製)、RUVA-93(大塚化学社製)等が挙げられる。
【0587】
これらの任意成分の配合量は、本開示の目的を損なわない範囲、並びに組成物の特性および硬化物の物性を損なわない限りにおいて任意である。
【0588】
一態様において、上記組成物は、上記有機シラン化合物(A)および必要に応じて用いる架橋剤(B)、触媒(C)、溶媒(D)及びその他の任意成分全てを1つの組成物として含む、いわゆる1成分形硬化性組成物であってよい。別の態様に置いて、上記組成物は、主剤(I)および硬化剤(II)を含む2成分形硬化性組成物であってよく、上記主剤(I)が上記有機シラン化合物(A)を含み、上記硬化剤(II)が架橋剤(B)を含むものであってよい。
【0589】
本開示は、基材と、該基材上(該基材の表面)に設けられ、本開示の組成物(以下、「表面処理組成物」ともいう)から形成される膜(以下、「表面処理層」または「層」ともいう)とを含む物品を提供する。この物品は、例えば以下のようにして製造できる。
【0590】
まず、基材を準備する。本開示に使用可能な基材は、例えばガラス、樹脂(天然又は合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料、好ましくは、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリイミド樹脂、モディファイド(透明)ポリイミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂であってよく、板状、フィルム、その他の形態であってよい)、金属(アルミニウム、銅、銀、鉄等の金属単体又は合金等の複合体であってよい)、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材、建築部材等、任意の適切な材料で構成され得る。
【0591】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラス又は透明プラスチックなどであってよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、位相差フィルム、有機EL表示モジュール及び液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0592】
基材の形状は特に限定されない。また、膜(表面処理層)を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途及び具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0593】
次に、かかる基材の表面に、上記の本開示の表面処理組成物の膜を形成し、この膜を必要に応じて後処理し、これにより、本開示の表面処理組成物から膜(表面処理層)を形成する。
【0594】
本開示の表面処理組成物の膜形成は、上記の表面処理組成物を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法を使用できる。
【0595】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、バーコーティング、ダイコーティング、スクリーン印刷及び類似の方法が挙げられる。
【0596】
湿潤被覆法を使用する場合、本開示の表面処理組成物は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。当該溶媒としては、上記したフッ素含有有機溶媒及びフッ素非含有有機溶媒を用いることができる。本開示の表面処理組成物の安定性及び溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:C5-12ペルフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン及びペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素;ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、ペルフルオロプロピルメチルエーテル(COCH)、ペルフルオロブチルメチルエーテル(COCH)、ペルフルオロブチルエチルエーテル(COC)、ペルフルオロヘキシルメチルエーテル(CCF(OCH)C)などのアルキルペルフルオロアルキルエーテル(ペルフルオロアルキル基及びアルキル基は直鎖又は分枝状であってよい))、ハイドロクロロフルオロカーボン(アサヒクリンAK-225(商品名)等)、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶剤;ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチルなどのエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など。これらの溶媒は、単独で、又は、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテル、グリコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤が好ましく、ペルフルオロブチルメチルエーテル(COCH)及び/又はペルフルオロブチルエチルエーテル(COC)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコールが特に好ましい。
【0597】
次に、膜を後処理する。この後処理は、特に限定されないが、例えば、活性エネルギー線、例えば、350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外光線、電子線、X線、γ線などを照射することにより行われる。もしくは所定時間加熱することにより行われる。かかる後処理を施すことにより、硬化性部位を有するシリコーン共重合体の硬化性部位、ならびに存在する場合にはマトリックスを形成する組成物の硬化性部位の硬化を開始させ、これらの化合物間、また、これらの化合物と基材間に結合が形成される。
【0598】
上記のようにして、基材の表面に、本開示の表面処理組成物から膜(即ち、表面処理層)が形成され、本開示の物品が製造される。これにより得られる膜(表面処理層)は、着氷防止性能および透明性を両立可能な膜を形成しうる。さらに、かかる膜(表面処理層)は、高い表面滑り性(又は潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)と高い摩擦耐久性の双方をさらに有しうる。また、この膜(表面処理層)は、高い摩擦耐久性及び表面滑り性に加えて、使用する表面処理組成物の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0599】
上記膜(表面処理層)の対水接触角は、例えば90°以上、さらに95°以上であってよく、好ましくは100°以上、より好ましくは105°以上、さらに好ましくは110°以上であり、例えば140°以下、さらに120°以下であってもよい。
上記膜(表面処理層)の対水接触角は、JIS R3257:1999に準拠して測定できる。
【0600】
上記膜(表面処理層)のヘイズは、例えば1.5以下、さらに1.2以下であってよく、好ましくは1以下、より好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下であり、例えば0.1以上であってもよい。
上記膜(表面処理層)のヘイズは、JIS K7136:2000に準拠して測定できる。
【0601】
以下の方法により評価される、上記膜(表面処理層)の着氷性指数は、例えば750kPa以下、さらに700kPa以下であってよく、好ましくは650kPa以下、より好ましくは600kPa以下、さらに好ましくは550kPa以下であり、例えば10kPa以上、さらに50kPa以上であってもよい。
[着氷性指標の評価方法]
ステンレス基板(NIRO1.4301)上に上記膜を形成し、上記膜上に、内底面積110mmの底のないセルを、上記膜と上記セルの底部とが接触するように配置する。次いで、セル内に水0.5mLを入れ、水を膜とを接触させ、上記ステンレス基板を-32℃に冷却してセル内の水を凍結させる。上記セルに、膜表面と並行な方向に荷重を加え、上記セルを10mm/分の速度で移動、氷が動き始めた時の荷重を、着氷性指標とする。
【0602】
本開示はさらに、上記膜(表面処理層)を最外層に有する光学材料にも関する。
【0603】
光学材料としては、後記に例示するようなディスプレイ等に関する光学材料のほか、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる:例えば、陰極線管(CRT;例、TV、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイ又はそれらのディスプレイの保護板、フィルム又はそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの。
【0604】
一の態様において、本開示によって得られる膜(表面処理層)を有する物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、飛散防止フィルム、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD-R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバーなど。
【0605】
一の態様において、本開示によって得られる膜(表面処理層)を有する物品としては、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)カバー部材、センサー部材、ヘッドランプ部材、サンルーフ部材、エンブレム部材、バンパー部材、フロントガラス、サイドガラス、リアガラス、インストルメントパネルカバー部材、自動車内装部材等、特に自動車用のこれらの部材が挙げられる。
【0606】
膜(表面処理層)の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、膜(表面処理層)の厚さは、0.1~50μm、好ましくは0.5~30μmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性及び防汚性の点から好ましい。
【0607】
以上、本開示の表面処理組成物を使用して得られる物品について詳述した。なお、本開示の表面処理剤の用途、使用方法ないし物品の製造方法などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例0608】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、本実施例において、以下に示される化学式はすべて平均組成を示す。
【0609】
(合成例1)
0.44gのシラン化合物(A1)としてのオプツールUD120(ダイキン工業製)を、5.41gの1,3-ビストリフルオロメチルベンゼンに溶解し、0.31gのシリコーン化合物(A2)としてのシリコポンEF(Evonik Industries AG製)を添加した。5分間攪拌後、0.14gのジオクチルスズジカルボキシレートを加え、室温にて12時間攪拌し、その後、100℃で30分攪拌して、反応物(A3)を得た。室温まで冷却した後、シリコーン化合物(A2)としての13.40gのシリコポンEFを添加した。0.15gのチヌビン292(BASF製)、0.3gのチヌビン400(BASF製)、3.61gの酢酸ブチルに溶解した3.05gの(3-アミノプロピル)トリエトキシシランを添加し、2時間攪拌し、組成物を得た。
【0610】
(合成例2)
0.88gのオプツールUD120、1回目に添加するシリコポンEFを0.62g、2回目に添加するシリコポンEFを13.09gに変えた以外は合成例1と同様にし、組成物を得た。
【0611】
(合成例3)
1.15gのオプツールUD120、1回目に添加するシリコポンEFを0.81g、2回目に添加するシリコポンEFを12.90gに変えた以外は合成例1と同様にし、組成物を得た。
【0612】
(合成例4)
1.59gのオプツールUD120、1回目に添加するシリコポンEFを1.12g、2回目に添加するシリコポンEFを12.59gに変えた以外は合成例1と同様にし、組成物を得た。
【0613】
(合成例5)
2.22gのオプツールUD120、1回目に添加するシリコポンEFを1.57g、2回目に添加するシリコポンEFを12.14gに変えた以外は合成例1と同様にし、組成物を得た。
【0614】
(比較合成例1)
13.71gのシリコポンEFに9.94gの酢酸ブチルに溶解し、0.14gのジオクチルスズジカルボキシレート、0.15gのチヌビン292、0.3gのチヌビン400、3.05gの(3-アミノプロピル)トリエトキシシランを添加し、2時間攪拌し、組成物を得た。
【0615】
(実施例1~4、比較例1)
合成例1~4、比較合成例1で得られた組成物を100マイクロメートルのバーコーターを用いステンレス基板(NIRO1.4301)上に塗工し、30分間室温にて放置し、その後120℃で30分間加熱して、膜(表面処理層)を形成した。
【0616】
(着氷防止性能評価)
ステンレス基板(NIRO1.4301)上に上記膜を形成し、上記膜上に、内底面積110mmの底のないセルを、上記膜と上記セルの底部とが接触するように配置する。次いで、セル内に水0.5mLを入れ、水を膜とを接触させ、上記ステンレス基板を-32℃に冷却してセル内の水を凍結させる。上記セルに、膜表面と並行な方向に荷重を加え、上記セルを10mm/分の速度で移動させ、氷が動き始めた時の荷重を、着氷性指標とした。
【0617】
(対水接触角測定)
上記膜(表面処理層)について、JIS R3257:1999に準拠し、対水接触角を測定した。
【0618】
【表1】
【0619】
(実施例5、6)
合成例2および3で得られた組成物を100マイクロメートルのバーコーターを用いポリカーボネートもしくはソーダライムガラス(SGG Plainclear、Saint-Gobain Glass UK Ltd製)上に塗工し、10分間室温にて放置し、その後120℃で30分間加熱して、膜(表面処理層)を得た。
【0620】
(比較例2)
比較合成例1で得られた組成物を100マイクロメートルのバーコーターを用いポリカーボネート(Makrolon GP farblos 099、コベストロ AG製)もしくはソーダライムガラス(SGG Plainclear、Saint-Gobain Glass UK Ltd製)上に塗工し、10分間室温にて放置し、その後120℃で30分間加熱して、膜(表面処理層)を得た。
【0621】
(実施例7)
合成例5で得られた組成物を100マイクロメートルのバーコーターを用いポリカーボネートもしくはソーダライムガラス(SGG Plainclear、Saint-Gobain Glass UK Ltd製)上に塗工し、10分間室温にて放置し、その後120℃で30分間加熱して、膜(表面処理層)を得た。表2において、「PC」はポリカーボネート上に塗工したことを表し、「ガラス」は上記ソーダライムガラス上に塗工したことを表す。
【0622】
(比較例3)
0.44gのオプツールUD120を5.41gの1,3-ビストリフルオロメチルベンゼンに溶解し、13.71gのシリコポンEFを添加した。5分間攪拌後、0.14gのジオクチルスズジカルボキシレート、0.15gのチヌビン292、0.3gのチヌビン400、3.61gの酢酸ブチルに溶解した3.05gの(3-アミノプロピル)トリエトキシシランを添加し、2時間攪拌し、組成物を得た。
【0623】
該組成物を100マイクロメートルのバーコーターを用いポリカーボネートもしくはソーダライムガラス(SGG Plainclear、Saint-Gobain Glass UK Ltd製)上に塗工し、10分間室温にて放置し、その後120℃で30分間加熱して、膜(表面処理層)を得た。
【0624】
(対水接触角測定)
上記膜(表面処理層)について、JIS R3257:1999に準拠し、対水接触角(°)を測定した。
【0625】
(ヘイズ測定)
上記膜(表面処理層)について、JIS K7135:2000に準拠し、ヘイズ(%)を測定した。
【0626】
(引掻き硬度試験)
エリクセン社製モデル413にて、ボッシュ式チップ(φ0.75mm)を用い測定した。
【0627】
【表2】
【0628】
比較例3では、膜(表面処理層)のヘイズ値が高いことから、オプツールUD120、シリコポンEFとが相溶しておらず、オプツールUD120とシリコポンEFとの反応物も生成していないと考えられる。
【0629】
(実施例8)
実施例6で得られた処理基材を用いてキセノン試験を実施した。
【0630】
(実施例9)
実施例7で得られた処理基材を用いてキセノン試験を実施した。
【0631】
(キセノン試験)
DIN EN ISO 16474-2に準拠して促進耐候性試験を行い、一定時間後に対水接触角(°)の測定を行った。
【0632】
【表3】
【0633】
実施例9では、600時間後に塗膜の剥がれが確認できたため、試験を中止した。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機シラン化合物(A)を含み、
前記有機シラン化合物(A)は、
フルオロポリエーテル基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(A1)と、エポキシ基および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)との反応物(A3)を含み、
前記フルオロポリエーテル基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物(A1)と、前記エポキシ基および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)とは異なる、組成物。
【請求項2】
前記有機シラン化合物(A)は、エポキシ基および加水分解性シリル基を有するシリコーン化合物(A2)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フルオロポリエーテル基を有するシラン化合物(A1)は、式(1)または(2):
【化1】
[式中:
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-であり;
F2は、-Rf -R-O-であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1であり;
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
式(1)または式(2)のそれぞれにおいて、少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記フルオロポリエーテル基を有するシラン化合物(A1)は、式(1b)または式(2b):
【化2】
[式中:
はフルオロポリエーテル基を含む一価の有機基であり;
1’はフルオロポリエーテル基を含む二価の有機基であり;
前記フルオロポリエーテル基は、各出現においてそれぞれ独立して、
式:-(OC12m31-(OC10m32-(OCm33-(OC10 m34-(OCm35-(OCFm36
[式中、m31、m32、m33、m34、m35及びm36は、独立に、0又は1以上の整数であり;
10は、独立にH、F又はClであり;
各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基であり;
は、独立に、含シラン反応性架橋基であり;
は、独立に、一価の基であり;
式(1b)または式(2b)のそれぞれにおいて、XおよびXの少なくとも1つは、水酸基または加水分解基が結合したSi原子を含む1価の基である。]
で表される化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記フルオロポリエーテル基を有するシラン化合物(A1)に由来する単位の含有率は、前記有機シラン化合物(A)中、0.1質量%以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記エポキシ基および加水分解性シリル基を含有するシリコーン化合物(A2)は、式(3):
【化3】
[式中:
Mは、(Rs1 SiO1/2)で表される1価の基であり;
Dは、(Rs1 SiO2/2)で表される2価の基であり;
Tは、(Rs1SiO3/2)で表される3価の基であり;
Qは、(SiO4/2)で表される4価の基であり;
s1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、加水分解性基、-Xs1-NRs2 、-Xs1-COOH、エポキシ環を有する基、1価の有機基または-Xs1-SiRs3 n11s4 3-n11であり;
s2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-20アルキル基であり;
s3は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり;
s4は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-20アルキル基であり;
s1は、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基であり;
n11は、1~3の整数であり;
a1は、3~60の整数であり;
b1は、10~1,100の整数であり;
c1は、0~30の整数であり;
d1は、0~15の整数であり;
c1+d1は、1以上であり;
ただし、少なくとも1つのRs1がエポキシ環を含み、少なくとも1つの別のRs1が水酸基または加水分解性基である。]
で表される化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
架橋剤(B)をさらに含み、前記架橋剤(B)は、エポキシ基および加水分解性シリル基の少なくとも一方と反応しうる基を2以上有する化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋剤(B)において、エポキシ基および加水分解性シリル基の少なくとも一方と反応しうる基は、-ORb5、カルボキシ基、-NRb5 および-SiRb6 n6b7 3-n6からなる群より選ばれる少なくとも1種(ただし、Rb5は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-20アルキル基であり;Rb6は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解性基であり;Rb7は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-20アルキル基であり;n6は1~3の整数である)である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記架橋剤(B)は、前記有機シラン化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
触媒(C)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
主剤(I)および硬化剤(II)を含む2成分形硬化性組成物であり、
前記主剤(I)が前記有機シラン化合物(A)をを含み、
前記硬化剤(II)が架橋剤(B)を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
基材と、
前記基材上に設けられ、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物から形成される膜と、を備える、物品。
【請求項13】
前記膜の対水接触角が100°以上である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記膜のヘイズが1以下である、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
以下の方法により評価される前記膜の着氷性指標が650kPa以下である、請求項12に記載の物品。
[着氷性指標の評価方法]
ステンレス基板上に前記膜を形成し、前記膜上に、内底面積110mmの底のないセルを、前記膜と前記セルの底部とが接触するように配置する。次いで、セル内に水0.5mLを入れ、水を膜とを接触させ、前記ステンレス基板を-32℃に冷却してセル内の水を凍結させる。前記セルに、膜表面と並行な方向に荷重を加え、前記セルを10mm/分の速度で移動させ、氷が動き始めた時の荷重を、着氷性指標とする。