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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180268
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】筐体における付属物の保持構造
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/16 20060101AFI20231214BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20231214BHJP
   H01M 50/244 20210101ALN20231214BHJP
   H01M 50/247 20210101ALN20231214BHJP
【FI】
G06F1/16 312M
G06F1/16 312G
H05K5/03 C
H01M50/244 Z
H01M50/247
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093399
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 浩輔
【テーマコード(参考)】
4E360
5H040
【Fターム(参考)】
4E360AA02
4E360AB42
4E360BA03
4E360BA04
4E360CA02
4E360ED02
4E360ED03
4E360ED23
4E360FA08
4E360FA12
4E360FA20
4E360GA07
4E360GB26
4E360GB46
4E360GC02
5H040AA07
5H040AS12
5H040AT01
5H040CC24
5H040CC33
5H040CC34
5H040CC44
5H040CC46
5H040CC54
(57)【要約】
【課題】使用中に電池等のような付属物が本体から外れ難くする。
【解決手段】ヒンジ40を中心に互いに回転可能な第一筐体10及び第二筐体20の一方に着脱可能に収納される電池2の保持構造は、ヒンジ40の軸方向に移動可能に設けられた可動部60と、可動部60と電池2との間に位置し弾性力を有する弾性部51と、第一筐体10及び第二筐体20のヒンジ40を中心とした回転運動を可動部60の軸方向への移動に変換することによって、可動部60を弾性部51に圧接させる変換機構70と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を中心に互いに回転可能な2つの筐体の一方に着脱可能に収納される付属物の保持構造であって、
前記軸部の軸方向に移動可能に設けられた可動部と、
前記可動部と前記付属物との間に位置し弾性力を有する接触部と、
前記2つの筐体の前記軸部を中心とした回転運動を前記可動部の軸方向への移動に変換することによって、前記可動部を前記接触部に圧接させる変換機構と、
を備えることを特徴とする保持構造。
【請求項2】
前記変換機構は、前記可動部を前記接触部に圧接させる力を大きくさせるように変換することを特徴とする請求項1に記載の保持構造。
【請求項3】
前記変換機構は、前記軸部を中心とした回転により前記2つの筐体が重なった場合には前記可動部を前記接触部に圧接させる力を小さくさせるように、前記軸部を中心とした回転により前記2つの筐体が互いに離れた場合には前記可動部を前記接触部に圧接させる力を大きくさせるように変換することを特徴とする請求項2に記載の保持構造。
【請求項4】
前記変換機構は、
前記軸方向に延びるとともに前記2つの筐体の何れか一方に固定されるシャフトと、
前記軸部の周方向に回転可能に前記シャフトに支持されるカムと、を有し、
前記カムが、前記シャフトの周りに巻くよう螺旋状に形成された駆動カム面を有し、
前記可動部が前記駆動カム面に接触する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の保持構造。
【請求項5】
前記可動部が、前記シャフトの周りに巻くよう螺旋状に形成された被動カム面を有し、
前記被動カム面が前記駆動カム面に接触する
ことを特徴とする請求項4に記載の保持構造。
【請求項6】
前記変換機構は、
前記軸方向に延びるとともに前記2つの筐体の何れか一方に固定されるシャフトと、
前記軸部の周方向に回転可能に前記シャフトに支持される回転部材と、を有し、
前記可動部が、前記シャフトの周りに巻くよう螺旋状に形成された被動カム面を有し、
前記被動カム面が、前記回転部材に接触する
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の保持構造。
【請求項7】
前記可動部が、前記軸部の周方向に配列された複数の係止部を有し、
前記係止部が前記接触部の径方向外側からこれら前記接触部を留める
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体における付属物の保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの筐体が2つのヒンジによって開閉可能に互いに連結された折り畳み式の電子機器が開示されている。この電子機器は電池により動作するものであり、電池は、2つのヒンジの間において一方の筐体に固定された電池収納部に収納される。電池の負極はコイルスプリングからなる端子に接触し、特にケースカバーが開いた状態では、電池はその端子の弾性力によってのみ保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-157730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ユーザーが折り畳み式の電子機器を使用している時に誤って落下させると、電池が露出している状態であれば、落下の衝撃によって端子が変形して電池が外れ、システムがリセットしてしまうおそれがある。
本発明の1つ又は2つ以上の実施形態の目的は、使用中に電池等のような付属物が本体から外れ難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、軸部を中心に互いに回転可能な2つの筐体の一方に着脱可能に収納される付属物の保持構造であって、前記軸部の軸方向に移動可能に設けられた可動部と、前記可動部と前記付属物との間に位置し弾性力を有する接触部と、前記2つの筐体の前記軸部を中心とした回転運動を前記可動部の軸方向への移動に変換することによって、前記可動部を前記接触部に圧接させる変換機構と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の1つ又は2つ以上の実施形態によれば、使用中に電池等のような付属物が本体から外れ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態の電子機器を示す。
図2図2は、軸方向に直交する断面を示す。
図3図3は、保持装置を示す。
図4図4は、分解された保持装置を示す。
図5図5は、電子機器が折り畳まれた状態における保持装置を示す。
図6図6は、電子機器が展開された状態における保持装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に開示された実施形態に限定されない。図面は例示のみのために提供されるため、本発明の範囲は図面の例示に限定されない。
【0009】
[1. 電子機器の概要]
図1は、電子機器1を示す斜視図である。図2は、図1に図示のヒンジ40の軸(axis)に対して直交する断面に沿った断面図である。
【0010】
電子機器1は、例えば電子辞書、携帯型コンピューター又は携帯型多機能電話機等のような2つの筐体を備えた折り畳み式の電子機器である。電子機器1は、第一筐体10、ヒンジカバー17,18、第二筐体20、ヒンジ40、付属品ケース27、付属品カバー29及び保持装置50を備える。
【0011】
電子機器1は、折り畳み式となっている。つまり、第一筐体10及び第二筐体20からなる2つの筐体は、ヒンジ40及び保持装置50を軸として相対的に回転可能に互いに連結されている。ヒンジ40の軸と保持装置50の軸が互いに同軸とされており、第一筐体10が第二筐体20に近づくようヒンジ40及び保持装置50の軸の回りに回転すると、第一筐体10と第二筐体20が互いに閉じて電子機器1が折り畳まれる。第一筐体10が第二筐体20から離れるようヒンジ40及び保持装置50の軸の回りに回転すると、第一筐体10と第二筐体20が互いに開いて電子機器1が展開される。第一筐体10が第二筐体20に対して相対的に回転可能な角度は180°である。なお、以下の説明において、軸方向とは、ヒンジ40及び保持装置50の軸に対して平行な方向をいい、径方向とは、ヒンジ40及び保持装置50の軸に対して直交する方向をいい、周方向とは、ヒンジ40及び保持装置50の軸を中心としてその軸回りの方向をいう。
【0012】
柱状の2体の付属品(付属物)2,3は、ヒンジ40及び保持装置50の軸に沿って付属品2,3の中心軸の方向に直列に並んだ状態で、付属品ケース27に収容されている。付属品カバー29は、付属品2,3を覆うように付属品ケース27に取り付けられている。ここで、付属品2,3の中心軸は、ヒンジ40及び保持装置50の軸に対して同軸状であるか、ヒンジ40及び保持装置50の軸から僅かに偏心している。いずれにしても、付属品2,3の中心軸は、ヒンジ40及び保持装置50の軸に対して平行である。
【0013】
保持装置50に近位の付属品2又は両方の付属品2,3が保持装置50によってヒンジ40の方へ押し込まれ、その近位の付属品2又は両方の付属品2,3が保持される。保持装置50の保持力は、第一筐体10と第二筐体20が互いに離れていくにつれて増加する。保持装置50の保持力は、第一筐体10と第二筐体20が互いに閉じるにつれて減少する。
【0014】
本実施形態では、付属品2,3が電子機器1の電源であり、より具体的には円柱状の一次電池又は二次電池である。そのため、付属品ケース27は電源ケース又は電池ケースともいえ、付属品カバー29は電源カバー又は電池カバーともいえる。以下、付属品ケース27、付属品カバー29及び付属品2,3をそれぞれ電池ケース27、電池カバー29及び電池2,3という。
【0015】
以下、第一筐体10、ヒンジカバー17,18、第二筐体20、ヒンジ40、電池ケース27、電池カバー29及び保持装置50について詳細に説明する。
【0016】
[2. 第一筐体及びヒンジカバー]
第一筐体10は、その厚みがその長さよりも小さく、その長さがその幅よりも小さい扁平な直方体箱状に成している。第一筐体10の幅方向、長さ方向及び厚さ方向は互いに直交し、幅方向は軸方向に対して平行であり、長さ方向は径方向に対して平行であり、厚さ方向はヒンジ40の軸回りの接線方向に対して平行である。
【0017】
第一筐体10は、その表(おもて)面11に開口13を有する。第一筐体10の表面11とは、第一筐体10と第二筐体20が互いに閉じた場合に、第二筐体20に向き合う面である。表示パネル14は、第一筐体10に収容されて第一筐体10に固定されている。表示パネル14の表示面は、第一筐体10の開口13を塞いでいる。表示パネル14の表示面には、タッチパネルが設けられている。表示パネル14は第一筐体10に固定される。なお、開口13には、表示パネル14の表示面を覆う透明板が設けられてもよい。
【0018】
ヒンジカバー17,18は、第一筐体10のうちヒンジ40の軸に近位の部分において第一筐体10と一体に設けられている。ヒンジカバー17,18は、第一筐体10の幅方向に互いに離間するとともに、第一筐体10の幅方向における第一筐体10の両端部にそれぞれ寄って配置されている。一方のヒンジカバー18の内側には保持装置50が収容され、他方のヒンジカバー18の内側にはヒンジ40が収容されている。保持装置50の一部は、ヒンジカバー17の内側から電池ケース27の内側へ軸方向に挿入される。
【0019】
[3. 第二筐体]
第二筐体20は、その厚みがその長さよりも小さく、その長さがその幅よりも小さい扁平な直方体箱状に成している。第二筐体20の幅方向、長さ方向及び厚さ方向は互いに直交し、幅方向は軸方向に対して平行であり、長さ方向は径方向に対して平行であり、厚さ方向はヒンジ40の軸回りの接線方向に対して平行である。
【0020】
第二筐体20は、その内側に回路基板24を収容するとともに、その表(おもて)面21に複数のキー穴23を有する。第二筐体20の表面21とは、第一筐体10と第二筐体20が互いに閉じた場合に、第一筐体10に向き合う面である。
【0021】
多数のキーからなるキーボード25が第二筐体20内において回路基板24に重ねられている。キーボード25のキーは、第二筐体20の内側から外側に向けてキー穴23に挿入されて、第二筐体20の外に露出する。回路基板24及びキーボード25は第二筐体20に固定される。
【0022】
なお、第一筐体10の場合と同様に、キーボード25の代わりにタッチパネル付き表示パネルが回路基板24に重ねられてもよい。この場合、第二筐体20はその表面21に開口を有し、第二筐体20内の表示パネルが第二筐体20の開口を塞いでいる。
【0023】
[4. 電池ケース及び電池カバー]
図2に図示するように、電池ケース27は、第二筐体20のうちヒンジ40の軸に近位の部分において第二筐体20と一体に設けられている。電池ケース27は、第二筐体20の幅方向において第二筐体20の中央部に配置されている。電池ケース27は、ヒンジカバー17とヒンジカバー18の間のスペースに差し込まれている。電池ケース27の裏面27aには、電池2,3を収納するための凹部28が形成されている。ここで、電池ケース27の裏面27aとは、第二筐体20の表面21とは逆を向いた第二筐体20の裏面22と同一の方向に向いた面である。
【0024】
凹部28は、電池2,3が凹部28に個別に収納されるように電池2,3ごとに区画されている。或いは、凹部28が電池2,3ごとに区画されず、電池2,3が纏めて凹部28に収納される。凹部28が電池2,3ごとに区画されている場合、これら電池2,3を仕切る仕切り部に接続ターミナル(端子)が設けられ、互いに向き合う電池2,3の電極が接続ターミナルによって互いに電気的に接続されている。凹部28が電池2,3ごとに区画されていない場合、互いに向き合う電池2,3の電極が互いに接触する。電池2から遠位の電池3の電極は、凹部28に設けられたターミナルに接触する。電池3から遠位の電池2の電極は、保持装置50の後述の弾性部51に接触する。電池2,3の接続は直列接続であってもよいし、並列接続であってもよい。なお、電子機器1が電池2の電圧のみで動作するのであれば、電池3が電池ケース27に収納されなくてもよく、この場合、凹部28の大きさは、1体の電池2が収納される程度の大きさである。
【0025】
電池カバー29は、電池ケース27の裏面27aにおける凹部28の開口を塞ぐようにして、電池ケース27に着脱可能に取り付けられる。電池カバー29は爪等の係止部を有し、電池ケース27は被係止部を有し、係止部が被係止部に引っ掛かることによって電池カバー29が電池ケース27にロックされる。電池ケース27に取り付けられた電池カバー29は、凹部28内の電池2,3を覆う。
【0026】
軸方向に直交する断面における電池カバー29の断面形状はU字型である。電池カバー29は、電池ケース27の裏面27aから電池ケース27の表(おもて)面27bまで周方向に電池ケース27を巻き込むように、電池ケース27に引っ掛かる。そのため、電池カバー29が電池ケース27から外れにくい。特に第一筐体10が第二筐体20から開いた状態では、電池カバー29が電池ケース27と第一筐体10の間の隙間19に通されているため、電池カバー29が電池ケース27から外れにくい。
【0027】
電池カバー29の着脱は、第二筐体20の長さ方向への電池カバー29の移動によって実現される。
【0028】
[5. ヒンジ]
図1に図示するように、軸部としてのヒンジ40は、第一筐体10及び第二筐体20を相互に周方向に回転可能となるよう、これら第一筐体10と第二筐体20を連結する。
【0029】
ヒンジ40は、第一ヒンジピース41及び第二ヒンジピース42を有する。第一ヒンジピース41及び第二ヒンジピース42は互いに相対的に回転可能に連結されており、第一ヒンジピース41及び第二ヒンジピース42の回転軸がヒンジ40の軸を定める。
【0030】
第一ヒンジピース41は、ヒンジカバー18の内側から第一筐体10の内側まで及んで、第一筐体10に連結されている。第二ヒンジピース42は、ヒンジカバー18の内側から第二筐体20の内側まで及んで、第二筐体20に連結されている。
【0031】
ヒンジ40にはストッパが設けられている。第一筐体10と第二筐体20が互いに閉じた状態から第一筐体10が第二筐体20に対して相対的に180°回転すると、第一筐体10がヒンジ40のストッパによりそれ以上開かないようになっている。
【0032】
[6. 保持装置]
保持構造としての保持装置50は、第一筐体10及び第二筐体20を互いに周方向に回転可能となるよう、これら第一筐体10と第二筐体20を連結する。保持装置50は、片方の電池2又は両方の電池2,3を軸方向に押し込むようにして、片方の電池2又は両方の電池2,3を保持する。
【0033】
図3は、保持装置50の斜視図である。図4は、保持装置50の分解斜視図である。保持装置50は、軸方向に移動可能な弾性部51及び可動部60と、第一筐体10と第二筐体20のヒンジ40を中心とした回転運動を可動部60の軸方向への移動に変換することによって、可動部60を弾性部51に圧接させる変換機構70と、を備える。以下、弾性部51、可動部60及び変換機構70について詳細に説明する。
【0034】
[6-1. 弾性部]
接触部としての弾性部51は、導電性の円錐コイルスプリングである。弾性部51は、可動部60に取り付けられている。弾性部51は、電池ケース27の内において、電池2よりもヒンジカバー17に近位に配置されている。弾性部51は、可動部60に取り付けられている。弾性部51は、電池3から遠位の電池2の電極に押し当てられる。そのため、弾性部51はターミナル(端子)である。
【0035】
弾性部51は、可動部60と電池2との間に挟まれる。弾性部51は、圧縮されて、電池2を電池3の方へ押し込む弾性力を発生させる。従って、弾性部51の弾性力は保持装置50の保持力になる。
【0036】
[6-2. 可動部]
可動部60は、ヒンジカバー17の内側から電池ケース27の内側へ軸方向に挿入される。可動部60はその先端に弾性部51を保持する。具体的には、可動部60は、その先端に、周方向に配列された複数の係止部61を有し、これら係止部61は、弾性部51の径方向外側から弾性部51を留める。これら係止部61は、その先端側が径方向内側に曲折して、弾性部51の円錐形状に合わせてテーパー状に設けられている。なお、可動部60の先端とは、電池2に近位の端をいう。
【0037】
可動部60は、その内部に、軸方向に延びるよう開けられた中空状の嵌合孔を有する。軸方向に直交する断面における嵌合孔の断面形状は、例えばオーバル状のように非円形である。後述のシャフト71が可動部60の嵌合孔にはめ込まれることによって、可動部60の径方向及び周方向の動きが拘束されるとともに、可動部60が電池2に対して近づき且つ離れるよう軸方向に移動可能となる。
【0038】
可動部60は、その基端に一対の被動カム面62及び一対の止め面63を有する。図4では、一方の被動カム面62及び止め面63のエッジが図示されており、他方の被動カム面62及び止め面63は可動部60の裏に隠れて図示されていない。
【0039】
これら被動カム面62は、シャフト71の周りに180°だけ巻くよう螺旋状に形成されている。止め面63は、周方向における一方の被動カム面62と他方の被動カム面62の間の境界において周方向に向いている。止め面63は、周方向における一方の被動カム面62のエッジから他方の被動カム面62のエッジまで軸方向に延びている。
【0040】
可動部60が導電性を有し、可動部60と弾性部51が電気的に接続されている。なお、可動部60と弾性部51が一体に組まれているが、これらが一体形成されていてもよい。
【0041】
可動部60はその基端に被動カム面62を有するから、この可動部60はエンドカムといえる。
【0042】
[6-3. 変換機構]
変換機構70は、シャフト71、フランジ72、固定部73及びエンドカム80を有する。
【0043】
シャフト71、フランジ72及び固定部73は互いに一体的に形成されて、これらシャフト71、フランジ72及び固定部73で部品79が構成される。シャフト71、フランジ72及び固定部73は、金属等のような導電性材料からなる。
【0044】
シャフト71がフランジ72から軸方向に延びており、フランジ72がシャフト71の基端から径方向外方に張り出している。固定部73は、フランジ72からシャフト71とは反対に延びて、径方向外方に屈曲している。
【0045】
フランジ72がヒンジカバー17の内側に収容され、シャフト71はヒンジカバー17の内側から電池ケース27の内側に挿入される。固定部73は、ヒンジカバー17の内側から第二筐体20の内側まで及んでいる。固定部73は、第二筐体20内においてネジ、リベット、固定ピン又ははんだ等のような留め材によって回路基板24に固定されて、回路基板24の配線に電気的に接続されている。固定部73が回路基板24に固定されることによって、シャフト71、フランジ72及び固定部73が第二筐体20に固定される。
【0046】
シャフト71のうちフランジ72に近位の部分は円柱状に形成され、残りの部分はオーバル状のように非円の柱状に形成されている。なお、シャフト71の中心軸が保持装置50の軸を定める。
【0047】
エンドカム80は、金属等のような導電性材料からなる。エンドカム80は、筒状に設けられていて、その内部に円柱状の中空を有する。シャフト71が順にエンドカム80の中空及び可動部60の嵌合孔に挿入され、エンドカム80がヒンジカバー17の内側に収容され、可動部60がヒンジカバー17の内側から電池ケース27の内側に挿入される。
【0048】
シャフト71が可動部60のラジアル荷重及びモーメントを受け、可動部60が軸方向に移動可能にシャフト71によって支持される。シャフト71がエンドカム80のラジアル荷重を受けて、回転部材及びカムとしてのエンドカム80がシャフト71の周りに回転可能にシャフト71によって支持される。エンドカム80がフランジ72に接触して、エンドカム80のアキシャル荷重がフランジ72に受けられる。
【0049】
エンドカム80は、エンドカム80の外周から径方向外方に延び出た第二固定部89を有する。第二固定部89とエンドカム80は互いに一体に形成されている。第二固定部89がヒンジカバー17の内側から第一筐体10の内側まで及んでいる。第二固定部89は、第一筐体10内において留め具によって第一筐体10に固定される。そのため、第二固定部89及びエンドカム80は、第二筐体20と一緒にシャフト71の回りに回転する。
【0050】
エンドカム80は、フランジ72と可動部60との間に挟まれている。エンドカム80は、エンドカム80の回転を、軸方向における可動部60の移動に変換する。つまり、エンドカム80は、シャフト71の回りに回転することによって、フランジ72から反力を取って弾性部51の弾性力に抗して可動部60を軸方向に押し出す。
【0051】
エンドカム80が可動部60を押し出せるようにするために、一対の駆動カム面82がフランジ72から遠位のエンドカム80の端に形成されている。これら駆動カム面82は、シャフト71の周りに180°だけ巻くよう螺旋状に形成されている。周方向における駆動カム面82と駆動カム面82の間の境界には、周方向に向いた止め面83が形成されている。止め面83は、周方向における一方の駆動カム面82のエッジから他方の駆動カム面82のエッジまで軸方向に延びている。
【0052】
エンドカム80の一対の駆動カム面82は、可動部60の一対の被動カム面62にそれぞれ接触する。エンドカム80の回転により、エンドカム80の駆動カム面82が可動部60の被動カム面62に対して滑る。エンドカム80の駆動カム面82及び可動部60の被動カム面62が螺旋状に形成されているため、エンドカム80の駆動カム面82が可動部60の被動カム面62に対して滑ることによって可動部60がエンドカム80に対して相対的に軸方向に移動する。
【0053】
エンドカム80の回転により、エンドカム80の一対の止め面83は、それぞれ可動部60の一対の止め面63に対して、周方向に近づいたり離れたりする。
【0054】
[6-4. 保持装置の動作]
図5及び図6を参照して、保持装置50の動作について説明する。
【0055】
第一筐体10と第二筐体20が互いに閉じて電子機器1が折り畳まれた状態では、図5に示すように、可動部60がシャフト71の基端寄りに配置され、可動部60の止め面63とエンドカム80の止め面83が互いに接触している。その状態では、可動部60はそのストロークの中で電池2から最も離れているが、可動部60と電池2との間には、弾性部51が介在している。そのため、弾性部51がその弾性力によって電池2を軸方向に押し込んで、これにより片方の電池2又は両方の電池2,3が保持される。
【0056】
ユーザーが第二筐体20に対して相対的に第一筐体10を離なすように回転させて電子機器1を展開すると、図6に示すように、エンドカム80が第一筐体10に追従して回転運動する。エンドカム80の駆動カム面82が可動部60の被動カム面62に対して滑ることから、可動部60がエンドカム80に対して相対的に軸方向(図中のAの方向)に電池2の方へ移動する。そのため、弾性部51に対し更に力が加わり、片方の電池2又は両方の電池2,3への圧接運動となる。圧接とは、接触物が被接触物に圧力を加えて被接触物に接触することをいう。
【0057】
第一筐体10と第二筐体20が互いに閉じた状態から第一筐体10が第二筐体20に対して相対的に180°回転するまで、可動部60の変位に伴い、片方の電池2又は両方の電池2,3への圧接による力が強くなる。第一筐体10が第二筐体20から最も離れて180°回転した状態では、可動部60は最も軸方向への移動距離が長くなり、その結果、弾性部51に対する圧接の力が最大となる。
【0058】
ユーザーが第二筐体20に対して第一筐体10を閉じるように回転させて電子機器1を折り畳むと、エンドカム80が第一筐体10に追従して回転する。エンドカム80の駆動カム面82が可動部60の被動カム面62に対して滑ることから、可動部60が弾性部51の弾性力によってエンドカム80に対して相対的に軸方向に電池2から離れる方へ移動する。そのため、弾性部51に対する圧接の力も小さくなる。
【0059】
[7. 有利な技術的効果]
(1) 変換機構70が第一筐体10及び第二筐体20のヒンジ40を中心とした回転運動を可動部60の軸方向への移動に変換することによって、可動部60を弾性部51に圧接させることから、ユーザーが第二筐体20に対して第一筐体10を離すように回転させることによって、可動部60が変換機構70、特にエンドカム80によって軸方向に移動される。この移動運動が弾性部51に対する片方の電池2又は両方の電池2,3への圧接運動に変換され、強く保持される。よって、ユーザーが誤って開状態の電子機器1を落としてしまっても、弾性部51が電池2と強く圧接されているために片方の電池2又は両方の電池2,3が電池ケース27から外れない。したがって、電子機器1のリセットが防止される。
【0060】
(2) 第一筐体10が第二筐体20に対して閉じた状態では、表示パネル14が駆動されていないため、電子機器1の消費電力が低い。この際、電子機器1の落下時等において衝撃力が弾性部51に作用して、弾性部51が電池2の電極から一瞬離れてしまっても、バックアップ用キャパシタがバックアップ電源として機能し、バックアップ用キャパシタの放電電力によって電子機器1の電源が切れない。従って、弾性部51への圧接の力が小さく、弾性部51が衝撃力によって電池2の電極から離間しやすくても、それは大きな問題とならない。
【0061】
(3) 第一筐体10が第二筐体20に対して開いた状態では、表示パネル14が駆動されるため、電子機器1の消費電力が高い。この際、電子機器1の落下時等において衝撃力が弾性部51に作用して、仮に弾性部51が電池2の電極から一瞬でも離れてしまうと、バックアップ用キャパシタが放電し切って、電子機器1の電源が切れてしまう。ところが、第一筐体10が第二筐体20に対して開いた状態では、弾性部51への圧接の力が大きいことから、弾性部51が電池2の電極から離間せず、電子機器1の電源が切れることがない。特に、第一筐体10が第二筐体20に対して最も開いた状態では、弾性部51の圧接の力が最大となることから、電子機器1のリセットが防止される。
【0062】
(4) 第一筐体10が第二筐体20に対して閉じた状態では、ユーザーが電池カバー29を電池ケース27から外すことができ、電池2,3も取り外すことができる。その際、弾性部51への圧接の力が小さく、電池2が弱く保持されているため、ユーザーが電池2を簡単に着脱することができる。
【0063】
(5) エンドカム80がシャフト71の周りに回転可能にシャフト71によって支持され、シャフト71と一体に形成された固定部73が第二筐体20に固定され、エンドカム80に形成された第二固定部89が第一筐体10に固定されている。そのため、保持装置50は、第一筐体10及び第二筐体20を互いに周方向に回転可能となるようこれら第一筐体10と第二筐体20を連結するヒンジとして機能する。よって、ヒンジカバー17内に別途ヒンジを設ける必要がなく、電子機器1の部品点数の削減を図ることができる。
【0064】
(6) 弾性部51が導電性のターミナルあるため、電池2の電極用のターミナルを別途設ける必要なく、電子機器1の部品点数の削減を図ることができる。
【0065】
(7) 弾性部51、可動部60、シャフト71、フランジ72及び固定部73が導電性であり、電池2の電極が弾性部51、可動部60、シャフト71、フランジ72及び固定部73を介して回路基板24の配線に電気的に接続されている。そのため、電池2の電極から回路基板24の配線までのリード線を別途設ける必要がなく、電子機器1の部品点数の削減を図ることができる。
【0066】
(8) カム面62,82が可動部60及びエンドカム80にそれぞれ形成され、これらカム面62,82が互いに接触する。そのため、カム面62,82のリード角が小さくても可動部60のリードが大きくなる。ここで、リード角とは、軸方向に直交する面に対するカム面62,82の成す傾斜角をいい、リードとは、エンドカム80の1回転当たりの可動部60の移動距離のことをいう。
【0067】
(9) カム面62,82が可動部60及びエンドカム80にそれぞれ形成されることから、カム面62,82のリード角が小さい。そのため、弾性部51の弾性力が大きくても、その弾性力は、第二筐体20に対して第一筐体10を閉じる荷重として作用しにくい。つまり、弾性部51の弾性力だけでは、第一筐体10が第二筐体20に対して自然に閉じるようなことがない。
【0068】
(10) 電池カバー29が電池ケース27の裏面27aから電池ケース27の表面27bまで周方向に回り込んでいるため、衝撃力が電池カバー29に作用しても、電池カバー29が電池ケース27から外れにくい。
【0069】
(11) 複数の係止部61が可動部60の先端において間隔を置いて周方向に配列されていることから、弾性部51が可動部60の先端に保持される。弾性部51が円錐コイルスプリングであり、係止部61が弾性部51の円錐形状に合わせてテーパー状に設けられているため、弾性部51が可動部60の先端に保持される上、係止部61が弾性部51の圧縮変形の邪魔にならない。また、隣り合う係止部61の間に隙間が存在することから、組立の際に弾性部51の端を係止部61の間に挿入して、円錐コイルスプリングである弾性部51を周方向に回すと、弾性部51をこれら係止部61の内側に装着することができる。
【0070】
[8. 他の実施形態]
続いて、上記実施形態から変更した他の実施形態について説明する。以下の説明では、上記実施形態から変更した点について主に説明する。以下に説明する2以上の変更点を可能な限り組み合わせて採用してもよい。また、以下の説明では、上記実施形態と他の実施形態の間で互いに対応する構成要素には、同一の参照符号が付される。
【0071】
(1) カム面62,82の螺旋巻きの向きは、上記実施形態におけるカム面62,82の螺旋巻きの向きと逆であってもよい。この場合、第一筐体10と第二筐体20が互いに開いて電子機器1が折り畳まれた状態では、可動部60の止め面63とエンドカム80の止め面83が互いに接触している。そして、第一筐体10が第二筐体20に対して離すように回転すると、可動部60がエンドカム80に対して相対的に軸方向に電池2の方へ移動し、弾性部51に圧接の力が加わる。一般的に、ユーザーは電子機器1を折り畳んで持ち運ぶことから、その際に電子機器1を落としやすい。そうであっても、弾性部51が圧縮され、片方の電池2又は両方の電池2,3が弾性部51への圧接の力によって保持されるため、片方の電池2又は両方の電池2,3が電池ケース27から外れない。
【0072】
(2) 上記実施形態では、可動部60及びエンドカム80の両方がカム面62,82をそれぞれ有する。それに対して、可動部60とエンドカム80のどちらか一方がカム面を有し、他方がそのカム面に接触するカムフォロワー等のような従動子を有してもよい。この場合、可動部60とエンドカム80のうちカム面が形成された方は、そのカム面とそのカム面に平行な第二カム面との間に形成される溝を有する溝カムであってもよい。
またエンドカム80と可動部60との構成についてはカム構造に代えてボールねじを用いても良い。
【0073】
(3) 上記実施形態では、カム面62,82全体が螺旋状に形成され、第一筐体10と第二筐体20が互いに閉じた状態から、第一筐体10が第二筐体20に対して相対的に180°回転するまで、可動部60の変位が増加する。それに対して、第一筐体10と第二筐体20が互いに閉じた状態から、第一筐体10が第二筐体20に対して相対的に所定角度だけ回転するまで、可動部60の変位が増加し、第一筐体10が更に前記所定角度を超えて180°回転するまで、可動部60の変位が一定であってもよい。この場合、カム面62,82は、シャフト71の周りに前記所定角度だけ巻くよう螺旋状に形成されているとともに、それに引き続いて、軸方向に対して直交するよう平坦状に形成されている。前記所定角度は、180°よりも小さく、例えば90°、120°又は150°である。
【0074】
(4) 上記実施形態では、付属品2,3が電池である。それに対して、付属品2,3は電池に限るものではなく、例えばタッチペン、イヤホン、コネクタ又はメモリであってもよい。
【0075】
(5) 上記実施形態では、表示パネル14が第一筐体10に収容され、回路基板24及びキーボード25が第二筐体20に収容されている。それに対して、回路基板24及びキーボード25が第一筐体10に収容され、表示パネル14が第二筐体20に収容されてもよい。この場合、表示パネル14を露出させるための開口が第二筐体20の表面21に形成され、キーボード25のキーを露出させるためのキー穴が第一筐体10の表面11に形成されている。
【0076】
[9. 付言]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態及び図示例に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0077】
<付記>
<請求項1>
軸部を中心に互いに回転可能な2つの筐体の一方に着脱可能に収納される付属物の保持構造であって、
前記軸部の軸方向に移動可能に設けられた可動部と、
前記可動部と前記付属物との間に位置し弾性力を有する接触部と、
前記2つの筐体の前記軸部を中心とした回転運動を前記可動部の軸方向への移動に変換することによって、前記可動部を前記接触部に圧接させる変換機構と、
を備えることを特徴とする保持構造。
<請求項2>
前記変換機構は、前記可動部を前記接触部に圧接させる力を大きくさせるように変換することを特徴とする請求項1に記載の保持構造。
<請求項3>
前記変換機構は、前記軸部を中心とした回転により前記2つの筐体が重なった場合には前記可動部を前記接触部に圧接させる力を小さくさせるように、前記軸部を中心とした回転により前記2つの筐体が互いに離れた場合には前記可動部を前記接触部に圧接させる力を大きくさせるように変換することを特徴とする請求項2に記載の保持構造。
<請求項4>
前記変換機構は、
前記軸方向に延びるとともに前記2つの筐体の何れか一方に固定されるシャフトと、
前記軸部の周方向に回転可能に前記シャフトに支持されるカムと、を有し、
前記カムが、前記シャフトの周りに巻くよう螺旋状に形成された駆動カム面を有し、
前記可動部が前記駆動カム面に接触する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の保持構造。
<請求項5>
前記可動部が、前記シャフトの周りに巻くよう螺旋状に形成された被動カム面を有し、
前記被動カム面が前記駆動カム面に接触する
ことを特徴とする請求項4に記載の保持構造。
<請求項6>
前記変換機構は、
前記軸方向に延びるとともに前記2つの筐体の何れか一方に固定されるシャフトと、
前記軸部の周方向に回転可能に前記シャフトに支持される回転部材と、を有し、
前記可動部が、前記シャフトの周りに巻くよう螺旋状に形成された被動カム面を有し、
前記被動カム面が、前記回転部材に接触する
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の保持構造。
<請求項7>
前記可動部が、前記軸部の周方向に配列された複数の係止部を有し、
前記係止部が前記接触部の径方向外側からこれら前記接触部を留める
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の保持構造。
【符号の説明】
【0078】
2 電池(付属物)
10 第一筐体
20 第二筐体
27 電池ケース
50 保持装置(保持構造)
51 弾性部(接触部)
60 可動部
61 係止部
62 被動カム面
70 変換機構
71 シャフト
80 エンドカム(カム、回転部材)
82 駆動カム面
図1
図2
図3
図4
図5
図6