IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

特開2023-180269牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール
<>
  • 特開-牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール 図1
  • 特開-牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール 図2
  • 特開-牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール 図3
  • 特開-牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール 図4
  • 特開-牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール 図5
  • 特開-牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール 図6
  • 特開-牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール 図7
  • 特開-牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール 図8
  • 特開-牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール 図9
  • 特開-牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール 図10
  • 特開-牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール 図11
  • 特開-牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180269
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイール
(51)【国際特許分類】
   B41J 19/00 20060101AFI20231214BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20231214BHJP
   F16H 55/17 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B41J19/00 Z
F16D1/06 220
F16H55/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093402
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 大輔
【テーマコード(参考)】
2C480
3J030
【Fターム(参考)】
2C480CA02
2C480CB11
2C480DB06
2C480DB17
3J030BA01
3J030BD02
3J030BD04
(57)【要約】
【課題】ホイールの歯のピッチに相当する距離よりも細かく無端部材を調整できるようにする。
【解決手段】牽引装置50を製造する製造方法は、ホイール61R,61L間における周方向の相対位置を調整することによって主走査方向Xに対する被牽引体の傾斜状態を調整する調整工程を含む。一方のホイール61Rとして採用される歯車61Ra,61Rb,61Rcは歯車61Ra,61Rb,61Rcの直径方向に延伸する溝部261Ra,261Rb,261Rcを有している一方で、シャフト59の一方の端部は溝部261Ra,261Rb,261Rcに係合する突起部59dを有している。前記調整工程は、歯の突出方向に対する溝部261Ra,261Rb,261Rcの延伸方向が互いに異なっている歯車61Ra,61Rb,61Rcのなかから何れかを選択することにより、前記被牽引体の傾斜状態を調整する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に延伸するシャフトで連結された一対の歯車の回転に伴わせた一対の歯付き無端ベルトの回転により、被牽引体における前記第一方向の両端側から前記被牽引体を前記第一方向に直交する第二方向に牽引する牽引装置の製造方法であって、
前記一対の歯車間における周方向の相対位置を調整することによって前記第一方向に対する前記被牽引体の傾斜状態を調整する調整工程を含み、
前記一対の歯車のうちの少なくとも一方の歯車は当該歯車を前記シャフトの一方の端部が挿入される挿入孔として当該歯車の直径方向に延伸する溝部を有している一方で、前記シャフトの前記一方の端部は前記溝部に係合する突起部を有しており、
前記調整工程は、前記歯車における歯の突出方向に対する前記溝部の延伸方向が互いに異なっている複数の歯車のなかから何れかの歯車を選択することにより、前記被牽引体の傾斜状態を調整する、
牽引装置の製造方法。
【請求項2】
前記調整工程は、前記一対の歯車のうちの少なくとも一方の歯車に対して相対的に、前記一対の歯付き無端ベルトのうち一方の歯付き無端ベルトを周方向に位置ずらしすることにより、前記一対の歯付き無端ベルトの間の位相差を変化させることによって、前記被牽引体の傾斜状態を調整し、
前記調整工程における前記一対の歯付き無端ベルトの間の位相差の変化量から、その変化量に最も近い前記一方の歯車の歯のピッチの整数倍を減じた値は、前記複数の歯車の間で異なる、
請求項1に記載の牽引装置の製造方法。
【請求項3】
第一無端部材及び第二無端部材が第一方向に互いに離間するともに前記第一方向に垂直な第二方向に延び、可動体が前記第一無端部材及び前記第二無端部材に連結され、前記第一無端部材が外周に歯を有する第一ホイールに巻き掛けられ、前記第二無端部材が外周に歯を有する第二ホイールに巻き掛けられ、前記第一ホイール及び前記第二ホイールがシャフトと同軸状に前記シャフトに取り付けられ、前記シャフトと前記第一ホイールと前記第二ホイールの回転により前記第一無端部材及び前記第二無端部材が前記可動体を第一方向に牽引する牽引装置の製造方法であって、
外周に歯を有する交換ホイールに前記第一ホイールを交換して、前記交換ホイールを前記シャフトに取り付けることによって、前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯に対して前記交換ホイールの歯を周方向に位置ずれさせる交換工程と、
前記交換ホイールに対して相対的に前記第一無端部材を周方向に位置ずらしをして前記第一無端部材を前記交換ホイールに巻き掛け、又は前記第二ホイールに対して相対的に前記第二無端部材を周方向に位置ずらしをして前記第二無端部材を前記第二ホイールに巻き掛ける巻き掛け工程と、
を含む牽引装置の製造方法。
【請求項4】
前記交換工程において、前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯に対して相対的に前記交換ホイールの歯を、前記第一ホイール及び前記交換ホイールの歯の1ピッチ未満分だけ周方向に位置ずれさせる、
請求項3に記載の牽引装置の製造方法。
【請求項5】
前記巻き掛け工程において、前記交換ホイールに対する相対的な前記第一無端部材の周方向の位置ずらし又は前記第二ホイールに対する相対的に前記第二無端部材の周方向の位置ずらしは、前記第一無端部材と前記第二無端部材の間の位相差を変化させるとともに、前記第一方向に対する前記可動体の傾斜状態を調整する、
請求項3又は4に記載の牽引装置の製造方法。
【請求項6】
前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯が前記第二ホイールの歯から周方向に位置ずれせず、前記交換ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記交換ホイールの歯が前記第二ホイールの歯から周方向に位置ずれしている、
請求項3又は4に記載の牽引装置の製造方法。
【請求項7】
前記シャフトが、その外周から径方向外方に突出する突出部を前記シャフトの端に有し、
前記第一ホイールが、嵌合穴を前記第一ホイールの側面の中央に有するとともに、前記嵌合穴から径方向外方へ延びた凹溝を前記第一ホイールの側面に有し、
前記凹溝が、前記第一ホイールの中心から前記第一ホイールの歯の頂点まで結ぶ径から周方向に位置ずれせず、
前記交換ホイールが、交換嵌合穴を前記交換ホイールの側面の中央に有し、前記交換嵌合穴から径方向外方へ延びた交換凹溝を前記交換ホイールの側面に有し、
前記交換凹溝が、前記交換ホイールの中心から前記交換ホイールの歯の頂点まで結ぶ径から周方向に位置ずれし、
前記交換工程の前では、前記シャフトの端が前記嵌合穴に嵌め込まれ、前記突出部が前記凹溝に嵌め込まれ、
前記交換工程において、前記シャフトの端を前記嵌合穴から前記交換嵌合穴に嵌め換え、前記突出部を前記凹溝から前記交換凹溝に嵌め換える、
請求項3又は4に記載の牽引装置の製造方法。
【請求項8】
第一方向に互いに離間するともに前記第一方向に垂直な第二方向に互いに平行に延びる第一無端部材及び第二無端部材と、
前記第一無端部材が巻き掛けられ、外周に歯を有する第一ホイールと、
前記第二無端部材が巻き掛けられ、外周に歯を有する第二ホイールと、
前記第一ホイール及び前記第二ホイールと同軸状に前記第一ホイール及び前記第二ホイールに取り付けられるシャフトと、
前記第一ホイールと交換可能であり、外周に歯を有する交換ホイールと、を備え、
前記第一ホイールが前記交換ホイールに交換されるとともに前記交換ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記交換ホイールの歯は、前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯から周方向に位置ずれしている、
牽引装置。
【請求項9】
前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯が前記第二ホイールの歯から周方向に位置ずれせず、前記交換ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記交換ホイールの歯が前記第二ホイールの歯から周方向に位置ずれしている、
請求項8に記載の牽引装置。
【請求項10】
前記シャフトが、その外周から径方向外方に突出する突出部を前記シャフトの端に有し、
前記第一ホイールが、嵌合穴を前記第一ホイールの側面の中央に有するとともに、前記嵌合穴から径方向外方へ延びた凹溝を前記第一ホイールの側面に有し、
前記凹溝が、前記第一ホイールの中心から前記第一ホイールの歯の頂点まで結ぶ径から周方向に位置ずれせず、
前記交換ホイールが、交換嵌合穴を前記交換ホイールの側面の中央に有し、前記交換嵌合穴から径方向外方へ延びた交換凹溝を前記交換ホイールの側面に有し、
前記交換凹溝が、前記交換ホイールの中心から前記交換ホイールの歯の頂点まで結ぶ径から周方向に位置ずれし、
前記シャフトの端が前記嵌合穴から前記交換嵌合穴に嵌め換え可能であり、前記突出部が前記凹溝から前記交換凹溝に嵌め換え可能である、
請求項8又は9に記載の牽引装置。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の牽引装置を備える印刷装置。
【請求項12】
シャフトと同軸状に前記シャフトに取り付けられる第一ホイール及び第二ホイールのうち前記第一ホイールと交換可能な交換ホイールであって、
前記第一ホイールが前記第一ホイールの外周に歯を有し、
前記第二ホイールが前記第二ホイールの外周に歯を有し、
前記交換ホイールが前記交換ホイールの外周に歯を備え、
前記第一ホイールが前記交換ホイールに交換されるとともに前記交換ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記交換ホイールの歯は、前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯から周方向に位置ずれしている、
交換ホイール。
【請求項13】
前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯が前記第二ホイールの歯から周方向に位置ずれせず、前記交換ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記交換ホイールの歯が前記第二ホイールの歯から周方向に位置ずれしている、
請求項12に記載の交換ホイール。
【請求項14】
前記シャフトが、その外周から径方向外方に突出する突出部を前記シャフトの端に有し、
前記第一ホイールが、嵌合穴を前記第一ホイールの側面の中央に有するとともに、前記嵌合穴から径方向外方へ及んだ凹溝を前記第一ホイールの側面に有し、
前記凹溝が、前記第一ホイールの中心から前記第一ホイールの歯の頂点まで結ぶ径から周方向に位置ずれせず、
前記交換ホイールが、交換嵌合穴を前記交換ホイールの側面の中央に有し、前記交換嵌合穴から径方向外方へ及んだ交換凹溝を前記交換ホイールの側面に有し、
前記交換凹溝が、前記交換ホイールの中心から前記交換ホイールの歯の頂点まで結ぶ径から周方向に位置ずれし、
前記シャフトの端が前記嵌合穴から前記交換嵌合穴に嵌め換え可能であり、前記突出部が前記凹溝から前記交換凹溝に嵌め換え可能である、
請求項12又は13に記載の交換ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引装置の製造方法、牽引装置、印刷装置及び交換ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、感光ドラムが2体の巻き掛け伝動機構及びモーターによって回転駆動される技術が開示されている。モーターが歯車伝動機構に連結され、歯車伝動機構がシャフトに連結され、シャフトの両端が2体の巻き掛け伝動機構にそれぞれ連結され、2体の巻き掛け伝動機構が感光ドラムの両端にそれぞれ連結されている。感光ドラムが捻れるような組立誤差が生じる場合、一方の巻き掛け伝動機構のベルトを感光ドラムに対して相対的に感光ドラムの周方向に位置ずれさせるようにそのベルトを感光ドラムの端のプーリーに巻き換える必要がある。しかし、プーリー及びベルトが歯付きである場合、歯のピッチに相当する距離の刻みにベルトを位置ずれさせるような調整しか行えない。
なお、特許文献1では、プーリー及びベルトが歯付きであるか否か不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-280458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の1つ又は2つ以上の実施形態の目的は、プーリーのようなホイールに対して相対的にベルトのような無端部材を周方向に位置ずれさせるに際して、歯のピッチに相当する距離よりも細かく無端部材を調整できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によれば、第一方向に延伸するシャフトで連結された一対の歯車の回転に伴わせた一対の歯付き無端ベルトの回転により、被牽引体における前記第一方向の両端側から前記被牽引体を前記第一方向に直交する第二方向に牽引する牽引装置の製造方法はであって、前記一対の歯車間における周方向の相対位置を調整することによって前記第一方向に対する前記被牽引体の傾斜状態を調整する調整工程を含み、前記一対の歯車のうちの少なくとも一方の歯車は当該歯車を前記シャフトの一方の端部が挿入される挿入孔として当該歯車の直径方向に延伸する溝部を有している一方で、前記シャフトの前記一方の端部は前記溝部に係合する突起部を有しており、前記調整工程は、前記歯車における歯の突出方向に対する前記溝部の延伸方向が互いに異なっている複数の歯車のなかから何れかの歯車を選択することにより、前記被牽引体の傾斜状態を調整する、ことを特徴とする牽引装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の1つ又は2つ以上の実施形態によれば、一対の歯車のうちの一方の歯車の歯のピッチに相当する距離よりも細かく無端部材を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、印刷装置の内部構造を示す。
図2図2は、印刷装置の内部構造を示す。
図3図3は、カートリッジの下面に設けられたインクジェットヘッドを示す。
図4図4は、シャフト及び左右のホイールを示す。
図5図5は、傾斜誤差のない被牽引体を示す。
図6図6は、傾斜誤差のある被牽引体を示す。
図7図7は、傾斜誤差のある被牽引体を示す。
図8図8は、第一ホイールとして採用される歯車及び伝達ギアを示す。
図9図9は、第一ホイールとして採用される歯車及び伝達ギアを示す。
図10図10は、第一ホイールとして採用される複数の歯車及び複数の伝達ギアを示す。
図11図11は、第一ホイールとして採用される複数の歯車をシャフトから取り外した状態を示す。
図12図12は、第二ホイールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に開示された実施形態に限定されない。図面は例示のみのために提供されるため、本発明の範囲は図面の例示に限定されない。
【0009】
[1. 印刷装置]
図1は、印刷装置1の内部構造を示す斜視図である。図2は、印刷装置1の内部構造を示す平面図である。
【0010】
以下の説明において、第一方向は主走査方向Xに相当し、第二方向は副走査方向Yに相当し、主走査方向X及び副走査方向Yは互いに直交する。印刷装置1の幅方向は主走査方向Xに対して平行であり、主走査方向Xは左右方向ともいう。印刷装置1の長さ方向は副走査方向Yに対して平行であり、副走査方向Yは前後方向ともいう。印刷装置1の高さ方向が主走査方向X及び副走査方向Yに対して垂直である。主走査方向X及び副走査方向Yに対して垂直な方向を上下方向ともいう。印刷装置1が水平面に載置された場合、主走査方向X及び副走査方向Yは水平である。
【0011】
印刷装置1は、微細なインク滴を印刷対象に吐出することによってその印刷対象に像を形成するインクジェットプリンタである。印刷対象は指の爪であり、より具体的には手の指の爪である。印刷対象は足の指の爪であってもよいし、例えば付け爪、ネイルチップ、ピアス及びリング等のような装飾品であってもよい。
【0012】
印刷装置1は、基台10、ホルダー15、第一リニアガイド21L,21R、可動体25、第二リニアガイド31、キャリッジ35、カートリッジ37,38、直動駆動機構40、牽引装置50及びメンテナンスユニット90を備える。以下、これらの構成要素について詳細に説明する。
【0013】
[1-1. 基台]
基台10は、その上から不図示の筐体によって覆われて、前記筐体に固定される。印刷装置1の単品部品及び組立部品が基台10に組み込まれ、これら単品部品、組立部品及び基台10が前記筐体に収容され、これにより印刷装置1が組み立てられる。単品部品とは、1つの部品から構成されたものであり、組立部品とは、複数の部品から構成されたいわゆるアセンブリーである。
【0014】
[1-2. ホルダー]
ホルダー15は、基台10の前端の左右方向中央部に設けられている。ホルダー15は、指の爪を露出させた状態でその指を保持する。そのため、ホルダー15は、フィンガーホルダーともいう。ホルダー15は、その内側に中空を有し、その前端に挿入口16を有し、その上面の後部に開口17を有する。指が挿入口16からホルダー15の中空に挿入されると、その指の爪が開口17を通じてホルダー15の上方へ露出される。
【0015】
[1-3. メンテナンスユニット]
メンテナンスユニット90は、ホルダー15の左後ろにおいて基台10に設けられている。メンテナンスユニット90は、カートリッジ37,38のパージ処理を行うパージ部と、カートリッジ37,38の下面を拭くワイパーと、ワイパーに付着したインクを除去するスクレーパーと、を有する。
【0016】
[1-4. 第一リニアガイド]
左の第一リニアガイド21Lはホルダー15の左方において基台10上に取り付けられ、右の第一リニアガイド21Rはホルダー15の右方において基台10上に取り付けられている。第一リニアガイド21L,21Rは、主走査方向Xに互いに離間している。第一リニアガイド21L,21Rは、互いに平行に幅走査方向Yに延びている。第一リニアガイド21L,21Rは、可動体25及び第二リニアガイド31を副走査方向Yに直線的に案内する。
【0017】
[1-5. 可動体及び第二リニアガイド]
可動体25及び第二リニアガイド31は、副走査方向Yに移動可能に第一リニアガイド21L,21Rに取り付けられて、第一リニアガイド21L,21Rの間に架け渡されている。第二リニアガイド31が可動体25に組み付けられ、第二リニアガイド31と可動体25が一体化されている。第二リニアガイド31は、主走査方向Xに直線的に延びている。第二リニアガイド31は、キャリッジ35及びカートリッジ37,38を主走査方向Xに案内する。
【0018】
[1-6. キャリッジ]
キャリッジ35は、主走査方向Xに移動可能に第二リニアガイド31及び可動体25に取り付けられている。キャリッジ35は、カートリッジ37,38を着脱可能に保持する。
【0019】
[1-7. カートリッジ]
図3は、カートリッジ37,38の下面図である。カートリッジ37は、複数のインクケース及び複数のインクジェットヘッド37aを有する。これら複数のインクジェットヘッド37aがこれら複数のインクケースの下端にそれぞれ設けられ、これらインクジェットヘッド37a及びインクケースが一体化されている。例えばシアン、マゼンタ及びイエロー等のような複数色のインクが複数のインクケースにそれぞれ貯留され、複数のインクジェットヘッド37aがそれぞれ複数のインクケースからインクの供給を受ける。各インクジェットヘッド37aは、直線状に一定間隔で配列された複数のノズル37bを下面に有する。カートリッジ37がキャリッジ35に取り付けられた状態では、これらノズル37bの列が副走査方向Yに対して平行になる。各インクジェットヘッド37aは、インクをノズル37bから個別に下方に向けてそれぞれ吐出する。
【0020】
カートリッジ38は、下地用又は被覆用のインクを貯留するインクケースと、そのインクケースの下端に設けられたインクジェットヘッド38aと、を有する。インクジェットヘッド38aは、直線状に複数列に配列された複数のノズル38bを下面に有する。カートリッジ38がキャリッジ35に取り付けられた状態では、これらノズル38bの列が副走査方向Yに対して平行になる。インクジェットヘッド38aは、カートリッジ37のインクジェットヘッド37aによる吐出の前又は後に、インクケースから供給された下地用又は被覆用のインクをノズル38bから個別に下方に向けて吐出する。
【0021】
[1-8. 直動駆動機構]
図1及び図2に示すように、直動駆動機構40は、可動体25に搭載されている。直動駆動機構40は、キャリッジ35及びカートリッジ37,38を主走査方向Xに駆動する。直動駆動機構40はモーター41及び直動伝動機構42を有する。モーター41は、左の第一リニアガイド21Lに寄ってキャリッジ35に取り付けられている。モーター41は、電気エネルギーを回転運動エネルギーに変換して、回転動力を発生させる。直動伝動機構42は、モーター41とキャリッジ35に繋がれている。直動伝動機構42は、モーター41の回転運動をキャリッジ35の直線運動に変換するよう、モーター41の動力をキャリッジ35に伝達する。直動伝動機構42は、例えば巻き掛け伝動機構、ボールネジ伝動機構又はピニオンラック機構である。
【0022】
[1-9. 被牽引体]
以上のような第二リニアガイド31、キャリッジ35、カートリッジ37,38及び直動駆動機構40が可動体25に搭載されて、これら第二リニアガイド31、キャリッジ35、カートリッジ37,38、直動駆動機構40及び可動体25が一体化したユニットが構築されている。このようなユニットは、直動駆動機構としての牽引装置50によって副走査方向Yに牽引される被牽引体である。以下、牽引装置50について詳細に説明する。
【0023】
[1-10. 牽引装置]
牽引装置50は、基台10に搭載されている。牽引装置50は、可動体25の右部及び左部を個別に副走査方向Yに牽引するようにして、可動体25を副走査方向Yに駆動する。牽引装置50は、モーター51、歯車伝動機構52、シャフト59、右の巻き掛け伝動機構60R及び左の巻き掛け伝動機構60Lを備える。なお、巻き掛け伝動機構60Rと巻き掛け伝動機構60Lとシャフト59の組み合わせが、巻き掛け伝動機構対である。
【0024】
モーター51は、電気エネルギーを回転運動エネルギーに変換して、回転動力を発生させる。モーター51は、その駆動シャフトが主走査方向Xに延びる向きで、右の第一リニアガイド21Rの後部の下方において基台10に取り付けられている。
【0025】
モーター51は、歯車伝動機構52に繋がれている。歯車伝動機構52は、右の巻き掛け伝動機構60Rに繋がれている。右の巻き掛け伝動機構60Rは、シャフト59及び可動体25の右部に繋がれている。シャフト59は、左の巻き掛け伝動機構60Lに繋がれている。
【0026】
歯車伝動機構52は、モーター51の動力をシャフト59に伝達する。シャフト59は、歯車伝動機構52によって伝達されたモーター51の動力を右の巻き掛け伝動機構60R及び左の巻き掛け伝動機構60Lに分配する。右の巻き掛け伝動機構60Rは、シャフト59の回転運動を可動体25の右部の直線運動に変換するようシャフト59の回転運動エネルギーを可動体25の右部に伝達して、可動体25の右部を副走査方向Yに牽引する。左の巻き掛け伝動機構60Lは、シャフト59の回転運動を可動体25の左部の直線運動に変換するようシャフト59の回転運動エネルギーを可動体25の左部に伝達して、可動体25の左部を副走査方向Yに牽引する。従って、可動体25は、モーター51の動力によって副走査方向Yに移動する。
【0027】
歯車伝動機構52、シャフト59及び巻き掛け伝動機構60L,60Rについて詳細に説明する。
【0028】
歯車伝動機構52は、駆動ギア53及び伝達ギア54,55,56を有する。駆動ギア53は、モーター51に直結されている。駆動ギア53は伝達ギア54に噛み合っている。伝達ギア54と伝達ギア55は、それらの軸が同軸となるように一体化されている。伝達ギア54及び伝達ギア55は、回転可能に基台10に取り付けられている。伝達ギア55は、伝達ギア56に噛み合っている。伝達ギア56がシャフト59の右端に取り付けられ、伝達ギア56とシャフト59が同軸になっている。シャフト59は、基台10の後部において基台10に回転可能に取り付けられている。
【0029】
右の巻き掛け伝動機構60Rは、第一ホイール61R、第一従動ホイール62R及び第一無端部材63Rを有する。左の巻き掛け伝動機構60Lは、第二ホイール61L、第二従動ホイール62L及び第二無端部材63Lを有する。
【0030】
図4は、第一ホイール61R、第二ホイール61L及、シャフト59及び伝達ギア56を示す平面図である。右の第一ホイール61Rは伝達ギア56と一体化されており、第一ホイール61Rの軸は伝達ギア56の軸と同軸となっている。第一ホイール61Rがシャフト59の右端に取り付けられ、第一ホイール61Rとシャフト59が同軸になっている。左の第二ホイール61Lが第一ホイール61Rから左方に離れてシャフト59の左端に取り付けられ、第二ホイール61Lとシャフト59が同軸になっている。
【0031】
第一ホイール61Rは、例えば歯付きプーリー、スプロケット及び歯車等のように、周方向に一定ピッチで配列された複数の歯を第一ホイール61Rの外周に有する。同様に、第二ホイール61Lは、例えば歯付きプーリー、スプロケット及び歯車等のように、周方向に一定ピッチで配列された複数の歯を第二ホイール61Lの外周に有する。本実施形態では、ホイール61R,61Lは、歯付きプーリー、つまり歯車である。
【0032】
左の第二ホイール61Lと右の第一ホイール61Rは同様に設けられており、左の第二ホイール61Lの歯数と右の第一ホイール61Rの歯数は互いに等しく、左の第二ホイール61Lの径と右の第一ホイール61Rの径は互いに等しく、左の第二ホイール61Lの歯のピッチと右の第一ホイール61Rの歯のピッチは互いに等しい。
【0033】
図1及び図2に示すように、右の第一従動ホイール62Rは、第一ホイール61Rの前方において基台10の前部に回転可能に取り付けられている。左の第二従動ホイール62Lは、第二ホイール61Lの前方において基台10の前部に回転可能に取り付けられている。
【0034】
第一従動ホイール62Rは、例えば歯付きプーリー、スプロケット、歯付きローラー及び歯車等のように、周方向に一定ピッチで配列された複数の歯を第一従動ホイール62Rの外周に有する。第二従動ホイール62Lは、例えば歯付きプーリー、スプロケット、歯付きローラー及び歯車等のように、周方向に一定ピッチで配列された複数の歯を第二従動ホイール62Lの外周に有する。本実施形態では、従動ホイール62R,62Lは、歯付きプーリー、つまり歯車である。従動ホイール62R,62Lの歯数は互いに等しく、従動ホイール62R,62Lの径は互いに等しく、従動ホイール62R,62Lのピッチは互いに等しい。
【0035】
無端部材63R,63Lは、例えば歯付きベルト、係止部付きワイヤ及びローラー型係止部付きチェーン等のように、周方向に一定ピッチで配列された複数の係止部を有する。本実施形態では、無端部材63R,63Lは、係止部としての複数の歯を内周に有する歯付きタイミングベルトである。
【0036】
右の第一無端部材63Rは、第一ホイール61R及び第一従動ホイール62Rに巻き掛けられて、張った状態で第一ホイール61Rと第一従動ホイール62Rの間に副走査方向Yに架け渡されている。第一無端部材63Rの係止部が第一ホイール61R及び第一従動ホイール62Rの歯に噛み合っている。第一無端部材63Rが可動体25の右端25Rに連結されており、可動体25の右端25Rが第一無端部材63Rによって副走査方向Yに牽引される。
【0037】
左の第二無端部材63Lは、第二ホイール61L及び第二従動ホイール62Lに巻き掛けられて、張った状態で第二ホイール61Lと第二従動ホイール62Lの間に副走査方向Yに架け渡されている。第二無端部材63Lと第一無端部材63Rは、主走査方向Xに互いに離間するとともに、互いに平行に副走査方向Yに延びている。第二無端部材63Lの係止部が第二ホイール61L及び第二従動ホイール62Lの歯に噛み合っている。第二無端部材63Lが可動体25の左端25Lに連結されており、可動体25の左端25Lが第二無端部材63Lによって副走査方向Yに牽引される。
【0038】
[2. 組立誤差]
組立誤差が印刷装置1及び牽引装置50に生じることがある。ここでいう組立誤差とは、位相差が左右の無端部材63L,63Rの間に生じた結果、第二リニアガイド31が図5に示すように完全に正確に主走査方向Xに延びた状態から、図6及び図7に示すように主走査方向X及び副走査方向Yの両方に対して直交する軸(以下、Z軸という。)の回りに傾斜することをいう。ここで、第二リニアガイド31が図5に示すように完全に正確に主走査方向Xに平行に延びた状態では、無端部材63L,63Rの間の位相差はゼロであり、組立誤差が生じていない。図6に示す状態では、第一無端部材63Rの位相が第二無端部材63Lの位相よりも遅れていることから、第二リニアガイド31の左端が第二リニアガイド31の右端よりも前に位置して、第二リニアガイド31、可動体25及び被牽引体が主走査方向Xに対して傾斜した組立誤差が生じている。図7に示す状態では、第一無端部材63Rの位相が第二無端部材63Lの位相よりも進んでいることから、第二リニアガイド31の左端が第二リニアガイド31の右端よりも後ろに位置して、第二リニアガイド31、可動体25及び被牽引体が主走査方向Xに対して傾斜した組立誤差が生じている。なお、無端部材63L,63Rの位相における1サイクルとは、無端部材63L,63Rが1周した場合のサイクルをいう。無端部材63L,63Rの間の位相差とは、第一無端部材63Rの位相と第二無端部材63Lの位相との差分をいう。
【0039】
図6及び図7のような組立誤差の解消のためには、図2中の第一ホイール61Rに対して相対的に第一無端部材63Rを周方向に位置ずれさせるように第一無端部材63Rを第一ホイール61Rに巻き掛け換える必要がある。このような巻き掛け換えは、第一無端部材63Rの位相を変化させて、左右の無端部材63L,63Rの間の位相差を解消させて、主走査方向Xに対する第二リニアガイド31、可動体25及び被牽引体の傾斜状態を調整する。同様に、第二無端部材63Lが第二ホイール61Lに対して相対的に周方向に位置ずれするように第二ホイール61Lに巻き掛け換えられても、左右の無端部材63L,63Rの間の位相差が解消される。
【0040】
ところで、単に、第一ホイール61Rに対して相対的に第一無端部材63Rを周方向に位置ずれさせただけでは、その位置ずれ量は、第一ホイール61Rの歯のピッチの整数倍にしかならない。第二ホイール61Lに対して相対的に第二無端部材63Lを周方向に位置ずれさせた場合でも、同様である。つまり、左右の無端部材63L,63Rの間の位相差は、ホイール61R,61Lの歯のピッチ単位でしか調整できない。
【0041】
そこで、左右の無端部材63L,63Rの間の位相差をホイール61R,61Lの歯のピッチよりも細かく調整できるように、右の第一ホイール61Rは複数の歯車のなかから選択可能である。以下、右の第一ホイール61Rとして採用し得る複数の歯車について詳細に説明する。
【0042】
[2-1. 複数の歯車]
図8は、第一ホイール61Rに採用し得る1つの歯車61Raの右側面図である。図9は、その歯車61Raの左側面図である。図8及び図9に示す伝達ギア56aは、図1図3に示す伝達ギア56として採用可能なものであり、歯車61Raと伝達ギア56aが一体化されて、それらの軸が同軸になっている。
【0043】
歯車61Raは、溝部としての凹溝261Ra及び嵌合穴161Raを歯車61Raの左側面に有する。歯車61Raの左側面とは、シャフト59の中央部に向いた面である。嵌合穴161Raは、歯車61Raの左側面の中央に凹状に形成されている。凹溝261Raは、歯車61Raの左側面に凹状に形成されている。凹溝261Raは嵌合穴161Raからその径方向外方へ歯車61Raの直径に沿って延びて、凹溝261Raと嵌合穴161Raは互いに一体に連なっている。凹溝261Raと嵌合穴161Raは、シャフト59の端及び後述の留めピン59dが挿入される挿入孔である。
【0044】
図10には、歯車61Raと歯車61Rb,61Rcの比較のためにこれら歯車61Ra,61Rb,61Rcが示されている。図10(a)は歯車61Raの右側面図であり、図10(b)は歯車61Rbの右側面図であり、図10(c)は歯車61Rcの右側面図である。
【0045】
歯車61Raと同様に、歯車61Rb,61Rcも第一ホイール61Rに採用し得る。これら歯車61Ra,61Rb,61Rcの何れか1つが第一ホイール61Rとしてシャフト59の右端に予め取り付けられる。歯車61Ra,61Rb,61Rcの中で、シャフト59の右端に予め取り付けられていない歯車は交換ホイールである。
【0046】
歯車61Rb,61Rcとそれぞれ一体化した伝達ギア56b,56cは、図1図3に示す伝達ギア56として採用可能なものである。伝達ギア56a,56b,56cは互いに同様に設けられている。
【0047】
歯車61Ra,61Rb,61Rcは互いに同様に設けられており、歯車61Ra,61Rb,61Rcの歯数は互いに等しく、歯車61Ra,61Rb,61Rcの径は互いに等しく、歯車61Ra,61Rb,61Rcの歯のピッチは互いに等しい。歯車61Raの場合と同様に、歯車61Rbはその左側面に嵌合穴161Rb及び凹溝261Rbを有し、歯車61Rcはその左側面に嵌合穴161Rc及び凹溝261Rcを有する。
【0048】
歯車61Raにおいて、凹溝261Raは、歯車61Raの中心から歯車61Raの歯の頂点まで結ぶ径361Raから周方向に位置ずれしていない。つまり、凹溝261Raの延びる方向と径361Raの延びる方向は、周方向の位置が揃っている。なお、径361Raの延びる方向は、歯車61Raの歯が突出する突出方向である。
【0049】
歯車61Rbにおいて、凹溝261Rbは、歯車61Rbの中心から歯車61Rbの歯の頂点まで結ぶ径361Rbから周方向に位置ずれしている。その位置ずれ量は、ゼロを超え、歯車61Rbの歯の1ピッチ未満であり、より具体的には、歯車61Rbの歯の半ピッチである。
【0050】
歯車61Rcにおいて、凹溝261Rcは、歯車61Rcの中心から歯車61Rcの歯の頂点まで結ぶ径361Rcから周方向に歯車61Rcの歯のピッチの3分の1だけ位置ずれしている。
【0051】
歯車61Raの凹溝261Raは、スポーク部561aから周方向に位置ずれしていない。つまり、凹溝261Raとスポーク部561aは、周方向に位置が揃っている。歯車61Rbの凹溝261Rbは、スポーク部561bから周方向に歯車61Rbの歯の半ピッチだけ位置ずれしている。歯車61Rcの凹溝261Rcは、スポーク部561cから周方向に歯車61Rcの歯の3分の1ピッチだけ位置ずれしている。なお、スポーク部561a,561b,561cは、それぞれ伝達ギア56a,56b,56cの左側面及び右側面に突状に形成されているとともに、それぞれ伝達ギア56a,56b,56cの中心から外周まで径方向に延びている。
【0052】
なお、他の歯車を準備し、歯車61Ra,61Rb,61Rc及び他の歯車の何れか1つがシャフト59の右端に予め取り付けられてもよい。例えば、凹溝の周方向の位置ずれ量が3分の2ピッチ分、4分の1ピッチ分又は4分の3ピッチ分となる歯車を他の歯車として準備してもよい。歯車61Ra,61Rb,61Rc及び他の歯車の間では、それぞれの歯車の中心からそれぞれの歯車の歯の頂点までを結ぶ径からそれぞれの歯車の凹溝の周方向の位置ずれ量が異なる。歯車61Raと伝達ギア56aが互いに一体化されているのと同様に、伝達ギア56aと同様な伝達ギアが他の歯車にも一体化されている。
【0053】
[2-2. シャフトの右端]
図11を参照して、第一ホイール61Rが取り付けられるシャフト59の右端について詳細に説明する。ここで、図11は、シャフト59から歯車61Ra,61Rb,61Rcを取り外した状態の分解斜視図である。
【0054】
シャフト59は、突出部としての留めピン59dをシャフト59の右端に有する。留めピン59dは、シャフト59を径方向に貫通するとともに、シャフト59の外周面から径方向外方に突出する。
【0055】
第一ホイール61Rとして歯車61Raがシャフト59の右端に取り付けられる場合、シャフト59の右端が嵌合穴161Raに嵌め込まれ、留めピン59dが凹溝261Raに嵌め込まれている。これにより、歯車61Raは、シャフト59に対して相対的に周方向に回転不能となってシャフト59の右端に取り付けられている。
【0056】
第一ホイール61Rとして歯車61Rbがシャフト59の右端に取り付けられる場合、シャフト59の右端が嵌合穴161Rbに嵌め込まれ、留めピン59dが凹溝261Rbに嵌め込まれている。
【0057】
第一ホイール61Rとして歯車61Rcがシャフト59の右端に取り付けられる場合、シャフト59の右端が嵌合穴161Rcに嵌め込まれ、留めピン59dが凹溝261Rcに嵌め込まれている。
【0058】
上述のように、歯車61Raの凹溝261Raが径361Raから周方向に位置ずれしていないのに対して、歯車61Rbの凹溝261Rbが径361Rb及びスポーク部561bから周方向に位置ずれしている。そのため、歯車61Rbがシャフト59に取り付けられた場合のその歯車61Rbの歯の位置は、歯車61Raがシャフト59に取り付けられた場合のその歯車61Raの歯の位置から周方向に位置ずれし、これにより歯車61Rbの歯と歯車61Raの歯は位相ずれする。その位相ずれ量は、ゼロを超え、これら歯車61Ra,61Rbの歯の1ピッチ未満であり、より具体的には、歯車61Ra,61Rbの歯の半ピッチである。よって、歯車61Raが歯車61Rbに付け替えられると、右の第一無端部材63Rの位相は、歯車61Ra,61Rbの歯の半ピッチ分だけ変化する。
【0059】
歯車61Rcがシャフト59に取り付けられた場合のその歯車61Rcの歯の位置は、歯車61Raがシャフト59に取り付けられた場合のその歯車61Raの歯の位置から周方向に位置ずれし、これにより歯車61Rcの歯と歯車61Raの歯は位相ずれする。その位相ずれ量は、歯車61Ra,61Rcの歯のピッチの3分の1である。よって、歯車61Raが歯車61Rcに付け替えられると、右の第一無端部材63Rの位相は、歯車61Ra,61Rcの歯のピッチの3分の1分だけ変化する。
【0060】
[2-3. 右の第一ホイールと左の第二ホイールの関係性]
図12を参照して、左の第二ホイール61Lとシャフト59の取り付けについて詳細に説明する。ここで、図12は、第二ホイール61Lの右側面図である。第二ホイール61Lは、その左側面に第二嵌合穴161L及び第二凹溝261Lを有する。第二ホイール61Lの右側面とは、シャフト59の中央部に向いた面である。第二嵌合穴161Lは、第二ホイール61Lの右側面の中央に凹状に形成されている。第二凹溝261Lは、第二ホイール61Lの右側面に凹状に形成されている。第二凹溝261Lは第二嵌合穴161Lからその径方向外方へ第二ホイール61Lの直径に沿って延び、第二凹溝261Lと第二嵌合穴161Lは互いに一体に連なっている。一方、シャフト59の右端の場合と同様に、シャフト59は、その左端に留めピンを有する。そして、シャフト59の左端が第二嵌合穴161Lに嵌め込まれ、留めピンが第二凹溝261Lに嵌め込まれている。シャフト59の左端における留めピンはシャフト59の右端における留めピン59dから周方向に位置ずれすることなく、周方向におけるこれら留めピンの位置が互いに揃っている。
【0061】
左の第二ホイール61Lと歯車61Ra,61Rb,61Rcは同様に設けられており、第二ホイール61L及び歯車61Ra,61Rb,61Rcは歯数が互いに等しく、第二ホイール61L及び歯車61Ra,61Rb,61Rcは径が互いに等しく、第二ホイール61L及び歯車61Ra,61Rb,61Rcは歯のピッチが互いに等しい。
【0062】
第二ホイール61Lと歯車61Raがシャフト59に取り付けられた状態では、第二ホイール61L及び歯車61Raの歯は位相ずれすることなく、周方向における位置が互いに揃っている。
【0063】
第二ホイール61Lと歯車61Rbがシャフト59に取り付けられた状態では、これら第二ホイール61L及び歯車61Rbの歯は周方向に位置ずれしており、第二ホイール61L及び歯車61Rbの歯の位相ずれが生じている。その位相ずれ量は、第二ホイール61L及び歯車61Rbの歯の半ピッチ分である。
【0064】
第二ホイール61Lと歯車61Rcがシャフト59に取り付けられた状態では、これら第二ホイール61L及び歯車61Rcの歯は周方向に位置ずれしており、第二ホイール61L及び歯車61Rcの歯の位相ずれが生じている。その位相ずれ量は、第二ホイール61L及び歯車61Rcの歯のピッチの3分の1分である。
【0065】
[2-4. 調整方法及び製造方法]
続いて、印刷装置1及び牽引装置50を組み立てる製造方法の途中工程として行う調整方法について説明する。以下に説明する調整方法を行えば、印刷装置1及び牽引装置50の組立誤差が解消される。
【0066】
予め、歯車61Ra,61Rb,61Rcの中から歯車61Raが第一ホイール61Rとして選択され、歯車61Raがシャフト59の右端に取り付けられ、第一無端部材63Rが歯車61Raに巻き掛けられているものとする。この場合、歯車61Rb,61Rcは交換ホイールである。
【0067】
まず、印刷装置1がテスト印刷動作をすると、テストパターンがホルダー15内のテスト印刷対象物に形成される。テスト印刷対象物は、指の爪であるとは限らず、例えば紙、樹脂、金属、セラミック、繊維及び木材等のような素材からなるシート材又は板材であってもよい。
【0068】
作業者がテストパターンを見て、可動体25、第二リニアガイド31及び被牽引体がZ軸の回りに傾斜した組立誤差の程度を把握できる。つまり、作業者は、第二リニアガイド31の右端がそれらの左端から副走査方向Yに位置ずれした距離を把握できる。ただし、作業者は、テストパターンを利用せずに、第二リニアガイド31の右端がそれらの左端から副走査方向Yに位置ずれした距離を実測してもよい。第二リニアガイド31の右端がそれらの左端から副走査方向Yに位置ずれした距離は、無端部材63R,63Lの間の位相差に相当するとともに、可動体25、第二リニアガイド31及び被牽引体の傾斜誤差に相当する。そのため、以下では、その距離のことを位相差又は傾斜誤差ともいう。
【0069】
なお、テストパターンの形状が主走査方向X及び副走査方向Yに平行な辺を有する長方形又は正方形である場合、組立誤差が生じていれば、テストパターンはその左右の辺がジグザグ状にギザギザになったように乱れるとともに前後の辺が主走査方向Xに対して僅かに斜めになり、組立誤差が全く生じていなければ、テストパターンはその左右の辺が完全に直線状になるとともに、前後の辺が主走査方向Xに対して完全に平行になる。
【0070】
取得した傾斜誤差又は位相差が許容範囲に収まる場合、作業者は作業を終了する。一方、取得した傾斜誤差又は位相差が許容範囲から外れた場合、作業者は、取得した傾斜誤差又は位相差に最も近似した歯車61Ra,61Rb,61Rcの歯のピッチの整数倍(以下、整数倍近似値という。)を求めるとともに、傾斜誤差又は位相差から整数倍近似値を減じることによって差分を求める。そして、その差分を3つの比較値と比較し、その差分に最も近い比較値を決める。3つの比較値のうち第1比較値はゼロであり、第2比較値は歯車61Ra,61Rb,61Rcの歯のピッチの2分の1であり、第3比較値は歯車61Ra,61Rb,61Rcの歯のピッチの3分の1である。第1比較値は歯車61Raに対応するものであり、第2比較値は歯車61Rbに対応するものであり、第3比較値は歯車61Rcに対応するものである。
【0071】
差分が3つの比較値のなかで第1比較値に最も近似する場合、作業者は、第1比較値及びそれに対応する歯車61Raを選択する。作業者は、選択した歯車61Raに対して相対的に第一無端部材63Rを1ピッチ又は数ピッチ分だけ歯車61Raの周方向にずらして、第一無端部材63Rを歯車61Raに巻き掛け直す。或いは、作業者は、第二ホイール61Lに対して相対的に第二無端部材63Lを1ピッチ又は数ピッチ分だけ第二ホイール61Lの周方向にずらして、第二無端部材63Lを第二ホイール61Lに巻き掛け直す。これにより、位相差及び傾斜誤差は、歯車61Raの歯のピッチの整数倍だけ小さくなり、主走査方向Xに対する第二リニアガイド31、可動体25及び被牽引体の傾斜状態は、調整される。
【0072】
差分が第2比較値に最も近似する場合、作業者は、第2比較値及びそれに対応する歯車61Rbを選択して、歯車61Ra及び伝達ギア56aを歯車61Rb及び伝達ギア56bに交換する。つまり、作業者は、シャフト59の右端を歯車61Raの嵌合穴161Raから歯車61Rbの嵌合穴161Rbに嵌め換えるとともに、留めピン59dを歯車61Raの凹溝261Raから歯車61Rbの凹溝261Rbに嵌め換える。
【0073】
そして、作業者は、歯車61Rbに対して相対的に第一無端部材63Rを歯車61Rbの歯のピッチの整数倍(例えば、1ピッチ、2ピッチ及び3ピッチ等のように数ピッチ)分だけ歯車61Rbの周方向にずらして、第一無端部材63Rを歯車61Rbに巻き掛け直す。或いは、作業者は、第二ホイール61Lに対して相対的に第二無端部材63Lを第二ホイール61Lの歯のピッチの整数倍(例えば、1ピッチ、2ピッチ及び3ピッチ等のように数ピッチ)分だけ周方向にずらして、第二無端部材63Lを第二ホイール61Lに巻き掛け直す。これにより、位相差及び傾斜誤差は、歯車61Rbの歯のピッチの整数倍に半ピッチを減算した値だけ小さくなり、主走査方向Xに対する第二リニアガイド31、可動体25及び被牽引体の傾斜状態は、調整される。
【0074】
差分が第3比較値に最も近似する場合、作業者は、第3比較値及びそれに対応する歯車61Rcを選択して、歯車61Ra及び伝達ギア56aを歯車61Rc及び伝達ギア56cに交換する。つまり、作業者は、シャフト59の右端を歯車61Raの嵌合穴161Raから歯車61Rcの嵌合穴161Rcに嵌め換え、留めピン59dを歯車61Raの凹溝261Raから歯車61Rcの凹溝261Rbに嵌め換える。
【0075】
そして、作業者は、歯車61Rbに対して相対的に第一無端部材63Rを歯車61Rcの歯のピッチの整数倍(例えば、1ピッチ、2ピッチ及び3ピッチ等のように数ピッチ)分だけ歯車61Rcの周方向にずらして、第一無端部材63Rを歯車61Rcに巻き掛け直す。或いは、作業者は、第二ホイール61Lに対して相対的に第二無端部材63Lを第二ホイール61Lの歯のピッチの整数倍(例えば、1ピッチ、2ピッチ及び3ピッチ等のように数ピッチ)分だけ周方向にずらして、第二無端部材63Lを第二ホイール61Lに巻き掛け直す。これにより、位相差及び傾斜誤差は、歯車61Rbの歯のピッチの整数倍に3分の1ピッチを減算した値だけ小さくなり、主走査方向Xに対する第二リニアガイド31、可動体25及び被牽引体の傾斜状態は、調整される。
【0076】
なお、凹溝の周方向の位置ずれ量が3分の2ピッチ分、4分の1ピッチ分又は4分の3ピッチ分となる他の歯車が準備されている場合、歯車61Raを他の歯車に交換した上で、他の歯車に対して相対的に第一無端部材63Rを他の歯車の歯のピッチの整数倍(例えば、1ピッチ、2ピッチ及び3ピッチ等のように数ピッチ)分だけ他の歯車の周方向にずらして、第一無端部材63Rを他の歯車に巻き掛け直してもよい。
【0077】
第一無端部材63R又は第二無端部材63Lの位置ずらし後、テストパターンが印刷装置1によってホルダー15内のテスト印刷対象物に形成される。通常は、テストパターンから取得した傾斜誤差又は位相差が許容範囲に収まるため、作業者は作業を終了する。しかしながら、テストパターンから取得した傾斜誤差又は位相差が許容範囲から外れることもある。その場合、同様に、第一ホイール61R及び伝達ギア56を交換し、又は交換せずに、第一ホイール61Rに対して相対的に第一無端部材63Rを第一ホイール61Rの歯のピッチの整数倍(例えば、1ピッチ、2ピッチ及び3ピッチ等のように数ピッチ)分だけ第一ホイール61Rの周方向にずらして、第一無端部材63Rを第一ホイール61Rに巻き掛け直す。或いは、第一ホイール61R及び伝達ギア56を交換し、又は交換せずに、第二ホイール61Lに対して相対的に第二無端部材63Lを第二ホイール61Lの歯のピッチの整数倍(例えば、1ピッチ、2ピッチ及び3ピッチ等のように数ピッチ)分だけ第二ホイール61Lの周方向にずらして、第二無端部材63Lを第二ホイール61Lに巻き掛け直す。
【0078】
なお、最初にテストパターンが印刷される際に、歯車61Rbが第一ホイール61Rとしてシャフト59の右端に取り付けられていてもよいし、歯車61Rcが第一ホイール61Rとしてシャフト59の右端に取り付けられていてもよい。何れの場合でも、第一ホイール61Rを交換し、又は交換せずに、第一ホイール61Rに対して相対的に第一無端部材63Rを1ピッチ又は数ピッチ分だけ第一ホイール61Rの周方向にずらして、第一無端部材63Rを第一ホイール61Rに巻き掛け直す。或いは、第一ホイール61Rを交換し、又は交換せずに、第二ホイール61Lに対して相対的に第二無端部材63Lを1ピッチ又は数ピッチ分だけ第二ホイール61Lの周方向にずらして、第二無端部材63Lを第二ホイール61Lに巻き掛け直す。これにより、傾斜誤差を小さくすることができる。
【0079】
調整終了後、筐体及びその他の部品を基台10に組み込んで、印刷装置1が完成する。調整終了後は、歯車61Ra,61Rb,61Rcのうち最後にシャフト59の右端に取り付けられた歯車が交換されることなく、印刷装置1が出荷される。
【0080】
[3. 有利な技術的効果]
(1) 左右の無端部材63L,63Rの間に位相差が生じ、可動体25、第二リニアガイド31及び被牽引体の右端と左端との間に傾斜誤差が生じた場合、シャフト59の右端に予め取り付けられた歯車61Raに対して相対的に第一無端部材63Rを周方向に位置ずれさせると、傾斜誤差及び位相差は、歯車61Raの歯のピッチの整数倍分だけ解消されるものの、それよりも細かい精度で解消することができない。そうした場合であっても、歯車61Raを歯車61Rb又は歯車61Rcに交換して、歯車61Rb又は歯車61Rcに対して相対的に第一無端部材63Rを周方向に位置ずれさせると、傾斜誤差及び位相差は、歯車61Rb又は歯車61Rcの歯のピッチの整数倍に位相ずれ量を減じた差の分だけ解消される。よって、傾斜誤差及び位相差を細かい精度で解消することができる。歯車61Rb又は歯車61Rcに交換後に、第二ホイール61Lに対して相対的に第二無端部材63Lを周方向に位置ずれさせた場合でも同様に、傾斜誤差及び位相差を細かい精度で解消することができる。なお、歯車61Raを歯車61Rbに交換した場合、位相ずれ量は歯車61Rbの半ピッチ分であり、歯車61Raを歯車61Rcに交換した場合、位相ずれ量は歯車61Rcの3分の1ピッチ分である。
【0081】
(2) 歯車61Raの凹溝261Raが歯車61Raの中心から歯車61Raの歯の頂点まで結ぶ径361Raから周方向に位置ずれしていないのに対して、歯車61Rb,61Rcの凹溝261Rb,261Rbが歯車61Rb,61Rcの中心から歯車61Rb,61Rcの歯の頂点まで結ぶ径361Rb,361Rcから周方向に位置ずれしている。そのため、シャフト59の右端が歯車61Raの嵌合穴161Raから歯車61Rbの嵌合穴161Rb又は歯車61Rcの嵌合穴161Rcに嵌め換えられ、留めピン59dが歯車61Raの凹溝261Raから歯車61Rbの凹溝261Rb又は歯車61Rcの凹溝261Rcに嵌め換えられるだけで、右の第一ホイール61Rの歯と左の第二ホイール61Lの歯との間に位相ずれが生じるようになる。よって、歯車61Raを歯車61Rb又は歯車61Rcに取り替えるだけで、上述の(1)に述べたように傾斜誤差及び位相差を細かい精度で解消することができる。
【0082】
(3) 歯車61Ra,61Rb,61Rcの歯数が互いに等しく、歯車61Ra,61Rb,61Rcの径が互いに等しく、歯車61Ra,61Rb,61Rcの歯のピッチが互いに等しいため、歯車61Rb,61Rcが歯車61Raと同じような強度であり、歯車61Rb,61Rcの歯が歯車61Raの歯と同じような強度である。そのため、歯車61Raが歯車61Rb又は歯車61Rcと交換されても、右の巻き掛け伝動機構60Rの機械的強度を維持することができる。また、歯車61Rb,61Rcが歯車61Raと同じようなサイズであるため、歯車61Raが歯車61Rb又は歯車61Rcと交換されても、右の巻き掛け伝動機構60Rのトルク及び動力の伝達性能を維持することができる。
【0083】
(4) 歯車61Raの凹溝261Raが歯車61Raの中心から歯車61Raの歯の頂点まで結ぶ径361Raから周方向に位置ずれしていないのに対して、歯車61Rb,61Rcの凹溝261Rb,261Rcが歯車61Rb,61Rcの中心から歯車61Rb,61Rcの歯の頂点まで結ぶ径361Rb,361Rcから周方向に位置ずれしている。そのため、歯車61Raと歯車61Rb,61Rcを区別するように識別出来る。よって、歯車61Raを用いるべきところ、歯車61Rb又は歯車61Rcを誤って用いることを防止できる。歯車61Rb又は歯車61Rcを用いるべきところ、歯車61Raを誤って用いることを防止できる。
【0084】
(5) 歯車61Raの凹溝261Raが伝達ギア56aのスポーク部561aから周方向に位置ずれしていないのに対して、歯車61Rb,61Rcの凹溝261Rb,261Rcが伝達ギア56b,56cのスポーク部561b,561cから周方向に位置ずれしている。そのため、歯車61Ra及び伝達ギア56aと歯車61Rb,61Rc及び伝達ギア56b,56cを区別するように識別出来る。よって、歯車61Raと伝達ギア56aを用いるべきところ、歯車61Rbと伝達ギア56b又は歯車61Rcと伝達ギア56cを誤って用いることを防止できる。歯車61Rbと伝達ギア56b又は歯車61Rcと伝達ギア56cを用いるべきところ、歯車61Ra及び伝達ギア56aを誤って用いることを防止できる。
【0085】
[4. 付言]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態及び図示例に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0086】
<付記>
<請求項1>
第一方向に延伸するシャフトで連結された一対の歯車の回転に伴わせた一対の歯付き無端ベルトの回転により、被牽引体における前記第一方向の両端側から前記被牽引体を前記第一方向に直交する第二方向に牽引する牽引装置の製造方法であって、
前記一対の歯車間における周方向の相対位置を調整することによって前記第一方向に対する前記被牽引体の傾斜状態を調整する調整工程を含み、
前記一対の歯車のうちの少なくとも一方の歯車は当該歯車を前記シャフトの一方の端部が挿入される挿入孔として当該歯車の直径方向に延伸する溝部を有している一方で、前記シャフトの前記一方の端部は前記溝部に係合する突起部を有しており、
前記調整工程は、前記歯車における歯の突出方向に対する前記溝部の延伸方向が互いに異なっている複数の歯車のなかから何れかの歯車を選択することにより、前記被牽引体の傾斜状態を調整する、
牽引装置の製造方法。
<請求項2>
前記調整工程は、前記一対の歯車のうちの少なくとも一方の歯車に対して相対的に、前記一対の歯付き無端ベルトのうち一方の歯付き無端ベルトを周方向に位置ずらしすることにより、前記一対の歯付き無端ベルトの間の位相差を変化させることによって、前記被牽引体の傾斜状態を調整し、
前記調整工程における前記一対の歯付き無端ベルトの間の位相差の変化量から、その変化量に最も近い前記一方の歯車の歯のピッチの整数倍を減じた値は、前記複数の歯車の間で異なる、
請求項1に記載の牽引装置の製造方法。
<請求項3>
第一無端部材及び第二無端部材が第一方向に互いに離間するともに前記第一方向に垂直な第二方向に延び、可動体が前記第一無端部材及び前記第二無端部材に連結され、前記第一無端部材が外周に歯を有する第一ホイールに巻き掛けられ、前記第二無端部材が外周に歯を有する第二ホイールに巻き掛けられ、前記第一ホイール及び前記第二ホイールがシャフトと同軸状に前記シャフトに取り付けられ、前記シャフトと前記第一ホイールと前記第二ホイールの回転により前記第一無端部材及び前記第二無端部材が前記可動体を第一方向に牽引する牽引装置の製造方法であって、
外周に歯を有する交換ホイールに前記第一ホイールを交換して、前記交換ホイールを前記シャフトに取り付けることによって、前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯に対して前記交換ホイールの歯を周方向に位置ずれさせる交換工程と、
前記交換ホイールに対して相対的に前記第一無端部材を周方向に位置ずらしをして前記第一無端部材を前記交換ホイールに巻き掛け、又は前記第二ホイールに対して相対的に前記第二無端部材を周方向に位置ずらしをして前記第二無端部材を前記第二ホイールに巻き掛ける巻き掛け工程と、
を含む牽引装置の製造方法。
<請求項4>
前記交換工程において、前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯に対して相対的に前記交換ホイールの歯を、前記第一ホイール及び前記交換ホイールの歯の1ピッチ未満分だけ周方向に位置ずれさせる、
請求項3に記載の牽引装置の製造方法。
<請求項5>
前記巻き掛け工程において、前記交換ホイールに対する相対的な前記第一無端部材の周方向の位置ずらし又は前記第二ホイールに対する相対的に前記第二無端部材の周方向の位置ずらしは、前記第一無端部材と前記第二無端部材の間の位相差を変化させるとともに、前記第一方向に対する前記可動体の傾斜状態を調整する、
請求項3又は4に記載の牽引装置の製造方法。
<請求項6>
前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯が前記第二ホイールの歯から周方向に位置ずれせず、前記交換ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記交換ホイールの歯が前記第二ホイールの歯から周方向に位置ずれしている、
請求項3又は4に記載の牽引装置の製造方法。
<請求項7>
前記シャフトが、その外周から径方向外方に突出する突出部を前記シャフトの端に有し、
前記第一ホイールが、嵌合穴を前記第一ホイールの側面の中央に有するとともに、前記嵌合穴から径方向外方へ延びた凹溝を前記第一ホイールの側面に有し、
前記凹溝が、前記第一ホイールの中心から前記第一ホイールの歯の頂点まで結ぶ径から周方向に位置ずれせず、
前記交換ホイールが、交換嵌合穴を前記交換ホイールの側面の中央に有し、前記交換嵌合穴から径方向外方へ延びた交換凹溝を前記交換ホイールの側面に有し、
前記交換凹溝が、前記交換ホイールの中心から前記交換ホイールの歯の頂点まで結ぶ径から周方向に位置ずれし、
前記交換工程の前では、前記シャフトの端が前記嵌合穴に嵌め込まれ、前記突出部が前記凹溝に嵌め込まれ、
前記交換工程において、前記シャフトの端を前記嵌合穴から前記交換嵌合穴に嵌め換え、前記突出部を前記凹溝から前記交換凹溝に嵌め換える、
請求項3又は4に記載の牽引装置の製造方法。
<請求項8>
第一方向に互いに離間するともに前記第一方向に垂直な第二方向に互いに平行に延びる第一無端部材及び第二無端部材と、
前記第一無端部材が巻き掛けられ、外周に歯を有する第一ホイールと、
前記第二無端部材が巻き掛けられ、外周に歯を有する第二ホイールと、
前記第一ホイール及び前記第二ホイールと同軸状に前記第一ホイール及び前記第二ホイールに取り付けられるシャフトと、
前記第一ホイールと交換可能であり、外周に歯を有する交換ホイールと、を備え、
前記第一ホイールが前記交換ホイールに交換されるとともに前記交換ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記交換ホイールの歯は、前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯から周方向に位置ずれしている、
牽引装置。
<請求項9>
前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯が前記第二ホイールの歯から周方向に位置ずれせず、前記交換ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記交換ホイールの歯が前記第二ホイールの歯から周方向に位置ずれしている、
請求項8に記載の牽引装置。
<請求項10>
前記シャフトが、その外周から径方向外方に突出する突出部を前記シャフトの端に有し、
前記第一ホイールが、嵌合穴を前記第一ホイールの側面の中央に有するとともに、前記嵌合穴から径方向外方へ延びた凹溝を前記第一ホイールの側面に有し、
前記凹溝が、前記第一ホイールの中心から前記第一ホイールの歯の頂点まで結ぶ径から周方向に位置ずれせず、
前記交換ホイールが、交換嵌合穴を前記交換ホイールの側面の中央に有し、前記交換嵌合穴から径方向外方へ延びた交換凹溝を前記交換ホイールの側面に有し、
前記交換凹溝が、前記交換ホイールの中心から前記交換ホイールの歯の頂点まで結ぶ径から周方向に位置ずれし、
前記シャフトの端が前記嵌合穴から前記交換嵌合穴に嵌め換え可能であり、前記突出部が前記凹溝から前記交換凹溝に嵌め換え可能である、
請求項8又は9に記載の牽引装置。
<請求項11>
請求項8又は9に記載の牽引装置を備える印刷装置。
<請求項12>
シャフトと同軸状に前記シャフトに取り付けられる第一ホイール及び第二ホイールのうち前記第一ホイールと交換可能な交換ホイールであって、
前記第一ホイールが前記第一ホイールの外周に歯を有し、
前記第二ホイールが前記第二ホイールの外周に歯を有し、
前記交換ホイールが前記交換ホイールの外周に歯を備え、
前記第一ホイールが前記交換ホイールに交換されるとともに前記交換ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記交換ホイールの歯は、前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯から周方向に位置ずれしている、
交換ホイール。
<請求項13>
前記第一ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記第一ホイールの歯が前記第二ホイールの歯から周方向に位置ずれせず、前記交換ホイールが前記シャフトに取り付けられた場合の前記交換ホイールの歯が前記第二ホイールの歯から周方向に位置ずれしている、
請求項12に記載の交換ホイール。
<請求項14>
前記シャフトが、その外周から径方向外方に突出する突出部を前記シャフトの端に有し、
前記第一ホイールが、嵌合穴を前記第一ホイールの側面の中央に有するとともに、前記嵌合穴から径方向外方へ及んだ凹溝を前記第一ホイールの側面に有し、
前記凹溝が、前記第一ホイールの中心から前記第一ホイールの歯の頂点まで結ぶ径から周方向に位置ずれせず、
前記交換ホイールが、交換嵌合穴を前記交換ホイールの側面の中央に有し、前記交換嵌合穴から径方向外方へ及んだ交換凹溝を前記交換ホイールの側面に有し、
前記交換凹溝が、前記交換ホイールの中心から前記交換ホイールの歯の頂点まで結ぶ径から周方向に位置ずれし、
前記シャフトの端が前記嵌合穴から前記交換嵌合穴に嵌め換え可能であり、前記突出部が前記凹溝から前記交換凹溝に嵌め換え可能である、
請求項12又は13に記載の交換ホイール。
【符号の説明】
【0087】
1 印刷装置
25 可動体
50 牽引装置
59 シャフト
59d 留めピン(突出部)
60R,60L 巻き掛け伝動機構
61R 第一ホイール
61L 第二ホイール
63R 第一無端部材
63L 第二無端部材
61Ra 歯車(第一ホイール)
61Rb,61Rc 歯車(交換ホイール)
161Ra 嵌合穴(挿入孔)
161Rb,161Rc 嵌合穴(交換嵌合穴、挿入孔)
261Ra 凹溝(溝部、挿入孔)
261Rb,261Rc 凹溝(交換凹溝、溝部、挿入孔)
361Ra 径
361Rb 径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12