(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180284
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】電気化学装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/028 20160101AFI20231214BHJP
H01M 8/0282 20160101ALI20231214BHJP
H01M 8/0276 20160101ALI20231214BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20231214BHJP
【FI】
H01M8/028
H01M8/0282
H01M8/0276
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093423
(22)【出願日】2022-06-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素利用等先導研究開発事業/水電解水素製造技術高度化のための基盤技術研究開発/高温水蒸気電解技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の運用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】長田 憲和
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 理子
(72)【発明者】
【氏名】吉野 正人
(72)【発明者】
【氏名】土屋 直実
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌平
(72)【発明者】
【氏名】亀田 常治
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA13
5H126DD05
5H126EE03
5H126GG02
5H126GG12
(57)【要約】
【課題】絶縁シール材の特性が向上し、発電性能や電解性能の向上を容易に実現可能な電気化学装置を提供する。
【解決手段】実施形態の電気化学装置は、第1のセパレータ部と第2のセパレータ部との間を密封すると共に電気的に絶縁するように構成された絶縁シール材を有する。絶縁シール材は、シール材本体部と第1シール材軟化部と第2シール材軟化部とを含む。第1シール材軟化部は、シール材本体部において第1のセパレータ部の側に位置する第1の面に設けられている。第2シール材軟化部は、シール材本体部において第2のセパレータ部の側に位置する第2の面に設けられている。ここでは、シール材本体部は、固体酸化物形セルが運転する運転温度で硬い状態を保持する。そして、第1シール材軟化部および第2シール材軟化部は、固体酸化物形セルが運転する運転温度で軟化するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物の電解質膜を第1電極と第2電極とが挟むように構成されている固体酸化物形セルと、
前記固体酸化物形セルのうち前記第1電極の側に設置され、前記第1電極と電気的に接続するように構成された第1のセパレータ部と、
前記固体酸化物形セルのうち前記第2電極の側に設置され、前記第2電極と電気的に接続するように構成された第2のセパレータ部と
を備え、前記第1のセパレータ部と前記第1電極との間を第1電極ガスが流れると共に、前記第2のセパレータ部と前記第2電極との間を第2電極ガスが流れるように構成された電気化学装置であって、
前記第1のセパレータ部と前記第2のセパレータ部との間を密封すると共に電気的に絶縁するように構成された絶縁シール材
を有し、
前記絶縁シール材は、
シール材本体部と、
前記シール材本体部において前記第1のセパレータ部の側に位置する第1の面に設けられている第1シール材軟化部と、
前記シール材本体部において前記第2のセパレータ部の側に位置する第2の面に設けられている第2シール材軟化部と
を含み、
前記シール材本体部は、前記固体酸化物形セルが運転する運転温度で硬い状態を保持し、
前記第1シール材軟化部および前記第2シール材軟化部は、前記固体酸化物形セルが運転する運転温度で軟化するように構成されている、
電気化学装置。
【請求項2】
前記シール材本体部は、セラミックス材料からなる、
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記シール材本体部は、
絶縁材料で形成された絶縁材部と、
金属材料で形成され、前記絶縁材部において前記第1のセパレータ部の側に位置し、前記第1の面を含む第1金属材部と、
金属材料で形成され、前記絶縁材部において前記第2のセパレータ部の側に位置し、前記第2の面を含む第2金属材部と
を含む、
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記シール材本体部は、
金属材料で形成された金属材部と、
絶縁材料で形成され、前記金属材部において前記第1のセパレータ部の側に位置し、前記第1の面を含む第1絶縁材部と、
絶縁材料で形成され、前記金属材部において前記第2のセパレータ部の側に位置し、前記第2の面を含む第2絶縁材部と
を含む、
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記第1シール材軟化部および前記第2シール材軟化部は、ガラス材料からなる、
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記シール材本体部において、前記第1の面および前記第2の面は、凹凸面である、
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記第1金属材部および前記第2金属材部は、酸化が生ずる金属材料で形成されている、
請求項3に記載の電気化学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学装置は、例えば、固体酸化物の電解質膜を水素極と酸素極とが挟むように構成された固体酸化物形セルを有する。電気化学装置において、固体酸化物形セルは、固体酸化物型燃料電池(SOFC(Solid Oxide Fuel Cell))と、固体酸化物型電解セル(SOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell))との少なくとも一方として機能する。
【0003】
固体酸化物形セルがSOFCとして機能する際には、高温(たとえば、600~900℃)な運転温度の下で、水素極に供給された還元性の燃料ガス(水素、炭化水素、アンモニアなど)と、酸素極に供給された酸化性のガス(酸素、空気など)とが、電解質膜を介して反応する。ここでは、水素極と酸素極とのそれぞれにおいて、たとえば、下記反応式で示される燃料電池反応が生じる。
【0004】
・水素極: H2+O2-→H2O+2e-
・酸素極: (1/2)O2+2e-→O2-
【0005】
これに対して、SOECとして機能する際には、固体酸化物形セルは、SOFCとして機能するときの反応と逆の反応が起こり、高温(たとえば、700℃以上)な運転温度の下で、水蒸気が水素と酸素とに分解する。つまり、水素極と酸素極とのそれぞれにおいて、下記反応式で示される電気分解反応が生じる。
【0006】
・水素極: H2O+2e-→H2+O2-
・酸素極: O2-→(1/2)O2+2e-
【0007】
電気化学装置は、単セルを複数有し、複数の単セルが積層されたセルスタックを構成している。セルスタックでは、発電出力の増加等のために、単セルを構成する固体酸化物形セルが直列で電気的に接続されている。セルスタックは、一対のエンドプレートに挟まれており、たとえば、ボルトなどの締結部材を用いて一対のエンドプレートの間が締め付けられている。
【0008】
電気化学装置の単セルにおいて、固体酸化物形セルは、セパレータの間に介在している。そして、セパレータの間を密封すると共に電気的に絶縁するために、絶縁シール材が設けられている。
【0009】
絶縁シール材として、例えば、常温と運転温度との間の温度で発泡する発泡物質を含むものが提案されている。また、絶縁シール材として、例えば、マイカなどの圧縮シールとガラスシートを併用する構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5904701号
【特許文献2】特開2010-55951号公報
【特許文献3】特許第5368333号
【特許文献4】特許第6527761号
【特許文献5】特許第6734710号
【特許文献6】特開2010-199059号公報
【特許文献7】特許第6862534号
【特許文献8】特開2017-183177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の絶縁シール材においては、シール性などの特性を十分に得ることが困難な場合がある。その結果、電気化学装置においては、発電性能および電解性能が低下する場合がある。
【0012】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、絶縁シール材の特性が向上し、発電性能や電解性能の向上を容易に実現可能な電気化学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の電気化学装置は、固体酸化物形セルと第1のセパレータ部と第2のセパレータ部とを備える。固体酸化物形セルは、固体酸化物の電解質膜を第1電極と第2電極とが挟むように構成されている。第1のセパレータ部は、固体酸化物形セルのうち第1電極の側に設置され、第1電極と電気的に接続するように構成されている。第2のセパレータ部は、固体酸化物形セルのうち第2電極の側に設置され、第2電極と電気的に接続するように構成されている。電気化学装置は、第1のセパレータ部と第1電極との間を第1電極ガスが流れると共に、第2のセパレータ部と第2電極との間を第2電極ガスが流れるように構成されている。電気化学装置は、第1のセパレータ部と第2のセパレータ部との間を密封すると共に電気的に絶縁するように構成された絶縁シール材を有する。絶縁シール材は、シール材本体部と第1シール材軟化部と第2シール材軟化部とを含む。第1シール材軟化部は、シール材本体部において第1のセパレータ部の側に位置する第1の面に設けられている。第2シール材軟化部は、シール材本体部において第2のセパレータ部の側に位置する第2の面に設けられている。ここでは、シール材本体部は、固体酸化物形セルが運転する運転温度で硬い状態を保持する。そして、第1シール材軟化部および第2シール材軟化部は、固体酸化物形セルが運転する運転温度で軟化するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電気化学装置1を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る電気化学装置1を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る電気化学装置1において、絶縁シール材40を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る電気化学装置において、絶縁シール材40を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る電気化学装置において、絶縁シール材40を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、第4実施形態に係る電気化学装置において、絶縁シール材40を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態に係る電気化学装置において、絶縁シール材40を構成するシール材本体部400の凹凸面を模式的に示す上面図(xy面)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
[A]電気化学装置1の構成
図1および
図2は、第1実施形態に係る電気化学装置1を模式的に示す図である。
【0016】
図1において、縦方向は鉛直方向zであり、横方向は第1水平方向xであり、紙面に垂直な方向は、鉛直方向zおよび第1水平方向xに直交する第2水平方向yである。
図1は、電気化学装置1の側断面図であって、
図2中のY1-Y1部分の面(xz面)に相当する部分を示している。
【0017】
図2において、縦方向は第2水平方向yであり、横方向は第1水平方向xであり、紙面に垂直な方向は鉛直方向zである。
図2は、電気化学装置1の上面図であって、
図1中のZ1-Z1部分の面(xy面)に相当する部分を示している。
【0018】
図1および
図2に示すように、電気化学装置1は、固体酸化物形セル10と第1集電材21と第2集電材22と第1のセパレータ部31と第2のセパレータ部32と絶縁シール材40とを含む単セル2を有し、発電と電解とを実行するように構成されている。
【0019】
図示を省略しているが、電気化学装置1は、単セル2を複数有し、複数の単セル2が鉛直方向zに積層されたセルスタックを構成している。セルスタックは、発電出力の増加等のために、単セル2を構成する固体酸化物形セル10が直列で電気的に接続されている。セルスタックは、鉛直方向zにおいて一対のエンドプレート(図示省略)に挟まれており、たとえば、ボルトなどの締結部材を用いて一対のエンドプレートの間が締め付けられている。セルスタックは、一対のブスバー(図示省略)が電気的に接続されており、電解を実行する際には一対のブスバーを介してセルスタックに電流を供給し、発電を実行する際には一対のブスバーを介して電流を取り出すように構成されている。
【0020】
なお、
図1では、第1のセパレータ部31と第2のセパレータ部32とが別体である場合について示しているが、セルスタックを構成する場合には、両者が一体になる部分を含むように構成してもよい。
【0021】
以下より、電気化学装置1を構成する単セル2の各部について、順次、説明する。
【0022】
[A-1]固体酸化物形セル10
固体酸化物形セル10は、四角形状の平板型であって、電解質膜110と水素極111(第1電極)と酸素極112(第2電極)とを含み、電解質膜110が水素極111と酸素極112との間に介在するように構成されている。ここでは、固体酸化物形セル10は、例えば、水素極支持型(燃料極支持型)であって、支持体として機能する水素極111の上面に電解質膜110と酸素極112とが順次積層されている。固体酸化物形セル10は、水素極支持型(例えば、電解質支持型)に限らず、また、四角形状以外の形状(円形など)であってもよい。
【0023】
固体酸化物形セル10において、電解質膜110は、酸化物イオン(O2-)が透過するイオン伝導性の固体酸化物(たとえば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ))で形成されている。電解質膜110は、水素極111および酸素極112よりも緻密になるように構成されている。
【0024】
固体酸化物形セル10において、水素極111は、多孔質の電気伝導体(例えば、ニッケル粒子とYSZなどのセラミック粒子とを用いて形成されたサーメット)で構成されている。
【0025】
固体酸化物形セル10において、酸素極112は、多孔質の電気伝導体(LaSrMnO3などのペロブスカイト酸化物など)で構成されている。
【0026】
電解質膜110において、水素極111と酸素極112とに挟まれた領域R10は、例えば、平面形状が四角形状であって、固体酸化物形セル10がSOFCまたはSOECとして機能する際には、その領域R10の内部において酸化物イオン(O2-)が移動する。
【0027】
[A-2]第1集電材21および第2集電材22
第1集電材21は、固体酸化物形セル10を構成する水素極111の下面に設けられている。第1集電材21は、網状構造や多孔質構造であって、水素極111において消費または生成される水素極ガス(第1電極ガス)が透過するように構成されている。また、第1集電材21は、例えば、ニッケルなどの金属材料で形成されており、水素極111と、水素極111の下方に位置する第1のセパレータ部31との間を電気的に接続している。第1集電材21は、水素極111と第1のセパレータ部31との間の電気的な接続を確保ために、両者の間において付勢する付勢部材であってもよい。
【0028】
第2集電材22は、固体酸化物形セル10を構成する酸素極112の下面に設けられている。第2集電材22は、第1集電材21と同様に、網状構造や多孔質構造であって、酸素極112において消費または生成される酸素極ガス(第2電極ガス)が透過するように構成されている。また、第2集電材22は、例えば、銀などの金属材料で形成されており、酸素極112と、酸素極112の上方に位置する第2のセパレータ部32との間を電気的に接続している。第2集電材22は、第1集電材21と同様に、酸素極112と第2のセパレータ部32との間の電気的な接続を確保ために、両者の間において付勢する付勢部材であってもよい。
【0029】
[A-3]第1のセパレータ部31
第1のセパレータ部31は、たとえば、金属などの導電材料で形成されており、固体酸化物形セル10のうち水素極111の側に設置されている。
【0030】
本実施形態では、第1のセパレータ部31は、収容空間K31を有する。収容空間K31は、第1のセパレータ部31の上面のうち中央部分に形成されている。収容空間K31は、平面形状が四角形状の凹部であって、第1集電材21、および、固体酸化物形セル10を収容するように構成されている。ここでは、収容空間K31は、固体酸化物形セル10のうち電解質膜110と水素極111とを収容している。
【0031】
第1のセパレータ部31において、収容空間K31は、第1集電材21および固体酸化物形セル10を収容したときに、第1集電材21および固体酸化物形セル10の各側面と収容空間K31の側面との間に、ギャップが介在するように構成されている。
【0032】
また、第1のセパレータ部31には、水素極ガス供給口F311、水素極ガス流路F31、水素極ガス排出口F312が設けられており、水素極ガス供給口F311から供給された水素極ガスが、水素極ガス流路F31を通過した後に、水素極ガス排出口F312から排出されるように構成されている。ここでは、水素極ガス流路F31は、例えば、直線状の溝であって、収容空間K31において水素極111を支持する支持面(底面)に形成されている。
【0033】
なお、水素極ガス流路F31は、第1集電材21に形成しもよい。また、水素極ガス流路F31を形成せずに、水素極ガス流路F31の機能を第1集電材21が担うように構成してもよい。つまり、第1のセパレータ部31と水素極111との間を水素極ガスが流れるように構成されていればよい。
【0034】
[A-4]第2のセパレータ部32
第2のセパレータ部32は、第1のセパレータ部31と同様に、たとえば、金属などの導電材料で形成されており、固体酸化物形セル10のうち酸素極112の側に設置されている。
【0035】
また、第2のセパレータ部32には、酸素極ガス供給口F321、酸素極ガス流路F32、酸素極ガス排出口F322が設けられており、酸素極ガス供給口F321から供給された酸素極ガスが、酸素極ガス流路F32を通過した後に、酸素極ガス排出口F322から排出されるように構成されている。酸素極ガス流路F32は、第2のセパレータ部32において酸素極112の上面に対面する下面に設けられている。酸素極ガス流路F32は、例えば、直線状の溝であって、水素極ガス流路F31を構成する直線状の溝に対して直交するように形成されている。
【0036】
なお、酸素極ガス流路F32は、第2集電材22に形成しもよい。また、酸素極ガス流路F32を形成せずに、酸素極ガス流路F32の機能を第2集電材22が担うように構成してもよい。つまり、第2のセパレータ部32と酸素極112との間を酸素極ガスが流れるように構成されていればよい。
【0037】
[A-5]絶縁シール材40
絶縁シール材40は、第1のセパレータ部31と第2のセパレータ部32との間に介在している。
【0038】
絶縁シール材40は、額縁状の板状体であって、中央部分に開口部K40が形成されており、その開口部K40の内部には、酸素極112および第2集電材22が収容されている。また、絶縁シール材40は、収容空間K31の上方において内側へ突き出た部分を含み、その突き出た部分が、ギャップを覆うと共に、電解質膜110の上面に接触している。
【0039】
絶縁シール材40は、第1のセパレータ部31と第2のセパレータ部32との間を密封状態にするように構成されている。
【0040】
また、絶縁シール材40は、第1のセパレータ部31と第2のセパレータ部32との間を電気的な絶縁状態にするように構成されている。絶縁シール材40は、固体酸化物形セル10の運転を、数万時間以上、実施した場合であっても、絶縁破壊が生じずに、絶縁性能を保持可能であることが好ましい。
【0041】
[B]絶縁シール材40の詳細構成
絶縁シール材40に関して、
図1と共に
図3を用いて説明する。
【0042】
図3は、第1実施形態に係る電気化学装置1において、絶縁シール材40を模式的に示す図である。
図3は、
図1と同様に側断面図であって、
図1に示す絶縁シール材40の一部を拡大して示している。
【0043】
図1および
図3に示すように、絶縁シール材40は、シール材本体部400と第1シール材軟化部411と第2シール材軟化部412とを含む。
【0044】
[B-1]シール材本体部400
シール材本体部400は、固体酸化物形セル10が運転する運転温度で硬い状態を保持するように構成されている。つまり、シール材本体部400の軟化点は、固体酸化物形セル10において発電または電解が行われるときの運転温度よりも高い。
【0045】
ここでは、シール材本体部400は、絶縁材料で形成されている。シール材本体部400は、例えば、アルミナやジルコニアなどのセラミックス材料で形成されている。シール材本体部400は、例えば、圧縮強度が約500MPa以上(ジルコニアと同等以上)であることが好ましい。シール材本体部400の厚みは、例えば、0.1~1.0mmである。
【0046】
[B-2]第1シール材軟化部411
第1シール材軟化部411は、シール材本体部400において第1のセパレータ部31の側に位置する下面(第1の面)に設けられている。第1シール材軟化部411は、固体酸化物形セル10が運転する運転温度で軟化するように構成されている。つまり、第1シール材軟化部411の軟化点は、固体酸化物形セル10において発電または電解が行われるときの運転温度以下である。
【0047】
ここでは、第1シール材軟化部411は、シール材本体部400および第1のセパレータ部31を構成する材料と反応せずに腐食が生じない絶縁材料で形成されていることが好ましく、例えば、第1シール材軟化部411は、ガラス材料からなる。第1シール材軟化部411の厚みは、例えば、0.01~0.1mmである。
【0048】
[B-3]第2シール材軟化部412
第2シール材軟化部412は、シール材本体部400において第2のセパレータ部32の側に位置する上面(第2の面)に設けられている。第2シール材軟化部412は、第1シール材軟化部411はと同様に、固体酸化物形セル10が運転する運転温度で軟化するように構成されている。つまり、第2シール材軟化部412の軟化点は、固体酸化物形セル10において発電または電解が行われるときの運転温度以下である。
【0049】
ここでは、第2シール材軟化部412は、シール材本体部400および第2のセパレータ部32を構成する材料と反応せずに腐食が生じない材料で形成されていることが好ましく、例えば、第2シール材軟化部412は、第1シール材軟化部411と同様に、ガラス材料からなる。第2シール材軟化部412の厚みは、例えば、0.01~0.1mmである。
【0050】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態の電気化学装置1では、絶縁シール材40は、シール材本体部400において第1のセパレータ部31の側に位置する下面(第1の面)に第1シール材軟化部411が設けられ、シール材本体部400において第2のセパレータ部32の側に位置する上面(第2の面)に第2シール材軟化部412が設けられている。
【0051】
本実施形態の絶縁シール材40において、シール材本体部400は、固体酸化物形セル10が運転する運転温度で硬い状態を保持する。また、本実施形態の絶縁シール材40において、第1シール材軟化部411および第2シール材軟化部412は、固体酸化物形セル10が運転する運転温度で軟化するように構成されている。
【0052】
このため、本実施形態の絶縁シール材40は、固体酸化物形セル10の運転時に作用する締付け圧力に対して十分に耐える強度を得ることができる。また、固体酸化物形セル10の運転時においても、十分なシール性能を得ることができる。
【0053】
<第2実施形態>
[A]絶縁シール材40の詳細構成
図4は、第2実施形態に係る電気化学装置において、絶縁シール材40を模式的に示す図である。
図4は、
図3と同様に側断面図を示している。
【0054】
図4に示すように、本実施形態は、絶縁シール材40の構成の一部が、上記した第1実施形態の場合(
図3参照)と異なる。この点、および、関連する点以外には、第1実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0055】
図4に示すように、本実施形態の絶縁シール材40は、第1実施形態の場合(
図3参照)と同様に、シール材本体部400と第1シール材軟化部411と第2シール材軟化部412とを含む。
【0056】
しかし、本実施形態の絶縁シール材40において、シール材本体部400は、第1実施形態の場合(
図3参照)と異なり、絶縁材部402と第1金属材部401aと第2金属材部401bとを含む。
【0057】
[A-1]絶縁材部402
絶縁材部402は、絶縁材料からなる板状体である。ここでは、絶縁材部402は、例えば、マイカ、サーミキュライト、粘土などのセラミックス材料で形成されている。絶縁材部402は、例えば、厚みが0.2~0.5mmである板状体である。
【0058】
[A-2]第1金属材部401a
第1金属材部401aは、絶縁材部402において第1のセパレータ部31の側に位置する下面に形成されており、第1金属材部401aの下面には、第1シール材軟化部411が設けられている。
【0059】
第1金属材部401aは、金属材料からなる板状体であって、例えば、ステンレス(SUS430等)のように、酸化が生じない金属材料で形成されている。第1金属材部401aは、例えば、厚みが0.1~0.2mmであって、第1金属材部401aは、固体酸化物形セル10と熱膨張率がほぼ同等の材料を用いることが好ましい。
【0060】
[A-3]第2金属材部401b
第2金属材部401bは、絶縁材部402において第2のセパレータ部32の側に位置する上面に形成されており、第2金属材部401bの下面には、第2シール材軟化部412が設けられている。
【0061】
第2金属材部401bは、金属材料からなる板状体であって、第1金属材部401aと同様に、例えば、ステンレス(SUS430等)のように、酸化が生じない金属材料で形成されている。第2金属材部401bは、例えば、厚みが0.1~0.2mmである板状体であって、固体酸化物形セル10と熱膨張率がほぼ同等の材料を用いることが好ましい。
【0062】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態において、絶縁シール材40のシール材本体部400は、絶縁材部402を第1金属材部401aと第2金属材部401bとが挟むように構成されている。このため、本実施形態の絶縁シール材40においては、絶縁特性が絶縁材部402によって担保されると共に、固体酸化物形セル10の運転時に作用する締付け圧力に対して耐える強度が、第1金属材部401aおよび第2金属材部401bによって担保される。また、容易に加工可能な絶縁材部402に第1金属材部401aおよび第2金属材部401bを設けるため、コストの低減を容易に実現することができる。
【0063】
[C]変形例
上記の実施形態の絶縁シール材40では、第1金属材部401aおよび第2金属材部401bが、ステンレスなどのように、酸化が生じない金属材料で形成されている場合について説明したが、これに限らない。第1金属材部401aおよび第2金属材部401bは、酸化が生ずる金属材料で形成されていてもよい。ここでは、酸化が生ずる金属材料として、例えば、鉄、マンガン、ニッケルを用いて、第1金属材部401aおよび第2金属材部401bを形成することが好ましい。これにより、例えば、第1シール材軟化部411および第2シール材軟化部412が破損して欠落した場合であっても、第1金属材部401aおよび第2金属材部401bが酸化して酸化物の皮膜が形成される。その結果、第1シール材軟化部411および第2シール材軟化部412の欠落によって生じた隙間が、第1金属材部401aおよび第2金属材部401bの酸化物によって塞がれる。それゆえ、シール性能を十分に確保することができる。
【0064】
<第3実施形態>
[A]絶縁シール材40の詳細構成
図5は、第3実施形態に係る電気化学装置において、絶縁シール材40を模式的に示す図である。
図5は、
図3と同様に側断面図を示している。
【0065】
図5に示すように、本実施形態は、絶縁シール材40の構成の一部が、上記した第1実施形態の場合(
図3参照)と異なる。この点、および、関連する点以外には、第1実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0066】
図5に示すように、本実施形態の絶縁シール材40は、第1実施形態の場合(
図3参照)と同様に、シール材本体部400と第1シール材軟化部411と第2シール材軟化部412とを含む。
【0067】
しかし、本実施形態の絶縁シール材40において、シール材本体部400は、第1実施形態の場合(
図3参照)と異なり、金属材部401と第1絶縁材部402aと第2絶縁材部402bとを含む。
【0068】
[A-1]金属材部401
金属材部401は、金属材料からなる板状体(稠密板、ハニカム構造材等)であって、例えば、ステンレス(SUS430等)で形成されている。金属材部401は、例えば、厚みが0.2~0.5mmである。
【0069】
[A-2]第1絶縁材部402a
第1絶縁材部402aは、金属材部401において第1のセパレータ部31の側に位置する下面に形成されており、第1絶縁材部402aの下面には、第1シール材軟化部411が設けられている。
【0070】
第1絶縁材部402aは、絶縁材料からなる板状体であって、例えば、マイカ、サーミキュライトなどで形成されている。第1絶縁材部402aは、例えば、厚みが0.1~0.2mmである。
【0071】
[A-3]第2絶縁材部402b
第2絶縁材部402bは、金属材部401において第2のセパレータ部32の側に位置する上面に形成されており、第2絶縁材部402bの上面には、第2シール材軟化部412が設けられている。
【0072】
第2絶縁材部402bは、絶縁材料からなる板状体であって、例えば、マイカ、サーミキュライトなどで形成されている。第2絶縁材部402bは、例えば、厚みが0.1~0.2mmである。
【0073】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態において、絶縁シール材40のシール材本体部400は、金属材部401を第1絶縁材部402aと第2絶縁材部402bとが挟むように構成されている。このため、本実施形態の絶縁シール材40においては、絶縁特性が第1絶縁材部402aおよび第2絶縁材部402bによって担保されると共に、固体酸化物形セル10の運転時に作用する締付け圧力に対して耐える強度が、金属材部401によって担保される。
【0074】
<第4実施形態>
[A]絶縁シール材40の詳細構成
図6は、第4実施形態に係る電気化学装置において、絶縁シール材40を模式的に示す図である。
図6は、
図3と同様に側断面図を示している。
【0075】
図6に示すように、本実施形態は、絶縁シール材40の構成の一部が、上記した第1実施形態の場合(
図3参照)と異なる。この点、および、関連する点以外には、第1実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0076】
図6に示すように、本実施形態の絶縁シール材40は、第1実施形態の場合(
図3参照)と同様に、シール材本体部400と第1シール材軟化部411と第2シール材軟化部412とを含む。
【0077】
しかし、本実施形態の絶縁シール材40において、シール材本体部400は、第1実施形態の場合(
図3参照)と異なり、下面(第1の面)および上面(第2の面)は、凹凸面である。ここでは、凹凸面は、凹部と凸部とが交互に繰り返し並んでいる。凹部の幅および凸部の幅は、例えば、平均で0.1mm以下であることが好ましい。
【0078】
図7は、第4実施形態に係る電気化学装置において、絶縁シール材40を構成するシール材本体部400の凹凸面を模式的に示す上面図(xy面)である。
【0079】
図7では、シール材本体部400の凹凸面を構成する凹部および凸部の延在方向について、図示の都合により、破線で示している(ただし、凹部および凸部の延在方向のうち、収容空間K31の輪郭と重複する部分については、実線で示している)。
図7において破線で示すように、シール材本体部400の凹凸面は、固体酸化物形セル10を収容する収容空間K31の輪郭に沿って、凹部および凸部が延在している。
【0080】
具体的には、シール材本体部400のうち第1水平方向xにおいて収容空間K31の両端に位置する部分(
図7では、左側端部分と右側端部分)では、収容空間K31において第2水平方向yに延びる輪郭と同様に、凹部および凸部は、第2水平方向yに延在している。そして、シール材本体部400のうち第2水平方向yにおいて収容空間K31の両端に位置する部分(
図7では、上側端部分と下側端部分)では、収容空間K31において第1水平方向xに延びる輪郭と同様に、凹部および凸部は、第1水平方向xに延在している。
【0081】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の絶縁シール材40において、シール材本体部400は、第1シール材軟化部411が形成される下面(第1の面)、および、第2シール材軟化部412が形成される上面(第2の面)が、凹凸面である。このため、本実施形態の絶縁シール材40では、シール材本体部400において第1シール材軟化部411および第2シール材軟化部412を保持する量が増加するため、より長期に渡ってシール特性を確保可能である。
【0082】
また、本実施形態では、シール材本体部400の凹凸面は、固体酸化物形セル10を収容する収容空間K31の輪郭に沿って、凹部および凸部が延在しているため、収容空間K31からガスが凹部および凸部に沿って漏洩しにくい。それゆえ、本実施形態では、シール特性を向上可能である。
【0083】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1:電気化学装置、2:単セル、10:固体酸化物形セル、21:第1集電材、22:第2集電材、31:第1のセパレータ部、32:第2のセパレータ部、40:絶縁シール材、110:電解質膜、111:水素極(第1電極)、112:酸素極(第2電極)、400:シール材本体部、401:金属材部、401a:第1金属材部、401b:第2金属材部、402:絶縁材部、402a:第1絶縁材部、402b:第2絶縁材部、411:第1シール材軟化部、412:第2シール材軟化部、F31:水素極ガス流路、F311:水素極ガス供給口、F312:水素極ガス排出口、F32:酸素極ガス流路、F321:酸素極ガス供給口、F322:酸素極ガス排出口、K31:収容空間、K40:開口部、R10:領域