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特開2023-180285低熱伝導材料を用いたヒートシール装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180285
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】低熱伝導材料を用いたヒートシール装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 51/10 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B65B51/10 Z
B65B51/10 114
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093429
(22)【出願日】2022-06-09
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.キムタオル
(71)【出願人】
【識別番号】594146180
【氏名又は名称】中本パックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田中 政浩
(72)【発明者】
【氏名】山田 和志
【テーマコード(参考)】
3E094
【Fターム(参考)】
3E094AA12
3E094CA03
3E094CA04
3E094HA20
(57)【要約】
【課題】インパルスシーラー等の一方を受体とするヒートシール装置の使用電力量を少なくして、効率よくヒートシールできる手段を提供する。
【解決手段】上記課題は、加熱体と受体の間にヒートシール材料を挟んで加熱圧着するヒートシール装置において、受体のヒートシール材料を圧する側の面に熱伝導率が0.1W/m・K以下で柔軟性の低熱伝導率シートが配置されていることを特徴とするヒートシール装置によって解決できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱体と受体の間にヒートシール材料を挟んで加熱圧着するヒートシール装置において、受体のヒートシール材料を圧する側の面に熱伝導率が0.1W/m・K以下で柔軟性の低熱伝導率シートが配置されていることを特徴とするヒートシール装置
【請求項2】
低熱伝導率シートの熱伝導率が0.06W/m・K以下である請求項1記載のヒートシール装置
【請求項3】
低熱伝導率シートがセルロース繊維で形成されている請求項1記載のヒートシール装置
【請求項4】
低熱伝導率シートがキムタオル又は和紙である請求項3記載のヒートシール装置
【請求項5】
低熱伝導率シートのヒートシール材料を圧する側に保護シートが配置されている請求項1記載のヒートシール装置
【請求項6】
保護シートがポリイミドフィルムである請求項5記載のヒートシール装置
【請求項7】
受付が低熱伝導率シートである請求項1記載のヒートシール装置
【請求項8】
低熱伝導率シートがエアロゲルブランケットである請求項7記載のヒートシール装置
【請求項9】
受付に低熱伝導率材料が配合されている請求項7記載のヒートシール装置
【請求項10】
ヒートシール装置がインパルスシール装置である請求項1記載のヒートシール装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用電力を節減できるヒートシール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や医療器具、その他商品の多くはプラスチックフィルムによりパッケージングされている。近年、環境問題、特にマイクロプラスチックをはじめとして、環境汚染や石油枯渇問題などから今後のプラスチック製品の使用縮小が世界中で望まれている。しかしながら、コンビニエンスストアやスーパーで買える食品や商品をはじめとしてそれらの便利さに慣れてしまった今、本当にプラスチックパッケージングをなくしていくことに我々が順応していくことは困難である。そのような背景の下、生分解性ポリマーを材料としたバイオベースフィルムや、パッケージングフィルムの厚みを減少させつつ破袋し難いフィルムの開発やガス透過性を制御したフィルムの開発が盛んに行われている。一方、それらの開発されたフィルムに対してヒートシール技術も同様に向上・改善されることが必要不可欠である。実際、シール不足による破袋や自然開封事故は多く存在している。また、例えば、PLA(ポリ乳酸)フィルムは生分解性があり環境に良いと謳いながら、ポリエチレンよりも融点は約50℃高いためフィルム製造並びにシール時における加熱電力量、すなわちCO排出量は膨大になっているのが現状である。それゆえ、如何にして低電力、低環境負荷状態に近づけるかが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ヒートシールは基本的に電力を熱源として加熱を行っているので、電力の節減が大きな課題である。
【0004】
本発明の目的は、インパルスシーラー等の一方を受体とするヒートシール装置の使用電力量を少なくして、効率よくヒートシールできる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決する手段として、圧着を組紐を介して凹凸のある模様状に行うことを考えて、着物の帯ひもや靴紐などの組紐を受体としてフィルムの間に置いてヒートシールを行ったが、厚みが分厚すぎてシーラーが正常に機能しなかった。そこで、種々検討を続け、たまたま目の前にあったコピー用紙やキムタオルを受体とフィルムの間に置いたところ、全然違う雰囲気でヒートシールされ、両手で引張っても全く剥離できないくらいシールされていた。そこで、その原因を調べると、驚くべきことにヒートシールを行う時間が僅か0.5~2秒程度の短時間であるにもかかわらず、その間にシリコンゴム製の受体からの熱の放散量が大きく、これを熱伝導率が低いコピー用紙やキムタオルが受体への熱の移行を防いでヒートシール性を高めていることを見出した。
【0006】
本発明は、かかる知見に基いてなされたものであり、加熱体と受体の間にヒートシール材料を挟んで加熱圧着するヒートシール装置において、受体のヒートシール材料を圧する側の面に熱伝導率が0.1W/m・K以下で柔軟性の低熱伝導率シートが配置されていることを特徴とするヒートシール装置を提供するものである。
【0007】
低熱伝導率シートとしては、汎用プラスチックやエンジニアリングプラスチックは熱伝導率が0.1W/m・Kを越えるものばかりで、柔軟性があり、熱伝導率が0.06W/m・K以下で250℃以上の耐熱温度を有するセルロース(パルプ)繊維が特に優れている。そこで、本発明は、低熱伝導率シートが熱伝導率が0.06W/m・K以下のセルロース繊維で形成されている上記のヒートシール装置を提供するものでもある。
【0008】
そして、このセルロース繊維のなかでも、和紙とキムタオルは長繊維でなっていて強度や耐久性に優れている。そこで、本発明は、低熱伝導率シートがキムタオル又は和紙である上記のヒートシール装置を提供するものでもある。
【0009】
低熱伝導率シートとして使用できるもののなかには、強度が不足しているものもあるが、低熱伝導率シートの外側に保護シートを設けることによって、強度の不足する低熱伝導率シートも本発明の装置に使用することができ、ポリイミドは非常に薄いフィルムでも充分な強度があって耐熱性にも優れている。そこで、本発明は、低熱伝導率シートのヒートシール材料を圧する側に保護シートが配置され、この保護シートがポリイミドフィルムである上記のヒートシール装置を提供するものでもある。
【0010】
また、受体自身に低熱伝導率シートを用いれば、構造が簡単になって取扱いやすくなり、従来のヒートシール装置への適用も容易である。そこで、本発明は、受体が低熱伝導率シートである上記のヒートシール装置を提供するものでもある。
【0011】
この受体として用いる低熱伝導率シートとしては、最近開発されたエアロゲルブランケットが柔軟性がよく熱伝導率も非常に低い。そこで、本発明は、受体に用いる低熱伝導率シートがエアロゲルブランケットである上記のヒートシール装置を提供するものでもある。
【0012】
また、受体として用いる弾性体に低熱伝導率材料を配合すれば、その配合量に応じて熱伝導率が低下し、その分本発明の効果を発揮することができる。そこで、本発明は、受体に低熱伝導率材料が配合されている上記のヒートシール装置を提供するものでもある。
【0013】
本発明が適用される代表的なヒートシール装置はインパルスシール装置である。そこで、本発明は、ヒートシール装置がインパルスシール装置である上記のヒートシール装置を提供するものでもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、加熱体と受体の間にヒートシール材料を挟んで加熱圧着するヒートシール装置の受体側に、低熱伝導率シートを配置することによって、ヒートシールをより低い温度でも確実に高いヒートシール強度でヒートシールすることができ、それによって使用電気量を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例においてヒートシールを行った状態の概略を示す図である。
図2図1において、温度を測定する熱電対を挿入した状態を示す図である。
図3】使用した熱電対の形状を示す平面と側面を示す図である。
図4】低熱伝導率シートを受体に装着した状態を示す概略側面断面図である。
図5図1において、保護シートを加えた状態を示す図である。
図6図2に示す状態で、145℃で1.0秒ヒートシールし、加熱体側、フィルム間および受体側の温度の経時変化を示すグラフである。
図7図6において、150℃でヒートシールし、加熱体側、フィルム間および受体側の温度の経時変化を示すグラフである。
図8図6において、155℃でヒートシールし、加熱体側、フィルム間および受体側の温度の経時変化を示すグラフである。
図9】各種挿入シートを用いてヒートシールしたOPPのヒートシール部の偏光写真を示す図である。
図10】挿入シートとしてキムタオルを用いて145℃でヒートシールし、加熱体側、フィルム間および受体側の温度の経時変化を示すグラフである。
図11図10において、150℃でヒートシールし、加熱体側、フィルム間および受体側の温度の経時変化を示すグラフである。
図12図10において、155℃でヒートシールし、加熱体側、フィルム間および受体側の温度の経時変化を示すグラフである。
図13】ヒートシール温度145℃、150℃、155℃でキムタオルの有無によってヒートシール強度が変わる状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のヒートシール装置は、加熱体と受体の間にヒートシール材料を挟んで加熱圧着するヒートシール装置であり、代表的な装置はインパルスシール装置である。その外、片側から加熱する装置であればよく、バーシール装置のうち片側が加熱体になっている装置なども含まれる。
【0017】
本発明は、加熱体と受体からなる装置において、ヒートシール時間が非常に短かいにもかかわらず、受体から逃散する熱量がかなり多いことを見出してなされたものであり、受体とヒートシール材料の間に熱伝導率の低い柔軟性低熱伝導率シートを配置したことを特徴としている。
【0018】
受体は、加熱体と受体の間でヒートシール材料を圧着するものであり、加熱体が一般に金属製で硬いため、ヒートシール材料を均一に圧するために受体には弾性体が用いられている。この弾性体は、ヒートシール材料をピロー袋やガセット袋のように重なるフィルムの枚数が異なる部位がある包装体にする場合にも、全面を加熱圧着できるようにするものである。但し、受体自身は、通常は加熱体と同様に金属製であり、そのヒートシール材料と接する面に弾性体が取付けられている。従来は、この弾性体としてシリコンゴムが一般に用いられてきたが、本発明においては、受体のヒートシール材料を圧する側の面に熱伝導率が0.1W/m・K以下で柔軟性の低熱伝導率シートを配置する。
【0019】
この低熱伝導率シートの熱伝導率は0.1W/m・K以下、好ましくは0.08W/m・K以下、より好ましくは0.06W/m・K以下で、下限は低い程よいが、実用上0.01W/m・K程度である。各種物質の熱伝導率と比熱を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
上記の熱伝導率および比熱は、いずれも一般的な文献等(http://www.sensbey.co.jp/pdffile/materialpropety.pdf, https://www.hakko.co.jp/qa/qakit/html/h01010.htm,https://www.toishi.info/sozai/plastic/thermalconductivity.html)から引用したものである。
【0022】
低熱伝導率シートは柔軟性が必要であるが、この柔軟性は弾性体の変形に対応できるものであればよい。
【0023】
また、低熱伝導率シートはヒートシールの温度に耐える耐熱性も必要である。耐熱温度はヒートシール温度に依存するが、通常180℃以上、好ましくは200℃以上であればよい。
【0024】
低熱伝導率シートの材料としては、セルロース繊維、断熱材、ガラスウール、木材、発泡材などで上記の熱伝導率を有するものであればよい。セルロース繊維の例としては、キムタオル(紙タオル、クレシア社製品)等のタオル、洋紙、和紙、ティッシュペーパー、ボール紙等の紙製品、木綿等の組物、編物、織物等の各種布製品などがある。木材は、木粉やカンナ屑などの粉粒体や薄片状にして耐熱接着剤などでふわっと固めて使用する。ガラスウールはそれ自身の外、ガラスファイバー不織布やガラスウールマットにシリカエアロゲルを含浸させたエアロゲルブランケットなどである。エアロゲルブランケットは、有限会社タクミ産業やニチアスなどで製造されており、熱伝導率は150℃で0.023~0.026W/m・Kである。これらの中で、パルプ構造のセルロース繊維は繊維間に多くの空隙があって、100μm程度のシート厚みで柔軟性があり、熱伝導率も0.06W/m・K以下で耐熱温度が250℃以上であるので好ましく、特に長繊維からなる和紙やキムタオル等の紙タオルやキッチンペーパー、ボール紙などが好ましい。一方、洋紙や布等の繊維長の短いものは、洋紙は切れやすくて穴も開きやすく、布を使うと毛羽が沢山付着するので、使用する場合は保護シートで覆う必要がある。また、再生セルロースフィルムであるセロファンテープをシリコンゴムの受体に貼ってみたが、温度は変わらず、セロファンテープの粘着剤が熱でやられてゴムごと取り換えなければならなくなった。
【0025】
合成プラスチックについては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等の ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の汎用プラスチックは、融点が190℃以下で耐熱温度も100℃程度なので、耐熱性を要する本発明の低熱伝導率シートとしては適さない。また、ポリアミドやポリエチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチックは、融点は高いが、ガラス転移温度が70~100℃程度のものは150℃前後でも連続使用すると簡単に緩和して変形したり溶融してしまう。そして、汎用プラスチックもエンジニアリングプラスチックもほとんどが熱伝導率が0.1W/m・Kより大きい。但し、ポリカーボネートなどには、熱伝導率が0.1W/m・K以下のものもあり、それらは適用できる可能性がある。発泡材も発泡スチロールなどの柔かい発泡製品は、融点や耐熱温度が低い。エンジニアリングプラスチックの発泡材は、融点は高いが、硬さが大で柔軟性がほとんどない。従って、これを使用する場合には粉砕などを行う。
【0026】
低熱伝導率シートの配置の形態には、従来の弾性体のヒートシール材料を圧する側の面への配置と、さらにその低熱伝導率シートのヒートシール材料を圧する側へ保護シートを配置する配置と、従来の弾性体を低熱伝導率シートで置き換える配置がある。
【0027】
従来の弾性体に配置する場合の低熱伝導率シートは、それ自身の強度や耐久性が必要で、長繊維のセルロース繊維からなるものが好ましく、例えば、和紙やキムタオル等が使用できる。その外、エアロゲルはなども使用できる。この場合の低熱伝導率シートの厚みは10~1000μm程度、好ましくは20~200 μm程度が適当である。低熱伝導率シートの弾性体への配置方法は、単に配置するだけでよく、側端部あるいはヒートシール材料を圧する面などの一部や全面を弾性体に接着等で固定してもよい。固定方法は、接着剤でも両面テープでもマグネットでも固定アタッチメントでも何でも固定できればよい。受体のほぼ全面に低熱伝導率シートを接着固定した例を図4に示す。
【0028】
従来の弾性体に配置した低熱伝導率シートの外側に更に保護シートを配置する場合は、低熱伝導率シートの強度や耐久性はこの保護シートが補なってくれるので、いずれの低熱伝導率シートでも使用できる。この保護シートを配置した例を図5に示す。和紙やキムタオルなどでもこの保護シートを用いることにより使用期間を延長できる。この場合の低熱伝導率シートの厚みは5~100μm程度、好ましくは10~60μm程度が適当である。
【0029】
保護シートは耐熱性のあるエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチック製のものが好ましく、例えば、ポリイミド、延伸PET、ポリアミド、その外、主鎖中に芳香族環を有するエンジニアリングプラスチックまたはスーパーエンジニアリングプラスチックなどを使用できる。厚みは、分厚いとシート自身の体積分に相当する熱容量分の熱が逃げてしまうため、強度が確保できる範囲でできるだけ薄い方が良く、5~60μm程度が適当である。
【0030】
保護シートを用いた場合の低熱伝導率シートの弾性体への配置方法は、単に配置するだけでよく、側端部あるいはヒートシール材料を圧する面などの一部や全面を弾性体に接着等で固定してもよく、繊維や粉粒体、薄片などを弾性体の表面に接着して、そこでヒートシール状(層状)にしてもよい。保護シートの取付け方法は、低熱伝導率シートの性状に応じて定めればよく、低熱伝導率シートが充分な強度を有している場合には、単に配置するだけとか側端部あるいはヒートシール材料を圧する面などの一部や全面を弾性体又は低熱伝導率シートに接着等で固定してもよい。
【0031】
従来の弾性体を低熱伝導率シートで置き換える配置の場合の低熱伝導率シートは、それ自身が弾性体に置き換わることができる柔軟性が必要で、例えばエアロゲルブランケット等が使用できる。この場合の低熱伝導率シートの厚みは1000~10000μm程度、好ましくは1000~5000μm程度が適当である。
【0032】
本発明の低熱伝導率シートは、加熱体から供給される熱の受体における放散を阻止して、ヒートシール材料のヒートシール中の温度を高めるものであるから、シートを形成する低熱伝導率材料を弾性体である受体に配合することによっても本発明の効果を発揮させることができる。この受体に配合する低熱伝導率材料としてはセルロース繊維が特に好ましい。配合量は受体の必要な弾性体を維持する観点から、弾性体100重量部に対し低熱伝導率材料を2~50重量部程度とすることが好ましい。ヒートシール材料から受体への熱の放出を阻止する点では、低熱伝導率材料を弾性体に配合するよりも低熱伝導率シートを配置する方が優れているが、低熱伝導率材料を弾性体に配合すれば、従来のヒートシール装置を変える必要がない利点がある。
【0033】
本発明のヒートシール装置でヒートシールされるヒートシール材料の種類やヒートシールの形態等は従来と同様に適用できる。
【実施例0034】
ヒートシール材料として、融点165℃、ビカット軟化点80~100℃のフジパック社製OPPカールフィルム(透明、厚さ40μm)をMD方向に幅15mmの短冊状に切断して用いた。ヒートシール装置には、富士インパルス社製インパルスシーラーOPL-300-10を用いた。この装置は、下に置かれた加熱体の一端に圧着レバーの一端が枢着されていて、圧着レバーの圧着面には受体であるシリコンゴムが取付けられている。
【0035】
ヒートシールは、図1に示すように、加熱体の上に長尺の短冊状OPPフィルムを折って2枚重ねにして置き、その上から低熱伝導率シートやその比較対象となる挿入シートを置いて、シール幅10mm、シール温度145、150、155℃、シール時間1.0secで行った。挿入シートには、キムタオル(厚さ55μm、熱伝導率0.06W/m・K)、和紙(厚さ50μm、熱伝導率0.06W/m・K)、ポリイミドフィルム(厚さ45μm、熱伝導率0.28~0.34W/m・K)、OPPフィルム(厚さ40μm、熱伝導率0.125W/m・K)を用いた。
【0036】
ヒートシール温度の測定は、図2に示すように、挿入シートとOPPフィルムの間、OPPフィルムの間、およびOPPフィルムと加熱体の間に図3に示す形状の熱電対(長さ10mm、幅2~3mm、厚さ20μmの極薄熱電対、株式会社アンベエスエムティ製、KST-20-100-100)を挿入し、データロガーとして熱流ロガー(日置社製、LR8432)を用いてデータ間隔10msで行った。
【0037】
剥離試験は、JISZ0238に従い、ヒートシールした短冊の両端を掴んで剥離試験速度300mm/minで行った。
【0038】
まず、図2に示すように、熱電対を挿入して、ヒートシール時間1秒における加熱温度145℃、150℃および155℃における加熱体側(a)フィルム間(b)および挿入シート(c)の温度の時間変化を測定した。得られた結果を図6(145℃)、図7(150℃)および図8(155℃)に示す。
【0039】
次に、挿入シートを何も挿入しない場合、キムタオルを2枚もしくは4枚、和紙を1枚もしくは2枚、ポリイミドフィルムを1枚又はOPPフィルムを5枚挿入した場合のそれぞれのヒートシール部の偏光写真を図9に示す。偏光写真は、ヒートシールした各フィルムを2枚の偏光フィルムの間に挟んでLEDトレーシングボードの上に置いて撮影したものである。同図に示したように、例えば、0-sheet/150℃とキムタオル2枚/145℃が同じ色変化、0-sheet/155℃とキムタオル2枚/150℃、キムタオル4枚/145℃が同じ色変化、キムタオル2枚/155℃とキムタオル4枚/150℃が同じ色変化であり、和紙も同じであった。つまり、挿入シートに和紙やキムタオルを入れることによって、より低温で挿入シートなしと同じ変化を誘起できる。一方、ポリイミドとOPPフィルムは各温度とも0-sheetとあまり変らない。
【0040】
この測定の結果、特にキムタオルと和紙が変化が大きかったので、キムタオルのない場合(d)、キムタオルが2枚(e)又は4枚(f)の場合について、挿入シート側の温度の時間変化を測定した。得られた結果を図10(145℃)、図11(150℃)および図12(155℃)に示す。いずれの温度においても、キムタオルを挿入することによってヒートシール時の温度が上昇しており、145℃ではキムタオル2枚で約10℃、4枚で約20℃、150℃ではキムタオル2枚で約15℃、4枚で約17℃、155℃ではキムタオル2枚で約15℃、4枚で約17℃温度が上昇していた。
【0041】
受体側の挿入シート厚によるシール圧力の増加の影響を調べるために、挿入シートのない場合とOPPフィルム5枚を挿入した場合について、ヒートシール温度145℃、150℃および155℃で各2回加熱体側と受体側の温度変化を測定し、ヒートシール部の偏光写真を撮影したが、いずれの場合も温度も偏光写真映像もほぼ同一でOPPフィルム5枚の影響は見られなかった。
【0042】
以上の結果から、受体側にキムタオルや和紙などの低熱伝導率シートを受体側に置けば、ヒートシール材料のヒートシール温度を高められることが確認できたので、それによる剥離強さへの影響を調べた結果を表2と図13に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表2の結果から、低熱伝導率シートを受体側に置くことによって剥離強さが飛躍的に高まることが分かる。
【0045】
以上の結果、キムタオル2層または4層挿入するだけで、通常ではシールできないOPPフィルムを容易にシールできることが分かった。シール温度145℃でも4層挿入時には約2Nのシール強度を示した。京都の伝統工芸の一つである和紙でも同様の結果となった。実際に挿入シートとOPPフィルム間の温度を測定すると、キムタオル・和紙の場合、受体側の温度が約20℃も上昇することがわかり、これは熱伝導率がゴムやその他ポリマーと比較して半分以下であるために放熱できず、結果として低温シール性を導くことを見出した。また、シート枚数が増加すると断熱効果も向上し、温度が上昇して結晶化も増加することが偏光観察により明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ヒートシールをより低い温度でも確実に高いヒートシール強度でヒートシールできて、使用電気量を節減できるので、加熱体と受体の間にヒートシール材料を挟んで加熱圧着するヒートシール装置に広く利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13