(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180293
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】製造管理装置、製造管理方法及び製造管理プログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20231214BHJP
B29C 64/171 20170101ALI20231214BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20231214BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231214BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231214BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/171
B33Y50/00
B33Y30/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093447
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】396011831
【氏名又は名称】トランス・コスモス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100211719
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 和真
(72)【発明者】
【氏名】山岸 佑次
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AR11
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL85
4F213WL95
(57)【要約】
【課題】複数の三次元造形物を同時に付加製造することを複数回実行するときに、製造コストを可及的に低減することができる技術を提供する。
【解決手段】本開示の製造管理装置は、所定の付加製造装置で同時に造形可能な複数の三次元造形物の組合せを選定する選定部と、該付加製造装置のオペレータの作業スケジュールを含んで定められる標準稼働スケジュールを取得する取得部と、選定部によって選定された複数の三次元造形物の組合せについて、付加製造装置を用いて造形するときの造形時間に基づいて製造計画を策定する策定部と、を備える。そして、選定部は、材料が同一であって且つ形状が所定の類似条件を満たす複数の三次元造形物を組合せとして選定するとともに、標準造形時間にマッチする複数の三次元造形物の組合せを選定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の三次元造形物を同時に付加製造することを複数回実行するときの製造計画を管理する製造管理装置であって、
所定の付加製造装置で同時に造形可能な前記複数の三次元造形物の組合せを選定する選定部と、
前記付加製造装置の一日における標準的な稼働スケジュールであって、該付加製造装置のオペレータの作業スケジュールを含んで定められる標準稼働スケジュールを取得する取得部と、
前記選定部によって選定された前記複数の三次元造形物の組合せについて、前記付加製造装置を用いて造形するときの造形時間に基づいて前記製造計画を策定する策定部と、
を備え、
前記選定部は、
材料が同一であって且つ形状が所定の類似条件を満たす前記複数の三次元造形物を、前記組合せとして選定するとともに、前記標準稼働スケジュールに含まれる標準的な造形時間である標準造形時間にマッチする前記複数の三次元造形物の組合せを選定する、
製造管理装置。
【請求項2】
前記類似条件は、前記複数の三次元造形物における各三次元造形物の形状が同一であること、又は、前記複数の三次元造形物における各三次元造形物の形状が所定の係合部分を有することである、
請求項1に記載の製造管理装置。
【請求項3】
前記標準造形時間は、前記付加製造装置の稼働フローにおける条件設定ステップ、造形ステップ、及び取り出しステップを含んだ時間であって、前記オペレータの所定労働時間以内の時間である、
請求項1又は請求項2に記載の製造管理装置。
【請求項4】
複数の三次元造形物を同時に付加製造することを複数回実行するときの製造計画を管理する製造管理方法であって、
コンピュータが、
所定の付加製造装置で同時に造形可能な前記複数の三次元造形物の組合せを選定する選定ステップと、
前記付加製造装置の一日における標準的な稼働スケジュールであって、該付加製造装置のオペレータの作業スケジュールを含んで定められる標準稼働スケジュールを取得する取得ステップと、
前記選定ステップによって選定された前記複数の三次元造形物の組合せについて、前記付加製造装置を用いて造形するときの造形時間に基づいて前記製造計画を策定する策定ステップと、
を実行し、
前記選定ステップでは、材料が同一であって且つ形状が所定の類似条件を満たす前記複数の三次元造形物を、前記組合せとして選定するとともに、前記標準稼働スケジュールに含まれる標準的な造形時間である標準造形時間にマッチする前記複数の三次元造形物の組合せを選定する、
製造管理方法。
【請求項5】
複数の三次元造形物を同時に付加製造することを複数回実行するときの製造計画を管理する製造管理プログラムであって、
コンピュータに、
所定の付加製造装置で同時に造形可能な前記複数の三次元造形物の組合せを選定する選定ステップと、
前記付加製造装置の一日における標準的な稼働スケジュールであって、該付加製造装置のオペレータの作業スケジュールを含んで定められる標準稼働スケジュールを取得する取得ステップと、
前記選定ステップによって選定された前記複数の三次元造形物の組合せについて、前記付加製造装置を用いて造形するときの造形時間に基づいて前記製造計画を策定する策定ステップと、
を実行させ、
前記選定ステップでは、材料が同一であって且つ形状が所定の類似条件を満たす前記複数の三次元造形物を、前記組合せとして選定させるとともに、前記標準稼働スケジュールに含まれる標準的な造形時間である標準造形時間にマッチする前記複数の三次元造形物の組合せを選定させる、
製造管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の三次元造形物の製造計画を管理する製造管理装置、製造管理方法及び製造管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元形状の金属造形物を得るために、鋳造や鍛造、切削加工などの製造方法が採られることが多かった。例えば、鋳造や鍛造を用いた三次元造形物の製造では、鋳型や金型によって、その三次元形状が定義され得る。また、切削加工を用いた三次元造形物の製造では、例えば、NC(Numerically Control)工作機械に入力される、CAD/CAMシステムからの加工データによって、その三次元形状が定義され得る。
【0003】
一方、近年、積層造形法(Additive Manufacturing)を用いた工業製品の製造が注目されている。そして、この積層造形法では、ビームやレーザを用いた三次元造形物の製造装置(三次元モデルの形状データをスライスして複数のスライスデータを生成し、各スライスデータを基にビームやレーザで造形材料を順次積層する。)の特徴を生かして、複数のジョブの組合せ等によって、造形スケジュール管理の適正化を図ることが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、納期短縮を含むスケジュール管理の適正化を図る造形物受注管理制御装置が開示されている。この技術では、複数の造形物を組み合わせて同時に造形する複合造形に関する履歴情報を用いて造形計画が策定されることで、複合造形による造形効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
積層造形法(Additive Manufacturing)による三次元造形物の製造装置では、複数の造形物を同時に造形(ギャンギング処理)することで、個別に造形するときよりも造形時間を短縮できることが知られている。しかしながら、複数の造形物を単一の工程で同時に造形する場合、複数の組み合わせから適当な組み合わせを選択することが困難になり得る。
【0007】
ここで、例えば、特許文献1に記載の技術によれば、複合造形する造形装置の空き情報と複合造形に関する履歴情報とを用いることで、最短造形時間の造形計画が策定され得るため、納期短縮と製造コストの低減が図られるようにも思われる。しかしながら、造形装置の空き情報を考慮した造形計画の策定のみでは、造形装置の稼働率の向上が限定的になり易い。つまり、複数の三次元造形物を同時に付加製造するときの製造コストを低減する技術については、未だ改良の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、複数の三次元造形物を同時に付加製造することを複数回実行するときに、製造コストを可及的に低減することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の製造管理装置は、複数の三次元造形物を同時に付加製造することを複数回実行するときの製造計画を管理する製造管理装置である。この製造管理装置は、所定の付加製造装置で同時に造形可能な前記複数の三次元造形物の組合せを選定する選定部と、前記付加製造装置の一日における標準的な稼働スケジュールであって、該付加製造装置のオペレータの作業スケジュールを含んで定められる標準稼働スケジュールを取得する取得部と、前記選定部によって選定された前記複数の三次元造形物の組合せについて、前記付加製造装置を用いて造形するときの造形時間に基づいて前記製造計画を策定する策定部と、を備える。そして、前記選定部は、材料が同一であって且つ形状が所定の類似条件を満たす前記複数の三次元造形物を、前記組合せとして選定するとともに、前記標準稼働スケジュールに含まれる標準的な造形時間である標準造形時間にマッチする前記複数の三次元造形物の組合せを選定する。
【0010】
上記の製造管理装置では、付加製造装置のオペレータの作業スケジュールを含んで定められる標準稼働スケジュールにおいて、標準造形時間が定義される。ここで、標準造形時間は、付加製造装置の設定情報やオペレータの作業スケジュールに基づいて定めることができる。つまり、上記の製造管理装置では、付加製造装置のオペレータの稼働状況を含めた標準造形時間にマッチする複数の三次元造形物の組合せが、該付加製造装置で同時に造形可能な複数の三次元造形物の組合せとして選定される。そのため、付加製造装置のオペレータの稼働を含めて該付加製造装置を効率的に稼働させながら複数種類の三次元造形物を同時に付加製造することでき、以て、製造コストが可及的に低減される。
【0011】
ここで、上記の製造管理装置において、前記類似条件は、前記複数の三次元造形物における各三次元造形物の形状が同一であること、又は、前記複数の三次元造形物における各三次元造形物の形状が所定の係合部分を有することであってもよい。
【0012】
また、本開示の製造管理装置において、前記標準造形時間は、前記付加製造装置の稼働フローにおける条件設定ステップ、造形ステップ、及び取り出しステップを含んだ時間であって、前記オペレータの所定労働時間以内の時間であってもよい。
【0013】
また、本開示は、コンピュータによる製造管理方法の側面から捉えることができる。すなわち、本開示の製造管理方法は、複数の三次元造形物を同時に付加製造することを複数回実行するときの製造計画を管理する製造管理方法であって、コンピュータが、所定の付加製造装置で同時に造形可能な前記複数の三次元造形物の組合せを選定する選定ステップと、前記付加製造装置の一日における標準的な稼働スケジュールであって、該付加製造装置のオペレータの作業スケジュールを含んで定められる標準稼働スケジュールを取得する取得ステップと、前記選定ステップによって選定された前記複数の三次元造形物の組合せについて、前記付加製造装置を用いて造形するときの造形時間に基づいて前記製造計画を策定する策定ステップと、を実行する。そして、前記選定ステップでは、材料が同一であって且つ形状が所定の類似条件を満たす前記複数の三次元造形物を、前記組合せとして選定するとともに、前記標準稼働スケジュールに含まれる標準的な造形時間である標準造形時間にマッチする前記複数の三次元造形物の組合せを選定する。
【0014】
また、本開示は、製造管理プログラムの側面から捉えることができる。すなわち、本開示の製造管理プログラムは、複数の三次元造形物を同時に付加製造することを複数回実行するときの製造計画を管理する製造管理プログラムであって、コンピュータに、所定の付加製造装置で同時に造形可能な前記複数の三次元造形物の組合せを選定する選定ステップと、前記付加製造装置の一日における標準的な稼働スケジュールであって、該付加製造装置のオペレータの作業スケジュールを含んで定められる標準稼働スケジュールを取得する取得ステップと、前記選定ステップによって選定された前記複数の三次元造形物の組合せについて、前記付加製造装置を用いて造形するときの造形時間に基づいて前記製造計画を策定する策定ステップと、を実行させる。そして、前記選定ステップでは、材料が同一であって且つ形状が所定の類似条件を満たす前記複数の三次元造形物を、前記組合せとして選定させるとともに、前記標準稼働スケジュールに含まれる標準的な造形時間である標準造形時間にマッチする前記複数の三次元造形物の組合せを選定させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、複数の三次元造形物を同時に付加製造することを複数回実行するときに、製造コストを可及的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態における製造管理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態における、製造管理システムに含まれるサーバの構成要素をより詳細に示すとともに、サーバと通信を行うユーザ端末の構成要素を示した図である。
【
図3】第1実施形態における標準稼働スケジュールを説明するための図である。
【
図4】第1実施形態における製造管理システムの動作の流れを例示する図である。
【
図5】同時に付加製造される複数の三次元造形物の組合せを説明するための図である。
【
図6】第1実施形態において策定される製造計画を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0018】
<第1実施形態>
第1実施形態における製造管理システムの概要について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態における製造管理システムの概略構成を示す図である。本実施形態に係る製造管理システム100は、ネットワーク200と、サーバ300と、ユーザ端末400と、を含んで構成される。なお、本開示の製造管理システムは、複数の三次元造形物を同時に付加製造することを複数回実行するときの製造計画を管理するシステムであって、このような製造計画の策定がサーバ300によって実行される。また、ユーザ端末400を用いるユーザは、製造管理システム100の利用ユーザであって、例えば、付加製造装置を稼働させる事業者である。
【0019】
ネットワーク200は、例えば、IPネットワークである。ネットワーク200は、IPネットワークであれば、無線であっても有線であっても無線と有線の組み合わせであってもよく、例えば、無線による通信であれば、ユーザ端末400は、無線LANアクセスポイント(不図示)にアクセスし、LANやWANを介してサーバ300と通信してもよい。また、ネットワーク200は、これらの例に限られず、例えば、公衆交換電話網や、光回線、ADSL回線、衛星通信網などであってもよい。
【0020】
サーバ300は、ネットワーク200を介して、ユーザ端末400と接続される。なお、
図1において、説明を簡単にするために、サーバ300は1台、ユーザ端末400は4台示してあるが、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0021】
サーバ300は、データの取得、生成、更新等の演算処理及び加工処理のための処理能力のあるコンピュータ機器であればどの様な電子機器でもよく、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ、メインフレーム、その他電子機器であってもよい。すなわち、サーバ300は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、あるいは、CDやDVDのようなディスク記録媒体であってもよい。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納されている。
【0022】
また、サーバ300は、本実施形態に係る製造管理システム100専用のソフトウェアやハードウェア、OS等を設けずに、クラウドサーバによるSaaS(Software as a Service)、Paas(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)を適宜用いてもよい。
【0023】
ユーザ端末400は、製造管理システム100を利用するユーザ(例えば、付加製造装置を稼働させる事業者)が保有する携帯端末等の電子機器であればよく、例えば、携帯端末、タブレット端末、スマートフォン、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ等、その他端末機器であってもよい。
【0024】
次に、
図2に基づいて、主にサーバ300の構成要素の詳細な説明を行う。
図2は、第1実施形態における、製造管理システム100に含まれるサーバ300の構成要素をより詳細に示すとともに、サーバ300と通信を行うユーザ端末400の構成要素を示した図である。
【0025】
サーバ300は、機能部として通信部301、記憶部302、制御部303を有しており、補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各機能部等が制御されることによって、各機能部における所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0026】
ここで、通信部301は、サーバ300をネットワーク200に接続するための通信インタフェースである。通信部301は、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。サーバ300は、通信部301を介して、ユーザ端末400やその他の外部装置と通信可能に接続される。
【0027】
記憶部302は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部303によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部303において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。また、記憶部302は、ユーザ端末400等から送信されたデータを記憶し、記憶部302には、後述する標準稼働スケジュール等が記憶される。なお、サーバ300は、通信部301を介してユーザ端末400等から送信されたデータを取得する。
【0028】
制御部303は、サーバ300が行う制御を司る機能部である。制御部303は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。制御部303は、更に、取得部3031と、選定部3032と、策定部3033と、の3つの機能部を有して構成される。各機能部は、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0029】
取得部3031は、付加製造装置の標準稼働スケジュールを取得する。ここで、付加製造装置とは、積層造形法(Additive Manufacturing)を用いた三次元造形物の製造装置であって、三次元モデルの形状データをスライスして複数のスライスデータを生成し、各スライスデータを基にビームやレーザで造形材料を順次積層する。そして、上記の標準稼働スケジュールは、このような付加製造装置の一日における標準的な稼働スケジュールである。
【0030】
なお、積層造形法による造形方式は、金属粉等の材料を供給しつつビームを集中させることによって熱を発生させ、材料を選択的に溶融、結合させる指向性エネルギー堆積方式や、金属粉等の材料を敷いた領域をレーザから照射される熱エネルギーによって選択的に溶融結合させる粉末床溶融結合方式に限定されない。例えば、樹脂等の材料の液滴を噴射し、選択的に堆積し固化させる材料噴射方式(所謂インクジェット法)であってもよい。
【0031】
そして、このような標準稼働スケジュールは、上記の付加製造装置を稼働させる事業者ユーザのユーザ端末400から送信され得る。取得部3031は、事業者ユーザのユーザ端末400から送信された情報を取得することで標準稼働スケジュールを取得し、これをサーバ300の記憶部302に記憶させる。
【0032】
ここで、本実施形態におけるユーザ端末400は、機能部として通信部401、入出力部402、記憶部403を有している。通信部401は、ユーザ端末400をネットワーク200に接続するための通信インタフェースであり、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。入出力部402は、通信部401を介して外部から送信されてきた情報等を表示させたり、通信部401を介して外部に情報を送信する際に当該情報を入力したりするための機能部である。記憶部403は、サーバ300の記憶部302と同様に主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。
【0033】
入出力部402は、更に、表示部4021、操作入力部4022、画像・音声入出力部4023を有している。表示部4021は、各種情報を表示する機能を有し、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等により実現される。操作入力部4022は、ユーザからの操作入力を受け付ける機能を有し、具体的には、タッチパネル等のソフトキーあるいはハードキーにより実現される。画像・音声入出力部4023は、静止画や動画等の画像の入力を受け付ける機能を有し、具体的には、Charged-Coupled Devices(CCD)、Metal-oxide-semiconductor(MOS)あるいはComplementary Metal-Oxide-Semiconductor(CMOS)等のイメージセンサを用いたカメラにより実現される。また、画像・音声入出力部4023は、音声の入出力を受け付ける機能を有し、具体的には、マイクやスピーカーにより実現される。
【0034】
事業者ユーザは、このように構成されたユーザ端末400を用いて、上記の標準稼働スケジュールをサーバ300に送信することができる。ここで、サーバ300は、標準稼働スケジュールを入力するためのインタフェースを事業者ユーザのユーザ端末400に提供してもよい。そうすると、事業者ユーザは、ユーザ端末400を介して上記のインタフェースに情報を入力することで、標準稼働スケジュールをサーバ300に送信することができる。
【0035】
ここで、本実施形態における標準稼働スケジュールについて、
図3に基づいて説明する。
図3は、本実施形態における標準稼働スケジュールを説明するための図である。標準稼働スケジュールは、付加製造装置のオペレータの作業スケジュールを含んで定められ、本実施形態では、
図3(a)に例示するオペレータの作業スケジュールを含んで標準稼働スケジュールが定められる。なお、本実施形態では、オペレータが2交代制で付加製造装置を稼働させ、例えば、
図3(a)に示す第1勤務パターン(6:00-15:00)と第2勤務パターン(15:00-24:00)の2つのシフトパターンでオペレータが交代勤務することで、付加製造装置が稼働される。
【0036】
また、
図3(b)は、付加製造装置の稼働フローを例示する図であって、条件設定、造形、取り出し、メンテナンスのステップ順で三次元造形物が製造される。ここで、上記の造形ステップでは、造形物の形状や大きさ、材質、付加機能等によって造形にかかる時間が異なる。そして、形状や大きさ、材質、付加機能等が異なる各造形物に対する付加製造装置の設定情報(これには、上記の各ステップの作業時間が含まれる。)は、該付加製造装置を稼働させる事業者ユーザが有している。取得部3031は、事業者ユーザのユーザ端末400から送信されたこのような設定情報も取得し、これをサーバ300の記憶部302に記憶させる。
【0037】
また、
図3(c)は、本実施形態における標準稼働スケジュールを例示する図であって、
図3(a)に示したオペレータの作業スケジュールに応じた2つの標準造形時間を含んでいる。ここで、標準造形時間は、上記の付加製造装置を用いた標準的な造形時間であって、該付加製造装置の稼働フローにおける条件設定ステップ、造形ステップ、及び取り出しステップを含み、且つオペレータの所定労働時間以内の時間である。詳しくは、本実施形態における標準稼働スケジュールは、
図3(c)に示すように、オペレータの第1勤務パターン(第1勤務パターンにおけるオペレータの所定労働時間)に含まれる6:00-14:00の間の標準造形時間と、オペレータの第2勤務パターン(第2勤務パターンにおけるオペレータの所定労働時間)に含まれる16:00-24:00の間の標準造形時間と、を含んでいる。なお、付加製造装置の稼働フローにおけるメンテナンスのステップは、これら時間帯の間の時間(例えば、14:00-16:00、または24:00-6:00)に実行することができ、この場合、付加製造装置のオペレータ以外の作業者によって、メンテナンスのステップが実行されてもよい。
【0038】
そして、上述したような積層造形法による三次元造形物の製造装置では、複数の造形物を同時に造形(ギャンギング処理)することで、個別に造形するときよりも造形時間を短縮できることが知られている。
【0039】
そこで、選定部3032は、上記の付加製造装置で同時に造形可能な複数の三次元造形物の組合せを選定する。ただし、このとき、複数の造形物を単一の工程で同時に造形する場合、複数の組み合わせから適当な組み合わせを選択することが困難になり得る。そのため、選定部3032は、材料が同一であって且つ形状が所定の類似条件を満たす複数の三次元造形物を、上記の組合せとして選定するとともに、上述した標準造形時間にマッチする複数の三次元造形物の組合せを選定する。
【0040】
そして、策定部3033は、選定部3032によって選定された複数の三次元造形物の組合せについて、付加製造装置を用いて造形するときの造形時間に基づいて製造計画を策定する。なお、選定部3032や策定部3033が実行する処理の詳細は、後述する
図4に基づいて説明する。
【0041】
ここで、本実施形態における製造管理システム100の動作の流れについて説明する。
図4は、本実施形態における製造管理システム100の動作の流れを例示する図である。
図4では、本実施形態における製造管理システム100における各構成要素間の動作の流れ、および各構成要素が実行する処理を説明する。
【0042】
本実施形態では、先ず、事業者ユーザのユーザ端末400に、標準稼働スケジュールや付加製造装置の設定情報が入力される(S101)。ここで、標準稼働スケジュールおよび設定情報は、上述したとおりであって、事業者ユーザは、所定のインタフェースを用いて、これら情報をユーザ端末400に入力することができる。そして、標準稼働スケジュールおよび設定情報は、事業者ユーザのユーザ端末400からサーバ300に送信される。
【0043】
サーバ300は、事業者ユーザのユーザ端末400から送信された標準稼働スケジュールおよび設定情報を取得するとともに記憶部302に記憶させる(S102)。
【0044】
次に、事業者ユーザのユーザ端末400に、受注情報が入力される(S103)。ここで、受注情報は、発注者からの複数の三次元造形物を付加製造する造形受注に関する情報であって、付加製造する造形物の仕様(これには、図面が含まれる。)、個数、納期等を含んだ情報である。そして、受注情報は、事業者のユーザ端末400からサーバ300に送信される。
【0045】
サーバ300は、事業者ユーザのユーザ端末400から送信された受注情報を取得するとともに記憶部302に記憶させる(S104)。
【0046】
そして、サーバ300は、付加製造装置で同時に造形可能な複数の三次元造形物の組合せを選定する(S105)。上述したように、サーバ300は、材料が同一であって且つ形状が所定の類似条件を満たす複数の三次元造形物を、上記の組合せとして選定するとともに、標準造形時間にマッチする複数の三次元造形物の組合せを選定する。
【0047】
ここで、
図5は、同時に付加製造される複数の三次元造形物の組合せを説明するための図である。
図5には、形状が異なる3種類の三次元造形物(造形物A、造形物B、造形物C)が例示され、いずれの造形物も材質がチタンである。つまり、これら三次元造形物は、材料が同一である。また、
図5には、これら造形物の造形時間も併せて例示され、例えば、造形物Aの造形時間は、1製造ロットあたり6時間である。
【0048】
そして、
図5に例示する3種類の三次元造形物は、それらの形状が所定の類似条件を満たしている。ここで、上記の類似条件は、複数の三次元造形物における各三次元造形物の形状が所定の係合部分を有することであって、
図5に示すように、造形物Bが凸部を有し、造形物Aが該凸部と番になる凹部を有している。つまり、造形物Aの凹部が、造形物Bの凸部との係合部分であって、造形物Bの凸部が、造形物Aの凹部との係合部分である。また、造形物Cは、係合部分として、凸部および凹部を有している。
【0049】
このように、複数の三次元造形物における各三次元造形物の形状が係合部分を有する場合、複数の三次元造形物における各三次元造形物の形状が同一である場合と同様に、複数の三次元造形物を同時に付加製造することができる。そうすると、三次元造形物の付加製造において、納期短縮と製造コストの低減が図られるようにも思われる。しかしながら、複数の三次元造形物を同時に付加製造するのみでは、付加製造装置の稼働率の向上が限定的になり、複数の三次元造形物を同時に付加製造するときの製造コストを十分に低減できない虞がある。
【0050】
そこで、サーバ300は、上述したように、組合せ選定において、更に、標準造形時間にマッチする複数の三次元造形物の組合せを選定する。詳しくは、サーバ300は、
図5に例示する3種類の三次元造形物のうち、造形物Aと造形物Cとの組合せを選定する。ここで、
図5によると、造形物Aの造形時間が1製造ロットあたり6時間、造形物Bの造形時間が1製造ロットあたり10時間、造形物Cの造形時間が1製造ロットあたり8時間である。また、上記の
図3(c)によると、本実施形態における付加製造装置の標準造形時間が8時間である。したがって、仮に、上記の組合せ選定において、造形物Bを含んで組合せが選定されてしまうと、付加製造装置の標準造形時間内で三次元造形物を造形することができなくなってしまう。この場合、例えば、付加製造装置のオペレータの作業スケジュールの調整が必要となり、人的コスト等の製造コストが増加してしまう虞がある。これに対して、造形物Aと造形物Cとの組合せを選定した場合、付加製造装置の標準造形時間内で複数の種類(この場合は、2種類)の三次元造形物を造形することができる。そのため、付加製造装置のオペレータの稼働を含めて該付加製造装置を効率的に稼働させながら複数種類の三次元造形物を同時に付加製造することでき、以て、製造コストが可及的に低減される。
【0051】
そして、
図4に戻って、サーバ300は、S105の処理によって選定された複数の三次元造形物の組合せについて、付加製造装置を用いて造形するときの造形時間に基づいて製造計画を策定する(S106)。
【0052】
ここで、
図6は、本実施形態において策定される製造計画を説明するための図である。
図6に例示する製造計画では、オペレータの第1勤務パターンに含まれる6:00-14:00の間の標準造形時間と、オペレータの第2勤務パターンに含まれる16:00-24:00の間の標準造形時間と、を含んだ標準稼働スケジュールにおいて、造形物Aと造形物Cとの組合せについて、1日に2回付加製造される計画となっている。そして、このようにして複数の三次元造形物を同時に付加製造することを複数回実行することで、製造コストを可及的に低減することができる。
【0053】
そして、
図4に戻って、S106の処理によって策定された製造計画が、サーバ300から事業者ユーザのユーザ端末400に送信され、事業者ユーザのユーザ端末400がこの情報を取得する(S107)。これにより、事業者ユーザは、サーバ300によって策定された製造計画に従って、三次元造形物を付加製造することができる。
【0054】
以上に述べた製造管理システム100によれば、複数の三次元造形物を同時に付加製造することを複数回実行するときに、製造コストを可及的に低減することができる。
【0055】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0056】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。例えば、取得部3031をサーバ300とは別の演算処理装置に形成してもよい。このとき当該別の演算処理装置はサーバ300と好適に協働可能に構成される。また、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0057】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0058】
100・・・製造管理システム
200・・・ネットワーク
300・・・サーバ
301・・・通信部
302・・・記憶部
303・・・制御部
400・・・ユーザ端末