IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEスチール株式会社の特許一覧

特開2023-180310工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法
<>
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図1
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図2
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図3
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図4
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図5
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図6
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図7
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図8
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図9
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図10
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図11
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図12
  • 特開-工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180310
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20231214BHJP
   G07C 9/29 20200101ALI20231214BHJP
   G07C 9/27 20200101ALI20231214BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G06Q50/04
G07C9/29
G07C9/27
B23Q11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093487
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 元
(72)【発明者】
【氏名】備 健太朗
【テーマコード(参考)】
3C011
3E138
5L049
【Fターム(参考)】
3C011AA15
3E138AA01
3E138JA10
3E138JB03
3E138JC13
3E138JC21
3E138JD07
3E138JD09
5L049CC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】移動機が走行可能な範囲を区画する管理区域内に立ち入る作業者の安全を確実に確保可能な工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法を提供する。
【解決手段】安全管理システムは、作業者が所持し、移動機のロック操作及びロック解除操作についての申請情報を生成可能なスマートデバイスと、スマートデバイスから受信した申請情報に基づいて、移動機のロック操作又はロック解除操作の可否を判定する判定部を含む立入管理サーバーと、を備える。申請情報は、作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、作業者を識別する作業者識別IDと、を作業者位置識別情報として含む。立入管理サーバーは、判定部の判定結果に応じて、申請情報に対応した動作の実行を指示する制御信号を移動機の制御装置に送信すると共に、申請情報を送信したスマートデバイスに対して判定結果を送信する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転操作が可能な移動機と、前記移動機が走行する範囲を区画する管理区域と、前記管理区域の外側に設けられた安全区域と、前記管理区域と前記安全区域との境界に設けられたライン入退場口と、を含む工場作業場における作業者の安全管理システムであって、
前記ライン入退場口を出発地点として前記管理区域を経由し到達地点である前記移動機の運転室まで移動する作業者が所持し、前記移動機のロック操作及びロック解除操作についての申請情報を生成可能なスマートデバイスと、
前記スマートデバイスから受信した申請情報に基づいて前記移動機のロック操作又はロック解除操作の可否を判定する判定部を含む、立入管理サーバーと、
を備え、
前記申請情報は、前記作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、前記作業者を識別する作業者識別IDと、を作業者位置識別情報として含み、
前記立入管理サーバーは、前記判定部の判定結果に応じて、前記申請情報に対応した動作の実行を指示する制御信号を前記移動機の制御装置に送信すると共に、前記申請情報を送信したスマートデバイスに対して前記判定結果を送信する、
工場作業場における作業者の安全管理システム。
【請求項2】
運転操作が可能な移動機と、前記移動機が走行する範囲を区画する管理区域と、前記管理区域の外側に設けられた安全区域と、前記管理区域と前記安全区域との境界に設けられたライン入退場口と、を含む工場作業場における作業者の安全管理システムであって、
前記移動機の運転室を出発地点として前記管理区域を経由し到達地点である前記ライン入退場口まで移動する作業者が所持し、前記移動機のロック操作及びロック解除操作についての申請情報を生成可能なスマートデバイスと、
前記スマートデバイスから受信した申請情報に基づいて前記移動機のロック操作又はロック解除操作の可否を判定する判定部を含む、立入管理サーバーと、
を備え、
前記申請情報は、前記作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、前記作業者を識別する作業者識別IDと、を作業者位置識別情報として含み、
前記立入管理サーバーは、前記判定部の判定結果に応じて、前記申請情報に対応した動作の実行を指示する制御信号を前記移動機の制御装置に送信すると共に、前記申請情報を送信したスマートデバイスに対して前記判定結果を送信する、
工場作業場における作業者の安全管理システム。
【請求項3】
前記申請情報が前記移動機のロック操作を申請するものである場合、前記判定部は、前記作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致することを条件に、前記移動機のロック操作を許可する判定結果を出力し、
前記申請情報が前記移動機のロック解除操作を申請するものである場合には、前記判定部は、前記作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致することと現時点において他のスマートデバイスから前記移動機のロック操作を申請する申請情報を受信していないことを条件に、前記移動機のロック解除操作を許可する判定結果を出力する、
請求項1又は2に記載の工場作業場における作業者の安全管理システム。
【請求項4】
前記工場作業場には表示装置が設置され、
前記立入管理サーバーは、現時点において前記管理区域へ立ち入っている作業者及び前記移動機の運転室に立ち入っている作業者の作業者識別IDを特定し、
前記表示装置は、前記立入管理サーバーが特定した作業者識別IDに対応する作業者名を表示する、
請求項1又は2に記載の工場作業場における作業者の安全管理システム。
【請求項5】
前記工場作業場には表示装置が設置され、
前記立入管理サーバーは、現時点において前記管理区域へ立ち入っている作業者及び前記移動機の運転室に立ち入っている作業者の作業者識別IDを特定し、
前記表示装置は、前記立入管理サーバーが特定した作業者識別IDに対応する作業者名を表示する、
請求項3に記載の工場作業場における作業者の安全管理システム。
【請求項6】
前記申請情報に含まれる前記作業者の出発地点の経路情報は、前記ライン入退場口の安全区域に面して表示されるQRコード又は前記移動機の運転室の運転室側に面して表示されるQRコードにより特定され、
前記スマートデバイスは、前記QRコードを前記スマートデバイスが備える撮像装置で読み取ることにより前記申請情報を生成する、
請求項1又は2に記載の工場作業場における作業者の安全管理システム。
【請求項7】
前記申請情報に含まれる前記作業者の出発地点の経路情報は、前記ライン入退場口の安全区域に面して表示されるQRコード又は前記移動機の運転室の運転室側に面して表示されるQRコードにより特定され、
前記スマートデバイスは、前記QRコードを前記スマートデバイスが備える撮像装置で読み取ることにより前記申請情報を生成する、
請求項3に記載の工場作業場における作業者の安全管理システム。
【請求項8】
前記申請情報に含まれる前記作業者の出発地点の経路情報は、前記ライン入退場口の安全区域に面して表示されるQRコード又は前記移動機の運転室の運転室側に面して表示されるQRコードにより特定され、
前記スマートデバイスは、前記QRコードを前記スマートデバイスが備える撮像装置で読み取ることにより前記申請情報を生成する、
請求項5に記載の工場作業場における作業者の安全管理システム。
【請求項9】
運転操作が可能な移動機と、前記移動機が走行する範囲を区画する管理区域と、前記管理区域の外側に設けられた安全区域と、前記管理区域と前記安全区域との境界に設けられたライン入退場口と、を含む工場作業場における作業者の安全管理方法であって、
前記ライン入退場口を出発地点として前記管理区域を経由し到達地点である前記移動機の運転室まで移動する作業者が所持するスマートデバイスが、前記移動機のロック操作及びロック解除操作についての申請情報を生成するステップと、
立入管理サーバーが、前記スマートデバイスから受信した申請情報に基づいて前記移動機のロック操作又はロック解除操作の可否を判定するステップと、
を含み、
前記申請情報は、前記作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、前記作業者を識別する作業者識別IDと、を作業者位置識別情報として含み、
前記立入管理サーバーは、判定結果に応じて、前記申請情報に対応した動作の実行を指示する制御信号を前記移動機の制御装置に送信すると共に、前記申請情報を送信したスマートデバイスに対して前記判定結果を送信する、
工場作業場における作業者の安全管理方法。
【請求項10】
運転操作が可能な移動機と、前記移動機が走行する範囲を区画する管理区域と、前記管理区域の外側に設けられた安全区域と、前記管理区域と前記安全区域との境界に設けられたライン入退場口と、を含む工場作業場における作業者の安全管理方法であって、
前記移動機の運転室を出発地点として前記管理区域を経由し到達地点である前記ライン入退場口まで移動する作業者が所持するスマートデバイスが、前記移動機のロック操作及びロック解除操作についての申請情報を生成するステップと、
立入管理サーバーが、前記スマートデバイスから受信した申請情報に基づいて前記移動機のロック操作又はロック解除操作の可否を判定するステップと、
を含み、
前記申請情報は、前記作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、前記作業者を識別する作業者識別IDと、を作業者位置識別情報として含み、
前記立入管理サーバーは、判定結果に応じて、前記申請情報に対応した動作の実行を指示する制御信号を前記移動機の制御装置に送信すると共に、前記申請情報を送信したスマートデバイスに対して前記判定結果を送信する、
工場作業場における作業者の安全管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所等の工場では、移動可能な設備や車両等(以下、移動機と称する)が走行する。このため、作業者の安全確保の観点から、移動機の走行エリアと作業者の作業エリアとを分離することが重要である。そして、作業者が移動機の走行エリアに立ち入る場合には、作業者は、移動機の動力源を遮断するロック操作を行い、走行エリアにおける移動機の走行を確実に停止してから走行エリアに立ち入る。また、移動機を再び走行させる際には、作業者が走行エリアから退場したことを確認してから移動機のロック操作を解除することが必要である。一方、走行エリア内にある移動機の保守点検作業等を行う場合には、作業者が、移動機の走行エリアに立ち入ってから移動機の機上(運転室)に乗り込んで保守点検作業等を行うことがある。この場合、作業者は、移動機の走行エリアに立ち入る際に移動機のロック操作を行い、走行エリアに立ち入ってから移動機の機上に乗り込み、その後移動機のロック操作を解除して移動機を走行させることがある。移動機の機上に設けられた運転席は、移動機の走行エリア内にあるものの、作業者の安全が確保された区域であるため、移動機のロック操作を解除しても作業者に危険が生じることはない。但し、作業者が走行エリアに立ち入ってから移動機の機上に乗り込むまでは、走行エリアにある全ての移動機がロックされた状態を維持しておく必要がある。しかしながら、作業者が作業エリアにおいて移動機のロック操作を行い、走行エリアを通過後に移動機の機上でロック操作を解除する作業については、移動機のロック操作を行う場所とロック操作を解除する場所が異なるために以下のような問題が生じる。
【0003】
図12(a),(b)は、従来の工場作業場における作業者の安全管理方法を適用した一例を説明するための図である。図12(a),(b)に示すように、移動機Mの走行エリアを含む管理区域が予め設定され、その外側に作業者の安全が確保される安全区域が区画されている。図12(a)は、作業者が管理区域への入退場口であるライン入退場口Gから管理区域内に立ち入る場面であり、図12(b)は、管理区域内に立ち入った作業者が移動機Mの運転室に乗り込んで移動機Mの運転を開始しようとする場面である。ライン入退場口Gから管理区域内に立ち入る場合、作業者は、ライン入退場口Gに設置されている機側操作盤101を操作することにより移動機制御装置100にロック制御信号を入力する。移動機制御装置100は、ロック制御信号が入力されるのに応じて移動機Mのロックスイッチ(動力遮断装置)をオン(ロック操作)する。また、作業者は、第三者がロックスイッチをオフ(ロック解除操作)しないように、機側操作盤101に操作禁止札をかけてから管理区域に立ち入る。そして、作業者は、管理区域において移動機Mの保守点検作業等のために移動機Mの運転室に設置されている移動機操作盤102を操作することにより移動機制御装置100にロック解除制御信号を入力する。移動機制御装置100は、ロック解除制御信号が入力されるのに応じて移動機Mのロックスイッチをオフする。しかしながら、図12(a),(b)に示す例では、作業者が移動機Mのロック操作を行う場所とロック解除操作を行う場所が異なるため、管理区域に立ち入る作業者が一人の場合には問題は生じないものの、複数の作業者が管理区域に立ち入る場合に問題が生じ得る。すなわち、作業者が移動機Mの移動機操作盤102において移動機Mのロック解除操作を行う際に、他の作業者が管理区域に立ち入っているか否かを認識できないため、移動機操作盤102からのロック解除操作によって他の作業者の安全を確保できないという問題が生じる。
【0004】
これに対して、図13は、従来の工場作業場における作業者の安全管理方法を適用した他の例を説明するための図である。図13に示す安全管理方法は、中央管制室を設置し、管理区域へ立ち入ろうとする作業者が、中央管制室のオペレータに対して、移動機M1,M2のロック操作及びロック解除操作を要求する方法である。作業者からロック操作を求められた中央管制室のオペレータは、中央操作盤103を操作することにより移動機Mのロック操作及びロック解除操作を行う。この場合、中央管制室のオペレータが複数の作業者の管理区域への立ち入り状態を正しく認識していれば問題は生じない。しかしながら、管理区域への入退場を行う作業者の数が多くなると、中央管制室のオペレータの判断ミスや、ライン入退場口G1,G2から退出する際の作業者からの連絡忘れ、移動機M1,M2の運転室にいる作業者からの連絡忘れ等、人為的なミスにより管理区域に立ち入る作業者の安全が確保されない可能性があり問題となる。このような観点から、作業者が移動機の走行エリアに立ち入る際の安全を確保するために、移動機のロック操作及びロック解除操作はできるだけ自動で行われることが望ましい。
【0005】
このような背景から、作業者の安全を確保するための各種入退場管理システムが提案されている。具体的には、特許文献1には、移動機が走行する危険区域と安全区域の境界にゲートが設けられ、ゲートに設けられて危険区域への入場者及び危険区域からの退場者のIDを識別するIDタグリーダと、危険区域への入場可否を指示する入場是非出力手段と、ゲートの開閉動作を行うゲート制御手段と、を有する危険区域の入退管理システムが提案されている。このシステムでは、ゲート開による作業者の危険区域への入場は、作業者のID認識、危険区域への入場許可信号の発生、及び車両停止を条件に行われる。また、ゲート開による危険区域からの作業者の退場は、作業者のID認識を条件にして行われる。さらに、このシステムは、危険区域に入場した作業者の数と危険区域から退場した作業者の数から、実際に危険区域に存在する作業者の数を計算し、危険区域に作業者が存在する場合には、車両の走行を停止させるものである。また、特許文献2には、管理対象エリアの予め設定された領域に磁場を発生する複数の磁場発生装置を設け、発生した磁場により起動してタグ情報を送信するRFIDタグと、タグ情報を受信するRFIDリーダと、を備え、第1磁場発生装置と第2磁場発生装置を用いて、管理対象エリアを区画した区画エリア間の作業者の入退場を管理するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-71217号公報
【特許文献2】特開2020-17165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の入退管理システムは、移動機が走行する危険区域と安全区域の境界にゲートを設置するものである。このため、製鉄所内の危険区域のように広い範囲が危険区域に設定されると、必要なゲートの数が多くなるために設備コストが増加する。また、IDタグリーダのように電磁的な手段により危険区域への入場者及び危険区域からの退場者を識別する方法は、製鉄所の工場作業場のように必ずしも周囲環境が良好でない場合に機器の不具合が発生しやすく、センサーの誤認識によって作業者の安全を確保できない場合がある。また、全てのゲートにおける電子機器のメンテナンスに多大な労力を要するという問題がある。また、特許文献1に記載の入退管理システムは、移動機が走行する危険区域と安全区域との境界にゲートを設置するものであり、危険区域内に配置される移動機の運転室で移動機を走行させることまでは想定していない。そのため、特許文献1に記載されるゲートを危険区域と移動機の運転室との境界に設け、ゲート開閉手段により作業者の通行をゲートの開閉操作によって制御する方法は、移動機の運転室のような比較的狭い空間に適用するのが難しいという問題がある。一方、特許文献2に記載の入退管理システムは、物理的なゲートを設けられない場合にも適用可能なシステムではあるものの、複数の移動機が走行する広い危険区域を備える場合には、多数の磁場発生装置とRFIDリーダとが必要になるために設備コストの上昇を招く。また、複数の移動機が走行し、磁場やRFIDリーダに対するノイズが発生しやすい場所では、これらの機器の故障や誤検出が生じやすく、そのような情報に基づいて移動機のロック操作やロック解除操作を行うのは、作業者の安全を確保する上でリスクが大きい。
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、移動機が走行可能な範囲を区画する管理区域内に立ち入る作業者の安全を確実に確保可能な工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る工場作業場における作業者の安全管理システムは、運転操作が可能な移動機と、前記移動機が走行する範囲を区画する管理区域と、前記管理区域の外側に設けられた安全区域と、前記管理区域と前記安全区域との境界に設けられたライン入退場口と、を含む工場作業場における作業者の安全管理システムであって、前記ライン入退場口を出発地点として前記管理区域を経由し到達地点である前記移動機の運転室まで移動する作業者が所持し、前記移動機のロック操作及びロック解除操作についての申請情報を生成可能なスマートデバイスと、前記スマートデバイスから受信した申請情報に基づいて前記移動機のロック操作又はロック解除操作の可否を判定する判定部を含む、立入管理サーバーと、を備え、前記申請情報は、前記作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、前記作業者を識別する作業者識別IDと、を作業者位置識別情報として含み、前記立入管理サーバーは、前記判定部の判定結果に応じて、前記申請情報に対応した動作の実行を指示する制御信号を前記移動機の制御装置に送信すると共に、前記申請情報を送信したスマートデバイスに対して前記判定結果を送信する。
【0010】
本発明の第2の態様に係る工場作業場における作業者の安全管理システムは、運転操作が可能な移動機と、前記移動機が走行する範囲を区画する管理区域と、前記管理区域の外側に設けられた安全区域と、前記管理区域と前記安全区域との境界に設けられたライン入退場口と、を含む工場作業場における作業者の安全管理システムであって、前記移動機の運転室を出発地点として前記管理区域を経由し到達地点である前記ライン入退場口まで移動する作業者が所持し、前記移動機のロック操作及びロック解除操作についての申請情報を生成可能なスマートデバイスと、前記スマートデバイスから受信した申請情報に基づいて前記移動機のロック操作又はロック解除操作の可否を判定する判定部を含む、立入管理サーバーと、を備え、前記申請情報は、前記作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、前記作業者を識別する作業者識別IDと、を作業者位置識別情報として含み、前記立入管理サーバーは、前記判定部の判定結果に応じて、前記申請情報に対応した動作の実行を指示する制御信号を前記移動機の制御装置に送信すると共に、前記申請情報を送信したスマートデバイスに対して前記判定結果を送信する。
【0011】
前記申請情報が前記移動機のロック操作を申請するものである場合、前記判定部は、前記作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致することを条件に、前記移動機のロック操作を許可する判定結果を出力し、前記申請情報が前記移動機のロック解除操作を申請するものである場合には、前記判定部は、前記作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致することと現時点において他のスマートデバイスから前記移動機のロック操作を申請する申請情報を受信していないことを条件に、前記移動機のロック解除操作を許可する判定結果を出力するとよい。
【0012】
前記工場作業場には表示装置が設置され、前記立入管理サーバーは、現時点において前記管理区域へ立ち入っている作業者及び前記移動機の運転室に立ち入っている作業者の作業者識別IDを特定し、前記表示装置は、前記立入管理サーバーが特定した作業者識別IDに対応する作業者名を表示するとよい。
【0013】
前記申請情報に含まれる前記作業者の出発地点の経路情報は、前記ライン入退場口の安全区域に面して表示されるQRコード(登録商標)又は前記移動機の運転室の運転室側に面して表示されるQRコードにより特定され、前記スマートデバイスは、前記QRコードを前記スマートデバイスが備える撮像装置で読み取ることにより前記申請情報を生成するとよい。
【0014】
本発明の第1の態様に係る工場作業場における作業者の安全管理方法は、運転操作が可能な移動機と、前記移動機が走行する範囲を区画する管理区域と、前記管理区域の外側に設けられた安全区域と、前記管理区域と前記安全区域との境界に設けられたライン入退場口と、を含む工場作業場における作業者の安全管理方法であって、前記ライン入退場口を出発地点として前記管理区域を経由し到達地点である前記移動機の運転室まで移動する作業者が所持するスマートデバイスが、前記移動機のロック操作及びロック解除操作についての申請情報を生成するステップと、立入管理サーバーが、前記スマートデバイスから受信した申請情報に基づいて前記移動機のロック操作又はロック解除操作の可否を判定するステップと、を含み、前記申請情報は、前記作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、前記作業者を識別する作業者識別IDと、を作業者位置識別情報として含み、前記立入管理サーバーは、判定結果に応じて、前記申請情報に対応した動作の実行を指示する制御信号を前記移動機の制御装置に送信すると共に、前記申請情報を送信したスマートデバイスに対して前記判定結果を送信する。
【0015】
本発明の第2の態様に係る工場作業場における作業者の安全管理方法は、運転操作が可能な移動機と、前記移動機が走行する範囲を区画する管理区域と、前記管理区域の外側に設けられた安全区域と、前記管理区域と前記安全区域との境界に設けられたライン入退場口と、を含む工場作業場における作業者の安全管理方法であって、前記移動機の運転室を出発地点として前記管理区域を経由し到達地点である前記ライン入退場口まで移動する作業者が所持するスマートデバイスが、前記移動機のロック操作及びロック解除操作についての申請情報を生成するステップと、立入管理サーバーが、前記スマートデバイスから受信した申請情報に基づいて前記移動機のロック操作又はロック解除操作の可否を判定するステップと、を含み、前記申請情報は、前記作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、前記作業者を識別する作業者識別IDと、を作業者位置識別情報として含み、前記立入管理サーバーは、判定結果に応じて、前記申請情報に対応した動作の実行を指示する制御信号を前記移動機の制御装置に送信すると共に、前記申請情報を送信したスマートデバイスに対して前記判定結果を送信する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法によれば、移動機が走行可能な範囲を区画する管理区域内に立ち入る作業者の安全を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態である工場作業場の構成を示すブロック図である。
図2図2は、製鉄所のコークス炉設備の構成を示す模式図である。
図3図3は、本発明の一実施形態である立入管理サーバーの構成を示すブロック図である。
図4図4は、作業者がライン入退場口を通過して管理区域に立ち入ってから移動機の運転室に移動する際の安全管理システムの動作を説明するための図である。
図5図5は、作業者がライン入退場口を通過して管理区域に立ち入ってから移動機の運転室に移動した後に、移動機を走行させるために移動機のロック解除操作を行う際の安全管理システムの動作を説明するための図である。
図6図6は、作業者が移動機の運転室において作業を完了し、移動機の運転室を出発地点として管理区域を経由し到達地点であるライン入退場口まで移動する際の安全管理システムの動作を説明するための図である。
図7図7は、作業者が移動機の運転室において作業を完了し、到達地点であるライン入退場口まで移動した後に、移動機を走行させるために移動機のロック解除操作を行う際の安全管理システムの動作を説明するための図である。
図8図8は、本発明の一実施形態である工場作業場における作業者の安全管理システムのネットワーク構成を示す模式図である。
図9図9は、本発明の一実施形態である表示装置の画面構成例を示す図である。
図10図10は、本発明の一実施形態である専用アプリの処理フローの一例を示す図である。
図11図11は、ライン入退場口に表示される入退場口識別IDの一例を示す図である。
図12図12は、従来の工場作業場における作業者の安全管理方法を適用した一例を説明するための図である。
図13図13は、従来の工場作業場における作業者の安全管理方法を適用した他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である工場作業場における作業者の安全管理システム及び安全管理方法について説明する。
【0019】
〔工場作業場〕
まず、図1図2を参照して、本発明が対象とする工場作業場について説明する。本発明が対象とする工場作業場は、運転操作が可能な移動機が配置され、移動機が走行する範囲を含む所定のエリアを管理区域として区画する工場作業場である。管理区域の外側には安全区域が設けられ、管理区域と安全区域との境界にはライン入退場口が備えられている。安全区域は、管理区域を走行する移動機と工場作業場の作業者とが接触して事故が発生することがないように、移動機の走行範囲よりも広い範囲に設定されている。ライン入退場口は、安全区域と管理区域との間で作業者が通行可能な箇所を限定するためのものであり、手動又は自動のゲート等の手段によって作業者が誤って管理区域に立ち入ることを防止することが多い。そして、作業者が安全区域から管理区域に立ち入って移動機の運転室に立ち入るまでの間は、移動機の動力源を遮断するロック操作がなされていることが作業者の安全を確保する上で肝要である。作業者が移動機の運転室から管理区域に立ち入って安全区域に出るまでの間も同様である。
【0020】
図1に示す工場作業場の例では、管理区域内に2台の移動機M1,M2が配置されており、管理区域と安全区域との境界には1つのライン入退場口Gが備えられている。但し、管理区域内に配置される移動機の台数は2台以上でもよく、ライン入退場口の数も2つ以上であってもよい。本発明が適用される工場作業場としては、例えば図2に示すような製鉄所のコークス炉設備を例示できる。図2に示すように、製鉄所のコークス炉設備は複数の燃焼室と交互に配置される複数の炭化室とを備え、それぞれの炭化室内には事前処理された石炭が装炭車10a~10cによって装入される。炭化室内に装入された石炭は、燃焼室において燃料ガスを燃焼させることにより、温度1100~1350℃で12~14時間程度空気を遮断して乾留される。炭化室内で乾留された赤熱状態のコークス(赤熱コークス)は、押出機11a~11cによって炉蓋を通って炭化室の外部に排出される。押出機11a~11cによって排出された赤熱コークスは、押出機11a~11cの対面に配置されるガイド車12a~12cによって消火車13a,13bに移送される。消火車13a,13bは赤熱コークスをガイド車12a~12cから受け取り、湿式消火設備14に赤熱コークスを搬送する。
【0021】
コークス炉設備を構成する装炭車10a~10c、押出機11a~11c、ガイド車12a~12c、及び消火車13a,13bは、いずれも敷設された軌道上を走行可能な移動機である。これらの他にも、押出機11a~11cが走行する軌道上には、メンテナンス点検用の点検車両が配置される場合もあり、このような点検車両もコークス炉設備を構成するものであり、移動機に含まれる。一方、装炭車10a~10cやガイド車12a~12c等は、自動(無人)運転されるものもあるが、移動機にはその走行を操作するための運転室又は機上の運転操作盤を備えることもある。
【0022】
図1に戻り、工場作業場には移動機M1、M2の走行を制御するための移動機制御装置100が備えられている。移動機制御装置100は、内部で生成する制御信号又は外部からの制御信号に基づいて、管理区域内に配置されている移動機M1,M2の走行を停止させ、その停止状態を維持するように電気的又は機械的に移動機M1,M2の動力源を遮断するロック動作を実現し得る。また、移動機制御装置100は、内部で生成する制御信号又は外部からの制御信号に基づいて、動力源が遮断されたロック動作を解除するためのロック解除動作を実現し得る。なお、上記ロック動作は、管理区域内に複数の移動機が設置されている場合には全ての移動機に対して実行されるのに対して、ロック解除動作は、一部の移動機(例えば移動機M1と移動機M2のいずれか)についてのみロック解除動作を行う場合もある。作業者が管理区域に立ち入る場合には、全ての移動機を確実に停止させておく必要があるのに対して、ロック解除動作は必要最小限の移動機のみを動作させればよい場合があるからである。
【0023】
〔安全管理システム〕
次に、本発明の一実施形態である工場作業場における作業者の安全管理システムについて説明する。本発明の一実施形態である工場作業場における作業者の安全管理システムは、上記の工場作業場において、ライン入退場口を出発地点として管理区域を経由し到達地点である移動機の運転室まで移動する作業者が所持し、移動機のロック操作及びロック解除操作についての申請情報を生成可能なスマートデバイスと、スマートデバイスから受信した申請情報に基づいて移動機のロック操作又はロック解除操作の可否を判定する判定部を含む、立入管理サーバーと、を備えている。また、スマートデバイスが生成する申請情報は、作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、作業者を識別する作業者識別IDと、を作業者位置識別情報として含む。また、立入管理サーバーは、判定部の判定結果に応じて、申請情報に対応した動作の実行を指示する制御信号を移動機制御装置100に送信すると共に、申請情報を送信したスマートデバイスに対して判定結果を送信する。
【0024】
また、本発明の他の実施形態である工場作業場における作業者の安全管理システムは、移動機の運転室を出発地点として管理区域を経由し到達地点であるライン入退場口まで移動する作業者が所持し、移動機のロック操作及びロック解除操作についての申請情報を生成可能なスマートデバイスと、スマートデバイスから受信した申請情報に基づいて移動機のロック操作又はロック解除操作の可否を判定する判定部を含む、立入管理サーバーと、を備えている。また、スマートデバイスが生成する申請情報は、作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、作業者を識別する作業者識別IDと、を作業者位置識別情報として含む。また、立入管理サーバーは、判定部の判定結果に応じて、申請情報に対応した動作の実行を指示する制御信号を移動機制御装置100に送信すると共に、申請情報を送信したスマートデバイスに対して判定結果を送信する。
【0025】
〔スマートデバイス〕
次に、上記スマートデバイスの構成について説明する。作業者が所持するスマートデバイスは、スマートフォンやタブレット端末等、通信機能や簡易なコンピュータ機能を内蔵し、ソフトウエアによる情報処理機能を利用できる電子機器である。スマートデバイスは、電子機器内部にマイクロプロセッサ(CPU/MPU)を始めとするコンピュータ機能と有線や無線によるネットワーク接続機能を有し、外部の機器と連携することと、複数のアプリケーションソフトウエアをインストールして使用することができる。スマートデバイスは、作業者が工場作業場において所持し、他の作業者と共同で作業を行う場合に、相互に連絡を取り合って作業を進める目的で各々の作業者によって所持される。そのため、工場作業場における作業者とその作業者に割り当てられたスマートデバイスとは工場作業場において同一の位置にあるとみなすことができる。
【0026】
本実施形態のスマートデバイスは、作業者の操作により移動機のロック操作又はロック解除操作についての申請情報を生成する。申請情報は、作業者が安全区域から管理区域に立ち入ろうとする場合や、移動機の運転室から管理区域に立ち入ろうとする場合に移動機の動力源を遮断するロック操作申請情報、又は、作業者が管理区域から安全区域に退出した場合や、管理区域から移動機の運転室に到達した場合に移動機のロックを解除して動力源を開放するロック解除操作申請情報と、を含む。さらに、それらの申請情報には、作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、作業者を識別する作業者識別IDと、を作業者位置識別情報として含む。管理区域に立ち入ろうとする作業者は移動機の保守点検作業を目的として立ち入る場合が多いため、作業者が作業しようとする移動機が特定されていると、作業者の管理区域での位置情報となり、災害発生時の作業者の救助活動等を迅速に行うことができるからである。
【0027】
経路情報は、作業者の出発地点となる出発地点識別IDと、作業者が向かう先である到達地点識別IDと、から構成される。この場合、出発地点識別IDと到達地点識別IDは、ライン入退場口を識別するためにライン入退場口毎に割り当てられた入退場口識別ID又は移動機を識別するために移動機毎に割り当てられた移動機識別IDのいずれかである。入退場口識別IDと移動機識別IDは、記号、符号、数値情報等によって特定される。また、作業者識別IDは、管理区域に立ち入ろうとする作業者を特定するために作業者毎に割り当てられた識別IDであり、作業者番号や職番等によって特定される。但し、作業者識別IDは、作業者が所持するスマートデバイスの識別情報であってもよい。スマートデバイスは管理区域に立ち入る資格のある全ての作業者の各々が所持するものであり、スマートデバイスとその所持者との対応関係が予め特定されているからである。
【0028】
また、入退場口識別IDはライン入退場口に表示されるのが好ましい。入退場口識別IDが「ライン入退場口に表示される」とは、入退場口識別IDがライン入退場口の近傍に表示される意味である。この場合、入退場口識別IDは、ライン入退場口の安全区域に面して表示されることが好ましい。つまり、作業者がライン入退場口から管理区域に立ち入る前に、視覚により入退場口識別IDを認識できるように表示され、作業者がライン入退場口から管理区域から安全区域に退出した後に、視覚により入退場口識別IDを認識できるように表示されているのが好ましい。これにより、作業者がライン入退場口から管理区域に立ち入る前に、作業者が所持するスマートデバイスがロック操作申請情報を生成できる。また、作業者がライン入退場口から安全区域に退出した後に、作業者が所持するスマートデバイスがロック解除操作申請情報を生成できる。これにより、作業者が誤って管理区域に立ち入った状態で申請情報を生成することを抑制できる。
【0029】
一方、移動機識別IDは、移動機の運転室に表示されるのが好ましい。移動機識別IDが「移動機の運転室に表示される」とは、移動機識別IDが移動機の運転室の近傍に表示される意味である。この場合、移動機識別IDは、移動機の運転室側に面して表示されることが好ましい。つまり、作業者が運転室から管理区域に立ち入る前に、視覚により移動機識別IDを認識できるように表示され、作業者が運転室に到達した後に、視覚により移動機識別IDを認識できるように表示されているのが好ましい。これにより、作業者が運転室から管理区域に立ち入る前に、作業者が所持するスマートデバイスによりロック操作申請情報を生成できる。また、作業者が移動機の運転室に立ち入った後に、作業者が所持するスマートデバイスによりロック解除操作申請情報を生成できる。これにより、作業者が誤って管理区域に立ち入った状態で申請情報を生成することを抑制できる。
【0030】
作業者が所持するスマートデバイスの内部には、本実施形態の安全管理システムの機能を実現するための専用のアプリケーションソフトウエア(専用アプリ)がインストールされ、作業者から出発地点となる出発地点識別IDの入力を受け付ける。出発地点識別IDは、スマートデバイスのタッチパネルから入力するようにしてもよく、スマートデバイスが有する音声入力機能を用いて入力するようにしてもよい。この場合、ライン入退場口又は移動機の運転室に表示される出発地点識別IDをQRコードとして表示し、スマートデバイスが有する撮像装置を用いて表示されるQRコードを読み取ることにより出発地点識別IDを入力するようにするのが好ましい。市販のスマートデバイスには、QRコードリーダーをアプリケーションソフトウエアとしてインストールすることができ、これにより出発地点識別IDをスマートデバイスに取り込むことができ、申請情報を容易に生成できるからである。なお、出発地点識別IDの表示はQRコードでなく、バーコードによるものであってもよい。
【0031】
一方、到達地点識別IDは、作業者から到達地点の情報を受け付けることによって特定される。到達地点識別IDは、スマートデバイスのタッチパネルから入力するようにしてもよく、スマートデバイスが有する音声入力機能を用いて入力するようにしてもよい。申請情報に、出発地点識別IDと到達地点識別IDとを含むことにより、作業者が管理区域を通過する経路を概ね特定することができる。
【0032】
上記申請情報は、本実施形態の安全管理システムの機能を実現するための専用アプリを用いて生成される。出発地点識別IDは、上記のようにしてライン入退場口に表示される入退場口識別ID又は移動機の運転室に表示される移動機識別IDを専用アプリに取り込むことによって生成される。作業者識別IDは、予めスマートデバイスの内部に所持者を特定する情報が含まれているため、このような情報を取り込むことにより生成するとよい。但し、専用アプリへログインするための認証情報(例えばログインID等)により作業者を特定できる場合には、このような認証情報を作業者識別IDとしてもよい。
【0033】
以上のように、作業者の出発地点及び到達地点の経路情報と、作業者を識別する作業者識別IDは、安全区域から管理区域に立ち入ろうとする作業者と、移動機の運転室に到達した作業者と、移動機の運転室から管理区域に立ち入ろうとする作業者と、管理区域から安全区域に退出した作業者を特定し、いずれのライン入退場口を通過するか、いずれの移動機に到達するかを識別する情報であり、これらを作業者位置識別情報と呼ぶ。なお、申請情報には、作業者が申請情報を送信した日時、作業者の所属(所属企業、組織名等)、作業者の職制上の役割(管理者、監督者、作業者等)等、管理区域への立ち入る作業者や立入り状況に関する他の情報が含まれていてよい。
【0034】
〔立入管理サーバー〕
次に、上記立入管理サーバーの構成について説明する。立入管理サーバーは、工場作業場における作業者の安全管理を統括する機能を有する。立入管理サーバーは、スマートデバイスが発信した申請情報を受け付け、受け付けた申請情報に基づいて移動機のロック操作又はロック解除操作の可否を判定する判定部を含む。判定部は、申請情報に含まれる作業者位置識別情報が予め登録された識別情報に含まれている場合、作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致したと判定する。これにより、作業者が正規のライン入退場口と正規の移動機の間を移動しようとしていること及びその作業者が管理区域への立ち入り資格を有していることが確認される。予め登録された識別情報とは、管理区域への立ち入り資格がある作業者の作業者識別ID、管理区域に配置される入退場口識別ID、及び管理区域に配置され運転可能な移動機の移動機識別IDである。
【0035】
そして、判定部が移動機のロック操作又はロック解除操作の申請を許可すると判定した場合、立入管理サーバーは、移動機のロック操作又はロック解除操作の申請を許可する判定結果に応じて、申請情報に対応した動作の実行を指示する制御信号を移動機制御装置100に送信すると共に、申請情報を送信したスマートデバイスに対して判定結果を送信する。すなわち、立入管理サーバーは、移動機のロック操作又はロック解除操作を指示する制御信号を移動機制御装置100に送信する。さらに、立入管理サーバーは、申請情報を送信したスマートデバイスに対して移動機のロック操作又はロック解除操作を許可したことを示す情報を送信する。なお、申請情報が移動機のロック操作申請であって、判定部が申請を許可する場合にスマートデバイスに対して送信される情報は、管理区域への立ち入りを許可する立入り許可情報でもよい。管理区域における移動機の動力源が遮断され、管理区域における作業者の安全が確保された状態にあるからである。
【0036】
一方、判定部が移動機のロック操作又はロック解除操作の申請を許可しないと判定した場合には、立入管理サーバーは、申請情報を送信したスマートデバイスに対して、移動機のロック操作又はロック解除操作についての申請を許可しないことを示す情報を送信する。なお、申請情報が移動機のロック操作申請であって、判定部が申請を許可しない場合にスマートデバイスに対して送信される情報は、管理区域への立ち入りを許可しない立入り不許可情報でもよい。作業者が誤って管理区域に立ち入ることを抑制し、立ち入り資格のない作業者の管理区域への立ち入りを抑制できるからである。この場合、立入管理サーバーは移動機のロック操作又はロック解除操作の申請を許可しないため、移動機に対するそれまでのロック状態またはロック解除状態を維持する制御信号を送信する。
【0037】
なお、立入管理サーバーから移動機制御装置100に送信するロック動作又はロック解除動作の制御信号としては、パルス信号を用いるのが好ましい。この場合、移動機Mのロック状態を変更する場合だけでなく、現在の状態を維持する場合にも、ロック動作又はロック解除動作を行うパルス信号が継続して送信される。パルス信号の発信状態により立入管理サーバーの故障を判定することができ、立入管理サーバーの故障により偶発的に移動機のロック制御信号又はロック解除制御信号が送信されるのを抑制するためである。従って、立入管理サーバーが判定部の判定結果に応じて移動機制御装置100に送信する制御信号は、判定部が申請を許可する場合にはロック状態の切替えを行う制御信号であり、申請を許可しない場合には現在の制御信号を維持する制御信号である。
【0038】
本実施形態に適用可能な立入管理サーバーの構成について図3を用いて説明する。本発明の一実施形態である立入管理サーバー2は、例えばワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータにより構成される。図3に示すように、立入管理サーバー2は、通信部21を備え、ネットワークを介して他の機器と通信可能に構成される。立入管理サーバー2は、例えばLTEルーターと接続され、スマートデバイスと相互に情報を送受信できるように構成されている。立入管理サーバー2は、受付部22を備え、スマートデバイスから送信される申請情報として、移動機のロック操作申請情報や、移動機の動力源を開放するためのロック解除操作申請情報を受け付ける。
【0039】
立入管理サーバー2は、記憶部23を備え、予め登録される工場作業場において作業する資格のある作業者の作業者識別ID、工場作業場の入退場口識別ID、管理区域にある移動機の移動機識別IDを含む情報を予め記憶しておく。また、記憶部23は、現時点までの申請情報及び対応する判定部24の判定結果を作業者識別ID毎に保持する。但し、立入管理サーバー2が管理区域に作業者が立ち入っていないこと及びいずれの移動機の運転室にも作業者がいないと判定した場合には、過去の申請情報及び対応する判定部24の判定結果を記憶部23から削除(リセット)してもよい。移動機が走行している状態では管理区域に作業者の立ち入りがない状態にあるため、新たに管理区域への立入管理を開始すればよいからである。
【0040】
立入管理サーバー2は、判定部24を備え、スマートデバイスから送信される申請情報に含まれる作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致するか否かを判定する。また、判定部24は、現時点において受け付けている申請情報を送信したスマートデバイス以外の他のスマートデバイスから過去に受け付けた申請情報とその判定結果を用いて、現時点のロック解除操作申請の可否を判定する。この場合、記憶部23に記憶されている情報が参照される。
【0041】
立入管理サーバー2は、制御信号出力部25を備え、判定部24の判定結果に基づいて、移動機制御装置100に対して、動力源を遮断するロック制御信号を送信する機能と、動力源を開放するロック解除制御信号を送信する機能と、を有する。なお、制御信号出力部25が移動機制御装置100に対してロック制御信号を送信する場合には、管理区域内にある全ての移動機の動力源を遮断する指令が送信される。また、制御信号出力部25は、制御信号をパルス信号として送信し、その状態を移動機制御装置100で保持する構成が好ましい。
【0042】
立入管理サーバー2は、判定結果出力部26を備え、ロック操作申請情報又はロック解除操作申請情報を送信したスマートデバイスに対して判定部24による判定結果を送信する。この場合、判定結果出力部26は、制御信号出力部25から移動機制御装置100へ送信されるロック制御信号又はロック解除制御信号に対して移動機のロック動作又はロック解除動作が完了したことを示す信号を受け取ってから、スマートデバイスに対して判定結果を送信するのが好ましい。
【0043】
〔ライン入退場口から管理区域への立ち入り時の実施形態〕
次に、図4を参照して、作業者がライン入退場口を通過して管理区域に立ち入ってから移動機の運転室に移動する際の安全管理システムの動作について詳しく説明する。図4は、作業者がライン入退場口Gを通過して移動機Mに移動するために管理区域に立ち入ろうとする状態を模式的に示している。作業者は、自身が所持するスマートデバイス1にインストールされている安全管理システムの専用アプリケーションソフトウエア(専用アプリ)を用いて、移動機Mのロック操作についての申請情報(ロック操作申請情報)を生成する。この場合、専用アプリにログインする際の本人認証により、申請情報を生成する作業者の作業者識別IDが特定される。あるいは、スマートデバイス1の所持者として予め作業者識別IDが専用アプリに取り込まれるようにしてよく、ログイン時のユーザーIDにより作業者識別IDが特定されるようにしてもよい。
【0044】
作業者は、ロック操作申請情報に含まれる経路情報として、出発地点を表す出発地点識別IDと、到達地点を表す到達地点識別IDを特定する。本実施形態では、出発地点識別IDは、作業者が立ち入ろうとするライン入退場口Gに割り当てられ、ライン入退場口Gに設けられている表示装置3に表示される入退場口識別IDである。また、到達地点識別IDは、作業者が向かおうとする移動機Mに割り当てられている移動機識別IDである。この場合、申請情報を生成するスマートデバイス1は、入退場口識別IDをタッチパネルから入力として受け付けても、音声入力機能により入力を受け付けてもよい。また、上記のようにQRコードとして表示される入退場口識別IDを、スマートデバイス1の撮像装置で読み取って専用アプリに取り込んでもよい。そして、作業者が設定した申請情報は、スマートデバイス1の通信機能を用いて、LTEルーター4等を介して立入管理サーバー2に送信される。
【0045】
作業者が所持するスマートデバイス1からロック操作申請情報を受け付けた立入管理サーバー2は、その判定部24において、移動機Mのロック操作の可否を判定する。具体的には、ロック操作申請情報に含まれる作業者位置識別情報が予め登録された識別情報に含まれている場合、判定部24は、作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致したと判定する。これにより、作業者が正規のライン入退場口を通過して正規の移動機に移動するために管理区域に立ち入ろうとしていること、及びその作業者が管理区域への立ち入り資格を有していることが確認される。そして、判定部24は、ロック操作申請を許可する判定結果を出力する。
【0046】
立入管理サーバー2は、判定部24がロック操作申請を許可する判定結果を出した場合、移動機Mのロック操作申請に対応したロック制御信号(移動機Mをロックするための制御信号)を移動機制御装置100に送信する。さらに、立入管理サーバー2は、ロック操作申請情報を送信したスマートデバイス1に対してロック操作申請を許可する情報(ロック操作許可情報)又は管理区域への立入許可情報を判定結果として送信する。但し、立入管理サーバー2は、移動機制御装置100に対してロック制御信号を送信して、管理区域の移動機Mが停止すると共に、移動機Mの動力源がロックされたことを示すロック完了信号を移動機制御装置100から受信した後に、立入許可情報を送信するのが好ましい。作業者が管理区域に立ち入ろうとする段階では、管理区域の移動機Mが確実に停止している状態が実現されるからである。
【0047】
以上のようにして、ロック操作申請情報を送信したスマートデバイス1に対して立入り許可情報が送信されると、作業者はスマートデバイス1の画面から立入り許可情報を確認することができる。そして、作業者はロック操作申請情報で特定されたライン入退場口Gから管理区域に立ち入ることができる。なお、ライン入退場口Gには、作業者の立ち入りを制限するためのゲートを設けるようにしてもよい。作業者が所持するスマートデバイス1に立入り許可情報が表示されない段階で、管理区域への作業者の立ち入りを抑制するためである。また、立ち入りを制限するためのゲートにゲート制御装置を設け、立入り許可情報を受信したスマートデバイス1に表示される情報に基づいて、ゲートの開閉を制御するようにしてもよい。この場合、ゲート制御装置は、Bluetooth(登録商標)等の近距離での無線通信機能や画像情報等の読み取り機能を備え、これらによりスマートデバイス1が受信した立入り許可情報を認証することによってゲートの開閉を制御するのが好ましい。立入管理サーバー2から立入り許可情報を受信していないスマートデバイス1の所持者が誤って管理区域に立ち入ることを確実に抑制できるからである。
【0048】
本実施形態は、管理区域に立ち入る作業者が複数いる場合にも適用できる。立入管理サーバー2は、管理区域に立ち入る資格のある作業者の作業者識別ID毎に、申請情報を受け付け、判定部24の判定結果を送信するので、いずれの作業者が管理区域に立ち入っているか、いずれの作業者が移動機Mの運転室に到達しているかを判定できる。この場合、立入管理サーバー2は、作業者Aからのロック操作申請情報に基づいて移動機制御装置100に対してロック制御信号が送信されている状態において、作業者Bのスマートデバイス1からロック操作申請情報を受信した場合には次のような処置を行う。すなわち、作業者Bが所持するスマートデバイス1からロック操作申請情報を受け付けた時点で、立入管理サーバー2は作業者Aからのロック申請情報に応じて移動機制御装置100に対して、ロック制御信号を送信している。このため、判定部24は作業者Bからの申請情報に含まれる作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致するときは、移動機Mのロック操作申請を許可することを示す判定結果を、作業者Bが所持するスマートデバイス1に対して送信する。一方、立入管理サーバー2は、ロック制御信号を移動機制御装置100に対して移動機Mのロックを維持するロック制御信号を送信する。但し、既に作業者Aからのロック操作申請情報に基づいて移動機Mのロック制御信号を送信している状態であるため、立入管理サーバー2の内部において作業者Bからのロック操作申請情報を許可する判定結果を保持しておけば、改めて移動機制御装置100に対して作業者Bからのロック操作申請情報に対応したロック制御信号を送信する必要はない。また、作業者Aが管理区域から退出してロック解除操作申請があった場合には、作業者Bからのロック操作申請が許可されている状態にあるので、移動機制御装置100に対するロック制御信号の送信を維持する。これにより、いずれかの作業者が管理区域に立ち入っている状態では、移動機Mのロックが維持されるようになり、作業者の安全が確保される。
【0049】
〔移動機の運転室から移動機のロックを解除する時の実施形態〕
次に、図5を参照して、作業者がライン入退場口を通過して管理区域に立ち入ってから移動機の運転室に移動した後に、移動機を走行させるために移動機のロック解除操作を行う際の安全管理システムの動作について詳しく説明する。図5は、作業者が出発地点であるライン入退場口Gから管理区域に立ち入って、到達地点である移動機Mの運転室に立ち入った状態を模式的に示している。作業者は移動機Mを走行させるために、自身が所持するスマートデバイス1にインストールされている安全管理システムの専用アプリケーションソフトウエア(専用アプリ)を用いて、移動機Mのロック解除操作についての申請情報(ロック解除操作申請情報)を生成する。ロック解除申請情報に含まれる作業者識別IDは、専用アプリにログインする際の本人認証により生成してよいが、既に管理区域に立ち入る際にスマートデバイス1の内部に作業者識別IDを保持している場合には、改めて作業者識別IDを入力する必要はない。また、ロック解除申請情報に含まれる経路情報である出発地点を表す出発地点識別IDと到達地点を表す到達地点識別IDは、作業者がライン入退場口Gから管理区域に入場する際に特定されているため、改めて経路情報を入力する必要はない。従って、スマートデバイス1に記憶された作業者位置識別情報を申請情報としてロック解除操作申請情報がスマートデバイス1の内部で生成される。そして、スマートデバイス1は、通信機能を用いて、LTEルーター4等を介して立入管理サーバー2にロック解除操作申請情報を送信する。
【0050】
作業者が所持するスマートデバイス1からロック解除操作申請情報を受け付けた立入管理サーバー2は、その判定部24において、移動機Mのロック解除操作の可否を判定する。具体的には、判定部24は、ロック解除操作申請情報に含まれる作業者位置識別情報が予め登録された識別情報に含まれている場合、作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致したと判定する。これにより、作業者が正規のライン入退場口を通過して正規の移動機に移動したこと及びその作業者が管理区域への立ち入り資格を有していることが確認される。そして、判定部24はロック解除操作申請を許可する判定結果を出力する。
【0051】
立入管理サーバー2は、判定部24がロック解除操作申請を許可する判定結果を出力した場合には、移動機Mのロック解除操作申請に対応したロック解除制御信号(移動機Mのロックを解除するための制御信号)を移動機制御装置100に送信する。この場合、ロックを解除する対象の移動機は移動機Mに限定するようにしてよい。全ての移動機のロックを解除しなくても、作業者による移動機の保守点検が可能な場合が多いからである。さらに、立入管理サーバー2は、ロック解除操作申請情報を送信したスマートデバイス1に対してロック解除操作申請を許可する情報(ロック解除操作許可情報)を判定結果として送信する。但し、立入管理サーバー2は、移動機制御装置100に対してロック解除制御信号を送信して、管理区域の移動機Mの動力源が開放されたことを示すロック解除完了信号を移動機制御装置100から受信した後に、ロック解除操作許可情報を送信するのが好ましい。作業者に移動機Mの走行が可能であることを明確に伝達できるからである。
【0052】
本実施形態は、管理区域に立ち入る作業者が複数いる場合にも適用できる。立入管理サーバー2は、管理区域に立ち入る資格のある作業者の作業者識別ID毎に申請情報を受け付け、判定部24が申請の可否を判定するので、いずれの作業者が管理区域に立ち入っているかを容易に判定できる。この場合、判定部24は、作業者が所持するスマートデバイス1からの移動機Mについてのロック解除操作申請情報に対して、作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致することと、現時点において他の作業者が所持するスマートデバイス1から移動機Mのロック操作申請情報を受信していないことを条件に、移動機Mのロック解除申請を許可する判定結果を出力するのが好ましい。
【0053】
具体的には、立入管理サーバー2は、作業者Bからのロック操作申請情報に基づいて移動機制御装置100に対してロック制御信号が送信されている状態において、作業者Aのスマートデバイス1から移動機M1についてのロック解除操作申請情報を受信した場合には、立入管理サーバー2は次のような処置を行う。すなわち、作業者Aが所持するスマートデバイス1からロック解除操作申請情報を受け付けた時点で、立入管理サーバー2は作業者Bからのロック操作申請情報に対応するロック制御信号を移動機制御装置100に対して送信している。このため、判定部24は作業者Aからの移動機M1についてのロック解除操作申請情報に含まれる作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致しても、作業者Bが所持するスマートデバイス1から全ての移動機についてのロック操作申請情報を受信しているので、移動機M1についてのロック解除申請を許可しない判定結果を出力し、立入管理サーバー2は、作業者Aが所持するスマートデバイス1に対して、移動機M1についてのロック解除操作申請を許可しないロック解除操作不許可情報を判定結果として送信する。また、立入管理サーバー2は移動機制御装置100に対して送信している移動機M1を含む全ての移動機についてのロック制御信号を維持する。
【0054】
その後、作業者Bがライン入退場口から安全区域に退出した場合、又は、作業者Bが管理区域に立ち入って作業者Bの到達地点である移動機M2の運転室に到達した場合には、作業者Bのスマートデバイス1からロック解除操作申請情報が送信されることから、判定部は作業者Bからのロック解除操作申請情報に含まれる作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致することと、作業者B以外の作業者が所持するスマートデバイス1からいずれの移動機についてもロック操作申請情報を受信していないことを条件に、移動機M2のロック解除申請を許可する判定結果を出力する。そして、立入管理サーバー2は、作業者Bが所持するスマートデバイス1に移動機M2についてのロック解除操作許可情報を送信する。これにより、作業者Bは管理区域の移動機M2の走行が開始できる状態にあることを認識できる。但し、作業者Bが所持するスマートデバイス1に移動機M2についてのロック解除操作許可情報を送信すると共に、移動機M1についてのロック解除不許可情報を受信している作業者Aのスマートデバイスに対して移動機M1についてもロック解除許可情報が発信されるようにしてもよい。また、後述する表示装置に移動機M1についてもロック解除操作が行われたことを表示するようにしてもよい。
【0055】
〔移動機の運転室から移動機をロックする時の実施形態〕
次に、図6を参照して、作業者が移動機の運転室において作業を完了し、移動機の運転室を出発地点として管理区域を経由し到達地点であるライン入退場口まで移動する際の安全管理システムの動作について詳しく説明する。図6は、作業者が移動機Mの運転室からライン入退場口Gに移動するために管理区域に立ち入ろうとする状態を模式的に示している。作業者は自身が所持するスマートデバイス1にインストールされている安全管理システムの専用アプリケーションソフトウエア(専用アプリ)を用いて、移動機Mのロック操作についての申請情報(ロック操作申請情報)を生成する。この場合の作業者識別IDの特定方法は上記と同様である。
【0056】
ロック操作申請情報に含まれる出発地点識別IDは、移動機Mに割り当てられ、移動機Mに表示される移動機識別IDである。また、到達地点識別IDは、作業者が向かおうとするライン入退場口Gに割り当てられている入退場口識別IDである。この場合、申請情報を生成するスマートデバイス1は、移動機識別IDをタッチパネルから入力として受け付けても、音声入力機能により入力を受け付けてもよい。また、移動機Mの運転室にQRコードとして表示される移動機識別IDを、スマートデバイス1の撮像装置で読み取って専用アプリに取り込んでもよい。そして、生成されたロック操作申請についての申請情報は、スマートデバイス1の通信機能を用いて、LTEルーター4等を介して立入管理サーバー2に送信される。
【0057】
作業者が所持するスマートデバイス1からロック操作申請情報を受け付けた立入管理サーバー2は、その判定部24において、移動機Mのロック操作の可否を判定する。具体的には、判定部24は、ロック申請情報に含まれる作業者位置識別情報が予め登録された識別情報に含まれている場合、作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致したと判定する。これにより、作業者が正規の移動機の運転室から管理区域を通過して正規のライン入退場口から安全区域に移動すること及びその作業者が管理区域への立ち入り資格を有していることが確認される。そして、判定部24はロック操作申請を許可する判定結果を出力する。
【0058】
判定部24がロック操作申請を許可する判定結果を出力した場合、立入管理サーバー2が、移動機制御装置100に対してロック制御信号を送信する点と、ロック申請情報を送信したスマートデバイス1に対して判定結果を送信する点は、上記と同様である。そして、ロック操作申請情報を送信したスマートデバイス1に対して立入り許可情報が送信されると、作業者はスマートデバイス1の画面から立入り許可情報を確認することができる。そして、作業者はロック操作申請情報で特定された移動機Mの運転室から管理区域に立ち入ることができる。
【0059】
〔管理区域からの退出時の実施形態〕
図7を参照して、作業者が移動機の運転室において作業を完了し、到達地点であるライン入退場口まで移動した後に、移動機を走行させるために移動機のロック解除操作を行う際の安全管理システムの動作について詳しく説明する。図7は、作業者が移動機Mの運転室からライン入退場口Gに移動した状態を模式的に示している。作業者は安全区域に退出した場合に、自身が所持するスマートデバイス1にインストールされている安全管理システムの専用アプリケーションソフトウエア(専用アプリ)を用いて、移動機Mのロック解除操作についての申請情報(ロック解除操作申請情報)を生成する。この場合の作業者識別IDの特定方法は上記と同様である。また、ロック解除操作申請情報に含まれる経路情報である出発地点を表す出発地点識別IDと到達地点を表す到達地点識別IDは、作業者が移動機Mの運転室から管理区域に立ち入る際に特定されているため、改めて経路情報を入力する必要はない。従って、スマートデバイス1に記憶されている作業者位置識別情報を申請情報としてロック解除操作申請情報がスマートデバイス1の内部で生成される。そして、ロック解除操作申請情報を生成したスマートデバイス1の通信機能を用いて、LTEルーター4等を介して立入管理サーバー2にロック解除操申請情報が送信される。
【0060】
作業者が所持するスマートデバイス1からロック解除操作申請情報を受け付けた立入管理サーバー2は、その判定部24において、移動機Mのロック解除操作の可否を判定する。具体的には、判定部24は、ロック解除操作申請情報に含まれる作業者位置識別情報が予め登録された識別情報に含まれている場合、作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致したと判定する。これにより、作業者が正規の移動機の運転室から正規のライン入退場口を通過したこと及びその作業者が管理区域への立ち入り資格を有していることが確認される。そして、判定部24はロック解除操作申請を許可する判定結果を出力する。
【0061】
判定部24がロック解除操作申請を許可する判定結果を出力した場合、立入管理サーバー2が、移動機制御装置100に対してロック解除制御信号を送信する点と、ロック解除操作申請情報を送信したスマートデバイス1に対して判定結果を送信する点は、上記と同様である。この場合、管理区域にある全ての移動機のロックを解除するようにしてよい。作業者が安全区域に退出した場合には、いずれの移動機が走行しても作業者の安全は確保されるからである。そして、ロック解除操作申請情報を送信したスマートデバイス1に対してロック解除操作許可情報が送信されると、作業者はスマートデバイス1の画面から移動機のロック解除操作許可情報を確認することができる。
【0062】
本実施形態は、上記と同様に管理区域に立ち入る作業者が複数いる場合にも適用できる。この場合、立入管理サーバー2の判定部24は、作業者が所持するスマートデバイス1からのロック解除操作申請情報に対して、作業者位置識別情報が予め登録された識別情報と合致することと、現時点において他の作業者が所持するスマートデバイス1から移動機のロック操作申請情報を受信していないことを条件に、移動機のロック解除操作申請を許可する判定結果を出力するのが好ましい。
【0063】
〔ネットワークシステム〕
本実施形態の安全管理システムは、図8に例示するネットワーク構成により実現できる。工場作業場の管理区域へ立ち入る資格を有する作業者が所持するスマートデバイス1には、作業者の氏名や作業者識別ID等の情報が記憶されている。それぞれのスマートデバイス1には、本実施形態の安全管理システムの専用のアプリケーションソフトウエア(専用アプリ)がインストールされている。専用アプリは、移動機Mのロック操作申請情報やロック解除操作申請情報を生成する機能を備えている。スマートデバイス1は、公衆回線として利用可能な無線通信規格であるLTE等を利用して、LTEルーター4を経由して立入管理サーバー2と情報の送受信が可能に構成されている。
【0064】
なお、LTEルーター4と立入管理サーバー2との間には、VPN接続機能を有するVPN(Virtual Private Network)ルーター5を設けることが好ましい。仮想的な専用回線を用いることにより、安全管理システムのセキュリティ上のリスクを低減できるからである。さらに、VPNルーター5と立入管理サーバー2との間には、セキュリティスイッチ(SW)6を設け、安全管理システムのネットワークに対する外部からの攻撃を検知しブロックするように構成するのが好ましい。
【0065】
一方、立入管理サーバー2は、移動機Mの移動機制御装置100と接続される。本実施形態の安全管理システムは、既設の移動機M及び移動機制御装置100に対して適用される場合がある。このときには、移動機制御装置100への外部制御信号として、ロック制御信号やロック解除制御信号が送られる。但し、スマートデバイス1との通信異常や立入管理サーバー2の故障等の意図せぬトラブルに対しても作業者の安全を確保するために、立入管理サーバー2はロック制御信号とロック解除制御信号をパルス化して送信し、立入管理サーバー2に異常が発生した場合でも誤動作により移動機Mのロックが解除されないようにしておくのが好ましい。
【0066】
〔表示装置〕
本実施形態の安全管理システムは、立入管理サーバー2に接続される表示装置を備える。立入管理サーバー2は、スマートデバイス1からの申請情報及び判定部24における判定結果に基づいて、現時点において管理区域へ立ち入っている作業者の作業者識別IDを特定し、表示装置により立入管理サーバー2が特定した作業者識別IDに対応する作業者名を表示するのが好ましい。また、表示装置は、このように特定された作業者識別IDに基づいて、その作業者識別IDに対応する入退場口識別IDを表示してもよい。これにより、現時点において管理区域へ立ち入っている作業者が管理区域に立ち入った入退場口を特定できる。さらに、作業者位置識別情報に含まれる移動機識別IDを表示するようにしてもよい。入退場口識別ID及び移動機識別IDは、管理区域に立ち入った作業者の立ち入り経路に関する情報であり、これらを表示装置で表示することにより管理者による作業安全管理が容易になるからである。
【0067】
表示装置は例えばディスプレイである。表示装置は、工場作業場を管理する工場管理棟等に設置してよい。管理区域に立ち入っている作業者の数等を把握でき、移動機のロック状態を確認することができるからである。表示装置は、管理区域に配置するライン入退場口や移動機の運転室に設置してもよい。管理区域に立ち入っている他の作業者を確認でき、共同作業における安全確保が容易になるからである。ここで、スマートデバイス1からの申請情報及び判定結果に基づいて、現時点で管理区域内へ立ち入っている作業者の作業者識別IDを特定する方法は以下のとおりである。すなわち、立入管理サーバー2に送信された申請情報が移動機のロックを申請するものである場合に、経路情報に含まれる出発地点識別IDと到達地点識別IDとから、作業者がライン入退場口から移動機に移動しようとしているのか、移動機の運転室からライン入退場口に移動しようとしているのかを特定することができる。また、立入管理サーバー2に送信された申請情報が移動機のロックを解除するものである場合に、経路情報に含まれる出発地点識別IDと到達地点識別IDとから、作業者が移動機の運転室からロックを解除しようとしているのか、安全区域から移動機のロックを解除しようとしているのかを特定することができる。
【0068】
以上のようにして、立入管理サーバー2は、特定の作業者が管理区域に立ち入っているか及び移動機の運転室に到着しているかを、時系列の情報として特定することができる。そして、立入管理サーバー2は、複数の作業者が所持する各々のスマートデバイスから送信されるロック操作申請情報及びロック解除操作申請情報に基づいて、それぞれの作業者が現時点において管理区域に立ち入っている状態を特定することができる。
【0069】
表示装置は、以上のようにして現時点で管理区域内へ立ち入っている作業者識別IDを特定し、特定された作業者識別IDに対応する作業者名を表示する場合に、随時表示画面を更新するようにしてよい。また、表示装置は、立入管理サーバー2がいずれかのスマートデバイス1に対して判定結果を送信したタイミングで表示を更新するようにしてもよい。表示装置の好ましい実施形態の例を図9に示す。図9は、表示装置7の画面構成の例である。これは、現時点において立入許可情報に基づいて管理区域に立ち入っている作業者名と、作業者が指定した移動機識別IDに対応する移動機の名称を表示している。例えば、作業者Aと作業者Bはそれぞれのスマートデバイス1から移動機M1の運転室から移動機M1のロック解除操作申請が発信され、立入管理サーバー2によりロック解除操作申請が許可された状態にある。この場合、表示装置7は、移動機M1の運転室には作業者A及び作業者Bがいて、移動機M1が走行可能な状態にあることを示している。また、作業者Cのスマートデバイスからは、移動機M3のロック解除操作申請が発信され、立入管理サーバー2によりロック解除操作申請が許可された状態にあることを示している。このような表示装置を工場作業場に設けることにより、管理区域における作業者の作業状況を認識することができ、作業者の安全管理が容易になる。
【0070】
〔専用アプリ〕
図10は、スマートデバイス1にインストール可能な専用のアプリケーションソフトウエア(専用アプリ)の処理フローの例を示す図である。図10に示すように、管理区域に立ち入る作業者は、自身が所持するスマートデバイス1に搭載された専用アプリ(立入申請アプリ)にログインすることで本人認証を行い、作業者識別IDが特定される。そして、申請情報作成画面から「ロック操作申請情報」又は「ロック解除操作申請情報」のいずれかを選択し、対応する申請情報の生成が行われる。申請情報に含まれる作業者位置識別情報には作業者識別IDと、経路情報である出発地点識別IDと到達地点識別IDとが含まれる。出発地点識別IDは、作業者が出発する位置に表示されている。出発地点識別IDは、例えばライン入退場口又は移動機の運転室に表示されるQRコードの読み取りによって専用アプリに取り込むことができる。その場合、スマートデバイスに備えられた撮像装置によってQRコードを撮影し、撮影された画像から出発地点識別IDを判別するQRコード読み取りアプリを用いることができる。また、到達地点識別IDは、専用アプリの入力画面から到達地点の候補を選択するようにして作業者からの入力を受け付ける。
【0071】
以上のようにして、作業者位置識別情報が専用アプリ内で特定されると、送信操作により、立入管理サーバーに対する申請情報(ロック操作申請情報又はロック解除操作申請情報)が送信される。そして、スマートデバイス1が立入管理サーバー2から判定結果を受信すると、専用アプリの画面から判定結果が表示される。この場合、スマートデバイス1が生成した申請情報がロック操作申請情報である場合には、専用アプリは次にロック解除操作申請情報が生成されまで待機するようにしてもよい。
【0072】
〔QRコード〕
図11は、ライン入退場口の表示装置に表示される入退場口識別IDとして、QRコードが表示される例を示すものである。図11に示す例は、ライン入退場口に設けられている手動の開閉扉8を安全区域側からみた図である。すなわち、入退場口識別IDが、ライン入退場口の表示装置3に表示されており、さらに入退場口識別IDはライン入退場口の安全区域に面して表示されている。これにより、ライン入退場口を通過して管理区域に立ち入ろうとする作業者は、ライン入退場口の安全区域の側に立って、スマートデバイスにより申請情報を生成するので、立入管理サーバーに申請情報を送信する前に管理区域に立ち入ることを抑制できる。また、図11に示す例では、ライン入退場口に表示される入退場口識別IDがQRコードであり、スマートデバイス1が備える撮像装置を用いてQRコードの画像情報から入退場口識別IDが特定されるので、立入管理サーバー2に申請情報を送信する前に作業者が管理区域に立ち入ることを抑制できる。なお、本実施形態の入退場口識別IDはライン入退場口に表示される情報をスマートデバイス1により読み取る方法で入退場口識別IDを特定している。これは、識別情報の送信部と受信部とを用いて、電磁的な信号の送受信を行う方法とは異なる。すなわち、特許文献1や特許文献2に記載の方法のように、タグに含まれる情報を、IDタグリーダやRFIDリーダを用いて受信する方法とは異なるため、工場作業場のように周囲環境が必ずしも良好でない場合にも信頼性の高い安全管理システムを構築できる。また、周囲環境が優れない工場作業場では、図11に示す例のように、入退場口識別IDの表示装置3に手動で開閉可能なカバー9を用いれば入退場口識別IDの表示が劣化することもない。また、移動機識別IDを移動機の運転室にQRコードとして表示する場合には、図11のような手動の開閉扉8は必ずしも必要ない。移動機の運転室の操作盤にQRコードが表示されていればよい。立入管理サーバー2に申請情報を送信する前に管理区域に立ち入ることを防止できるからである。
【0073】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 スマートデバイス
2 立入管理サーバー
3,7 表示装置
4 LTEルーター
5 VPNルーター
6 セキュリティスイッチ
8 開閉扉
9 カバー
10a~10c 装炭車
11a~11c 押出機
12a~12c ガイド車
13a,13b 消火車
14 湿式消火設備
21 通信部
22 受付部
23 記憶部
24 判定部
25 制御信号出力部
26 判定結果出力部
100 移動機制御装置
101 機側操作盤
102,102a,102b 移動機操作盤
103 中央操作盤
G,G1,G2 ライン入退場口
M,M1,M2 移動機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13