(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180312
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】接着組成物、積層体、包材および電池ケース用包材
(51)【国際特許分類】
C09J 123/30 20060101AFI20231214BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231214BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20231214BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20231214BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231214BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20231214BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20231214BHJP
【FI】
C09J123/30
C09J11/06
C09J7/30
B32B27/26
B32B27/32 101
B32B27/32 102
H01M50/129
H01M50/105
H01M50/121
H01M50/131
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093489
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】川端 駿
(72)【発明者】
【氏名】廣田 義人
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
5H011
【Fターム(参考)】
4F100AB10C
4F100AB33C
4F100AK53A
4F100AK67A
4F100AL07A
4F100AT00D
4F100BA02
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4F100BA04
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4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA02A
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4F100GB15
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4F100JA06A
4F100JA11A
4F100JJ03
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4F100JL11A
4F100JL11C
4F100YY00A
4J004AA07
4J004AA17
4J004AB05
4J004CA01
4J004CA08
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4J040GA11
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4J040LA08
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4J040NA06
4J040NA19
5H011AA02
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC14
5H011KK02
5H011KK06
(57)【要約】
【課題】低温ラミネート時の密着性、可使時間および耐熱性に優れる接着組成物、その接着組成物の乾燥物からなる接着剤層を備える積層体、その積層体を備える包材、および、その包材を備える電池ケース用包材を提供すること。
【解決手段】接着組成物は、結晶性の変性オレフィン重合体と、架橋剤とを含む。結晶性の変性オレフィン重合体は、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体が、酸無水物基を有する単量体によって、変性されてなる。結晶性の変性オレフィン重合体において、酸無水物基に由来する環構造の開環率が、50%以上90%以下である。架橋剤が、エポキシ化合物および/またはオキサゾリン化合物を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性の変性オレフィン重合体と、
架橋剤とを含み、
前記結晶性の変性オレフィン重合体は、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体が、酸無水物基を有する単量体によって、変性されてなり、
前記結晶性の変性オレフィン重合体において、前記酸無水物基に由来する環構造の開環率が、50%以上90%以下であり、
前記架橋剤が、エポキシ化合物および/またはオキサゾリン化合物を含む、接着組成物。
【請求項2】
さらに、200℃における動粘度が、1cSt以上100000cSt以下である非結晶性の炭化水素系重合体を含む、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項3】
前記非結晶性の炭化水素系重合体が、炭素数2~20のオレフィンの重合体である、請求項2に記載の接着組成物。
【請求項4】
さらに、触媒を含む、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の接着組成物の乾燥物からなる第1接着剤層と、基材とを厚み方向一方側に向かって順に備える積層体。
【請求項6】
内層と、請求項5に記載の積層体とを厚み方向一方側に向かって順に備える、包材。
【請求項7】
請求項6に記載の包材と、第2接着剤層と、外層とを厚み方向一方側に向かって順に備える、電池ケース用包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着組成物、積層体、包材および電池ケース用包材、詳しくは、接着組成物、その接着組成物の乾燥物からなる接着剤層を備える積層体、その積層体を備える包材、および、その包材を備える電池ケース用包材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューター、携帯端末装置などに用いられる電池として、薄型化の観点から、リチウム電池が用いられている。そして、リチウム電池は、例えば、包材よって封止されている。
【0003】
このような包材は、例えば、アルミニウム箔層と、ポリプロピレンフィルムとを、接着剤によって、接着することによって得られる。
【0004】
そして、このような接着剤として、例えば、酸無水物基を有するポリオレフィンと、架橋剤としてのイソシアネート化合物とを含む接着剤組成物であって、酸無水物基を有するポリオレフィンにおいて、無水環の開環率が40%である接着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1の実施例3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2020/090818号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、このような接着剤には、耐熱性が要求される。
【0007】
一方、特許文献1の接着剤組成物では、架橋剤としてのイソシアネート化合物を用いている。そのため、耐熱性が低下するという不具合がある。
【0008】
さらに、このような接着剤には、生産性を向上させる観点から、低温ラミネート時の密着性および可使時間が要求される。
【0009】
本発明は、低温ラミネート時の密着性、可使時間および耐熱性に優れる接着組成物、その接着組成物の乾燥物からなる接着剤層を備える積層体、その積層体を備える包材、および、その包材を備える電池ケース用包材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、結晶性の変性オレフィン重合体と、架橋剤とを含み、前記結晶性の変性オレフィン重合体は、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体が、酸無水物基を有する単量体によって、変性されてなり、前記結晶性の変性オレフィン重合体において、前記酸無水物基に由来する環構造の開環率が、50%以上90%以下であり、前記架橋剤が、エポキシ化合物および/またはオキサゾリン化合物を含む、接着組成物である。
【0011】
本発明[2]は、さらに、200℃における動粘度が、1cSt以上100000cSt以下である非結晶性の炭化水素系重合体を含む、上記[1]に記載の接着組成物を含んでいる。
【0012】
本発明[3]は、前記非結晶性の炭化水素系重合体が、炭素数2~20のオレフィンの重合体である、上記[2]に記載の接着組成物を含んでいる。
【0013】
本発明[4]は、さらに、触媒を含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の接着組成物を含んでいる。
【0014】
本発明[5]は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の接着組成物の乾燥物からなる第1接着剤層と、基材とを厚み方向一方側に向かって順に備える積層体を含んでいる。
【0015】
本発明[6]は、内層と、上記[5]に記載の積層体とを厚み方向一方側に向かって順に備える、包材を含んでいる。
【0016】
本発明[7]は、上記[6]に記載の包材と、第2接着剤層と、外層とを厚み方向一方側に向かって順に備える、電池ケース用包材を含んでいる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の接着組成物では、結晶性の変性オレフィン重合体において、酸無水物基に由来する環構造の開環率が、50%以上90%以下である。そのため、低温ラミネート時の密着性および可使時間に優れる。
【0018】
また、架橋剤が、エポキシ化合物および/またはオキサゾリン化合物を含む。そのため、耐熱性に優れる。
【0019】
本発明の積層体は、本発明の接着組成物の乾燥物からなる第1接着剤層を備える。そのため、低温ラミネート時の密着性および耐熱性に優れる。
【0020】
本発明の包材は、本発明の積層体を備える。そのため、低温ラミネート時の密着性および耐熱性に優れる。
【0021】
本発明の電池ケース用包材は、本発明の包材を備える。そのため、低温ラミネート時の密着性および耐熱性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、本発明の積層体の製造方法の一実施形態を示す。
図2Aは、基材を準備する第1工程を示す。
図2Bは、基材の厚み方向他方面に、第1接着剤層を配置(形成)する第2工程を示す。
【
図3】
図3は、本発明の包材の一実施形態を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の電池ケース用包材、および、この電池ケース用包材を用いた電池の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.接着組成物
接着組成物は、結晶性の変性オレフィン重合体と、架橋剤とを含む。
【0024】
<結晶性の変性オレフィン重合体>
結晶性の変性オレフィン重合体は、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体が、酸無水物基を有する単量体によって、変性されてなる。
【0025】
[結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体]
結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体は、結晶性の重合体を形成可能な炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位を含むオレフィン重合体である。つまり、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体は、炭素数2~20のα-オレフィンを重合してなる。なお、結晶性とは、融解熱が1J/g以上の化合物の性状と定義される。
【0026】
炭素数2~20のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および、1-エイコセンが挙げられる。
【0027】
炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位としては、好ましくは、炭素数2~4のα-オレフィン由来の構成単位が挙げられる。炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位として、より好ましくは、プロピレン由来の構成単位および1-ブテン由来の構成単位が挙げられる。つまり、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体は、好ましくは、プロピレン/1-ブテン共重合体である。
【0028】
また、炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位の種類、および、その含有割合は、オレフィン重合体が結晶性となるように選択される。
【0029】
具体的には、炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位が、プロピレン由来の構成単位および1-ブテン由来の構成単位を含む場合には、プロピレン由来の構成単位および1-ブテン由来の構成単位の総量100モル%に対して、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、例えば、50モル%以上、好ましくは、60モル%以上、また、例えば、95モル%以下、好ましくは、80モル%以下である。また、プロピレン由来の構成単位および1-ブテン由来の構成単位の総量100モル%に対して、1-ブテン由来の構成単位の含有割合は、例えば、5モル%以上、好ましくは、20モル%以上、また、例えば、50モル%以下、好ましくは、40モル%以下である。
【0030】
プロピレン由来の構成単位の含有割合、および、1-ブテン由来の構成単位の含有割合が、上記下限以上および上記上限以下であれば、低温ラミネート時の密着性に優れる。
【0031】
なお、上記した含有割合は、例えば、13C-NMR測定などの公知の手段で確認される(以下同様。)。
【0032】
結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体は、例えば、特許3939464号および国際公開2004/87775号パンフレットに記載の方法により得られる。詳しくは、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体は、メタロセン触媒の存在下で、炭素数2~20のα-オレフィンを重合させることにより得られる。
【0033】
結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体の、JIS K7122に従って測定される融解熱は、例えば、1J/g以上、好ましくは、10J/g以上、より好ましくは、20J/g以上、また、例えば、50J/g以下、好ましくは、40J/g以下である。
【0034】
融解熱が、上記下限以上および上記上限以下であれば、低温ラミネート時の密着性に優れる。
【0035】
また、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体の融点は、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上、また、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。
【0036】
なお、融点は、示差走査熱量計により測定することができる(以下同様。)。
【0037】
また、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体の、GPC法により測定される重量平均分子量は、例えば、10000以上、好ましくは、50000以上、また、例えば、500000以下、好ましくは、300000以下、より好ましくは、150000である。
【0038】
結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0039】
[単量体]
単量体は、酸無水物基を有する。単量体として、例えば、不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。
【0040】
不飽和カルボン酸無水物として、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、および、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物が挙げられる。単量体として、好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。
【0041】
単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0042】
[結晶性の変性オレフィン重合体の製造]
結晶性の変性オレフィン重合体は、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体を、単量体で変性することにより得られる。
【0043】
結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体を、単量体によって、変性するには、例えば、まず、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体を、公知の有機溶媒(例えば、トルエン)に溶解する。
【0044】
次いで、単量体およびラジカル重合開始剤を添加して、加熱、攪拌する。
【0045】
結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体における単量体の変性量(導入量)、すなわち、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体において単量体に由来する構成単位の含有割合は、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下、さらに好ましくは、4質量%以下、とりわけ好ましくは、2質量%以下、最も好ましくは、1質量%以下である。
【0046】
上記変性量が、上記下限以上および上記上限以下であれば、可使時間を向上できる。
【0047】
上記した変性量は、例えば、1H-NMR測定などの公知の手段で確認される。
【0048】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機パーオキシド、および、有機パーエステルが挙げられる。
【0049】
有機パーオキシドとしては、例えば、ジクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジクロルベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(パーオキシベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシド)ヘキサン、tert-ブチルパーオキシベンゾエートが挙げられる。また、有機パーエステルとしては、例えば、tert-ブチルパーアセテート、tert-ブチルパーフェニルアセテート、tert-ブチルパーイソブチレート、tert-ブチルパーsec-オクトエート、tert-ブチルパーピバレート、クミルパーピバレート、tert-ブチルパージエチルアセテートなどが挙げられる。さらに、ラジカル重合開始剤として、その他のアゾ化合物、例えば、アゾビス-イソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチルニトリルも挙げられる。
【0050】
ラジカル重合開始剤のうち、好ましくは、有機パーオキシド、より好ましくは、ジ-tert-ブチルパーオキシドが挙げられる。
【0051】
ラジカル重合開始剤の配合割合は、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、また、例えば、10質量部以下である。
【0052】
ラジカル重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0053】
加熱温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上、また、例えば、250℃以下である。反応時間は、例えば、1分以上、また、10時間以下である。
【0054】
これにより、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体を、単量体によって、変性し、結晶性の変性オレフィン重合体(結晶性の変性オレフィン重合体のワニス)が得られる。
【0055】
また、結晶性の変性オレフィン重合体の融点は、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上、また、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。
【0056】
また、結晶性の変性オレフィン重合体の、GPC法により測定される重量平均分子量は、例えば、10000以上、好ましくは、50000以上、また、例えば、500000以下、好ましくは、300000以下、より好ましくは、200000である。
【0057】
また、結晶性の変性オレフィン重合体において、酸無水物基に由来する環構造の開環率は、50%以上、また、90%以下である。
【0058】
上記開環率が、上記下限以上であれば、低温ラミネート時の密着性が向上する。
【0059】
一方、上記開環率が、上記下限未満であれば、低温ラミネート時の密着性が低下する。
【0060】
また、上記開環率が、上記上限以下であれば、可使時間が向上する。
【0061】
一方、上記開環率が、上記上限を超過すると、可使時間が低下する。
【0062】
つまり、詳しくは後述するが、上記開環率が高くなると、低温ラミネート時の密着性が向上する一方、上記開環率が小さくなると、可使時間が向上する傾向がある。
【0063】
詳しくは、低温ラミネート時の密着性の観点から、上記開環率は、50%以上、好ましくは、55%以上、より好ましくは、60%以上、さらに好ましくは、70%以上、また、90%以下、好ましくは、80%以下である。
【0064】
また、可使時間の観点から、上記開環率は、50%以上、好ましくは、55%以上、また、90%以下、好ましくは、80%以下、より好ましくは、70%以下、さらに好ましくは、60%以下である。
【0065】
また、上記開環率は、上記により製造した結晶性の変性オレフィン重合体を、溶剤(後述)に溶解し、そのときの溶解温度および溶解時間によって、調整することができる。具体的には、例えば、後述する接着組成物の調製において、結晶性の変性オレフィン重合体と、必要により配合される非結晶性の炭化水素系重合体(後述)との混合物を、溶剤(後述)に溶解させる場合における溶解温度および溶解時間によって、調整することができる。
【0066】
詳しくは、溶解温度が高い(または溶解時間が長いと)と、結晶性の変性オレフィン重合体および/または溶剤(後述)に含まれる水が取り除かれ、接着組成物中の水が少なくなる傾向がある。そうすると、水との反応による酸無水物基の開環を抑制でき、その結果、上記開環率を小さくできる。
【0067】
一方、溶解温度が低い(または溶解時間が短いと)と、結晶性の変性オレフィン重合体および/または溶剤(後述)に含まれる水が残存し、接着組成物中の水が多くなる傾向がある。そうすると、水との反応による酸無水物基の開環が、より一層進行しやすくなり、その結果、上記開環率を大きくできる。
【0068】
なお、上記開環率の測定方法は、後述する実施例で詳述する。
【0069】
また、接着組成物における結晶性の変性オレフィン重合体の含有割合については、後述する。
【0070】
<架橋剤>
架橋剤は、エポキシ化合物および/またはオキサゾリン化合物を含む。
【0071】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、脂肪族型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、および、アミン型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ化合物として、好ましくは、好ましくは、ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ化合物として、より好ましくは、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0072】
オキサゾリン化合物としては、例えば、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。オキサゾリン基含有ポリマーとしては、例えば、オキサゾリン基含有モノマーの単独重合体、および、オキサゾリン基含有モノマーとオキサゾリン基含有モノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0073】
オキサゾリン基含有モノマーとしては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4,4-ジメチル-2-オキサゾリンが挙げられる。
【0074】
オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸)、不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル)、不飽和アミド(例えば、(メタ)アクリルアミド)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル)、ビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル)、α-オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン)、および、不飽和芳香族モノマー(例えば、スチレン、α-メチルスチレン)が挙げられる。
【0075】
オキサゾリン化合物としては、好ましくは、オキサゾリン基含有モノマーとオキサゾリン基含有モノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が挙げられる。オキサゾリン化合物として、より好ましくは、オキサゾリン基含有ポリスチレンが挙げられる。
【0076】
架橋剤は、好ましくは、エポキシ化合物またはオキサゾリン化合物を含み、より好ましくは、低温ラミネート時の密着性および耐熱性を向上させる観点から、オキサゾリン化合物を含まず、エポキシ化合物を含む。
【0077】
架橋剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0078】
また、接着組成物における架橋剤の含有割合については、後述する。
【0079】
<非結晶性の炭化水素系重合体>
接着組成物は、低温ラミネート時の密着性および可使時間を向上させる観点から、必要により、非結晶性の炭化水素系重合体を含む。なお、非結晶性とは、融解熱が1J/g未満かつTgが0℃以下の化合物の性状と定義される。
【0080】
非結晶性の炭化水素系重合体は、炭化水素由来の構成単位を含む重合体である。炭化水素としては、好ましくは、低温密着性およびオレフィン基材との密着性の観点から、炭素数2~20のオレフィンが挙げられる。つまり、非結晶性の炭化水素系重合体は、好ましくは、炭素数2~20のオレフィン由来の構成単位を含むオレフィン重合体である。つまり、非結晶性の炭化水素系重合体は、好ましくは、炭素数2~20のオレフィンの重合体である。
【0081】
炭素数2~20のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、シス-2-ブテン、トランス-2-ブテン、イソブチレン(イソブテン)、1-ペンテン、シス-2-ペンテン、トランス-2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、2,3-ジメチル-2-ブテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および、1-エイコセンが挙げられる。炭素数2~20のオレフィンとして、好ましくは、炭素数2~4のオレフィンが挙げられる。炭素数2~20のオレフィンとして、より好ましくは、エチレン、プロピレン、および、イソブチレンが挙げられる。炭素数2~20のオレフィンとして、さらに好ましくは、エチレンおよびプロピレンの併用、イソブチレンの単独使用が挙げられる。つまり、非結晶性の炭化水素系重合体は、さらに好ましくは、エチレン/プロピレン共重合体、および、ポリイソブチレンである。
【0082】
また、炭化水素由来の構成単位の種類、および、その含有割合は、炭化水素系重合体が非結晶性となるように選択される。
【0083】
具体的には、炭化水素由来の構成単位が、エチレン由来の構成単位およびプロピレン由来の構成単位を含む場合には、エチレン由来の構成単位およびプロピレン由来の構成単位の総量100モル%に対して、エチレン由来の構成単位の含有割合は、例えば、40モル%以上、好ましくは、50モル%以上、また、例えば、80モル%以下、好ましくは、60モル%以下である。また、エチレン由来の構成単位およびプロピレン由来の構成単位の総量100モル%に対して、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、例えば、20モル%以上、好ましくは、40モル%以上、また、例えば、60モル%以下、好ましくは、50モル%以下である。
【0084】
エチレン由来の構成単位の含有割合、および、プロピレン由来の構成単位の含有割合が、上記下限以上および上記上限以下であれば、低温ラミネート時の密着性に優れる。
【0085】
非結晶性の炭化水素系重合体は、上記した結晶性の変性オレフィン重合体で例示した結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0086】
非結晶性の炭化水素系重合体の、200℃における動粘度は、例えば、1cSt以上、また、例えば、100000cSt以下である。また、非結晶性の炭化水素系重合体は、上記動粘度によって、非結晶性の炭化水素系合成油と非結晶性の炭化水素系半固体樹脂とに区別することができる。詳しくは、1cSt以上、好ましくは、10cSt以上、より好ましくは、100cSt以上、また、例えば、10000cSt以下、好ましくは、1000cSt以下、より好ましくは、500cSt以下の上記動粘度を有する非結晶性の炭化水素系重合体は、非結晶性の炭化水素系合成油である。また、10000cSt超過、好ましくは、30000cSt以上、また、100000cSt以下、好ましくは、60000cSt以下である上記動粘度を有する非結晶性の炭化水素系重合体は、非結晶性の炭化水素系半固体樹脂である。
【0087】
200℃における動粘度が、上記下限以上および上記上限以下であれば、低温ラミネート時の密着性を向上できる。
【0088】
なお、200℃における動粘度は、JIS K 2283に基づいて測定できる。
【0089】
また、非結晶性の炭化水素系重合体の、GPC法により測定される重量平均分子量は、例えば、5000以上、また、例えば、300000以下である。詳しくは、非結晶性の炭化水素系重合体が、非結晶性の炭化水素系合成油である場合には、上記重量平均分子量は、例えば、5000以上、好ましくは、10000以上、また、例えば、300000以下、好ましくは、100000以下、より好ましくは、50000以下、さらに好ましくは、20000以下である。また、非結晶性の炭化水素系重合体が、非結晶性の炭化水素系半固体樹脂である場合には、上記重量平均分子量は、例えば、5000以上、好ましくは、10000以上、より好ましくは、50000以上、さらに好ましくは、100000以上、さらに好ましくは、120000以上、また、例えば、300000以下、好ましくは、200000以下、より好ましくは、160000以下である。
【0090】
非結晶性の炭化水素系重合体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0091】
また、接着組成物における非結晶性の炭化水素系重合体の含有割合については、後述する。
【0092】
<触媒>
接着組成物は、架橋剤の架橋反応を促進する観点から、触媒を含むこともできる。触媒として、例えば、強塩基性第三級アミン(例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,6-ジアザビシクロ[3.4.0]-5-ノネン、ホスファゼン塩基を有するホスファゼン触媒が挙げられる。触媒として、好ましくは、強塩基性第三級アミンが挙げられる。触媒として、より好ましくは、DBUが挙げられる。
【0093】
触媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0094】
また、接着組成物における触媒の含有割合については、後述する。
【0095】
<添加剤>
接着組成物は、必要により、適宜の割合で添加剤を含むこともできる。
【0096】
添加剤として、例えば、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、揺変剤、増粘剤、粘着付与剤、表面調整剤、沈降防止剤、耐候剤、顔料分散剤、帯電防止剤、充填剤、防黴剤、および、シランカップリング剤が挙げられる。
【0097】
添加剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0098】
<接着組成物の調製>
接着組成物を調製するには、結晶性の変性オレフィン重合体と、架橋剤と、必要により配合される非結晶性の炭化水素系重合体と、必要により配合される触媒と、必要により配合される添加剤とを混合する。
【0099】
具体的には、まず、結晶性の変性オレフィン重合体と、必要により配合される非結晶性の炭化水素系重合体との混合物を、溶剤に溶解させ、樹脂組成物を調製する。つまり、このような場合には、樹脂組成物は、結晶性の変性オレフィン重合体と、必要により配合される非結晶性の炭化水素系重合体と、溶剤とを含む。
【0100】
溶剤として、例えば、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルキルエステル類、グリコールエーテルエステル類、エーテル類および極性非プロトン類が挙げられる。脂肪族炭化水素類として、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、および、オクタンが挙げられる。脂環族炭化水素類として、例えば、シクロヘキサン、および、メチルシクロヘキサンが挙げられる。芳香族炭化水素類として、例えば、トルエンおよびキシレンが挙げられる。ケトン類として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、および、シクロヘキサノンが挙げられる。アルキルエステル類として、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、および、酢酸イソブチルが挙げられる。グリコールエーテルエステル類として、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、および、エチル-3-エトキシプロピオネートが挙げられる。エーテル類として、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、および、ジオキサンが挙げられる。極性非プロトン類として、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、および、ヘキサメチルホスホニルアミドが挙げられる。
【0101】
溶剤として、好ましくは、脂環族炭化水素類およびアルキルエステル類が挙げられる。溶剤として、より好ましくは、メチルシクロヘキサンおよび酢酸エチルが挙げられる。
【0102】
溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0103】
溶剤の配合割合は、結晶性の変性オレフィン重合体と、必要により配合される非結晶性の炭化水素系重合体との総量100質量部に対して、例えば、200質量部以上、また、例えば、1000質量部以下である。
【0104】
溶解温度は、例えば、40℃以上、また、例えば、110℃以下である。
【0105】
上記したように、溶解温度を高くすると、上記開環率が小さくなる一方、溶解温度を低くすると、開環率が大きくなる傾向がある。
【0106】
詳しくは、上記開環率を小さくする観点から、溶解温度は、例えば、40℃以上、好ましくは、70℃以上、より好ましくは、90℃以下、さらに好ましくは、100℃以上、また、例えば、110℃以下である。
【0107】
また、上記開環率を大きくする観点から、溶解温度は、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上、また、例えば、110℃以下、好ましくは、90℃以下、より好ましくは、70℃以下である。
【0108】
溶解時間は、例えば、1時間以上、また、例えば、4時間以下である。
【0109】
上記したように、溶解時間を長くすると、上記開環率が小さくなる一方、溶解時間を短くすると、開環率が大きくなる傾向がある。
【0110】
これにより、樹脂組成物を調製する。
【0111】
また、樹脂組成物中の固形分の酸価は、例えば、1.00KOHmg/g以上、好ましくは、5.00KOHmg/g以上、また、例えば、20.00mg/g以下、好ましくは、10.00mg/g以下、より好ましくは、8.00mg/g以下である。
【0112】
なお、上記酸価の測定方法は、後述する実施例で詳述する。
【0113】
次いで、樹脂組成物に、架橋剤と、必要により配合される触媒と、必要により配合される添加剤とを配合する。
【0114】
これにより、接着組成物を調製する。このような接着組成物は、結晶性の変性オレフィン重合体と、必要により配合される非結晶性の炭化水素系重合体と、架橋剤と、必要により配合される触媒と、必要により配合される添加剤と、溶剤とを含む。
【0115】
接着組成物が、非結晶性の炭化水素系重合体を含む場合には、結晶性の変性オレフィン重合体の含有割合は、結晶性の変性オレフィン重合体および非結晶性の炭化水素系重合体の総量100質量部に対して、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上、また、例えば、90質量部以下である。また、非結晶性の炭化水素系重合体の含有割合は、結晶性の変性オレフィン重合体および非結晶性の炭化水素系重合体の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0116】
架橋剤の含有割合は、結晶性の変性オレフィン重合体100質量部に対して、例えば、5質量以上、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
【0117】
また、接着組成物が、非結晶性の炭化水素系重合体を含む場合には、架橋剤の含有割合は、結晶性の変性オレフィン重合体および非結晶性の炭化水素系重合体の総量100質量部に対して、例えば、5質量以上、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、12質量部以下である。
【0118】
触媒の含有割合は、結晶性の変性オレフィン重合体100質量部に対して、例えば、0.1質量以上、好ましくは、0.5質量部以上、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0119】
また、接着組成物が、非結晶性の炭化水素系重合体を含む場合には、触媒の含有割合は、結晶性の変性オレフィン重合体および非結晶性の炭化水素系重合体の総量100質量部に対して、例えば、0.1質量以上、好ましくは、0.5質量部以上、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下、より好ましくは、1質量部以下である。
【0120】
また、接着組成物は、上記調製時および/または調製後に、上記溶剤で希釈することもできる。
【0121】
接着組成物が希釈される場合において、接着組成物の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、また、例えば、70質量%以下である。
【0122】
<作用効果>
接着組成物では、結晶性の変性オレフィン重合体において、酸無水物基に由来する環構造の開環率が、50%以上90%以下である。そのため、低温ラミネート時の密着性および可使時間に優れる。
【0123】
詳しくは、上記開環率が高くなると、極性が高くなり、架橋剤(極性の高い架橋剤)との相溶性が向上する。そのため、架橋反応が進行しやすくなり、低温ラミネート時の密着性が向上する。
【0124】
一方、上記開環率が低くなると、極性が低くなり、架橋剤(極性の高い架橋剤)との相溶性が低くなる。そのため、架橋反応が進行しにくくなり、可使時間が向上する。
【0125】
つまり、この接着組成物では、上記開環率を、50%以上90%以下とすることで、低温ラミネート時の密着性および可使時間の両方を向上させることができる。
【0126】
また、この接着組成物では、まず、結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体を、酸無水物基を有する単量体によって変性して、結晶性の変性オレフィン重合体を製造した後に、この結晶性の変性オレフィン重合体を、溶剤に溶解させ、樹脂組成物を調製する際に、酸無水物基に由来する環構造を開環して、上記開環率を調整している。換言すれば、変性後に、上記開環率を調整している。
【0127】
そのため、このような方法によれば、変性量を変更しなくても、上記開環率を調整することができる。
【0128】
一方、予め、開環した単量体または不飽和カルボン酸(例えば、マレイン酸)で、α-オレフィン重合体を変性して、その変性量によって、上記開環率を調整することも検討される。
【0129】
しかし、カルボン酸は、α-オレフィン重合体との相溶性が低いため、変性量を高くすることができない。そのため、上記開環率を十分に調整することができないという不具合がある。
【0130】
これに対して、上記方法によれば、変性後に、上記開環率を調整している。そのため、上記開環率を容易に調整することができる。また、α-オレフィン重合体と、酸無水物基を有する単量体とは、相溶性に優れる。そのため、上記変性も容易に実施でき、生産性に優れる。
【0131】
また、接着組成物は、触媒を含まなくても、低温ラミネート時の密着性に優れる。
【0132】
詳しくは、上記したように、接着組成物では、上記開環率を、50%以上90%以下とすることで、架橋反応を進行させることができる。そのため、接着組成物が、触媒を含まなくても、低温ラミネート時の密着性に優れる。
【0133】
また、接着組成物が、触媒を含む場合には、酸無水物基と、触媒とが過剰反応し、その結果、触媒が失活する場合がある。一方、この接着組成物では、上記開環率を高くする(50%以上90%以下にする)ことで、上記失活を抑制でき、その結果、低温ラミネート時の密着性を向上させることができる。
【0134】
また、接着組成物では、架橋剤が、エポキシ化合物および/またはオキサゾリン化合物を含む。そのため、耐熱性に優れる。
【0135】
詳しくは、特許文献1の接着剤組成物は、酸無水物基を有するポリオレフィンの開環率を低くすることで、可使時間を向上させる一方、反応性の高いイソシアネート化合物(架橋剤)を用いることで、低温ラミネート時の密着性を向上させているが、架橋剤として、イソシアネート化合物を用いているため、耐熱性が低くなるという不具合がある。
【0136】
これに対して、上記接着組成物では、耐熱性を向上させるために、エポキシ化合物および/またはオキサゾリン化合物を含む架橋剤を用いている。一方、このような架橋剤は、反応性が低いため、イソシアネート化合物と比べて、低温ラミネート時の密着性が低下する傾向がある。そこで、上記接着組成物では、上記開環率をより高くすることで、低温ラミネート時の密着性を向上させている。
【0137】
以上より、上記接着組成物によれば、低温ラミネート時の密着性、可使時間および耐熱性を向上させることができる。
【0138】
接着組成物は、低温ラミネート時の密着性、可使時間および耐熱性に優れるため、例えば、各種部品(例えば、電子部品、光学部品、および、電池部品)の接着剤(ドライラミネート接着剤)として、好適に用いることができ、とりわけ、電池ケース用包材の接着剤として、好適に用いることができる。
【0139】
以下の説明では、上記接着組成物の乾燥物からなる接着剤層を備える積層体、その積層体を備える包材、および、その包材を備える電池ケース用包材について、詳述する。
【0140】
2.積層体
図1を参照して、本発明の積層体の一実施形態を説明する。
【0141】
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0142】
積層体10は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。積層体10は、厚み方向と直交する面方向に延びる。積層体10は、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0143】
積層体10は、第1接着剤層1と、基材2とを厚み方向一方側に向かって順に備える。具体的には、積層体10は、第1接着剤層1と、第1接着剤層1の上面(厚み方向一方面)に直接配置される基材2とを備える。
【0144】
積層体10の厚みは、特に限定されない。積層体10の厚みは、例えば、10μm以上、また、例えば、150μm以下である。
【0145】
[第1接着剤層]
第1接着剤層1は、任意の被着体と、基材2とを接着するための接着層である。第1接着剤層1は、接着組成物の乾燥物からなる。
【0146】
次いで、第1接着剤層1を配置(形成)するには、詳しくは後述するが、接着組成物を、基材2の厚み方向他方面に塗布し、必要により加熱し、乾燥させる。これにより、第1接着剤層1を配置(形成)する。
【0147】
第1接着剤層1の厚みは、例えば、1μm以上、また、例えば、50μm以下である。
【0148】
[基材]
基材2は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。
【0149】
基材2の材料は、特に限定されない。基材2の材料としては、例えば、高分子材料、および、金属材料が挙げられる。高分子材料としては、例えば、オレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、および、ポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。金属材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、チタン、コバルト、インジウム、および、クロムが挙げられる。
【0150】
基材2の厚みは、特に限定されない。基材2の厚みは、例えば、10μm以上、また、例えば、100μm以下である。
【0151】
[積層体の製造]
図2Aおよび
図2Bを参照して、積層体の製造方法の一実施形態を説明する。
【0152】
積層体10の製造方法は、基材2を準備する第1工程と、基材2の厚み方向他方面に接着組成物を塗布し、基材2の厚み方向他方面に、第1接着剤層1を配置(形成)する第2工程とを備える。
【0153】
第1工程では、
図2Aに示すように、基材2を準備する。
【0154】
第2工程では、
図2Bに示すように、基材2の厚み方向他方面に、第1接着剤層1を配置(形成)する。
【0155】
基材2の厚み方向他方面に、第1接着剤層1を配置(形成)するには、基材2の厚み方向他方面に接着組成物を塗布する。
【0156】
基材2の厚み方向他方面に接着組成物を塗布するには、まず、必要により、基材2の厚み方向他方面に表面処理を施す。
【0157】
表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、および、ケン化処理が挙げられ、好ましくは、コロナ処理が挙げられる。
【0158】
次いで、基材2の厚み方向他方面に接着組成物を、公知の方法により塗布し、必要により加熱し、乾燥させる。
【0159】
加熱温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上、また、例えば、140℃以下である。また、加熱時間は、例えば、10秒以上、また、例えば、120秒以下である。
【0160】
これにより、基材2の厚み方向他方面に、接着組成物の乾燥物である第1接着剤層1を配置(形成)する。以上により、積層体10を製造する。
【0161】
このような積層体10は、接着組成物の乾燥物からなる第1接着剤層1を備える。そのため、第1接着剤層1を介して、この積層体10を、任意の被着体と接着する場合において、低温ラミネート時の密着性および耐熱性に優れる。
【0162】
3.包材
図3を参照して、本発明の包材の一実施形態を説明する。
【0163】
包材20は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。包材20は、厚み方向と直交する面方向に延びる。包材20は、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0164】
包材20は、内層3と、積層体10(第1接着剤層1と基材2とを厚み方向一方側に向かって順に備える積層体10)とを厚み方向一方側に向かって順に備える。具体的には、包材20は、内層3と、内層3の上面(厚み方向一方面)に直接配置される積層体10とを備える。
【0165】
包材20の厚みは、特に限定されない。包材20の厚みは、例えば、15μm以上、また、例えば、300μm以下である。
【0166】
[内層]
内層3は、包材20を袋状にした場合に、内側となる層である。
【0167】
内層3の材料は、包材20を袋状にした場合に、ヒートシール性の有無およびその袋に収容される収容物の種類によって、適宜選択される。詳しくは後述するが、収容物が、電解液である場合には、ポリオレフィンフィルムが選択される。
【0168】
内層3の厚みは、特に限定されない。内層3の厚みは、例えば、30μm以上、また、例えば、600μm以下である。
【0169】
[包材の製造]
包材20を製造するには、積層体10の厚み方向他方面(第1接着剤層1の厚み方向他方面)に、内層3を配置し、第1接着剤層1をエージングする。これにより、第1接着剤層1が硬化し、内層3と、積層体10とが接着する。以上により、包材20を製造する。
【0170】
エージング温度は、包材20が、積層体10を備えるため、低温である。具体的には、20℃以上、好ましくは、40℃以上、また、例えば、80℃以下である。また、エージング時間は、例えば、1日以上、また、例えば、7日以下、好ましくは、5日以下である。
【0171】
包材20は、積層体10を備える。そのため、低温ラミネート時の密着性および耐熱性に優れる。
【0172】
4.電池ケース用包材および電池
図4を参照して、本発明の電池ケース用包材、および、この電池ケース用包材を用いた電池の一実施形態を説明する。
【0173】
電池30は、電池ケース用包材31と、電池ケース用包材31に包装される電解液32とを備える。また、電池30は、電池ケース用包材31内に収容される正極33、負極34、および、セパレータ35を備える。
【0174】
[電池ケース用包材]
電池ケース用包材31は、電池ケース用包材31における内層3が、電解液32が接触するように、袋状に構成されている。具体的には、電池ケース用包材31は、内層3が電解液32に接触するように、電解液32を包装している。
【0175】
電池ケース用包材31は、
図4におけるAの拡大図に示すように、包材20(内層3と第1接着剤層1と基材2とを厚み方向一方側に向かって順に備える包材20)と、第2接着剤層4と、外層5とを厚み方向一方側に向かって順に備える。具体的には、電池ケース用包材31は、包材20と、包材20の上面(厚み方向一方面)に直接配置される第2接着剤層4と、第2接着剤層4の上面(厚み方向一方面)に直接配置される外層5とを備える。
【0176】
上記したように、包材20は、内層3と第1接着剤層1と基材2とを厚み方向一方側に向かって順に備える。電池ケース用包材31において、内層3は、電解液32に対する耐薬品性(耐電解液性)の観点から、ポリオレフィンフィルムが選択される。ポリオレフィンフィルムとしては、例えば、ポリエチレン系フィルム、および、ポリプロピレン系フィルムが挙げられる。ポリエチレン系フィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)、および、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)が挙げられる。ポリプロピレン系フィルムとしては、例えば、延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)、単軸延伸ポリプロピレンフィルム、および、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)が挙げられる。ポリオレフィンフィルムとして、好ましくは、ポリプロピレン系フィルムが挙げられる。ポリオレフィンフィルムとして、より好ましくは、延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)が挙げられる。
【0177】
また、電池ケース用包材31において、基材2の材料として、好ましくは、金属材料が挙げられる。基材2の材料として、より好ましくは、アルミニウムが挙げられる。
【0178】
第2接着剤層4は、公知の接着剤から形成される。また、公知の接着剤に代えて、上記の接着組成物を用いることもできる。
【0179】
第2接着剤層4の厚みは、特に限定されない。内層3の厚みは、例えば、1μm以上、また、例えば、50μm以下である。
【0180】
外層5は、電池ケース用包材31の外側となる層である。
【0181】
外層5の材料としては、例えば、上記した基材2で例示した高分子材料が挙げられ、好ましくは、ポリアミド樹脂、より好ましくは、ナイロンが挙げられる。
【0182】
外層5の厚みは、特に限定されない。外層5の厚みは、例えば、10μm以上、また、例えば、100μm以下である。
【0183】
そして、電池ケース用包材31は、包材20の厚み方向一方面(基材2の厚み方向一方面)に、公知の接着剤(または接着組成物)を塗布して形成される第2接着剤層4を介して、外層5を配置することにより製造される。
【0184】
電池ケース用包材31は、包材20を備える。そのため、低温ラミネート時の密着性および耐熱性に優れる。
【0185】
また、
図4では、電池ケース用包材31の両端(互いに対向する内層3)をヒートシールによって、封止することにより、袋状に構成されている。
【0186】
[電解液]
電解液32は、特に限定されず、例えば、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジメチルカーボネート、および、6フッ化リン酸リチウムなどのリチウム塩を含有する。
【0187】
正極33および負極34は、電解液32に接触するように、かつ、互いに間隔を隔てて対向配置されている。セパレータ35は、正極33および負極34によって挟まれるように配置されている。
【0188】
上記した電池30は、例えば、リチウムイオン2次電池として用いられる。このような場合には、電池ケース用包材31は、リチウムイオン2次電池ケース用包材として用いられる。
【実施例0189】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0190】
<成分の詳細>
各製造例、各実施例、および、各比較例で用いた成分の、商品名および略語について、詳述する。
オパノールB15SFN:非結晶性の炭化水素系重合体、ポリイソブチレン、重量平均分子量:106,000、JIS K 2283に従って測定される200℃での動粘度:52,000cSt、BASF社製
jER152:フェノールノボラック型エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製
RPS-1005:オキサゾリン基含有ポリスチレン、日本触媒社製
D-127N:イソシアネート化合物、三井化学株式会社製
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、サンアプロ社製
【0191】
<結晶性の変性オレフィン重合体の製造>
製造例1
[結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体の製造]
充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサン900mlおよび1-ブテン90g仕込んだ。次いで、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧7kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドをZr原子に換算して0.001ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を7kg/cm2Gに保ちながら30分間重した。これにより、プロピレン/1-ブテン共重合体(結晶性の炭素数2~20のα-オレフィン重合体)を製造した。重合後、脱気して大量のメタノール中で、プロピレン/1-ブテン共重合体を回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。
【0192】
プロピレン/1-ブテン共重合体の融点は、78.3℃であった。プロピレン/1-ブテン共重合体の、JIS K7122に従って測定される融解熱は、29.2J/gであった。プロピレン/1-ブテン共重合体の、GPC法により測定される重量平均分子量は、330000であった。プロピレン/1-ブテン共重合体のプロピレン含有量は67.2モル%であった。
【0193】
[結晶性の変性オレフィン重合体の製造]
プロピレン/1-ブテン共重合体3kgを10Lのトルエンに加え、窒素雰囲気下で145℃に昇温し、プロピレン/1-ブテン共重合体をトルエンに溶解させた。さらに、攪拌下で、単量体としての無水マレイン酸382g、ラジカル重合開始剤としてのジ-tert-ブチルパーオキシド175gを4時間かけて、それに供給し、次いで、145℃で2時間攪拌した。これにより、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体を製造した。その後、これを冷却し、多量のアセトンを投入し、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体を沈殿させ、次いで、ろ過し、アセトンで洗浄した後、真空乾燥した。
【0194】
無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体の融点は、75.8℃であった。無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体の、JIS K7122に従って測定される融解熱は、28.6J/gであった。無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体の、GPC法により測定される重量平均分子量は、100000であった。無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体において、プロピレン/1-ブテン共重合体における単量体の変性量(導入量)は、0.8質量%であった。
【0195】
<非結晶性の炭化水素系重合体の製造>
製造例2
充分窒素置換した攪拌翼付き連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン1リットルを加え、96mmol/Lに調整したエチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C2H5)1.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を、500ml/時間の量で連続的に1時間供給した。その後、さらに、触媒として16mmol/lに調整したVO(OC2H5)Cl2のヘキサン溶液を500ml/時間、および、ヘキサンを500ml/時間の量で、連続的に供給した。一方、重合器上部から、重合液器内の重合液が常に1リットルになるように重合液を連続的に抜き出した。次に、バブリング管を用いてエチレンガスを47L/時間、プロピレンガスを47L/時間、水素ガスを20L/時間の量で供給した。共重合反応は、重合器外部に取り付けられたジャケットに冷媒を循環させることにより35℃で実施した。得られた重合溶液は、塩酸で脱灰した後に、大量のメタノールに投入して析出させた後、130℃で24時間減圧乾燥した。これにより、エチレン/プロピレン共重合体を製造した。
【0196】
エチレン/プロピレン共重合体のエチレン含量は55.9モル%であった。エチレン/プロピレン共重合体の重量平均分子量は、14000であった。エチレン/プロピレン共重合体の、JIS K 2283に従って測定される200℃での動粘度は、132cStであった。
【0197】
<接着組成物の調製>
実施例1
[樹脂組成物の調製]
製造例1の結晶性の変性オレフィン重合体100質量部を、メチルシクロヘキサン/酢酸エチル=80/20の混合溶剤400質量部に加え、60℃(溶解温度)で3時間(溶解時間)攪拌し、加熱溶解した。これにより、樹脂組成物500質量部(固形分濃度20質量%、結晶性の変性オレフィン重合体100質量部および溶剤400質量部)を調製した。樹脂組成物中の固形分の酸価は7.77KOHmg/gであった。また、結晶性の変性オレフィン重合体において、酸無水物基に由来する環構造の開環率は、78.6%であった。
【0198】
[接着組成物の調製]
樹脂組成物500質量部と、架橋剤(jER152 10質量部を40質量部の酢酸エチルに溶解させた溶液50質量部)とを混合した。これにより、接着組成物を調製した。
【0199】
実施例2~実施例7、および、比較例1~比較例6
実施例1と同様の手順に基づいて、接着組成物を調製した。但し、実施例3、実施例4、比較例1~比較例3、比較例5および比較例6では、樹脂組成物の調製において、ディーンスターク装置を取り付けた攪拌翼付きフラスコに、結晶性の変性オレフィン重合体と、必要により配合される非結晶性の炭化水素系重合体と、メチルシクロヘキサン320質量部とを配合し、還流条件下で、表1に記載の溶解温度および表1に記載の溶解時間で攪拌した。その後、60℃まで冷却し、酢酸エチル80質量部を配合した。これにより、樹脂組成物を調製した。
【0200】
また、実施例2、実施例4~実施例6、および、比較例3~比較例5では、接着組成物の調製において、触媒として、DBU0.8質量部を7.2質量部の酢酸エチルに溶解させた溶液8.0質量部を用いた。
【0201】
<評価>
[酸価]
三角フラスコに、トルエン35mlおよびn-ブタノール15mlを加え、さらに、特級ブロモチモールブルー0.1gを、19%エタノール100mlで希釈した希釈溶液を0.8g加え、溶液を調製した。次いで、この溶液に、N/KOH-エタノール溶液を、溶液が緑色を呈するまで加え、次いで、各実施例および各比較例の樹脂組成物をそれぞれ5g加えて完全に溶解させた。そして、この溶液を、N/KOH-エタノール溶液で青色を呈するまで滴定し、滴定量を測定し、下記式(1)に基づいて、酸価を算出した。その結果を表1に示す。
酸価(KOHmg/g)=(サンプル滴定量×ファクター×5.61)/サンプル重量 (1)
【0202】
[開環率]
各実施例および各比較例の樹脂組成物を、離型PETに、塗工し、40℃30分間乾燥させ、乾燥膜厚50μmの塗膜を作製した。そして、この塗膜に対して、フーリエ変換赤外分光法により、このフィルムの赤外吸収スペクトルを測定し、下記式(2)に基づいて、開環率を算出した。その結果を表1に示す。
開環率(%)=D1715cm-1/(D1715cm-1+D1780cm-1) (2)
D1715cm-1:開環した酸無水物基の吸光度
D1780cm-1:酸無水物基の吸光度
【0203】
[低温ラミネート時の密着性]
アルミニウム箔の厚み方向他方面に、各実施例および各比較例の接着組成物を塗布し、120℃で30秒間乾燥させた(乾燥膜厚約3μm)。これにより、アルミニウム箔の厚み方向他方面に、第1接着剤層を配置(形成)した。次いで、第1接着剤層の厚み方向他方面に、厚さ40μmのCPPフィルム(片面コロナ処理)を配置した(第1接着剤層の厚み方向他方面と、CPPフィルムのコロナ処理面とを60℃のホットプレート上で貼り合わせた。)。その後、60℃で、3日間エージングした。これにより、積層体を製造した。
【0204】
得られた積層体を、幅15mmの大きさに切り出して試験片を作製し、この試験片について、万能引張測定装置を用いて、23℃雰囲気下、クロスヘッド速度50mm/分にて、180°剥離試験を実施して、アルミニウム箔/CPPの剥離強度を測定した。その結果を表1に示す。また、23℃雰囲気下での密着性について、下記基準に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
(基準)
◎:アルミニウム箔/CPPの剥離強度が、11N/15mm以上であった。
〇:アルミニウム箔/CPPの剥離強度が、8N/15mm以上、11N/15mm未満であった。
×:アルミニウム箔/CPPの剥離強度が、8N/15mm未満であった。
【0205】
[耐熱性]
上記試験片について、万能引張測定装置を用いて、120℃雰囲気下、クロスヘッド速度50mm/分にて、180°剥離試験を実施して、AL/CPPの耐熱強度を測定した。また、120℃雰囲気下での密着性について、下記基準に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
(基準)
◎:アルミニウム箔/CPPの剥離強度が、3N/15mm以上であった。
〇:アルミニウム箔/CPPの剥離強度が、1N/15mm以上、3N/15mm未満であった。
×:アルミニウム箔/CPPの剥離強度が、1N/15mm未満であった。
【0206】
[可使時間]
各実施例および各比較例の接着組成物を50ccのバイアル瓶に入れ、25℃の水浴に浸漬させた。浸漬後30分および24時間後の粘度を測定し、下記式(3)に基づき、増粘率を算出した。
増粘率(%)=浸漬後24時間後の粘度/浸漬後30分後の粘度×100 (3)
【0207】
また、可使時間について、下記基準に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
(基準)
◎:増粘率が、110%以下であった。
〇:増粘率が。110%を超過し、200%以下であった、
×:ゲル化した。
【0208】
<考察>
開環率が50%以上90%以下である実施例1~実施例7は、低温ラミネート時の密着性および可使時間に優れるとわかる。
【0209】
一方、開環率が50%未満である比較例1~比較例3は、可使時間および耐熱性に優れるものの、低温ラミネート時の密着性が低下するとわかる。
【0210】
また、エポキシ化合物および/またはオキサゾリン化合物を含む架橋剤を用いる実施例1~実施例7は、耐熱性に優れるとわかる。
【0211】
一方、架橋剤として、イソシアネート化合物を用いる比較例4~比較例6は、耐熱性が低下するとわかる。
【0212】
また、比較例5および比較例6によれば、開環率が50%未満であっても、架橋剤として、イソシアネート化合物を用いれば、低温ラミネート時の密着性を向上できる一方、可使時間が低下することがわかる。
【0213】
これに対して、実施例1~実施例7では、イソシアネート化合物よりも、反応性の低い架橋剤(エポキシ化合物および/またはオキサゾリン化合物を含む架橋剤)を用いることで、可使時間を向上させ、また、開環率(50%~90%)を高くすることで、低温ラミネート時の密着性を向上させることができるとわかる。また、上記架橋剤を用いることで、耐熱性を向上させることができるとわかる。
【0214】
以上より、開環率が50%以上90%以下であり、かつ、架橋剤がエポキシ化合物および/またはオキサゾリン化合物を含めば、低温ラミネート時の密着性、可使時間および耐熱性を向上できるとわかる。
【0215】