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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180319
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】頭付きネジ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20231214BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20231214BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
F16B35/00 N
F16B35/00 Q
F16B35/00 T
F16B35/00 A
B29C45/26
B29C45/14
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093511
(22)【出願日】2022-06-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】513157110
【氏名又は名称】タツミ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129001
【弁理士】
【氏名又は名称】林 崇朗
(72)【発明者】
【氏名】山崎 宏文
(72)【発明者】
【氏名】西垣 泰裕
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA40
4F202AB25
4F202AD03
4F202AD05
4F202AD15
4F202AH06
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CQ01
4F202CQ05
4F206AA40
4F206AB25
4F206AD03
4F206AD05
4F206AD15
4F206AH06
4F206JA07
4F206JB12
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】質量の増加を抑制しながら強度を向上させた頭付きネジを提供する。
【解決手段】頭付きネジは、頭部から延びた軸部に雄ネジ山が形成された頭付きネジである。この頭付きネジは、樹脂成形部と、補強軸とを備える。樹脂成形部は、合成樹脂材料から成り、頭部および軸部を一体的に構成する。補強軸は、頭部から軸部に亘って樹脂成形部に埋設され、軸部の軸心上に軸心を有する棒状を成す。補強軸は、凹凸が形成された外周面と、軸部の軸心に沿って頭部および軸部の少なくとも一方の端に開放された軸孔とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部から延びた軸部に雄ネジ山が形成された頭付きネジであって、
合成樹脂材料から成り、前記頭部および前記軸部を一体的に構成する樹脂成形部と、
前記頭部から前記軸部に亘って前記樹脂成形部に埋設され、前記軸部の軸心上に軸心を有する棒状を成す補強軸と
を備え、
前記補強軸は、
凹凸が形成された外周面と、
前記軸部の軸心に沿って前記頭部および前記軸部の少なくとも一方の端に開放された軸孔と
を有する、頭付きネジ。
【請求項2】
前記補強軸は、更に、前記軸孔の内周面に形成され、前記軸部の前記雄ネジ山に対して逆ネジの関係となる雌ネジ山を有する、請求項1に記載の頭付きネジ。
【請求項3】
頭部から延びた軸部に雄ネジ山が形成された頭付きネジの製造方法であって、
凹凸が形成された外周面と、軸心に沿って少なくとも一方の端に開放された軸孔と、を有する棒状を成す補強軸を用意する工程と、
前記補強軸の前記軸孔に位置決めピンを挿入した状態で、前記頭付きネジの金型における前記頭部に対応する部位から前記軸部に対応する部位に亘って前記補強軸の軸心が前記軸部に対応する部位の軸心に重なる位置に前記補強軸を位置決めする工程と、
前記補強軸が位置決めされた前記金型に合成樹脂材料を射出することによって、前記頭部および前記軸部を構成する樹脂成形部を、前記補強軸の周りに一体的に成形する工程と
を含む、頭付きネジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、頭付きネジ及びその製造方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
頭付きネジは、ボルトとも呼ばれ、頭部から延びた軸部に雄ネジ山が形成されたネジである。頭付きネジには、金属製のもののほか、合成樹脂(プラスチック)製のものが知られている。特許文献1には、プラスチック製の芯材の外周にガラスパウダー入りの熱可塑性プラスチック材料を積層した頭付きネジが記載されている。特許文献2には、軸径方向に放射状に配向された繊維質補強材が包埋されたプラスチック製の頭付きネジが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-197809号公報
【特許文献2】特開平7-217629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成樹脂製の頭付きネジは、金属製のものと比較して軽量であるものの強度に劣り、特に頭部付近の軸部において破断し易いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する技術は、以下の形態として実現できる。
【0006】
(1)本明細書に開示する一形態における頭付きネジは、頭部から延びた軸部に雄ネジ山が形成された頭付きネジである。この頭付きネジは、樹脂成形部と、補強軸とを備える。樹脂成形部は、合成樹脂材料から成り、前記頭部および前記軸部を一体的に構成する。補強軸は、前記頭部から前記軸部に亘って前記樹脂成形部に埋設され、前記軸部の軸心上に軸心を有する棒状を成す。前記補強軸は、凹凸が形成された外周面と、前記軸部の軸心に沿って前記頭部および前記軸部の少なくとも一方の端に開放された軸孔とを有する。この形態の頭付きネジによれば、補強軸によって頭部から軸部に亘る強度を向上できる上、樹脂成形部に食い込んだ補強軸の外周面の凹凸によって樹脂成形部と補強軸との分離を防止するとともに、軸孔によって補強軸による質量の増加を抑制できる。また、軸孔に相応のピンを挿入して軸心周りに頭付きネジと共にピンを回転させて偏心による揺動の有無を観察することによって、補強軸の芯ずれの有無を容易に検査できる。
【0007】
(2)上記形態の頭付きネジにおいて、前記補強軸は、更に、前記軸孔の内周面に形成され、前記軸部の前記雄ネジ山に対して逆ネジの関係となる雌ネジ山を有してもよい。この形態の頭付きネジによれば、仮に破断して頭部から分離した軸部が取付先の雌ネジに取り残された場合であっても、その軸部に残された補強軸の雌ネジ山に相応のボルトを締め込むことによって、取付先に取り残された軸部を除去できる。
【0008】
(3)本明細書に開示する一形態における頭付きネジの製造方法は、頭部から延びた軸部に雄ネジ山が形成された頭付きネジの製造方法である。この製造方法は、凹凸が形成された外周面と、軸心に沿って少なくとも一方の端に開放された軸孔と、を有する棒状を成す補強軸を用意する工程と;前記補強軸の前記軸孔に位置決めピンを挿入した状態で、前記頭付きネジの金型における前記頭部に対応する部位から前記軸部に対応する部位に亘って前記補強軸の軸心が前記軸部に対応する部位の軸心に重なる位置に前記補強軸を位置決めする工程と;前記補強軸が位置決めされた前記金型に合成樹脂材料を射出することによって、前記頭部および前記軸部を構成する樹脂成形部を、前記補強軸の周りに一体的に成形する工程とを含む。この形態における頭付きネジの製造方法によれば、位置決めピンを挿入した状態で補強軸を金型に位置決めするため、樹脂成形部に対する補強軸の芯ずれを防止しながら、補強軸によって頭部から軸部に亘って強度を向上させた頭付きネジを製造できる。
【0009】
本明細書に開示する技術は、頭付きネジおよびその製造方法とは異なる種々の形態で実現できる。本明細書に開示する技術は、例えば、頭付きネジを備える機器、頭付きネジの製造装置などの形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態のボルトを示す説明図である。
図2】ボルトを製造する様子を示す説明図である。
図3】第2実施形態のボルトを示す説明図である。
図4】第3実施形態のボルトを示す説明図である。
図5】第4実施形態のボルトを示す説明図である。
図6】第5実施形態のボルトを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施形態
図1は、第1実施形態のボルト100を示す説明図である。図1(a)は、ボルト100を示す上面図である。図1(b)は、ボルト100を示す正面図である。図1のXYZ軸は、ボルト100における各部の位置関係を示す座標系である。図1のXYZ軸における各軸は、他の軸とそれぞれ直交する。図1のZ軸は、ボルト100における軸部130の軸心AX1に平行な軸である。+Z軸方向は、ボルト100の軸部130から頭部120へ向かう方向である。-Z軸方向は、+Z軸方向の逆方向である。
【0012】
ボルト100は、頭部120から延びた軸部130に雄ネジ山134が形成された頭付きネジである。本実施形態では、ボルト100は、頭部120に六角形の工具穴124を有する六角穴付きボルトである。ボルト100は、航空機、航空機、電気製品など各種の機器における部品同士の固定に利用可能である。
【0013】
ボルト100は、樹脂成形部110と、補強軸160とを備える。ボルト100は、補強軸160の周りに樹脂成形部110をインサート成形した製品である。
【0014】
ボルト100の樹脂成形部110は、合成樹脂(プラスチック)材料から成り、頭部120および軸部130を一体的に構成する。樹脂成形部110の材料は、射出成形可能な溶融特性を有するとともにネジとしての機械特性を有する合成樹脂材料であればよい。例えば、樹脂成形部110の材料は、熱可塑性ポリイミド(TPI:Thermoplastic polyimide)樹脂、ポリベンゾイミダゾール(PBI:Polybenzimidazol)樹脂であってもよい。
【0015】
ボルト100の補強軸160は、軸部130の軸心AX1上に軸心を有する棒状を成す。補強軸160の形状は、本実施形態では円筒状であるが、他の実施形態では多角形断面の筒状であってもよい。補強軸160は、頭部120から軸部130に亘って樹脂成形部110に埋設されている。本実施形態では、補強軸160は、頭部120における工具穴124の底から、軸部130の端部132に亘って樹脂成形部110に埋設されている。
【0016】
補強軸160の材料は、樹脂成形部110の合成樹脂材料よりも引張強度、圧縮強度および曲げ強度の少なくとも1つに優れた材料であればよい。補強軸160の材料は、例えば、真鍮、鉄、アルミニウムなどの金属であってもよいし、炭素繊維強化プラスチックであってもよい。
【0017】
補強軸160の外周面164には、凹凸が形成されている。本実施形態では、外周面164には、ローレット加工による凹凸が形成されている。他の実施形態では、外周面164の凹凸は、軸心AX1に直交する溝による凹凸であってもよいし、軸心AX1に沿った溝による凹凸であってもよいし、螺旋状の溝による凹凸であってもよい。また、外周面164の凹凸は、点状に分布する複数の突起による凹凸であってもよいし、点状に分布する複数の穴による凹凸であってもよい。
【0018】
補強軸160は、軸心AX1に沿った軸孔162を有する。軸孔162は、補強軸160を貫通する貫通孔である。軸孔162は、工具穴124を介して頭部120の端部122に開放されているとともに、軸部130の端部132に開放されている。
【0019】
図2は、ボルト100を製造する様子を示す説明図である。ボルト100を製造する際、作業者は、補強軸160を用意する。補強軸160を容易する工程において、作業者は、補強軸160に軸孔162を形成するとともに、補強軸160の外周面164に凹凸を形成する。
【0020】
補強軸160を用意した後、作業者は、補強軸160の軸孔162に位置決めピン812,830を挿入した状態で、ボルト100の金型810,820に補強軸160を位置決めする。これによって、補強軸160は、金型810,820における頭部120に対応する部位から軸部130に対応する部位に亘って補強軸160の軸心が軸部130に対応する部位の軸心AX1に重なるように位置決めされる。
【0021】
補強軸160を位置決めした後、作業者は、補強軸160が位置決めされた金型810,820に合成樹脂材料を射出することによって、頭部120および軸部130を構成する樹脂成形部110を補強軸160の周りに一体的に成形する。その後、作業者は、金型810,820からボルト100を取り出す。これによって、ボルト100が完成する。
【0022】
以上説明した第1実施形態のボルト100によれば、補強軸160によって頭部120から軸部130に亘る強度を向上できる。その上、樹脂成形部110に食い込んだ補強軸160の外周面164の凹凸によって樹脂成形部110と補強軸160との分離を防止するとともに、軸孔162によって補強軸160による質量の増加を抑制できる。また、軸孔162に相応のピンを挿入して軸心AX1周りにボルト100と共にピンを回転させて偏心による揺動の有無を観察することによって、補強軸160の芯ずれの有無を容易に検査できる。
【0023】
また、ボルト100を組付けた状態で、頭部120の端部122側の空間と、軸部130の端部132側の空間とを、軸孔162を通じて連通させることができる。これによって、頭部120の端部122側の空間と、軸部130の端部132側の空間との間で、気体、液体、流体および粉体などを流通させるほか、紐および配線などを配置できる。
【0024】
また、補強軸160が導電体である場合には、頭部120の端部122側と、軸部130の端部132側との間で、補強軸160を介して通電できる。
【0025】
また、第1実施形態のボルト100の製造方法によれば、位置決めピン812,830を挿入した状態で補強軸160を金型810,820に位置決めする。そのため、樹脂成形部110に対する補強軸160の芯ずれを防止しながら、補強軸160によって頭部120から軸部130に亘って強度を向上させたボルト100を製造できる。
【0026】
B.第2実施形態
図3は、第2実施形態のボルト200を示す説明図である。図2(a)は、ボルト200を示す上面図である。図2(b)は、ボルト200を示す正面図である。図3のXYZ軸は、ボルト200における各部の位置関係を示す座標系である。図3のXYZ軸における各軸は、他の軸とそれぞれ直交する。図3のZ軸は、ボルト200における軸部230の軸心AX2に平行な軸である。+Z軸方向は、ボルト200の軸部230から頭部220へ向かう方向である。-Z軸方向は、+Z軸方向の逆方向である。
【0027】
ボルト200は、頭部220から延びた軸部230に雄ネジ山234が形成された頭付きネジである。本実施形態では、ボルト200は、頭部220に六角形の工具穴224を有する六角穴付きボルトである。ボルト200は、航空機、航空機、電気製品など各種の機器における部品同士の固定に利用可能である。
【0028】
ボルト200は、樹脂成形部210と、補強軸260とを備える。ボルト200は、補強軸260の周りに樹脂成形部210をインサート成形した製品である。ボルト200は、第1実施形態のボルト100と同様の製造方法によって製造できる。
【0029】
ボルト200の樹脂成形部210は、合成樹脂材料から成り、頭部220および軸部230を一体的に構成する。樹脂成形部210の材料は、第1実施形態の樹脂成形部110と同様である。
【0030】
ボルト200の補強軸260は、軸部230の軸心AX2上に軸心を有する棒状を成す。補強軸260の形状は、本実施形態では円筒状であるが、他の実施形態では多角形断面の筒状であってもよい。補強軸260は、頭部220から軸部230に亘って樹脂成形部210に埋設されている。本実施形態では、補強軸260は、頭部220における工具穴224の底から、軸部230の端部232に亘って樹脂成形部210に埋設されている。補強軸260の材料は、第1実施形態の補強軸160と同様である。
【0031】
補強軸260の外周面264には、凹凸が形成されている。外周面264の凹凸は、第1実施形態の外周面164と同様である。
【0032】
補強軸260は、軸心AX2に沿った軸孔262を有する。軸孔262は、補強軸260を貫通する貫通孔である。軸孔262は、工具穴224を介して頭部220の端部222に開放されているとともに、軸部230の端部232に開放されている。
【0033】
第2実施形態では、軸孔262の内周面には、軸部230の雄ネジ山234に対して逆ネジの関係となる雌ネジ山を有する。本実施形態では、軸部230の雄ネジ山234が右ネジであるのに対し、軸孔262の雌ネジ山は左ネジである。
【0034】
以上説明した第2実施形態のボルト200によれば、補強軸260によって頭部220から軸部230に亘る強度を向上できる。その上、樹脂成形部210に食い込んだ補強軸260の外周面264の凹凸によって樹脂成形部210と補強軸260との分離を防止するとともに、軸孔262によって補強軸260による質量の増加を抑制できる。また、軸孔262に相応のピンを挿入して軸心AX2周りにボルト200と共にピンを回転させて偏心による揺動の有無を観察することによって、補強軸260の芯ずれの有無を容易に検査できる。
【0035】
また、仮に破断して頭部220から分離した軸部230が取付先の雌ネジに取り残された場合であっても、その軸部230に残された補強軸260の雌ネジ山に相応のボルトを締め込むことによって、取付先に取り残された軸部230を除去できる。
【0036】
また、ボルト200を組付けた状態で、頭部220の端部222側の空間と、軸部230の端部232側の空間とを、軸孔262を通じて連通させることができる。これによって、頭部220の端部222側の空間と、軸部230の端部232側の空間との間で、気体、液体、流体および粉体などを流通させるほか、紐および配線などを配置できる。
【0037】
また、補強軸260が導電体である場合には、頭部220の端部222側と、軸部230の端部232側との間で、補強軸260を介して通電できる。
【0038】
C.第3実施形態
図4は、第3実施形態のボルト300を示す説明図である。図4(a)は、ボルト300を示す上面図である。図4(b)は、ボルト300を示す正面図である。図4のXYZ軸は、ボルト300における各部の位置関係を示す座標系である。図4のXYZ軸における各軸は、他の軸とそれぞれ直交する。図4のZ軸は、ボルト300における軸部330の軸心AX3に平行な軸である。+Z軸方向は、ボルト300の軸部330から頭部320へ向かう方向である。-Z軸方向は、+Z軸方向の逆方向である。
【0039】
ボルト300は、頭部320から延びた軸部330に雄ネジ山334が形成された頭付きネジである。本実施形態では、ボルト300は、頭部320に六角形の工具穴324を有する六角穴付きボルトである。ボルト300は、航空機、航空機、電気製品など各種の機器における部品同士の固定に利用可能である。
【0040】
ボルト300は、樹脂成形部310と、補強軸360とを備える。ボルト300は、補強軸360の周りに樹脂成形部310をインサート成形した製品である。ボルト300は、軸部330側の位置決めピンを使用しない点を除き、第1実施形態のボルト100と同様の製造方法によって製造できる。
【0041】
ボルト300の樹脂成形部310は、合成樹脂材料から成り、頭部320および軸部330を一体的に構成する。樹脂成形部310の材料は、第1実施形態の樹脂成形部110と同様である。
【0042】
ボルト300の補強軸360は、軸部330の軸心AX3上に軸心を有する棒状を成す。補強軸360の形状は、本実施形態では円筒状であるが、他の実施形態では多角形断面の筒状であってもよい。補強軸360は、頭部320から軸部330に亘って樹脂成形部310に埋設されている。本実施形態では、補強軸360は、頭部320における工具穴324の底から、軸部330の中程の位置に亘って樹脂成形部310に埋設されている。補強軸360の材料は、第1実施形態の補強軸160と同様である。
【0043】
補強軸360の外周面364には、凹凸が形成されている。外周面364の凹凸は、第1実施形態の外周面164と同様である。
【0044】
補強軸360は、軸心AX3に沿った軸孔362を有する。軸孔362は、補強軸360を貫通する貫通孔である。軸孔362は、工具穴324を介して頭部220の端部222に開放されている。軸孔362における-Z軸方向の端は、樹脂成形部310によって閉鎖されている。
【0045】
以上説明した第3実施形態のボルト300によれば、補強軸360によって頭部320から軸部330に亘る強度を向上できる。その上、樹脂成形部310に食い込んだ補強軸360の外周面364の凹凸によって樹脂成形部310と補強軸360との分離を防止するとともに、軸孔362によって補強軸360による質量の増加を抑制できる。また、軸孔362に相応のピンを挿入して軸心AX3周りにボルト300と共にピンを回転させて偏心による揺動の有無を観察することによって、補強軸360の芯ずれの有無を容易に検査できる。
【0046】
D.第4実施形態
図5は、第4実施形態のボルト400を示す説明図である。図5(a)は、ボルト400を示す上面図である。図5(b)は、ボルト400を示す正面図である。図5のXYZ軸は、ボルト400における各部の位置関係を示す座標系である。図5のXYZ軸における各軸は、他の軸とそれぞれ直交する。図5のZ軸は、ボルト400における軸部430の軸心AX4に平行な軸である。+Z軸方向は、ボルト400の軸部430から頭部420へ向かう方向である。-Z軸方向は、+Z軸方向の逆方向である。
【0047】
ボルト400は、頭部420から延びた軸部430に雄ネジ山434が形成された頭付きネジである。本実施形態では、ボルト400は、頭部420に六角形の工具穴424を有する六角穴付きボルトである。ボルト400は、航空機、航空機、電気製品など各種の機器における部品同士の固定に利用可能である。
【0048】
ボルト400は、樹脂成形部410と、補強軸460とを備える。ボルト400は、補強軸460の周りに樹脂成形部410をインサート成形した製品である。ボルト400は、頭部420側の位置決めピンを使用しない点を除き、第1実施形態のボルト100と同様の製造方法によって製造できる。
【0049】
ボルト400の樹脂成形部410は、合成樹脂材料から成り、頭部420および軸部430を一体的に構成する。樹脂成形部410の材料は、第1実施形態の樹脂成形部110と同様である。
【0050】
ボルト400の補強軸460は、軸部430の軸心AX4上に軸心を有する棒状を成す。補強軸460の形状は、本実施形態では円筒状であるが、他の実施形態では多角形断面の筒状であってもよい。補強軸460は、頭部420から軸部430に亘って樹脂成形部410に埋設されている。本実施形態では、補強軸460は、頭部420における工具穴424より-Z軸方向の位置から、軸部430の端部432に亘って樹脂成形部410に埋設されている。補強軸460の材料は、第1実施形態の補強軸160と同様である。
【0051】
補強軸460の外周面464には、凹凸が形成されている。外周面464の凹凸は、第1実施形態の外周面164と同様である。
【0052】
補強軸460は、軸心AX4に沿った軸孔462を有する。軸孔462は、補強軸460を貫通する貫通孔である。軸孔462は、軸部430の端部432に開放されている。軸孔362における+Z軸方向の端は、樹脂成形部410によって閉鎖されている。これによって、頭部420側から軸孔462を介して軸部430の端部432へ異物が混入することを回避できる。
【0053】
以上説明した第4実施形態のボルト400によれば、補強軸460によって頭部420から軸部430に亘る強度を向上できる。その上、樹脂成形部410に食い込んだ補強軸460の外周面464の凹凸によって樹脂成形部410と補強軸460との分離を防止するとともに、軸孔462によって補強軸460による質量の増加を抑制できる。また、軸孔462に相応のピンを挿入して軸心AX4周りにボルト400と共にピンを回転させて偏心による揺動の有無を観察することによって、補強軸460の芯ずれの有無を容易に検査できる。
【0054】
E.第5実施形態
図6は、第5実施形態のボルト500を示す説明図である。図6(a)は、ボルト500を示す上面図である。図6(b)は、ボルト500を示す正面図である。図6のXYZ軸は、ボルト500における各部の位置関係を示す座標系である。図6のXYZ軸における各軸は、他の軸とそれぞれ直交する。図6のZ軸は、ボルト500における軸部530の軸心AX5に平行な軸である。+Z軸方向は、ボルト500の軸部530から頭部520へ向かう方向である。-Z軸方向は、+Z軸方向の逆方向である。
【0055】
ボルト500は、頭部520から延びた軸部530に雄ネジ山534が形成された頭付きネジである。本実施形態では、ボルト500は、六角柱状の頭部520を有する六角ボルトである。ボルト500は、航空機、航空機、電気製品など各種の機器における部品同士の固定に利用可能である。
【0056】
ボルト500は、樹脂成形部510と、補強軸560とを備える。ボルト500は、補強軸560の周りに樹脂成形部510をインサート成形した製品である。ボルト500は、第1実施形態のボルト100と同様の製造方法によって製造できる。
【0057】
ボルト500の樹脂成形部510は、合成樹脂材料から成り、頭部520および軸部530を一体的に構成する。樹脂成形部510の材料は、第1実施形態の樹脂成形部110と同様である。
【0058】
ボルト500の補強軸560は、軸部530の軸心AX5上に軸心を有する棒状を成す。補強軸560の形状は、本実施形態では円筒状であるが、他の実施形態では多角形断面の筒状であってもよい。補強軸560は、頭部520から軸部530に亘って樹脂成形部510に埋設されている。本実施形態では、補強軸560は、頭部520の端部522から、軸部530の端部532に亘って樹脂成形部510に埋設されている。補強軸560の材料は、第1実施形態の補強軸160と同様である。
【0059】
補強軸560の外周面564には、凹凸が形成されている。外周面564の凹凸は、第1実施形態の外周面164と同様である。
【0060】
補強軸560は、軸心AX5に沿った軸孔562を有する。軸孔562は、補強軸560を貫通する貫通孔である。軸孔562は、頭部520の端部522に開放されているとともに、軸部530の端部532に開放されている。
【0061】
以上説明した第5実施形態のボルト500によれば、補強軸560によって頭部520から軸部530に亘る強度を向上できる。その上、樹脂成形部510に食い込んだ補強軸560の外周面564の凹凸によって樹脂成形部510と補強軸560との分離を防止するとともに、軸孔562によって補強軸560による質量の増加を抑制できる。また、軸孔562に相応のピンを挿入して軸心AX5周りにボルト500と共にピンを回転させて偏心による揺動の有無を観察することによって、補強軸560の芯ずれの有無を容易に検査できる。
【0062】
また、ボルト500を組付けた状態で、頭部520の端部522側の空間と、軸部530の端部532側の空間とを、軸孔562を通じて連通させることができる。これによって、頭部520の端部522側の空間と、軸部530の端部532側の空間との間で、気体、液体、流体および粉体などを流通させるほか、紐および配線などを配置できる。
【0063】
また、補強軸560が導電体である場合には、頭部520の端部522側と、軸部530の端部532側との間で、補強軸560を介して通電できる。
【0064】
F.他の実施形態
本明細書に開示する技術は、上述した実施形態、実施例および変形例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、上述した実施形態、実施例および変形例における技術的特徴のうち、発明の概要の欄に記載した各形態における技術的特徴に対応するものは、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えおよび組み合わせることができる。また、本明細書中に必須なものとして説明されていない技術的特徴については、適宜、削除できる。
【0065】
例えば、第2実施形態における軸孔262の雌ネジ山の構成は、第3,5実施形態のボルトに適用できる。第2~4実施形態における補強軸の構成は、第5実施形態のボルト500に適用することができる。また、上述の実施形態において、ボルトの工具穴は、六角穴に限らず、プラス形状、マイナス形状、四角穴、ヘクサロビュラ形状などの各種ネジの工具穴であってもよい。また、上述の実施形態において、ボルトの頭部は、円柱状および六角柱状に限らず、トラス形状、皿状、なべ状、平状などの各種ネジの頭部であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
100…ボルト
110…樹脂成形部
120…頭部
122…端部
124…工具穴
130…軸部
132…端部
134…雄ネジ山
160…補強軸
162…軸孔
164…外周面
200…ボルト
210…樹脂成形部
220…頭部
222…端部
224…工具穴
230…軸部
232…端部
234…雄ネジ山
260…補強軸
262…軸孔
264…外周面
300…ボルト
310…樹脂成形部
320…頭部
324…工具穴
330…軸部
334…雄ネジ山
360…補強軸
362…軸孔
364…外周面
400…ボルト
410…樹脂成形部
420…頭部
424…工具穴
430…軸部
432…端部
434…雄ネジ山
460…補強軸
462…軸孔
464…外周面
500…ボルト
510…樹脂成形部
520…頭部
522…端部
530…軸部
532…端部
534…雄ネジ山
560…補強軸
562…軸孔
564…外周面
810,820…金型
812,830…ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6