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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180337
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】洗濯機および洗濯機用制御装置
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/06 20060101AFI20231214BHJP
   D06F 33/48 20200101ALI20231214BHJP
   D06F 34/16 20200101ALI20231214BHJP
   D06F 103/26 20200101ALN20231214BHJP
   D06F 103/24 20200101ALN20231214BHJP
【FI】
D06F33/06
D06F33/48
D06F34/16
D06F103:26
D06F103:24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093552
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】傅 瀛申
(72)【発明者】
【氏名】馬飼野 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸司
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA04
3B167AA05
3B167AE04
3B167AE05
3B167AE12
3B167BA23
3B167BA24
3B167KA78
3B167KB04
3B167KB16
3B167LB01
3B167LC23
3B167LE01
3B167LF07
3B167LG05
(57)【要約】
【課題】洗濯機の振動を適切に抑制する。
【解決手段】洗濯機DWの制振装置制御部100は、外槽振動検出部18の検出結果である外槽振動量yr(t)に基づいて、前記外槽振動量yr(t)の推定値である外槽振動量推定値y(t)と、前記筐体1の振動量である筐体振動量wr(t)の推定値である筐体振動量推定値w(t)と、を算出する振動推定部120と、前記外槽振動量推定値y(t)と、前記筐体振動量推定値w(t)と、に基づいて、前記制振装置26における制御量を定める制御量信号c・y(t)を生成する制御量生成部110と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内で支持され内部に液体を貯留可能な外槽と、
前記外槽に内包されたドラムと、
前記外槽の振動を検出する外槽振動検出部と、
前記外槽に装着された制振装置と、
前記制振装置を制御する制振装置制御部と、を備え、前記制振装置制御部は、
前記外槽振動検出部の検出結果である外槽振動量に基づいて、前記外槽振動量の推定値である外槽振動量推定値と、前記筐体の振動量である筐体振動量の推定値である筐体振動量推定値と、を算出する振動推定部と、
前記外槽振動量推定値と、前記筐体振動量推定値と、に基づいて、前記制振装置における制御量を定める制御量信号を生成する制御量生成部と、を備える
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記外槽に生じる加振力を検知する加振力検知部をさらに備え、
前記振動推定部は、前記加振力と、前記外槽振動量と、に基づいて前記外槽振動量推定値と、前記筐体振動量推定値と、を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記ドラムの回転速度を検知する回転速度検知装置をさらに備え、
前記振動推定部は、前記回転速度検知装置が検知した前記回転速度と、前記外槽振動量と、に基づいて、前記筐体振動量推定値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項4】
前記振動推定部は、前記外槽振動量に基づいて前記ドラムの回転速度を検知する周波数観測部をさらに備え、
前記振動推定部は、前記周波数観測部が検知した前記回転速度と、前記外槽振動量と、に基づいて、前記筐体振動量推定値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項5】
前記振動推定部は、数理モデルを記述した数理モデル部を備え、
前記数理モデル部を用いて前記外槽振動量推定値および前記筐体振動量推定値を算出する
ことを特徴とする請求項2ないし4の何れか一項に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記数理モデルは、
前記外槽振動量と前記外槽振動量推定値との差分である外槽振動量偏差を出力する減算部と、
前記外槽振動量偏差にフィードバックゲインを乗算することによりフィードバック量を出力するゲイン付与部と、を備え、
前記数理モデル部は、前記フィードバック量を用いて前記外槽振動量推定値と、前記筐体振動量推定値と、を計算する
ことを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
【請求項7】
筐体と、前記筐体内で支持され内部に液体を貯留可能な外槽と、前記外槽に内包されたドラムと、前記外槽の振動を検出する外槽振動検出部と、前記外槽に装着された制振装置と、を備える洗濯機を制御する洗濯機用制御装置であって、
前記外槽振動検出部の検出結果である外槽振動量に基づいて、前記外槽振動量の推定値である外槽振動量推定値と、前記筐体の振動量である筐体振動量の推定値である筐体振動量推定値と、を算出する振動推定部と、
前記外槽振動量推定値と、前記筐体振動量推定値と、に基づいて、前記制振装置における制御量を定める制御量信号を生成する制御量生成部と、を備える
ことを特徴とする洗濯機用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機および洗濯機用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1,2には、洗濯機の振動を抑制する技術が記載されている。これら文献の記述は本願明細書の一部として包含される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-90666号公報
【特許文献2】特開2019-154481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した技術において、洗濯機の振動を一層適切に抑制したいという要望がある。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、振動を一層適切に抑制できる洗濯機および洗濯機用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の洗濯機は、筐体と、前記筐体内で支持され内部に液体を貯留可能な外槽と、前記外槽に内包されたドラムと、前記外槽の振動を検出する外槽振動検出部と、前記外槽に装着された制振装置と、前記制振装置を制御する制振装置制御部と、を備え、前記制振装置制御部は、前記外槽振動検出部の検出結果である外槽振動量に基づいて、前記外槽振動量の推定値である外槽振動量推定値と、前記筐体の振動量である筐体振動量の推定値である筐体振動量推定値と、を算出する振動推定部と、前記外槽振動量推定値と、前記筐体振動量推定値と、に基づいて、前記制振装置における制御量を定める制御量信号を生成する制御量生成部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、洗濯機の振動を適切に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態によるドラム式洗濯機の模式的な斜視図である。
図2】ドラム式洗濯機の内部構造を示す模式的な側面図である。
図3】脱水工程におけるドラムの回転速度のタイムチャートである。
図4】制振装置制御部のブロック図である。
図5】振動推定部のブロック図の一例である。
図6】コンピュータのブロック図である。
図7】制振装置制御部の制御プログラムのフローチャートである。
図8】筐体振動量の変化特性の一例を示す図である。
図9】第2実施形態における制振装置制御部のブロック図である。
図10】第3実施形態における制振装置制御部のブロック図である。
図11】第4実施形態における振動推定部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
例えば、ドラム式洗濯機は、一般的に、水を溜める外槽と、外槽に内包され回転可能なドラムと外槽とドラムを内包する筐体と、を備えており、外槽は筐体から弾性支持される。衣類の脱水運転時には、ドラムを高速回転させ、遠心力により脱水を行う。そのため、ドラム内の衣類の分布に偏りが生じると外槽に振動が発生する。外槽に発生した振動は、外槽と筐体との間の弾性支持部から筐体へと伝達され、筐体および洗濯機の接地床が振動する。筐体の振動と接地床の振動は、使用者の不快感に繋がるため低減することが求められている。
【0009】
上述した特許文献1の技術を応用すると、筐体の振動を検知するための筐体振動センサと、外槽の下部を支持するリニアモータと、を洗濯機に設けることができると考えられる。そして、筐体振動センサの出力に基づいてリニアモータを適切に制御することで、筐体の振動や床への伝達を低減できると考えられる。また、上述した特許文献2の技術を応用すると、洗濯機の洗濯槽における振動の振動情報を取得し、取得した洗濯槽の特徴量から洗濯機を設置する床の強度を推定できると考えられる。そして、推定した床の強度に基づいて、洗濯機を設置した床に応じて洗濯槽の回転を制御することで、洗濯機の運転に起因する振動を低減できると考えられる。
【0010】
ドラム式洗濯機の筐体の振動や洗濯機の設置床の振動は、使用者が直接目視や感知しやすい振動となるため、ドラム式洗濯機の振動は、使用者の不快感に直結しやすいと考えられる。外槽の振動は、外槽と筐体の弾性支持部を通じて、外槽から筐体に伝達され、筐体を設置する床へと伝達される。筐体の振動や床へと伝達される振動を低減するには、外槽と筐体の弾性支持部の減衰力を小さくするよう設計することや筐体の共振回転速度を回避するようにドラムの回転速度を制御することが有効となる。
【0011】
しかし、前者の手法(弾性支持部の減衰力を小さくするように設計する手法)では、外槽の共振回転速度において外槽が過大に振動することにより、外槽と筐体とが接触し、異常振動を引き起こす場合がある。また、後者の手法(ドラムの回転速度を制御し筐体の振動を抑制する手法)では、大きく筐体が振動する場合には、脱水時の最高到達回転速度を下げる必要が生じ、これによって脱水の運転時間増加を招く場合がある。
【0012】
特許文献1に記載の技術を応用すると、外槽下部のリニアモータで外槽を支持し、外槽と筐体の両方に振動センサを装着することが可能であると考えられる。筐体に装着した振動センサは、筐体の振動を検知するために用いられ、検知した筐体の振動に基づいてリニアモータの制御パラメータを変更することで筐体の振動や床への伝達力を低減できる。しかし、筐体の振動を検知する機能を持たない洗濯機では、筐体の振動を検知するために、追加的な振動センサを装着する必要が生じる。追加的なセンサを装着すると、洗濯機の製造コストや消費電力が増加するという問題が生じる。また、センサやその周辺回路の装着位置を確保する必要が生じ、洗濯機の内部空間を消費するという問題も生じる。
【0013】
また、特許文献2に記載の技術を応用すると、外槽に振動センサを装着できると考えられる。また、外槽の振動センサから検知した外槽の振動の特徴量に基づいて、洗濯機を設置する床の強度を含む設置条件を推定できると考えられる。このように設置条件が推定できれば、推定した設置条件に応じてドラムの目標回転速度やドラムの回転加速度を含む回転パターンを制御し、ドラム式洗濯機の運転に起因する振動を低減できると考えられる。しかし、仮に推定した設置条件に応じてドラムの回転パターンを変化させると、特定の設置条件下では、高い回転速度で脱水運転を実行することが困難である場合が想定され、脱水運転時間が長くなるという問題が生じる。そこで、後述する実施形態は、筐体の振動を検知する振動センサを必ずしも必要とせず、筐体の振動低減と脱水運転において高回転速度へと到達率を高めることの両立できるドラム式洗濯機を提供するものである。
【0014】
[第1実施形態]
〈洗濯機の全体構成〉
図1は、第1実施形態によるドラム式洗濯機DW(洗濯機)の模式的な斜視図である。
図1に示すドラム式洗濯機DWの外郭を構成する筐体1は、ベース1aの上に装着されており、左右の側板1b(図1では右の側板のみを図示)と、前面カバー1cと、背面カバー1d(図2参照)と、上面カバー1eと、下部前面カバー1fと、を備えている。上面カバー1eには、水道栓からドラム式洗濯機DWに給水するための給水ホース接続口30が設けられている。筐体1は、ベース1aを含めて箱状の外枠を形成し、外枠として十分な強度を有している。
【0015】
前面カバー1cの略中央には、後述する外槽11(図2参照)の開口部と略同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部である投入口(図示略)が形成されている。ドア2は、この投入口を塞ぐためのものであり、前面カバー1cに設けたヒンジ(図示略)で開閉可能に支持されている。ドア2は、ドア開放取手2aを引くことでロック機構(図示せず)が外れて開く。また、ドア2を前面カバー1cに押し付けることで、ドア2はロックされて閉じる。筐体1の右上部に設けられた操作・表示パネル3は、電源スイッチ4と、操作スイッチ5と、表示器6と、を備えている。
【0016】
また、筐体1の左上部には、利用者が洗剤を投入する洗剤容器12が設けられている。操作・表示パネル3は、筐体1の上部に設けた上補強部材13(図2参照)に備えられている制御部7(図2参照)に電気的に接続されている。制御部7には冷却ファン(図示せず)が装着されている。また、制御部7は、ドラム式洗濯機DWの運転を記録可能なメモリを備えている。また、ベース1aの近傍には、排水を行うための排水ホース34が装着されている。
【0017】
図2は、ドラム式洗濯機DWの内部構造を示す模式的な側面図である。
図2に示すドラム式洗濯機DWの筐体1の内部には、水を溜める外槽11が備えられている。外槽11の下部は、筐体1に固定された左右一対の弾性支持機構24で防振支持されている。弾性支持機構24は、コイルばねとダンパで構成された機械式防振機構25と、電気的に制御可能な制振装置26と、を備えている。制振装置26は、任意の力を発生できるリニアアクチュエータや電磁的に減衰力を変更可能なダンパで構成でき、その構成は限定されない。また、弾性支持機構24は左右一対ではなく、左右の片一方のみが弾性支持機構24であってもよい。その場合、もう片一方の制振装置26は、機械式防振機構25のみで構成される。
【0018】
ドラム式洗濯機DWの上部に設けられている制振装置制御部100(洗濯機用制御装置)は、制振装置26の制御量を決定するものであり、制御部7と電気的に接続されている。制振装置制御部100は、制御部7で記録されたドラム式洗濯機DWの運転状態に基づいて、制振装置26の制御量を決定する。なお、制御部7と制振装置制御部100とは同一の制御装置であってもよく、その構成は限定されない。
【0019】
外槽11の上部には、外槽11の姿勢を保持するために、二組の懸架部材8,9が接続されている。外槽11は、衣類を収納するためのドラム21を内包する。外槽11の後方には、ドラム21を回転させるためのモータ22を備える。モータ22は、回転軸となるシャフト22aが外槽11を貫通し、ドラム21と結合している。モータ22が駆動すると、ドラム21は、正転(ドラム式洗濯機DWを正面から見て時計回り)、逆転(ドラム式洗濯機DWを正面から見て反時計回り)の両方向に回転駆動される。
【0020】
図2に示すドラム21の回転軸Azは、ドラム式洗濯機DWの前方から後方に向けて水平または、奥側が下になるように傾斜している。なお、図2の例では、回転軸Azは後方が下になるように傾斜している。モータ22には、回転速度を検知する回転速度検知装置10が装着されている。ドラム21の内周面には、ドラム21内の洗濯水を外槽11に排水するための複数個の脱水孔21bや、ドラム21の周方向に間隔を隔て、ドラム21内に投入された衣類を持ち上げるための複数個(図2では1個のみを図示)のバッフル23が設けられている。バッフル23は、ドラム21の前後方向に延在している。
【0021】
ドラム21の前端には、円筒状の流体バランサ21cが設けられている。外槽11は、前方を開口として、後方を閉じた有底の略円筒状に形成されている。この外槽11の開口部と筐体1の投入口は、前後方向に伸縮しやすいベローズ16により接続される。ベローズ16は、環状のパッキンであるエラストマーで成形され、ドア2を閉めることでドラム21を水封する。また、筐体1の投入口、外槽11の開口部、ドラム21の開口部は連通しており、ドア2を開くことでドラム21内への衣類の出し入れが可能となる。なお、外槽11は、開口部を含む側と、モータ22が装着される側とに分割することができる。
【0022】
外槽11の下部に備えられた排水口11aは、内部排水ホース14と接続している。糸くず捕集ボックス19には、洗濯水を循環させるための循環ポンプ20が設けられており、循環経路20aを介して水をドラム21内に散布する。外部排水ホース15には排水弁15aが設けられ、排水弁15aを閉じて給水することで外槽11に水を溜め、排水弁15aを開いて外槽11内の水を機外へ排出する。さらに外槽11の下部には、外槽11の振動を検知する外槽振動検出部18が備えられている。
【0023】
制御部7は、外槽11の振動が予め設定した閾値を超えると、ドラム21の回転を一時停止させ、衣類アンバランスを修正して脱水工程のやり直しを行う。一方、振動が閾値以下の場合のみ回転速度を上昇させる。これにより、制御部7は、過大な振動の発生を抑制している。ドラム式洗濯機DWの上部において、給水ホース接続口30は給水弁32を介して給水ホース17の後端に接続されている。給水ホース17の前端は洗剤容器12に接続され、該洗剤容器12から洗剤および水がドラム21に供給される。
【0024】
〈洗濯機の一般的動作〉
上記構成において、ドラム式洗濯機DWの動作を説明する。
まず、図1において、利用者が電源スイッチ4を押下することで、ドラム式洗濯機DWが起動する。そして、利用者は、ドア開放取手2aを引き、ドア2を開いてドラム21内に衣類を投入する。そして、利用者は、ドア2を閉じた後、操作スイッチ5を操作することで、運転を開始する。運転が開始されると、制御部7はドラム21(図2参照)を回転させ、注水前の衣類容量を算出する。
【0025】
衣類容量は、モータ22(図2参照)の回転速度と電流値とに基づいて算出される。すなわち、衣類容量が多いほど、モータ22に負荷が加わるため、電流値が大きくなる。従って、電流値で衣類容量を判定することができる。そして、制御部7は、衣類容量に基づいて、投入する洗剤量を表示器6に表示させる。このとき、算出した衣類容量が多い程、投入する洗剤量も多くなる。利用者は、表示器6の表示を確認して、洗剤容器12内に所定量の洗剤量を投入して、洗い工程を開始させる。
【0026】
洗い工程が開始されると、図2において、制御部7は給水弁32を開いて、給水ホース接続口30から供給された水を給水ホース17および洗剤容器12を介して、洗剤と共に外槽11内に供給する。このとき、算出した衣類容量が多い程、洗い工程での給水量が多くなる。また、このとき、循環ポンプ20内で未溶解の洗剤と水とが撹拌される。これにより、効率よく洗剤が溶かされ、高濃度の洗剤液が生成される。この動作を所定時間実行した後、制御部7は、ドラム21の正転、停止、逆転、停止を繰り返す洗い動作を所定時間行う。このとき、衣類がバッフル23によって持ち上げられて落下する動作が繰り返されることで衣類の洗浄力が高められる。
【0027】
図3は、脱水工程におけるドラム21の回転速度のタイムチャートである。
制御部7は、洗い工程の終了後、排水弁15a(図2参照)を開くことで、外槽11内の水を、内部排水ホース14を介して、ドラム式洗濯機DWの外部(機外)に排出させる。排水が終了した時刻をt1とする。なお、制御部7は、後述するすすぎ工程が終了した場合も、脱水工程を実行する。
【0028】
脱水工程のうち、時刻t1~t2の期間を低速回転期間TAと呼ぶ。低速回転期間TAでは、制御部7は、ドラム21の回転速度ωを低速にすることにより、ドラム21の内周面に衣類を広げながら張り付ける。その後、制御部7は、外槽11に共振が発生する外槽共振期間TBと、筐体1に共振が発生する、時刻t3~t4の筐体共振期間TCと、筐体1の共振が終了した後の、時刻t4~t5の筐体共振後期間TDと、回転速度ωを目標回転速度ωFまで上昇させる、時刻t5~t6の目標回転速度期間TEと、を実行する。これにより、制御部7は、衣類に含まれる水を遠心脱水する。
【0029】
(低速回転期間TA)
制御部7は、低速回転期間TAにおいて、ドラム21の回転速度をω0(例えば50r/min)まで上昇させる。このとき、洗い工程で水を含んだ衣類がドラム21(図2参照)の回転時にバッフル23によって持ち上げられ、衣類が落下する際にドラム21の内周面に広げられる。ドラム21の回転速度がω0に到達すると、ω0におけるアンバランスを検知するため、制御部7は、ドラム21を回転速度ω0で時間T1(例えば10秒)だけ運転する。
【0030】
制御部7は、低速回転域のアンバランス状態を、回転変動の大きさによって判定する。なお、回転変動の大きさは、例えば、ドラム21が1回転する際、衣類をドラム21の下方から上方に持ち上げる速度(最低速度)と、衣類をドラム21の上方から下方に下げる速度(最高速度)との差分から求めることができる。回転変動が小さければ小さいほど、バランスがとれていることが確認できる。
【0031】
制御部7は、ω0のアンバランス検知において、回転変動が予め設定した閾値以下であると判定した場合には、ドラム21の回転速度をω0からω1(例えば80r/min)まで上昇させる。ドラム21の回転速度がω1に到達すると、制御部7は、再度のアンバランス検知を行うため、回転速度ω1で時間T2(例えば5秒)だけ運転する。なお、ω0とω1は、衣類の張り付き具合を検知する回転速度となっており、ω0は衣類がドラム21の内周面に張り付き始める回転速度であり、ω1は衣類がドラム21の内周面に完全に張り付く回転速度である。
【0032】
(外槽共振期間TB)
回転速度ω1のアンバランス検知において、回転変動が予め設定した閾値以下であると判定した場合には、制御部7は、ドラム21の回転速度をω2(例えば400r/min)まで上昇させて、外槽共振期間TBを通過させる。
(筐体共振期間TC)
回転速度ωが外槽共振期間TBを通過する際、外槽11の振動振幅が所定値よりも小さい場合、制御部7は、ドラム21の回転速度をω3(例えば600r/min)まで上昇させて、筐体共振期間TCを通過させる。
【0033】
(筐体共振後期間TD)
回転速度ωが筐体共振期間TCを通過する際、外槽11の振動振幅が所定値よりも小さい場合、制御部7は、ドラム21の回転速度ωを目標回転速度ωF(例えば900r/min)まで上昇させる。
(目標回転速度期間TE)
目標回転速度期間TEでは、制御部7は、ドラム21を時間T3(例えば180秒)だけ目標回転速度ωFで回転させる。
【0034】
目標回転速度期間TEが終了すると、制御部7は、時刻t6~t7の期間において、ドラム21の回転速度を0[r/min]まで低下させる。以上により、脱水工程が終了する。上述した脱水工程においては、ドラム21の内周面に張り付いた衣類のアンバランスが大きい場合には、ドラム21の回転変動が閾値より大きくなり、あるいは外槽11の振動振幅が閾値よりも大きくなる場合がある。このような場合、制御部7は、ドラム21の回転速度ωを低下させる、ドラム21の回転を停止させる、ドラム21の正転と逆転を繰り返すほぐし動作を行う、あるいは注水を行う等、衣類のアンバランスを修正する動作を行う。
【0035】
脱水工程が終了すると、制御部7はすすぎ工程を実行する。このすすぎ工程では、制御部7は給水弁32を開き、給水ホース接続口30から供給された水を給水ホース17および洗剤容器12を介して、外槽11内に供給する。この際、上述の洗い工程と同様に、制御部7は、算出した衣類容量が多いほど、給水量を多くする。このすすぎ工程では、洗い工程と同様に、ドラム21の正転、停止、逆転、停止の動作を繰り返す。
【0036】
このとき、制御部7は、バッフル23によって持ち上げられた衣類が落下する攪拌動作を所定時間行う。その後、前記した脱水工程およびすすぎ工程を所定回数繰り返し、最終脱水工程に移行する。この最終脱水工程において、制御部7は、再び、図3に示したように回転速度ωを制御する。但し、制御部7は、最終脱水工程における目標回転速度期間TEの運転時間は、上述した洗い工程の後の脱水工程より長い時間(例えば300秒)に設定する。
【0037】
上述の通り、脱水工程では回転速度と衣類アンバランスに応じて、複数の共振期間が現れ、ドラム式洗濯機DWの振動が変化する。加えて、ドラム式洗濯機DWは、発生した衣類のアンバランスの位置に応じても、外槽11から筐体1へと伝達される振動が変化する。例を挙げると、ドラム21の前側の重量が大きくなるような衣類のアンバランスが発生すれば、外槽11の前側が大きく加振され、外槽11の前方にある筐体1との接続部(例えば、懸架部材8やベローズ16など)を主に通じて筐体1に振動が伝達する。
【0038】
逆に、ドラム21の後側の重量が大きくなるような衣類のアンバランスが発生すれば、外槽11の後側が大きく加振され、外槽11の後方にある筐体1との接続部(例えば、懸架部材9や弾性支持機構24など)を主に通じて筐体1に振動が伝達する。外槽11と筐体1の各接続部の接続位置や弾性、粘性はそれぞれ異なるため、衣類のアンバランスの位置によって筐体1の外槽11と筐体1の振動が変化することがわかる。
【0039】
〈洗濯機の制振動作〉
上記の内容を踏まえ、ドラム式洗濯機DWの振動に合わせて制振装置制御部100が制振装置26を制御することで適切な制振効果が得られる。そこで、制振装置制御部100は、筐体振動量を低減すべき場合、筐体振動量を推定し、推定結果である筐体振動量推定値を抑制するように制振装置26の制御量を調整する。これにより、筐体振動量を低減することが可能となる。
【0040】
図4は制振装置制御部100のブロック図である。
図4において、制振装置制御部100は、制御量生成部110と、振動推定部120と、定数決定部140と、を備えている。定数決定部140は、制御量生成部110および振動推定部120が用いる各種定数を決定する。振動推定部120には、外槽振動検出部18の検知結果である外槽振動量yr(t)と、制振装置26の変位である制御出力u(t)と、が供給される。振動推定部120は、外槽振動量yr(t)および制御出力u(t)に基づいて、外槽振動量yr(t)の推定値である外槽振動量推定値y(t)と、筐体1の振動量すなわち筐体振動量wr(t)の推定値である筐体振動量推定値w(t)と、を算出する。なお、図示の例において筐体振動量wr(t)はセンサ等によって検出されないため、未知の値である。
【0041】
振動推定部120は、数理モデル部130と、減算部122と、ゲイン付与部124と、を備えている。数理モデル部130は、ドラム式洗濯機DWの振動を表現した数理モデルを記述したものである。減算部122は、外槽振動量yr(t)から外槽振動量推定値y(t)を減算し、その結果を外槽振動量偏差Δy(t)として出力する。ゲイン付与部124は、外槽振動量偏差Δy(t)に対して、フィードバックゲインGを乗算し、その結果であるフィードバック量GΔy(t)を数理モデル部130に供給する。
【0042】
制御量生成部110は、外槽振動量推定値y(t)に対して、制御パラメータcを乗算し、制御量信号c・y(t)として出力する。以下、制御パラメータcはスカラー量であることを前提として説明するが、制御パラメータcはベクトル量であってもよく、微分要素、積分要素を含んだ伝達関数であってもよい。そして、制御量生成部110は、外槽振動量偏差Δy(t)が小さくなるように制御パラメータcを調整する。これにより、時間経過とともに、振動推定部120の伝達関数が最適化されてゆき、外槽振動量yr(t)の振幅が減少してゆく。
【0043】
図5は、振動推定部120のブロック図の一例である。
図5を用いて数理モデル部130について説明する。
ドラム式洗濯機DWが振動する主な原因は、衣服が片寄った状態でドラム21が回転することである。すなわち、片寄った衣類に生じる遠心力が外槽11に加わる加振力f(t)(図示せず)となり振動が生ずる。なお、tは時刻である。ドラム21の回転速度ωの増加に伴って遠心力の大きさが増加するため、加振力f(t)の大きさは回転速度ωに依存した関数となる。また、加振力f(t)はドラム21の回転周期に合わせて大きさが周期的に変化するため、回転速度ωを周波数とする正弦波関数として考えることができる。
【0044】
以下の説明において、左上添字の“T”はベクトルの転置を表す。また、明細書の文中において、左上添字の“v”はベクトル量を表す。但し、数式のイメージデータにおいて、ベクトル量は太字で表記する。また、明細書の文中において、左上添字の“・”は時刻tの微分を表し、“・”の個数で微分の階数を表す。但し、数式のイメージデータにおいて、文字の上の“・”は時刻tの微分を表し、“・”の個数で微分の階数を表す。
【0045】
上述した加振力f(t)の特性を踏まえ、加振力f(t)の状態ベクトルをvf(t)=T[xf(t),f(t)]と定義する。ここでxf(t)は加振力f(t)に等しい。行列vωvωを用いて、加振力f(t)に関する状態空間モデルを式(1)で表すことができる。なお、式(1)内のaは任意の定数である。
【0046】
【数1】
【0047】
次に、ドラム式洗濯機DWの振動モデルは、外槽振動量yr(t)と筐体振動量wr(t)とを要素とした状態ベクトルvx(t)と、加振力f(t)と、制振装置26の制御出力u(t)と、行列vA,v1v2vCと、を用いた状態空間モデルとして下式(2)で表現される。なお、行列vA,v1v2vCは、ドラム式洗濯機DWの構造計算によって求めることができる。
【0048】
【数2】
【0049】
制振装置制御部100は、外槽振動量推定値y(t)が外槽振動検出部18で検出された外槽振動量yr(t)に近づくように(理想的には同一の物理量になるように)行列Cを設定する。
ここで式(1)用いて、式(2)を拡大系の状態空間モデルとして変形すれば、下式(3)のように表すことができる。そして、下式(3)は、下式(4)のように変形できる。
【0050】
【数3】
【0051】
【数4】
【0052】
図5において演算部131は、制御出力u(t)が入力されると、式(4)における「vB’u(t)」を演算する。また、演算部134は、状態ベクトルvx’(t)が入力されると、式(4)における「vA’x’(t)」を演算する。演算部132は、「vA’x’(t)+vB’u(t)-GΔy(t)」を求め、その結果を「・vx’f(t)」として出力する。すなわち、式(4)の上側の式は、フィードバック量GΔy(t)が「0」であると仮定した場合に成立する式になる。
【0053】
図5において積分部133は、「・vx’f(t)」を積分することにより、状態ベクトルvx’(t)を出力する。演算部135は、式(4)の下側に式に示されているように、状態ベクトルvx’(t)に行列vC’を乗算し、その結果を外槽振動量推定値y(t)として出力する。
【0054】
ここで、ドラム21の回転パターンに合わせて精度よくドラム21の回転速度ωを制御可能な場合は、事前に与えたドラム21の回転パターンに基づいて回転速度ωを決定するとよい。図4および図5に示した数理モデル部130を式(4)で記述することで、加振力f(t)をも推定する対象として数理モデル部130に組み込むことができる。これにより、フィードバックループにより、時間経過とともに外槽振動量yr(t)から筐体振動量推定値w(t)と、加振力f(t)の推定値と、を算出することが可能となる。
【0055】
式(1)のように、本実施形態においては、ドラム21の回転速度ωに基づいて加振力f(t)の特性を記述する状態空間モデルを用いている。ドラム21の回転速度ωの増減により、振動推定部120のフィードバックループの周波数特性が変化する。本実施形態によれば、この周波数特性の変化を加味してフィードバックゲインGを決定できるため、筐体振動量の推定精度を向上させることができる。
【0056】
図6は、コンピュータ980のブロック図である。図4に示した制振装置制御部100は、図6に示すコンピュータ980を、1台または複数台備えている。
図6において、コンピュータ980は、CPU981と、記憶部982と、通信I/F(インタフェース)983と、入出力I/F984と、を備える。ここで、記憶部982は、RAM982aと、ROM982bと、を備える。通信I/F983は、通信回路986に接続される。入出力I/F984は、入出力装置987に接続される。ROM982bには、CPUによって実行される制御プログラムや各種データ等が記憶されている。CPU981は、この制御プログラム等を実行することにより、各種機能を実現する。先に図4および図5に示した制振装置制御部100の内部は、制御プログラム等によって実現される機能をブロックとして示したものである。
【0057】
〈制御プログラム〉
図7は、制振装置制御部100の制御プログラムのフローチャートである。
なお、本プログラムは、回転速度ωが所定の回転速度Nに達した際に、制振装置制御部100において起動される。ここで、回転速度Nは、例えば図3に示した目標回転速度ωFである。図7において処理がステップS100に進むと、定数決定部140は所定の初期設定を行う。すなわち、定数決定部140は、制御パラメータc、変化量Δc、前回振幅値wap(詳細は後述する)を所定のデフォルト値に設定する。
【0058】
図7において処理がステップS101に進むと、定数決定部140は、デフォルト値の制御パラメータcを用いて制振装置26の制御を開始する。次に、処理がステップS102に進むと、振動推定部120は、ドラム式洗濯機DWの振動量の推定(すなわち外槽振動量推定値y(t)、筐体振動量推定値w(t)の算出)を開始する。
【0059】
次に、処理がステップS103に進むと、所定時間が経過するまで処理が待機する。振動推定部120はフィードバックループを用いるため、時間経過とともに推定の精度が向上する。従って、推定を開始した直後では、推定精度が低い。このため、該所定時間が経過するまで、制御量生成部110は、デフォルトの制御パラメータcを用いて制振装置26の制御を継続する。
【0060】
次に、処理がステップS104に進むと、振動推定部120は、算出した筐体振動量推定値w(t)をRAM982a(図6参照)の所定領域に記録する。次に、処理がステップS105に進むと、振動推定部120は、筐体振動量推定値w(t)が所定のn周期分記録されたか否かを判別する。ここで「No」と判定されると、処理はステップS104に戻る。一方、ステップS105において「Yes」と判定されると、処理はステップS106に進む。ステップS106では、振動推定部120は、筐体振動量推定値w(t)のn周期分の算出結果を用いて、筐体振動量推定値w(t)の振幅値waを算出する。例えば、n周期分の筐体振動量推定値w(t)の平均値を振幅値waとするとよい。
【0061】
次に、処理がステップS107に進むと、定数決定部140は、振幅値waと前回振幅値wapとの間に「wa<wap」の関係が成立するか否かを判定する。上述したように、前回振幅値wapは、ステップS100において所定のデフォルト値に初期設定されている。ステップS107において「Yes(wa<wap)」と判定されると、処理はステップS108に進む。ステップS108において、定数決定部140は、制御パラメータcに対して、変化量Δcを加算する。一方、ステップS107において「No(wa≧wap)」と判定されると、処理はステップS109に進む。ここでは、定数決定部140は変化量Δcの符号を反転させる。次に、処理がステップS108に進むと、定数決定部140は制御パラメータcに対して、符号が反転した変化量Δcを加算する。
【0062】
ステップS108が終了すると、次に処理はステップS110に進み、定数決定部140は、制御量生成部110に対して現在の制御パラメータcを設定する。これにより、制御量生成部110は、出力する制御量信号c・y(t)を、新たに設定された制御パラメータcに基づいたものに変更する。
【0063】
次に、処理がステップS111に進むと、定数決定部140は、現在の振幅値waを、前回振幅値wapに設定する。次に、処理がステップS112に進むと、定数決定部140は、回転速度Nでの脱水運転が終了したか否かを判定する。ここで「No」と判定されると、ステップS104以下の処理が繰り返される。一方、「Yes」と判定されると、本プログラムの処理が終了する。
【0064】
なお、上述したステップS108、ステップS109において、変化量Δcの絶対値は予め与えた一定値であってもよく、ループの中で動的に決定される値であってもよい。また、制御パラメータcが複数の要素を持つベクトル量である場合、Δcも同一の要素数を有するベクトル量によって構成される。
【0065】
図8は、筐体振動量wr(t)の変化特性の一例を示す図である。
図8の横軸は、ドラム21の回転が開始された後の経過時間であり、図8の縦軸は筐体振動量wr(t)である。また、時刻t101は、制御量生成部110による制御が開始された時刻、すなわち、制御プログラム(図7)が起動された時刻である。
【0066】
時刻t101以降は、定数決定部140が制御パラメータcを動的に変化させるため、時間経過とともに筐体振動量wr(t)は低減してゆく。また、図示の例では、時刻t102付近で制御パラメータcの変化が収束しており、これによって筐体振動量wr(t)の振幅も、同様に収束している。従って、外槽振動量yr(t)に基づいて制振装置26に対する制御量信号c・y(t)を決定し、筐体振動量wr(t)が小さいドラム式洗濯機DWを提供することが可能となる。
【0067】
なお、本実施形態においては、変化量Δcの大きさに応じて図8に示す筐体振動量wr(t)が収束するまでに要する時間が変化する。従って、図8に示す筐体振動量wr(t)の波形は一例であり、この限りではない。
【0068】
上記の手法に加えて、筐体振動量推定値w(t)と、外槽振動量推定値y(t)と、の双方に基づいて、上述の制御パラメータcを決定してもよい。この場合、筐体振動量wr(t)を低減するとともに、外槽振動量yr(t)が過大になることで外槽11が筐体1の内部に接触することも防止できる。
【0069】
本実施形態によれば、外槽11に係る外槽振動量yr(t)に基づいて筐体1の振動である筐体振動量wr(t)を推定し、筐体振動量wr(t)を低減するように制振装置26に対する制御量信号c・y(t)を決定できる。これにより、筐体振動量wr(t)を検知する振動センサを省略できるため、ドラム式洗濯機DWのコスト低減を実現できる。そして、筐体1の内部空間を確保しながら、衣類の片寄り等に合わせて筐体1の振動を低減でき、ドラム式洗濯機DWの運転時間が長くなることを抑制できる。
【0070】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図9は第2実施形態における制振装置制御部100のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図9に示す制振装置制御部100は、第1実施形態のもの(図4参照)と同様に構成されているが、本実施形態においては、数理モデル部130が、回転速度検知装置10から回転速度ωを受信する。これにより、回転速度ωの正確な計測結果を得ることができる。上述した以外の第2実施形態の内容は、第1実施形態のものと同様である。
【0071】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
図10は第3実施形態における制振装置制御部100のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図10に示す制振装置制御部100は、第1実施形態の構成(図4参照)に加えて、周波数観測部128をさらに備えている。周波数観測部128は、外槽振動量yr(t)に基づいて回転速度ωを検出する。これにより、回転速度ωを安価に検出することができる。上述した以外の第3実施形態の内容は、第1実施形態のものと同様である。
【0072】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。
図11は第4実施形態における振動推定部120のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
本実施形態におけるドラム式洗濯機DWは、図11に示す加振力検知部28を備えている。この加振力検知部28は、例えば、制振装置26(図2参照)と外槽11との間に挟まれた圧力センサ(図示せず)等によって実現できる。
【0073】
また、本実施形態において、図11に示す振動推定部120に含まれる数理モデル部130は、加振力検知部28から加振力f(t)を受信する。そして、本実施形態の数理モデル部130は、第1実施形態における演算部131(図5参照)に代えて、演算部142,144,146を備える点が異なり、その後段の各部の定数も異なる。
【0074】
演算部142は、制御出力u(t)が入力されると、式(2)における「v1u(t)」を演算する。また、演算部144は、加振力f(t)が入力されると、式(2)における「v2f(t)」を演算する。演算部146は、これらの合計値「v1u(t)+v2f(t)」を出力する。
【0075】
以上により、本実施形態の数理モデル部130は、第1実施形態のものと同様に動作する。さらに、本実施形態においては、加振力検知部28が計測した加振力f(t)が直接的に適用されるため、加振力f(t)のモデル化誤差を理由として生じる筐体振動量wr(t)(図示せず)の推定精度低下を抑制できる。そして、制御量生成部110(図4参照)は、振動推定部120が出力した筐体振動量推定値w(t)と、その振動振幅である筐体振動振幅推定値と、に基づいて制御量信号S110を決定する。
【0076】
[実施形態の効果]
以上のように上述した各実施形態によれば、洗濯機(DW)の制振装置制御部100は、外槽振動検出部18の検出結果である外槽振動量yr(t)に基づいて、外槽振動量yr(t)の推定値である外槽振動量推定値y(t)と、筐体1の振動量である筐体振動量wr(t)の推定値である筐体振動量推定値w(t)と、を算出する振動推定部120と、外槽振動量推定値y(t)と、筐体振動量推定値w(t)と、に基づいて、制振装置26における制御量を定める制御量信号c・y(t)を生成する制御量生成部110と、を備える。これにより、外槽振動量yr(t)に基づいて、外槽振動量推定値y(t)と、筐体振動量推定値w(t)と、を算出することができるため、洗濯機の振動を適切に抑制できる。
【0077】
また、第4実施形態のように、洗濯機(DW)が外槽11に生じる加振力f(t)を検知する加振力検知部28をさらに備え、振動推定部120は、加振力f(t)と、外槽振動量yr(t)と、に基づいて外槽振動量推定値y(t)と、筐体振動量推定値w(t)と、を算出すると一層好ましい。これにより、外槽11の正確な加振力f(t)が得られるため、洗濯機の振動を一層適切に抑制できる。
【0078】
また、第4実施形態のように、洗濯機(DW)がドラム21の回転速度ωを検知する回転速度検知装置10をさらに備え、振動推定部120は、回転速度検知装置10が検知した回転速度ωと、外槽振動量yr(t)と、に基づいて、筐体振動量推定値w(t)を算出しても一層好ましい。これにより、正確な回転速度ωが得られるため、洗濯機の振動を一層適切に抑制できる。
【0079】
また、第3実施形態のように、振動推定部120は、外槽振動量yr(t)に基づいてドラム21の回転速度ωを検知する周波数観測部128をさらに備え、振動推定部120は、周波数観測部128が検知した回転速度ωと、外槽振動量yr(t)と、に基づいて、筐体振動量推定値w(t)を算出すると一層好ましい。これにより、外槽振動量yr(t)に基づいてドラム21の回転速度ωを検知できるため、安価な構成で回転速度ωを検知できる。
【0080】
また、振動推定部120は、数理モデル(式(2))を記述した数理モデル部130を備え、数理モデル部130を用いて外槽振動量推定値y(t)および筐体振動量推定値w(t)を算出すると一層好ましい。これにより、数理モデル(式(2))に基づいて外槽振動量推定値y(t)および筐体振動量推定値w(t)を算出できるため、洗濯機の振動を一層適切に抑制できる。
【0081】
また、数理モデル(式(2))は、外槽振動量yr(t)と外槽振動量推定値y(t)との差分である外槽振動量偏差(Δy(t))を出力する減算部122と、外槽振動量偏差Δy(t)にフィードバックゲインGを乗算することによりフィードバック量GΔy(t)を出力するゲイン付与部124と、を備え、数理モデル部130は、フィードバック量GΔy(t)を用いて外槽振動量推定値y(t)と、筐体振動量推定値w(t)と、を計算すると一層好ましい。これにより、フィードバックループを用いて外槽振動量推定値y(t)と、筐体振動量推定値w(t)と、を計算できるため、洗濯機の振動を一層適切に抑制できる。
【0082】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0083】
(1)上記実施形態においては、洗濯機の例としてドラム式洗濯機DWを適用した例を説明したが、洗濯機はドラム式洗濯機DWに限定されるわけではなく、縦型洗濯機であってもよい。
【0084】
(2)上記実施形態における制振装置制御部100のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、図7に示したフローチャート、その他上述した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体(プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0085】
(3)図7に示した処理、その他上述した各処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0086】
(4)上記実施形態において実行される各種処理は、図示せぬネットワーク経由でサーバコンピュータが実行してもよく、上記実施形態において記憶される各種データも該サーバコンピュータに記憶させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 筐体
10 回転速度検知装置
11 外槽
18 外槽振動検出部
21 ドラム
26 制振装置
28 加振力検知部
100 制振装置制御部(洗濯機用制御装置)
110 制御量生成部
120 振動推定部
122 減算部
124 ゲイン付与部
128 周波数観測部
130 数理モデル部
G フィードバックゲイン
ω 回転速度
DW ドラム式洗濯機(洗濯機)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11