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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180349
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20231214BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20231214BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B62D25/08 K
B62D25/08 M
B62D25/04 D
B60R13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093576
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】増田 一樹
【テーマコード(参考)】
3D023
3D203
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BA03
3D023BB21
3D023BC01
3D023BD13
3D023BD15
3D203AA04
3D203BB07
3D203BB56
3D203BB77
3D203CB24
(57)【要約】
【課題】車体捩り剛性の低下を抑制しつつ、ドア閉まり性能およびデミスト性能を確保し、さらに乗員に対する静粛性の低下を抑制することができる車体後部構造を提供する。
【解決手段】車体後部構造100は、バックドアと接する車外側の面138と車外側の面に対面する車室側の面130を有するバックドア開口レール102と、バックドア開口レールに正面視で一部が重なるラゲッジフロアパネル104と、車外側の面と車室側の面の間に配置されラゲッジフロアパネルよりも上方に位置する遮音壁164と、車外側の面に連続した連続面150と、連続面に開口され遮音壁よりも下方に位置するドラフター154と、車室側の面に設けられ円形または楕円形であってラゲッジフロアパネルと遮音壁の上下間に位置する複数の孔122a、122b、122c、126a、126bとを備え、複数の孔のうち遮音壁に最も近い位置に設けられた孔122aは、面積が最も大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバックドア開口を構成するバックドア開口レールと、該バックドア開口レールに正面視で一部が重なるラゲッジフロアパネルとを備える車体後部構造であって、
前記バックドア開口レールは、バックドアと接する車外側の面と、該車外側の面に対面する車室側の面とを有し、
当該車体後部構造はさらに、
前記バックドア開口レールの車外側の面と車室側の面との間に配置され前記ラゲッジフロアパネルよりも上方に位置する遮音壁と、
前記バックドア開口レールの車外側の面に連続した連続面と、
前記連続面に開口され前記遮音壁よりも下方に位置するドラフターと、
前記バックドア開口レールの車室側の面に設けられ円形または楕円形の形状を有し前記ラゲッジフロアパネルと前記遮音壁の上下間に位置する複数の孔とを備え、
前記複数の孔のうち前記遮音壁に最も近い位置に設けられた孔は、面積が最も大きいことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記遮音壁に最も近い位置に設けられた孔の面積は、1200mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記複数の孔の総面積は、5900mm以上から7000mm以下の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の後部には、例えばハネ上げ式のバックドアが設置されている。このような車両の後部は、バックドア開口が広いため、車体捩り剛性を高める構造を実現することが求められている。
【0003】
特許文献1には、自動車の後部車体構造が記載されている。この車体構造は、リヤピラーと、テールクロスメンバと、結合部とを備える。リヤピラーは、バックドア開口の側縁を構成し、インナパネルとその外側のリインフォースメントとで縦方向の閉断面を形成している。テールクロスメンバは、バックドア開口の下縁を構成し、テールクロスインナおよびテールクロスアウタとで横方向の閉断面を形成している。また、テールクロスアウタの後面側端には、サービスホールが形成されている。
【0004】
結合部は、リヤピラーの車内側へ屈曲する下端の端末と、テールクロスメンバの側端とを結合する部位であって、その内部に縦壁を形成している。またテールクロスメンバの側端は、側壁によって塞がれている。縦壁は、テールクロスメンバの側端を塞ぐ側壁に対向して、リヤピラーの下端の端末開口を塞ぐことにより、リヤピラーの縦方向の閉断面をリヤピラーの下端の端末まで連続させている。
【0005】
特許文献1では、リヤピラーの下端の端末開口を塞ぐ縦壁を設けて、縦方向の閉断面をリヤピラーの下端の端末まで連続させたので、リヤピラーの下端の剛性を強化でき、これにより、リヤピラーの下端とテールクロスメンバの側端との結合部の剛性を強化できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-284037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の車体構造では、リヤピラーの下端の端末開口を縦壁で塞いでいるため、車外から車室内に空気を流すことが困難となり、ドア閉まり性能が低下し、さらに、車室内から車外に空気が排出され難くなるため、窓ガラスが曇る現象を防止するデミスト性能も低下してしまう。
【0008】
またテールクロスメンバは、剛性の高い閉断面を有するものの、テールクロスアウタの後面側端にサービスホールが形成されているため、剛性が低下してしまう。さらに特許文献1の車体構造では、走行時のロードノイズや排気音が、後席乗員の耳元へ伝わって、後席乗員に対する静粛性が低下することについて何ら対策が講じられていない。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、車体捩り剛性の低下を抑制しつつ、ドア閉まり性能およびデミスト性能を確保し、さらに乗員に対する静粛性の低下を抑制することができる車体後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車体後部構造の代表的な構成は、車両のバックドア開口を構成するバックドア開口レールと、バックドア開口レールに正面視で一部が重なるラゲッジフロアパネルとを備える車体後部構造であって、バックドア開口レールは、バックドアと接する車外側の面と、車外側の面に対面する車室側の面とを有し、車体後部構造はさらに、バックドア開口レールの車外側の面と車室側の面との間に配置されラゲッジフロアパネルよりも上方に位置する遮音壁と、バックドア開口レールの車外側の面に連続した連続面と、連続面に開口され遮音壁よりも下方に位置するドラフターと、バックドア開口レールの車室側の面に設けられ円形または楕円形の形状を有しラゲッジフロアパネルと遮音壁の上下間に位置する複数の孔とを備え、複数の孔のうち遮音壁に最も近い位置に設けられた孔は、面積が最も大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車体捩り剛性の低下を抑制しつつ、ドア閉まり性能およびデミスト性能を確保し、さらに乗員に対する静粛性の低下を抑制することができる車体後部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る車体後部構造を車両前方から見た状態を示す図である。
図2図1の車体後部構造の要部を斜め前方から見た状態を示す図である。
図3図1の車体後部構造を車両後方および斜め後方から見た状態を示す図である。
図4図3の車体後部構造の内部および遮音壁を示す図である。
図5図4(a)の車体後部構造を斜め後方から見上げた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る車体後部構造の代表的な構成は、車両のバックドア開口を構成するバックドア開口レールと、バックドア開口レールに正面視で一部が重なるラゲッジフロアパネルとを備える車体後部構造であって、バックドア開口レールは、バックドアと接する車外側の面と、車外側の面に対面する車室側の面とを有し、車体後部構造はさらに、バックドア開口レールの車外側の面と車室側の面との間に配置されラゲッジフロアパネルよりも上方に位置する遮音壁と、バックドア開口レールの車外側の面に連続した連続面と、連続面に開口され遮音壁よりも下方に位置するドラフターと、バックドア開口レールの車室側の面に設けられ円形または楕円形の形状を有しラゲッジフロアパネルと遮音壁の上下間に位置する複数の孔とを備え、複数の孔のうち遮音壁に最も近い位置に設けられた孔は、面積が最も大きいことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、バックドア開口レールの車室側の面に複数の孔を設けているため、バックドアを閉めるときに、バックドア開口レールの内部に滞留する空気を、複数の孔から車室内に逃がすことができる。これにより、ドア閉まり性能の低下を抑制することができる。また、車室内の空気は、バックドア開口レールの車室側の面に設けられた複数の孔から、バックドア開口レールの内部を通って、バックドア開口レールの車外側の面に連続した連続面に開口されたドラフターから車外に排出される。これにより、窓ガラスが曇る現象であるデミスト性の低下を抑制することができる。
【0015】
さらに複数の孔が円形または楕円形であるため、孔の周囲に発生する応力集中を回避することができる。また、複数の孔のうち遮音壁に最も近い位置に設けられた孔の面積を最も大きくして、他の孔の面積を小さくして直径を変化させることにより、車体ねじり剛性の低下を回避することができる。なお複数の孔は、通気用だけでなく、スポット溶接の際に溶接ガンを挿入する孔としても用いることができる。
【0016】
さらに、ドラフターの近くに位置するタイヤやマフラーから発生したロードノイズや排気音は、ドラフターからバックドア開口レールの内部に伝達されても、遮音壁によって遮音される。このため、ロードノイズや排気音が、後席乗員の耳元へ伝わることがなく、後席乗員に対する静粛性の低下を抑制することができる。
【0017】
上記の遮音壁に最も近い位置に設けられた孔の面積は、1200mm以上であるとよい。これにより、バックドアを閉めるときに、バックドア開口レールの内部であって遮音壁の下方に滞留する空気を、この孔から車室内に効率よく流すことができる。このため、ドア閉まり性能を向上させることができる。
【0018】
上記の複数の孔の総面積は、5900mm以上から7000mm以下の範囲に設定されているとよい。このように、複数の孔の総面積を上記の範囲に設定することにより、ドア閉まり性能を維持しつつ、デミスト性の低下も回避することができる。
【実施例0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施例に係る車体後部構造100を車両前方から見た状態を示す図である。図2は、図1の車体後部構造100の要部を斜め前方から見た状態を示す図である。以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。なお以下の説明では、車両右側の車体後部構造100を例示するが、車両左側に本実施例を適用してもよい。
【0021】
車体後部構造100は、バックドア開口レール102と、ラゲッジフロアパネル104とを備える。バックドア開口レール102は、車両のバックドア開口106を構成する。バックドア開口レール102は、図1に示す鎖線で囲まれた範囲に位置する各部材を跨いでいて、これらの各部材を組み合わせることで形成される。バックドア開口106は、不図示のハネ上げ式のバックドアを閉じることで塞がれる広い開口となっている。また、ラゲッジフロアパネル104は、図1に示すようにバックドア開口レール102に正面視で一部が重なっている。
【0022】
車体後部構造100はさらに、車両の側部の外面を構成するサイドボディアウタ108と、サイドボディアウタ108の車内側に設置されるクォータインナパネル110(図2参照)と、リアホイールハウス112とを備える。リアホイールハウス112は、図2に示すようにクォータインナパネル110に接続されていて、車両の後輪を収容するように構成されている。
【0023】
バックドア開口レール102は、車室側に位置するリアインナリンフォース114と、クォータインナロア116と、テールエンドパネル118とを含む。リアインナリンフォース114は、車両上下方向に延びていて、バックドア開口106の側縁を形成している。クォータインナロア116は、リアインナリンフォース114の下側に位置し、バックドア開口106の側縁の下側のコーナーを形成している。テールエンドパネル118は、バックドア開口106に沿って車幅方向に延びている。
【0024】
クォータインナロア116の車室側の面120には、複数の孔122a、122b、122cが貫通して設けられている。また、テールエンドパネル118の車室側の面124には、複数の孔126a、126bが貫通して設けられている。なお孔126a、126bは、車幅方向中心に対して左右対称の位置に設けられている。
【0025】
これらの孔122a、122b、122c、126a、126bは、円形または楕円形の形状を有し、ラゲッジフロアパネル104よりも上方に位置している。また、複数の孔のうち最も上方に位置する孔122aは、その面積が例えば1200mm以上となっていて、他の孔よりも面積が大きい。さらに複数の孔の総面積、すなわち車幅方向中心に対して左右対称の位置に設けられている車両左側に設けられた複数の孔の面積も含めた総面積は、5900mm以上から7000mm以下の範囲に設定されている。
【0026】
またクォータインナロア116の車室側の面120、テールエンドパネル118の車室側の面124およびリアインナリンフォース114の車室側の面128によって、バックドア開口レール102の車室側の面130が形成されている。
【0027】
図3は、図1の車体後部構造100を車両後方および斜め後方から見た状態を示す図である。車体後部構造100は、図3(a)に示すように後方から見て車外側に位置するリアコンビランプアウタハウジング132と、サイドボディアウタロアエクステンション134と、リアスカートパネル136とを備える。
【0028】
リアコンビランプアウタハウジング132は、車両上下方向に延びていて、バックドア開口106の側縁を形成している。サイドボディアウタロアエクステンション134は、リアコンビランプアウタハウジング132の下側に位置し、バックドア開口106の側縁を形成している。リアスカートパネル136は、サイドボディアウタロアエクステンション134の下側に位置し車幅方向および上下方向に広がっていて、バックドア開口106の側縁の下側のコーナーと下縁137を形成している。なお図2に示すようにリアスカートパネル136の上部には、テールエンドメンバ118が接合されている。
【0029】
バックドア開口レール102は、図2に示す車室側の面130に加え、図3(b)に示す鎖線で囲んだ車外側の面138と、結合面140とを有する。また、車室側の面130は、車外側の面138に対面している。車外側の面138は、バックドアと接する面であって、リアコンビランプアウタハウジング132の車室側の面142、サイドボディアウタロアエクステンション134の車室側の面144およびリアスカートパネル136の車室側の面146によって形成されている。
【0030】
バックドア開口レール102の結合面140は、車外側の面138と車室側の面130とを結合して、図3(a)の鎖線で囲んだ第1空間部148を区画する。なお結合面140は、バックドアの中心を向いている面である。
【0031】
車体後部構造100はさらに、第1連続面150と、第2連続面152とを備える。第1連続面150は、リアスカートパネル136の一部であって、バックドア開口レール102の車外側の面138に連続していて、図3(a)に示すように後方から見て第1空間部148に重ならない位置にある。また、第1連続面150には、例えば矩形状に開口されたドラフター154が形成されている。
【0032】
第2連続面152は、クォータインナロア116の一部であって、第1連続面150に対面するように、バックドア開口レール102の車室側の面130(図2参照)に連続している。さらに、第2連続面152は、図3(a)に示すように後方から見て第1空間部148に重ならない位置にあり、第1連続面150との間に図3(a)の鎖線で囲んだ第2空間部156を区画する。
【0033】
サイドボディアウタ108は、凹部158を有する。凹部158は、車室側に窪んで車両前後方向に延びていて、リアドア用のスライドレール160が設けられる。またドラフター154は、図3(a)に示すバックドア開口106の最下面となる下縁137よりも上方に位置していて、リヤピラーの下端162の下方に位置している。
【0034】
車体後部構造100はさらに、図3(a)に点線で示す遮音壁164と、鎖線で囲んだ第3空間部166とを備える。遮音壁164は、図3(a)に示すドラフター154や図1および図2に示すラゲッジフロアパネル104よりも上方に位置している。
【0035】
図4は、図3の車体後部構造100の内部および遮音壁164を示す図である。図5は、図4(a)の車体後部構造100を斜め後方から見上げた状態を示す図である。なお図4(a)および図5は、図3(a)の車体後部構造100からサイドボディアウタロアエクステンション134およびリアスカートパネル136を省略して、車体後部構造100の内部を示している。
【0036】
第3空間部166は、図4(a)および図5に示すように、サイドボディアウタ108、クォータインナパネル110およびリアホイールハウス112によって区画されている。また、第1空間部148、第2空間部156および第3空間部166は連通している。
【0037】
遮音壁164は、第1空間部148に配置されていて、第1空間部148と第3空間部166との間で音の伝達を遮る機能を有する。遮音壁164は、外周が熱により膨張する発砲充填剤などの樹脂素材で形成された部材であり、図4(a)および図4(b)に示すように第1部位168と第2部位170とを有する。第1部位168は、車幅方向外側に向かうほど下方に傾斜している。第2部位170は、第1部位168の下端172から下方に屈曲し車幅方向外側に向かうほど下方に傾斜している。
【0038】
また第1部位168は、バックドア開口レール102の車外側の面138(図3(a)参照)と、図4(a)および図5に示す結合面140とに対して直交するように延びている。さらに遮音壁164は、バックドア開口レール102の車室側の面130に、図4(c)および図5に示すクリップ174、176によって固定されている。
【0039】
バックドア開口レール102の車室側の面130に貫通して設けられた複数の122a、122b、122c、126a、126bは、ラゲッジフロアパネル104と遮音壁164の上下間に位置している。遮音壁164の一部である第1部位168は、図4(a)に示すようにスライドレール160の上下間(鎖線A、B参照)に重なっている。また、複数の孔のうち最大の面積を有する孔122aは、遮音壁164に最も近い位置に設けられていて、スライドレール160の上下間に重ならず、遮音壁164の上下間(鎖線C、D参照)にその一部が重なっている。
【0040】
車体後部構造100によれば、第1空間部148、第2空間部156および第3空間部166は連通していて、さらに第1空間部148と第3空間部166との間で音の伝達を遮るように、第1空間部148に遮音壁164が配置されている。
【0041】
このため、ドラフター154の近くに位置するタイヤやマフラーから発生したロードノイズや排気音は、図3(a)の点線の矢印に示すようにドラフター154が重なる第2空間部154から第1空間部148に伝達されても、遮音壁164によって第3空間部166には伝達され難くなる。
【0042】
これにより車体後部構造100では、ロードノイズや排気音が、第3空間部166を通してクォータインナパネル110の周囲から漏れ出して、後席乗員の耳元へ伝わることがなく、後席乗員に対する静粛性の低下を抑制することができる。また、バックドア開口レール102内の第1空間部148に遮音壁164を設けることにより、バックドア開口レール102の剛性を高めて、車体捩じり剛性の低下を抑制することができる。
【0043】
また車体後部構造100では、バックドア開口レール102の車室側の面130に複数の孔122a、122b、122c、126a、126bを設けている。このため、バックドアを閉めるときに、バックドア開口レール102の内部に滞留する空気を、これらの各孔から車室内に逃がすことができ、ドア閉まり性能の低下を抑制することができる。
【0044】
さらに、車室内の空気は、複数の孔122a、122b、122c、126a、126bから、第1空間部148に取り入れられ、さらに第1空間部148から第2空間部156を通って、第2空間部156に重なるドラフター154から車外に排出される。これにより、窓ガラスが曇る現象を防止するデミスト性の低下を抑制することができる。
【0045】
また遮音壁164の第1部位168が、バックドア開口レール102のうちバックドアと接する車外側の面138および結合面140に対して垂直に延びているため、バックドア開口レール102の剛性を高めて、車体捩じり剛性を向上させることができる。
【0046】
また第1部材168が車幅方向内側に向かうほど上方に傾斜して延びているため、遮音壁164をより高い位置に設けることができる。これにより、バックドア開口レール102の車室側の面130のうち遮音壁164よりも低い位置に十分なスペースを確保することができるため、このスペースに複数の孔を設けることができる。
【0047】
さらに第2部位170は、第1部位168の下端172から屈曲して下方に傾斜している。このため、遮音壁164は、全体として直線状に延びている形状に比べて、バックドアを閉めるときに生じる車両前後方向の荷重に対する剛性を高めることができる。
【0048】
また車体後部構造100では、サイドボディアウタ108が車室側に窪んだ凹部158を有するので、車室側に曲がりやすい形状となっているものの、遮音壁164の一部である第1部位168がスライドレール160の上下間に重なっている。このため、サイドボディアウタ108の車室側への折れ曲がりを抑制することができ、車体捩り剛性の低下を抑制することができる。
【0049】
また遮音壁164を発砲充填剤などの樹脂素材で形成しているため、バックドア開口レール102の形状のばらつきによって、バックドア開口レール102の車外側の面138、車室側の面130、結合面140を含む各面の間に歪みが生じた場合であっても、各面の間の隙間を完全に塞ぐことができる。これにより、第1空間部148から第3空間部166に伝達される音を十分に遮音することができる。また、バックドア開口レール102の各面の間の隙間を塞ぐことで、遮音壁164の周囲の各面に荷重を分散することができるため、バックドア開口レール102の剛性を高めることができる。
【0050】
さらに遮音壁164は、バックドア開口レール102の車外側の面138ではなく、車室側の面130にクリップ174、176により固定されている。このため、クリップ174、176が車外側に突き出すことがなく、バックドアを開けた際にクリップ174、176が見えることがないため、見栄えが損なわれない。なおバックドア開口レール102の車室側の面130から車室側にクリップ174、176が突き出しても、クリップ174、176は、車室内の内装トリムにより覆い隠されるため、見栄えが損なわれない。
【0051】
また、遮音壁164に最も近い位置に設けられた孔122aは、スライドレール160の上下間に重ならず、遮音壁164の上下間にその一部が重なっている。これにより、車体後部構造100では、サイドボディアウタ108の車室側への折れ曲がりを十分に抑制することができ、車体捩り剛性の低下を確実に抑制することができる。
【0052】
またドラフター154は、バックドア開口106の下縁137よりも上方に位置していて、リヤピラーの下端162の下方に位置している。このように、車体後部構造100では、広いバックドア開口106を有することでバックドア開口106の下縁137の位置が低くなっていても、ドラフター154の位置をなるべく高い位置に設定している。これにより、複数の孔の面積を確保し易くなり、ドラフター154をマフラーの出口から離間させ、さらにリヤピラーの下端162の下方に位置させることで、車体捩じり剛性の低下を抑制することができる。
【0053】
さらに複数の孔122a、122b、122c、126a、126bが円形または楕円形であるため、各孔の周囲に発生する応力集中を回避することができる。また、遮音壁164に最も近い位置に設けられた孔122aの面積を最も大きくして、他の孔の面積を小さくして直径を変化させることにより、車体捩り剛性の低下を回避することができる。
【0054】
特に孔122aの面積を、1200mm以上としたことにより、バックドアを閉めるときに、バックドア開口レール102の内部であって遮音壁164の下方に滞留する空気を、この孔122aから車室内に効率よく流すことができる。このため、ドア閉まり性能を向上させることができる。
【0055】
また、複数の孔の総面積を、5900mm以上から7000mm以下の範囲に設定することにより、ドア閉まり性能を維持しつつ、デミスト性の低下も回避することができる。なお複数の孔は、通気用だけでなく、スポット溶接の際に溶接ガンを挿入する孔としても用いることができる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、車体後部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
100…車体後部構造、102…バックドア開口レール、104…ラゲッジフロアパネル、106…バックドア開口、108…サイドボディアウタ、110…クォータインナパネル、112…リアホイールハウス、114…リアインナリンフォース、116…クォータインナロア、118…テールエンドパネル、120…クォータインナロアの車室側の面、122a、122b、122c、126a、126b…孔、124…テールエンドパネルの車室側の面、128…リアインナリンフォースの車室側の面、130…バックドア開口レールの車室側の面、132…リアコンビランプアウタハウジング、134…サイドボディアウタロアエクステンション、136…リアスカートパネル、137…バックドア開口の下縁、138…バックドア開口レールの車外側の面、140…結合面、142…リアコンビランプアウタハウジングの車室側の面、144…サイドボディアウタロアエクステンションの車室側の面、146…リアスカートパネルの車室側の面、148…第1空間部、150…第1連続面、152…第2連続面、154…ドラフター、156…第2空間部、158…凹部、160…スライドレール、162…リヤピラーの下端、164…遮音壁、166…第3空間部、168…第1部位、170…第2部位、172…第1部位の下端、174、176…クリップ
図1
図2
図3
図4
図5