(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180350
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】作業方法、作業システム、及び作業プログラム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20231214BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20231214BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20231214BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
A01B69/00 303M
A01C11/02 331D
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093577
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康司
(72)【発明者】
【氏名】大西 健太
【テーマコード(参考)】
2B043
2B062
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB06
2B043EA18
2B043EA32
2B043EB05
2B043EB15
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC15
2B043EC16
2B043ED27
2B062AA02
2B062AA05
2B062AB01
2B062BA45
2B062CA05
2B062CA14
5H301AA01
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD17
(57)【要約】
【課題】圃場全体において各作業経路の作業開始位置を揃えることが可能な作業方法、作業システム、及び作業プログラムを提供する。
【解決手段】取得処理部112は、農業用資材の株間Ltを取得する。設定処理部115は、農業用資材の供給作業を開始する作業開始位置Psを設定するための基準位置である作業開始基準位置Pxを設定し、株間Ltと作業開始基準位置Pxとに基づいて、複数の作業経路のそれぞれに対応する作業開始位置Psを設定する。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両により農業用資材を圃場に供給する作業方法であって、
前記農業用資材の供給間隔を取得することと、
前記農業用資材の供給作業を開始する作業開始位置を設定するための基準位置である作業開始基準位置を設定することと、
前記供給間隔と前記作業開始基準位置とに基づいて、複数の作業経路のそれぞれに対応する前記作業開始位置を設定することと、
を実行する作業方法。
【請求項2】
前記作業開始基準位置から前記供給間隔で配列される複数の仮想作業直線を設定し、
前記複数の作業経路のそれぞれにおいて、前記作業開始位置を前記仮想作業直線上に設定する、
請求項1に記載の作業方法。
【請求項3】
前記複数の仮想作業直線のそれぞれを、前記作業経路における前記供給作業の作業方向に直交する方向に延伸するように設定する、
請求項2に記載の作業方法。
【請求項4】
前記作業車両の挙動情報に基づいて、前記作業開始基準位置を設定する、
請求項1に記載の作業方法。
【請求項5】
前記複数の作業経路のうち最初に前記供給作業が行われる作業経路において前記農業用資材が最初に供給される位置に、前記作業開始基準位置を設定する、
請求項1に記載の作業方法。
【請求項6】
前記作業車両が前記圃場において前記供給作業を中断した場合においても、設定された前記作業開始基準位置を維持する、
請求項5に記載の作業方法。
【請求項7】
前記作業車両が前記圃場とは異なる圃場において前記供給作業を行う場合に、前記作業開始基準位置を再設定する、
請求項5に記載の作業方法。
【請求項8】
前記複数の仮想作業直線のうち、作業開始操作を取得した時点における前記作業車両の位置の近傍の仮想作業直線上に前記作業開始位置を設定する、
請求項1~7のいずれかに記載の作業方法。
【請求項9】
前記複数の仮想作業直線のうち、作業開始操作を取得した時点における前記作業車両の位置から前記供給作業の作業方向に最も近い仮想作業直線上に前記作業開始位置を設定する、
請求項8に記載の作業方法。
【請求項10】
前記作業開始基準位置が設定された前記作業経路における前記供給作業の終了位置に対応する前記仮想作業直線を特定し、
特定した前記仮想作業直線と前記作業開始基準位置とに基づいて、前記複数の作業経路のそれぞれに対応する前記作業開始位置を設定する、
請求項2に記載の作業方法。
【請求項11】
作業車両により農業用資材を圃場に供給する作業システムであって、
前記農業用資材の供給間隔を取得する取得処理部と、
前記農業用資材の供給作業を開始する作業開始位置を設定するための基準位置である作業開始基準位置を設定し、前記供給間隔と前記作業開始基準位置とに基づいて、複数の作業経路のそれぞれに対応する前記作業開始位置を設定する設定処理部と、
を備える作業システム。
【請求項12】
作業車両により農業用資材を圃場に供給する作業プログラムであって、
前記農業用資材の供給間隔を取得することと、
前記農業用資材の供給作業を開始する作業開始位置を設定するための基準位置である作業開始基準位置を設定することと、
前記供給間隔と前記作業開始基準位置とに基づいて、複数の作業経路のそれぞれに対応する前記作業開始位置を設定することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための作業プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両により農業用資材を圃場に供給する作業方法、作業システム、及び作業プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場において苗を植え付ける植付作業において、枕地領域を旋回後の植付位置(作業開始位置)を各作業経路において揃える技術が知られている(例えば特許文献1参照)。例えば、特許文献1には、旋回時の機体の旋回角度が所定値を超え、かつ左右の後輪の回転数が略等しくなった場合に植付作業を開始する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、現在走行している作業経路の作業終了位置と次の作業経路の作業開始位置とを揃える構成であるため、圃場全体で見た場合に各作業経路における作業開始位置にずれが生じることが考えられる。
【0005】
本発明の目的は、圃場全体において各作業経路の作業開始位置を揃えることが可能な作業方法、作業システム、及び作業プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業方法は、作業車両により農業用資材を圃場に供給する作業方法であって、前記農業用資材の供給間隔を取得することと、前記農業用資材の供給作業を開始する作業開始位置を設定するための基準位置である作業開始基準位置を設定することと、前記供給間隔と前記作業開始基準位置とに基づいて、複数の作業経路のそれぞれに対応する前記作業開始位置を設定することと、を実行する。
【0007】
本発明に係る作業システムは、作業車両により農業用資材を圃場に供給するシステムである。前記作業システムは、前記農業用資材の供給間隔を取得する取得処理部と、前記農業用資材の供給作業を開始する作業開始位置を設定するための基準位置である作業開始基準位置を設定し、前記供給間隔と前記作業開始基準位置とに基づいて、複数の作業経路のそれぞれに対応する前記作業開始位置を設定する設定処理部と、を備える。
【0008】
本発明に係る作業プログラムは、作業車両により農業用資材を圃場に供給する作業プログラムであって、前記農業用資材の供給間隔を取得することと、前記農業用資材の供給作業を開始する作業開始位置を設定するための基準位置である作業開始基準位置を設定することと、前記供給間隔と前記作業開始基準位置とに基づいて、複数の作業経路のそれぞれに対応する前記作業開始位置を設定することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるための作業プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圃場全体において各作業経路の作業開始位置を揃えることが可能な作業方法、作業システム、及び作業プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る作業システムの構成を示すブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す側面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る圃場及び目標経路の一例を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態に係る植付駆動装置の具体例を示すブロック図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の実施形態に係る植付駆動装置の具体例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態1に係る植付作業の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態1に係る植付作業の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態1に係る補正回数とずれ率との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態1に係る植付作業の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、参考形態に係る植付作業の具体例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態1に係る植付作業の具体例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る操作端末の操作画面の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態1に係る操作端末の設定画面の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態1に係る作業システムによって実行される植付作業処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態1に係る植付作業の具体例を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態1に係る植付作業の具体例を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態2に係る作業開始基準位置及び仮想作業直線の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態2に係る植付作業の具体例を示す図である。
【
図18】
図18は、本発明の実施形態2に係る植付作業の具体例を示す図である。
【
図19】
図19は、本発明の実施形態2に係る植付作業の具体例を示す図である。
【
図20】
図20は、本発明の実施形態2に係る植付作業の具体例を示す図である。
【
図21】
図21は、本発明の実施形態2に係る作業システムによって実行される植付作業処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
[実施形態1]
図1に示すように、本発明の実施形態に係る作業システム1は、作業車両10と操作端末20とを含んでいる。作業車両10及び操作端末20は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、作業車両10及び操作端末20は、有線、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。
【0013】
本発明の作業車両は、苗、種、肥料、薬剤などの農業用資材を圃場に供給する車両である。本実施形態では、作業車両の一例として、苗を圃場に植え付ける植付作業を行う田植機を例に挙げて説明する。作業車両10は、圃場F(
図3参照)内を予め設定された目標経路Rに従って自動走行(自律走行)可能な構成を備えている。また、作業車両10は、圃場F内において自動走行しながら所定の作業(例えば植付作業)を行うことが可能である。
【0014】
作業車両10は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置の位置情報に基づいて、圃場Fに対して予め生成された目標経路Rに従って自動走行する。なお、目標経路Rは、作業機14(植付部)が植付作業を行う作業経路(直進経路R1)と、作業機14が植付作業を行わない非作業経路(旋回経路R2)とを含み、走行開始位置Stから走行終了位置Gまで複数の直進経路R1及び複数の旋回経路R2を含んでいる。
図3に示す目標経路Rは、作業車両10が直進経路R1及び旋回経路R2のそれぞれを自動走行する経路を示している。
【0015】
なお、作業車両10は、オペレータが搭乗してオペレータの操作に応じて目標経路Rを自動走行するものであってもよいし、直進経路R1のみ自動走行を行うものであってもよい。例えば、オペレータは、作業車両10に搭乗して、直進経路R1の自動走行(自動操舵)と、旋回経路R2の手動走行(手動操舵)とを切り替えながら作業車両10を走行させることが可能であってもよい。また、例えば、オペレータは、作業車両10に搭乗して、車速(走行速度)を変更する操作(アクセル操作、ブレーキ操作など)を行いながら、目標経路R又は目標経路Rの一部(例えば直進経路R1)を自動走行させることが可能であってもよい。また、作業車両10は、作業経路ごとに設定された車速情報に従って車速を制御しながら目標経路Rを自動走行してもよい。さらに、作業車両10は、オペレータが搭乗しないで目標経路Rを自動走行するものであってもよい。
【0016】
操作端末20は、作業車両10による作業に関する各種情報を操作表示部23に表示させたり、オペレータの操作を受け付けて当該操作に応じた処理を実行したりする。例えばオペレータは、操作端末20を操作して、自動走行に必要な情報を設定したり、作業車両10に作業開始指示(又は自動走行開始指示)を出力したりする。また、操作端末20は、自動走行中の作業車両10の作業状況、走行状況などの情報を表示させる。オペレータは、操作端末20において作業状況、走行状況を把握することが可能である。操作端末20は、例えば、オペレータが携帯可能な携帯端末(タブレット端末など)であって、作業車両10に着脱可能な機器である。また、操作端末20は、作業車両10に固定された機器であってもよい。
【0017】
[作業車両10]
図1及び
図2に示すように、作業車両10は、車両制御装置11、記憶部12、車体部13、作業機14、通信部15、測位装置16、回転センサー17、植付駆動装置18などを備える。車両制御装置11は、記憶部12、車体部13、作業機14、測位装置16、回転センサー17、植付駆動装置18などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置11及び測位装置16は、無線通信可能であってもよい。
【0018】
初めに、作業車両10の一例である田植機について、
図2A及び
図2Bを参照して説明する。
図2Aは作業車両10の側面図であり、
図2Bは作業車両10の平面図である。作業車両10は、車体部13、左右一対の前輪132、左右一対の後輪133、作業機14(植付部)などを備える。
【0019】
車体部13の前部に配置されたボンネット134の内部には、エンジン131が配置されている。エンジン131が発生させた動力はミッションケース135を介して前輪132及び後輪133に伝達される。ミッションケース135を介して伝達された動力は、車体部13の後部に配置されたPTO軸37を介して作業機14にも伝達される。なお、PTO軸37には、植付クラッチ(作業クラッチ)(不図示)を介して動力が伝達されるように構成されている。
【0020】
図4A及び
図4Bには、植付駆動装置18の構成例を示している。
図4Aに示す植付駆動装置18は、1個の駆動源181(エンジン又はモーター)と、駆動源181の動力を無段変速機183及び走行部184に伝達するトランスミッション182と、トランスミッション182の動力を作業機14に伝達する無段変速機183と、無段変速機183を介して伝達される動力により駆動する作業機14と、トランスミッション182を介して伝達される動力により駆動する走行部184と、を備えている。作業機14は、車両制御装置11(植付処理部113)からの命令に従って、前記動力により植付作業を行う。走行部184は、車両制御装置11(走行処理部111)からの命令に従って、前記動力により走行動作を行う。
【0021】
図4Bに示す植付駆動装置18は、2個の駆動源181A、181B(エンジン又はモーター)と、駆動源181Aの動力を作業機14に伝達するトランスミッション182Aと、駆動源181Bの動力を走行部184に伝達するトランスミッション182Bと、トランスミッション182Aを介して伝達される動力により駆動する作業機14と、トランスミッション182Bを介して伝達される動力により駆動する走行部184と、を備えている。植付駆動装置18は、
図4Aに示す構成を備えてもよいし、
図4Bに示す構成を備えてもよい。
【0022】
車体部13の前後方向で前輪132及び後輪133の間の位置には、オペレータが搭乗する運転座席138が設けられている。運転座席138の前方には、操舵ハンドル137、主変速レバー(不図示)、植付クラッチレバー(不図示)等の操作具が配置されている。操舵ハンドル137は、作業車両10の舵角を変更するための操作具である。主変速レバーは、「前進」、「後進」、「苗継」、「中立」のポジションを少なくとも選択可能に構成されている。主変速レバーが「前進」の位置に操作されると、作業車両10を前進させる方向に前輪132及び後輪133が回転するように動力が伝達される。主変速レバーが「後進」の位置に操作されると、作業車両10を後進させる方向に前輪132及び後輪133が回転するように動力が駆動される。主変速レバーが「苗継」の位置に操作されると、前輪132、後輪133及びPTO軸37に対する動力の伝達が遮断される。主変速レバーが「中立」の位置に操作されると、前輪132、後輪133に対する動力の伝達が遮断される一方で、PTO軸37に対する動力の伝達は維持される。また、植付クラッチレバーが操作されることで、植付クラッチがPTO軸37(即ち作業機14)へ動力を伝達する伝達状態と、植付クラッチがPTO軸37(即ち作業機14)へ動力を伝達しない遮断状態と、を切り替えることができる。
【0023】
作業機14は、車体部13の後方に昇降リンク機構31を介して連結されている。昇降リンク機構31は、トップリンク39及びロワーリンク38等を含む平行リンク構造により構成されている。ロワーリンク38には昇降シリンダ(昇降装置)32が連結されている。昇降シリンダ32を伸縮させることにより、作業機14全体を上下に昇降させることができる。これにより、作業機14を下降させて植付作業を行う下降位置と、作業機14を上昇させて植付作業を行わない上昇位置との間で作業機14の高さを変更させることができる。なお、昇降シリンダ32は油圧シリンダであるが、電動シリンダを用いてもよい。また、シリンダ以外のアクチュエータにより作業機14を昇降させる構成であってもよい。
【0024】
作業機14(植付部)は、植付入力ケース33、複数の植付ユニット34、苗載台35、複数のフロート36などを備えている。
【0025】
各植付ユニット34は、植付伝動ケース41及び回転ケース42を備えている。植付伝動ケース41には、PTO軸37及び植付入力ケース33を介して動力が伝達される。各植付伝動ケース41には、車幅方向の両側に回転ケース42が取り付けられている。各回転ケース42には、作業車両10の進行方向に並べて2つの植付爪43が取り付けられている。これら2つの植付爪43により1条分の植付が行われる。
【0026】
図2Aに示すように、苗載台35は、植付ユニット34の前方上方に配置されており、苗マットを載置可能に構成されている。苗載台35は、往復で横送り移動可能(横方向にスライド可能)に構成されている。また、苗載台35は、苗載台35の往復移動端で苗マットを間欠的に下方に縦送り搬送可能に構成されている。この構成により、苗載台35は、苗マットの苗を各植付ユニット34に対して供給できるようになっている。こうして、作業車両10では、各植付ユニット34に対して苗を順次供給し、連続的に苗の植付けを行うことができる。
【0027】
図2Aに示すフロート36は、作業機14の下部に設けられ、その下面が地面に接触することができるように配置されている。フロート36が地面に接触することにより、苗を植え付ける前の田面が整地される。また、フロート36には、フロート36の揺動角を検出するフロートセンサ(不図示)が設けられている。フロート36の揺動角は、田面と作業機14との距離に対応している。作業車両10は、フロート36の揺動角に基づいて昇降シリンダ32を動作させて作業機14を上下に昇降させることにより、作業機14の対地高さを一定に保つことができる。
【0028】
予備苗台19は、ボンネット134の車幅方向外側に配置されており、予備のマット苗を収容した苗箱を搭載可能である。左右一対の予備苗台19の上部同士は、上下方向及び車幅方向に延びる連結フレーム19aによって互いに連結されている。連結フレーム19aの車幅方向の中央には、測位装置16が配置されている。
【0029】
測位装置16の内部には、測位制御部161、記憶部162、通信部163、測位用アンテナ164(
図1参照)が配置されている。測位用アンテナ164は、衛星測位システム(GNSS)を構成する衛星からの電波(GNSS信号)を受信することができる。測位制御部161は、測位用アンテナ164が衛星から受信するGNSS信号に基づいて作業車両10の現在位置を算出する。例えば、測位制御部161は、作業車両10に近い基地局(基準局)に対応する補正情報を利用して作業車両10の現在位置を算出する、リアルタイムキネマティック方式(RTK-GPS測位方式(RTK方式))による測位を行ってもよい。
【0030】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、車両制御装置11に後述の植付作業処理(
図13参照)を実行させるための植付作業プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記植付作業プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記植付作業プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して作業車両10にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作端末20において生成される目標経路Rの経路データが記憶されてもよい。
【0031】
車両制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御装置11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両10を制御する。
【0032】
車両制御装置11は、作業車両10に対する各種のユーザー操作に応じて作業車両10の動作を制御する。また、車両制御装置11は、測位装置16により算出される作業車両10の現在位置と、予め設定される目標経路Rとに基づいて、当該作業車両10の自動走行処理を実行する。
【0033】
図1に示すように、車両制御装置11は、走行処理部111、取得処理部112、植付処理部113、算出処理部114、設定処理部115などの各種の処理部を含む。なお、車両制御装置11は、前記CPUで前記植付作業プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記植付作業プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。前記植付作業プログラムは、本発明の作業プログラムの一例である。
【0034】
走行処理部111は、作業車両10の走行を制御する。具体的には、走行処理部111は、圃場Fに設定された目標経路Rに従って作業車両10を自動走行させる。例えば、走行処理部111は、操作端末20から作業開始指示を取得すると作業車両10の自動走行を開始させる。例えば、作業車両10の現在位置が走行開始条件を満たす位置にある場合において、操作端末20の操作画面においてオペレータがスタートボタンを押下すると、操作端末20は作業開始指示を作業車両10に出力する。走行処理部111は、操作端末20から前記作業開始指示を取得すると、作業車両10を目標経路Rに従って自動走行を開始させる。
【0035】
また、走行処理部111は、操作端末20から作業停止指示を取得すると作業車両10の自動走行を停止させる。例えば、操作端末20の操作画面においてオペレータが一時停止ボタンを押下すると、操作端末20は作業停止指示を作業車両10に出力する。
【0036】
取得処理部112は、作業経路における所定距離当たりの農業用資材(例えば苗)の供給回数(植付回数)の目標回数を取得する。例えば、オペレータは、植付作業を実施する前に、操作端末20の設定画面20B(
図12参照)において植付作業に関する作業条件を設定する。設定画面20Bには、3.3m
2(一坪)当たりの株数(目標栽植密度)を設定する設定欄K1と、株間(植付間隔)を設定する設定欄K2と、株間の補正処理(詳細は後述する)のON(入)/OFF(切)を設定する設定欄K3と、補正処理の感度を設定する設定欄K4とが含まれる。例えば、オペレータが設定欄K1に希望の株数を入力すると、株数に応じた株間が設定欄K2に設定される。例えば、オペレータが設定欄K1に「50株」を入力すると、株間が「22.0cm」に設定される。この場合、取得処理部112は、目標回数として、「2.2m当たり10回」(2.2m/10回)を取得する。なお、前記補正感度は、補正の頻度(前記所定距離の長さ)に対応するため、例えばオペレータが補正感度(5段階)を「4/5」から「3/5」に変更すると、目標回数が「4.4m当たり20回」(4.4m/20回)に変更される。この場合、取得処理部112は、目標回数として、「4.4m当たり20回」を取得する。すなわち、車両制御装置11は、補正感度が「4/5」の場合には2.2mごとに株間の補正処理を実行し、補正感度が「3/5」の場合には4.4mごとに株間の補正処理を実行する。前記補正感度が小さくなるに従って補正頻度が少なくなる。
【0037】
ここで、実施形態1に係る植付作業の具体例を説明する。
図5には、一つの作業経路(行程)において、目標回数が「L(m)当たりn回」に設定されており、植付間隔にずれが生じていない例を示している。
図5において、P0は作業開始位置(植付作業開始位置)を示し、P1は苗の植付位置を示している。例えば作業経路(直進経路R1)においてオペレータが植付クラッチレバーを操作して植付作業の開始指示を行うと、植付処理部113は、作業機14を駆動(回転)させて1株目の苗を植え付ける。設定処理部115は、1株目の苗の植え付けを検知すると、その時点の作業機14の位置を前記作業経路の作業開始位置P0に設定する。その後、植付処理部113は、前記作業経路において、苗をL(m)の所定区間ごとにn回植え付ける植付処理を繰り返し実行する。
図5には、一つの作業経路に含まれるL(m)の2つの所定区間を示している。
【0038】
前記植付処理において、取得処理部112は、作業経路の所定区間において作業車両10が前記目標回数の植付処理を終了した時点の作業車両10の走行距離を取得する。例えば、
図5に示す例において、作業車両10が作業開始位置P0からn回の植付処理を終了すると、取得処理部112は、作業車両10が実際に走行した走行距離D1(作業距離)を取得する。また、作業車両10が作業開始位置P0から(n×2)回の植付処理を終了すると、取得処理部112は、作業車両10が実際に走行した走行距離D2(作業距離)を取得する。取得処理部112は、本発明の第1取得処理部及び第2取得処理部の一例である。
【0039】
走行距離D1が目標回数(n回)に対応する所定距離Lに一致する場合には、当該所定区間において植付間隔にずれが生じていない。同様に、走行距離D2が目標回数(n×2回)に対応する全区間距離2L(所定距離Lの2倍)に一致する場合には、当該所定区間において植付間隔にずれが生じていない。
【0040】
これに対して、
図6には、一つの作業経路(行程)において、目標回数が「L(m)当たりn回」に設定されており、植付間隔にずれが生じている例を示している。
図6に示す例では、作業車両10がn回の植付処理を終了した時点で走行距離D1が所定距離L未満であり、距離差t1(=L-D1)が生じている。同様に、作業車両10が(n×2)回の植付処理を終了した時点で走行距離D2が全区間距離2L未満であり距離差t2(=2L-D2)が生じている。距離差t1、t2は、例えば作業車両10の車輪がスリップして植付間隔がずれた場合に生じる。車両制御装置11は、植付間隔にずれが生じた場合に以下に示す補正処理を実行する。具体的には、車両制御装置11は、作業機14(植付ユニット34の植付爪43)の回転数(以下、植付部回転数ωという。)を補正することにより植付間隔(株間)を補正する。
【0041】
例えば、算出処理部114は、植付部回転数ω(min
-1)を式(1)により算出する。式(1)の「a」は、補正係数であり、当該補正係数を変化させることにより植付部回転数ωを調整して株間を補正することが可能となる。すなわち、補正係数aは、苗を圃場Fに植え付ける植付部(植付爪43)の回転数を補正するパラメータである。補正係数aは、作業開始時に「1」に設定される。「V(m/min)」は、作業車両10の車速であり、GNSS信号、車軸回転数、推定スリップ率などに基づいて算出される。「N」は、植付爪43の1回転当たりの植付回数である。目標回数は「L(m)当たりn回」に設定されるものとする。
【数1】
【0042】
また、算出処理部114は、前記距離差に対応するずれ率ε(f)(距離偏差率)を式(2)により算出する。式(2)の「f」は、所定区間の数、すなわち前記目標回数の更新回数に相当する。例えば、
図6に示す例において、作業開始位置P0の最初のn回の区間は「f=1」に相当し、次のn回の区間は「f=2」に相当する。
【数2】
【0043】
作業開始位置P0の最初のn回の区間(f=1)のずれ率ε(1)は、「-(D1-L)/L」(=t1/L)で表される。次のn回の区間(f=2)のずれ率ε(2)は、「-(D2-2L)/L」(=t2/L)で表される。このように、算出処理部114は、所定距離Lを所定区間の数に応じて整数倍した全区間距離と、前記走行距離との距離差(t1、t2など)を算出し、前記距離差を前記所定距離で除算してずれ率εを算出する。なお、他の実施形態として、算出処理部114は、前記距離差を前記全区間距離(f×L)で除算してずれ率εを算出してもよい。この場合、ずれ率ε(2)は、「-(D2-2L)/2L」(=t2/2L)で表すことができる。
【0044】
設定処理部115は、前記所定距離及び前記走行距離に基づいて、作業経路における所定区間に続く次の所定区間における株間を設定する。具体的には、設定処理部115は、植付処理を終了した所定区間に対応する前記距離差に基づいて、次の所定区間における株間を設定する。具体的には、設定処理部115は、ずれ率εが0になる又は0に近づくように株間を設定する。
【0045】
例えば、設定処理部115は、走行距離D1が所定距離L未満の場合に、株間を広げるように補正係数aを設定する。また、設定処理部115は、ずれ率εに基づいて補正係数aを設定する。具体的には、設定処理部115は、以下の式(3)により補正係数a(f)を算出する。式(3)の「S」は、前記距離ずれ(植付間隔のずれ)を解消するまでの補正度合いを示す補正レベルであり、予め設定される。式(3)に示すように、設定処理部115は、補正係数aを更新するごと(n回の植付処理ごと)にずれ率εが1/Sずつ減少するように補正係数aを決定する。
【数3】
【0046】
車両制御装置11は、n回の植付処理を実行するごとにずれ率ε(f)を算出するとともに補正係数a(f)を更新して、植付部回転数ωを補正する。
【0047】
例えば
図7に示すように、1回目の補正係数a(1)の更新時にずれ率が5%(ε(1)=0.05)の場合に、車両制御装置11が上述の補正処理を繰り返し実行することにより、ずれ率ε(f)が0に近づいていく。
図7に示すように、補正レベルSが「5」の場合、ずれ率εはn回の植付処理が終了するごと(補正処理ごと)に1/5ずつ減少していく。また、補正レベルSが「2」の場合、ずれ率εはn回の植付処理が終了するごと(補正処理ごと)に1/2ずつ減少していく。このように、補正レベルSが大きいほどずれ率εが緩やかに0に近づくように植付部回転数ω(株間)が補正され、補正レベルSが小さいほどずれ率εが急峻に0に近づくように植付部回転数ω(株間)が補正される。
【0048】
なお、補正レベルSは、オペレータの設定操作により設定されてもよい。例えば、設定画面20B(
図12参照)に補正レベルSの設定欄が含まれてもよい。また、他の実施形態として、車両制御装置11が補正レベルSを自動的に設定してもよい。例えば、車両制御装置11は、土壌の深さ、スリップ率など圃場Fの状態に応じて補正レベルSを設定してもよい。例えば、車両制御装置11は、土壌の深さが深いほど補正レベルSを小さい値に設定することにより、少ない補正回数で距離ずれを解消する。また、車両制御装置11は、設定画面20Bにおいてオペレータにより入力される補正感度に応じて補正レベルSを設定してもよい。例えば、車両制御装置11は、前記補正感度が小さい(弱い)ほど補正レベルSを小さい値に設定することにより、少ない補正回数で距離ずれを解消する。
【0049】
以上のように、車両制御装置11は、所定距離を所定区間の数に応じて整数倍した全区間距離と、作業車両10の走行距離(作業距離)との距離差に基づいて、次の所定区間における植付間隔(株間)を設定する。なお、前記走行距離は、n回分の作業距離(所定区間ごとの距離)とは異なり、作業開始位置P0から作業車両10が目標回数の植え付け作業を終了した時点の作業車両10の位置までの距離である。
【0050】
換言すると、車両制御装置11は、前記走行距離の区間において作業車両10が苗の植え付けを実施した実施回数を前記走行距離で除算して算出される実施密度が、目標回数(n)を所定距離(L)で除算して算出される目標密度に近づくように、前記植付間隔を設定する。例えば、
図6に示す例において、車両制御装置11は、走行距離D1の区間において作業車両10が苗の植え付けを実施した実施回数(n)を走行距離D1で除算して算出される実施密度(n/D1)が目標回数(n)を所定距離(L)で除算して算出される目標密度(n/L)に近づくように、次の所定区間(第2所定区間)の植付間隔を設定し、走行距離D2の区間において作業車両10が苗の植え付けを実施した実施回数(n×2)を走行距離D2で除算して算出される実施密度(n×2/D2)が目標密度(n/L)に近づくように、次の所定区間(第3所定区間)の植付間隔を設定する。
【0051】
ところで、作業車両10は作業経路(直進経路R1)を走行中に植付作業を一時的に中断してその後に再開する場合がある。この場合には、車両制御装置11は、作業経路において作業車両10の植付作業が中断して再開された場合に、再開前のずれ率ε(pre)と、再開後の所定区間に対応するずれ率ε(f)とを合計した合計ずれ率εに基づいて、再開後の所定区間に続く所定区間における植付間隔を設定する。例えば
図8に示すように、作業車両10が位置P2において植付作業を一時中断してその後に再開した場合に、再開前のずれ率ε(pre)(=-(D2-2L)/L(=t2/L))と、再開後のずれ率ε(=-(D3-L)/L(=t3/L))とを合計した合計ずれ率εを算出する。また、車両制御装置11は、再開後の所定区間における補正係数aを算出する際に(上記式(3)参照)、再開前の補正係数a(pre)を初期値(a(0)=a(pre))として用い、再開前のずれ率ε(pre)を初期値(ε(0)=ε(pre))として用いる。車両制御装置11は、合計ずれ率εに基づいて補正係数aを算出して植付部回転数ω(株間)を補正する。
【0052】
このように、車両制御装置11は、作業経路(一行程)内で植付作業を一時中断及び再開した場合でも一行程内の栽植密度を制御できるように、作業中断時にずれ率ε及び補正係数aを記録して再開後の補正処理に引き継ぐ。具体的には、車両制御装置11は、一行程内で植付作業を一時中断したときに、最後に算出したずれ率(ε(pre))及び補正係数(a(pre))を記録する。次に植付作業を再開したときに、車両制御装置11は、補正処理において、再開前のずれ率ε(pre)と再開後のずれ率εとを合計した合計ずれ率を算出し、補正係数aの初期値(a(pre))とずれ率εの初期値(ε(pre))とを用いて補正係数aを算出する。
【0053】
また、車両制御装置11は、植付作業の再開前の経路と再開後の経路とが同一作業行程内の経路(例えば一つの直進経路R1)である場合に、合計ずれ率に基づいて、前記再開後の所定区間に続く所定区間における植付間隔を設定する。なお、直進経路R1から次の直進経路R1に移行(例えば往路から復路に移行)した場合、すなわち作業行程が異なる経路に移行した場合には、車両制御装置11は、ずれ率εを引き継がないことが好ましい。例えば、車両制御装置11は、作業開始時の車両方位と作業方向とのなす角度を算出し、当該角度が閾値以上である場合にずれ率εの記録値を使用しない構成としてもよい。
図3に示す目標経路Rの場合、車両制御装置11は、作業車両10が旋回経路R2の走行を開始すると、車両方位が作業方向からずれて前記角度が閾値以上となる。この場合、車両制御装置11は、旋回経路R2に続く直進経路R1における植付作業において、直前の直進経路R1において算出したずれ率εをリセットして補正処理を実行する。
【0054】
また、目標経路Rにおいて、植付作業を行う作業経路に非直線経路が含まれる場合がある。
図9には、非直線経路における植付作業の一例を示している。
図9においてA1は植付作業の開始時の作業車両10の進行方向を示し、R3は作業車両10の作業経路を示している。作業経路R3は、非直線経路(曲線経路)となっている。この場合において、車両制御装置11は、例えば所定区間X1において植付作業を終了後に前記補正処理を実行する場合に、作業開始位置P0から作業車両10の位置までの距離として
図9に示す走行距離Dxを算出すると、作業車両10が作業経路R3を実際に走行した距離(曲線距離)からずれてしまう。このため、車両制御装置11は、適切な補正係数aを設定することができない。
【0055】
そこで、車両制御装置11は、作業経路が非直線経路の場合には、複数の所定区間ごとに作業開始位置P0を再設定することが好ましい。例えば
図10に示すように、車両制御装置11は、複数の所定区間の植付作業が終了後に、作業開始位置P0´を再設定する。これにより、例えば所定区間X1において、車両制御装置11は、作業車両10が作業経路R3を実際に走行した距離に近似した走行距離Dxを算出することができる。
【0056】
このように、車両制御装置11は、定期的に走行距離Dxの算出の基準位置(作業開始位置P0)を更新することにより正確に走行距離Dxを算出することができる。なお、車両制御装置11は、補正係数aの更新処理を所定回数実行したときに作業開始位置P0の更新を実施してもよい。また、車両制御装置11は、作業開始位置P0を更新したときに、更新前の補正処理において算出したずれ率ε及び補正係数aを、次の補正処理に引き継いでもよい。
【0057】
なお、作業車両10が直進経路R1のみ自動走行を行う走行モードの場合、車両制御装置11は、作業開始位置P0の更新処理を実行しない。また、作業車両10が直進経路R1及び枕地領域を自動走行する走行モードの場合において、枕地領域に非直線経路が含まれる場合に、枕地領域の植付作業において自動的に作業開始位置P0の更新処理を実行する。また、車両制御装置11は、予め作業領域として直進作業領域と枕地作業領域とが設定されている場合に、直進作業領域内では作業開始位置P0を更新しない構成としてもよい。
【0058】
[操作端末20]
図1に示すように、操作端末20は、操作制御部21、記憶部22、操作表示部23、及び通信部24などを備える情報処理装置である。操作端末20は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成されてもよい。
【0059】
通信部24は、操作端末20を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0060】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。オペレータは、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種情報(後述の作業車両情報、圃場情報、作業情報など)を登録する操作を行うことが可能である。例えば、オペレータは、前記操作部において、作業対象の圃場Fを登録する操作を行う。
【0061】
また、オペレータは、前記操作部を操作して作業車両10に対する作業開始指示、作業停止指示などを行うことが可能である。さらに、オペレータは、作業車両10から離れた場所において、操作端末20に表示される走行軌跡により、圃場Fを目標経路Rに従って自動走行する作業車両10の走行状態を把握することが可能である。
【0062】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部22には、操作制御部21に所定の処理を実行させるための制御プログラムが記憶されている。例えば、前記制御プログラムは、フラッシュROM、EEPROM、CD、又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。なお、前記制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末20にダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。
【0063】
また、記憶部22には、作業車両10を自動走行させるための専用アプリケーションがインストールされている。操作制御部21は、前記専用アプリケーションを起動させて、作業車両10に関する各種情報の設定処理、作業車両10の目標経路Rの生成処理、作業車両10に対する自動走行指示などを行う。
【0064】
また、記憶部22には、作業車両10に関する情報である作業車両情報、目標経路Rに関する情報である目標経路情報などのデータが記憶される。前記作業車両情報には、作業車両10ごとに、車両番号、型式などの情報が含まれる。前記車両番号は、作業車両10の識別情報である。前記型式は、作業車両10の型式である。
【0065】
また、記憶部22には、1台の作業車両10に関する前記作業車両情報が記憶されてもよいし、複数台の作業車両10に関する前記作業車両情報が記憶されてもよい。例えば、特定のオペレータが複数台の作業車両10を所有する場合、各作業車両10に関する前記作業車両情報が記憶部22に記憶される。
【0066】
前記目標経路情報には、目標経路Rごとに、経路名、圃場名、住所、圃場面積、作業時間などの情報が含まれる。前記経路名は、操作端末20において生成された目標経路Rの経路名である。前記圃場名は、目標経路Rが設定された作業対象の圃場Fの名称である。前記住所は、圃場Fの住所であり、前記圃場面積は、圃場Fの面積である。前記作業時間は、作業車両10により圃場Fの作業に要する時間である。
【0067】
また、記憶部22には、一つの目標経路Rに関する前記目標経路情報が記憶されてもよいし、複数の目標経路Rに関する前記目標経路情報が記憶されてもよい。例えば、特定のオペレータが、自身が所有する一又は複数の圃場Fに対して複数の目標経路Rを生成した場合、各目標経路Rに関する前記目標経路情報が記憶部22に記憶される。なお、一つの圃場Fに対して、一つの目標経路Rが設定されてもよいし、複数の目標経路Rが設定されてもよい。
【0068】
なお、他の実施形態として、前記作業車両情報、前記目標経路情報などの情報の一部又は全部が、操作端末20からアクセス可能なサーバーに記憶されてもよい。オペレータは、前記サーバー(例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバーなど)において前記作業車両情報及び前記目標経路情報を登録する操作を行ってもよい。
【0069】
操作制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリとして使用される。そして、操作制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末20を制御する。
【0070】
図1に示すように、操作制御部21は、設定処理部211、出力処理部212などの各種の処理部を含む。なお、操作制御部21は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0071】
設定処理部211は、作業車両10に関する情報(以下、作業車両情報という。)、圃場Fに関する情報(以下、圃場情報という。)、作業を具体的にどのように行うかに関する情報(以下、作業情報という。)を設定する。設定処理部211は、例えば
図11に示す設定画面20Aにおいてオペレータの設定操作を受け付けて各設定情報を登録する。
【0072】
具体的には、設定処理部211は、作業車両10の機種、作業車両10において測位用アンテナ164が取り付けられている位置、作業機14の種類、作業機14のサイズ及び形状、作業機14の作業車両10に対する位置、作業車両10の作業中の走行速度及びエンジン回転数、作業車両10の旋回中の走行速度及びエンジン回転数等の情報について、オペレータが操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。
【0073】
また、設定処理部211は、圃場Fの位置及び形状、走行を開始する走行開始位置St及び走行を終了する走行終了位置G、走行方向(作業方向)等の情報について、操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。
【0074】
圃場Fの位置及び形状の情報は、例えばオペレータが作業車両10に搭乗して圃場Fの外周に沿って一回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ164の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。また、圃場Fの位置及び形状は、操作端末20に地図を表示させた状態でオペレータが操作端末20を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場Fの位置及び形状により特定される領域は、作業車両10を走行させることが可能な領域(走行領域)である。
【0075】
設定処理部211は、作業情報として、作業車両10(無人田植機)と有人の作業車両10の協調作業の有無、作業車両10が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路の数であるスキップ数、枕地の幅、及び非作業地の幅等を設定可能に構成されている。
【0076】
例えば、設定処理部211は、登録された圃場Fにおいて実際に作業を行うための作業領域を設定する。例えば、オペレータが設定画面20A(
図11参照)の「作業領域登録」を選択し、作業領域を登録する圃場Fを選択すると、設定処理部211は、走行開始位置St及び走行終了位置Gを登録する登録画面(地図画面)を表示させる。オペレータは前記登録画面において、圃場F内の任意の位置に走行開始位置St及び走行終了位置Gを登録する。
【0077】
また、設定処理部211は、前記各設定情報に基づいて、圃場Fにおいて作業車両10を自動走行させる目標経路Rを生成する。例えば、オペレータが設定画面20A(
図11参照)の「経路作成」を選択すると、設定処理部211は、経路を生成するための登録画面(不図示)を表示させる。前記登録画面において、オペレータは、圃場F、作業機14、旋回方法、枕地領域、車速、エンジン回転などの各情報を登録した後、経路生成指示を行う。設定処理部211は、前記経路生成指示を取得すると、走行開始位置St、走行終了位置G、及び前記各情報に基づいて目標経路Rを生成する。
【0078】
例えば
図3に示すように、設定処理部211は、走行開始位置St、走行終了位置G、直進経路R1、旋回経路R2を含む目標経路Rを生成する。設定処理部211は、生成した目標経路Rを圃場Fに関連付けて登録する。
【0079】
また、設定処理部211は、目標経路Rを生成すると、植付作業に関する作業条件を設定する設定画面20Bを表示させる。設定画面20Bにおいて、オペレータは、株数(栽植密度)、株間(植付間隔)、株間の補正処理のON/OFF、補正感度を設定する。例えば、オペレータは、希望の株数を設定欄K1に入力する。設定処理部211は、入力された株数に基づいて株間を設定する。また、設定処理部211は、オペレータにより入力される補正感度に基づいて、前記補正処理の対象区間となる所定距離Lを設定し、所定距離における植付回数(目標回数n)を設定する。なお、オペレータは、株数の代わりに株間を設定欄K2に入力してもよい。
【0080】
出力処理部212は、目標経路Rの経路データと作業条件の情報(作業条件情報)とを作業車両10に出力する。例えば、オペレータが作業対象の圃場F及び作業経路(目標経路R)を選択して作業開始操作を行うと、圃場Fに対応する目標経路Rの経路データと作業条件情報とを作業車両10に出力する。
【0081】
作業車両10は、操作端末20において生成された目標経路Rの経路データを受信すると記憶部12に記憶する。また、作業車両10は、前記走行開始条件を満たす場合に、オペレータによる作業開始指示に応じて自動走行を開始する。オペレータは、作業車両10が自動走行している間、操作端末20において、圃場F内における走行状態を把握することが可能である。
【0082】
また、作業車両10は、前記作業条件情報を取得すると、前記作業条件情報に基づいて前記植付間隔(株間)を補正する補正処理を実行する。
【0083】
なお、操作端末20は、サーバー(不図示)が提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末20は、操作制御部21によってブラウザプログラムが実行されることにより、前記サーバーの操作用端末として機能することが可能である。そして、前記サーバーは、上述の各処理部を備え、各処理を実行する。
【0084】
[実施形態1の植付作業処理]
以下、
図13を参照しつつ、作業システム1が実行する前記植付作業処理の一例について説明する。
【0085】
なお、本発明は、前記植付作業処理に含まれる一又は複数のステップを実行する植付作業方法(本発明の作業方法の一例)の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記植付作業処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。なお、前記植付作業処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは車両制御装置11が前記植付作業処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該植付作業処理における各ステップを分散して実行する植付作業方法も他の実施形態として考えられる。
【0086】
先ずステップS11において、作業車両10の車両制御装置11は、前記作業条件情報に含まれる植付作業の目標回数を取得する。具体的には、車両制御装置11は、「L(m)当たりn回」の目標回数(
図6参照)を取得する。
【0087】
次にステップS12において、車両制御装置11は、作業開始指示を取得したか否かを判定する。車両制御装置11は、前記作業開始指示を取得すると(S12:Yes)、処理をステップS13に移行させる。車両制御装置11は、前記作業開始指示を取得するまで待機する(S12:No)。
【0088】
ステップS13において、車両制御装置11は、作業開始位置P0を設定する。例えばオペレータが植付クラッチレバーを操作して植付作業の開始指示を行うと、車両制御装置11は、作業機14を駆動(回転)させて1株目を植え付け、1株目の植え付けを検知した時点の作業機14の位置を作業開始位置P0に設定する。
【0089】
他の実施形態として、車両制御装置11は、予め設定された位置([実施形態2]の仮想作業直線L1上の位置)に基づいて作業開始位置P0を設定してもよい。
【0090】
また他の実施形態として、車両制御装置11は、回転センサー17により植付部(植付爪43)の回転動作(回転位相)を検出した時点の作業機14の位置を作業開始位置P0に設定してもよい。
【0091】
次にステップS14において、車両制御装置11は、植付処理を実行する。具体的には、車両制御装置11は、作業経路において、「L(m)当たりn回」の目標回数に従って植付処理を実行する。具体的には、車両制御装置11は、前記目標回数に対応する植付部回転数ωを植付駆動装置18に出力して作業機14(植付部)を駆動(回転)させる。
【0092】
次にステップS15において、車両制御装置11は、植付回数が目標回数に到達したか否かを判定する。例えば
図6に示す例において、車両制御装置11は、作業開始位置P0から植付回数がn回に到達したか否かを判定する。車両制御装置11は、前記植付回数が前記目標回数に到達すると(S15:Yes)、処理をステップS16に移行させる。一方、車両制御装置11は、前記植付回数が前記目標回数に到達していない場合(S15:No)、処理をステップS19に移行させる。
【0093】
ステップS16において、車両制御装置11は、作業車両10の走行距離(作業距離)を取得(算出)する。具体的には、車両制御装置11は、作業開始位置P0からn回の植付作業を終了した時点の作業車両10の位置までの距離を算出する。例えば
図6に示す例において、車両制御装置11は、走行距離D1を取得する。
【0094】
次にステップS17において、車両制御装置11は、前記走行距離と前記所定距離に対応する全区間距離とが一致するか否かを判定する。例えば
図6に示す走行距離D1は最初の区間に相当するため、全区間距離は所定距離Lとなる。この場合、車両制御装置11は、走行距離D1と所定距離Lとが一致するか否かを判定する。車両制御装置11は、前記走行距離と前記全区間距離とが一致する場合(S17:Yes)(
図5参照)、処理をステップS19に移行させる。一方、車両制御装置11は、前記走行距離と前記全区間距離とが一致しない場合(S17:No)(
図6参照)、処理をステップS18に移行させる。
【0095】
ステップS18において、車両制御装置11は、植付間隔(株間)にずれが生じていると判断して植付間隔を補正する補正処理を実行する。
【0096】
具体的には、車両制御装置11は、走行距離D1と所定距離Lとの距離差t1(
図6参照)を算出し、距離差t1に対応するずれ率ε(1)を前記式(2)により算出する。車両制御装置11は、ずれ率ε(1)として、「-(D1-L)/L」(=t1/L)を算出する。次に、車両制御装置11は、ずれ率ε(1)に基づいて、前記式(3)により補正係数a(1)を決定する。次に、車両制御装置11は、補正係数a(1)を用いて、前記式(1)により植付部回転数ωを算出する。
【0097】
ステップS19において、車両制御装置11は、作業車両10が走行終了位置Gに到達したか否かを判定する。例えば、車両制御装置11は、作業車両10が走行終了位置Gに到達すると(S19:Yes)、処理を終了する。車両制御装置11は、作業車両10が走行終了位置Gに到達しない場合(S19:No)、処理をステップS14に移行させる。なお、車両制御装置11は、オペレータから作業終了指示を受け付けた場合に処理を終了してもよい。
【0098】
例えば、車両制御装置11が補正係数a(1)に基づいて植付部回転数ωを補正した場合、ステップS14において、車両制御装置11は、補正後の植付部回転数ωを植付駆動装置18に出力して作業機14(植付部)を駆動(回転)させる。
【0099】
これにより、作業機14は、次の所定区間において補正後の植付部回転数ωにより植付作業を実施する。
図6に示す例において、植付回数がn回に到達すると(S15:Yes)、ステップS16において、車両制御装置11は、作業開始位置P0からn回の植付作業を終了した時点の作業車両10の位置までの距離として走行距離D2を取得する。車両制御装置11は、走行距離D2と全区間距離2L(所定距離Lの2倍)とが一致するか否かを判定し(S17)、前記走行距離と前記全区間距離とが一致しない場合に、植付間隔(株間)にずれが生じていると判断して植付間隔を補正する補正処理を実行する(S18)。
【0100】
ここでは、車両制御装置11は、走行距離D2と全区間距離2Lとの距離差t2を算出し、距離差t2に対応するずれ率ε(2)を前記式(2)により算出する。車両制御装置11は、ずれ率ε(2)として、「-(D2-2L)/L」(=t2/L)を算出する。次に、車両制御装置11は、ずれ率ε(2)に基づいて、前記式(3)により補正係数a(2)を決定する。次に、車両制御装置11は、補正係数a(2)を用いて、前記式(1)により植付部回転数ωを算出する。
【0101】
このように、車両制御装置11は、前記目標回数の植付作業後の前記走行距離が前記所定距離に応じた前記全区間距離からずれた場合に、補正係数aを調整して植付部回転数ωを制御することにより植付間隔を補正する。
【0102】
なお、作業経路において植付作業の回数が目標回数に到達しない間は(S15:No)、車両制御装置11は、設定された補正係数aに基づいて前記式(1)により算出される植付部回転数ωに従って植付処理を実行する。
【0103】
車両制御装置11は、作業車両10が走行終了位置Gに到着するまで上述の処理(S14~S18)を継続する(S19:No)。車両制御装置11は、以上のようにして前記植付作業処理を実行する。
【0104】
以上説明したように、実施形態1に係る作業システム1は、作業車両10により農業用資材(苗、種、肥料、薬剤など)を圃場Fに供給する。また、作業システム1は、作業経路における所定距離当たりの前記農業用資材の供給回数の目標回数を取得し、前記作業経路の第1所定区間において作業車両10が前記目標回数の前記農業用資材の供給を終了した時点の作業車両10の走行距離を取得し、前記所定距離及び前記走行距離に基づいて、前記作業経路における前記第1所定区間に続く第2所定区間における前記農業用資材の供給間隔を設定する。
【0105】
このように、作業システム1では、株間が圃場全体で一定となるように制御する構成とは異なり、一定面積内の栽植密度が目標値を満たすように供給間隔(植付間隔)を制御する構成である。具体的には、作業システム1は、算定される面積に応じた株数を検出し、目標とする栽植密度(植付株数)とのずれ量に応じて植付部回転数ωを調整する。
【0106】
上記構成によれば、例えば、第1所定区間における植栽密度(植付株数)が目標値未満になった場合に、第2所定区間において植栽密度を増加させることができるため、圃場全体で見た場合に、栽植密度及び供給量を目標値に近づけることができる。
【0107】
また、作業システム1において、車両制御装置11は、作業開始位置P0からの走行距離(作業距離)と、作業開始位置P0からの植付回数とを算出する。なお、車両制御装置11は、回転センサー17により植付部の回転位相を検出することにより、スリップ率の情報だけでは正確に分からなかった走行距離当たりの植付回数(栽植密度)の検出が可能となる。
【0108】
また、作業システム1において、車両制御装置11は、植付作業後の実栽植密度と、予めオペレータにより設定された目標栽植密度とを比較し、実栽植密度が目標栽植密度に近づくように植付部回転数ωを補正する。車両制御装置11は、この補正処理を予め設定された所定距離又は植付回数ごとに繰り返し実行する。栽植密度の目標値と実際の栽植密度とを比較して植付部回転数ωを制御することにより、目標栽植密度に近付けることができる。また、予め設定した所定距離又は植付回数ごとに植付部回転数ωを制御する構成によれば、従来の構成のように株間ごとに制御する必要がないため、作業システム1を安価に構築することができる。
【0109】
また、作業システム1において、車両制御装置11は、植付作業を終了した場合に、終了した時点のずれ率ε及び補正係数aを記録し、目標栽植密度の変更や予め設定される目標回数及び所定距離が変更されるまで記憶する。また、車両制御装置11は、作業再開時の補正係数aとして前記記憶された補正係数aを利用する。また、車両制御装置11は、再開後の補正処理において、再開前のずれ率εと再開後のずれ率εとを合計した合計ずれ率を利用する。これにより、機械ばらつき等でずれ率εが常に高低のいずれかにずれる場合に、ずれ率ε及び補正係数aを引き継ぐことにより、作業開始時から目標値に近い栽植密度を実現することができる。また、ずれ率εを引き継ぐことにより圃場全体の平均栽植密度を制御することが可能になる。なお、車両制御装置11は、前回の作業方向と異なる方向に作業を再開した場合に、記憶されたずれ率ε及び補正係数aをリセットしてもよい。
【0110】
また、作業システム1において、車両制御装置11は、植付作業開始後、ずれ率ε及び補正係数aの更新処理を予め設定された回数だけ実行したときに、作業開始位置P0を更新してもよい。このとき、車両制御装置11は、目標栽植密度の変更や予め設定された目標回数及び所定距離が変更されるまで、ずれ率ε及び補正係数aを記憶し、変更後の補正処理では前記記憶されたずれ率ε及び補正係数aを利用する。なお、車両制御装置11は、変更後の補正処理において、変更前のずれ率εと変更後のずれ率εとを合計した合計ずれ率を利用する。これにより、枕地領域など直線経路ではない作業経路での作業時においても、一定間隔ごとに折れ線の経路として走行距離(作業距離)算出することにより(
図10参照)、栽植密度を高精度に制御することが可能となる。
【0111】
[実施形態1の他の構成例]
上述の実施形態では、車両制御装置11は、植付回数が目標回数のn回に達した時点の作業車両10の走行距離(作業距離)と、前記目標回数に対応する所定距離(全区間距離)との距離ずれを算出して、距離ずれが生じた場合に植付間隔を補正する補正処理を実行する構成である。
【0112】
他の構成例として、車両制御装置11は、作業車両10が予め設定された所定距離を走行(植付作業)した時点の実際の植付回数(実作業回数)が目標回数のn回に達しているか否かを判定し、前記実作業回数と前記目標回数とにずれ(回数差)が生じた場合に植付間隔を補正する補正処理を実行してもよい。
【0113】
この構成例では、車両制御装置11は、実作業回数Xと目標回数nとの差(回数差)に対応するずれ率ε(f)(回数偏差率)を式(4)により算出する。式(4)の「f」は、所定区間の数、すなわち前記目標回数の更新回数に相当する。
【数4】
【0114】
図14及び
図15に補正処理の一例を示す。ここでは、目標回数として、「2m当たり10回」が設定されているものとする。
図14に示すように、作業開始位置P0から最初の所定区間において作業車両10が所定距離の2mを走行した時点で実作業回数が「9回」となっており、目標回数「10回」に達していない。この場合、車両制御装置11は、ずれ率ε(1)として「0.1」(=-(9-10)/10)を算出し、ずれ率ε(1)を用いて、前記式(3)により補正係数a(1)を決定する。そして、車両制御装置11は、補正係数a(1)を用いて、前記式(1)により植付部回転数ωを算出する。例えば、車両制御装置11は、「2m当たり10.5回」の植付動作を実行する植付部回転数ωを出力する。作業車両10は、次の所定区間において補正後の植付部回転数ωに基づいて植付作業を実施する。これにより、次の所定区間において作業車両10が2m走行した時点で当該所定区間の実作業回数が「11回」となり、最初の実作業回数との合計が20回となり、4mの目標回数「20回」に一致する。実作業回数が目標回数に一致すると、車両制御装置11は、前記補正処理を省略して植付部回転数ω(「2m当たり10.5回」)を維持して次の所定区間に移行する。
【0115】
図15に示す例では、作業開始位置P0から最初の所定区間において作業車両10が所定距離の2m走行した時点で実作業回数が「9回」となっており、目標回数に達していない。この場合、車両制御装置11は、ずれ率ε(1)として「0.1」を算出し、ずれ率ε(1)を用いて、前記式(3)により補正係数a(1)を決定する。そして、車両制御装置11は、補正係数a(1)を用いて、前記式(1)により植付部回転数ωを算出する。例えば、車両制御装置11は、「2m当たり11回」の植付動作を実行する植付部回転数ωを出力する。作業車両10は、次の所定区間において補正後の植付部回転数ωに基づいて、植付作業を実施する。これにより、次の所定区間において作業車両10が2m走行した時点で当該所定区間の実作業回数が「10回」となり、最初の実作業回数との合計が19回となり、4mの目標回数「20回」に達していない。この場合、車両制御装置11は、ずれ率ε(2)として「0.05」(=-(19-20)/10)を算出し、ずれ率ε(2)を用いて、前記式(3)により補正係数a(2)を決定する。そして、車両制御装置11は、補正係数a(2)を用いて、前記式(1)により植付部回転数ωを算出する。例えば、車両制御装置11は、「2m当たり12回」の植付動作を実行する植付部回転数ωを出力する。作業車両10は、次の所定区間において補正後の植付部回転数ωに基づいて植付作業を実施する。これにより、次の所定区間において作業車両10が2m走行した時点で当該所定区間の実作業回数が「11回」となり、最初の実作業回数からの合計が30回となり、6mの目標回数「30回」に一致する。実作業回数が目標回数に一致すると、車両制御装置11は、前記補正処理を省略して植付部回転数ωを維持して次の所定区間に移行する。
【0116】
ここで、実作業回数が目標回数に一致した場合において、次の所定区間において実作業回数が目標回数を超える可能性がある場合に、車両制御装置11は、植付部回転数ωを補正してもよい。例えば
図15に示すように、6m~8mの所定区間において、車両制御装置11は、「2m当たり11回」の植付動作を実行する植付部回転数ωを出力してもよい。これにより、前記所定区間において作業車両10が2m走行した時点で当該所定区間の実作業回数が「10回」となり、最初の実作業回数からの合計が40回となり、8mの目標回数「40回」に一致する。
【0117】
このようにして、車両制御装置11は、所定区間(所定距離)ごとに目標回数を調整しながら植付処理を実行する。
【0118】
以上のように、他の構成例に係る作業システム1は、作業経路における所定距離当たりの農業用資材の供給回数の目標回数を取得し、作業車両10が前記所定距離の第1走行区間において前記農業用資材の供給を実施した実作業回数を取得し、前記目標回数と前記実作業回数との差に基づいて、前記第1所定区間に続く第2所定区間における前記農業用資材の供給間隔を設定する。
【0119】
実施形態1に係る作業システム1において、車両制御装置11は、予め設定した目標回数の作業を実施した場合の走行距離に基づいてずれ率εを算出する構成(第1構成)としてもよいし、予め設定した走行距離を作業車両10が走行した場合の実作業回数に基づいてずれ率εを算出する構成(第2構成)としてもよい。
【0120】
また、作業システム1は、前記第1構成及び前記第2構成とのいずれかをオペレータが選択可能であってもよい。また、車両制御装置11は、圃場Fの状態、目標経路Rの経路情報、目標植栽密度などの情報に基づいて、前記第1構成及び前記第2構成のいずれかを適用してもよい。
【0121】
[実施形態2]
ところで、圃場Fにおいて苗を植え付ける植付作業において、枕地領域を旋回後の植付位置(作業開始位置)を各作業経路において揃える技術が知られている。しかし、従来の技術では、現在走行している作業経路の作業終了位置と次の作業経路の作業開始位置とを揃える構成であるため、圃場全体で見た場合に各作業経路における作業開始位置にずれが生じることが考えられる。これに対して、実施形態2に係る作業システム1は、圃場全体において各作業経路の作業開始位置を揃えることが可能な構成を備えている。
【0122】
以下、実施形態2に係る作業システム1について説明する。以下では、実施形態1に係る作業システム1の構成と同一の構成については説明を省略する。
【0123】
実施形態2に係る車両制御装置11において、取得処理部112は、農業用資材(例えば苗)の株間(植付間隔)を取得する。例えば、取得処理部112は、設定画面20B(
図12参照)において設定された植付作業に関する作業条件の情報(作業条件情報)から株間を取得する。
図12に示す例では、取得処理部112は、株間として「22.0cm」を取得する。
【0124】
設定処理部115は、植付作業を開始する作業開始位置を設定するための基準位置である作業開始基準位置Pxを設定する。作業開始基準位置Pxは、圃場Fにおいて植付作業を行う際の基準となる位置であり、圃場Fに対して一箇所に設定される。具体的には、設定処理部115は、任意のタイミングで植付作業が開始された時点の作業車両10(作業機14)の位置に作業開始基準位置Pxを設定する。例えば1行程目の作業経路(直進経路R1)において、オペレータが植付クラッチレバーを操作して植付作業の開始指示を行うと、植付処理部113は、作業機14を駆動(回転)させて1株目の苗を植え付ける。設定処理部115は、1行程目の作業経路において1株目の苗の植え付けを検知すると、その時点の作業機14の位置を作業開始基準位置Pxに設定する。設定処理部115は、設定した作業開始基準位置Pxの情報を圃場Fに関連付けて記憶部12に記憶する。
【0125】
なお、作業開始基準位置Pxは1株目の苗を実際に植え付けた位置に限定されず、例えば、設定処理部115は、植付作業の開始指示を取得した時点の作業機14の位置を作業開始基準位置Pxに設定してもよい。
【0126】
また、設定処理部115は、複数の作業経路のうち最初に植付作業が行われる作業経路において苗が最初に植え付けられる位置に、作業開始基準位置Pxを設定する。
【0127】
他の実施形態として、設定処理部115は、作業車両10の挙動情報に基づいて、作業開始基準位置Pxを設定してもよい。例えば、設定処理部115は、作業車両10の位置情報に加えて、前進及び後進を含む作業車両10の作業方向(走行方向)、植付作業の作業速度、作業車両10の姿勢角度、作業機14の下降及び上昇、作業機14の駆動のON/OFF、作業機14の駆動回転速度、線引マーカー装置の作業/非作業、車両方位を変更する操向タイヤの角度、作業車両10又は作業機14への農業用資材の積載有無のいずれかの情報、又は、複数の情報を含む挙動情報の変化に基づいて作業開始基準位置Pxを設定する。
【0128】
例えば、設定処理部115は、作業車両10に苗が積載されていない状態から苗が積載された状態になってから最初に苗を植え付けた位置を作業開始基準位置Pxに設定する。また例えば、圃場Fの出入口付近において、作業車両10の姿勢(傾き)、車両方位などが変化した場合には、設定処理部115は、作業車両10が圃場F外から圃場F内に進入したと判断して、当該変化を検出してから最初に苗を植え付けた位置を作業開始基準位置Pxに設定する。このように、作業車両10の特定の挙動の変化に基づいて作業開始基準位置Pxを設定する構成によれば、作業開始基準位置Pxを決定するためにオペレータが予め圃場Fの形状を取得する必要がないため作業性を向上させることができる。
【0129】
設定処理部115は、作業開始基準位置Pxを設定すると、取得処理部112により取得された前記株間と作業開始基準位置Pxとに基づいて、複数の作業経路(直進経路R1)のそれぞれに対応する作業開始位置Psを設定する。具体的には、設定処理部115は、作業開始基準位置Pxから前記株間の間隔で配列される複数の仮想作業直線L1を設定し、複数の直進経路R1のそれぞれにおいて、作業開始位置Psを仮想作業直線L1上に設定する。
【0130】
例えば
図16に示すように、設定処理部115は、圃場Fに作業開始基準位置Pxを設定すると、作業開始基準位置Pxを通り、作業方向(Y方向)に直交するX方向に延伸する仮想作業直線L1を設定し、仮想作業直線L1を株間Ltの間隔でY方向に複数設定する。設定処理部115は、圃場F全体に仮想作業直線L1を設定する。
【0131】
なお、圃場Fの形状が矩形ではなく台形、平行四辺形など傾斜辺を含む異形の場合に、設定処理部115は、圃場Fの傾斜辺に平行に延伸する仮想作業直線L1を設定してもよい。
【0132】
図17には、植付作業の一例を示している。
図17では、第1行程の作業経路Ra、第2行程の作業経路Rb、第3行程の作業経路Rc、第4行程の作業経路Rdを示している。作業車両10は、作業経路Raにおいて、作業開始基準位置Pxで植付作業を開始すると、株間Ltごとに植付作業を行う。作業車両10が第2行程に移動すると、設定処理部115は、作業経路Rbにおいて仮想作業直線L1上に作業開始位置Psを設定する。同様に、作業車両10が第3行程に移動すると、設定処理部115は、作業経路Rcにおいて仮想作業直線L1上に作業開始位置Psを設定し、作業車両10が第4行程に移動すると、設定処理部115は、作業経路Rdにおいて仮想作業直線L1上に作業開始位置Psを設定する。
【0133】
図17に示す例では、各行程において作業開始位置Psが同一の仮想作業直線L1上に設定されている。他の実施形態として、設定処理部115は、各行程の作業開始位置Psを異なる仮想作業直線L1上に設定してもよい。例えば
図18に示すように、設定処理部115は、作業経路Rbの作業開始位置Psと作業経路Rdの作業開始位置Psとを異なる仮想作業直線L1に設定してもよい。
図18に示す構成によれば、例えば
図19に示すように、圃場Fの形状が矩形でない場合、すなわち作業方向(Y方向)に対して圃場が傾斜している場合に、各作業経路の作業開始位置Psを傾斜に沿った位置に設定することができる。すなわち、設定処理部115は、作業開始基準位置Pxを設定すると、取得処理部112により取得された前記株間と作業開始基準位置Pxと圃場Fの形状とに基づいて、複数の作業経路のそれぞれに対応する作業開始位置Psを設定してもよい。
【0134】
このように、作業開始基準位置Pxを基準として複数の作業開始位置Psを設定する構成によれば、圃場Fの形状に関わらず適切な位置に作業開始位置Psを設定することが可能となる。
【0135】
ここで、作業車両10が、作業開始基準位置Px及び作業開始位置Psに基づいて植付作業を行っている途中で植付作業を中断する場合がある。例えば
図20に示すように、作業車両10が作業経路Ra及び作業経路Rbにおいて植付作業を行った後に中断し、作業経路Rc及び作業経路Rdを飛ばして作業経路Reにおいて植付作業を再開する場合がある。この場合、作業経路Ra及び作業経路Rbは作業済領域AR1となり、作業経路Rc及び作業経路Rdは未作業領域AR2となる。
【0136】
このように、作業車両10が植付作業を行う時点で、同一圃場F内に作業済領域AR1が存在する場合、又は、作業車両10が作業済領域AR1から所定距離内に存在する場合には、設定処理部115は、植付作業を開始する位置を作業開始基準位置Pxとして設定せず、作業開始位置Psとして設定する。
図20に示す例では、設定処理部115は、作業経路Reにおいて植付作業を開始する作業開始位置Psを仮想作業直線L1上に設定する。すなわち、設定処理部115は、作業経路Reにおいて植付作業を開始する前に設定された作業開始基準位置Pxを利用して、作業経路Reの作業開始位置Psを設定する。また、設定処理部115は、作業車両10が圃場Fにおいて植付作業を中断した場合においても、既に設定されている作業開始基準位置Pxを維持する。これにより、予め圃場Fの形状と、圃場Fでの作業履歴情報とに基づいて、最初に植付作業を行った位置を自動的に作業開始基準位置Pxとして取得することが可能となるため、オペレータの操作性を向上させることができる。
【0137】
また、設定処理部115は、前記挙動情報又は圃場Fの変更のいずれかに基づいて作業開始基準位置Pxを消去及び再設定してもよい。例えば、設定処理部115は、作業車両10が圃場Fとは異なる圃場において植付作業を行う場合に、作業開始基準位置Pxを再設定する。すなわち、設定処理部115は、圃場ごとに作業開始基準位置Pxを設定する。なお、設定処理部115は、圃場ごとに設定した複数の作業開始基準位置Pxを記憶部12に記憶してもよい。この場合、設定処理部115は、記憶部12から作業車両10が植付作業を行う圃場に対応する作業開始基準位置Pxを取得して、作業車両10に植付作業を開始させてもよい。
【0138】
これにより、植付作業を行う圃場が変更された場合などに、オペレータは作業開始基準位置Pxを任意に消去することができる。またオペレータによる消去操作が行われない場合においても自動的に消去させることにより、オペレータの操作性を向上させることができる。また、新たな圃場で植付作業を行う場合に、他の圃場に対して設定された作業開始基準位置Pxが利用されてしまうことを防ぐことができる。
【0139】
ここで、各作業経路における作業開始位置Psの設定方法の具体例を説明する。例えば、設定処理部115は、複数の仮想作業直線L1のうち、作業開始操作を取得した時点における作業車両10の位置の近傍の仮想作業直線L1上に作業開始位置Psを設定する。また、設定処理部115は、複数の仮想作業直線L1のうち、作業開始操作を取得した時点における作業車両10の位置から作業方向に最も近い仮想作業直線L1上に作業開始位置Psを設定する。例えば
図18に示した例を挙げると、作業経路Rbにおいて作業車両10が位置Ptに位置する時点でオペレータが植付クラッチレバーを操作して植付作業の開始指示を行うと、設定処理部115は、複数の仮想作業直線L1のうち、位置Ptから作業方向に最も近い仮想作業直線L1上に作業開始位置Psを設定する。
【0140】
また、設定処理部115は、作業方向と作業車両10の進行方向とに基づいて進行方向側で予め設定した距離以下に含まれる仮想作業直線L1上に作業開始位置Psを設定してもよい。
【0141】
このように、設定処理部115は、人為的操作タイミング(例えばオペレータによるPTOの入操作)と作業車両10の位置情報に応じた仮想作業直線L1上に作業開始位置Psを設定する。
【0142】
他の実施形態として、設定処理部115は、作業機14の動作タイミングと作業車両10の位置情報とに応じた仮想作業直線L1上に作業開始位置Psを設定してもよい。なお、前記動作タイミングは、前記人為的操作タイミングに基づいて生成されてもよいし、圃場Fの枕地領域と枕地領域を除く往復作業領域との境界位置の情報に基づいて生成されてもよい。また、車両制御装置11は、作業開始位置Psと作業車両10の位置情報とに基づいて、作業車両10が作業開始位置Psに到達したことを検知して作業機14を作動させる。これにより、実際の作業開始位置を設定された作業開始位置Psに揃えることができるため作業精度を向上させることができる。なお、作業機14の駆動開始までの構造的な遅延時間を考慮して、作業開始位置Psの少し手前から作業機14の作動を開始させる構成とすることが好ましい。
【0143】
作業開始位置Psの設定方法の他の方法として、設定処理部115は、作業済の作業経路における作業終了位置に基づいて、次の作業経路の作業開始位置Psを設定してもよい。具体的には、設定処理部115は、作業開始基準位置Pxが設定された作業経路における植付作業の終了位置に対応する仮想作業直線L1を特定し、特定した仮想作業直線L1と作業開始基準位置Pxとに基づいて、複数の作業経路のそれぞれに対応する作業開始位置Psを設定する。例えば、設定処理部115は、作業経路Raにおいて最後に植付作業を行った位置に対応する仮想作業直線L1を特定する。そして、設定処理部115は、次の作業経路Rbの作業開始位置Psを、前記特定した仮想作業直線L1上に設定する。設定処理部115は、各作業経路の作業開始位置Psを、作業開始基準位置Pxを通る仮想作業直線L1上と、作業経路Raにおいて最後に植付作業を行った位置に対応する仮想作業直線L1上とに設定してもよい。これにより、矩形の圃場F全体において、作業開始位置を揃えることができる。
【0144】
車両制御装置11は、以上のようにして設定した作業開始基準位置Px、作業開始位置Ps、仮想作業直線L1を操作端末20に表示させてもよい。これにより、オペレータは、各作業経路において作業開始位置を把握することができ、また圃場F全体で作業開始位置が揃っているかどうかを把握することができる。また、車両制御装置11は、作業開始基準位置Px、作業開始位置Ps、仮想作業直線L1のそれぞれを異なる態様で表示させてもよい。
【0145】
[実施形態2の植付作業処理]
以下、
図21を参照しつつ、作業システム1が実行する前記植付作業処理の一例について説明する。
【0146】
図21は、実施形態2に係る作業システム1において実行される前記植付作業処理の一例を示すフローチャートである。
【0147】
先ずステップS21において、作業車両10の車両制御装置11は、前記作業条件情報に含まれる株間(植付間隔)を取得する。具体的には、車両制御装置11は、設定画面20B(
図12参照)において設定された植付作業に関する作業条件の情報(作業条件情報)から株間Ltを取得する。
【0148】
次にステップS22において、車両制御装置11は、作業開始指示を取得したか否かを判定する。車両制御装置11は、前記作業開始指示を取得すると(S22:Yes)、処理をステップS23に移行させる。車両制御装置11は、前記作業開始指示を取得するまで待機する(S22:No)。
【0149】
ステップS23において、車両制御装置11は、作業開始基準位置Pxを設定する。例えばオペレータが植付クラッチレバーを操作して植付作業の開始指示を行うと、車両制御装置11は、作業機14を駆動(回転)させて1株目の苗を植え付け、1株目の苗の植え付けを検知した時点の作業機14の位置を作業開始基準位置Pxに設定する(
図16参照)。すなわち、車両制御装置11は、圃場Fにおいて最初に植付作業が行われた位置を作業開始基準位置Pxに設定する。
【0150】
次にステップS24において、車両制御装置11は、仮想作業直線L1を設定する。具体的には、車両制御装置11は、作業開始基準位置Pxから株間Ltの間隔で配列される複数の仮想作業直線L1を設定する。例えば
図16に示すように、車両制御装置11は、作業開始基準位置Pxを通り、作業方向(Y方向)に直交するX方向に延伸する仮想作業直線L1を設定し、仮想作業直線L1を株間Ltの間隔でY方向に複数配列する。車両制御装置11は、圃場F全体に仮想作業直線L1を設定する。
【0151】
次にステップS25において、車両制御装置11は、植付処理を実行する。具体的には、車両制御装置11は、作業経路において、前記作業条件情報に含まれる「L(m)当たりn回」の目標回数に従って植付処理を実行する。車両制御装置11は、前記目標回数に対応する植付部回転数ωを植付駆動装置18に出力して作業機14(植付部)を駆動(回転)させる。
【0152】
次にステップS26において、車両制御装置11は、作業車両10が次の作業経路(行程)に移動したか否かを判定する。車両制御装置11は、作業車両10が次の作業経路に移動すると(S26:Yes)、処理をステップS27に移行させる。一方、車両制御装置11は、作業車両10が次の作業経路に移動していない場合(S26:No)、処理をステップS29に移行させる。
【0153】
ステップS27において、車両制御装置11は、次の作業経路の作業開始位置Psを設定する。具体的には、車両制御装置11は、前記作業経路の作業開始位置Psを複数の仮想作業直線L1のうち所定の仮想作業直線L1上に設定する。
【0154】
例えば
図18に示すように、作業経路Rbにおいて作業車両10が位置Ptに到達したタイミングでオペレータが植付クラッチレバーを操作して植付作業の開始指示を行うと、車両制御装置11は、複数の仮想作業直線L1のうち、位置Ptから作業方向に最も近い仮想作業直線L1上に作業開始位置Psを設定する。
【0155】
次にステップS28において、車両制御装置11は、設定された作業開始位置Psに基づいて作業経路の植付処理を実行する。具体的には、車両制御装置11は、作業経路Rb(
図18参照)において、作業開始位置Psから「L(m)当たりn回」の目標回数に従って植付処理を実行する。
【0156】
他の実施形態として、圃場Fの形状が矩形ではなく、
図19に示すように傾斜辺を含む場合、車両制御装置11は、傾斜に沿って植付ユニット34の駆動タイミングを制御してもよい。例えば
図19に示す圃場Fにおいて、6条植えの作業車両10が傾斜辺に向かって走行及び植付処理を行う場合(
図19の下側から上側に走行する場合)に、車両制御装置11は、左側の2条分を条止めして中央及び右側の4条分の植付処理を実行し、次に左側及び中央の4条分を条止めして右側の2条分の植付処理を実行する。このように、車両制御装置11は、複数の植付ユニット34のそれぞれの条止めタイミングを傾斜に応じてずらすことによって、植付位置を傾斜に沿うように揃えることができる。
【0157】
次にステップS29において、車両制御装置11は、作業車両10が走行終了位置Gに到達したか否かを判定する。例えば、車両制御装置11は、作業車両10が走行終了位置Gに到達すると(S29:Yes)、処理を終了する。車両制御装置11は、作業車両10が走行終了位置Gに到達していない場合(S29:No)、処理をステップS26に移行させる。なお、車両制御装置11は、作業対象の圃場Fが変更された場合、又は、挙動情報が変化した場合に、処理を終了してもよい。
【0158】
作業車両10が次の作業経路(例えば
図18の作業経路Rc)に移動すると(S26:Yes)、ステップS27において、車両制御装置11は、作業経路Rcの作業開始位置Psを設定する。この場合に、車両制御装置11は、作業経路Rcにおいて、オペレータの開始指示の位置Ptから作業方向に最も近い仮想作業直線L1上に作業開始位置Psを設定してもよいし(
図18参照)、作業開始基準位置Pxを通る仮想作業直線L1上に作業開始位置Psを設定してもよい(
図17参照)。
【0159】
車両制御装置11は、作業車両10が走行終了位置Gに到着するまで上述の処理(S26~S28)を継続する(S29:No)。車両制御装置11は、以上のようにして前記植付作業処理を実行する。
【0160】
以上説明したように、実施形態2に係る作業システム1は、作業車両10により農業用資材(苗、種、肥料、薬剤など)を圃場Fに供給する。また、作業システム1は、農業用資材の供給間隔(株間Lt)を取得し、前記農業用資材の供給作業を開始する作業開始位置Psを設定するための基準位置である作業開始基準位置Pxを設定し、前記供給間隔と作業開始基準位置Pxとに基づいて、複数の作業経路のそれぞれに対応する作業開始位置Psを設定する。
【0161】
上記構成によれば、例えば作業開始基準位置Pxに合わせて各作業経路の作業開始位置Psを設定することができる。また、予め設定された前記供給間隔の位置の各作業経路の作業開始位置Psを設定することができる。このため、圃場F全体において、各作業経路の作業開始位置Psを揃えることが可能となる。
【0162】
実施形態2に係る作業システム1の他の実施形態として、車両制御装置11は、圃場Fの形状に基づいて、各作業経路の作業開始位置Psを設定してもよい。例えば、車両制御装置11は、圃場Fに隣接する畦から所定距離の位置に作業開始位置Psを設定してもよい。また、作業車両10が直進経路R1のみ自動走行を行う走行モードの場合において、直進方向を規定する基準線が予め登録されている場合に、車両制御装置11は、前記基準線に対して登録された両端点(A点及びB点)の位置に作業開始位置Psを設定してもよい。
【0163】
他の実施形態として、作業車両10が圃場F全体(直進経路R1及び枕地領域)を自動走行する走行モードの場合には、車両制御装置11は、圃場Fの情報、目標経路Rの情報、作業条件情報に基づいて、予め圃場F全体の作業開始基準位置Px及び作業開始位置Psを設定してもよい。
【0164】
実施形態2に示した構成は、実施形態1に適用することが可能である。例えば、車両制御装置11は、
図6に示す作業開始位置P0を仮想作業直線L1(
図16参照)上に設定してもよい。また、例えば
図10に示すように、車両制御装置11が、複数の所定区間の植付作業が終了後に作業開始位置P0´を再設定する場合において、作業開始位置P0´を仮想作業直線L1(
図16参照)上に設定してもよい。すなわち、実施形態1に係る作業システム1において、車両制御装置11は、作業開始基準位置Px及び株間に基づいて設定された仮想作業直線L1上に、各作業経路の作業開始位置P0を設定してもよい。
【0165】
実施形態1及び2に係る車両制御装置11の各機能は、作業車両10の外に配置されてもよいし、操作端末20の操作制御部21に含まれてもよい。すなわち、上述の実施形態では、車両制御装置11が本発明に係る作業システムに相当するが、本発明に係る作業システムは、操作端末20単体で構成されてもよい。また、本発明に係る作業システムは、作業車両10及び操作端末20を含んで構成されてもよい。また、車両制御装置11の各機能が、作業車両10と通信可能なサーバーに含まれてもよい。
【0166】
[発明の付記]
以下、上述の実施形態1から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0167】
<付記1>
作業車両により農業用資材を圃場に供給する作業方法であって、
作業経路における所定距離当たりの前記農業用資材の供給回数の目標回数を取得することと、
前記作業経路の第1所定区間において前記作業車両が前記目標回数の前記農業用資材の供給を終了した時点の前記作業車両の走行距離を取得することと、
前記所定距離及び前記走行距離に基づいて、前記作業経路における前記第1所定区間に続く第2所定区間における前記農業用資材の供給間隔を設定すること、
を実行する作業方法。
【0168】
<付記2>
前記第1所定区間を含む所定区間の数に応じて前記所定距離を整数倍した全区間距離と、前記走行距離との差に基づいて、前記第2所定区間における前記供給間隔を設定する、
付記1に記載の作業方法。
【0169】
<付記3>
前記走行距離の区間において前記作業車両が前記農業用資材の供給を実施した実施回数を前記走行距離で除算して算出される実施密度が、前記目標回数を前記所定距離で除算して算出される目標密度に近づくように、前記供給間隔を設定する、
付記1又は2に記載の作業方法。
【0170】
<付記4>
前記差を前記全区間距離で除算して算出されるずれ率が0に近づくように前記供給間隔を設定する、
付記2に記載の作業方法。
【0171】
<付記5>
前記農業用資材を前記圃場に供給する供給部の回転数を補正する補正係数を、前記ずれ率に基づいて設定する、
付記4に記載の作業方法。
【0172】
<付記6>
前記農業用資材の供給作業を開始する作業開始位置を設定することをさらに実行し、
前記走行距離は、前記作業開始位置から前記作業車両が前記目標回数の前記農業用資材の供給を終了した時点の前記作業車両の位置までの距離である、
付記1~5のいずれかに記載の作業方法。
【0173】
<付記7>
前記作業経路において前記農業用資材の供給作業が中断して再開された場合に、再開前の前記ずれ率と、再開後の所定区間に対応する前記ずれ率とを合計した合計ずれ率に基づいて、前記再開後の所定区間に続く所定区間における前記供給間隔を設定する、
付記4又は5に記載の作業方法。
【0174】
<付記8>
前記供給作業の再開前の経路と再開後の経路とが同一作業行程内の経路である場合に、前記合計ずれ率に基づいて、前記再開後の所定区間に続く所定区間における前記供給間隔を設定する、
付記7に記載の作業方法。
【0175】
<付記9>
前記作業経路が非直線経路の場合に、複数の前記所定区間ごとに前記作業開始位置を再設定する、
付記1~8のいずれかに記載の作業方法。
【0176】
以下、上述の実施形態2から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0177】
<付記10>
作業車両により農業用資材を圃場に供給する作業方法であって、
前記農業用資材の供給間隔を取得することと、
前記農業用資材の供給作業を開始する作業開始位置を設定するための基準位置である作業開始基準位置を設定することと、
前記供給間隔と前記作業開始基準位置とに基づいて、複数の作業経路のそれぞれに対応する前記作業開始位置を設定することと、
を実行する作業方法。
【0178】
<付記11>
前記作業開始基準位置から前記供給間隔で配列される複数の仮想作業直線を設定し、
前記複数の作業経路のそれぞれにおいて、前記作業開始位置を前記仮想作業直線上に設定する、
付記10に記載の作業方法。
【0179】
<付記12>
前記複数の仮想作業直線のそれぞれを、前記作業経路における前記供給作業の作業方向に直交する方向に延伸するように設定する、
付記11に記載の作業方法。
【0180】
<付記13>
前記作業車両の挙動情報に基づいて、前記作業開始基準位置を設定する、
付記10~12のいずれかに記載の作業方法。
【0181】
<付記14>
前記複数の作業経路のうち最初に前記供給作業が行われる作業経路において前記農業用資材が最初に供給される位置に、前記作業開始基準位置を設定する、
付記10~13のいずれかに記載の作業方法。
【0182】
<付記15>
前記作業車両が前記圃場において前記供給作業を中断した場合においても、設定された前記作業開始基準位置を維持する、
付記10~14のいずれかに記載の作業方法。
【0183】
<付記16>
前記作業車両が前記圃場とは異なる圃場において前記供給作業を行う場合に、前記作業開始基準位置を再設定する、
付記10~15のいずれかに記載の作業方法。
【0184】
<付記17>
前記複数の仮想作業直線のうち、作業開始操作を取得した時点における前記作業車両の位置の近傍の仮想作業直線上に前記作業開始位置を設定する、
付記11~16のいずれかに記載の作業方法。
【0185】
<付記18>
前記複数の仮想作業直線のうち、作業開始操作を取得した時点における前記作業車両の位置から前記供給作業の作業方向に最も近い仮想作業直線上に前記作業開始位置を設定する、
付記11~17のいずれかに記載の作業方法。
【0186】
<付記19>
前記作業開始基準位置が設定された前記作業経路における前記供給作業の終了位置に対応する前記仮想作業直線を特定し、
特定した前記仮想作業直線と前記作業開始基準位置とに基づいて、前記複数の作業経路のそれぞれに対応する前記作業開始位置を設定する、
付記11~17のいずれかに記載の作業方法。
【符号の説明】
【0187】
1 :作業システム
10 :作業車両
11 :車両制御装置
14 :作業機
16 :測位装置
18 :植付駆動装置
20 :操作端末
20A :設定画面
20B :設定画面
111 :走行処理部
112 :取得処理部(第1取得処理部、第2取得処理部)
113 :植付処理部
114 :算出処理部
115 :設定処理部
161 :測位制御部
D1 :走行距離
D2 :走行距離
F :圃場
L1 :仮想作業直線
Lt :株間(供給間隔)
P0 :作業開始位置
Ps :作業開始位置
Px :作業開始基準位置
R :目標経路
S :補正レベル
St :走行開始位置
X1 :所定区間
a :補正係数
n :目標回数
t1 :距離差
t2 :距離差
ε :ずれ率
ω :植付部回転数