(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180352
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】遊技球磨き装置
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20231214BHJP
B24B 11/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A63F7/02 351A
A63F7/02 346A
A63F7/02 301C
B24B11/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093580
(22)【出願日】2022-06-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】500224302
【氏名又は名称】株式会社ブラザーエンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】北原 功己
(72)【発明者】
【氏名】河路 和繁
【テーマコード(参考)】
2C088
3C049
【Fターム(参考)】
2C088BA96
2C088BA99
3C049AA06
3C049AA13
3C049AB01
3C049AB03
3C049AB06
3C049AB08
3C049AC04
3C049CA01
(57)【要約】
【課題】遊技盤や釘が遊技球に接触して削れることを抑制できる遊技球磨き装置を提供する。
【解決手段】遊技球磨き装置1は、遊技球Pを搬送するスクリューコンベア5と、ポリエチレンからなり、スクリューコンベア5により搬送される遊技球Pに接触して脂肪族化合物を遊技球Pに塗布する磨き部62とを備えたことを特徴とする。遊技球磨き装置1は、遊技球Pに接触して脂肪族化合物を遊技球Pに塗布することにより、遊技盤や釘が遊技球に接触して削れることを抑制できる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技球を搬送する搬送部と、
ポリエチレンからなり、前記搬送部により搬送される前記遊技球に接触して脂肪族化合物を前記遊技球に塗布する磨き部と
を備えたことを特徴とする遊技球磨き装置。
【請求項2】
前記磨き部は、低密度ポリエチレンからなることを特徴とする請求項1に記載の遊技球磨き装置。
【請求項3】
前記磨き部は、直鎖状低密度ポリエチレンからなることを特徴とする請求項2に記載の遊技球磨き装置。
【請求項4】
前記磨き部は、脂肪族炭化水素を前記遊技球に塗布することを特徴とする請求項1に記載の遊技球磨き装置。
【請求項5】
前記磨き部は、
前記搬送部に向けて突出する複数の突起部を有することを特徴とする請求項1に記載の遊技球磨き装置。
【請求項6】
前記複数の突起部は弾性を有することを特徴とする請求項5に記載の遊技球磨き装置。
【請求項7】
前記複数の突起部の先端が曲折したことを特徴とする請求項5又は6に記載の遊技球磨き装置。
【請求項8】
前記複数の突起部の先端の向く方向が互いに相違することを特徴とする請求項7に記載の遊技球磨き装置。
【請求項9】
前記複数の突起部は、前記搬送部に向けて直線状に延びることを特徴とする請求項5又は6に記載の遊技球磨き装置。
【請求項10】
前記搬送部は、
スクリューコンベアを有し、
前記スクリューコンベアの回転により、前記遊技球を搬送することを特徴とする請求項1に記載の遊技球磨き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機にて使用される遊技球を磨く遊技球磨き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、遊技球の汚れ除去装置を開示する。汚れ除去装置は、スクリュー及び研磨布を有する。スクリューは、螺旋状の溝を外周面に有し、回転により遊技球を搬送する。研磨布は、フェルト等の不織布により構成される。研磨布は、スクリューによって搬送される遊技球に接触し、遊技球の表面に付着した汚れを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遊技中において、遊技盤や釘が遊技球と接触して削れ、粉状の削り屑が発生する場合がある。削り屑は、遊技盤や遊技球に付着して汚れの要因となる可能性がある。このため、遊技盤や遊技球の汚れを防止する為に、遊技盤や釘が遊技球と接触して削れることを抑制できるのが好ましい。
【0005】
本発明の目的は、遊技盤や釘が遊技球に接触して削れることを抑制できる遊技球磨き装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る遊技球磨き装置は、遊技球を搬送する搬送部と、ポリエチレンからなり、前記搬送部により搬送される前記遊技球に接触して脂肪族化合物を前記遊技球に塗布する磨き部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、遊技球に塗布された脂肪族化合物により、遊技盤や釘と遊技球との接触時における摩擦力を軽減させることができる。従って遊技球磨き装置は、遊技盤や釘が遊技球と接触して削れることを抑制できる。このため遊技球磨き装置は、削り屑により遊技盤や遊技球が汚れることを防止できる。
【0008】
本発明において、前記磨き部は、低密度ポリエチレンからなってもよい。又、本発明において、前記磨き部は、直鎖状低密度ポリエチレンからなってもよい。低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンからなる磨き部は、脂肪族化合物を容易に保持できる。従って遊技球磨き装置は、磨き部に保持された脂肪族化合物を遊技球に塗布できる。
【0009】
本発明において、前記磨き部は、脂肪族炭化水素を前記遊技球に塗布してもよい。脂肪族炭化水素は、遊技盤や釘と遊技球との接触時における摩擦力を効率良く軽減させることができる。従って遊技球磨き装置は、遊技盤や釘が遊技球と接触して削れることを抑制し、削り屑が発生することを防止できる。
【0010】
本発明において、前記磨き部は、前記搬送部に向けて突出する複数の突起部を有してもよい。この場合、複数の突起部は多量の脂肪族化合物を保持できる。従って遊技球磨き装置は、遊技球に対して十分な量の脂肪族化合物を塗布できる。
【0011】
本発明においいて、前記複数の突起部は弾性を有してもよい。この場合、複数の突起部は、遊技球に対して脂肪族化合物を満遍なく塗布できる。
【0012】
本発明において、前記複数の突起部の先端が曲折してもよい。この場合、遊技球磨き装置は、複数の突起部と遊技球との接触面積を大きくできる。従って遊技球磨き装置は、遊技球に対して脂肪族化合物を効率良く塗布できる。
【0013】
本発明において、前記複数の突起部の先端の向く方向が互いに相違してもよい。この場合、複数の突起部は、遊技球に対する脂肪族化合物の塗り残しを抑制できる。
【0014】
本発明において、前記複数の突起部は、前記搬送部に向けて直線状に延びてもよい。この場合、複数の突起部は、遊技球に対して脂肪族化合物を満遍なく塗布できる。
【0015】
本発明において、前記搬送部は、スクリューコンベアを有し、前記スクリューコンベアの回転により、前記遊技球を搬送してもよい。この場合、遊技球磨き装置は、簡易な構成で遊技球を適切に搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】
図2のI-I線を矢印方向から視た断面図である。
【
図4】
図2のII-II線を矢印方向から視た断面図である。
【
図8】遊技球磨き装置1により遊技球Pに脂肪族化合物が塗布される様子を示す図である。
【
図9】複数の突起部63から検出されたイオン種を示す表である。
【
図10】遊技球磨き装置1を通過する前の遊技球Pの表面を示す写真である。
【
図11】遊技球磨き装置1を約1400回通過させた後の遊技球Pの表面を示す写真である。
【
図12】変形例における研磨ブラシ6を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る遊技球磨き装置1について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。本実施形態の説明では、
図1の上方、下方、左斜め上方、右斜め下方、左斜め下方、右斜め上方を、それぞれ、遊技球磨き装置1の上方、下方、左方、右方、前方、後方とする。
【0018】
<遊技球磨き装置1の概要>
遊技球磨き装置1は、例えば、球循環式の遊技機に取り付けられて使用される。球循環式の遊技機では、球発射装置から遊技盤の遊技領域に向けて、遊技球Pが発射される。遊技球Pは、遊技領域に設けられた入賞口やアウト口を通過し、球貯留部に集められる。球貯留部に集められた遊技球Pは、球循環路を介して再び球発射装置へ供給される。遊技球磨き装置1は、球循環路に設けられる。
【0019】
図1、
図2に示すように、遊技球磨き装置1は、送入部2、揚送部3、送出部4、スクリューコンベア5、及び、研磨ブラシ6を有する。
【0020】
<送入部2、揚送部3、送出部4>
送入部2は、左右方向に長い直方体状を有する。揚送部3は、送入部2の上面2Uのうち右部分に設けられる。揚送部3は、上下方向に長い直方体状を有する。揚送部3は、送入部2の上面2Uから上方に延びる。揚送部3の下面3Bは、送入部2の上面2Uに接触する。送入部2の前面2Fと揚送部3の前面3Fとは、同一平面状に配置される。送入部2の左面2Lは、揚送部3の左面3Lよりも左方に突出する。
【0021】
送出部4は、揚送部3の上面3Uに設けられる。送出部4は、左右方向に長い直方体状を有する。送出部4の下面4Bのうち右部分は、揚送部3の上面3Uに接触する。送出部4の左面4Lは、揚送部3の左面3Lよりも左方に突出する。送出部4の前面4Fは、揚送部3の前面3Fよりも前方に突出する。
【0022】
送入部2の右面2R、揚送部3の右面3R、及び送出部4の右面4Rは、同一平面状に配置される。
図1に示すように、送入部2の後面2S、揚送部3の後面3S、及び送出部4の後面4Sは、同一平面状に配置され、遊技機のベース板20に連結する。ベース板20は、前後方向と直交する。遊技球磨き装置1は、ベース板20を介して遊技機に固定される。遊技球磨き装置1が遊技機に固定された状態で、送入部2は遊技機の球貯留部の近傍に位置し、送出部23は遊技機の球発射装置の近傍に位置する。
【0023】
図1、
図2に示すように、送入部2の上面2Uのうち揚送部3の下方部分に、下方に凹む溝部21が形成される。
図3に示すように、溝部21は、送入部2の前面2Fから後方に向けて延び、左方に湾曲し、左方に延びる。
図1、
図2に示すように、溝部21の上方は、揚送部3により覆われる。これにより溝部21は、遊技球磨き装置1の内部に、遊技球Pが通流する流路21Aを形成させる。溝部21の前端部は、遊技球磨き装置1の前面に開口22を形成させる。開口22は流路21Aに連通する。遊技機の球貯留部に集められた遊技球Pは、開口22を介して流路21Aに送入され、流路21Aに沿って後方に向けて流れる。
【0024】
図4に示すように、揚送部3の内部に流路31Aが形成される。流路31Aは、揚送部3の下面3Bと上面3U(
図1、
図2参照)との間に亘って上下方向に延びる。流路31Aの下端部は、送入部2の流路21Aに連通する。開口22を介して流路21Aに送入された遊技球Pは、流路31Aを介して上方に搬送される。
【0025】
流路31Aを構成する内壁は、第1内壁部32と第2内壁部33とを有する。第1内壁部32の断面形状は、上下方向に延びる仮想的な第1軸X1を中心とした半径r1の円形となる。第2内壁部33の断面形状は、第1軸X1よりも前方で上下方向に延びる仮想的な第2軸X2を中心とした半径r2の円形となる。半径r1よりも半径r2の方が小さい。半径r2は、遊技球Pの半径よりも僅かに大きい。
【0026】
第1内壁部32により囲まれる部分に、後述のスクリューコンベア5が収容される。第2内壁部33により囲まれる部分に、スクリューコンベア5により搬送される遊技球Pの一部が収容される。第2内壁部33は、一部が収容された状態の遊技球Pが水平方向に移動することを規制する。
【0027】
図1、
図2に示すように、揚送部3の前面3Fに孔30が形成される。孔30の断面形状は矩形状であり、前面3Fから後方に向けて延びる。
図4に示すように、孔30の底部は、揚送部3の内部に形成された流路31Aの第2内壁部33に連通する。
【0028】
図1に示すように、送出部4の上面4Uに、下方に凹む溝部41が形成される。溝部41は、送出部4の前面4Fから右斜め後方に向けて延びる。溝部41の底部は、後端部から前方に向けて、下方に僅かに傾斜する。溝部41は、遊技球磨き装置1の上端部に、遊技球Pが通流する流路41Aを形成する。溝部41の前端部は、遊技球磨き装置1の前面に開口42を形成させる。開口42は流路41Aに連通する。流路41Aの後端部に、流路31Aの上端部が連通する。流路31Aを介して搬送された遊技球Pは、流路41Aに沿って前方に向けて流れる。遊技球Pは、開口42から送出され、遊技機の球発射装置に供給される。
【0029】
<スクリューコンベア5>
図1、
図3、
図4に示すように、スクリューコンベア5は、流路21Aの一部(
図3参照)、流路31A(
図4参照)、及び流路41A(
図1参照)の一部に収容される。
図5に示すように、スクリューコンベア5は、軸51及び羽根52を有する。軸51は円柱状を有し、上下方向に延びる。軸51の中心を通って上下方向に延びる仮想的な軸を、「回転軸X3」という。羽根52は、軸51の側面に設けられ、回転軸X3の半径方向に突出する。羽根52は、先端に向かう程厚さが薄くなる板状を有し、螺旋状に延びる。回転軸X3から、羽根52の先端までの間の半径方向の長さは、流路31Aの第1内壁部32の半径r1よりも僅かに小さい。スクリューコンベア5は、非図示のモータの駆動に応じ、回転軸X3を中心として回転可能である。スクリューコンベア5の回転方向は、上方から視て時計回り方向である。
【0030】
図3に示すように、スクリューコンベア5の下端部は、送入部2の流路21Aに配置される。
図1に示すように、スクリューコンベア5の上端部は、送出部4の流路41Aに配置される。スクリューコンベア5の下端部及び上端部を除く部分は、揚送部3の流路31Aに配置される。スクリューコンベア5の回転軸X3の位置は、流路31Aの第1軸X1の位置と一致する。
【0031】
スクリューコンベア5は、流路31Aのうち第2内壁部33により囲まれる部分に一部が収容された状態の遊技球Pを、羽根52により下方から支持する。なお遊技球Pは、流路31Aの第2内壁部33により、水平方向の移動が規制されている。従って、遊技球Pは、スクリューコンベア5の回転に応じて、羽根52から力を受けて上方に移動する。このためスクリューコンベア5は、流路21Aの遊技球Pを、流路31Aを介して流路41Aまで上方に搬送することが可能である。なお、遊技球Pが上方に搬送される場合において、遊技球Pの中心X4は、流路31Aの第2軸X2に沿って移動する。又、遊技球Pは、搬送の過程で羽根52が相対移動することに応じ、回転子ながら上方に搬送される。
【0032】
<研磨ブラシ6>
図1に示すように、研磨ブラシ6は、揚送部3の孔30に嵌合した状態で、揚送部3により支持される。研磨ブラシ6は、揚送部3に対して着脱可能である。以下、研磨ブラシ6が揚送部3に支持された状態を前提として、研磨ブラシ6の各方向を説明する。
図6、
図7に示すように、研磨ブラシ6は、土台部61及び磨き部62を有する。
【0033】
土台部61は矩形板状を有し、前後方向と直交する。土台部61を前方から視た場合の形状は、揚送部3の孔30の断面形状と同一である。研磨ブラシ6は、土台部61が孔30に嵌合することにより、揚送部3に固定される。
【0034】
磨き部62は、土台部61から直線状に延びる突起部63を複数有する。複数の突起部63は、土台部61に対して後方に突出する。
図4に示すように、複数の突起部63の突出する方向は、土台部61から、揚送部3の流路31Aに配置されたスクリューコンベア5に向かう方向と一致する。
図6に示すように、複数の突起部63のそれぞれの長さは等しく、例えば7.5mmである。
図4に示すように、複数の突起部63の先端部は、揚送部3の流路31Aの第2内壁部33に対し、流路31Aの内側に突出する。
【0035】
複数の突起部63は、ポリエチレン、より詳細には、直鎖状低密度ポリエチレンからなる。なおポリエチレンは、炭素と水素のみからなる脂肪族化合物であり、エチレンを重合させた高分子化合物である。直鎖状低密度ポリエチレンとは、密度が0.910以上0.925未満のポリエチレンと定義される。複数の突起部63の表面には、脂肪族化合物、より詳細には、脂肪族炭化水素が保持されている。直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率は、70.3~183の範囲であり、複数の突起部63は弾性を有する。
【0036】
図6に示すように、突起部63の先端は丸みを帯びている。
図7に示すように、突起部63の断面形状は、半円である。突起部63は、土台部61に対して格子状に配列される。より詳細には、突起部63は、上下方向に延びる3つの列C(列C1~C3)、及び、左右方向に延びる9つの列M(列M1~M9)に沿って配列される。上下方向に隣接する列C間の間隔は等しい。左右方向に隣接する列M間の間隔は等しい。更に、列C間の間隔と、列M間の間隔とは等しい。列C間及び列M間の間隔は、一例として9mmである。
【0037】
列C2に沿って上下方向に配列される複数の突起部63の間の間隔と、列M2~M8に沿って左右方向に配列される複数の突起部63の間の間隔は等しい。以下、この間隔を「d1」と表記する。列C1、C3に沿って上下方向に配列される複数の突起部63の間の間隔と、列M1、M9に沿って左右方向に配列される複数の突起部63の間の間隔とは等しい。以下、この間隔を「d2」と表記する。間隔d2は、間隔d1の2倍である。つまり、土台部61の左右方向中央部において上下方向に配列される複数の突起部63の密度は、土台部61の左右両端部において上下方向に配列される複数の突起部63の密度よりも大きい。
【0038】
<動作概要>
図8を参照し、遊技球球磨き装置1の動作概要について説明する。なお、遊技球磨き装置1の動作時、非図示のモータは常時駆動し、スクリューコンベア5を回転させる。
【0039】
遊技機の球貯留部に集められた遊技球Pは、送入部2の開口22を介して流路21Aに送入される。遊技球Pは、流路21Aに沿って後方に移動し(矢印Y11)、流路21Aの後端部に到達する。スクリューコンベア5は、羽根52により遊技球Pを下方から支持した状態で回転する。これにより遊技球Pは、流路31Aに沿って上方に搬送される(矢印Y12)。このとき遊技球Pは、流路31Aの第2内壁部33により囲まれる部分を通過する。
【0040】
遊技球Pは、研磨ブラシ6の後方を通過する過程で、第2内壁部33に対して後方に突出する複数の突起部63の先端部分に接触する。このとき、複数の突起部63の表面に付着した脂肪族炭化水素が、遊技球Pに塗布される。なお、複数の突起部63は、遊技球Pとの接触により弾性変形する。これにより、遊技球Pの表面のうち複数の突起部63が接触する部分の面積は大きくなるので、遊技球Pのより広い領域に満遍なく脂肪族炭化水素が塗布される。
【0041】
遊技球Pは、スクリューコンベア5により上方に搬送されることにより、流路41Aの後端部に到達する。流路41Aの底部には傾斜が設けられているので、遊技球Pは、流路41Aに沿って前方に向けて流れ(矢印Y13)、流路41Aの前端部に到達する。遊技球Pは、送出部4の開口42を介して外部に送出される。送出された遊技球Pは、遊技機の球発射装置に供給される。
【0042】
<本実施形態の作用、効果>
遊技球Pに塗布された脂肪族炭化水素は、遊技機の遊技盤や釘と遊技球Pとの接触時における摩擦力を軽減させる。従って遊技球磨き装置1は、遊技球Pに脂肪族炭化水素を塗布することにより、遊技盤や釘が遊技球Pと接触して削れることを抑制できる。このため遊技球磨き装置1は、削り屑により遊技盤や遊技球Pが汚れることを防止できる。
【0043】
磨き部62の複数の突起部63は、直鎖状低密度ポリエチレンから構成されるので、脂肪族炭化水素を容易に保持できる。従って遊技球磨き装置1は、磨き部62の複数の突起部63に保持された脂肪族炭化水素を、遊技球Pに塗布できる。
【0044】
遊技球磨き装置1は、脂肪族化合物として脂肪族炭化水素を遊技球Pに塗布する。脂肪族炭化水素は、遊技盤や釘と遊技球Pとの接触時における摩擦力を、効率良く軽減させることができる。従って遊技球磨き装置1は、遊技盤や釘が遊技球Pと接触して削れることを抑制し、削り屑が発生することを防止できる。
【0045】
複数の突起部63は、大きな表面積を有するので、多量の脂肪族炭化水素を保持できる。従って遊技球磨き装置1は、遊技球Pに対して十分な量の脂肪族炭化水素を塗布できる。
【0046】
遊技球磨き装置1は、研磨ブラシ6を着脱可能である。このためユーザは、例えば遊技球磨き装置1の使用により研磨ブラシ6の複数の突起部63が擦れて劣化した場合、研磨ブラシ6を別の研磨ブラシ6に交換することが可能となる。
【0047】
複数の突起部63は、遊技球Pを搬送するスクリューコンベア5に向けて直線状に延びる。又、複数の突起部63は、遊技球Pが接触することに応じて弾性変形する。これにより、遊技球磨き装置1は、遊技球Pの表面のうち複数の突起部63が接触する部分の面積を大きくすることができる。このため、複数の突起部63は、遊技球Pのより広い領域に満遍なく脂肪族炭化水素を塗布できる。
【0048】
遊技球磨き装置1は、スクリューコンベア5により遊技球Pを上方に搬送する。従って、遊技球磨き装置1は、遊技機の球貯留部から球発射装置に向けた遊技球Pの搬送を、簡易な構成で実現送できる。又、遊技球Pは、スクリューコンベア5により搬送される過程で回転する。従って、遊技球磨き装置1は、遊技球Pの表面のより広い領域に脂肪族炭化水素を塗布できる。
【0049】
<実験結果1>
研磨ブラシ6の磨き部62の表面組成を調べる為、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)が行われた。分析装置として、ULVAC-PHI社製のTOF-SIMS装置である「TRIFT-V」が用いられた。試料として、複数の突起部63の一部を切り出したものが準備された。測定は、イオン源:Bi
3
2+を使用し、加速電圧:30kV、主走査範囲:100μm×100μmの条件で行われた。測定には、帯電補正用中和銃が使用された。測定の結果、検出された主なイオン種を、
図9に示す。
【0050】
この結果から、脂肪族炭化水素成分、ヒンダードアミン系光安定剤(Tinuvin770 相当)、脂肪酸成分、脂肪酸アミド成分、アルキルベンゼンスルホン酸成分、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸成分、シリコーン(ポリジメチルシロキサン)成分等が検出された。このことから、複数の突起部63の表面に脂肪族化合物が付着していることが明らかになった。
【0051】
<実験結果2>
遊技球磨き装置1を通過することにより、遊技球Pの表面に脂肪族炭化水素が付着することを確認するため、遊技球Pの表面を撮影して評価した。遊技球磨き装置1を通過する前の遊技球Pと、遊技球磨き装置1を約1400回通過させた後の遊技球Pとを撮影対象とし、それぞれを比較することにより評価を行った。
【0052】
図10は、遊技球磨き装置1を通過する前の遊技球Pの表面を示す写真である。
図11は、遊技球磨き装置1を約1400回通過させた後の遊技球Pの表面を示す写真である。この結果から、遊技球磨き装置1を通過させた後の遊技球Pの表面に、脂肪族炭化水素であると思われる色の濃い部分が多く観察された。従って、遊技球磨き装置1により遊技球Pに対して脂肪族炭化水素が塗布されていることが明らかになった。
【0053】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。遊技球磨き装置1は、球循環式の遊技機に取り付けられて使用される場合に限定されない。例えば遊技球磨き装置1は、複数の遊技機が収容された遊技機島の中の球循環経路に設けられてもよい。
【0054】
研磨ブラシ6の磨き部62により遊技球Pに塗布される脂肪族化合物である脂肪族炭化水素は、鎖式、環式いずれでもよい。鎖式の脂肪族炭化水素は、鎖式飽和炭化水素でもよいし、鎖式不飽和炭化水素でもよい。環式の脂肪族炭化水素は、脂環式炭化水素でもよい。
【0055】
研磨ブラシ6の磨き部62により遊技球Pに塗布される脂肪族化合物は、脂肪族炭化水素に限定されない。例えば磨き部62は、炭素と水素以外の元素を有する脂肪族化合物でもよい。
【0056】
磨き部62は直鎖状低密度ポリエチレンに限定されない。例えば磨き部62は、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、分岐構造を有する低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等でもよい。
【0057】
遊技球磨き装置1は、スクリューコンベア5以外の機構を用いて遊技球Pを搬送しつつ、研磨ブラシ6を用いて遊技球Pに脂肪族炭化水素を塗布してもよい。例えば遊技球磨き装置1は、ベルトコンベアにより遊技球Pを搬送しつつ、研磨ブラシ6を用いて遊技球Pに脂肪族炭化水素を塗布してもよい。
【0058】
複数の突起部63のそれぞれの断面形状は、半円状に限定されず、円形、矩形等でもよい。複数の突起部63のそれぞれの長さは均一でなくてもよい。例えば、列C2に沿って配列された複数の突起部63の長さよりも、列C1、C3に沿って配列された複数の突起部63の長さを長くしてもよい。複数の突起部63は、それぞれ、先端に向かうに従って細くなっていてもよい。
【0059】
複数の突起部63の配列は、上記実施形態に限定されない。例えば複数の突起部63は、土台部61に対して上下方向及び左右方向に等間隔に設けられていてもよい。
【0060】
複数の突起部63は、直線状に延びていなくてもよい。例えば
図12に示すように、複数の突起部63は、先端が曲折していてもよい。この場合、遊技球磨き装置1は、複数の突起部63と遊技球Pとの接触面積を更に大きくできる。従って遊技球磨き装置1は、遊技球Pに対して脂肪族炭化水素を効率良く塗布できる。
【0061】
更に、例えば
図12(A)に示すように、複数の突起部63の先端は同一方向を向いていてもよい。又は、
図12(B)に示すように、複数の突起部63の先端は、互いに異なる方向を向いていてもよい。なお、複数の突起部63の先端の向きを互いに相違させることにより、複数の突起部63は、遊技球Pに対する脂肪族化合物の塗り残しを抑制できる。なお、複数の突起部63の先端の向きは、規則的に変化してもよいし、ランダムに変化してもよい。
【0062】
複数の突起部63の形状は、均一でなくてもよい。例えば複数の突起部63の形状は、列C1~C3、M1~M9毎に異なっていてもよい。
【0063】
研磨ブラシ6の磨き部62は、複数の突起部63を有さなくてもよい。例えば磨き部62は、脂肪族化合部を保持する布、スポンジ等を、複数の突起部63の代わりに有してもよい。
【0064】
遊技球磨き装置1は、脂肪族化合物を遊技球Pに塗布する機能に加えて、複数の突起部63により遊技球Pを磨いたり、表面の汚れを除去したりする機能を有していてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 :遊技球磨き装置
5 :スクリューコンベア
6 :研磨ブラシ
62 :磨き部
63 :突起部
【手続補正書】
【提出日】2022-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技球を搬送する搬送部と、
ポリエチレンからなり、前記搬送部により搬送される前記遊技球に接触して脂肪族化合物を前記遊技球に塗布する磨き部と
を備え、
前記磨き部は、
前記搬送部に向けて突出する複数の突起部を有し、
前記複数の突起部の先端が曲折したことを特徴とする遊技球磨き装置。
【請求項2】
前記磨き部は、低密度ポリエチレンからなることを特徴とする請求項1に記載の遊技球磨き装置。
【請求項3】
前記磨き部は、直鎖状低密度ポリエチレンからなることを特徴とする請求項2に記載の遊技球磨き装置。
【請求項4】
前記磨き部は、脂肪族炭化水素を前記遊技球に塗布することを特徴とする請求項1に記載の遊技球磨き装置。
【請求項5】
前記複数の突起部は弾性を有することを特徴とする請求項1に記載の遊技球磨き装置。
【請求項6】
前記複数の突起部の先端の向く方向が互いに相違することを特徴とする請求項1に記載の遊技球磨き装置。
【請求項7】
前記搬送部は、
スクリューコンベアを有し、
前記スクリューコンベアの回転により、前記遊技球を搬送することを特徴とする請求項1に記載の遊技球磨き装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機にて使用される遊技球を磨く遊技球磨き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、遊技球の汚れ除去装置を開示する。汚れ除去装置は、スクリュー及び研磨布を有する。スクリューは、螺旋状の溝を外周面に有し、回転により遊技球を搬送する。研磨布は、フェルト等の不織布により構成される。研磨布は、スクリューによって搬送される遊技球に接触し、遊技球の表面に付着した汚れを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遊技中において、遊技盤や釘が遊技球と接触して削れ、粉状の削り屑が発生する場合がある。削り屑は、遊技盤や遊技球に付着して汚れの要因となる可能性がある。このため、遊技盤や遊技球の汚れを防止する為に、遊技盤や釘が遊技球と接触して削れることを抑制できるのが好ましい。
【0005】
本発明の目的は、遊技盤や釘が遊技球に接触して削れることを抑制できる遊技球磨き装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る遊技球磨き装置は、遊技球を搬送する搬送部と、ポリエチレンからなり、前記搬送部により搬送される前記遊技球に接触して脂肪族化合物を前記遊技球に塗布する磨き部とを備え、前記磨き部は、前記搬送部に向けて突出する複数の突起部を有し、前記複数の突起部の先端が曲折したことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、遊技球に塗布された脂肪族化合物により、遊技盤や釘と遊技球との接触時における摩擦力を軽減させることができる。従って遊技球磨き装置は、遊技盤や釘が遊技球と接触して削れることを抑制できる。このため遊技球磨き装置は、削り屑により遊技盤や遊技球が汚れることを防止できる。又、磨き部は、搬送部に向けて突出する複数の突起部を有するので、複数の突起部は多量の脂肪族化合物を保持できる。従って遊技球磨き装置は、遊技球に対して十分な量の脂肪族化合物を塗布できる。又、複数の突起部の先端が曲折しているので、遊技球磨き装置は、複数の突起部と遊技球との接触面積を大きくできる。従って遊技球磨き装置は、遊技球に対して脂肪族化合物を効率良く塗布できる。
【0008】
本発明において、前記磨き部は、低密度ポリエチレンからなってもよい。又、本発明において、前記磨き部は、直鎖状低密度ポリエチレンからなってもよい。低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンからなる磨き部は、脂肪族化合物を容易に保持できる。従って遊技球磨き装置は、磨き部に保持された脂肪族化合物を遊技球に塗布できる。
【0009】
本発明において、前記磨き部は、脂肪族炭化水素を前記遊技球に塗布してもよい。脂肪族炭化水素は、遊技盤や釘と遊技球との接触時における摩擦力を効率良く軽減させることができる。従って遊技球磨き装置は、遊技盤や釘が遊技球と接触して削れることを抑制し、削り屑が発生することを防止できる。
【0010】
【0011】
本発明においいて、前記複数の突起部は弾性を有してもよい。この場合、複数の突起部は、遊技球に対して脂肪族化合物を満遍なく塗布できる。
【0012】
【0013】
本発明において、前記複数の突起部の先端の向く方向が互いに相違してもよい。この場合、複数の突起部は、遊技球に対する脂肪族化合物の塗り残しを抑制できる。
【0014】
【0015】
本発明において、前記搬送部は、スクリューコンベアを有し、前記スクリューコンベアの回転により、前記遊技球を搬送してもよい。この場合、遊技球磨き装置は、簡易な構成で遊技球を適切に搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】
図2のI-I線を矢印方向から視た断面図である。
【
図4】
図2のII-II線を矢印方向から視た断面図である。
【
図8】遊技球磨き装置1により遊技球Pに脂肪族化合物が塗布される様子を示す図である。
【
図9】複数の突起部63から検出されたイオン種を示す表である。
【
図10】遊技球磨き装置1を通過する前の遊技球Pの表面を示す写真である。
【
図11】遊技球磨き装置1を約1400回通過させた後の遊技球Pの表面を示す写真である。
【
図12】変形例における研磨ブラシ6を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る遊技球磨き装置1について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。本実施形態の説明では、
図1の上方、下方、左斜め上方、右斜め下方、左斜め下方、右斜め上方を、それぞれ、遊技球磨き装置1の上方、下方、左方、右方、前方、後方とする。
【0018】
<遊技球磨き装置1の概要>
遊技球磨き装置1は、例えば、球循環式の遊技機に取り付けられて使用される。球循環式の遊技機では、球発射装置から遊技盤の遊技領域に向けて、遊技球Pが発射される。遊技球Pは、遊技領域に設けられた入賞口やアウト口を通過し、球貯留部に集められる。球貯留部に集められた遊技球Pは、球循環路を介して再び球発射装置へ供給される。遊技球磨き装置1は、球循環路に設けられる。
【0019】
図1、
図2に示すように、遊技球磨き装置1は、送入部2、揚送部3、送出部4、スクリューコンベア5、及び、研磨ブラシ6を有する。
【0020】
<送入部2、揚送部3、送出部4>
送入部2は、左右方向に長い直方体状を有する。揚送部3は、送入部2の上面2Uのうち右部分に設けられる。揚送部3は、上下方向に長い直方体状を有する。揚送部3は、送入部2の上面2Uから上方に延びる。揚送部3の下面3Bは、送入部2の上面2Uに接触する。送入部2の前面2Fと揚送部3の前面3Fとは、同一平面状に配置される。送入部2の左面2Lは、揚送部3の左面3Lよりも左方に突出する。
【0021】
送出部4は、揚送部3の上面3Uに設けられる。送出部4は、左右方向に長い直方体状を有する。送出部4の下面4Bのうち右部分は、揚送部3の上面3Uに接触する。送出部4の左面4Lは、揚送部3の左面3Lよりも左方に突出する。送出部4の前面4Fは、揚送部3の前面3Fよりも前方に突出する。
【0022】
送入部2の右面2R、揚送部3の右面3R、及び送出部4の右面4Rは、同一平面状に配置される。
図1に示すように、送入部2の後面2S、揚送部3の後面3S、及び送出部4の後面4Sは、同一平面状に配置され、遊技機のベース板20に連結する。ベース板20は、前後方向と直交する。遊技球磨き装置1は、ベース板20を介して遊技機に固定される。遊技球磨き装置1が遊技機に固定された状態で、送入部2は遊技機の球貯留部の近傍に位置し、送出部23は遊技機の球発射装置の近傍に位置する。
【0023】
図1、
図2に示すように、送入部2の上面2Uのうち揚送部3の下方部分に、下方に凹む溝部21が形成される。
図3に示すように、溝部21は、送入部2の前面2Fから後方に向けて延び、左方に湾曲し、左方に延びる。
図1、
図2に示すように、溝部21の上方は、揚送部3により覆われる。これにより溝部21は、遊技球磨き装置1の内部に、遊技球Pが通流する流路21Aを形成させる。溝部21の前端部は、遊技球磨き装置1の前面に開口22を形成させる。開口22は流路21Aに連通する。遊技機の球貯留部に集められた遊技球Pは、開口22を介して流路21Aに送入され、流路21Aに沿って後方に向けて流れる。
【0024】
図4に示すように、揚送部3の内部に流路31Aが形成される。流路31Aは、揚送部3の下面3Bと上面3U(
図1、
図2参照)との間に亘って上下方向に延びる。流路31Aの下端部は、送入部2の流路21Aに連通する。開口22を介して流路21Aに送入された遊技球Pは、流路31Aを介して上方に搬送される。
【0025】
流路31Aを構成する内壁は、第1内壁部32と第2内壁部33とを有する。第1内壁部32の断面形状は、上下方向に延びる仮想的な第1軸X1を中心とした半径r1の円形となる。第2内壁部33の断面形状は、第1軸X1よりも前方で上下方向に延びる仮想的な第2軸X2を中心とした半径r2の円形となる。半径r1よりも半径r2の方が小さい。半径r2は、遊技球Pの半径よりも僅かに大きい。
【0026】
第1内壁部32により囲まれる部分に、後述のスクリューコンベア5が収容される。第2内壁部33により囲まれる部分に、スクリューコンベア5により搬送される遊技球Pの一部が収容される。第2内壁部33は、一部が収容された状態の遊技球Pが水平方向に移動することを規制する。
【0027】
図1、
図2に示すように、揚送部3の前面3Fに孔30が形成される。孔30の断面形状は矩形状であり、前面3Fから後方に向けて延びる。
図4に示すように、孔30の底部は、揚送部3の内部に形成された流路31Aの第2内壁部33に連通する。
【0028】
図1に示すように、送出部4の上面4Uに、下方に凹む溝部41が形成される。溝部41は、送出部4の前面4Fから右斜め後方に向けて延びる。溝部41の底部は、後端部から前方に向けて、下方に僅かに傾斜する。溝部41は、遊技球磨き装置1の上端部に、遊技球Pが通流する流路41Aを形成する。溝部41の前端部は、遊技球磨き装置1の前面に開口42を形成させる。開口42は流路41Aに連通する。流路41Aの後端部に、流路31Aの上端部が連通する。流路31Aを介して搬送された遊技球Pは、流路41Aに沿って前方に向けて流れる。遊技球Pは、開口42から送出され、遊技機の球発射装置に供給される。
【0029】
<スクリューコンベア5>
図1、
図3、
図4に示すように、スクリューコンベア5は、流路21Aの一部(
図3参照)、流路31A(
図4参照)、及び流路41A(
図1参照)の一部に収容される。
図5に示すように、スクリューコンベア5は、軸51及び羽根52を有する。軸51は円柱状を有し、上下方向に延びる。軸51の中心を通って上下方向に延びる仮想的な軸を、「回転軸X3」という。羽根52は、軸51の側面に設けられ、回転軸X3の半径方向に突出する。羽根52は、先端に向かう程厚さが薄くなる板状を有し、螺旋状に延びる。回転軸X3から、羽根52の先端までの間の半径方向の長さは、流路31Aの第1内壁部32の半径r1よりも僅かに小さい。スクリューコンベア5は、非図示のモータの駆動に応じ、回転軸X3を中心として回転可能である。スクリューコンベア5の回転方向は、上方から視て時計回り方向である。
【0030】
図3に示すように、スクリューコンベア5の下端部は、送入部2の流路21Aに配置される。
図1に示すように、スクリューコンベア5の上端部は、送出部4の流路41Aに配置される。スクリューコンベア5の下端部及び上端部を除く部分は、揚送部3の流路31Aに配置される。スクリューコンベア5の回転軸X3の位置は、流路31Aの第1軸X1の位置と一致する。
【0031】
スクリューコンベア5は、流路31Aのうち第2内壁部33により囲まれる部分に一部が収容された状態の遊技球Pを、羽根52により下方から支持する。なお遊技球Pは、流路31Aの第2内壁部33により、水平方向の移動が規制されている。従って、遊技球Pは、スクリューコンベア5の回転に応じて、羽根52から力を受けて上方に移動する。このためスクリューコンベア5は、流路21Aの遊技球Pを、流路31Aを介して流路41Aまで上方に搬送することが可能である。なお、遊技球Pが上方に搬送される場合において、遊技球Pの中心X4は、流路31Aの第2軸X2に沿って移動する。又、遊技球Pは、搬送の過程で羽根52が相対移動することに応じ、回転子ながら上方に搬送される。
【0032】
<研磨ブラシ6>
図1に示すように、研磨ブラシ6は、揚送部3の孔30に嵌合した状態で、揚送部3により支持される。研磨ブラシ6は、揚送部3に対して着脱可能である。以下、研磨ブラシ6が揚送部3に支持された状態を前提として、研磨ブラシ6の各方向を説明する。
図6、
図7に示すように、研磨ブラシ6は、土台部61及び磨き部62を有する。
【0033】
土台部61は矩形板状を有し、前後方向と直交する。土台部61を前方から視た場合の形状は、揚送部3の孔30の断面形状と同一である。研磨ブラシ6は、土台部61が孔30に嵌合することにより、揚送部3に固定される。
【0034】
磨き部62は、土台部61から直線状に延びる突起部63を複数有する。複数の突起部63は、土台部61に対して後方に突出する。
図4に示すように、複数の突起部63の突出する方向は、土台部61から、揚送部3の流路31Aに配置されたスクリューコンベア5に向かう方向と一致する。
図6に示すように、複数の突起部63のそれぞれの長さは等しく、例えば7.5mmである。
図4に示すように、複数の突起部63の先端部は、揚送部3の流路31Aの第2内壁部33に対し、流路31Aの内側に突出する。
【0035】
複数の突起部63は、ポリエチレン、より詳細には、直鎖状低密度ポリエチレンからなる。なおポリエチレンは、炭素と水素のみからなる脂肪族化合物であり、エチレンを重合させた高分子化合物である。直鎖状低密度ポリエチレンとは、密度が0.910以上0.925未満のポリエチレンと定義される。複数の突起部63の表面には、脂肪族化合物、より詳細には、脂肪族炭化水素が保持されている。直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率は、70.3~183の範囲であり、複数の突起部63は弾性を有する。
【0036】
図6に示すように、突起部63の先端は丸みを帯びている。
図7に示すように、突起部63の断面形状は、半円である。突起部63は、土台部61に対して格子状に配列される。より詳細には、突起部63は、上下方向に延びる3つの列C(列C1~C3)、及び、左右方向に延びる9つの列M(列M1~M9)に沿って配列される。上下方向に隣接する列C間の間隔は等しい。左右方向に隣接する列M間の間隔は等しい。更に、列C間の間隔と、列M間の間隔とは等しい。列C間及び列M間の間隔は、一例として9mmである。
【0037】
列C2に沿って上下方向に配列される複数の突起部63の間の間隔と、列M2~M8に沿って左右方向に配列される複数の突起部63の間の間隔は等しい。以下、この間隔を「d1」と表記する。列C1、C3に沿って上下方向に配列される複数の突起部63の間の間隔と、列M1、M9に沿って左右方向に配列される複数の突起部63の間の間隔とは等しい。以下、この間隔を「d2」と表記する。間隔d2は、間隔d1の2倍である。つまり、土台部61の左右方向中央部において上下方向に配列される複数の突起部63の密度は、土台部61の左右両端部において上下方向に配列される複数の突起部63の密度よりも大きい。
【0038】
<動作概要>
図8を参照し、遊技球球磨き装置1の動作概要について説明する。なお、遊技球磨き装置1の動作時、非図示のモータは常時駆動し、スクリューコンベア5を回転させる。
【0039】
遊技機の球貯留部に集められた遊技球Pは、送入部2の開口22を介して流路21Aに送入される。遊技球Pは、流路21Aに沿って後方に移動し(矢印Y11)、流路21Aの後端部に到達する。スクリューコンベア5は、羽根52により遊技球Pを下方から支持した状態で回転する。これにより遊技球Pは、流路31Aに沿って上方に搬送される(矢印Y12)。このとき遊技球Pは、流路31Aの第2内壁部33により囲まれる部分を通過する。
【0040】
遊技球Pは、研磨ブラシ6の後方を通過する過程で、第2内壁部33に対して後方に突出する複数の突起部63の先端部分に接触する。このとき、複数の突起部63の表面に付着した脂肪族炭化水素が、遊技球Pに塗布される。なお、複数の突起部63は、遊技球Pとの接触により弾性変形する。これにより、遊技球Pの表面のうち複数の突起部63が接触する部分の面積は大きくなるので、遊技球Pのより広い領域に満遍なく脂肪族炭化水素が塗布される。
【0041】
遊技球Pは、スクリューコンベア5により上方に搬送されることにより、流路41Aの後端部に到達する。流路41Aの底部には傾斜が設けられているので、遊技球Pは、流路41Aに沿って前方に向けて流れ(矢印Y13)、流路41Aの前端部に到達する。遊技球Pは、送出部4の開口42を介して外部に送出される。送出された遊技球Pは、遊技機の球発射装置に供給される。
【0042】
<本実施形態の作用、効果>
遊技球Pに塗布された脂肪族炭化水素は、遊技機の遊技盤や釘と遊技球Pとの接触時における摩擦力を軽減させる。従って遊技球磨き装置1は、遊技球Pに脂肪族炭化水素を塗布することにより、遊技盤や釘が遊技球Pと接触して削れることを抑制できる。このため遊技球磨き装置1は、削り屑により遊技盤や遊技球Pが汚れることを防止できる。
【0043】
磨き部62の複数の突起部63は、直鎖状低密度ポリエチレンから構成されるので、脂肪族炭化水素を容易に保持できる。従って遊技球磨き装置1は、磨き部62の複数の突起部63に保持された脂肪族炭化水素を、遊技球Pに塗布できる。
【0044】
遊技球磨き装置1は、脂肪族化合物として脂肪族炭化水素を遊技球Pに塗布する。脂肪族炭化水素は、遊技盤や釘と遊技球Pとの接触時における摩擦力を、効率良く軽減させることができる。従って遊技球磨き装置1は、遊技盤や釘が遊技球Pと接触して削れることを抑制し、削り屑が発生することを防止できる。
【0045】
複数の突起部63は、大きな表面積を有するので、多量の脂肪族炭化水素を保持できる。従って遊技球磨き装置1は、遊技球Pに対して十分な量の脂肪族炭化水素を塗布できる。
【0046】
遊技球磨き装置1は、研磨ブラシ6を着脱可能である。このためユーザは、例えば遊技球磨き装置1の使用により研磨ブラシ6の複数の突起部63が擦れて劣化した場合、研磨ブラシ6を別の研磨ブラシ6に交換することが可能となる。
【0047】
複数の突起部63は、遊技球Pを搬送するスクリューコンベア5に向けて直線状に延びる。又、複数の突起部63は、遊技球Pが接触することに応じて弾性変形する。これにより、遊技球磨き装置1は、遊技球Pの表面のうち複数の突起部63が接触する部分の面積を大きくすることができる。このため、複数の突起部63は、遊技球Pのより広い領域に満遍なく脂肪族炭化水素を塗布できる。
【0048】
遊技球磨き装置1は、スクリューコンベア5により遊技球Pを上方に搬送する。従って、遊技球磨き装置1は、遊技機の球貯留部から球発射装置に向けた遊技球Pの搬送を、簡易な構成で実現送できる。又、遊技球Pは、スクリューコンベア5により搬送される過程で回転する。従って、遊技球磨き装置1は、遊技球Pの表面のより広い領域に脂肪族炭化水素を塗布できる。
【0049】
<実験結果1>
研磨ブラシ6の磨き部62の表面組成を調べる為、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)が行われた。分析装置として、ULVAC-PHI社製のTOF-SIMS装置である「TRIFT-V」が用いられた。試料として、複数の突起部63の一部を切り出したものが準備された。測定は、イオン源:Bi
3
2+を使用し、加速電圧:30kV、主走査範囲:100μm×100μmの条件で行われた。測定には、帯電補正用中和銃が使用された。測定の結果、検出された主なイオン種を、
図9に示す。
【0050】
この結果から、脂肪族炭化水素成分、ヒンダードアミン系光安定剤(Tinuvin770 相当)、脂肪酸成分、脂肪酸アミド成分、アルキルベンゼンスルホン酸成分、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸成分、シリコーン(ポリジメチルシロキサン)成分等が検出された。このことから、複数の突起部63の表面に脂肪族化合物が付着していることが明らかになった。
【0051】
<実験結果2>
遊技球磨き装置1を通過することにより、遊技球Pの表面に脂肪族炭化水素が付着することを確認するため、遊技球Pの表面を撮影して評価した。遊技球磨き装置1を通過する前の遊技球Pと、遊技球磨き装置1を約1400回通過させた後の遊技球Pとを撮影対象とし、それぞれを比較することにより評価を行った。
【0052】
図10は、遊技球磨き装置1を通過する前の遊技球Pの表面を示す写真である。
図11は、遊技球磨き装置1を約1400回通過させた後の遊技球Pの表面を示す写真である。この結果から、遊技球磨き装置1を通過させた後の遊技球Pの表面に、脂肪族炭化水素であると思われる色の濃い部分が多く観察された。従って、遊技球磨き装置1により遊技球Pに対して脂肪族炭化水素が塗布されていることが明らかになった。
【0053】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。遊技球磨き装置1は、球循環式の遊技機に取り付けられて使用される場合に限定されない。例えば遊技球磨き装置1は、複数の遊技機が収容された遊技機島の中の球循環経路に設けられてもよい。
【0054】
研磨ブラシ6の磨き部62により遊技球Pに塗布される脂肪族化合物である脂肪族炭化水素は、鎖式、環式いずれでもよい。鎖式の脂肪族炭化水素は、鎖式飽和炭化水素でもよいし、鎖式不飽和炭化水素でもよい。環式の脂肪族炭化水素は、脂環式炭化水素でもよい。
【0055】
研磨ブラシ6の磨き部62により遊技球Pに塗布される脂肪族化合物は、脂肪族炭化水素に限定されない。例えば磨き部62は、炭素と水素以外の元素を有する脂肪族化合物でもよい。
【0056】
磨き部62は直鎖状低密度ポリエチレンに限定されない。例えば磨き部62は、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、分岐構造を有する低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等でもよい。
【0057】
遊技球磨き装置1は、スクリューコンベア5以外の機構を用いて遊技球Pを搬送しつつ、研磨ブラシ6を用いて遊技球Pに脂肪族炭化水素を塗布してもよい。例えば遊技球磨き装置1は、ベルトコンベアにより遊技球Pを搬送しつつ、研磨ブラシ6を用いて遊技球Pに脂肪族炭化水素を塗布してもよい。
【0058】
複数の突起部63のそれぞれの断面形状は、半円状に限定されず、円形、矩形等でもよい。複数の突起部63のそれぞれの長さは均一でなくてもよい。例えば、列C2に沿って配列された複数の突起部63の長さよりも、列C1、C3に沿って配列された複数の突起部63の長さを長くしてもよい。複数の突起部63は、それぞれ、先端に向かうに従って細くなっていてもよい。
【0059】
複数の突起部63の配列は、上記実施形態に限定されない。例えば複数の突起部63は、土台部61に対して上下方向及び左右方向に等間隔に設けられていてもよい。
【0060】
複数の突起部63は、直線状に延びていなくてもよい。例えば
図12に示すように、複数の突起部63は、先端が曲折していてもよい。この場合、遊技球磨き装置1は、複数の突起部63と遊技球Pとの接触面積を更に大きくできる。従って遊技球磨き装置1は、遊技球Pに対して脂肪族炭化水素を効率良く塗布できる。
【0061】
更に、例えば
図12(A)に示すように、複数の突起部63の先端は同一方向を向いていてもよい。又は、
図12(B)に示すように、複数の突起部63の先端は、互いに異なる方向を向いていてもよい。なお、複数の突起部63の先端の向きを互いに相違させることにより、複数の突起部63は、遊技球Pに対する脂肪族化合物の塗り残しを抑制できる。なお、複数の突起部63の先端の向きは、規則的に変化してもよいし、ランダムに変化してもよい。
【0062】
複数の突起部63の形状は、均一でなくてもよい。例えば複数の突起部63の形状は、列C1~C3、M1~M9毎に異なっていてもよい。
【0063】
研磨ブラシ6の磨き部62は、複数の突起部63を有さなくてもよい。例えば磨き部62は、脂肪族化合部を保持する布、スポンジ等を、複数の突起部63の代わりに有してもよい。
【0064】
遊技球磨き装置1は、脂肪族化合物を遊技球Pに塗布する機能に加えて、複数の突起部63により遊技球Pを磨いたり、表面の汚れを除去したりする機能を有していてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 :遊技球磨き装置
5 :スクリューコンベア
6 :研磨ブラシ
62 :磨き部
63 :突起部