(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180364
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】デジタル保護リレー
(51)【国際特許分類】
H02H 3/05 20060101AFI20231214BHJP
G06F 13/12 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H02H3/05 F
G06F13/12 340C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093600
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新宮 勇
(72)【発明者】
【氏名】長岡 啓
(72)【発明者】
【氏名】久村 大作
【テーマコード(参考)】
5G142
【Fターム(参考)】
5G142BC02
5G142BD06
5G142GG02
(57)【要約】
【課題】入出力のチャンネル数が増大した場合でも、比較的低処理能力のCPUを用いて保護制御演算を実行可能にする。
【解決手段】デジタル保護リレー100において、演算処理基板40は、入力データに基づいて電力系統の保護制御演算を行う中央処理装置41と、出力データおよび入力データを格納するためのメモリ43と、データ通信を制御するマスタコントローラ44とを含む。マスタコントローラ44は、中央処理装置41の制御によらずに自律的に複数の入出力基板10,20,30との間で定期的にデータ通信を行い、メモリ43に複数の入出力基板10,20,30からの入力データの書き込みが完了すると中央処理装置41に割り込み信号を発行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル保護リレーであって、
通信バスと、
各々が前記デジタル保護リレーの外部への出力データの送信または前記外部から入力データの受信の少なくとも一方を行う複数の入出力基板と、
前記通信バスを介して前記複数の入出力基板との間で前記出力データおよび前記入力データのデータ通信を行う演算処理基板とを備え、
前記演算処理基板は、
前記入力データに基づいて電力系統の保護制御演算を行う中央処理装置と、
前記出力データおよび前記入力データを格納するためのメモリと、
前記データ通信を制御するマスタコントローラとを含み、
前記マスタコントローラは、前記中央処理装置の制御によらずに自律的に前記複数の入出力基板との間で定期的にデータ通信を行い、前記メモリに前記複数の入出力基板からの前記入力データの書き込みが完了すると前記中央処理装置に割り込み信号を発行する、デジタル保護リレー。
【請求項2】
前記中央処理装置は、前記マスタコントローラから前記割り込み信号を受けると、前記メモリに格納された前記入力データを一括して直接読み込むとともに、前記メモリに前記出力データを一括して直接書き込む、請求項1に記載のデジタル保護リレー。
【請求項3】
前記入力データおよび前記出力データが格納される前記メモリ内の領域は予め定められており、前記中央処理装置および前記マスタコントローラで共有されている、請求項2に記載のデジタル保護リレー。
【請求項4】
前記複数の入出力基板の各々は、スレーブコントローラを含み、
前記スレーブコントローラは、前記マスタコントローラとの間で定期的にデータ通信を行う合間に、前記デジタル保護リレーの外部との間で前記出力データの送信または前記入力データの受信を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載のデジタル保護リレー。
【請求項5】
前記複数の入出力基板は、
前記電力系統の電気量を表すアナログ信号を検出してデジタルデータに変換する複数のアナログ入力基板と、
前記デジタル保護リレーの外部からデジタルデータを取得する複数のデジタル入力基板と、
前記デジタル保護リレーの外部にデジタルデータを出力する複数のデジタル出力基板とを含む、請求項4に記載のデジタル保護リレー。
【請求項6】
前記マスタコントローラは、前記中央処理装置によって初期設定された後、前記複数の入出力基板の各々の前記スレーブコントローラと通信することにより、前記複数の入出力基板の初期設定を行い、その後、前記複数のアナログ入力基板の各々の前記スレーブコントローラと通信することにより、前記複数のアナログ入力基板に固有の設定を行う、請求項5に記載のデジタル保護リレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デジタル保護リレーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデジタル保護リレーでは、アナログ入力のチャンネル数およびデジタル入出力のチャンネル数が増大している。
【0003】
たとえば、特開2021-141711号公報(特許文献1)に開示されたデジタル保護リレーは、多数の入出力(IO:Input and Output)部が演算処理部とIOバスを介して接続された構成を有している。これらのIO部には、複数のアナログ信号を入力するためのIO部、および複数のデジタル信号の入力または出力の少なくとも一方を行うためのIO部が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、アナログ入力のチャンネル数およびデジタル入出力のチャンネル数が増大すると、演算処理部に備えられたCPU(Central Processing Unit)では、データ通信に必要な処理負荷が増大する。この結果、保護制御演算のためのCPUの処理能力が低下してしまうという問題が生じる。
【0006】
上記の問題に対処するために、消費電力の大きい高性能のCPUを使用することは望ましくない。この理由は、デジタル保護リレーで用いられるCPUは、低コストかつ送風機による冷却が不要なファンレス設計であることが要求されるからである。
【0007】
本開示は、上記の問題点を考慮してなされたものであり、その目的は、アナログ入力のチャンネル数およびデジタル入出力のチャンネル数が増大した場合でも、比較的低処理能力のCPUを用いて保護制御演算を実行可能なデジタル保護リレーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態のデジタル保護リレーは、通信バスと、複数の入出力基板と、演算処理基板とを備える。複数の入出力基板の各々は、デジタル保護リレーの外部への出力データの送信または外部から入力データの受信の少なくとも一方を行う。演算処理基板は、通信バスを介して複数の入出力基板との間で出力データおよび入力データのデータ通信を行う。演算処理基板は、入力データに基づいて電力系統の保護制御演算を行う中央処理装置と、出力データおよび入力データを格納するためのメモリと、データ通信を制御するマスタコントローラとを含む。マスタコントローラは、中央処理装置の制御によらずに自律的に複数の入出力基板との間で定期的にデータ通信を行い、メモリに複数の入出力基板からの入力データの書き込みが完了すると中央処理装置に割り込み信号を発行する。
【発明の効果】
【0009】
上記の実施形態によれば、データ通信を自律的に制御するマスタコントローラが設けられることにより、入出力のチャンネル数が増大した場合でも、比較的低処理能力のCPUを用いて保護制御演算を実行可能なデジタル保護リレーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】デジタル保護リレーの構成例を示すブロック図である。
【
図2】マスタコントローラの動作を示す状態遷移図である。
【
図3】
図2のステージ0,1での基板間通信の手順を示すタイミング図である。
【
図4】
図2のステージ2での基板間通信の手順を示すタイミング図である。
【
図5】
図2のステージ3での基板間通信の手順を示すタイミング図である。
【
図6】マスタコントローラに設けられたメモリのメモリマップの具体例を示す図である(ステージ1用)。
【
図7】マスタコントローラに設けられたメモリのメモリマップの具体例を示す図である(ステージ2用)。
【
図8】マスタコントローラに設けられたメモリのメモリマップの具体例を示す図である(ステージ3用)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない場合がある。
【0012】
実施の形態1.
[デジタル保護リレーの全体構成]
図1は、デジタル保護リレーの構成例を示すブロック図である。
図1を参照してデジタル保護リレー100は、X個(1以上の整数)のアナログ入力(AI:Analog Input)基板10、X個のデジタル入力(DI:Digital Input)基板20、X個のデジタル出力(DO:Digital Output)基板30、CPU基板40、およびこれらの基板を接続する基板間通信バス50とを備える。
【0013】
上記のアナログ入力基板10、デジタル入力基板20、およびデジタル出力基板30を総称して入出力(IO)基板と記載する。各入出力基板は、複数の入力または出力チャンネルを有している。
図1では、3チャンネルのみ代表的に示されているが、実際にはそれよりも多くのチャンネルを有していてもよい。また、
図1の場合と異なり、アナログ入力基板10、デジタル入力基板20、およびデジタル出力基板30のそれぞれの個数は互いに異なっていてもよい。本開示において、CPU基板40を演算処理基板とも称する。以下、各入出力基板10,20,30およびCPU基板40の構成および動作について簡単に説明する。
【0014】
アナログ入力基板10は、電力系統から検出された電気量(電圧または電流)を表す複数のアナログ信号を受信する。
図1に示すように、アナログ入力基板10は、入力変換器11、AD(Analog-to-Digital)変換器12、メモリ13、およびスレーブコントローラ14を備える。
【0015】
入力変換器11は、
図1では図解を容易にするためにアナログ入力基板10ごとに1個のみ示されているが、実際には入力チャンネルごとに設けられている。各入力変換器11は、対応するアナログ入力信号を、AD変換器12によるAD変換処理およびCPU基板40による演算処理に適した信号の大きさに変換する。入力変換器11として、たとえば補助変成器が設けられる。
【0016】
AD変換器12は、入力変換器11によって大きさが変更されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
図1では図示していないが、AD変換器12の前段にアナログフィルタとマルチプレクサとが設けられる。アナログフィルタは、AD変換の際の折返し誤差を除去するために入力チャンネルごとに設けられている。マルチプレクサは、アナログフィルタをそれぞれ通過した複数のアナログ信号を順次選択する。AD変換器12は、マルチプレクサによって選択されたアナログ信号をAD変換する。
【0017】
メモリ13は、スレーブコントローラ14によってアクセスされるスレーブコントローラ14用のメモリである。メモリ13は、スレーブコントローラ14の制御に従って、AD変換によって得られた複数チャンネルのデジタル信号を格納する。メモリ13として、たとえば、フラッシュメモリなどの電気的に書き換え可能な不揮発性メモリを用いてもよい。
【0018】
スレーブコントローラ14は、基板間通信バス50を介してCPU基板40のマスタコントローラ44と通信する。スレーブコントローラ14は、マスタコントローラ44からの要求に従って、メモリ13に格納された複数チャンネルのデジタルデータをCPU基板40に転送する。
【0019】
デジタル入力基板20は、電力機器および他のデジタル保護リレーなどから送信されたデジタル信号を受信する。
図1に示すように、デジタル入力基板20は、入力インターフェイス(IF)21、メモリ22、およびスレーブコントローラ23を備える。
【0020】
入力インターフェイス21は、入力チャンネルごとに設けられ、入力デジタル信号を内部でのデータ処理に適した大きさ信号に変換したり、入出力分離を行ったりする。入力インターフェイス21は、たとえばフォトカプラを含む。
【0021】
メモリ22は、スレーブコントローラ23によってアクセスされるスレーブコントローラ23用のメモリである。メモリ22は、スレーブコントローラ23の制御に従って、外部から入力された複数の入力デジタル信号を格納する。メモリ22として、たとえば、フラッシュメモリなどの電気的に書き換え可能な不揮発性メモリを用いてもよい。
【0022】
スレーブコントローラ23は、基板間通信バス50を介してCPU基板40のマスタコントローラ44と通信する。スレーブコントローラ23は、マスタコントローラ44からの要求に従って、メモリ22に格納された複数チャンネルの入力デジタルデータをCPU基板40に転送する。
【0023】
デジタル出力基板30は、電力機器および他のデジタル保護リレーにデジタル信号を送信する。たとえば、デジタル出力基板30は、遮断器または開閉器にトリップ信号を出力する。
図1に示すように、デジタル出力基板30は、出力インターフェイス(IF)31、メモリ32、およびスレーブコントローラ33を備える。
【0024】
出力インターフェイス31は、出力チャンネルごとに設けられ、メモリ32に格納されたデータに従ってハイレベルまたはロウレベルのデジタル信号を出力する。これにより、たとえば、デジタル保護リレー100の外部に設けられたアナログ形リレーの接点が開閉される。
【0025】
メモリ32は、スレーブコントローラ33によってアクセスされるスレーブコントローラ33用のメモリである。メモリ32として、たとえば、フラッシュメモリなどの電気的に書き換え可能な不揮発性メモリを用いてもよい。
【0026】
スレーブコントローラ33は、基板間通信バス50を介してCPU基板40のマスタコントローラ44と通信する。スレーブコントローラ33は、マスタコントローラ44から転送された出力デジタルデータをメモリ32に格納する。スレーブコントローラ33は、メモリ32に格納された出力デジタルデータを対応する外部の機器に出力する。
【0027】
CPU基板40は、基板間通信バス50を介して、各入出力基板との間でデータの送受信を行う。さらに、CPU基板40は、アナログ入力基板10によって取得された電力系統の電気量を表すデータに基づいて、保護制御演算を実行する。
図1に示すように、CPU基板40は、CPU41、CPU用メモリ42、マスタコントローラ44用のメモリ43、およびマスタコントローラ44を備える。
【0028】
CPU41は、保護制御演算を実行するとともにデジタル保護リレー100の全体を制御する。CPU用メモリ42は、CPU41の主記憶として用いられるRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含む。ROMとして、フラッシュメモリなど電気的に書き換え可能な不揮発性メモリを用いてもよい。
【0029】
メモリ43は、マスタコントローラ44によってアクセスされるマスタコントローラ44用のメモリであるが、CPU41からも直接アクセス可能に構成される。メモリ43として、フラッシュメモリなどの電気的に書き換え可能な不揮発性メモリを用いてもよい。
【0030】
マスタコントローラ44は、基板間通信バス50を介して各スレーブコントローラ14,23,33と通信する。マスタコントローラ44は、各アナログ入力基板10および各デジタル入力基板20から基板間通信バス50を介して受信したデジタルデータをメモリ43に格納する。また、マスタコントローラ44は、CPU41からの要求に従って出力デジタルデータを、基板間通信バス50を介して対応するデジタル出力基板30に送信する。
【0031】
上記のマスタコントローラ44およびスレーブコントローラ14,23,33は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用の回路によって構成されていてもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)を利用して構成されていてもよい。
【0032】
上記の入出力基板を転送データ容量の点で比較すると、アナログ入力基板10は転送データ容量が比較的大きいのに対して、デジタル入力基板20およびデジタル出力基板30は転送データ容量が比較的小さい。
【0033】
[基板間通信の特徴]
以下、上記のデジタル保護リレー100の構成における基板間通信の特徴をまとめる。基板間通信の特徴の1つは、CPU41のデータ通信に対する制御負荷を軽くするために、マスタコントローラ44がデジタル保護リレー100内の通信制御機能を有している点にある。マスタコントローラ44は、CPU41から必要最低限の制御を受けた後、CPU41からの制御によらずに自律的に各スレーブコントローラ14,23,33と通信する。
【0034】
図2は、マスタコントローラの動作を示す状態遷移図である。マスタコントローラ44は、
図2の状態遷移図(ステージ(Stage)0~3)に従って、各スレーブコントローラ14,23,33との間でデータ通信を行う。
【0035】
まず、初期設定(Stage 0)において、CPU41は、マスタコントローラ44に対して各入出力基板の種類指定(DI/DO/AI)および通信周期などを初期設定する。マスタコントローラ44は、設定完了をCPU41に通知する。
【0036】
次の共通コンフィグ設定(Stage 1)において、マスタコントローラ44は、CPU41から受信した初期設定情報を、各スレーブコントローラ14,23,33にそれぞれ設定する。マスタコントローラ44は、各スレーブコントローラ14,23,33からの応答を確認してから、設定完了をCPU41に通知する。
【0037】
その次の個別コンフィグ設定(Stage 2)において、マスタコントローラ44は各アナログ入力基板10のスレーブコントローラ14に対して、電力系統の情報、アナログデジタル変換特性など保護リレー特有の設定を行う。マスタコントローラ44は、各アナログ入力基板10のスレーブコントローラ14からの応答を確認してから、設定完了をCPU41に通知する。
【0038】
その次のデータ転送(Stage 3)において、マスタコントローラ44は、各スレーブコントローラ14,23,33との間で、一定周期でテータ転送を行う。マスタコントローラ44は、全ての入出力基板との間でデータ転送が完了すると、CPU41へ割り込み信号を発行する。これにより、CPU41は、マスタコントローラ44のメモリ43へアクセスすることにより転送データを一括して処理できる。以下、マスタコントローラ44による通信制御について、
図3~
図5を参照してさらに詳しく説明する。
【0039】
図3~
図5は、
図2のステージごとの基板間通信の手順を示すタイミング図である。
図3にはステージ0,1の場合が示され、
図4にはステージ2の場合が示され、
図5にはステージ3の場合が示される。
【0040】
図3を参照して、ステージ0において、CPU41は、各入出力基板の種類および通信周期などの初期設定を、マスタコントローラ44のメモリ43に直接書き込む(S1,S2)。マスタコントローラ44は、割り込み信号によって設定完了をCPU41に通知する(S3)。CPU41は、割り込み信号に応答して処理をステージ0からステージ1に遷移させる(S4)。CPU41の指令に基づいて、マスタコントローラ44は、処理をステージ0からステージ1に遷移させる(S5)。
【0041】
ステージ1において、CPU41は、アナログ入力基板10、デジタル入力基板20、およびデジタル出力基板30の各No.1から各No.Xまでの初期設定を、一括してマスタコントローラ44のメモリ43に直接書き込む(S6,S7)。
【0042】
続いて、マスタコントローラ44は、まず、No.1のアナログ入力基板10に対して該当する初期設定を送信する(S8)。No.1のアナログ入力基板10のスレーブコントローラ14は、受信した初期設定をメモリ13に格納して、マスタコントローラ44に応答する(S9)。次に、マスタコントローラ44は、No.1のデジタル入力基板20に対して該当する初期設定を送信する(S10)。No.1のデジタル入力基板20のスレーブコントローラ23は、受信した初期設定をメモリ22に格納して、マスタコントローラ44に応答する(S11)。以下、入出力基板の配列順に順次、各入出力基板の初期設定を行う。マスタコントローラ44は、最後の入出力基板であるNo.Xのデジタル出力基板30に対して該当する初期設定を送信する(S12)。No.Xのデジタル出力基板30のスレーブコントローラ33は、受信した初期設定をメモリ32に格納して、マスタコントローラ44に応答する(S13)。
【0043】
以上により、入出力基板の基板挿入場所および種類などの確認が完了する。マスタコントローラ44は、割り込み信号によって設定完了をCPU41に通知する(S14)。CPU41は、割り込み信号に応答して処理をステージ1からステージ2に遷移させる(S15)。CPU41の指令に基づいて、マスタコントローラ44は、処理をステージ1からステージ2に遷移させる(S16)。
【0044】
図4を参照して、ステージ2において、CPU41は、アナログ入力基板10のNo.1からNo.Xまでの保護リレーに関係する個別設定を、一括してマスタコントローラ44のメモリ43に直接書き込む(S20,S21)。個別設定とは、たとえば、電力系統の情報、アナログデジタル変換特性、および整定値など、保護リレー装置に特有の設定をいう。
【0045】
続いて、マスタコントローラ44は、まず、No.1のアナログ入力基板10に対して該当する個別設定を送信する(S22)。No.1のアナログ入力基板10のスレーブコントローラ14は、受信した個別設定をメモリ13に格納して、マスタコントローラ44に応答する(S23)。以下、アナログ入力基板10の配列順に順次、各アナログ入力基板10の個別設定を行う。マスタコントローラ44は、最後のアナログ入力基板10であるNo.Xのアナログ入力基板10に対して該当する個別設定を送信する(S24)。No.Xのアナログ入力基板10のスレーブコントローラ14は、受信した個別設定をメモリ13に格納して、マスタコントローラ44に応答する(S25)。
【0046】
以上により、アナログ入力基板10への電力系統の情報などの設定が完了する。マスタコントローラ44は、割り込み信号によって設定完了をCPU41に通知する(S26)。CPU41は、割り込み信号に応答して処理をステージ2からステージ3に遷移させる(S27)。CPU41の指令に基づいて、マスタコントローラ44は、処理をステージ2からステージ3に遷移させる(S28)。
【0047】
図5を参照して、ステージ3において、まずCPU41は、デジタル出力基板30のNo.1からNo.Xから出力すべきデータを、一括してマスタコントローラ44のメモリ43に直接書き込む(S30,S31)。
【0048】
上記と並行して、各アナログ入力基板10および各デジタル入力基板20は、デジタル保護リレー100の外部からアナログデータおよびデジタルデータをそれぞれ取り込む(S32,S33)。このデータ取り込みは周期的に実行され、今回が最初である。
【0049】
上記のデータ取り込みに基づいて、マスタコントローラ44は、まず、No.1のアナログ入力基板10に対して取り込んだデータの送信を要求する(S34)。この要求に応答して、No.1のアナログ入力基板10のスレーブコントローラ14は、取り込んだデータをマスタコントローラ44に送信する(S36)。マスタコントローラ44は、転送されたデータをメモリ43に格納する。以下、同様に各アナログ入力基板10および各デジタル入力基板20によって取り込まれたデータが、マスタコントローラ44に送信され、メモリ43に格納される。
【0050】
さらに、マスタコントローラ44は、各デジタル出力基板30に対して、CPU41から受信した出力データを送信する。各デジタル出力基板30のスレーブコントローラ33は、受信した出力データをメモリ32に書き込む。これにより、たとえば、外部接点を開閉するためのデータがセットされる。最後に、No.Xのデジタル出力基板30用の書き込みデータがマスタコントローラ44から出力され(S36)、No.Xのデジタル出力基板30のメモリ32に格納される(S37)。
【0051】
以上により、マスタコントローラ44と各スレーブコントローラ14,23,33との間での1周期目のデータのやり取りが完了する。マスタコントローラ44は、No.Xのデジタル出力基板30から応答を受けると、割り込み信号によってCPU41にメモリ43へのアクセスを要求する(S38)。この割り込み信号に応答してCPU41は、メモリ43に格納されている各アナログ入力基板10および各デジタル入力基板20の入力データを一括して直接読み出す(S40,S41)。さらに、CPU41は、No.1からNo.Xまでのデジタル出力基板30から外部に出力すべきデータを、一括してマスタコントローラ44のメモリ43に直接書き込む(S40,S41)。
【0052】
上記と並行して、各アナログ入力基板10および各デジタル入力基板20は、第2周期目のデータ取り込みとして、デジタル保護リレー100の外部からアナログデータおよびデジタルデータをそれぞれ取り込む(S42,S43)。さらに、各デジタル出力基板30は、既にマスタコントローラ44から受信済みの出力データを、デジタル保護リレー100の外部に出力する(S42,S44)。
【0053】
上記のデータ取り込みに基づいて、マスタコントローラ44は、まず、No.1のアナログ入力基板10に対して取り込んだデータの送信を要求する(S45)。この要求に応答して、No.1のアナログ入力基板10のスレーブコントローラ14は、取り込んだデータをマスタコントローラ44に送信する(S46)。マスタコントローラ44は、受信したデータをメモリ43に格納する。以下、同様に各アナログ入力基板10および各デジタル入力基板20によって取り込まれたデータが、マスタコントローラ44に送信され、メモリ43に格納される。
【0054】
さらに、マスタコントローラ44は、各デジタル出力基板30に対して、CPU41から受信した出力データを送信する。各デジタル出力基板30のスレーブコントローラ33は、受信した出力データをメモリ32に書き込む。最後に、No.Xのデジタル出力基板30用の出力データがマスタコントローラ44から出力され(S47)、No.Xのデジタル出力基板30のメモリ32に格納される(S48)。
【0055】
以上により、マスタコントローラ44と各スレーブコントローラ14,23,33との間での第2周期目のデータのやり取りが完了する。マスタコントローラ44は、No.Xのデジタル出力基板30から応答を受けると、割り込み信号によってCPU41にメモリ43へのアクセスを要求する(S49)。以下、同様の手順が繰り返される。
【0056】
上記の基板間通信のタイミングをまとめると以下のようになる。
まず、CPU41からマスタコントローラ44へのアクセスは、(i)各ステージの開始時(S1,S6,S20,S30)と、(ii)マスタコントローラ44から割り込みを受けたとき(S4,S15,S27,S38)とに発生する。
【0057】
マスタコントローラ44とスレーブコントローラ14,23,33とは、一定周期で通信を行う(S34~S37,S45~S48)。これにより、双方のメモリ43とメモリ13,22,32との間でデータがやり取りされる。
【0058】
CPU41は、マスタコントローラ44から割り込み信号(S38)に応答して、マスタコントローラ44のメモリ43にアクセスする(S40,S41)。これにより、アナログ入力基板10およびデジタル入力基板20によって取得されたデータの取り込みと、デジタル出力基板30からの出力データの書き込みとが一括して実行される。
【0059】
マスタコントローラ44は、1つ前の周期で各アナログ入力基板10および各デジタル入力基板20から受信した入力データ(S34,S35)を、CPU41に一括して提供する(S41)。また、マスタコントローラ44は、CPU41から一括した受信した各デジタル出力基板30からの出力データ(S31,S41)を、次の周期までに各デジタル出力基板30に出力する(S36,S47)。
【0060】
各スレーブコントローラ14,23,33は、マスタコントローラ44から入力データの送信要求および出力データの出力指令を受けるまでの間に、デジタル保護リレー100の外部からデータを取得するとともに、出力データによって対応する接点の開閉を制御する。各アナログ入力基板10および各デジタル入力基板20のスレーブコントローラ14,23は、入力データの送信要求を受けるとすぐに現周期の入力データを応答として返す。
【0061】
[マスタコントローラのメモリ制御]
データ通信時におけるCPU41の処理を簡単化するために、マスタコントローラ44のメモリ43は、用途、通信頻度、基板の場所、書き込み専用/読み取り専用で領域分けされる。
【0062】
図6~
図8は、マスタコントローラ44に設けられたメモリ43のメモリマップの具体例を示す図である。
図6はステージ1で用いられるメモリ領域を示し、
図7はステージ2で用いられるメモリ領域を示す、
図8はステージ3で用いられるメモリ領域を示す。
【0063】
図6を参照して、共通コンフィグメモリ領域60は、データ通信を行う入出力基板ごとにそのメモリ領域が分割される。これにより、マスタコントローラ44は、CPU41の制御無しで各入出力基板との間で直接通信できる。
【0064】
図7を参照して、固有コンフィグメモリ領域61は、データ通信を行うアナログ入力基板10ごとにそのメモリ領域が分割される。これにより、マスタコントローラ44は、CPU41の制御なしで各アナログ入力基板10との間で直接通信できる。
【0065】
図8を参照して、ステージ3においてCPU41から読み出される各アナログ入力基板10および各デジタル入力基板20の入力データは、入力バッファメモリ領域62にまとめられる。また、ステージ3においてCPU41から書き込まれる各デジタル出力基板30の出力データは、出力バッファメモリ領域63にまとめられる。これにより、CPU41から入力バッファメモリ領域62および出力バッファメモリ領域63に一括アクセスしやすくなる。また、バッファメモリ領域62,63のメモリサイズは、CPU41から一括アクセスの際に通信効率が最大となるように決められる。
【0066】
[実施の形態1のまとめと効果]
以上の実施の形態1のデジタル保護リレーの特徴をまとめると次のようになる。まず、各入出力基板10~30とCPU基板40との間のデータ通信は、デジタル保護リレー100内でのデータ通信に特化したコントローラによって実行される。これにより、CPU41のデータ通信処理の処理負荷を抑えることができ、基板間のデータ通信性能を向上できる。
【0067】
上記のコントローラとして、CPU基板40にCPU41からアクセス可能なメモリ43を備えたマスタコントローラ44が設けられる。また、アナログ入力基板10および20には、入力データの取り込みを制御するためのスレーブコントローラ14,23が設けられる。デジタル出力基板30には、出力データの出力を制御するためのスレーブコントローラ33が設けられる。
【0068】
マスタコントローラ44は、各入出力基板のスレーブコントローラ14,23,33との間で、CPU41の制御によらずに自律的かつ定期的にデータ通信を行う。これにより、CPU41の負荷を低減できる。
【0069】
マスタコントローラ44は、各入出力基板との間でデータ通信を行う際に、入出力基板ごとに予め決められた番地の記憶内容を更新する。また、メモリ43上のデータの並びは、CPU41からアクセスしやすいように、ステージおよび入出力基板ごとにまとめて配置される。このように、入力データおよび出力データが格納されるメモリ43内の領域は予め定められており、CPU41およびマスタコントローラ44で共有される。これにより、CPU41は、直接当該番地にアクセス可能になる。
【0070】
マスタコントローラ44は、各入出力基板との間でデータ通信が完了した時点でCPU41に対して割り込み信号を発行する。CPU41は、割り込み信号に応答してマスタコントローラ44のメモリ43にアクセスする。これにより、CPU41がデータ通信を監視する頻度を低減できる。
【0071】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この出願の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
10 アナログ入力基板(入出力基板)、13,22,32,43 メモリ、14,23,33 スレーブコントローラ、20 デジタル入力基板(入出力基板)、30 デジタル出力基板(入出力基板)、40 CPU基板、41 CPU、44 マスタコントローラ、50 基板間通信バス、100 デジタル保護リレー。