(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180370
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B25J19/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093611
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】黒川 悠輔
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CT05
3C707CV08
3C707CW08
3C707CY24
3C707HS27
3C707KV06
(57)【要約】
【課題】ロボットの姿勢又は駆動状態によらず、ガススプリングの内部のガス圧の低下状態を推定する。
【解決手段】ロボットシステム1は、アーム4aと、アーム4aに関節6aを介して回動自在に支持されるアーム4bと、アーム4bを駆動するための駆動モータ7aと、アーム4aとアーム4bとに固定され、駆動モータ7aの出力を補助するガススプリング20と、を有するロボット10と、アーム4aにおけるガススプリング20が固定されている固定部8の変形量を測定する測定部36と、測定部36により測定された変形量に基づき、ガススプリング20の内部のガス圧の低下状態を推定する推定部38と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のアームと、
前記一方のアームに関節を介して回動自在に支持される他方のアームと、
前記他方のアームを駆動するための駆動モータと、
前記一方のアームと前記他方のアームとに固定され、前記駆動モータの出力を補助する出力補助機構と、
を有するロボットと、
前記一方のアームにおける前記出力補助機構が固定されている固定部の変形量を測定する測定部と、
前記測定部により測定された前記変形量に基づき、前記出力補助機構の補助状態を推定する推定部と、
を備えることを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記測定部は、前記固定部に設けられたひずみゲージを用いて前記変形量を測定することを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記推定部は、予め記憶された基準の前記変形量と、前記測定部により測定された前記変形量と、に基づき、前記補助状態を推定することを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記測定部は、前記駆動モータが停止状態である場合に、前記変形量を測定することを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記出力補助機構は、ガススプリングであることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方のアームと他方のアームとに固定され、駆動モータの出力を補助する出力補助機構を有するロボットを具備するロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動モータによって駆動されるアームを備えるロボットシステムにおけるロボットにおいては、アームに作用する重力によって駆動モータに加わる負荷を低減するための出力補助機構を設けることが知られている。例えば、下記特許文献1に開示されたロボットでは、アームに対して出力補助機構としてのガススプリングを設けており、ガススプリングが出力する補助トルクによって、駆動モータに加わる負荷を低減している。ガススプリングは、シリンダと、当該シリンダ内を摺動可能であって当該シリンダ内に封入された高圧のガスを圧縮するピストンロッドと、を含んでいる。シリンダ内へピストンロッドが挿入されてガススプリングの長さが短くなるにつれて、シリンダ内に封入されたガス圧が大きくなる。ガススプリングは、このガス圧による反力(伸縮力)によって、補助トルクを出力する。
【0003】
ここで、ガススプリングでは、ピストンロッドの摺動によって内部のガスが徐々に漏洩したり、ガススプリングの故障によって内部のガスが急激に漏洩したりすることにより、内部のガス圧が低下してしまうことがある。当該ガス圧が低下すると、ガススプリングの反力が低下し、当該反力による補助トルクが低下してしまう。そして、駆動モータの負荷が増加する結果、駆動モータによってアームを支持することができなくなってしまうおそれがある。このような状況を抑制するため、ガススプリングの補助状態を推定し、推定した補助状態に基づきガススプリングの保守(点検、修理、交換、補充等を含むメンテナンス。)を行う必要がある。
【0004】
下記特許文献1では、ガススプリングの補助状態として内部のガス圧の低下状態を推定する方法が提案されている。この方法では、ガススプリング内のガスが漏洩していないと仮定した場合に駆動モータが負担すべきトルクの理論値と、実際に駆動モータが負担するトルクの実測値とを比較することによって、ガススプリングが出力する補助トルクの低下状態、ひいてはガススプリングの内部のガス圧の低下状態を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えばガススプリングの伸縮方向とアームの回動軸とが一直線上にある死点付近でアームを動作させる場合には、ガススプリングによる補助トルクがほとんど生じなくなる。このため、この死点付近でロボットが繰り返し動作を行う場合、上記特許文献1に開示された方法で推定される補助トルクの低下が、ガススプリングの内部のガス圧の低下によるものなのか、ノイズ又は測定誤差等の他の要因によるものなのかの判別が困難である。
【0007】
また、上記特許文献1に開示された方法では、ガス圧の低下状態を推定するためには、まず駆動モータに設けられた電磁ブレーキを解除しアームを回動自在な状態とした上で、駆動モータによるトルクとガススプリングによる補助トルクとによってアームを支持することが必要になる。このため、ガススプリングの故障等により極度に内部のガス圧が低下していた場合には、駆動モータによるトルクのみでアームを支持することができず、電磁ブレーキを解除すると同時にアームが落下してしまうおそれがある。
【0008】
以上のように、上記特許文献1に開示された方法では、ロボットが特定の姿勢状態である場合や、電磁ブレーキにより駆動モータが制動されロボットが停止状態である場合等において、出力補助機構としてのガススプリングの補助状態を推定することが困難であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、ロボットの姿勢又は駆動状態によらず、出力補助機構の補助状態を推定することができるロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るロボットシステムは、一方のアームと、前記一方のアームに関節を介して回動自在に支持される他方のアームと、前記他方のアームを駆動するための駆動モータと、前記一方のアームと前記他方のアームとに固定され、前記駆動モータの出力を補助する出力補助機構と、を有するロボットと、前記一方のアームにおける前記出力補助機構が固定されている固定部の変形量を測定する測定部と、前記測定部により測定された前記変形量に基づき、前記出力補助機構の補助状態を推定する推定部と、を備える。
【0011】
また、前記測定部は、前記固定部に設けられたひずみゲージを用いて前記変形量を測定する。
【0012】
また、前記推定部は、予め記憶された基準の前記変形量と、前記測定部により測定された前記変形量と、に基づき、前記補助状態を推定する。
【0013】
また、前記測定部は、前記駆動モータが停止状態である場合に、前記変形量を測定する。
【0014】
また、前記出力補助機構は、ガススプリングである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロボットの姿勢又は駆動状態によらず、出力補助機構の補助状態を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るロボットシステムの概略構成を示す図である。
【
図2A】
図1のアームが重力方向に沿った姿勢であるときのガススプリングを示す図である。
【
図2B】
図1のアームが重力方向に交差する方向に傾いた姿勢であるときのガススプリングを示す図である。
【
図3】
図1の制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るロボットシステムにおいて、
図3の各機能構成が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態(以下、適宜、「本実施形態」という。)について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一要素又は同一機能を有する要素には可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
<全体構成>
図1は、本実施形態に係るロボットシステム1の概略構成を示す図である。
【0019】
図1に示すように、ロボットシステム1は、例えば垂直多関節から構成された関節型ロボット(以下、単に「ロボット」と称す。)10と、ガススプリング20と、ひずみゲージ26と、制御装置30と、を備える。
【0020】
ロボット10は、基台2と、アーム4a,4b,4cと、関節6a,6bと、を有する。
【0021】
基台2は、床等に対してロボット10を設置する設置部である。アーム4a,4b,4cは、基台2上に設けられており、基台2側から、アーム4a,アーム4b,アーム4cの順に配置されている。一方のアームであるアーム4aは、基台2に立設されており、基台2に対して回動軸J1を中心として回動自在に支持されている。アーム4aは、関節6aを介して他方のアームであるアーム4bを支持する。アーム4bは、関節6aを介して、アーム4aに対して回動軸J2を中心として回動自在に支持されている。アーム4cは、関節6bを介して、アーム4bに対して回動軸J3を中心として回動自在に支持されている。アーム4cの先端には、ハンド5が取り付けられている。
【0022】
関節6a,6bは、隣り合うアーム4a,4b,4cを連結する連結部である。具体的には、関節6aは、アーム4aとアーム4bとを連結し、関節6bは、アーム4bとアーム4cとを連結する。関節6aは、アーム4bを駆動するための駆動モータ7aを有する。また、関節6bは、アーム4cを駆動するための駆動モータ7bを有する。駆動モータ7a,7bは、例えばサーボモータである。各駆動モータ7a,7bは、制御装置30によって動作制御されることにより、それぞれ回動軸J2,J3を中心として回動する。この駆動モータ7a,7bの回動によって、各アーム4b,4cが回動する。なお、図示は省略するが基台2とアーム4aとを連結する関節においても、アーム4aを駆動するための駆動モータが設けられている。この駆動モータは、駆動モータ7a,7bと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0023】
駆動モータ7a,7bには、電磁ブレーキ等の図示しないブレーキ機構が設けられている。電磁ブレーキは、制御装置30によって動作制御される。電磁ブレーキは、周知のように、ロボット10の停止時には、制御装置30によって電圧が印加されていない状態とされ、駆動モータ7a,7bの回動軸J2,J3を制動し、ロボット10の停止状態を保持する。これに対し、電磁ブレーキは、ロボット10の動作時には、制御装置30によって電圧が印加された状態とされ、駆動モータ7a,7bの回動軸J2,J3の制動を解除する。
【0024】
また、駆動モータ7a,7bには、駆動モータ7a,7bの回動角を検出するエンコーダ(角度センサ)等が設けられている。本実施形態では、当該エンコーダによって検出された駆動モータ7a,7bの回動角に基づき、アーム4b,4cの姿勢を示す情報を取得する。アーム4b,4cの姿勢を示す情報とは、アーム4b,4cの回動方向での角度を示すアーム角度情報である。なお、駆動モータ7a,7bには、減速機、伝達機構、又は各種センサ等のその他の構成要素が設けられていてもよい。
【0025】
ガススプリング20は、アーム4aとアーム4bとに固定されている。具体的には、ガススプリング20の基端部20aは、アーム4aに固定されており、ガススプリング20の先端部20bは、アーム4bに固定されている。ガススプリング20は、アーム4bを駆動するための駆動モータ7aによるトルクの出力を補助する補助機構である。ガススプリング20は、不活性且つ高圧のガスが封入されたシリンダ22と、シリンダ22内を摺動可能であってシリンダ22内のガスを圧縮するピストンロッド24と、を有する。
【0026】
ガススプリング20は、ピストンロッド24がシリンダ22内を摺動することにより伸縮可能である。ガススプリング20は、アーム4bの姿勢の変動によって、伸縮する。
図2A及び
図2Bを参照して、アーム4bの姿勢の変動によるガススプリング20の伸縮について具体的に説明する。
図2Aは、アーム4bが重力方向Zに沿った姿勢であるときのガススプリング20を示す図である。
図2Bは、アーム4bが重力方向Zに交差する方向に傾いた姿勢であるときのガススプリング20を示す図である。なお、
図2A及び
図2Bにおいては、アーム4bよりも先端側の構造(関節6b、アーム4c、ハンド5等)について図示を省略している。
【0027】
例えば、
図2Aに示すようにアーム4bが重力方向Zに沿った姿勢である場合には、アーム4bに作用する重力により駆動モータ7aに加わる負荷が最小状態となっている。また、ガススプリング20は、シリンダ22内に封入された内部のガス圧によって反力Fを生じさせる。ここで、
図2Aに示すようにガススプリング20の伸縮方向とアーム4bの回動軸J2(回動中心)とが一直線上にある場合には、ガススプリング20が最大長となっている。このような死点付近でアーム4bを動作させる場合には、ガススプリング20による補助トルクがほとんど生じない。
【0028】
図2Aに示す状態から、
図2Bに示すようにアーム4bが回動すると、アーム4bに作用する重力Pによって駆動モータ7aに加わる負荷が大きくなる。駆動モータ7aは、この負荷に抗するためのトルクTmを出力する。また、アーム4bの回動によりガススプリング20の長さが短くなることにより、シリンダ22内に封入された内部のガス圧が大きくなり、ガススプリング20の反力Fが大きくなる。ここで、
図2Bに示すようにガススプリング20の伸縮方向とアーム4bの回動軸J2とが一直線上にない場合には、ガススプリング20は、反力Fによる補助トルクTsを出力する。補助トルクTsは、トルクTmと同様、駆動モータ7aに加わる負荷の方向と反対方向に作用して、トルクTmを補助する。これにより、ガススプリング20は、重力Pにより駆動モータ7aに加わる負荷を低減する。
【0029】
また、上記した通り、ガススプリング20の反力Fは、アーム4bの姿勢及びガススプリング20の内部のガス圧によって変動する。この反力Fによって、アーム4bを支持するアーム4aにおけるガススプリング20の基端部20aが固定されている固定部8には、非常に小さな変形(ひずみ)が生じる。この固定部8の変形量は、ガススプリング20の反力F、ひいては、アーム4bの姿勢及びガススプリング20の内部のガス圧に依存する。そこで、本実施形態では、所定のアーム4bの姿勢での固定部8の変形量をひずみゲージ26を用いて測定することにより、測定した変形量に基づき、ガススプリング20の内部のガス圧の低下状態を推定する。
【0030】
ひずみゲージ26は、当該ひずみゲージ26が貼り付けられた部分の変形(ひずみ)に伴う電気抵抗の変化を検出するセンサである。ひずみゲージ26を用いることにより、当該電気抵抗の変化に基づき、ひずみゲージ26が貼り付けられた部分の変形量(ひずみ量)を測定することができる。ひずみゲージ26は、アーム4aにおける固定部8に設けられている。本実施形態においては、固定部8は、アーム4aにおける基端部20aが固定されている部分の周辺部を示すが、当該部分の周辺部に限らず、当該部分そのものであってもよく、当該部分とその周辺部とを両方含むような領域であってもよい。ひずみゲージ26は、周知のものを用いることができ、例えば、測定対象物である固定部8上に接着剤等を介して接着される樹脂ベースと、当該樹脂ベース上に形成された金属箔(抵抗体)と、当該金属箔に接続されたゲージリード(引出線)と、を含んで構成される。ひずみゲージ26のゲージリードは、不図示のメタルケーブル等を介して制御装置30に物理的に接続されている。
【0031】
本実施形態において、ひずみゲージ26は、アーム4aの側面上の基端部20aと基台2との間において、基端部20aに沿うように三つ貼り付けられている。貼り付けるひずみゲージ26の数、位置、及び方向は、この例に限らず、変形量を測定したい領域の大きさ、位置、及び方向等に応じて、任意の数、位置、及び方向で、ひずみゲージ26を貼り付けることができる。また、複数のひずみゲージを図示のように互いに間隔を有するように貼り付けてもよいし、互いに重なるように積層させてもよい。
【0032】
図1に戻り、制御装置30は、通信ケーブル等を介してロボット10と通信可能に接続され、ロボット10の動作を制御する。なお、ロボット10と制御装置30との通信は、通信ケーブル等による有線接続に限らず、無線接続等であってもよい。また、制御装置30は、ひずみゲージ26により検出される抵抗値の変化に基づき、固定部8の変形量を測定する。なお、制御装置30とひずみゲージ26との間に、ひずみゲージ26のゲージリードに物理的に接続されるとともに制御装置30に通信可能に接続された小型のひずみ測定装置が介在され、当該ひずみ測定装置において固定部8の変形量を測定してもよい。この場合に、制御装置30は、当該ひずみ測定装置から送信された固定部8の変形量を受信することにより、固定部8の変形量を測定してもよい。
【0033】
制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、及び通信装置等を備える情報処理装置である。制御装置30は、予めメモリ等に記憶された制御プログラム等に基づき、駆動モータ7a,7b等を駆動し、ロボット10の動作を制御する。また、制御装置30のCPUがメモリ等に記憶された所定のプログラムを実行し、CPUの制御下で接続先のハードウェア構成を動作させることにより、
図3に示す制御装置30の各種の機能構成が実現する。
【0034】
<機能構成>
図3は、制御装置30の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0035】
図3に示すように、制御装置30は、機能的には、制御部32と、記憶部34と、測定部36と、推定部38と、通知部40と、を備える。
【0036】
制御部32は、駆動モータ7a,7bの回動及び停止を制御する。また、制御部32は、駆動モータ7a,7bを停止状態とする際に、電磁ブレーキを制御し、回動軸J2,J3を制動する。また、制御部32は、駆動モータ7a,7bを回動状態とする際に、電磁ブレーキを制御し、回動軸J2,J3の制動を解除する。制御部32は、駆動モータ7a,7bが停止状態である場合に、その旨を示す情報を測定部36に出力する。また、制御部32は、アーム4bのアーム角度情報を、例えば駆動モータ7aに設けられたエンコーダ等によって検出された駆動モータ7aの回動角に基づき取得し、推定部38に出力する。制御部32は、アーム4bのアーム角度情報を、駆動モータ7aを停止状態とする度又は測定部36により測定する度等の所定のタイミングで取得し推定部38に出力する。
【0037】
記憶部34は、アーム4aにおける固定部8の変形量の基準データ34Aを記憶する。基準データ34Aは、例えば、ガススプリング20の内部のガスが十分に満たされた正常状態である場合の固定部8の変形量を、アーム4bのアーム角度情報毎に示すデータである。基準データ34Aは、予め設計者又は作業者等によって取得され、記憶されている。以下、当該基準データ34Aが示す変形量を、「基準変形量」と称する。
【0038】
測定部36は、ひずみゲージ26を用いて、アーム4aにおける固定部8の変形量を測定する。具体的には、測定部36は、ひずみゲージ26により検出された電気抵抗の変化に基づき、固定部8の変形量を測定する。測定部36は、例えば駆動モータ7aが停止状態である場合に、固定部8の変形量を測定する。駆動モータ7aが停止状態とは、制御部32の制御によって駆動モータ7aが停止されている状態である。当該停止状態は、電磁ブレーキの制動によって駆動モータ7aの停止位置が保持されている状態を含んでもよい。例えば、駆動モータ7aが停止状態と回動状態とを繰り返すように制御される場合には、測定部36は、駆動モータ7aが停止状態となる度に、固定部8の変形量の測定を繰り返し実行する。なお、測定部36は、駆動モータ7aが停止状態である場合に限らず、駆動モータ7aが回動状態である場合における所定のタイミングで当該変形量の測定を行ってもよい。測定部36は、ひずみゲージ26を用いて測定した固定部8の変形量を、推定部38に出力する。
【0039】
推定部38は、測定部36により測定された変形量に基づき、ガススプリング20の内部のガス圧の低下状態を推定する。例えば、まず、推定部38は、測定部36により変形量が測定されたときのアーム4bのアーム角度情報を、制御部32からの出力によって取得する。次に、推定部38は、基準データ34Aを参照し、取得したアーム角度情報に対応する基準変形量を取得する。そして、推定部38は、取得した基準変形量と、測定部36によって測定された変形量とを比較することにより、ガススプリング20の内部のガス圧の低下状態を推定する。
【0040】
例えば、推定部38は、基準変形量に対する測定された変形量の割合、又は、基準変形量から測定された変形量を引いた差分等を算出する。この割合が小さくなるほど、又は、この差分が大きくなるほど、正常状態のガススプリング20の反力Fによって本来測定されるべき変形量が測定されず、ガススプリング20の内部のガス圧が正常状態に対して低下していることを示す。推定部38は、この割合又は差分等に基づき、ガススプリング20の内部のガス圧の正常状態に対する低下率(何%低下しているか)を推定する。そして、推定部38は、推定結果を通知部40に出力する。
【0041】
通知部40は、推定部38による推定結果に基づき、所定の情報を通知する。例えば、通知部40は、ガススプリング20の内部のガス圧の正常状態に対する低下率が予め設定された閾値以上であった場合に、その旨を示す情報やガススプリング20に対する保守が必要であることを示す情報等を通知する。通知部40は、例えば制御装置30に接続されたパーソナルコンピュータ又はティーチングペンダント等の所定の外部装置に対して当該情報を送信し、当該外部装置において当該情報を表示又は音声等により出力させる。
【0042】
<処理の流れ>
図4は、本実施形態に係るロボットシステム1において、
図3の各機能構成が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図4に示す処理の内容及び順番は、適宜変更することができる。
【0043】
(ステップSP10)
測定部36は、所定のタイミングで、ひずみゲージ26により検出された電気抵抗の変化に基づき、アーム4aにおける固定部8の変形量を測定する。また、制御部32は、この測定のタイミングでのアーム4bのアーム角度情報を取得する。続いて、処理は、ステップSP12の処理に移行する。
【0044】
(ステップSP12)
推定部38は、ステップSP10の処理で取得されたアーム4bのアーム角度情報での基準変形量と、測定された変形量と、を比較し、ガススプリング20の内部のガス圧の正常状態に対する低下率を推定する。そして、処理は、ステップSP14の処理に移行する。
【0045】
(ステップSP14)
通知部40は、ステップSP12の処理で推定されたガス圧の低下率が閾値以上であるか否かを判定する。ステップSP12の処理で推定されたガス圧の低下率が閾値未満である場合には、当該判定が否定判定され、処理は、ステップSP10の処理に戻る。ステップSP12の処理で推定されたガス圧の低下率が閾値以上である場合には、当該判定が肯定判定されて、処理は、ステップSP16の処理に移行する。
【0046】
(ステップSP16)
通知部40は、ガススプリング20の内部のガス圧が低下していることを示す情報や、ガススプリング20に対する保守が必要であることを示す情報等を、表示又は音声等によって外部装置に出力させる。以上によって、
図4に示す一連の処理が終了する。
【0047】
<作用効果>
以上、本実施形態に係るロボットシステム1によれば、アーム4bを支持するアーム4aにおける固定部8の変形量が測定され、測定された変形量に基づき、駆動モータ7aの出力補助機構としてのガススプリング20の補助状態である内部のガス圧の低下状態が推定される。よって、駆動モータ7aによって駆動されるアーム4bの姿勢状態によらず(例えば
図2Aに示すような死点付近でアーム4bを動作させる場合であっても)、ガススプリング20の内部のガス圧の低下状態を推定することができる。また、アーム4bが停止状態であるか回動状態であるかによらず、ガススプリング20の内部のガス圧の低下状態を推定することができる。以上のように、ロボット10の姿勢又は駆動状態によらず、ガススプリング20の内部のガス圧の低下状態を推定することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、固定部8に設けられたひずみゲージ26を用いて変形量が測定されるため、固定部8における変形量を好適に測定することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、予め記憶された基準変形量と、測定部36によって測定された変形量と、に基づき、ガススプリング20の内部のガス圧の低下状態を適切に推定することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、駆動モータ7aが停止状態である場合に固定部8における変形量が測定される構成とする場合、駆動モータ7aが回動状態で測定する場合に比して測定誤差を抑制し、ガススプリング20の内部のガス圧の低下状態をより適切に推定することができる。更に、電磁ブレーキの制動によって駆動モータ7aの停止位置が保持されている状態においては、アーム4bを駆動モータ7aによるトルクTmとガススプリング20による補助トルクTsとで支持する必要がない。この状態で、ガススプリング20の内部のガス圧の低下状態を推定することができるため、仮に当該ガス圧が極度に低下していたとしても、電磁ブレーキを解除する前に当該ガス圧が極度に低下した状態を通知してガススプリング20の保守を行うことができる。よって、電磁ブレーキを解除すると同時に駆動モータ7aによるトルクTmのみでアーム4bを支持することができずにアーム4bが落下してしまう危険性を回避することができる。
【0051】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、上記の実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0052】
例えば、上記実施形態では、複数のアーム4a,4b,4c及びこれらを駆動する複数の駆動モータ7a,7bを有するロボット10について説明したが、アーム及び駆動モータの数はこれに限らず、少なくとも一つのアームと、当該アームを駆動する少なくとも一つの駆動モータと、を備えていればよい。また、本発明に係るロボットは、垂直多関節ロボットに限らず、水平多関節ロボット等であってもよい。また、上記実施形態では、アーム4aをアーム支持部として、アーム4bを当該アーム支持部に回動自在に支持されるアームとして説明したが、これに限らない。例えば、アーム4cとアーム4bとにガススプリングが固定されており、アーム4bをアーム支持部として、アーム4cを当該アーム支持部に回動自在に支持されるアームとし、アーム4bにおいてガススプリングが固定されている固定部の変形量をひずみゲージを用いて測定する態様としてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、ガススプリング20の下側の固定部すなわちアーム4aにおける固定部8にひずみゲージ26を設け、当該固定部8における変形量に基づきガススプリング20の内部のガス圧の低下状態を推定する例について説明したが、これに限らない。例えば、固定部8に加えて又は代えて、ガススプリング20の上側の固定部すなわちアーム4bにおけるガススプリング20の先端部20bが固定されている固定部にひずみゲージを設け、当該ひずみゲージを用いて測定された当該固定部における変形量に基づきガススプリング20の内部のガス圧の低下状態を推定してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、ピストンロッド24側がガススプリング20の基端部20a(アーム4aに固定される側)であってシリンダ22側がガススプリング20の先端部20b(アーム4bに固定される側)である例について説明したが、ガススプリング20の向きは反対であってもよい。すなわち、ピストンロッド24側がガススプリング20の先端部20b(アーム4bに固定される側)であってシリンダ22側がガススプリング20の基端部20a(アーム4aに固定される側)であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、出力補助機構の補助状態としてガススプリング20の内部のガス圧の低下状態を推定する例について説明したが、当該ガス圧の低下状態に限らず、現在のガス圧の状態そのものを推定してもよい。例えば、記憶部34は、ガススプリング20が正常状態の基準データとして、ガススプリング20の内部のガス圧と、固定部8の変形量とを互いに対応付けたデータをアーム角度情報毎に記憶しておき、推定部38は、当該基準データと測定された変形量とに基づき、現在のガス圧の状態を推定してもよい。例えば、推定部38は、当該基準データを参照し、記憶された変形量のうち測定された変形量に最も近いものを抽出し、抽出した変形量に対応するガス圧を、現在のガス圧として推定してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、固定部8の基準変形量をアーム角度情報毎に予め取得し記憶しておく例について説明したが、これに限らない。例えば、制御装置30において、アーム4aの三次元モデル情報を予め記憶しておき、当該三次元モデル情報に基づき、アーム角度に応じた固定部8の基準変形量を計算によって求め、計算により求めた基準変形量に基づきガス圧の低下状態を推定してもよい。
【0057】
上記実施形態では、出力補助機構としてガススプリング20を説明したが、ガススプリング20に限らず、アーム4bを駆動するための駆動モータ7aによるトルクを補助する補助トルクを出力可能な機構であれば何であってもよい。
【0058】
更に、上記実施形態では、ロボットシステム1は、ロボット10と制御装置30とから構成されていると示した。また、制御装置30は、ロボット10とは別体に設けられていると示したが、これに限らず、ロボット10と制御装置30とが一体形成されていてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
1:ロボットシステム、4a:アーム(一方のアーム)、4b:アーム(他方のアーム)、7a:駆動モータ、8:固定部、10:ロボット、20:ガススプリング(出力補助機構)、26:ひずみゲージ、36:測定部、28:推定部