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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180376
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】内燃機関の排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
F01N3/08 C ZHV
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093627
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】萱沼 良介
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 哲哉
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA10
3G091AA14
3G091AB03
3G091AB14
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091CA24
3G091DC03
3G091EA18
3G091EA33
3G091EA34
3G091EA36
(57)【要約】
【課題】内燃機関の運転中に浄化対象の成分が排気浄化装置から流出することを抑制する。
【解決手段】機関本体10から排出された排気ガスを浄化する内燃機関1の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路内に配置され且つ排気ガス中の対象成分を浄化することができる排気浄化触媒44と、排気浄化触媒の排気流れ方向下流側において排気通路内に配置された電気化学リアクタ45と、電気化学リアクタへの通電を制御する制御装置と、を備える。電気化学リアクタは通電されると排気ガス中の前記対象成分を浄化するように構成される。制御装置は、排気浄化触媒の活性状態を表す活性パラメータと、電気化学リアクタに流入する流入排気ガスの空燃比に関連する空燃比パラメータとに基づいて、電気化学リアクタへの通電を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関本体から排出された排気ガスを浄化する内燃機関の排気浄化装置であって、
前記内燃機関の排気通路内に配置され且つ排気ガス中の対象成分を浄化することができる排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒の排気流れ方向下流側において前記排気通路内に配置された電気化学リアクタと、
前記電気化学リアクタへの通電を制御する制御装置と、を備え、
前記電気化学リアクタは通電されると排気ガス中の前記対象成分を浄化するように構成され、
前記制御装置は、前記排気浄化触媒の活性状態を表す活性パラメータと、前記電気化学リアクタに流入する流入排気ガスの空燃比に関連する空燃比パラメータとに基づいて、前記電気化学リアクタへの通電を制御する、内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記活性パラメータが前記排気浄化触媒が活性していることを表す値であって且つ前記空燃比パラメータが前記流入排気ガスの空燃比が理論空燃比とは異なる空燃比であることを表す値であるときには、前記電気化学リアクタに通電する、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記活性パラメータが前記排気浄化触媒が活性していることを表す値であって且つ前記空燃比パラメータが前記流入排気ガスの空燃比が理論空燃比あることを表す値であるときには、前記電気化学リアクタに通電しない、請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記排気浄化触媒から流出して前記電気化学リアクタに流入する排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサを更に備え、
前記空燃比パラメータは、前記空燃比センサによって検出された空燃比である、請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記排気浄化触媒は、酸素を吸蔵することができるように構成され、
前記空燃比パラメータは、前記排気浄化触媒の酸素吸蔵量である、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記活性パラメータが前記排気浄化触媒が活性していることを表す値であって且つ前記排気浄化触媒の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量であるときには、前記電気化学リアクタに通電する、請求項5に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記活性パラメータが前記排気浄化触媒が活性していることを表す値であって且つ前記排気浄化触媒の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量でないときには、前記電気化学リアクタに通電しない、請求項5又は6に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記排気浄化触媒の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量に到達してから所定時間の経過後に前記電気化学リアクタに通電し、
前記所定時間は、前記機関本体から排出された排気ガスの流速が速いときには遅いときに比べて短く設定される、請求項5又は6に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記活性パラメータが前記排気浄化触媒が活性していないことを表す値であるときには、前記空燃比パラメータの値にかかわらずに、前記電気化学リアクタに通電する、請求項1、2、5、6のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
前記排気浄化触媒から流出して前記電気化学リアクタに流入する前の排気ガス中のNOx濃度を検出するNOxセンサを更に備え、
前記活性パラメータは前記NOxセンサによって検出されたNOx濃度又は該NOx濃度に基づいて算出されるパラメータである、請求項1、2、5、6のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、イオン伝導性の固体電解質層と、固体電解質の表面上に配置されたアノード層と、固体電解質の表面上に配置されたカソード層とを備える電気化学リアクタを備える内燃機関の排気浄化装置が知られている(特許文献1、2)。
【0003】
特に、特許文献2には、排気浄化触媒の温度がその活性温度よりも低いときに電気化学リアクタに電流を供給して電気化学リアクタにて排気ガスの浄化を行い、排気浄化触媒の温度がその活性温度以上になると電気化学リアクタへの電流の供給を停止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-238422号公報
【特許文献2】特開2019-196748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2では、排気浄化触媒の温度が活性温度以上になると電気化学リアクタへの電流の供給が停止される。しかしながら、排気浄化触媒の温度が活性温度以上の場合であっても、内燃機関の運転中に排気浄化触媒から浄化対象の成分が流出する場合がある。
【0006】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、電気化学リアクタを用いた排気浄化装置において、内燃機関の運転中に浄化対象の成分が排気浄化装置から流出することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)機関本体から排出された排気ガスを浄化する内燃機関の排気浄化装置であって、
前記内燃機関の排気通路内に配置され且つ排気ガス中の対象成分を浄化することができる排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒の排気流れ方向下流側において前記排気通路内に配置された電気化学リアクタと、
前記電気化学リアクタへの通電を制御する制御装置と、を備え、
前記電気化学リアクタは通電されると排気ガス中の前記対象成分を浄化するように構成され、
前記制御装置は、前記排気浄化触媒の活性状態を表す活性パラメータと、前記電気化学リアクタに流入する流入排気ガスの空燃比に関連する空燃比パラメータとに基づいて、前記電気化学リアクタへの通電を制御する、内燃機関の排気浄化装置。
(2)前記制御装置は、前記活性パラメータが前記排気浄化触媒が活性していることを表す値であって且つ前記空燃比パラメータが前記流入排気ガスの空燃比が理論空燃比とは異なる空燃比であることを表す値であるときには、前記電気化学リアクタに通電する、上記(1)に記載の内燃機関の排気浄化装置。
(3)前記制御装置は、前記活性パラメータが前記排気浄化触媒が活性していることを表す値であって且つ前記空燃比パラメータが前記流入排気ガスの空燃比が理論空燃比あることを表す値であるときには、前記電気化学リアクタに通電しない、上記(1)又は(2)に記載の内燃機関の排気浄化装置。
(4)前記排気浄化触媒から流出して前記電気化学リアクタに流入する排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサを更に備え、
前記空燃比パラメータは、前記空燃比センサによって検出された空燃比である、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の内燃機関の排気浄化装置。
(5)前記排気浄化触媒は、酸素を吸蔵することができるように構成され、
前記空燃比パラメータは、前記排気浄化触媒の酸素吸蔵量である、上記(1)に記載の内燃機関の排気浄化装置。
(6)前記制御装置は、前記活性パラメータが前記排気浄化触媒が活性していることを表す値であって且つ前記排気浄化触媒の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量であるときには、前記電気化学リアクタに通電する、上記(5)に記載の内燃機関の排気浄化装置。
(7)前記制御装置は、前記活性パラメータが前記排気浄化触媒が活性していることを表す値であって且つ前記排気浄化触媒の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量でないときには、前記電気化学リアクタに通電しない、上記(5)又は(6)に記載の内燃機関の排気浄化装置。
(8)前記制御装置は、前記排気浄化触媒の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量に到達してから所定時間の経過後に前記電気化学リアクタに通電し、
前記所定時間は、前記機関本体から排出された排気ガスの流速が速いときには遅いときに比べて短く設定される、上記(5)~(7)のいずれか1つに記載の内燃機関の排気浄化装置。
(9)前記制御装置は、前記活性パラメータが前記排気浄化触媒が活性していないことを表す値であるときには、前記空燃比パラメータの値にかかわらずに、前記電気化学リアクタに通電する、上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の内燃機関の排気浄化装置。
(10)前記排気浄化触媒から流出して前記電気化学リアクタに流入する前の排気ガス中のNOx濃度を検出するNOxセンサを更に備え、
前記活性パラメータは前記NOxセンサによって検出されたNOx濃度又は該NOx濃度に基づいて算出されるパラメータである、上記(1)~(9)のいずれか1つに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電気化学リアクタを用いた排気浄化装置において、内燃機関の運転中に浄化対象の成分が排気浄化装置から流出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第一実施形態に係る排気浄化装置が搭載された内燃機関の概略的な構成図である。
図2図2は、電気化学リアクタの断面側面図である。
図3図3は、電気化学リアクタの隔壁の拡大断面図である。
図4図4は、第一実施形態に係るリアクタの作動の制御を行った場合における、各種パラメータのタイムチャートである。
図5図5は、第一実施形態に係るリアクタの作動の制御ルーチンのフローチャートである。
図6図6は、第二実施形態に係る排気浄化装置が搭載された内燃機関の概略的な構成図である。
図7図7は、第二実施形態に係るリアクタの作動の制御を行った場合における、各種パラメータのタイムチャートである。
図8図8は、第二実施形態に係るリアクタの作動の制御ルーチンのフローチャートである。
図9図9は、内燃機関の累積運転時間と、最大吸蔵可能酸素量との関係を示す図である。
図10図10は、リアクタの作動要求と、排気ガスの流速と、リアクタの作動状態とのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0012】
第一実施形態
<内燃機関全体の説明>
図1を参照して、第一実施形態に係る排気浄化装置が搭載された第一実施形態に係る排気浄化装置が搭載された内燃機関1の構成について説明する。図1は、内燃機関1の概略的な構成図である。図1に示されるように、内燃機関1は、機関本体10、燃料供給装置20、吸気系30、排気系40及び制御装置50を備える。機関本体10から排出された排気ガスを浄化する排気浄化装置は、排気系40及び制御装置50の各構成要素を有する。
【0013】
機関本体10は、複数の気筒11が形成されたシリンダブロックと、吸気ポート及び排気ポートが形成されたシリンダヘッドと、クランクケースとを備える。各気筒11内にはピストンが配置されると共に、各気筒11は吸気ポート及び排気ポートに連通している。
【0014】
燃料供給装置20は、燃料噴射弁21、デリバリパイプ22、燃料供給管23、燃料ポンプ24及び燃料タンク25を備える。燃料噴射弁21は、各気筒11内に燃料を直接噴射するようにシリンダヘッドに配置されている。燃料ポンプ24によって圧送された燃料は、燃料供給管23を介してデリバリパイプ22に供給され、燃料噴射弁21から各気筒11内に噴射される。
【0015】
吸気系30は、吸気マニホルド31、吸気管32、エアクリーナ33、過給機5のコンプレッサ34、インタークーラ35、及びスロットル弁36を備える。各気筒11の吸気ポートは、吸気マニホルド31及び吸気管32を介してエアクリーナ33に連通している。吸気管32内には、吸入空気を圧縮して吐出する過給機5のコンプレッサ34と、コンプレッサ34によって圧縮された空気を冷却するインタークーラ35とが設けられている。スロットル弁36は、スロットル弁駆動アクチュエータ37によって開閉駆動される。
【0016】
排気系40は、排気マニホルド41、排気管42、過給機5のタービン43、排気浄化触媒44及び電気化学リアクタ(以下、単に「リアクタ」という)45を備える。各気筒11の排気ポートは、排気マニホルド41及び排気管42を介して排気浄化触媒44に連通し、排気浄化触媒44は排気管42を介してリアクタ45に連通している。排気管42内には、排気ガスのエネルギによって回転駆動せしめられる過給機5のタービン43が設けられている。排気ポート、排気マニホルド41、排気管42、排気浄化触媒44及びリアクタ45は排気通路を形成する。したがって、排気浄化触媒44及びリアクタ45は排気通路内に配置されている。また、リアクタ45は、排気ガスの流れ方向(排気流れ方向)において、排気浄化触媒44の下流側に配置される。
【0017】
排気浄化触媒44は、例えば、三元触媒であり、一定の活性温度以上になると、排気ガスの空燃比が理論空燃比であるときにNOxや未燃HC、CO等の排気ガス中の成分を浄化する。また、排気浄化触媒44は、酸素吸蔵能力を有する。したがって、排気浄化触媒44は、排気浄化触媒44内を流れる排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比である場合には排気ガス中の酸素を吸蔵し、排気浄化触媒44内を流れる排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比である場合には吸蔵されている酸素を放出する。このため、排気浄化触媒44にリーン空燃比の排気ガスが流入すると、排気ガス中の酸素が排気浄化触媒44に吸蔵されて排気ガスの空燃比が理論空燃比になり、よって排気ガス中のNOxや未燃HC、CO等が浄化される。ただし、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がほぼ最大吸蔵可能酸素量になると、排気浄化触媒44はそれ以上酸素を吸蔵することができなくなり、よって排気ガス中のNOxを浄化することができなくなる。一方、排気浄化触媒44にリッチ空燃比の排気ガスが流入すると、排気浄化触媒44から酸素が放出されて排気ガスの空燃比が理論空燃比になり、よって排気ガス中のNOxや未燃HC、CO等が浄化される。ただし、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がほぼゼロになると、排気浄化触媒44からはそれ以上酸素を放出することができなくなり、よって排気ガス中の未燃HC、CO等を浄化することができなくなる。
【0018】
制御装置50は、電子制御ユニット(ECU)51及び各種センサを備える。ECU51は、各種処理を行うプロセッサと、プロセッサで実行されるプログラムや各種データを記憶するメモリとを有する。制御装置50は、各種センサとして、例えば、内燃機関1への吸入空気量を検出する空気量センサ52、排気浄化触媒44の温度を検出する温度センサ53、リアクタ45に流入する排気ガスの空燃比を検出する下流側空燃比センサ54を有し、これらセンサはECU51に接続される。加えて、制御装置50は、各種センサとして、例えば、内燃機関1の負荷を検出する負荷センサ55、機関回転速度を検出するのに用いられるクランク角センサ56を有し、これらセンサもECU51に接続される。また、ECU51は、内燃機関1の運転を制御する各アクチュエータに接続される。図1に示される例では、ECU51は、燃料噴射弁21、燃料ポンプ24及びスロットル弁駆動アクチュエータ37に接続され、これらアクチュエータを制御している。
【0019】
<電気化学リアクタの構成>
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態に係るリアクタ45の構成について説明する。図2は、リアクタ45の断面側面図である。図2に示されるように、リアクタ45は、隔壁71と、隔壁によって画定される通路72とを備える。隔壁71は、互いに平行に延びる複数の第1隔壁と、これら第1隔壁に対して垂直に且つ互いに平行に延びる複数の第2隔壁とを備える。通路72は、これら第1隔壁及び第2隔壁によって画定され、互いに平行に延びる。したがって、本実施形態に係るリアクタ45は、ハニカム構造を有する。リアクタ45に流入した排気ガスは複数の通路72を通って流れる。なお、隔壁71は、互いに平行に延びる複数の隔壁のみから形成されて、これら複数の隔壁に対して垂直な隔壁は備えないように形成されてもよい。
【0020】
図3は、リアクタ45の隔壁71の拡大断面図である。図3に示されるように、リアクタ45の隔壁71は、固体電解質層75と、固体電解質層75の一方の表面上に配置されたアノード層76と、アノード層76が配置された表面とは反対側の固体電解質層75の表面上に配置されたカソード層77とを備える。これら固体電解質層75、アノード層76及びカソード層77はセル78を形成する。排気ガスの各通路72には、少なくとも一つのセル78のアノード層76が曝されると共に、少なくとも一つの別のセル78のカソード層77が曝される。
【0021】
固体電解質層75は、プロトン伝導性を有する多孔質の固体電解質を含む。固体電解質としては、例えば、ペロブスカイト型金属酸化物MM’1-xx3-α(M=Ba、Sr、Ca、M’=Ce,Zr、R=Y、Ybであり、例えば、SrZrxYb1-x3-α、SrCeO3、BaCeO3、CaZrO3、SrZrO3など)、リン酸塩(例えば、SiO2-P25系ガラスなど)、金属ドープSnxIn1-x27(例えば、SnP27など)又はゼオライト(例えば、ZSM-5)が使用される。
【0022】
アノード層76及びカソード層77は、共にPt、Pd又はRh等の貴金属を含む。また、アノード層76は、水分子を保持可能(すなわち、吸着可能及び/又は吸収可能)な物質(水分子保持材)を含む。水分子を保持可能な物質としては、具体的には、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ等が挙げられる。
【0023】
一方、カソード層77は、NOxを保持可能(すなわち、吸着可能及び/又は吸収可能)な物質(NOx保持材)を含む。NOxを保持可能な物質としては、具体的には、K、Na等のアルカリ金属、Ba等のアルカリ土類金属、La等の希土類等が挙げられる。
【0024】
また、内燃機関1は、電源装置81、電流計82及び電圧調整装置83を備える。電源装置81の正極はアノード層76に接続され、電源装置81の負極はカソード層77に接続される。電圧調整装置83は、アノード層76とカソード層77との間に印加される電圧を変化させることができるように構成される。また、電圧調整装置83は、アノード層76から固体電解質層75を通ってカソード層77に流れるようにリアクタ45に供給される電流の大きさを変化させることができるように構成される。
【0025】
電源装置81は、電流計82と直列に接続されている。また、電流計82は、ECU51に接続される。電圧調整装置83は、ECU51に接続され、ECU51によって制御される。したがって、電圧調整装置83及びECU51は、アノード層76とカソード層77との間に印加される電圧の大きさ(すなわち、リアクタ45への通電)を制御する通電制御部として機能する。
【0026】
このように構成されたリアクタ45では、電源装置81からアノード層76及びカソード層77に電流が流されると、アノード層76及びカソード層77ではそれぞれ下記式のような反応が生じる。
アノード側: 2H2O→4H++O2+4e-
2O→2H++O2-
カソード側: 2NO+4H++4e-→N2+2H2
【0027】
すなわち、アノード層76では、アノード層76に保持されている水分子が電気分解されて酸素及び酸素イオンとプロトンとが生成される。生成された酸素は排気ガス中に放出されると共に、生成されたプロトンは固体電解質層75内をアノード層76からカソード層77へと移動する。カソード層77では、カソード層77に保持されているNOがプロトン及び電子と反応して窒素と水分子が生成される。
【0028】
したがって、本実施形態によれば、リアクタ45の電源装置81からアノード層76及びカソード層77に電流を流すことにより(すなわち、リアクタ45に通電することにより)、カソード層77のNOx保持材に保持されているNOをN2に還元、浄化することができる。
【0029】
また、アノード層76では、排気ガス中に未燃HCやCO等が含まれる場合には、下記式のような反応により、酸素イオンがこれらHCやCOと反応して、二酸化炭素や水が生成される。なお、未燃HCは、様々な成分を含むため、下記反応式中においてはCmnとして表されている。したがって、本実施形態によれば、リアクタ45の電源装置81からアノード層76及びカソード層77に電流を流すことにより、排気ガス中のHC及びCOを酸化、浄化することもできる。
mn+(2m+0.5n)O2-→mCO2+0.5nH2O+(4m+n)e-
CO+O2-→CO2+2e-
【0030】
したがって、本実施形態では、リアクタ45は通電されると、排気ガス中の浄化対象成分であるNOx、HC及びCOを浄化することができる。
【0031】
また、アノード層76は未燃HCを保持可能(すなわち、吸着可能及び/又は吸収可能)な物質(HC保持材)を含んでもよい。HCを保持可能な物質としては、具体的には、ゼオライト等が挙げられる。アノード層76がHCを保持可能な物質を含む場合には、保持されているHCと酸素イオンが反応して浄化される。
【0032】
なお、上記実施形態では、アノード層76及びカソード層77は固体電解質層75の反対側の二つの表面上に配置されている。しかしながら、アノード層76及びカソード層77は、固体電解質層75の同一の表面上に配置されてもよい。この場合、プロトンは、アノード層76及びカソード層77が配置された固体電解質層75の表面近傍を移動することになる。
【0033】
また、本実施形態では、リアクタ45の固体電解質層75は、プロトン伝導性の固体電解質を含んでいる。しかしながら、固体電解質層75は、プロトン伝導性の固体電解質の代わりに、酸素イオン伝導性の固体電解質等、他のイオン伝導性の固体電解質を含むように構成されてもよい。また、リアクタ45は、通電することで未燃HC、CO又はNOxを浄化することができれば、他の態様のリアクタであってもよい。
【0034】
<電気化学リアクタの制御>
次に、図4及び図5を参照して、リアクタ45の作動の制御について説明する。
【0035】
ところで、排気浄化触媒44は、その温度が活性温度以上になると、基本的に、排気ガス中のNOx、HC、CO等の浄化対象成分を十分に浄化することができる。一方で、排気浄化触媒44の温度が活性温度未満であるときには、排気ガス中の浄化対象成分を十分に浄化することができない。また、排気浄化触媒44の温度が活性温度以上であっても、例えば排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がほぼゼロであったり又はほぼ最大吸蔵可能酸素量であったりすると、排気ガス中の浄化対象成分を十分に浄化することができない。
【0036】
一方、リアクタ45は、通電することによって排気ガス中の浄化対象成分を浄化することができる。しかしながら、リアクタ45において浄化対象成分を浄化するためには、通電することが必要であるため、電力を消費する。したがって、リアクタ45における消費電力を低減するという観点からは、できる限りリアクタ45への通電時間は短いことが好ましい。
【0037】
そこで、本実施形態では、排気浄化触媒44の活性状態を表す活性パラメータと、リアクタ45に流入する流入排気ガスの空燃比に関連する空燃比パラメータとに基づいて、リアクタ45への通電が制御される。具体的には、活性パラメータが排気浄化触媒44が活性していることを表す値であって且つ空燃比パラメータが流入排気ガスの空燃比が理論空燃比とは異なる空燃比であることを表す値であるときには、リアクタ45への通電が行われる。また、活性パラメータが排気浄化触媒44が活性していることを表す値であって且つ空燃比パラメータが流入排気ガスの空燃比が理論空燃比あることを表す値であるときには、リアクタ45への通電は行われない。一方、活性パラメータが排気浄化触媒44が活性していないことを表す値であるときには、空燃比パラメータの値にかかわらずに、リアクタ45への通電が行われる。
【0038】
図4は、第一実施形態に係るリアクタ45の作動の制御を行った場合における、各種パラメータのタイムチャートである。図4における内燃機関1の運転要求は、ONのときは内燃機関1の運転が要求されているとき、OFFのときは内燃機関1の運転が要求されていないときを表している。内燃機関1の運転要求は、例えば、ECU51において出力される。ECU51は、例えば、イグニッションスイッチがONになったとき、ブレーキペダルの踏み込み量がゼロになったとき、ハイブリッド車両においてバッテリの充電率が所定値以下になったとき、などに運転要求がONになる。また、図4における内燃機関1の運転状態は、ONのときは内燃機関1が運転されているとき(クランクシャフトが回転されているとき)、OFFのときは内燃機関1が停止されているとき(クランクシャフトが停止しているとき)をそれぞれ表している。
【0039】
図4における触媒温度は、排気浄化触媒44の温度を表しており、本実施形態では温度センサ53によって検出された温度を表している。また、下流空燃比は、排気浄化触媒44の下流側の排気ガス、すなわちリアクタ45に流入する流入排気ガスの空燃比を表しており、本実施形態では下流側空燃比センサ54によって検出された空燃比を表している。特に、図中の2本の一点鎖線は、流入排気ガスの空燃比が理論空燃比と判断される範囲(例えば、実際の理論空燃比が14.6である場合には、14.4~14.8の範囲)を表している。本実施形態では、内燃機関1は、機関本体10から排出された排気ガスの空燃比が理論空燃比になるように制御される。
【0040】
また、図4におけるリアクタ45の作動要求は、ONのときはリアクタ45の作動が要求されているとき、OFFのときはリアクタ45の作動が要求されていないときを表している。リアクタ45の作動が要求されているときにはリアクタ45への通電が行われ、リアクタ45の作動が要求されていないときにはリアクタ45への通電が停止される。また、エミッション濃度は、リアクタ45から流出する排気ガス中のエミッションの濃度、具体的には、斯かる排気ガス中のNOx、HC、CO等の浄化対象成分の濃度を表している。図4では、リアクタ45が用いられた場合のエミッションの濃度が実線で、リアクタ45が用いられなかった場合のエミッション濃度が破線でそれぞれ示されている。
【0041】
図4に示された例では、内燃機関1が冷えている状態で、時刻t1において内燃機関1の運転が要求される。時刻t1において排気浄化触媒44の温度が活性温度よりも低いことから、時刻t1では排気浄化触媒44による排気ガスの浄化能力が十分ではない。このため排気ガスを適切に浄化するために、内燃機関1の運転が要求された時刻t1においてリアクタ45の作動が要求される。
【0042】
リアクタ45の作動が要求されてリアクタ45への通電が開始されると、その後、時刻t2において内燃機関1の運転が開始される。すなわち、本実施形態では、リアクタ45への通電が開始された後に内燃機関1の運転が開始される。この結果、内燃機関1の運転開始直後においても、リアクタ45によって排気ガス中の浄化対象成分を十分に浄化することができる。
【0043】
その後、排気浄化触媒44の温度が活性温度未満である間、リアクタ45への通電が継続される。この結果、排気浄化触媒44から浄化対象成分を含む排気ガスが流出しても、浄化対象成分はリアクタ45によって浄化される。時刻t3において排気浄化触媒44の温度が活性温度以上になると、リアクタ45の作動要求が中止され、よってリアクタ45への通電が停止される。しかしながら、排気浄化触媒44の温度が活性温度以上であるため、排気ガス中の浄化対象成分は排気浄化触媒44で浄化され、よってリアクタ45への通電が停止された時刻t3以降もリアクタ45から流出する排気ガス中のエミッションの濃度はほぼゼロのまま維持される。
【0044】
図4に示される例では、その後、時刻t4において内燃機関1の運転要求が中止され、時刻t4以降、内燃機関1の運転が停止される。その結果、排気浄化触媒44の温度は徐々に低下すると共に、排気管42内には空気が流入することから、排気管42内のガスの空燃比がリーン空燃比になる。
【0045】
その後、図4に示される例では、時刻t5において内燃機関1の運転が再び要求されて内燃機関1の運転が開始される。このとき排気浄化触媒44の温度は活性温度以上であり、また排気ガスの空燃比がほぼ理論空燃比であるため、リアクタ45の作動要求は中止されたまま維持される。
【0046】
時刻t6において、排気浄化触媒44の温度が活性温度以上の状態で、排気浄化触媒44から排出されてリアクタ45に流入する流入排気ガスの空燃比が理論空燃比近傍ではなくなると、リアクタ45の作動が要求され、リアクタ45への通電が行われる。流入排気ガスの空燃比が理論空燃比近傍ではなくなると、流入排気ガス中には浄化対象成分が含まれることになるところ、リアクタ45においてこれら浄化対象成分が浄化される。したがって、流入排気ガスの空燃比が理論空燃比近傍でないときでも、リアクタ45から流出する排気ガス中のエミッションの濃度を低く抑えることができる。
【0047】
その後、時刻t7において流入排気ガスの空燃比がほぼ理論空燃比になると、リアクタ45の作動要求が中止され、リアクタ45への通電が停止される。流入排気ガスの空燃比がほぼ理論空燃比であるため、排気浄化触媒44から流出した排気ガス中には浄化対象成分はほとんど含まれておらず、よってリアクタ45への通電を停止しても、リアクタ45から流出する排気ガス中に浄化対象成分はほとんど含まれない。また、リアクタ45への通電を停止することによって、内燃機関1における電力の消費を抑制することができる。
【0048】
図4に示される例では、時刻t8及び時刻t10においても同様に流入排気ガスの空燃比が理論空燃比近傍ではなくなり、よってリアクタ45への通電が行われる。そして、時刻t9及び時刻t11において流入排気ガスの空燃比がほぼ理論空燃比になると、リアクタ45への通電が停止される。
【0049】
上述したように、本実施形態では、排気浄化触媒44の活性状態と、リアクタ45に流入する排気ガスの空燃比とに基づいて、リアクタ45への通電が制御される。これにより、排気浄化触媒44において浄化対象成分を十分に浄化できないときを検出するこができ、よって内燃機関1の運転中に浄化対象成分が排気浄化装置から流出することを抑制することができる。特に、本実施形態では、排気浄化触媒44の温度が活性温度以上であっても流入排気ガスの空燃比が理論空燃比とは異なる空燃比(理論空燃比近傍でない空燃比)であるときにはリアクタ45への通電が行われる。排気浄化触媒44の温度が活性温度以上であっても、例えば酸素吸蔵量がほぼゼロ又はほぼ最大吸蔵可能酸素量であるような場合には、排気浄化触媒44から浄化対象成分を含んだ排気ガスが流出するところ、このような場合でも排気浄化装置から浄化対象成分が流出することを抑制することができる。また、本実施形態では、排気浄化触媒44の温度が活性温度以上であって流入排気ガスの空燃比が理論空燃比(ほぼ理論空燃比)であるときには、リアクタ45への通電が行われない。このようなときには排気浄化触媒44において浄化対象成分がほとんど浄化されているため排気浄化装置から浄化対象成分が流出することを抑制することができると共に、リアクタ45への通電に伴う不必要な電力の消費を抑制することができる。一方、本実施形態では、排気浄化触媒44の温度が活性温度未満であるときには、リアクタ45への通電が行われる。このようなときには排気浄化触媒44において浄化対象成分が十分に浄化されていないところ、リアクタ45において浄化対象成分を浄化することができ。よって排気浄化装置から浄化対象成分が流出することを抑制することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、リアクタ45に流入する流入排気ガスの空燃比に関する空燃比パラメータとして、流入排気ガスの空燃比を検出する下流側空燃比センサ54によって検出された空燃比が用いられる。したがって、流入排気ガスの空燃比を正確に検出することができる。また、上記実施形態では、排気浄化触媒44の活性状態を表す活性パラメータとして温度センサ53によって検出された排気浄化触媒44の温度が用いられる。したがって、排気浄化触媒44の活性状態を遅れることなく推定することができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、排気浄化触媒44が活性しているか否かを、排気浄化触媒44の温度に基づいて判定している。しかしながら、排気浄化触媒44が活性しているか否かは、排気浄化触媒44の活性状態を表す他の活性パラメータに基づいて判定されてもよい。
【0052】
具体的には、例えば、排気浄化触媒44の下流であってリアクタ45の上流において排気管42に、排気浄化触媒44から流出してリアクタ45に流入する排気ガス中のNOx濃度を検出するNOxセンサ(図示せず)が設けられてもよい。そして、活性パラメータとして、このNOxセンサによって検出されたNOx濃度が用いられてもよい。この場合、排気ガスの空燃比にかかわらず排気浄化触媒44が活性してない場合には排気ガス中のNOx濃度が高いため、排気ガス中のNOx濃度が所定の基準値以上である場合には排気浄化触媒44は活性していないと判定される。
【0053】
或いは、活性パラメータとして、NOxセンサによって検出されたNOx濃度に基づいて算出されるパラメータを用いてもよい。具体的には、例えば、活性パラメータとして、機関本体10からのNOxの排出濃度に対してNOxセンサによって検出されたNOx濃度の比率、すなわち排気浄化触媒44におけるNOx浄化率が用いられてもよい。この場合、機関本体10からのNOxの排出濃度は、例えば、内燃機関1の運転状態に基づいて算出される。具体的には、機関本体10からのNOxの排出濃度は、例えば負荷センサ55によって検出された内燃機関1の負荷及びクランク角センサ56の出力に基づいて算出された機関回転速度に基づいて算出される。この場合、算出されたNOx浄化率が所定の基準値以下である場合に、排気浄化触媒44は活性していないと判定される。
【0054】
このように活性パラメータとして、NOx濃度又はNOx濃度に基づいて算出されたパラメータを用いることにより、多少の遅れはあるものの、排気浄化触媒44が活性しているか否かを正確に推定することができる。
【0055】
図5は、リアクタ45の作動の制御ルーチンのフローチャートである。図示した制御ルーチンは、ECU51において一定時間間隔毎に実行される。
【0056】
まず、ECU51は、内燃機関1が停止中であるか否かを判定する(ステップS11)。内燃機関1が停止中であるか否かは、例えば、機関本体10のクランクシャフトの回転速度等に基づいて判定される。ステップS11において内燃機関1が停止中でないと判定された場合には、ECU51は、内燃機関1の運転が要求されたか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12において内燃機関1の運転が要求されていないと判定された場合には、リアクタ45への通電が停止される(ステップS13)。
【0057】
一方、ステップS12において内燃機関1の運転が要求されたと判定された場合には、ECU51は排気浄化触媒44が未活性であるか否か、すなわち温度センサ53によって検出された排気浄化触媒44の温度が活性温度未満であるか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14において排気浄化触媒44が未活性であると判定された場合には、リアクタ45への通電が行われ(ステップS15)、その後、内燃機関1の運転が開始される(ステップS16)。一方、ステップS14において排気浄化触媒44が活性していると判定された場合には、リアクタ45への通電が行われずに内燃機関1の運転が開始される(ステップS16)。
【0058】
内燃機関1の運転が開始されると、その後の制御ルーチンでは、ステップS11において内燃機関1が停止中ではないと判定される。ステップS11において内燃機関1が停止中ではないと判定されると、ECU51は排気浄化触媒44が未活性であるか否かを判定する(ステップS17)。ステップS17において排気浄化触媒44が未活性であると判定された場合には、リアクタ45への通電が行われる(ステップS18)。
【0059】
一方、ステップS17において排気浄化触媒44が活性していると判定された場合には、ECU51は下流側空燃比センサ54によって検出された空燃比がほぼ理論空燃比であるか否かを判定する(ステップS19)。ステップS19において下流側空燃比センサ54によって検出された空燃比がほぼ理論空燃比であると判定された場合には、リアクタ45への通電が停止される(ステップS13)。一方、ステップS19において下流側空燃比センサ54によって検出された空燃比が理論空燃比近傍ではないと判定された場合には、リアクタ45への通電が行われる(ステップS18)。
【0060】
第二実施形態
次に、図6図10を参照して、第二実施形態に係る排気浄化装置について説明する。第二実施形態に係る排気浄化装置の構成及び制御は基本的に第一実施形態に係る排気浄化装置の構成及び制御と同様である。以下では、第一実施形態に係る排気浄化装置とは異なる部分を中心に説明する。
【0061】
上記第一実施形態では、リアクタ45に流入する流入排気ガスの空燃比に関連する空燃比パラメータとして、下流側空燃比センサ54によって検出された排気ガスの空燃比を用いていた。これに対して、本第二実施形態では、斯かる空燃比パラメータとして、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量が用いられる。
【0062】
ここで、上述したように、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロと最大吸蔵可能酸素量との間の量である場合には、排気ガス中の浄化対象成分を浄化することができる。したがってこの場合、リアクタ45に流入する流入排気ガスの空燃比はほぼ理論空燃比となる。一方、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロである場合には未燃HC、CO等を浄化することができなくなり、よって流入排気ガスの空燃比はリッチ空燃比になる可能性がある。また、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量である場合には酸素を吸蔵することができなくなり、よって流入排気ガスの空燃比はリーン空燃比になる可能性がある。これに伴って、流入排気ガスにはNOxが含まれる可能性がある。したがって、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量は、リアクタ45に流入する流入排気ガスの空燃比に関連する空燃比パラメータであるといえる。
【0063】
そして、本実施形態では、活性パラメータが排気浄化触媒44が活性していることを表す値であって且つ排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量(ほぼゼロ又はほぼ最大吸蔵可能酸素量を含む)であるときには、リアクタ45への通電が行われる。一方、活性パラメータが排気浄化触媒44が活性していることを表す値であって且つ排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量(ほぼゼロ又はほぼ最大吸蔵可能酸素量を含む)でないときには、リアクタ45への通電は行われない。
【0064】
図6は、第二実施形態に係る排気浄化装置が搭載された内燃機関1の概略的な構成図である。図6に示されるように、本実施形態では、排気浄化触媒44の下流側に下流側空燃比センサは設けられない。代わりに、本実施形態では、排気浄化触媒44の上流側の排気管42に、排気浄化触媒44に流入する排気ガスの空燃比を検出する上流側空燃比センサ57が設けられる。
【0065】
図7は、第二実施形態に係るリアクタ45の作動の制御を行った場合における、各種パラメータのタイムチャートである。上流空燃比は、排気浄化触媒44の上流側の排気ガス、すなわち排気浄化触媒44に流入する排気ガスの空燃比を表しており、本実施形態では上流側空燃比センサ57によって検出された空燃比を表している。特に、図7では、理論空燃比が一点鎖線で示されている。
【0066】
また、図7における酸素吸蔵量は、排気浄化触媒44における酸素吸蔵量を表している。排気浄化触媒44における酸素吸蔵量OSAは、上流側空燃比センサ57によって検出された排気ガスの空燃比AFupと、空気量センサ52によって検出された吸入空気量Gaとに基づいて、例えば、下記式(1)によって算出される。
OSA=Σ(Kdosa×Ga×(AFup-AFst)/AFup …(1)
上記式(1)において、Kdosaは吸蔵効率係数であり、AFstは理論空燃比(例えば、14.6)である。
【0067】
図7に示される例では、図4に示される例と同様に、時刻t1において内燃機関1の運転が要求され、時刻t2において内燃機関1の運転が開始され、そして、時刻t3において、排気浄化触媒44の温度が活性温度以上になってリアクタ45への通電が停止される。
【0068】
図7に示される例では、その後、時刻t4において、排気浄化触媒44の温度が活性温度以上の状態で、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がほぼゼロになると、リアクタ45の作動が要求されて、リアクタ45への通電が開始される。排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がほぼゼロになると排気浄化触媒44から未燃HC又はCO等が流出する可能性があるところ、リアクタ45への通電が行われることによって未燃HC又はCO等が流出してもリアクタ45において浄化される。その後、時刻t5において排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロ近傍ではなくなると、リアクタ45の作動要求が中止されて、リアクタ45への通電が停止される。
【0069】
また、図7に示される例では、時刻t6において、排気浄化触媒44の温度が活性温度以上の状態で、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がほぼ最大吸蔵可能酸素量になると、リアクタ45の作動が要求されて、リアクタ45への通電が開始される。排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がほぼ最大吸蔵可能酸素量になると排気浄化触媒44からNOx等が流出する可能性があるところ、リアクタ45への通電が行われることによってNOx等が流出してもリアクタ45において浄化される。その後、時刻t7において排気浄化触媒44の酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量近傍ではなくなると、リアクタ45の作動要求が中止されて、リアクタ45への通電が停止される。なお、本実施形態では、最大吸蔵可能酸素量は、排気浄化触媒44の種類に応じて予め定められた一定値とされる。
【0070】
上述したように、本実施形態では、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量に基づいて、リアクタ45への通電が制御される。第一実施形態のように下流側空燃比センサ54の出力に基づいてリアクタ45への通電を制御した場合、排気浄化触媒44からリッチ空燃比又はリーン空燃比の排気ガスが流出した後にリアクタ45への通電が開始される。これに対して、本実施形態のように排気浄化触媒44の酸素吸蔵量に基づいてリアクタ45の通電が制御されると、排気浄化触媒44からリッチ空燃比又はリーン空燃比の排気ガスが流出したとき又はその前からリアクタ45への通電を開始することができ、よって排気浄化装置から浄化対象成分が流出することを抑制することができる。
【0071】
特に、本実施形態では、排気浄化触媒44の温度が活性温度以上であっても排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量であるときにはリアクタ45への通電が行われる。これにより、排気浄化装置から浄化対象成分が流出することを抑制することができる。また、排気浄化触媒44の温度が活性温度以上であって排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量でないときにはリアクタ45への通電が行われない。このようなときには排気浄化触媒44において浄化対象成分がほとんど浄化されているため排気浄化装置から浄化対象成分が流出することを抑制することができると共に、リアクタ45への通電に伴う不必要な電力の消費を抑制することができる。
【0072】
図8は、第二実施形態に係るリアクタ45の作動の制御ルーチンのフローチャートである。図示した制御ルーチンは、ECU51において一定時間間隔毎に実行される。ステップS21~S28は、図5のステップS11~S18と同様であるため説明を省略する。
【0073】
ステップS27において排気浄化触媒44が活性していると判定された場合には、ECU51は、上流側空燃比センサ57及び空気量センサ52の出力に基づいて算出された排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量であるか否かを判定する(ステップS29)。ステップS29において酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量でないと判定された場合には、リアクタ45への通電が停止される(ステップS23)。一方、ステップS29において酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量であると判定された場合には、リアクタ45への通電が行われる(ステップS28)。
【0074】
なお、上記第二実施形態では、排気浄化触媒44の最大吸蔵可能酸素量は、排気浄化触媒44の種類に応じて予め定められた一定値とされている。しかしながら、最大吸蔵可能酸素量は、劣化により、内燃機関1の運転時間に応じて徐々に低下する。したがって、最大吸蔵可能酸素量は、内燃機関1の累積運転時間に基づいて算出されてもよい。この場合、図9に示されるように、最大吸蔵可能酸素量は、内燃機関1の累積運転時間が長くなるにつれて少ない量に設定される。
【0075】
また、上記第二実施形態では、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量になると直ぐにリアクタ45の作動が要求され、リアクタ45の作動が要求されると直ぐにリアクタ45への通電が行われる。しかしながら、排気浄化触媒44からリアクタ45までは離れていることから、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量になって直ぐにリアクタ45に浄化対象成分が流入するのではなく、多少の時間が経過してからリアクタ45に浄化対象成分が流入する。また、上記第二実施形態では、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量ではなくなると直ぐにリアクタ45の作動要求が中止され、リアクタ45への通電が停止される。しかしながら、排気浄化触媒44からリアクタ45までは離れていることから、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量ではなくなって直ぐにリアクタ45に浄化対象成分が流入しなくなるのではなく、多少の時間が経過してからリアクタ45に浄化対象成分が流入しなくなる。
【0076】
そこで、ECU51は、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量に到達してから所定時間の経過後にリアクタ45の通電を行ってもよい。また、このときの所定時間は、一定時間であってもよいし、機関本体10から排出された排気ガスの流速が速いときには遅いときに比べて短く設定されてもよい。特に、所定時間は、機関本体10から排出された排気ガスの流速が速いほど短く設定される。同様に、ECU51は、排気浄化触媒44の酸素吸蔵量がゼロ又は最大吸蔵可能酸素量でなくなってから所定時間の経過後にリアクタ45の通電を停止してもよい。また、このときの所定時間は、一定時間であってもよいし、機関本体10から排出された排気ガスの流速が速いときには遅いときに比べて短く設定されてもよい。特に、所定時間は、機関本体10から排出された排気ガスの流速が速いほど短く設定される。
【0077】
図10は、リアクタ45の作動要求と、排気ガスの流速と、リアクタ45の作動状態とのタイムチャートである。排気ガスの流速は、例えば、負荷センサ55によって検出された内燃機関1の負荷と、クランク角センサ56の出力に基づいて算出された機関回転速度とに基づいて算出される。
【0078】
図10から分かるように、排気ガスの流速が遅いときには、リアクタ45の作動が要求されてからリアクタ45が実際に作動されるまでの時間が長い。一方、排気ガスの流速が速いときには、リアクタ45の作動が要求されたからリアクタ45が実際に作動されるまでの時間が短い。このときの時間は、例えば、排気浄化触媒44からリアクタ45までの排気管42の長さ(又は機関本体10からリアクタ45までの排気管42の長さ)を、算出された排気ガスの流速で除算することで求められた時間とされる。
【0079】
このように排気浄化触媒44の酸素吸蔵量が変化してから所定時間が経過してからリアクタ45の通電を制御することにより、浄化対象成分がリアクタ45に未だ流入していないときにリアクタ45に通電することがなくなると共に、浄化対象成分がリアクタ45に未だ流入しているときにリアクタ45への通電を停止することがなくなる。したがって、リアクタ45への通電に伴う不必要な電力の消費を抑制することができると共に、排気浄化装置から浄化対象成分が流出することを抑制することができる。
【0080】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0081】
1 内燃機関
10 機関本体
44 排気浄化触媒
45 リアクタ
53 温度センサ
54 下流側空燃比センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10