(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180379
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】噴霧システム
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
A01M7/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093632
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】ルオン ワン ファン
(72)【発明者】
【氏名】佐野 勇人
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121AA19
2B121CB02
2B121CB42
2B121CB51
2B121CC01
2B121DA62
2B121EA25
2B121EA26
(57)【要約】
【課題】適切なタイミングで噴霧動作の開始及び停止を制御できる噴霧システムを提供する。
【解決手段】噴霧システムは、液体を噴霧する噴霧ノズル21を有する噴霧機走行体10の動作制御を行う第1制御装置30と、噴霧ノズル21に液体を圧送するポンプユニット50の動作制御を行う第2制御装置60と、を備え、第1制御装置30は、液体の噴霧に関する情報を第2制御装置60に送信し、第2制御装置60は、ポンプユニット50の状態に関する情報を第1制御装置30に送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴霧する噴霧ノズル(21)を有する走行体(10)の動作制御を行う第1制御装置(30)と、
前記噴霧ノズル(21)に前記液体を圧送するポンプユニット(50)の動作制御を行う第2制御装置(60)と、を備え、
前記第1制御装置(30)は、前記液体の噴霧に関する情報を前記第2制御装置(60)に送信し、
前記第2制御装置(60)は、前記ポンプユニット(50)の状態に関する情報を前記第1制御装置(30)に送信する、噴霧システム。
【請求項2】
前記第1制御装置(30)は、前記第2制御装置(60)から受信した前記ポンプユニット(50)の状態に関する情報に基づいて、前記噴霧ノズル(21)による噴霧の制御を行う、請求項1に記載の噴霧システム。
【請求項3】
前記第2制御装置(60)は、前記第1制御装置(30)から受信した前記液体の噴霧に関する情報に基づいて、前記ポンプユニット(50)の動作状態を変更する、請求項1に記載の噴霧システム。
【請求項4】
前記液体の噴霧に関する情報は、前記液体を噴霧するか否かについての情報である、請求項1に記載の噴霧システム。
【請求項5】
前記液体の噴霧に関する情報は、前記液体を圧送する前記ポンプユニット(50)に対するコマンドであり、
前記コマンドは、前記ポンプユニット(50)を動作させる運転コマンド、及び、前記ポンプユニット(50)を停止させる停止コマンドを含む、請求項1に記載の噴霧システム。
【請求項6】
前記第1制御装置(30)と前記第2制御装置(60)とは、無線通信によって互いに通信可能であり、
前記第1制御装置(30)は、前記第2制御装置(60)との通信が切断されたと判定したときに、前記走行体(10)の走行動作を停止する、請求項1に記載の噴霧システム。
【請求項7】
前記ポンプユニット(50)は、
前記走行体(10)に搭載されておらず、
液体タンク(51)と、前記液体タンク(51)に貯留された液体を前記噴霧ノズル(21)に圧送するポンプ(53)と、前記ポンプ(53)を動作させる原動機(55)と、を含み、
前記走行体(10)の前記噴霧ノズル(21)と、前記ポンプユニット(50)の前記ポンプ(53)とは、巻き取り式のホース(16)を介して接続されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の噴霧システム。
【請求項8】
前記ポンプユニット(50)の状態に関する情報は、前記原動機(55)が動作しているか否かに関する情報を含む、請求項7に記載の噴霧システム。
【請求項9】
前記ポンプユニット(50)は、前記液体タンク(51)に貯留された液体の量を示す情報に基づいて前記原動機(55)を動作させるか否かを決定する、請求項7に記載の噴霧システム。
【請求項10】
前記ポンプユニット(50)は、前記ポンプ(53)の温度情報に基づいて前記原動機(55)を動作させるか否かを決定する、請求項7に記載の噴霧システム。
【請求項11】
前記第1制御装置(30)は、前記走行体(10)が走行可能であるか否かの判定を行い、その判定結果を前記第2制御装置(60)に送信する、請求項1に記載の噴霧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、噴霧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、無人走行防除機構に関する技術を開示している。この無人走行防除機構は、動力噴霧機と駆動車とを含んで構成されている。動力噴霧機は、エンジンにより駆動され、薬剤タンクに貯留された薬液をホースに圧送する。駆動車は、ホースの繰り出し及び巻き取りが可能なホースリールを有している。駆動車は、ホースの長さを調整しながら走行し、ホースに接続された噴口支持杆から薬液を噴霧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、ポンプユニットから走行体に対して薬液が圧送される噴霧システムでは、走行体が畝間を走行しているタイミングで薬液噴霧を行い、走行体が畝間以外を走行するタイミングで薬液噴霧を停止することが考えられる。このようなシステムでは、薬液流路にバルブが配置されており、ユーザがバルブを開閉することによって薬液噴霧の開始と停止とを切換える必要がある。また、この場合、走行体による薬液噴霧が停止されている状態であっても、ポンプユニットは駆動を継続することになる。
【0005】
本開示は、適切なタイミングで噴霧動作の開始及び停止を制御できる噴霧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一例の噴霧システムは、液体を噴霧する噴霧ノズル(21)を有する走行体(10)の動作制御を行う第1制御装置(30)と、噴霧ノズル(21)に液体を圧送するポンプユニット(50)の動作制御を行う第2制御装置(60)と、を備え、第1制御装置(30)は、液体の噴霧に関する情報を第2制御装置(60)に送信し、第2制御装置(60)は、ポンプユニット(50)の状態に関する情報を第1制御装置(30)に送信する。
【0007】
上記の噴霧システムでは、ポンプユニット(50)の動作制御を行う第2制御装置(60)に対して第1制御装置(30)から噴霧に関する情報が送信される。この場合、ポンプユニット(50)では、走行体(10)の噴霧動作に応じて、ポンプ動作を制御することができる。また、走行体(10)の動作制御を行う第1制御装置(30)に対して第2制御装置(60)からポンプユニット(50)の状態に関する情報が送信される。この場合、ポンプユニット(50)の動作状態に応じて、走行体(10)の噴霧動作を制御することができる。このように、走行体(10)の第1制御装置(30)とポンプユニット(50)の第2制御装置(60)とが互いに連携することにより、システム全体として、適切なタイミングで噴霧動作の開始及び停止を制御できる。
【0008】
一例の第1制御装置(30)は、第2制御装置(60)から受信したポンプユニット(50)の状態に関する情報に基づいて、噴霧ノズル(21)による噴霧の制御を行ってもよい。この構成では、不要な噴霧動作を削減することができる。
【0009】
一例の第2制御装置(60)は、第1制御装置(30)から受信した液体の噴霧に関する情報に基づいて、ポンプユニット(50)の動作状態を変更してもよい。この構成では、ポンプユニット(50)の不要な動作を削減することができる。
【0010】
一例において、液体の噴霧に関する情報は、液体を噴霧するか否かについての情報であってよい。第1制御装置(30)から噴霧するか否かの情報が第2制御装置(60)に入力されるため、第2制御装置(60)における演算量が低減され得る。
【0011】
一例において、液体の噴霧に関する情報は、液体を圧送するポンプユニット(50)に対するコマンドであり、コマンドは、ポンプユニット(50)を動作させる運転コマンド、及び、ポンプユニット(50)を停止させる停止コマンドを含んでよい。第1制御装置(30)からポンプユニット(50)に対するコマンドが第2制御装置(60)に入力されるため、第2制御装置(60)における演算量が低減され得る。
【0012】
一例において、第1制御装置(30)と第2制御装置(60)とは、無線通信によって互いに通信可能であり、第1制御装置(30)は、第2制御装置(60)との通信が切断されたと判定したときに、走行体(10)の走行動作を停止してもよい。この構成では、第1制御装置(30)と第2制御装置(60)との間の通信が確立されていない場合に走行体(10)の走行動作が停止される。
【0013】
一例のポンプユニット(50)は、走行体(10)に搭載されておらず、液体タンク(51)と、液体タンク(51)に貯留された液体を噴霧ノズル(21)に圧送するポンプ(53)と、ポンプ(53)を動作させる原動機(55)と、を含み、走行体(10)の噴霧ノズル(21)と、ポンプユニット(50)のポンプ(53)とは、巻き取り式のホース(16)によって接続されていてよい。この構成では、例えば地面に載置されたポンプユニット(50)から圧送された液体は、ホース(16)を介して走行体(10)に送られる。走行体(10)にポンプユニット(50)が搭載されないことにより、走行体(10)を小型化することができ、また、走行体(10)で必要なエネルギを削減することができる。
【0014】
ポンプユニット(50)の状態に関する情報は、原動機(55)が動作しているか否かに関する情報を含んでもよい。この構成では、第1制御装置(30)は、原動機(55)が動作していない状態のときに、噴霧動作を停止することができる。
【0015】
ポンプユニット(50)は、液体タンク(51)に貯留された液体の量を示す情報に基づいて原動機(55)を動作させるか否かを決定する。この構成では、例えば、噴霧動作の途中で液体が不足することが抑制される。
【0016】
ポンプユニット(50)は、ポンプ(53)の温度情報に基づいて原動機(55)を動作させるか否かを決定する。この構成では、ポンプ(53)に不具合がある場合に、噴霧動作を停止することができる。
【0017】
第1制御装置(30)は、走行体(10)が走行可能であるか否かの判定を行い、その判定結果を第2制御装置(60)に送信してもよい。この構成では、走行体(10)が走行不可であると判定されたときに、第2制御装置(60)がポンプユニット(50)の動作を停止してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、適切なタイミングで噴霧動作の開始及び停止を制御できる噴霧システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】一例の噴霧システムにおける第1制御装置を説明するブロック図である。
【
図3】一例の噴霧システムにおける第2制御装置を説明するブロック図である。
【
図4】噴霧システムで利用されるマップデータの一例を説明する図である。
【
図5】一例の噴霧システムにおける第1制御装置の動作の一例を示すフロー図である。
【
図6】一例の噴霧システムにおける第2制御装置の動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、一例の噴霧システムについて、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、噴霧システムを構成する走行体の進行方向を基準として前後方向及び左右方向を規定している。
【0021】
図1は、一例の噴霧システムを示す模式図である。噴霧システム1は、噴霧機走行体10(走行体)と、ポンプユニット50とを含む。噴霧機走行体10は、本体フレーム11と、本体フレーム11に設けられた一対の前輪13と、本体フレーム11に設けられた一対の後輪15と、ドラム17と、電動バルブ19と、噴霧ノズル21と、第1制御装置30とを、有する。
【0022】
噴霧機走行体10は、本体フレーム11に設けられた前輪13及び後輪15の少なくとも一方の駆動により、走行することができる。一例の噴霧機走行体10は、前方に向かって走行する前進動作と、後方に向かって走行する後進動作とが可能であってよい。また、噴霧機走行体10は、進行方向に向かって右側に曲がる右折動作と、進行方向に向かって左側に曲がる左折動作とが可能であってよい。一例において、一対の前輪13及び一対の後輪15は、それぞれインホイールモータを有していてもよく、前輪13及び後輪15は、それぞれ独立して操舵可能であってもよい。なお、噴霧機走行体10の走行方式については、上記の例に限定されない。
【0023】
ドラム17は、ホース16の巻き取り、及び、ホース16の繰り出しを行うためのリールである。一例のドラム17は、本体フレーム11に設けられた左右方向に沿った回転軸に対して回転可能に支持されている。ドラム17は、噴霧ノズル21に薬液を送出するための先端ホース18を有している。ドラム17に巻回されるホース16の一端(吐出端)は、先端ホース18に接続されている。ドラム17の回転に応じて、ホース16の他端(供給端)側の巻き取り及び繰り出しが実行される。例えば、ドラム17は、モータの出力によって回転駆動される。モータによってドラム17が第1の回転方向に回転すると、ホース16の巻き取りが行われ、ドラム17が第1の回転方向と反対の第2の回転方向に回転すると、ホース16の繰り出しが行われる。
【0024】
電動バルブ19は、噴霧ノズル21に接続された薬液流路の開閉を制御する。例えば、電動バルブ19は、先端ホース18と噴霧ノズル21との間に設けられている。図示例では、噴霧ノズル21は、例えば、噴霧機走行体10の本体フレーム11の前部に設けられたノズル管20に設けられている。ノズル管20は、上下方向に延在しており、本体フレーム11の前部において上向きに突出している。一例では、ノズル管20と先端ホース18とが電動バルブ19を介して連通している。電動バルブ19が開状態に制御されている場合、ホース16及び先端ホース18を圧送された薬液は、電動バルブ19を介してノズル管20を通り、噴霧ノズル21から噴霧される。一方、電動バルブ19が閉状態に制御されている場合、薬液の流れは電動バルブ19によって止められる。すなわち、噴霧ノズル21からの噴霧も停止される。
【0025】
第1制御装置30は、噴霧機走行体10の動作を制御する。一例の第1制御装置30は、プロセッサ、記憶装置、入出力インターフェース等を含むコンピュータによって構成されている。第1制御装置30は、前輪13及び後輪15のインホイールモータの制御、ドラム17を回転させるモータの制御、電動バルブ19の開閉の制御等を実行する。
【0026】
ポンプユニット50は、噴霧ノズル21に薬液を圧送するための装置である。一例のポンプユニット50は、噴霧機走行体10とは別体として構成されており、噴霧機走行体10に搭載されていない。例えば、ポンプユニット50は、圃場等の地面に載置された状態で使用されてよい。一例のポンプユニット50は、薬液タンク51と、ポンプ53と、原動機55と、センサ57と、第2制御装置60と、を備えている。
【0027】
薬液タンク51は、薬液(液体)を貯留する。例えば、薬液タンク51は、薬液を注入するための注入口と、薬液を排出する排出口とを有していてよい。薬液タンク51から排出された薬液は、ホース等によって薬液タンク51に接続されたポンプ53に供給される。
【0028】
ポンプ53は、薬液タンク51から供給された薬液を噴霧機走行体10のホース16に圧送する。例えば、ポンプ53は、供給口から供給された液体を排出口から高圧で排出する。ポンプ53の供給口は薬液タンク51に接続されており、ポンプ53の排出口は噴霧機走行体10のドラム17に巻回されたホース16の供給端に接続されている。ポンプ53からホース16に圧送された薬液は、ホース16内を通り、電動バルブ19を介して噴霧ノズル21から噴霧され得る。例えば、ポンプ53は、往復動ポンプ、回転ポンプ(歯車ポンプ、ベーンポンプ)等であってよい。
【0029】
原動機55は、動力源を回転運動に変換し、その回転運動によってポンプ53を駆動する。すなわち、原動機55は、回転可能な出力軸を有していてよい。原動機55の出力軸は、例えばポンプ53のクランク軸に接続されている。例えば、原動機55は、モータ、エンジン等であってよい。以下、原動機55が、電力を動力源とするモータである例について説明する。
【0030】
センサ57は、ポンプユニット50の状態を検出する。例えば、センサ57は、温度センサ、液量センサ、漏水センサ、圧力センサ及び残量センサのうちの一つ又は複数によって構成されていてよい。温度センサは、対象物の温度を検出する。例えば、温度センサは、ポンプ53に設けられていており、ポンプ53の温度を検出してもよい。また、温度センサは、原動機55に設けられていており、原動機55の温度を検出してもよい。液量センサは、薬液タンク51に貯留された薬液の貯留量を検出する。例えば、液量センサは、薬液タンク51内に貯留された薬液に浮かべられた状態で液面の高さを検出する液面センサであってもよい。漏水センサは、ポンプ53からの漏水を検出する。例えば、漏水センサは、ポンプ53の下方に配置されたセンシング部を有してもよい。この場合、センシング部に形成された所定の電極間の電圧値を検出することによって漏水の有無を判定し得る。
【0031】
圧力センサは、ポンプ53によって圧送される薬液の圧力を検出する。例えば、圧力センサは、ポンプ53の排出口に設けられていてもよい。残量センサは、原動機55の動力源の残量を検出する。例えば、原動機55が電力によって動作するモータである場合、残量センサはモータのバッテリ残量を検出するセンサ57であってもよい。この場合、残量センサはバッテリ装置に設けられていてもよい。
【0032】
第2制御装置60は、噴霧ノズル21に液体を圧送するポンプユニット50の動作制御を行う。一例の第2制御装置60は、プロセッサ、記憶装置、入出力インターフェース等を含むコンピュータによって構成されている。例えば、第2制御装置60は、原動機55の動作制御を行う。原動機55がモータである場合、第2制御装置60は当該モータの始動、停止及び回転数を制御する。また、一例において、第2制御装置60は、センサ57による検出結果を取得する。すなわち、第2制御装置60は、センサ57に接続されている。
【0033】
続いて、噴霧機走行体10に搭載された第1制御装置30、及び、ポンプユニット50に搭載された第2制御装置60の詳細について説明する。
図2は、噴霧機走行体10の第1制御装置30の構成を示すブロック図である。
図3は、ポンプユニット50の第2制御装置60の構成を示すブロック図である。
【0034】
図2に示すように、第1制御装置30は、走行制御部31と、ドラム制御部32と、状態判定部33と、噴霧判定部34と、バルブ制御部35と、送受信制御部36と、を機能部として備える。
【0035】
走行制御部31は、噴霧機走行体10における走行状態を制御する。一例では、一対の前輪13及び一対の後輪15の駆動と操舵とを走行制御部31が制御することにより、噴霧機走行体10の走行状態が制御される。走行制御部31による制御は、噴霧機走行体10を自律走行させるための制御であってよい。例えば、走行制御部31は、噴霧の対象となる圃場(対象領域)のマップデータを有しており、マップデータに基づいて噴霧機走行体10の走行状態を制御してもよい。マップデータは、圃場における噴霧機走行体10の走行ルート、走行ルートにおける噴霧機走行体10の走行状態、及び、走行ルートにおける噴霧機走行体10の噴霧状態、に関する情報を含んでいてよい。
【0036】
図4は、マップデータの一例を説明するための図である。
図4に示すように、マップデータは、圃場の全体を示す全体領域101と、栽培対象を栽培する領域である畝領域103と、噴霧機走行体10が走行可能な領域である走行領域105と、を含み得る。
図4の例では、ナップデータ内に噴霧機走行体10の走行ルートが矢印で示されている。走行ルートは、防除作業において噴霧機走行体10が走行するためのルートを示す。走行ルートは、マップデータのうちの走行領域105に設定される。
【0037】
例えば、走行ルートは、スタート地点から開始し、畝間を往復して、スタート地点に戻るように設定されている。図示例の走行ルートA~Vは、符号の順番に噴霧機走行体10が走行するように設定されている。走行ルートには、噴霧機走行体10の走行状態が対応付けられている。一例において、走行状態は、前進走行状態と後進走行状態とを含む。図示例では、走行ルートのうち実線で示される走行ルートA,B,C,F,G,K,M,N,O,R,Sが前進走行状態を示し、破線で示される走行ルートD,E,H,I,J,L,P,Q,T,U,Vが後進走行状態を示す。
【0038】
また、走行ルートには、噴霧機走行体10の噴霧状態が対応付けられている。例えば、噴霧状態は、噴霧ノズル21からの噴霧が実行される実行状態と、噴霧ノズル21からの噴霧が停止される停止状態とを含む。すなわち、走行ルートは、噴霧が実行される噴霧ルートと、噴霧が停止される停止ルートとによって構成される。図示例では、畝領域103に沿った走行ルートのうち、往路となっている走行ルートC,G,K,O,Sが噴霧ルートとなっており、それ以外の走行ルートが停止ルートとなっている。
【0039】
また、走行制御部31は、噴霧機走行体10の位置情報を取得し、取得された位置情報に基づいて噴霧機走行体10の走行状態を制御してもよい。例えば、走行制御部31は、GNSS(Global Navigation Satellite System)のような位置測位システムを利用して噴霧機走行体10の位置を取得してもよい。なお、噴霧機走行体10の位置を取得する技術は、特に限定されない。例えば、走行制御部31は、ビーコンを利用した位置測位システムによって噴霧機走行体10の位置を取得してもよいし、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)のような技術を利用して噴霧機走行体10の位置を取得してもよい。
【0040】
例えば、噴霧機走行体10は、走行ルートのスタート地点に予めセットされてもよい。この場合、走行制御部31は、取得された噴霧機走行体10の位置情報に基づいて、噴霧機走行体10が走行ルートから外れないように、噴霧機走行体10の自律走行を制御する。なお、噴霧機走行体10が走行ルートのスタート地点にセットされない場合、走行制御部31は、噴霧機走行体10の現在位置から走行ルートのスタート地点までのルートを生成し、この生成されたルートに基づいて噴霧機走行体10をスタート地点まで走行させてもよい。
【0041】
ドラム制御部32は、ドラム17の回転動作を制御する。すなわち、ドラム制御部32は、ホース16がドラム17から繰り出される繰り出し回転方向と、ホース16がドラム17に巻き取られる巻き取り回転方向とのいずれかにドラム17が回転するように、噴霧機走行体10の走行状態に応じてドラム17の回転動作を制御する。例えば、ドラム制御部32は、噴霧機走行体10が前進している場合に繰り出し回転方向にドラム17を回転制御し、噴霧機走行体10が後退している場合に巻き取り回転方向にドラム17を回転制御してもよい。また、ドラム制御部32は、ホース16の巻回長に応じてドラム17の回転速度を調整してもよい。
【0042】
状態判定部33は、噴霧機走行体10の状態を判定する。状態判定部33は、噴霧機走行体10が走行しているか否かを判定してもよい。また、状態判定部33は、噴霧機走行体10が走行可能な状態であるか否かを判定してもよい。例えば、噴霧機走行体10は、進行方向に障害物があるか否かを検出するセンサ等を備えていてもよい。この場合、状態判定部33は、当該センサの検出情報に基づいて、進行方向に障害物がある場合に走行不可であると判定してもよい。また、噴霧機走行体10は、噴霧機走行体10が転倒しているか否かを検出するセンサ等を備えていてもよい。この場合、状態判定部33は、当該センサの検出情報に基づいて、噴霧機走行体10が転倒している場合に走行不可であると判定してもよい。例えば、状態判定部33は、噴霧機走行体10が走行している場合、及び、噴霧機走行体10が走行可能である場合に、噴霧機走行体10の状態が正常であると判定する。
【0043】
噴霧判定部34は、噴霧機走行体10による噴霧動作を実行する状態にあるか否かを判定する。例えば、噴霧判定部34は、噴霧機走行体10が走行ルートのうちの噴霧ルート(走行ルートC,G,K,O,S)に位置しているか否かを判定する。また、噴霧判定部34は、状態判定部33によって噴霧機走行体10が正常であると判定されているか否かの情報を取得する。また、噴霧判定部34は、後述するポンプユニット50の状態判定部33によってポンプユニット50が正常であると判定されているか否かの情報を取得する。噴霧判定部34は、噴霧機走行体10及びポンプユニット50の状態が正常であり、噴霧機走行体10が噴霧ルートに位置していると判定された場合に、噴霧動作を実行する状態にあると判定する。
【0044】
バルブ制御部35は、電動バルブ19の開閉を制御する。バルブ制御部35は、噴霧判定部34によって噴霧動作を実行する状態にあると判定された場合に、電動バルブ19を開状態に制御する。一方、バルブ制御部35は、噴霧判定部34によって噴霧動作を実行する状態にないと判定された場合に、電動バルブ19を閉状態に制御する。
【0045】
送受信制御部36は、噴霧機走行体10とポンプユニット50との間の通信を制御する。一例の噴霧機走行体10は、第1制御装置30に接続された無線通信ユニット40を有している。送受信制御部36は、無線通信ユニット40を介してポンプユニット50との間の通信を実行する。例えば、噴霧機走行体10とポンプユニット50との間の通信は、所定の通信速度で実行される。一例では、通信速度は50Hz(1秒間に50回の送受信)程度であってもよいが、特に限定されない。
【0046】
送受信制御部36は、噴霧に関する情報をポンプユニット50に送信する。また、送受信制御部36は、ポンプユニット50の状態に関する情報をポンプユニット50から受信する。送受信制御部36は、噴霧機走行体10とポンプユニット50との間で通信が確立しているか否かを判定してもよい。
【0047】
送受信制御部36によってポンプユニット50に送信される噴霧に関する情報は、薬液を噴霧するか否かについての情報であってよい。例えば、送受信制御部36は、ポンプユニット50に対して、運転コマンド及び停止コマンドのいずれかを送信してもよい。運転コマンドは、薬液を噴霧することを意味するコマンドである。すなわち、運転コマンドは、ポンプユニット50の原動機55に対して動作の始動又は継続を指示するコマンドである。送受信制御部36は、噴霧機走行体10が噴霧ルートを走行している場合に、運転コマンドをポンプユニット50に送信する。
【0048】
停止コマンドは、薬液を噴霧しないことを意味するコマンドである。すなわち、停止コマンドは、ポンプユニット50の原動機55に対して動作の停止を指示するコマンドである。送受信制御部36は、噴霧機走行体10が停止ルートを走行している場合に、停止コマンドをポンプユニット50に送信する。なお、噴霧機走行体10とポンプユニット50との間の通信が確立されていない場合、送受信制御部36から走行制御部31に対して走行停止を指示する信号が入力されてもよい。この場合、送受信制御部36は、ポンプユニット50に対して停止コマンドを送信してもよい。また、送受信制御部36は、ポンプユニット50の状態に異常があると判定される場合、走行制御部31に対して走行停止を指示する信号が入力してもよい。
【0049】
図3に示すように、ポンプユニット50の第2制御装置60は、状態判定部61と、駆動判定部62と、駆動制御部63と、送受信制御部64と、を機能部として備える。
【0050】
状態判定部61は、ポンプユニット50の状態を判定する。状態判定部61は、ポンプユニット50が正常に動作可能であるか、及び、ポンプユニット50が正常に動作しているかを判定する。状態判定部61は、第2制御装置60に入力されたセンサ57からの検出信号に基づいて、ポンプユニット50の状態を判定してもよい。例えば、状態判定部61は、温度センサから入力された検出情報に基づいて、原動機55、ポンプ53等が過度に加熱されていないか否かを判定してもよい。状態判定部61は、温度センサによって取得された温度が所定の温度以下の場合に温度状態が正常であると判定する。
【0051】
状態判定部61は、液量センサから入力された検出情報に基づいて、薬液タンク51に貯留されている薬液の残量が規定量に達しているか否かを判定してもよい。例えば、状態判定部61は、薬液が規定量に達している場合に薬液残量が正常であると判定する。状態判定部61は、漏水センサから入力された検出情報に基づいて、ポンプ53で漏水が発生していないか否かを判定してもよい。例えば、状態判定部61は、漏水センサによる信号に異常がない場合に正常であると判定する。
【0052】
状態判定部61は、圧力センサから入力された検出情報に基づいて、ポンプ53から吐出される薬液の圧力(水圧)が噴霧に適した圧力を有するか否かを判定してもよい。例えば、状態判定部61は、圧力が噴霧に適している場合に正常であると判定する。状態判定部61は、残量センサから入力された検出情報に基づいて、原動機55の動力源(燃料、バッテリなど)が規定量に達しているか否かを判定してもよい。例えば、状態判定部61は、動力源が規定量に達している場合に圧送される薬液の圧力が正常であると判定する。
【0053】
状態判定部61は、温度センサ、液量センサ、漏水センサ及び残量センサからの検出結果が正常である場合に、ポンプユニット50が正常な待機状態であると判定する。また、状態判定部61は、温度センサ、液量センサ、漏水センサ及び残量センサからの検出結果が正常である場合に、さらに圧力センサからの検出結果が正常であるときに、ポンプユニット50の正常な動作状態であると判定する。
【0054】
駆動判定部62は、ポンプ53による薬液の圧送動作を実行する状態にあるか否かを判定する。駆動判定部62は、状態判定部61によってポンプユニット50の状態が正常であると判定されているか否かの情報を取得する。また、駆動判定部62は、噴霧機走行体10の第1制御装置30から運転コマンドと停止コマンドとのいずれのコマンドが送信されているかの判定を行う。駆動判定部62は、ポンプユニット50の状態が正常であり、且つ、噴霧機走行体10から運転コマンドが送信されているときに、ポンプ53の動作を実行する状態にあると判定する。一方、駆動判定部62は、状態判定部61によってポンプユニット50の状態が正常ではないと判定されている場合、又は、噴霧機走行体10から停止コマンドが送信されているときに、ポンプ53の動作を実行する状態にないと判定する。
【0055】
駆動制御部63は、ポンプ53を動作させる原動機55の動作を制御する。駆動制御部63は、駆動判定部62によってポンプ53の動作を実行する状態にあると判定されたときに、原動機55を動作させる。原動機55が動作することにより、ポンプ53による薬液の圧送が開始される。また、駆動制御部63は、駆動判定部62によってポンプ53の動作を実行する状態にないと判定されたときに、原動機55を停止させる。原動機55が停止することにより、ポンプ53による薬液の圧送が停止される。
【0056】
送受信制御部64は、ポンプユニット50と噴霧機走行体10との間の通信を制御する。一例のポンプユニット50は、第2制御装置60に接続された無線通信装置を有しており、送受信制御部64は、ポンプユニット50に設けられた無線通信ユニット70を介して、噴霧機走行体10の無線通信ユニット40との間の通信を実行する。
【0057】
送受信制御部64は、ポンプユニット50の状態に関する情報を噴霧機走行体10に送信する。また、送受信制御部64は、噴霧機走行体10の噴霧に関する情報(上記例ではコマンド情報)を噴霧機走行体10から受信する。送受信制御部64は、ポンプユニット50と噴霧機走行体10との間で通信が確立しているか否かを判定してもよい。
【0058】
送受信制御部64によって噴霧機走行体10に送信されるポンプユニット50の状態に関する情報は、状態判定部61によって判定されたポンプユニット50についての情報であってよい。送受信制御部64は、状態判定部61によってポンプユニット50が正常な待機状態にあると判定された場合、ポンプユニット50が正常であることを示すポンプ正常信号を噴霧機走行体10に送信する。送受信制御部64は、状態判定部61によってポンプユニット50が正常な待機状態にないと判定された場合、ポンプユニット50に異常があることを示すポンプ異常信号を噴霧機走行体10に送信する。また、送受信制御部64は、状態判定部61によってポンプユニット50の動作状態が正常であると判定された場合、ポンプユニット50が正常に動作していることを示す動作正常信号を噴霧機走行体10に送信する。また、送受信制御部64は、原動機55が停止している場合、ポンプ53が停止していることを示すポンプ停止信号を噴霧機走行体10に送信する。
【0059】
図5は、噴霧機走行体10に搭載された第1制御装置30の動作の一例を説明するためのフロー図である。
図6は、ポンプユニット50に搭載された第2制御装置60の動作の一例を説明するためのフロー図である。
図5及び
図6では、第1制御装置30と第2制御装置60との間で行われる情報の送受信に関連する動作についてのフローが示されている。
【0060】
噴霧システム1の動作が開始されると、噴霧機走行体10では、まず、第1制御装置30の送受信制御部36によってポンプユニット50(第2制御装置60)からの情報が取得される(ステップS11)。続いて、送受信制御部36は、ポンプユニット50からの情報の読み取りが完了したか否かを判定する(ステップS12)。送受信制御部36によって情報の読み取りが完了しなかった場合、噴霧機走行体10とポンプユニット50との間での通信が確立されていないと判定されて、噴霧機走行体10の操作が停止される(ステップS13)。すなわち、噴霧機走行体10が走行している場合には、走行が停止される。また、噴霧機走行体10によって噴霧が行われている場合には、噴霧が停止される。
【0061】
ステップS12において、情報の読み取りが完了したと判定された場合、送受信制御部36は、読み取った情報の中にポンプ異常信号が含まれているか否かを判定する(ステップS14)。ポンプ異常信号が含まれている場合、噴霧機走行体10の動作が停止される(ステップS13)。また、ステップS14では、状態判定部33によって噴霧機走行体10の状態が正常であると判定されているか否かの判定が行われてもよい。状態判定部33によって噴霧機走行体10の状態が正常であると判定されていない場合、噴霧機走行体10に異常があると認定され、噴霧機走行体10の操作が停止される(ステップS13)。
【0062】
ステップS14において、異常がないと判定された場合、噴霧作業操作が実行される(ステップS15)。すなわち、走行制御部31によって、噴霧機走行体10の走行が制御される。また、噴霧機走行体10の走行動作に伴って、ドラム制御部32はドラム17の回転を制御する。また、噴霧判定部34によって噴霧動作を実行する状態にあると判定された場合には、バルブ制御部35によって電動バルブ19が開状態に制御される。なお、ポンプユニット50からポンプ正常状態及びポンプ停止信号が送信されている場合、バルブ制御部35は、ポンプユニット50から動作正常信号が送信されるのを待って、電動バルブ19を開状態にしてもよい。
【0063】
続くステップS16では、状況に応じて、ポンプユニット50に送信されるコマンドがアップデートされる。ステップS13において噴霧機走行体10の操作が停止されている場合、新しいコマンドとして停止コマンドがセットされる。ステップS15において、噴霧判定部34によって噴霧動作を実行する状態にあると判定された場合には、新しいコマンドとして運転コマンドがセットされる。また、ステップS15において、噴霧判定部34によって噴霧動作を実行する状態にないと判定された場合には、新しいコマンドとして停止コマンドがセットされる。
【0064】
続いて、送受信制御部36は、ステップS16でセットされた新しいコマンドをポンプユニット50に送信する(ステップS17)。第1制御装置30の動作は、再びステップS11に戻り、上記ステップS11~ステップS17を繰り返す。
【0065】
一方、ポンプユニット50では、まず、第2制御装置60の送受信制御部64によって噴霧機走行体10(第1制御装置30)からの情報が取得される(ステップS21)。続いて、送受信制御部64は、噴霧機走行体10からの情報の読み取りが完了したか否かを判定する(ステップS22)。送受信制御部64によって情報の読み取りが完了しなかった場合、ポンプユニット50と噴霧機走行体10との間での通信が確立されていないと判定されて、原動機55の動作が停止される(ステップS23)。すなわち、ポンプ53が動作している場合には、ポンプ53が停止される。
【0066】
ステップS22において、情報の読み取りが完了したと判定された場合、状態判定部61によって各センサ57の読み取りが実施され(ステップS24)、ポンプユニット50の状態が判定される(ステップS25)。ポンプユニット50の状態に異常があると判定された場合、原動機55の動作が停止される(ステップS23)。
【0067】
ステップS25において、異常がないと判定された場合、原動機55の操作が実行される(ステップS26)。すなわち、取得されているコマンドに基づいて、原動機55の動作が制御される。噴霧機走行体10から停止コマンドが送信されている場合には、原動機55が停止され、噴霧機走行体10から運転コマンドが送信されている場合には、原動機55が駆動される。なお、噴霧システム1の始動時のように、コマンドが送信されていない場合、原動機55は停止されていてよい。
【0068】
続くステップS27では、状況に応じて、噴霧機走行体10に送信されるポンプユニット情報が更新される。原動機55の動作が停止されている場合、更新されるポンプユニット情報にポンプ停止信号が含まれる。また、状態判定部61によってポンプユニット50が正常な待機状態であると判定されている場合、ポンプユニット情報にポンプ正常信号が含まれる。状態判定部61によってポンプユニット50が正常な待機状態でないと判定された場合、ポンプユニット情報にポンプ異常信号が含まれる。また、状態判定部61によってポンプユニット50が正常な動作状態であると判定されている場合、ポンプユニット情報に動作正常信号が含まれる。
【0069】
続いて、送受信制御部64は、ステップS27でセットされた新しいポンプユニット50情報を噴霧機走行体10に送信する(ステップS28)。第2制御装置60の動作は、再びステップS21に戻り、上記ステップS21~ステップS28を繰り返す。
【0070】
上記各ステップによれば、噴霧システム1が始動された場合、噴霧機走行体10は、ポンプユニット50に異常がないことを確認すると、走行制御部31の制御に基づいて、走行ルートAから順番に設定されたルートに沿って走行する。このとき、ポンプユニット50のポンプ53は待機状態にあってよい。噴霧機走行体10が走行ルートCを走行するとき、噴霧判定部34は噴霧動作を実行する状態にあると判定する。これにより、送受信制御部36は、ポンプユニット50に対して運転コマンドを送信する。ポンプ53による薬液の圧送が開始され、ポンプ53の吐出圧が所定の高さになると、送受信制御部64から噴霧機走行体10に対して動作正常信号が送信される。噴霧機走行体10は、動作正常信号を受け取ると、電動バルブ19を開状態に制御し、噴霧動作を実行しながら走行ルートCを走行する。噴霧機走行体10が走行ルートCの走行を完了すると、噴霧機走行体10は後退動作によって走行ルートDを走行する。走行ルートDは噴霧ルートではないため、噴霧判定部34は噴霧動作を実行する状態にないと判定する。このとき、送受信制御部36は、ポンプユニット50に対して停止コマンドを送信する。また、バルブ制御部35は、電動バルブ19を閉状態に制御する。これにより、ポンプユニット50は、原動機55の動作を停止させる。次いで、噴霧機走行体10が走行ルートE,Fを経て走行ルートGに至ると、噴霧判定部34は、再び、噴霧動作を実行する状態にあると判定する。これにより、走行ルートCを走行しているときと同様の制御が噴霧機走行体10及びポンプユニット50で実行される。以降、噴霧ルートであるか否かの判定に伴って、ポンプユニット50の動作が制御されることにより、走行ルートC,G,K,O,Sにおいて噴霧動作が実行され、それ以外の走行ルートでは原動機55が停止された状態で噴霧機走行体10がルートを走行することになる。
【0071】
以上説明のとおり、一例の噴霧システム1は、液体を噴霧する噴霧ノズル21を有する噴霧機走行体10の動作制御を行う第1制御装置30と、噴霧ノズル21に液体を圧送するポンプユニット50の動作制御を行う第2制御装置60と、を備え、第1制御装置30は、液体の噴霧に関する情報を第2制御装置60に送信し、第2制御装置60は、ポンプユニット50の状態に関する情報を第1制御装置30に送信する。
【0072】
上記の噴霧システム1では、ポンプユニット50の動作制御を行う第2制御装置60に対して第1制御装置30から噴霧に関する情報が送信される。この場合、ポンプユニット50では、噴霧機走行体10の噴霧動作に応じて、ポンプ動作を制御することができる。また、噴霧機走行体10の動作制御を行う第1制御装置30に対して第2制御装置60からポンプユニット50の状態に関する情報が送信される。例えば、ポンプユニット50の状態が噴霧機走行体10に送信されない場合、噴霧機走行体10は、薬液が圧送されないにも関わらず、噴霧動作の継続のために不要な走行を行うことになる。上記の例では、ポンプユニット50の状態に応じて、噴霧機走行体10の動作を制御することができるため、噴霧機走行体10の不要な動作を低減できる。例えば、ポンプユニット50に不具合等が生じている場合には噴霧動作を行うことができないが、そのような場合、噴霧機走行体10は、自律的に動作を停止することができる。このように、上記の噴霧システム1では、適切なタイミングで噴霧動作を制御できるため、不要な動作によって生じる噴霧機走行体10及びポンプユニット50の消耗を抑制することができる。
【0073】
一例の第1制御装置30は、第2制御装置60から受信したポンプユニット50の状態に関する情報に基づいて、電動バルブ19の開閉制御を実行してもよい。この構成では、例えば、ポンプ53の吐出圧が低い場合に噴霧を停止させておくことができるなど、不要な噴霧動作を低減することができる。
【0074】
一例の第2制御装置60は、第1制御装置30から受信した液体の噴霧に関する情報に基づいて、ポンプユニット50の動作状態を変更してもよい。この構成では、噴霧機走行体10が噴霧するべき状態のときのみにポンプ53を稼働できるなど、ポンプユニット50の不要な動作を削減することができる。
【0075】
一例において、液体の噴霧に関する情報は、液体を噴霧するか否かについての情報であってよい。第1制御装置30から噴霧するか否かの情報が第2制御装置60に入力されるため、第2制御装置60における演算量が低減され得る。
【0076】
一例において、液体の噴霧に関する情報は、液体を圧送するポンプユニット50に対するコマンドであり、コマンドは、ポンプユニット50を動作させる運転コマンド、及び、ポンプユニット50を停止させる停止コマンドを含んでよい。第1制御装置30からポンプユニット50に対するコマンドが第2制御装置60に入力されるため、第2制御装置60における演算量が低減され得る。
【0077】
一例において、第1制御装置30と第2制御装置60とは、無線通信によって互いに通信可能であり、第1制御装置30は、第2制御装置60との通信が切断されたと判定したときに、噴霧機走行体10の走行動作を停止してもよい。この構成では、第1制御装置30と第2制御装置60との間の通信が確立されていない場合に噴霧機走行体10の走行動作が停止される。
【0078】
一例のポンプユニット50は、噴霧機走行体10に搭載されておらず、液体タンクと、液体タンクに貯留された液体を噴霧ノズル21に圧送するポンプ53と、ポンプ53を動作させる原動機55と、を含み、噴霧機走行体10の噴霧ノズル21と、ポンプユニット50のポンプ53とは、巻き取り式のホース16によって接続されていてよい。この構成では、例えば地面に載置されたポンプユニット50から圧送された液体は、ホース16を介して噴霧機走行体10に送られる。噴霧機走行体10にポンプユニット50が搭載されないことにより、噴霧機走行体10を小型化することができ、また、噴霧機走行体10で必要なエネルギを削減することができる。
【0079】
ポンプユニット50の状態に関する情報は、原動機55が動作しているか否かに関する情報を含んでもよい。この構成では、第1制御装置30は、原動機55が動作していない状態のときに、噴霧動作を停止することができる。
【0080】
ポンプユニット50は、液体タンクに貯留された液体の量を示す情報に基づいて原動機55を動作させるか否かを決定する。この構成では、例えば、噴霧動作の途中で液体が不足することが抑制される。
【0081】
ポンプユニット50は、ポンプ53の温度情報に基づいて原動機55を動作させるか否かを決定する。この構成では、ポンプ53に不具合がある場合に、噴霧動作を停止することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の具体的形態は上記の例に限定されない。
【0083】
例えば、原動機55がモータである例について説明したが、原動機55は、ポンプ53を動作可能であれば特に限定されない。例えば、原動機55はエンジン等であってもよい。原動機55がエンジンである場合、第2制御装置60は当該エンジンの始動、停止及びアイドリングの切替を制御してもよい。例えば、噴霧動作から次の噴霧動作に移行する後退動作中には、エンジンがアイドリング運転されてもよい。この場合、第1制御装置30は、第2制御装置60に対して、噴霧ルートを走行中に運転コマンドを送信し、停止ルートを走行中にアイドリングコマンドを送信し、噴霧動作終了時に停止コマンドを送信してもよい。
【0084】
また、原動機55がガソリン等の燃料によって動作するエンジンであるとき、残量センサは燃料タンクの燃料の量を検出する液量センサ等であってよい。
【0085】
また、第1制御装置30から第2制御装置60に送信される薬液の噴霧に関する情報が、薬液を噴霧するか否かについての情報、より具体的には、ポンプユニット50に対するコマンド情報である例を示したが、薬液の噴霧に関する情報は、薬液を噴霧する状態にあるか(すなわち原動機55を始動させる状態にあるか)否かが第2制御装置60において判別できる情報であればよい。換言すれば、噴霧判定部34の判定に必要な情報が第1制御装置30から第2制御装置60に送信され、第2制御装置60が噴霧判定部34と同様の機能部を備えてもよい。
【0086】
例えば、薬液の噴霧に関する情報は、走行ルートにおける噴霧機走行体の位置情報であってもよい。この場合、第2制御装置60は、位置情報に基づいて、原動機55の動作を制御してもよい。すなわち、第2制御装置60は、マップデータを有しており、位置情報に基づいて、噴霧機走行体10が噴霧ルートを走行していると判定されたときに原動機55を始動させ、噴霧機走行体10が噴霧ルート以外を走行していると判定されたときに原動機55を停止させてもよい。また、第1制御装置30から第2制御装置60に送信される情報は、状態判定部33の判定結果を含んでもよい。例えば、第2制御装置60は、噴霧機走行体10が走行不可であると判定されたときに原動機55を停止してもよい。
【0087】
また、噴霧機走行体10を自律走行させる技術は、特に限定されない。例えば、圃場の走行ルートに沿ってレールが敷かれ、噴霧機走行体がレール上を走行してもよい。この場合、噴霧機走行体の位置を検出するセンサがレールに沿って設けられてもよい。
【0088】
本開示に例示される実施形態は以下のように記載され得る。
[形態1]
液体を噴霧する噴霧ノズルを有する走行体の動作制御を行う第1制御装置と、
前記噴霧ノズルに前記液体を圧送するポンプユニットの動作制御を行う第2制御装置と、を備え、
前記第1制御装置は、前記液体の噴霧に関する情報を前記第2制御装置に送信し、
前記第2制御装置は、前記ポンプユニットの状態に関する情報を前記第1制御装置に送信する、噴霧システム。
[形態2]
前記第1制御装置は、前記第2制御装置から受信した前記ポンプユニットの状態に関する情報に基づいて、前記噴霧ノズルによる噴霧の制御を行う、形態1に記載の噴霧システム。
[形態3]
前記第2制御装置は、前記第1制御装置から受信した前記液体の噴霧に関する情報に基づいて、前記ポンプユニットの動作状態を変更する、形態1又は2に記載の噴霧システム。
[形態4]
前記液体の噴霧に関する情報は、前記液体を噴霧するか否かについての情報である、形態1~3のいずれかに記載の噴霧システム。
[形態5]
前記液体の噴霧に関する情報は、前記液体を圧送する前記ポンプユニットに対するコマンドであり、
前記コマンドは、前記ポンプユニットを動作させる運転コマンド、及び、前記ポンプユニットを停止させる停止コマンドを含む、形態1~4のいずれかに記載の噴霧システム。
[形態6]
前記第1制御装置と前記第2制御装置とは、無線通信によって互いに通信可能であり、
前記第1制御装置は、前記第2制御装置との通信が切断されたと判定したときに、前記走行体(10)の走行動作を停止する、形態1~5のいずれか一項に記載の噴霧システム。
[形態7]
前記ポンプユニットは、
前記走行体(10)に搭載されておらず、
液体タンクと、前記液体タンクに貯留された液体を前記噴霧ノズルに圧送するポンプと、前記ポンプを動作させる原動機と、を含み、
前記走行体(10)の前記噴霧ノズルと、前記ポンプユニットの前記ポンプとは、巻き取り式のホースを介して接続されている、形態1~6のいずれかに記載の噴霧システム。
[形態8]
前記ポンプユニットの状態に関する情報は、前記原動機が動作しているか否かに関する情報を含む、形態7に記載の噴霧システム。
[形態9]
前記ポンプユニットは、前記液体タンクに貯留された液体の量を示す情報に基づいて前記原動機を動作させるか否かを決定する、形態7又は8に記載の噴霧システム。
[形態10]
前記ポンプユニットは、前記ポンプの温度情報に基づいて前記原動機を動作させるか否かを決定する、形態7~9のいずれかに記載の噴霧システム。
[形態11]
前記第1制御装置(30)は、前記走行体(10)が走行可能であるか否かの判定を行い、その判定結果を前記第2制御装置(60)に送信する、形態1~10のいずれかに記載の噴霧システム。
【符号の説明】
【0089】
1…噴霧システム、10…噴霧機走行体(走行体)、21…噴霧ノズル、30…第1制御装置、50…ポンプユニット、51…薬液タンク(液体タンク)、53…ポンプ、55…原動機、60…第2制御装置。