(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180384
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60P 1/54 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B60P1/54 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093656
(22)【出願日】2022-06-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】仲村 公孝
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴志
(57)【要約】 (修正有)
【課題】搭載された装置の切り替えを容易に行うことが可能な車両を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る車両は、クレーン装置1と、ウインチ装置2と、油圧回路20と、前記クレーン装置と前記ウインチ装置とを前記油圧回路に選択的に接続する切替部30と、エンジン回転数を調整するためのレバー40と、前記切替部と前記レバーとに接続された連動機構50と、を備え、前記レバーは、前記クレーン装置を操作するための前記エンジン回転数と対応した第1位置P1と、前記ウインチ装置を操作するための前記エンジン回転数と対応した第2位置P2との間で切り替え可能に設けられ、前記切替部が前記クレーン装置と接続されている場合、前記レバーは、前記第1位置に位置し、前記切替部が前記ウインチ装置と接続されている場合、前記レバーは、前記第2位置に位置している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン装置と、
ウインチ装置と、
油圧回路と、
前記クレーン装置と前記ウインチ装置とを前記油圧回路に選択的に接続する切替部と、
エンジン回転数を調整するためのレバーと、
前記切替部と前記レバーとに接続された連動機構と、を備え、
前記レバーは、前記クレーン装置を操作するための前記エンジン回転数と対応した第1位置と、前記ウインチ装置を操作するための前記エンジン回転数と対応した第2位置との間で切り替え可能に設けられ、
前記切替部が前記クレーン装置と接続されている場合、前記レバーは、前記第1位置に位置し、
前記切替部が前記ウインチ装置と接続されている場合、前記レバーは、前記第2位置に位置している、
車両。
【請求項2】
前記切替部によって前記油圧回路が前記クレーン装置から前記ウインチ装置に接続されたことに応じて、前記レバーは、前記連動機構によって前記第1位置から前記第2位置に切り替わり、前記切替部によって前記油圧回路が前記ウインチ装置から前記クレーン装置に接続されたことに応じて、前記レバーは、前記連動機構によって前記第2位置から前記第1位置に切り替わる、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記切替部は、前記クレーン装置と前記ウインチ装置とに選択的に接続された切替弁と、前記切替弁と接続された、前記切替弁を前記ウインチ装置と前記クレーン装置との間で切り替えるための切替スイッチと、を有している、
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記切替スイッチは、前記切替弁に対して複数設けられている、
請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記切替部は、前記クレーン装置と前記ウインチ装置とに選択的に接続された切替弁を有し、
前記レバーが前記第1位置から前記第2位置に切り替わったことに応じて、前記切替弁は、前記連動機構によって前記ウインチ装置と接続され、前記レバーが前記第2位置から前記第1位置に切り替わったことに応じて、前記切替弁は、前記連動機構によって前記クレーン装置と接続される、
請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、事故現場や災害現場に応じた救助工作車、特別装備車(特装車)などの車両が知られている。これらの車両には、ウインチ装置、クレーン装置、および発電機などが搭載されている。例えば、ウインチ装置およびクレーン装置は共通の油圧回路を利用するため、ウインチ装置およびクレーン装置を使用する際には、油圧回路の切り替えが必要である。
【0003】
さらに、ウインチ装置およびクレーン装置は、トランスミッションパワーテークオフを介して、車両に搭載された走行用エンジンを動力源とするため、ウインチ装置およびクレーン装置に対応したエンジン回転数に設定する必要がある。車両に搭載されたこれらの装置に関して、様々な提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、少なくとも発電機、クレーン、ウインチの複数の機器を搭載し、これら機器をエンジンコントロールユニットから出力する電圧信号により走行用エンジンの回転数を制御して駆動するようにした工作用車両が開示されている。
【0005】
当該工作用車両は、前記クレーンを駆動するためスロットル量に比例する回転数の電圧信号を出力するクレーン用アクセルセンサーと、前記クレーン以外の機器を駆動するため各機器毎に設定された定格回転の電圧信号を出力する電圧制御回路とを、切換リレーを介して前記エンジンコントロールユニットに交互に切換え可能にすると共に、該切換リレーを常時は前記クレーン用アクセルセンサー側に接続し、かつ該切換リレーの接続を、前記クレーン以外の機器の始動スイッチのオンにより前記電圧制御回路側に切り換えると共に、該電圧制御回路に設定された前記クレーン以外の機器の定格回転の電圧信号を前記発電機の電圧信号が他の機器の電圧信号に優先するようにしている。
【0006】
例えば、特許文献2には、消防工作車の制御装置が開示されている。当該消防工作車の制御装置は、共通の油圧回路を駆動系として使用した油圧作動装置であり、かつクレーン、ウインチおよび消火装置の3種類の油圧作動装置を備えた消防工作車の制御装置において、該3種類の油圧作動装置の油圧回路切替えを、以下の要件(a)と(b)の双方を満足して構成された油圧バルブ切替えスイッチを用いて行うようにしたことを特徴とする。
要件(a)…該油圧バルブ切替えスイッチが、前記3種類の油圧作動装置のそれぞれに対応して、かつ該油圧作動装置のそれぞれの機器上ないしはその近傍に設けられたものであること。
要件(b)…該油圧バルブ切替えスイッチが、モメンタリーなスイッチで構成され、前記3種類の油圧作動装置の各々が、セットコイルとリセットコイルからなるリレーの自己保持回路を有し、前記スイッチを操作することにより、該スイッチに対応した前記3種類の油圧作動装置のうちの一つの油圧作動装置の自己保持回路に前記リレーの接点を閉にする電気信号が送られると同時に、その他全ての油圧作動装置の自己保持回路に前記リレーの接点を開にする電気信号が送られて、油圧バルブの切替えがなされること。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4121801号公報
【特許文献2】特許第6250995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示された工作用車両、および上記特許文献2に開示された消防工作車の制御装置を踏まえても、車両に搭載された装置の操作に関しては、未だに種々の改善の余地がある。そこで、本発明は、搭載された装置の切り替えを容易に行うことが可能な車両を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る車両は、クレーン装置と、ウインチ装置と、油圧回路と、前記クレーン装置と前記ウインチ装置とを前記油圧回路に選択的に接続する切替部と、エンジン回転数を調整するためのレバーと、前記切替部と前記レバーとに接続された連動機構と、を備える。前記レバーは、前記クレーン装置を操作するための前記エンジン回転数と対応した第1位置と、前記ウインチ装置を操作するための前記エンジン回転数と対応した第2位置との間で切り替え可能に設けられ、前記切替部が前記クレーン装置と接続されている場合、前記レバーは、前記第1位置に位置し、前記切替部が前記ウインチ装置と接続されている場合、前記レバーは、前記第2位置に位置している。
【0010】
前記車両は、前記切替部によって前記油圧回路が前記クレーン装置から前記ウインチ装置に接続されたことに応じて、前記レバーは、前記連動機構によって前記第1位置から前記第2位置に切り替わり、前記切替部によって前記油圧回路が前記ウインチ装置から前記クレーン装置に接続されたことに応じて、前記レバーは、前記連動機構によって前記第2位置から前記第1位置に切り替わってもよい。
【0011】
前記切替部は、前記クレーン装置と前記ウインチ装置とに選択的に接続された切替弁と、前記切替弁と接続された、前記切替弁を前記ウインチ装置と前記クレーン装置との間で切り替えるための切替スイッチと、を有してもよい。前記切替スイッチは、前記切替弁に対して複数設けられてもよい。
【0012】
前記切替部は、前記クレーン装置と前記ウインチ装置とに選択的に接続された切替弁を有し、前記レバーが前記第1位置から前記第2位置に切り替わったことに応じて、前記切替弁は、前記連動機構によって前記ウインチ装置と接続され、前記レバーが前記第2位置から前記第1位置に切り替わったことに応じて、前記切替弁は、前記連動機構によって前記クレーン装置と接続されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搭載された装置の切り替えを容易に行うことが可能な車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る救助工作車の概略的な側面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る救助工作車が備える主要な構成を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る救助工作車が備える主要な構成を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る救助工作車が備える主要な構成を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る救助工作車の概略的な側面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る救助工作車が備える主要な構成を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る救助工作車が備える主要な構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、いくつかの実施形態につき図面を参照しながら説明する。各実施形態では車両の一例として救助工作車を開示するが、各実施形態の構成は消防用車両、特別装備車、および大型装置を搭載する車両などに適用することができる。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る救助工作車Vの概略的な側面図である。
図1に示すように、救助工作車Vの前後方向X、救助工作車Vの幅方向Y、救助工作車Vの鉛直方向(高さ方向)Zを定義する。これらの方向X,Y,Zは、互いに直交する方向である。
【0017】
前後方向Xの矢印が示す方向を車両後方と呼び、その反対方向を車両前方と呼ぶことがある。また、幅方向Yの矢印が示す方向を車両右方と呼び、その反対方向を車両左方と呼ぶことがある。
【0018】
救助工作車Vは、運転席が設けられたキャビンCと、キャビンCの後方に連結された後部フレームFと、複数の車輪Wと、積載庫Lと、クレーン装置1と、ウインチ装置2と、操作ボックス3と、を備えている。キャビンCおよび後部フレームFは、救助工作車Vの車体を構成する。例えば、積載庫Lの内部には、電動切断器具、電動破壊器具、バッテリなどが収容される。車体には、積載庫L以外にも、人を収容するための収容室などが設けられてもよい。
【0019】
クレーン装置1は、車両右方および車両左方に旋回可能に設けられている。クレーン装置1は、起伏可能に設けられた伸縮式のブーム4を有している。
図1に示す例において、ウインチ装置2は、車両後方に設けられているが、車両前方に設けられてもよいし、車両前方および車両後方の両方に設けられてもよい。例えば、ウインチ装置2は、ドラム、ワイヤロープなどを有している。
【0020】
図1に示す例において、操作ボックス3は、車両前方に位置するバンパーの車両左方に設けられている。操作ボックス3が設けられる位置は、この例に限られない。操作ボックス3には、後述の切替スイッチ32が設けられている。
【0021】
操作ボックス3には、他の機器を操作するためのスイッチなどがさらに設けられてもよい。救助工作車Vは、上述の機器以外にも、ポンプユニット、発電機ユニット、照明装置、およびジャッキなどをさらに備えてもよい。
【0022】
次に、本実施形態に係る救助工作車Vの主要部について説明する。
図2および
図3は、本実施形態に係る救助工作車Vが備える主要な構成を説明するための図である。
【0023】
救助工作車Vは、走行用エンジン11と、トランスミッションパワーテークオフ(以下、トランスミッションPTO12と称す)、油圧ポンプ13、油圧回路20と、切替部30と、レバー40と、連動機構50と、手動レバー60と、をさらに備えている。
図2は、一例として、救助工作車Vの初期状態(切替部30が操作される前の状態)を示している。
【0024】
トランスミッションPTO12は、救助工作車Vの走行時以外において、走行用エンジン11から動力を取り出す。トランスミッションPTO12は、走行用エンジン11と油圧ポンプ13との間に設けられている。油圧ポンプ13は、トランスミッションPTO12によって、走行用エンジン11を動力源としている。
【0025】
油圧ポンプ13とクレーン装置1との間、および油圧ポンプ13とウインチ装置2との間には、作動油が流れる油圧回路20が構成されている。トランスミッションPTO12によって取り出された駆動力によって、油圧ポンプ13は、油圧回路20を介して、クレーン装置1およびウインチ装置2に作動油を供給する。
【0026】
油圧回路20には、図示しない油圧モータなどが接続されている。クレーン装置1およびウインチ装置2は、油圧回路20に接続された、図示しないシリンダおよびモータなど有し、これらによって様々な操作が可能となるように構成されている。
【0027】
切替部30は、クレーン装置1とウインチ装置2とを油圧回路20に選択的に接続する。切替部30は、切替弁31と、切替弁31と接続された切替スイッチ32と、を有している。切替弁31は、油圧回路20の一部を構成している。
【0028】
切替弁31は、油圧ポンプ13と接続されるとともに、クレーン装置1とウインチ装置2とに選択的に接続される。他の観点からは、油圧ポンプ13から供給される作動油の供給先は、切替弁31によって切り替えることが可能である。
【0029】
切替弁31は、後部フレームF(
図1に示す)に位置している。切替弁31は、例えば、電磁弁であるが、電動弁など他の弁でもよい。
図2に示す例において、切替弁31はクレーン装置1と接続され、
図3に示す例において、切替弁31はウインチ装置2と接続されている。
【0030】
切替スイッチ32は、切替弁31から離れた位置において、切替弁31の接続先をウインチ装置2とクレーン装置1との間で切り替える切替操作を行う。切替スイッチ32は、操作ボックス3(
図1に示す)に設けられている。
【0031】
切替スイッチ32は、例えば、切替弁31と電気的に接続されているが、機械的に接続されてもよい。切替スイッチ32は、例えば、押ボタンスイッチでもよいし、トグルスイッチでもよいし、他のスイッチでもよい。
【0032】
切替スイッチ32は、例えば、オルタネイト型のスイッチである。すなわち、切替スイッチ32が一度操作されると、切替弁31が切り替わり、切替スイッチ32から手を離しても切替弁31の状態は維持し、再び切替スイッチ32を操作すると、切替弁31が切り替わる。
【0033】
切替弁31がクレーン装置1と接続された状態において、切替スイッチ32が操作されると、切替弁31の接続先がクレーン装置1からウインチ装置2に切り替えられ、油圧ポンプ13からウインチ装置2へ作動油が供給可能な状態となる。
【0034】
一方、切替弁31がウインチ装置2と接続された状態において、切替スイッチ32が操作されると、切替弁31の接続先がウインチ装置2からクレーン装置1に切り替えられ、油圧ポンプ13からクレーン装置1へ作動油が供給可能な状態となる。
【0035】
レバー40は、位置に応じて、エンジン回転数を調整する。レバー40は、スロットルレバーと呼ばれる場合もある。レバー40は、第1位置P1と、第2位置P2との間で切り替え可能に設けられている。
【0036】
図2に示す例においては、第1位置P1を実線で示し、第2位置P2を破線で示している。
図3に示す例においては、第1位置P1を破線で示し、第2位置P2を実線で示している。
【0037】
第1位置P1は、クレーン装置1を操作するためのエンジン回転数に対応した位置である。第1位置P1におけるエンジン回転数は、例えば、エンジンがアイドリング状態におけるエンジン回転数である。アイドリング状態におけるエンジン回転数は、例えば、約550rpm~約650rpmである。クレーン装置1は、エンジン回転数をアイドリング状態に調整した上で、クレーン装置用リモコン(図示しない)の操作に応じて、エンジン回転数が適宜設定され、操作することができる。
【0038】
第2位置P2は、ウインチ装置2を操作するためのエンジン回転数に対応した位置である。第2位置P2におけるエンジン回転数は、例えば、約1000rpmである。ウインチ装置2は、エンジン回転数が一定の状態において、ウインチ装置用リモコン(図示しない)によって操作することができる。レバー40の位置が第2位置P2に切り替わると、例えば、図示しないガバナによって、予め設定されたエンジン回転数に調整される。
【0039】
第1位置P1および第2位置P2に対応したエンジン回転数は予め設定されているが、図示しない制御装置などによって当該エンジン回転数の上限値などは調整可能である。第2位置P2は、例えば、第1位置P1に対して、レバー40が突出した状態であるが、この例に限られない。レバー40の形状には、様々な形状を適用することができる。
【0040】
連動機構50は、切替部30とレバー40とに接続されている。連動機構50は、切替部30による切替操作と連動して、レバー40の位置を第1位置P1と第2位置P2との間で切り替え可能に構成されている。
【0041】
連動機構50は、切替部30とレバー40とを機械的または電気的に連動させている。例えば、連動機構50は、切替部30とレバー40とを機械的に連動させている。一例として、連動機構50は、切替部30の動作(例えば、切替スイッチ32の動作、切替弁31の動作)に応じて、力をレバー40に伝達する動力伝達機構である。
【0042】
連動機構50は、例えば、ワイヤロープで形成された連動ワイヤ51を有している。一例として、切替スイッチ32によって切替弁31が動作すると、切替スイッチ32の動作または切替弁31の動作と連動するように連動ワイヤ51を介して、レバー40が第1位置P1と第2位置P2との間で動作する。
【0043】
例えば、連動機構50によって、レバー40は、第1位置P1から第2位置P2に向けて引っ張られ、第2位置P2から第1位置P1に向けて押し込まれる。
図2に示すように切替弁31がクレーン装置1と接続されている場合、レバー40は第1位置P1に位置し、
図3に示すように切替弁31がウインチ装置2と接続されている場合、レバー40は第2位置P2に位置している。
【0044】
すなわち、本実施形態に係る救助工作車Vにおいては、切替部30、レバー40、および連動機構50によって、切替弁31の接続先とレバー40の位置とが対応するように構成されている。
【0045】
手動レバー60は、切替スイッチ32によって切替弁31が動作しない場合、切替弁31を操作するためのレバーである。手動レバー60は、例えば、車体に設けられている。手動レバー60は、切替弁31と接続されている。手動レバー60と切替弁31とは、機械的に接続されてもよい、電気的に接続されてもよい。
【0046】
手動レバー60は、連動機構61によって、レバー40とさらに接続されてもよい。連動機構61は、連動機構50とは異なる連動機構として構成されてもよいし、連動機構50の一部として構成されてもよいし。
【0047】
連動機構61によって、作業者は、手動レバー60を操作することによって、クレーン装置1とウインチ装置2との切り替えだけでなく、エンジン回転数の調整を行うことが可能である。
【0048】
救助工作車Vは、操作ボックス3に設けられたパイロットランプ70(
図1に示す)をさらに備えている。パイロットランプ70は、切替弁31の動作状況を表示する。操作ボックス3で切替スイッチ32を操作する際、作業者は、パイロットランプ70によって切替弁31の接続先を確認することが可能である。
【0049】
救助工作車Vは、図示しない制御装置をさらに備えている。当該制御装置は、プロセッサ、メインメモリ、ストレージ、インターフェースなどを備え、エンジンコントロールユニット(ECU)も含まれる。
【0050】
次に、切替部30におけるクレーン装置1とウインチ装置2との間の切り替え、およびエンジン回転数の調整について、説明する。
【0051】
図2に示す例において、切替弁31はクレーン装置1と接続され、レバー40は第1位置P1に位置している。レバー40が第1位置P1に位置しているため、エンジン回転数はアイドリング状態におけるエンジン回転数である。
【0052】
まず、切替スイッチ32を操作すると切替弁31に電圧が出力され、切替弁31がクレーン装置1からウインチ装置2に接続され、作動油がウインチ装置2に供給される。上述の通り、切替部30は、連動機構50によって、レバー40と接続されている。
【0053】
そのため、切替部30によって油圧回路20がクレーン装置1からウインチ装置2に接続されたことに応じて、連動機構50によって、レバー40の位置は第1位置P1から第2位置P2に切り替わる。
【0054】
そして、レバー40の位置が第1位置P1から第2位置P2に切り替わったことに応じて、エンジン回転数がウインチ装置2の操作可能なエンジン回転数に調整される。つまり、
図2に示す状態から
図3に示す状態へと移行する。これにより、ウインチ装置用リモコンなどによって、ウインチ装置2の操作が可能となる。
【0055】
次に
図3に示す状態から
図2に示す状態への移行について、説明する。
切替弁31はウインチ装置2と接続され、レバー40は第2位置P2に位置している。レバー40は、第2位置P2に位置しているため、エンジン回転数はウインチ装置2が操作可能なエンジン回転数である。当該エンジン回転数では、クレーン装置1を操作することができない。
【0056】
まず、切替スイッチ32を操作すると切替弁31に電圧が出力され、切替弁31がウインチ装置2からクレーン装置1に接続され、作動油がクレーン装置1に供給される。切替部30によって油圧回路20がウインチ装置2からクレーン装置1に接続されたことに応じて、連動機構50によって、レバー40の位置は第2位置P2から第1位置P1に切り替わる。
【0057】
そして、レバー40の位置が第2位置P2から第1位置P1に切り替わったことに応じて、エンジン回転数がクレーン装置1の操作可能なエンジン回転数に調整される。つまり、
図3に示す状態から
図2に示す状態へと移行する。これにより、クレーン装置用リモコンなどによって、旋回やブーム4の伸縮などのクレーン装置1の操作が可能となる。
【0058】
以上のように構成された救助工作車Vであれば、切替部30の操作によって、切替弁31の接続先を切り替えることが可能であるとともに、連動機構50によって、レバー40の位置を第1位置P1と第2位置P2との間で切り替え、エンジン回転数を調整することが可能である。
【0059】
クレーン装置1およびウインチ装置2は、油圧回路20を共通の油圧回路として利用しているため、切替部30によって、油圧回路20を切り替える必要がある。さらに、クレーン装置1およびウインチ装置2を操作するためには、油圧ポンプ13の吐出量、および圧力などが異なるため、エンジン回転数を別途調整する必要がある。
【0060】
本実施形態であれば、切替スイッチ32を操作した後に、作業者が他の操作をすることなく、クレーン装置1またはウインチ装置2に対応したエンジン回転数に調整することが可能である。これにより。本実施形態であれば、搭載された装置の切り替えを容易に行うことが可能な救助工作車Vを提供することが可能である。
【0061】
作業者がレバー40を操作することによってエンジン回転数を調整する必要がないため、現場状況に応じて、クレーン装置1とウインチ装置2との間の切り替えを迅速に行うことが可能である。これにより、現場などにおける作業者の活動を妨げることなく、円滑に装置の切り替えを行うことが可能である。
【0062】
エンジン回転数の調整には熟練した作業者による調整が必要となる場合があるが、レバー40の位置によって予め設定されたエンジン回転数に調整することが可能であるため、作業者の熟練度に関わらず、クレーン装置1およびウインチ装置2の性能を確実に発揮させることが可能である。
【0063】
エンジン回転数の調整が確実に行われることでクレーン装置1およびウインチ装置2を安全に使用することが可能であるとともに、クレーン装置1およびウインチ装置2を破損させるおそれがない。
【0064】
本実施形態の切替部30は、切替弁31と電気的に接続された切替スイッチ32を有している。切替スイッチ32によって、作業者は、切替弁31から離れた位置において、切替弁31の接続先を切り替え可能である。
【0065】
本実施形態に係る救助工作車Vは、手動レバー60を備えている。これにより、切替スイッチ32によって切替弁31が動作しない場合であっても切替弁31を操作することが可能である。以上の他にも、本実施形態からは種々の好適な効果を得ることができる。
【0066】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第1実施形態における要素と同一または共通する要素には同一の符号を付し、説明を適宜に省略する。本実施形態において特に言及しない事項については、第1実施形態と同様の構成を適用できる。
【0067】
図4は、本実施形態に係る救助工作車Vが備える主要な構成を説明するための図である。本実施形態に係る救助工作車Vは、第1実施形態と比較して、切替スイッチ32の数量が相違している。切替部30は、切替弁31と接続された複数の切替スイッチ32(例えば、4つ)を有している。ただし、切替スイッチ32の数量は、3つ以下であってもよいし、5つ以上でもよい。
【0068】
切替部30が複数の切替スイッチ32を有することで、切替スイッチ32は、操作ボックス3以外に、クレーン装置1のアウトリガーの近傍、クレーン装置用リモコンの近傍、ウインチ装置用リモコンの近傍、および運転席などに設けることが可能である。切替スイッチ32を設ける位置は、上述の例に限られない。さらに、切替スイッチ32の各々の位置には、パイロットランプ70をそれぞれ設けてもよい。
【0069】
本実施形態の構成においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、複数の切替スイッチ32を設けることで、車体の周囲における複数の場所で切替部30の操作を行うことが可能である。これにより、クレーン装置1およびウインチ装置2の切り替えをより容易に行うことが可能であるとともに、切り替えに伴う作業者の移動距離を削減することが可能である。
【0070】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。上述の各実施形態における要素と同一または共通する要素には同一の符号を付し、説明を適宜に省略する。本実施形態において特に言及しない事項については、上述の各実施形態と同様の構成を適用できる。
【0071】
図5は、本実施形態に係る救助工作車Vの概略的な側面図である。
図6および
図7は、本実施形態に係る救助工作車Vが備える主要な構成を説明するための図である。本実施形態に係る救助工作車Vは、第1実施形態と比較して、レバー40が設けられている位置が相違している。
【0072】
図5に示すように、レバー40は、操作ボックス3に設けられている。切替部30は、クレーン装置1とウインチ装置2とに選択的に接続されている切替弁31を有している。
図6および
図7に示すように、レバー40は、連動機構80を介して、切替弁31と接続されている。
【0073】
連動機構80は、レバー40による切替操作と連動して、切替弁31を切り替え可能に構成されている。例えば、連動機構80は、レバー40と切替弁31とを電気的に連動させている。一例として、レバー40が動作すると、連動機構80によって切替弁31に電圧が出力され、切替弁31が動作する。
【0074】
救助工作車Vは、手動レバー60を備えている。本実施形態の手動レバー60は、レバー40の操作によって切替弁31が動作しない場合、切替弁31を操作するためのレバーである。
【0075】
次に、レバー40における第1位置P1と第2位置P2との間の切り替え、およびエンジン回転数の調整について、説明する。
【0076】
図6に示す例において、切替弁31はクレーン装置1と接続され、レバー40は第1位置P1に位置している。レバー40が第1位置P1に位置しているため、エンジン回転数はアイドリング状態におけるエンジン回転数である。
【0077】
まず、レバー40を操作し、レバー40の位置を第1位置P1から第2位置P2に切り替える。これにより、エンジン回転数がウインチ装置2の操作可能なエンジン回転数に調整される。上述の通り、レバー40は、連動機構80によって、切替弁31と接続されている。
【0078】
そのため、レバー40の位置が第1位置P1から第2位置P2に切り替わったことに応じて、連動機構80によって、切替弁31がクレーン装置1からウインチ装置2に接続される。つまり、
図6に示す状態から
図7に示す状態へと移行する。これにより、ウインチ装置用リモコンなどによって、ウインチ装置2の操作が可能となる。
【0079】
次に
図7に示す状態から
図6に示す状態への移行について、説明する。
切替弁31はウインチ装置2と接続され、レバー40は第2位置P2に位置している。レバー40は、第2位置P2に位置しているため、エンジン回転数はウインチ装置2が操作可能なエンジン回転数である。
【0080】
まず、レバー40を操作し、レバー40の位置を第2位置P2から第1位置P1に切り替える。これにより、エンジン回転数がクレーン装置1の操作可能なエンジン回転数に調整される。
【0081】
レバー40の位置が第2位置P2から第1位置P1に切り替わったことに応じて、連動機構80によって、切替弁31がウインチ装置2からクレーン装置1に接続される。つまり、
図7に示す状態から
図6に示す状態へと移行する。これにより、クレーン装置用リモコンなどによって、クレーン装置1の操作が可能となる。
【0082】
本実施形態の構成においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。本実施形態に係る救助工作車Vであれば、レバー40の操作によって、切替弁31の接続先を切り替えることが可能である。
【0083】
以上の各実施形態は、本発明の範囲をこれら実施形態にて開示した構成に限定するものではない。その他にも、用途に応じた種々の改良を車両に適用できる。なお、上述の各実施形態においては、連動機構50は連動ワイヤ51を有しているが、さらにモータやプーリなどを有してもよい。例えば、連動機構50は、モータの回転運動を利用して、レバー40の位置を切り替えるように構成してもよい。連動機構50は、リンク機構を有してもよい。
【0084】
パイロットランプ70は、操作ボックス3に設けられているが、操作ボックス3以外の車体の任意の位置に設けられてもよい。油圧回路20は、クレーン装置1およびウインチ装置2が共通に利用していたが、油圧回路20を利用するものとして、救助工作車Vは、照明装置用の発電機、油圧ジャッキなどをさらに備えてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…クレーン装置、2…ウインチ装置、3…操作ボックス、4…ブーム、11…走行用エンジン、12…トランスミッションPTO、13…油圧ポンプ、20…油圧回路、30…切替部、31…切替弁、32…切替スイッチ、40…レバー、50…連動機構、51…連動ワイヤ、60…手動レバー、70…パイロットランプ、80…連動機構、C…キャビン、F…後部フレーム、L…積載庫、P1…第1位置、P2…第2位置、V…救助工作車(車両)、W…車輪。