(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180389
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ドット状マーキング及び印字装置
(51)【国際特許分類】
B05B 7/06 20060101AFI20231214BHJP
B41J 2/045 20060101ALI20231214BHJP
B41J 2/11 20060101ALI20231214BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B05B7/06
B41J2/045
B41J2/11
B41J2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093661
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 敏
(72)【発明者】
【氏名】松本 謙二
【テーマコード(参考)】
2C057
4F033
【Fターム(参考)】
2C057AF21
2C057AG01
2C057AG12
2C057BB04
2C057BF04
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB18
4F033QD03
4F033QD15
4F033QE06
4F033QE09
4F033QE11
4F033QE14
4F033QE15
4F033QE17
4F033QF21X
(57)【要約】
【課題】印字、マーキングの乱れを防止する、ドット状印字及びマーキング装置を提供する。
【解決手段】ドット状印字及びマーキング装置1は塗料室2、圧縮空気通路3、ノズルプレート10、吐出ノズル11を備え、ノズルプレート10には、アトマイズノズル12が備えられ、アトマイズノズル12はその流路断面積がアトマイズノズル12において最も狭いスロート部26を有するラバルノズル構造であり、吐出ノズル11は段差部17を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドット状印字塗料を吐出又は吐出停止することによりドット状マーク及び印字が可能なスプレーノズルを備えたドット状マーキング及び印字装置であって、前記スプレーノズルは圧縮空気を用いて塗料を霧化するためのアトマイズノズルと、該アトマイズノズルの略中心に保持されて前記ドット状印字塗料を吐出及び吐出停止可能な吐出ノズルと、該吐出ノズルが嵌合する埋込部を有し、塗料室と前記アトマイズ部との仕切りとなる壁を備えるドット状マーキング及び印字装置において、
前記アトマイズノズルはスロート部を備え、さらに前記アトマイズノズルは、前記スロート部が前記アトマイズノズルにおける流路断面積が最も狭く構成されているラバルノズル構造であり、
前記吐出ノズルは、前記ドット状印字塗料を吐出するための口である吐出ノズル先端を備えた薄肉部と、前記塗料室と接続するための厚肉部とを有し、さらに前記吐出ノズルは前記薄肉部と前記厚肉部の境界に全周にわたって段差部を備え、前記段差部の段差の幅は、前記厚肉部の径の長さの2.5パーセント以上であることを特徴とする、ドット状マーキング及び印字装置。
【請求項2】
前記厚肉部の外周面は、ねじ加工がされていることを特徴とする、請求項1に記載のドット状マーキング及び印字装置。
【請求項3】
前記吐出ノズル先端は肉厚が0.02ミリメートル以上0.15ミリメートル以下であり、前記段差から前記吐出ノズル先端までの距離は、1ミリメートル~2ミリメートルであり、前記距離は製造誤差がプラスマイナス0.05ミリメートル以内であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のドット状マーキング及び印字装置。
【請求項4】
前記厚肉部外径は、1.5ミリメートル以下であることを特徴とする、請求項3に記載のドット状マーキング及び印字装置。
【請求項5】
前記ドット状マーキング及び印字装置はアトマイズノズルを形成するノズルプレートを備えることを特徴とする、請求項4に記載のドット状マーキング及び印字装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼鉄材料等の製品にドットマークにより印字及び図形を描画するためのドット状マーキング及び印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のドット状マーキング及び印字装置は、スプレーノズルを備えており、スプレーノズル先端にドット状印字に適した吐出ノズルを備え、その外側にアトマイズノズルを備えた二重構造を有し、この吐出ノズルの内方に弁座と球体弁体からなる吐出制御弁が形成される構造が知られている。そして、この構造を用いて、塗料を吹き付けてドット印字するためには、アトマイズノズルに圧縮空気を送り、吐出ノズル先端において塗料に高速の空気を吹き付けて霧化するエアーアトマイズ法が知られている。
【0003】
また、球体弁体はロッドを介して振動機構の、例えば電磁ソレノイドの可動鉄心に一体的に連結される。弁座と球体弁体の周辺には加圧された塗料が充満する塗料室が設けられる。可動鉄心の往復運動により吐出制御弁が開閉して吐出ノズルよりドット状液体塗料が断続的に吐出され、霧化される。より小さな塗料の粒子径を得るためには、より高速の空気を用いればよいが、従来はアトマイズノズルを流れる圧縮空気が比較的低速であった。粒子径が小さいと塗料の乾燥速度が向上するため、高速の空気を用いることができないかが検討された。
【0004】
たとえば特許文献1においては、吐出ノズルの周囲にこれを取り囲む圧縮空気噴出口を有する二重管ノズルを設けて、さらに吐出ノズルが圧縮空気噴出口より所定の距離だけ長く突出していることを特徴とするドット状印字装置が開示されている。特許文献1に開示されるドット状印字装置では、単独のスプレーノズルの構造としては優れるものの、ドット状液体塗料の吐出完了直後に圧縮空気を噴出させる方法により同様に塗料の低速微粒子を加速してテーリングの成長を防止するにとどまり、圧縮空気自体が比較的低速であるという問題は解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなことから、ラバルノズル構造を採用したアトマイズノズルとすることによって、圧縮空気の高速化を図ることとなったが、ラバルノズル構造を用いることで、新たな問題も発生した。アトマイズノズルにラバルノズル構造を用いた場合、吐出ノズルの位置の設定が非常に微妙であり、例えば吐出ノズル先端の位置が0.1ミリメートルずれるだけでも霧化状態が大きく変化してしまうという問題がでてきた。本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ラバルノズル構造を採用したドット状マーキング及び印字装置において、高速な圧縮空気によりアトマイズ可能で、かつ吐出ノズル先端の位置を適切に設定可能とすることにより、霧化状態をコントロールすることで、印字及びマーキングの乱れを防止可能なドット状マーキング及び印字装置を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明は、ドット状印字塗料を吐出又は吐出停止することによりドット状マーク及び印字が可能なスプレーノズルを備えたドット状マーキング及び印字装置であって、前記スプレーノズルは圧縮空気を用いて塗料を霧化するためのアトマイズノズルと、該アトマイズノズルの略中心に保持されて前記ドット状印字塗料を吐出及び吐出停止可能な吐出ノズルと、該吐出ノズルが嵌合する埋込部を有し、塗料室と前記アトマイズ部との仕切りとなる壁を備えるドット状マーキング及び印字装置において、前記アトマイズノズルはスロート部を備え、さらに前記アトマイズノズルは、前記スロート部が前記アトマイズノズルにおける流路断面積が最も狭く構成されているラバルノズル構造であり、前記吐出ノズルは、前記ドット状印字塗料を吐出するための口である吐出ノズル先端を備えた薄肉部と、前記塗料室と接続するための厚肉部とを有し、さらに前記吐出ノズルは前記薄肉部と前記厚肉部の境界に全周にわたって段差部を備え、前記段差部の段差の幅は、前記厚肉部の径の長さの2.5パーセント以上であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のドット状マーキング及び印字装置においては、前記厚肉部の外周面は、ねじ加工がされていることを特徴とする。
【0009】
更に、前記吐出ノズル先端は肉厚が0.02ミリメートル以上0.15ミリメートル以下であり、前記段差から前記吐出ノズル先端までの距離は、1ミリメートル~2ミリメートルであり、前記距離は製造誤差がプラスマイナス0.05ミリメートル以内であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のドット状マーキング及び印字装置では、前記厚肉部外径は、1.5ミリメートル以下であることを特徴とする。
【0011】
更に、本発明のドット状マーキング及び印字装置では、前記ドット状マーキング及び印字装置はアトマイズノズルを形成するノズルプレートを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ドット状印字塗料を吐出又は吐出停止することによりドット状マーク及び印字が可能なスプレーノズルを備えたドット状マーキング及び印字装置であって、スプレーノズルは圧縮空気を用いて塗料を霧化するためのアトマイズノズルと、該アトマイズノズルの略中心に保持されてドット状印字塗料を吐出及び吐出停止可能な吐出ノズルと、吐出ノズルが嵌合する埋込部を有し、塗料室とアトマイズ部との仕切りとなる壁を備えるドット状マーキング及び印字装置において、アトマイズノズルはスロート部を備え、さらにアトマイズノズルは、スロート部がアトマイズノズルにおける流路断面積が最も狭く構成されているラバルノズル構造であり、吐出ノズルは、ドット状印字塗料を吐出するための口である吐出ノズル先端を備えた薄肉部と、塗料室と接続するための厚肉部とを有し、さらに吐出ノズルは薄肉部と厚肉部の境界に全周にわたって段差部を備え、段差部の段差の幅は、厚肉部の径の長さの2.5パーセント以上であることを特徴とするので、アトマイズノズルを通る圧縮空気の流速を早め、かつ吐出ノズル先端の位置決めを適切にすることができるドット状マーキング及び印字装置を提供することができる。
【0013】
また、本発明のドット状マーキング及び印字装置は、厚肉部の外周面は、ねじ加工がされていることを特徴とするので、吐出ノズル先端の位置を調節することができるドット状マーキング及び印字装置を提供することができる。
【0014】
また、本発明は、吐出ノズル先端は肉厚が0.02ミリメートル以上0.15ミリメートル以下であり、段差から吐出ノズル先端までの距離は、1ミリメートル~2ミリメートルであり、距離は製造誤差がプラスマイナス0.05ミリメートル以内であることを特徴とするので、プラスマイナス0.05ミリメートルの範囲の製造誤差があっても、段差部を基準として吐出ノズル先端の位置決めを行うことができるドット状マーキング及び印字装置を提供することができる。
【0015】
さらに、厚肉部外径は、1.5ミリメートル以下であることを特徴とするので、吐出ノズルの埋込部への圧入による埋込部の変形による、隣の吐出ノズルへの影響を避けることができるドット状マーキング及び印字装置を提供することができる。
【0016】
さらに本発明においては、ドット状マーキング及び印字装置はアトマイズノズルを形成するノズルプレートを備えることを特徴とするので、圧縮空気流路、圧縮空気通路を自由に設計できるドット状マーキング及び印字装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係るドット状マーキング及び印字装置1の一例が示された概略断面図である。
【
図2】
図1のドット状マーキング及び印字装置1のアトマイズノズル12の部分を拡大した拡大概略断面図である。
【
図3】(X)は
図2の吐出ノズル11を吐出ノズル先端51方向から図示した正面図であり、(Y)は同じく吐出ノズル11を厚肉部16方向から図示した吐出ノズル11の背面図である。
【
図4】吐出ノズル11及び本実施形態の他の一例である吐出ノズル111を示した斜視図である。
【
図5】ノズルプレート10の一部を切り出し、吐出ノズル11とノズルプレート10の位置関係を示した斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る吐出ノズル11を埋込部27に圧入する様子を示した概略断面図である。
【
図7】
図6の圧入する様子を、吐出ノズル111を用い、圧入治具110を省略し、斜視図にて示した図である。
【
図8】(X)は本発明の実施形態に係る圧入治具110の断面図であり、(Y)は(X)の一部を切り出して断面を可視化した斜視図である。
【
図9】
図9は
図1のドット状マーキング及び印字装置1を図示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。まず、本実施形態に係るドット状マーキング及び印字装置について説明する。
図1は、ドット状マーキング及び印字装置1の内部構造の概略を示した概略断面図である。
図2は、
図1のアトマイズノズル12の部分を拡大して示したものである。壁18等は省略し、アトマイズノズル12および吐出ノズル11のみ図示している。
図3(X)は吐出ノズル11を
図2でいうと左方向から図示したものであり、
図3(Y)は
図2でいうと右方向から図示したものである。
図4は吐出ノズル11及び本実施形態の他の一例である吐出ノズル111を示した斜視図である。
図5はノズルプレート10を切り出して、
図1のアトマイズノズル12及び吐出ノズル11を取り出してその位置関係を示す斜視図である。
図6は、
図1のドット状マーキング及び印字装置1を作製するため、吐出ノズル11を埋込部27に圧入する様子を断面図にて示す。
図7は
図6の圧入の様子を、吐出ノズル11に代えて吐出ノズル111を用い、また圧入治具110の図示を省略して示した斜視図である。
図7では壁18のみ断面を切り出して、圧入の様子を図示している。
図8(X)は
図6の圧入治具110の断面図であり、(Y)は(X)の圧入治具110の一部を切り出して図示した斜視図である。
図9は
図1のドット状マーキング及び印字装置1を図示した概略断面図である。
なお、本開示においては、説明の便宜上、単に上側とのみ表すときは
図1、
図2、
図6において右側を指し
図9においては上側を指し、単に下側と表すときは
図1、
図2、
図6において左側を指し、
図9においては下側を指すものとする。
【0019】
図1に示すドット状マーキング及び印字装置1は、塗料室2、圧縮空気通路3及びノズルプレート10、圧縮空気通路3と塗料室2を遮る壁18、吐出ノズル11により構成されている。まず、塗料室2は、吐出ノズル11の内部に備えられた塗料流路32に塗料を圧送するために設けられており、圧送を制御するため吐出制御弁22を備える。吐出制御弁22は電磁式であってもよい。吐出制御弁22は、
図1に示されるように、弁体21と弁座20からなり、弁座20の間に挟まれた吐出ノズル11に塗料を圧送する間隔を、弁体21が弁座20に圧着し、または間隙を有するように動作することにより、制御している。弁体21は、
図1に示される棒状の可動鉄心23と接続しており、可動鉄心23の他の一端は、振動機構24に接続され、振動機構24が、上記の弁体21が弁座20と圧着または間隙を有することとなるように、動作を制御している。これにより加圧された塗料が吐出ノズル11から吐出されることとなる。
【0020】
次に圧縮空気通路3と圧縮空気流路30について詳述する。圧縮空気通路3は、図示しない圧縮空気供給源である、エアコンプレッサー等からノズルプレート10内に圧縮空気を導入するための通路である。圧縮空気通路3は、吐出ノズル11と同数設けられる圧縮空気流路30と連通しており、圧縮空気は圧縮空気通路3から圧縮空気流路30へと流れ込む構造となっている。また、圧縮空気通路3の形成方法は、吐出ノズル11にノズルプレート10をはめ込み、その間に形成される隙間を圧縮空気通路3とするものである。したがって、はめ込みにより形成された圧縮空気通路3の気密性を確保する必要から、パッキンの機能を持つ
図1では点線で示されるシート25を塗料室2側の壁18に密着するように装着している。
【0021】
圧縮空気流路30は、アトマイズ部40、スロート部26、エアー導入部42から構成されている。また、圧縮空気流路30は、アトマイズノズル12により囲まれており、吐出ノズル11を取り囲んでいる。このように、アトマイズノズル12は二重構造となっている。エアー導入部42は、圧縮空気通路3から圧縮空気を圧縮空気流路30へと導入する導入部分である。エアー導入部42は管路抵抗を低減するため円管状であることが好ましく、また吐出ノズル11の設計上の要求により、設けないとしても構わない。
【0022】
次に、
図1を図示しながらアトマイズ部40について説明する。アトマイズ部40は、塗料を吐出ノズル11が吐出及び圧縮空気で霧化させるための部位である。アトマイズ部40は、スロート部26付近よりも、その流路断面積が広いことが好ましい。このように形成することにより、圧縮空気がアトマイズ部40において加速され、吐出ノズル11から塗料が吐出される際に塗料の滴をより小さい粒子径において霧化できることとなり好適である。
【0023】
次に、2つの圧縮空気流路30同士を遮る壁である壁部31について述べる。壁部31は、従来、圧縮空気流路30ごとにその両側に設けていたが、そのように構成すると、となりあう圧縮空気流路30の間に壁31を2つ設ける構成となり、スペースに無駄が生じていた。ノズルプレート10のように、壁部31が、2つの圧縮空気流路30を遮る1枚の壁として、ノズルプレート10に設けられることで、吐出ノズル11間のピッチZの幅を従来に比して大きく減らせることとなる。
図1においては、ピッチZは、1ミリメートルから6ミリメートルの間隔であると好適である。
【0024】
図1を示しながら、ノズルプレート10についてさらに詳述する。圧縮空気通路3は外部から図示しないエアコンプレッサー等により空気を導入するための穴を有している。
図1に示されるように圧縮空気通路3は複数の圧縮空気流路30と連通している。
【0025】
これらが連通する位置関係について更に
図1の下側から上方に向かって順を追って説明すると、圧縮空気通路3は、まず
図1でみると下側の、ノズルプレート10の端部から圧縮空気流路30の圧縮空気導入部42と接続し、さらに他のスプレーノズルである、圧縮空気流路30の圧縮空気導入部42と接続していく。
【0026】
この圧縮空気通路3が、複数の圧縮空気流路30と連通する構成により、1つの圧縮空気供給源で、複数の圧縮空気流路30に圧縮空気を一度に供給することができる。
【0027】
次に圧縮空気の通過する経路について詳述する。まず、圧縮空気は、図示しないエアーコンプレッサー等から図示していない穴を通り、圧縮空気通路3に流入する。そして、アトマイズノズル12において、圧縮空気は、圧縮空気通路3から圧縮空気導入部42に流入し、圧縮空気流路30内部を通過し、スロート部26,アトマイズ部40を経て、圧縮空気噴出口52から噴出する。アトマイズ部40においては、吐出ノズル先端51から塗料の滴が吐出され、圧縮空気がこれを霧化、加速するようになっている。
【0028】
次に
図2を示しながら、アトマイズノズル12の有するスロート部26について説明する。アトマイズノズル12は、圧縮空気導入部42はその流路断面積が広く、スロート部26においてその流路断面積が最も狭くなり、アトマイズ部40においては末広がりとなるラバルノズル構造となっている。ラバルノズル構造とすることによって、スロート部26以降の圧縮空気の速さが音速を超えることが可能となるため、吐出ノズル11から吐出される塗料の粒子径を小さくすることができ、好ましい。
【0029】
また、
図2に示すように、吐出ノズル11は、薄肉部15、厚肉部16を備え、また薄肉部15と厚肉部16の境に段差部17を備えている。薄肉部15は、その肉厚が0.02ミリメートルから0.15ミリメートルであることが好ましい。
図3(X)は吐出ノズル11を吐出ノズル先端51方向から見た正面図であり、
図3(Y)は吐出ノズル11を厚肉部16からの方向から見た図であり、
図3(X)とは逆方向から見た背面図である。
図3に示されるように、塗料流路32の外縁である薄肉部内縁、薄肉部外縁、厚肉部外縁はいずれも中心点Оから同心円状に構成される。
図3(X)に示される、塗料流路32の流路の内径である吐出ノズル内径は0.1ミリメートル~0.2ミリメートルの範囲で塗料の吐出量に応じて適宜設計されることが好ましい。この場合、吐出ノズル先端の外径は、0.14ミリメートル~0.5ミリメートルとなり、薄肉部15は、その肉厚αが0.02ミリメートルから0.15ミリメートルであることが好ましい。このように構成することで、圧縮空気の流れの阻害要因をより小さくすることができ、その結果より小さな粒子径を得ることができる。
【0030】
また、薄肉部15をこのように薄くすることで、後述するような埋込部27への圧入について、薄肉部15をのみを押圧する方法で圧入すると、薄肉部15が変形してしまうおそれがある。そのため、段差部17を設けて、段差部17を押圧して圧入すると、段差部17を基準として、吐出ノズル先端51の位置決めを行うことができ、好ましい。このように、位置決めにあたり段差部17を基準とするためには、
図2に示す、段差部17から吐出ノズル先端51の間の長さである、距離Vの長さは、1~2ミリメートルであり、かつ製造誤差がプラスマイナス0.05ミリメートルの範囲であることが好ましい。段差部17の位置は、距離Vとして、1ミリメートル以上の間隔をもって段差を設けることにより、空気の流れを妨げる程度を著しく少なくすることができ、また、距離Vは、2ミリメートル以下であることにより、吐出ノズル先端51の位置決めをすることが容易となる。
【0031】
続けて、
図3(X)を示しながら、段差部17についてさらに詳述する。段差部17の段差の幅βは、
図3(Y)に示す厚肉部16の外径Σの長さの2.5パーセント以上の長さであると好適である。段差の幅βがこのように構成されることで、厚肉部16を埋込部27に圧入する際に、押圧がしやすく、好ましい。また、
図4や
図3(Y)に示すように、吐出ノズル11,111の配列の際のピッチZが2ミリメートル以下の場合、厚肉部16の外径Σは1.5ミリメートル以下であることが好ましく、1ミリメートル以下であると更に好ましい。厚肉部外径Σがこれよりも大きいと、壁18の変形の影響により、隣の吐出ノズル11,111の吐出ノズル先端51の位置に影響を与えてしまうおそれがある。厚肉部116についても同様である。
【0032】
次に
図4を示しながら、吐出ノズル11と、本実施形態の他の一例である吐出ノズル111について詳述する。吐出ノズル11が、薄肉部15、厚肉部16、段差部17を有するのに対応して、吐出ノズル111も薄肉部115、厚肉部116、段差部17を備える。吐出ノズル11と吐出ノズル111が異なる点としては、吐出ノズル先端51付近のみが、吐出ノズル111では吐出方向にむかって先細りの、角度のついたテーパー状となっているのに対し、吐出ノズル11においては、薄肉部15全体が吐出方向にむかってゆるやかなテーパー状となっている点がまず異なる。次に、吐出ノズル11の厚肉部16は単に円筒状であるのに対し、吐出ノズル111の厚肉部116は一部がねじとなるように加工して設けられている点も異なる。ねじは不完全ねじでも完全ねじでもよく、加工方法も転造加工、切削加工など既知の方法が適宜選択されてよい。また、本開示において、吐出ノズル11を用いる説明や図において、吐出ノズル111を代わりに用いることについても同様に好ましい。その他の点は吐出ノズル11と吐出ノズル111に違いはない。
【0033】
また、吐出ノズル11の薄肉部15に薄肉部115のような吐出ノズル先端51付近のみをテーパー状とすることなど両者の構成を組みあわせても同様に好ましい。テーパー状に構成することで、圧入治具110を吐出ノズル11、111の薄肉部15,115に挿入する際に、これが容易となり、また圧入治具110を用いて
図6のように、吐出ノズル11,111を埋込部27に圧入する際にも、段差部17だけでなく、テーパー部分も圧入治具110によって押圧されるため、吐出ノズル11,111が変形しないように圧入される際の、耐荷重性が増加し、好ましい。このため、圧入治具110のテーパー部分も吐出ノズル11,111の薄肉部15,115に沿うように構成されることがより好ましい。
【0034】
次に
図5を示しながら、吐出ノズル11とアトマイズノズル12の位置関係について詳述する。アトマイズノズル12は既に説明したように、スロート部26の流路断面積が最も狭く、それ以外の部位がスロート部より広い、ラバルノズル構造となっている。スロート部26付近に吐出ノズル先端51が位置している。スロート部26付近において、圧縮空気の流速が音速を超えるほどの速度を有することとなるため、吐出ノズル先端51の位置が0.1ミリずれるだけでも、吐出ノズル11から吐出される塗料の印字模様は、大きくずれてしまうこととなる。このため、吐出ノズル先端51の位置決めが特に重要である。
【0035】
図6は、吐出ノズル11が圧入治具110により壁18の有する埋込部27に圧入される様子を断面図で示している。埋込部27は、壁18に設けられており、塗料室2に連通している。塗料室2の塗料を、吐出ノズル11,111を嵌合させることで、吐出ノズル11,111の塗料流路32に圧送できるように設けられている。まず、
図6を参照しながら吐出ノズル11の埋込部27へ圧入する際の手順を詳述する。まず、吐出ノズル11は、その薄肉部15の側から、圧入治具110に嵌合される。次に、圧入治具110を把持しながら吐出ノズル11の厚肉部16を埋込部27に押し当て、圧入する。次に、圧入治具110が壁18と接した時点で圧入を完了する。圧入治具110は圧入が完了された後、吐出ノズル11から取り外す。この手順を、圧入治具110を省略して、吐出ノズル11に代えて吐出ノズル111を用いた場合を、
図7に示す。
【0036】
この
図7を示しながら、吐出ノズル111の圧入方向Xであり、埋込部27に吐出ノズル111を圧入する際の様子を示す。
図7に示されるように、吐出ノズル111は、その厚肉部116を、図示しない圧入治具110を用いて、壁18に設けられた埋込部27に、圧入方向を圧入方向Xとして、圧入する。
図7では壁18のみ断面を切り出して図示している。この際、製造誤差等により、吐出ノズル先端51の位置が設計通りではなく、ずれることがある。吐出ノズル先端51の位置がずれると、アトマイズノズル12がラバルノズル構造であり、そのスロート部26付近は圧縮空気の流れが音速を超えることもあることから、吐出ノズル先端51の位置の少しのずれにより大きな塗料の吐出方向のずれとなり、印字性能が変化してしまう。吐出ノズル111を圧入した後に、吐出ノズル先端51の位置を調節するため、厚肉部116に設けられたねじにより、吐出ノズル111を、X方向に対して周方向となるW方向あるいはy方向に回転させることができる。
【0037】
この位置ずれに対する吐出ノズル先端51の位置の調節を行うため、ねじピッチは厚肉部116の外径が0.6ミリメートル~0.8ミリメートルの場合に0.15ミリメートル、~0.2ミリメートルであると好ましい。ねじピッチが0.15ミリメートルの場合は、吐出ノズル111を45度回転させることで、約0.02ミリメートル圧入方向ないしその反対方向に吐出ノズル先端51を移動させることができることとなる。このようにねじを厚肉部116に設けることで、0.01ミリメートル単位で吐出ノズル先端51の位置を調整することができ、好ましい。
【0038】
次に
図8を示しながら本発明の圧入治具110について詳述する。圧入治具110は
図8(X)に示すように、段差受120を有する。段差受120は
図6で示すように、段差部17を面で押圧するものである。段差受120の形状は平面状でも傾きがあってもよく、段差部17を面で押圧できる形状であればよいが、
図8(Y)や
図6に示すように、圧入方向Xに対して垂直に交わるように形成されるのが押圧するうえで好ましい。また、段差受120から圧入治具110の開口部までの長さは適宜設計されるが、吐出ノズル11、111を押圧する際の吐出ノズル先端51の位置決めのため、予め定められた長さとなる。
【0039】
圧入治具110は、硬度、強度が高く荷重を受けても変形しにくく熱膨張が少ない材質が好ましい。具体的には、合金工具鋼(SKD11)は、耐摩耗性に優れ高硬度の合金であり、線膨張率は11.7×10^―6/℃と高くない。圧入時の温度などの影響を受けにくくするため、圧入治具110に吐出ノズル11,111が入る長さは極力短くすることが好ましい。また、吐出ノズル11、111の圧入治具110に入る長さが短いことで、吐出ノズル先端51の位置決めも容易となり、好ましい。圧入治具110に入る吐出ノズル11,111の部位は、薄肉部15,115が主となる。このことから、
図2に示す、段差部17から吐出ノズル先端51の間の長さである、距離Vの長さは、2ミリメートル以下であり、かつ製造誤差がプラスマイナス0.05ミリメートルの範囲であることが好ましいといえる。
【0040】
図9は、本実施形態に係るドット状マーキング及び印字装置1を示した概略断面図である。
図9に示されるように、複数の吐出ノズル11が列状に並んでいる。このことにより、印字速度を高い速度で保つことができることとなる。
【0041】
本開示は、検査された被印字物に印字ないしマーキングをする目的で、好適に用いることができる。しかしこれに限られず、ドット状のマーキング及び印字が必要なパッケージや検定済の部品等において、広く用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ドット状マーキング及び印字装置
2 塗料室
3 圧縮空気通路
10 ノズルプレート
11、111 吐出ノズル
12 アトマイズノズル
15,115 薄肉部
16,116 厚肉部
17 段差部
18 壁
20 弁座
21 弁体
22 吐出制御弁
23 可動鉄心
24 振動機構
25 シート
26 スロート部
27 埋込部
30 圧縮空気流路
31 壁部
32 塗料流路
40 アトマイズ部
42 圧縮空気導入部
51 吐出ノズル先端
52 圧縮空気噴出口
110 圧入治具
120 段差受
О 中心点
V 距離
X 圧入方向
Y、W 回転方向
Z ピッチ