(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180392
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置、位相補正方法、および撮像制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093667
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 昂広
(72)【発明者】
【氏名】別宮 光洋
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB39
4C096AB44
4C096AB46
4C096AC01
4C096AD06
4C096AD07
4C096AD14
4C096BA19
4C096BB08
4C096DC04
4C096DC35
(57)【要約】
【課題】位相補正を適切に実行すること。
【解決手段】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間の差により2以上の観察対象に関する複素信号の位相差がπとなる条件で反転回復法を用いて収集されたMRデータを取得する取得部と、MRデータに基づいて少なくとも位相データを生成する位相データ生成部と、位相データの位相角を2n(nは自然数)倍する第1逓倍部と、2n倍した位相角を有する位相データの位相の折り返しを除去する折り返し除去部と、折り返しが除去された位相データの位相角を1/(2n)倍する第2逓倍部と、1/(2n)倍した位相角を有する位相データに対して複素共役を適用して、複素信号に対する位相の補正に用いられる位相補正マップを生成する補正マップ生成部と、位相補正マップを用いてMRデータの位相補正を行う位相補正部とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間の差により前記2以上の観察対象に関する複素信号の位相差がπとなる条件で、反転回復法を用いて収集された磁気共鳴データを取得する取得部と、
前記磁気共鳴データに基づいて、少なくとも位相データを生成する位相データ生成部と、
前記位相データにおける位相角を2n(nは自然数)倍する第1逓倍部と、
前記2n倍した位相角を有する位相データの位相の折り返しを除去する折り返し除去部と、
前記折り返しが除去された位相データの位相角を1/(2n)倍する第2逓倍部と、
前記1/(2n)倍した位相角を有する位相データに対して複素共役を適用することで、前記複素信号に対する位相の補正に用いられる位相補正マップを生成する補正マップ生成部と、
前記位相補正マップを用いて、前記磁気共鳴データの位相補正を行う位相補正部と
を備える磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記折り返し除去部は、前記2n倍された位相角を有する位相データに対して低域通過フィルタを適用した位相データの位相の折り返しを除去する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記磁気共鳴データに基づいて前記複素信号を有する複素画像を生成し、
前記複素画像と前記位相補正マップとに基づいて、前記複素信号の位相が補正された位相補正複素画像を生成し、
前記位相補正複素画像に基づいて、前記位相補正複素画像の実部画像を生成する画像生成部をさらに備える
請求項1または2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間の差により前記2以上の観察対象に関する複素信号の位相差がπとなる条件で、反転回復法を用いて収集された磁気共鳴データを取得し、
前記磁気共鳴データに基づいて、少なくとも位相データを生成し、
前記位相データにおける位相角を2n(nは自然数)倍し、
前記2n倍した位相角を有する位相データの位相の折り返しを除去し、
前記折り返しが除去された位相データの位相角を1/(2n)倍し、
前記1/(2n)倍した位相角を有する位相データに対して複素共役を適用することで、前記複素信号に対する位相の補正に用いられる位相補正マップを生成し、
前記位相補正マップを用いて、前記磁気共鳴データの位相補正を行うこと、
を備える位相補正方法。
【請求項5】
2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間の差により前記2以上の観察対象に関する複素信号の位相差がπとなる条件で、反転回復法を用いて磁気共鳴データを収集すること、
を備える撮像制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置、位相補正方法、および撮像制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置において、観察対象によっては実画像が生成される。このとき、実画像における白黒の信号ムラを低減するために、実画像の生成において位相補正が実施される。位相補正では、事前撮像により生成されたテンプレート画像を用いることがある。この場合、撮像時間が増大する問題がある。また、テンプレート画像を用いることなく位相補正を実行する技術があるが、この場合、観察対象によっては、位相補正を実行したとしても、信号ムラの影響が実画像に残ることがある。また、当該技術において、実画像において負の信号が強い領域をマスクして位相補正を実行することで、実画像における信号ムラの影響を低減する技術があるが、マスクのための閾値の設定などの最適化は、困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、位相補正を適切に実行することにある。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、取得部と、位相データ生成部と、第1逓倍部と、折り返し除去部と、第2逓倍部と、補正マップ生成部と、位相補正部と、を備える。取得部は、2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間の差により前記2以上の観察対象に関する複素信号の位相差がπとなる条件で、反転回復法を用いて収集された磁気共鳴データを取得する。位相データ生成部は、前記磁気共鳴データに基づいて、少なくとも位相データを生成する。第1逓倍部は、前記位相データにおける位相角を2n(nは自然数)倍する。折り返し除去部は、前記2n倍した位相角を有する位相データの位相の折り返しを除去する。第2逓倍部は、前記折り返しが除去された位相データの位相角を1/(2n)倍する。補正マップ生成部は、前記1/(2n)倍した位相角を有する位相データに対して複素共役を適用することで、前記複素信号に対する位相の補正に用いられる位相補正マップを生成する。位相補正部は、前記位相補正マップを用いて、前記磁気共鳴データの位相補正を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の一例を示すブロック図。
【
図2】
図2は、実施形態に係るパルスシーケンスの一例を示す図。
【
図3】
図3は、実施形態に係り、位相データの一例と、位相データにおける点線の枠内おける脳脊髄液(CSF)と白質(WM)との位相角の一例とを示す図。
【
図4】
図4は、実施形態に係り、第1逓倍位相データの一例と、第1逓倍位相データにおける点線の枠内おける脳脊髄液(CSF)と白質(WM)との位相角の一例とを示す図。
【
図5】
図5は、実施形態に係る位相補正処理の概要を示す図。
【
図6】
図6は、実施形態に係り、位相補正処理の手順の一例を示すフローチャート。
【
図7】
図7は、実施形態に係り、第1逓倍処理の前後における位相データと、実画像との差異の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、磁気共鳴イメージング装置、および位相補正方法の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明は適宜省略する。実施形態における機能は、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:以下、MRIと呼ぶ)装置に限定されず、例えば、PET(Positron Emission Tomography:陽電子放出コンピュータ断層撮影)-MRI装置、SPECT(single photon emission computed tomography:単一光子放出コンピュータ断層撮影)-MRI装置などにより実現されてもよい。
【0008】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係るMRI装置100の一例を示す図である。
図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石101と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源105と、寝台107と、寝台制御回路(寝台制御部)109と、送信回路113と、送信コイル115と、受信コイル117と、受信回路119と、撮像制御回路(収集部)121と、システム制御回路(システム制御部)123と、記憶装置125と、画像処理装置1とを備える。
【0009】
静磁場磁石101は、中空の略円筒状に形成された磁石である。静磁場磁石101は、内部の空間に略一様な静磁場を発生する。静磁場磁石101としては、例えば、超伝導磁石等が使用される。
【0010】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、円筒形の冷却容器の内面側に配置される。傾斜磁場コイル103は、傾斜磁場電源105から個別に電流供給を受けて、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生されるX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場、位相エンコード用傾斜磁場および周波数エンコード用傾斜磁場(リードアウト傾斜磁場ともいう)を形成する。スライス選択用傾斜磁場は、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴信号(以下、MR(Magnetic Resonance)信号と呼ぶ)の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。
【0011】
傾斜磁場電源105は、撮像制御回路121の制御により、傾斜磁場コイル103に電流を供給する電源装置である。
【0012】
寝台107は、被検体Pが載置される天板1071を備えた装置である。寝台107は、寝台制御回路109による制御のもと、被検体Pが載置された天板1071を、ボア111内へ挿入する。
【0013】
寝台制御回路109は、寝台107を制御する回路である。寝台制御回路109は、入出力インターフェース17を介した操作者の指示により寝台107を駆動することで、天板1071を長手方向および上下方向、場合によっては左右方向へ移動させる。
【0014】
送信回路113は、撮像制御回路121の制御により、ラーモア周波数で変調された高周波パルスを送信コイル115に供給する。例えば、送信回路113は、発振部や位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、RFアンプなどを有する。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数のRFパルスを発生する。位相選択部は、発振部によって発生したRFパルスの位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力されたRFパルスの周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変換部から出力されたRFパルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。RFアンプは、振幅変調部から出力されたRFパルスを増幅して送信コイル115に供給する。
【0015】
送信コイル115は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRF(Radio Frequency)コイルである。送信コイル115は、送信回路113からの出力に応じて、高周波磁場に相当するRFパルスを発生する。
【0016】
受信コイル117は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルである。受信コイル117は、高周波磁場によって被検体Pから放射されるMR信号を受信する。受信コイル117は、受信されたMR信号を受信回路119へ出力する。受信コイル117は、例えば、1以上、典型的には複数のコイルエレメントを有するコイルアレイである。以下、説明を具体的にするために、受信コイル117は、複数のコイルエレメントを有するコイルアレイとして説明する。
【0017】
なお、受信コイル117は、一つのコイルエレメントにより構成されてもよい。また、
図1において送信コイル115と受信コイル117とは別個のRFコイルとして記載されているが、送信コイル115と受信コイル117とは、一体化された送受信コイルとして実施されてもよい。送受信コイルは、被検体Pの撮像部位に対応し、例えば、頭部コイルのような局所的な送受信RFコイルである。
【0018】
受信回路119は、撮像制御回路121の制御により、受信コイル117から出力されたMR信号に基づいて、デジタルのMR信号としての磁気共鳴データ(以下、MRデータと呼ぶ)を生成する。具体的には、受信回路119は、受信コイル117から出力されたMR信号に対して各種信号処理を施した後、各種信号処理が施されたデータに対してアナログ/デジタル(A/D(Analog to Digital))変換して、MRデータを生成する。受信回路119は、生成されたMRデータを、撮像制御回路121に出力する。例えば、MRデータは、コイルエレメントごとに生成され、コイルエレメントを識別するタグとともに、撮像制御回路121に出力される。
【0019】
撮像制御回路121は、処理回路15から出力された撮像プロトコルに従って、傾斜磁場電源105、送信回路113及び受信回路119等を制御し、被検体Pに対する撮像を行う。撮像プロトコルは、検査の種類に応じたパルスシーケンスを有する。撮像プロトコルには、傾斜磁場電源105により傾斜磁場コイル103に供給される電流の大きさ、傾斜磁場電源105により電流が傾斜磁場コイル103に供給されるタイミング、送信回路113により送信コイル115に供給される高周波パルスの大きさや時間幅、送信回路113により送信コイル115に高周波パルスが供給されるタイミング、受信コイル117によりMR信号が受信されるタイミング等が定義されている。撮像制御回路121は、傾斜磁場電源105、送信回路113及び受信回路119等を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路119からMRデータを受信すると、受信したMRデータを画像処理装置1等へ転送する。
【0020】
撮像制御回路121は、例えばプロセッサにより実現される。撮像制御回路121は、撮像制御部に対応する。撮像制御回路121は、例えば、被検体Pにおける2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間T1の差により当該2以上の観察対象に関する複素信号の位相差がπとなる条件(以下、π条件と呼ぶ)を有するパルスシーケンスを実行する。具体的には、撮像制御回路121は、π条件で、反転回復(Inversin Recovery:以下、IRと呼ぶ)法を用いたパルスシーケンスにより、被検体Pに対して磁気共鳴撮像を実行する。以上により、撮像制御回路121は、π条件でIR法を用いてMRデータを収集する。
【0021】
以下、説明を具体的にするために、観察対象は、例えば、脳脊髄液(cerebrospinal fluid:以下、CSFと呼ぶ)と白質(White Matter:以下、WMと呼ぶ)であるものとする。なお、観察対象は、上記に限定されず、例えば、CSFと灰白質(Gray Matter:以下、GMと呼ぶ)、正常心筋と障害心筋、WMとGMと脂肪などであってもよい。例えば、正常心筋と障害心筋、WMとGMと脂肪などの場合、π条件でPSIR(Phase Sensitive Inversion Recovery)法を用いたシーケンスで実行されてもよい。
【0022】
図2は、本実施形態において実行されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
図2に示すように、反転パルスIRPの印加後、所定の時間PTが経過したのちに、MRデータの収集MAが実行される。
図2において時間の時間的変化を示す2つの曲線(ST1、LT1)のうち、曲線ST1は、曲線LT1より短い緩和時間T1を示している。曲線ST1に対応する観察対象は、例えば、CSFである。また、曲線LT1に対応する観察対象は、例えば、WMである。このとき、所定の時間PTは、CSFとWMとに関する縦磁化の緩和時間T1の差により、CSFとWMとに関する複素信号の位相差がπとなるπ条件により、予め設定される。
図2に示すパルスシーケンスを実行することで、撮像制御回路121は、MRデータを収集する。収集されたMRデータは、メモリ13に記憶される。
【0023】
上記説明では、「プロセッサ」が各機能に対応するプログラムをメモリ13から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0024】
プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサはメモリ13に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、メモリ13にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。また、単一の記憶回路が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路は個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0025】
システム制御回路123は、ハードウェア資源として図示していないプロセッサ、ROM(Read-Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ等を有し、システム制御機能によりMRI装置100を制御する。具体的には、システム制御回路123は、記憶装置125に記憶されたシステム制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開されたシステム制御プログラムに従って本MRI装置100の各回路を制御する。例えば、システム制御回路123は、入出力インターフェース17を介して操作者から入力された撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを記憶装置125から読み出す。システム制御回路123は、撮像プロトコルを撮像制御回路121に送信し、被検体Pに対する撮像を制御する。システム制御回路123は、例えばプロセッサにより実現される。なお、システム制御回路123は、処理回路15に組み込まれてもよい。このとき、システム制御機能は処理回路15により実行され、処理回路15は、システム制御回路123の代替として機能する。システム制御回路123は、システム制御部に対応する。
【0026】
記憶装置125は、システム制御回路123において実行される各種プログラム、各種撮像プロトコル、撮像プロトコルを規定する複数の撮像パラメータを含む撮像条件等を記憶する。記憶装置125は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、HDD(Hard disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、光ディスク等である。また、記憶装置125は、CD(Compact Disc)-ROMドライブやDVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、フラッシュメモリ等の可搬型記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。なお、記憶装置125に記憶されるデータは、メモリ13に記憶されてもよい。このとき、メモリ13は、記憶装置125の代替として機能する。
【0027】
画像処理装置1は、通信インターフェース11と、メモリ13と、処理回路15とを有する。
図1および
図2に示すように、画像処理装置1において、通信インターフェース11と、メモリ13と、処理回路15とはバスにより電気的に接続されている。
図1および
図2に示すように、画像処理装置1は、通信インターフェース11を介して、ネットワークに接続されている。ネットワークには、例えば、各種モダリティや、HIS、放射線情報システム(RIS:Radiology Information System)等の医療機関内の情報処理システムと互いに通信可能に接続される。
【0028】
通信インターフェース11は、例えば、被検体Pに対する検査において当該被検体Pを撮像する各種モダリティや、病院情報システム(Hospital Information System:HIS)、医用画像管理システム(Picture Archiving and Communication Systems:PACS)などとの間でデータ通信を行う。通信インターフェース11と各種モダリティおよび病院情報システムとの通信の規格は、如何なる規格であっても良いが、例えば、HL7(Health Level 7)、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)、又はその両方等が挙げられる。
【0029】
メモリ13は、種々の情報を記憶する記憶回路により実現される。例えば、メモリ13は、HDDやSSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ13は、記憶部に相当する。なお、メモリ13は、HDDやSSD等以外にも、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、CD(Compact Disc)およびDVD(Digital Versatile Disc)などの光学ディスク、可搬性記憶媒体や、RAM等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。
【0030】
メモリ13は、処理回路15により実現される取得機能150、位相データ生成機能151、逓倍機能153、位相アンラップ機能155、補正マップ生成機能157、および画像生成機能159を、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶する。メモリ13は、取得機能150により撮像制御回路121から取得されたMRデータを記憶する。また、メモリ13は、位相データ生成機能151により生成された位相データを記憶する。
【0031】
また、メモリ13は、補正マップ生成機能157により生成された位相補正マップを記憶する。位相補正マップは、複素画像における複素信号に対する位相補正に用いられるマップである。メモリ13は、MRデータに基づいて画像生成機能159により生成された複素画像を記憶する。メモリ13は、画像生成機能159により位相が補正された位相補正複素画像を記憶する。位相補正複素画像は、複素画像と位相補正マップとに基づいて、画像生成機能159により位相が補正された複素画像である。また、メモリ13は、位相補正複素画像に基づいて生成された実部画像を記憶する。
【0032】
処理回路15は、画像処理装置1の全体の制御を行う。処理回路15は、上述のプロセッサなどにより実現される。処理回路15は、取得機能150、位相データ生成機能151、逓倍機能153、位相アンラップ機能155、補正マップ生成機能157、および画像生成機能159などを備える。逓倍機能153は、第1逓倍機能1531と、第2逓倍機能1532とを有する。すなわち、逓倍機能153は、第1逓倍機能1531と、第2逓倍機能1532とにより実現される機能を有する。取得機能150、位相データ生成機能151、逓倍機能153、位相アンラップ機能155、補正マップ生成機能157は、複素画像に対する位相補正の前処理に相当する。取得機能150、位相データ生成機能151、逓倍機能153、位相アンラップ機能155、補正マップ生成機能157、および画像生成機能159をそれぞれ実現する処理回路15は、取得部、位相データ生成部、逓倍部、折り返し除去部、補正マップ生成部、および画像生成部に相当する。また、第1逓倍機能1531と第2逓倍機能1532とをそれぞれ実現する処理回路15は、第1逓倍部と第2逓倍部とに相当する。
【0033】
取得機能150、位相データ生成機能151、逓倍機能153、位相アンラップ機能155、補正マップ生成機能157、および画像生成機能159などの各機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ13に記憶されている。例えば、処理回路15は、プログラムをメモリ13から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路15は、取得機能150、位相データ生成機能151、逓倍機能153、位相アンラップ機能155、補正マップ生成機能157、および画像生成機能159などの各機能を有することとなる。
【0034】
処理回路15は、取得機能150により、2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間の差により2以上の観察対象に関する複素信号の位相差がπとなる条件で、反転回復法を用いて収集された磁気共鳴データを取得する。なお、画像処理装置1により実現される機能がMRI装置100に搭載されず、例えばPACSサーバなどの画像処理サーバ、またはクラウドなどに搭載される場合、取得機能150は、π条件で反転回復法を用いて収集されたMRデータを、MRI装置または画像サーバなどから、取得する。取得機能150は、取得されたMRデータを、メモリ13に記憶させる。
【0035】
処理回路15は、位相データ生成機能151により、MRデータに基づいて、少なくとも位相データを生成する。具体的には、位相データ生成機能151は、MRデータに対するフーリエ変換により生成された複素画像に基づいて、位相データを生成する。当該位相データは、複素画像における位相画像に相当する。位相画像における複数のピクセル各々のデータは、位相角を示している。複素画像から位相画像の生成は、既知の方法により実施可能であるため、説明は省略する。なお、位相データの生成は、画像生成機能159により実現されてもよい。このとき、位相データ生成機能151により実現される機能は、画像生成機能159により、実施されることとなる。
【0036】
図3は、位相データPDと位相データPDにおける点線の枠内おけるCSFとWMとの位相角の一例を示す図である。
図3に示すように、WMの位相角がθである場合、CSFの位相角は、θ+πとなる。すなわち、WM=exp(iθ)=cosθ+isinθであり、CSF=exp(i(θ+π))=cos(θ+π)+isin(θ+π)である。
【0037】
処理回路15は、第1逓倍機能1531により、位相データにおける位相角を2n(nは自然数)倍する。例えば、位相画像における画素(x、y)における位相角がθ(x、y)である場合、第1逓倍機能1531は、位相角θ(x、y)に、2×nを乗じて、2×n×θ(x、y)を有する位相データ(以下、第1逓倍位相データと呼ぶ)を生成する。より詳細には、位相データがexp(iθ(x、y))で表される場合、第1逓倍機能1531は、位相データを2n乗する。このとき、第1逓倍位相データは、(exp(iθ(x、y)))^2n=exp(2niθ(x、y))となる。第1逓倍機能1531は、位相データにおける位相角を2n倍した第1逓倍位相データを、メモリ13に記憶させる。以下、説明を具体的にするために、nは、1であるものとする。このとき、第1逓倍機能1531は、位相データであるexp(iθ(x、y))を2乗することで、exp(2iθ(x、y))を示す第1逓倍位相データを生成する。
【0038】
図4は、第1逓倍位相データMPDと、第1逓倍位相データMPDにおける点線の枠内おけるCSFとWMとの位相角の一例を示す図である。
図4に示すように、2乗後の白質WM’(=WM×WM)の位相角は、2θとなる。すなわち、WM’=exp(i2θ)=cos2θ+isin2θである。また、2乗後の脳脊髄液CSF’(=CSF×CSF)の位相角は、2θ+2πとなる。すなわち、CSF=exp(i(2θ+2π))=exp(i2θ)×exp(2πi)=exp(i2θ)=cos(2θ)+isin(2θ)である。このため、
図4に示すように、2乗後の白質WM’と2乗後の脳脊髄液CSF’との位相はそろうこととなる。
【0039】
処理回路15は、位相アンラップ機能155により、2n倍した位相角を有する位相データの位相の折り返しを除去する。例えば、位相アンラップ機能155は、第1逓倍位相データに対して低域通過フィルタを適用する。低域通過フィルタの適用により、位相アンラップ機能155は、第1逓倍位相データにおける高周波成分、すなわち大まかな位相変化に寄与しない成分を除去する。次いで、位相アンラップ機能155は、2n倍された位相角を有する位相データに対して低域通過フィルタを適用した位相データの位相の折り返しを除去する。例えば、位相アンラップ機能155は、位相の折り返しに伴って位相の折り返し点における位相の不連続性を除去(解消)する。すなわち、位相アンラップ機能155により実現される位相アンラップ処理は、例えば、当該不連続性を示す部分における位相角の値を、当該折り返し点の近傍の位相角の値に対して連続的となるように修正する処理である。位相アンラップ機能155により実現される位相アンラップ処理の具体的な処理内容などは、既知であるため、説明は省略する。
【0040】
処理回路15は、第2逓倍機能1532により、折り返しが除去された位相データ(以下、アンラップ後位相データと呼ぶ)の位相角を1/(2n)倍する。n=1の場合、具体的には、第2逓倍機能1532は、折り返しが除去された第1逓倍位相データに対して、平方根を取る。これにより、折り返しが除去された第1逓倍位相データにおける位相角は、元のθに戻る。
【0041】
処理回路15は、補正マップ生成機能157により、アンラップ後位相データの位相角を1/(2n)倍した位相角を有する位相データ(以下、第2逓倍位相データと呼ぶ)に対して複素共役を実行することで、MRデータに基づく複素画像における複素信号に対する位相の補正に用いられる位相補正マップを生成する。第2逓倍位相データがexp(iθ)で表される場合、補正マップ生成機能157は、exp(iθ)に対して複素共役を実現する処理を行うことで、exp(-iθ)で表される位相補正マップを生成する。
【0042】
処理回路15は、画像生成機能159により、MRデータに基づいて、複素信号を有する複素画像を生成する。具体的には、画像生成機能159は、MRデータに対してフーリエ変換を実行して、複素画像を生成する。生成された複素画像は、位相データの生成に用いられる。なお、位相データの生成は、画像生成機能159により、実行されてもよい。
【0043】
画像生成機能159は、位相補正マップを用いて、MRデータの位相補正を行う。このとき、画像生成機能159は、位相補正機能に相当する。位相補正を実行する位相補正機能を実現する処理回路15は、位相補正部に対応する。画像生成機能159は、複素画像と位相補正マップとに基づいて、複素画像における複素信号の位相が補正された位相補正複素画像を生成する。具体的には、画像生成機能159は、複素画像に位相補正マップを乗算することで、位相補正複素画像を生成する。画像生成機能159は、位相補正複素画像に基づいて、位相補正複素画像の実部画像を生成する。位相補正複素画像から実部画像を生成する処理は、複素画像から実画像を生成する処理と同様なため、説明は省略する。画像生成機能159は、生成された実部画像を、メモリ13に記憶させる。
【0044】
入出力インターフェース17は、例えば、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける入力インターフェースと、各種情報を出力する出力インターフェースとを備える。入力インターフェースは、例えば、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インターフェースは、処理回路15に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路15へと出力する。
【0045】
なお、本明細書において入力インターフェースは、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、MRI装置100とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0046】
出力インターフェースは、例えば、ディスプレイにより実現される。ディスプレイは、処理回路15またはシステム制御回路123による制御のもとで、各種のGUI(Graphical User Interface)や、処理回路15によって生成されたMR画像等を表示する。また、ディスプレイは、スキャンに関する撮像パラメータ、および画像処理に関する各種情報などを表示する。ディスプレイは、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイ、モニタ等の表示デバイスにより実現される。
【0047】
以上のように構成された本実施形態のMRI装置100により実行される位相の補正処理(以下、位相補正処理と呼ぶ)について、
図5乃至
図7を用いて説明する。位相補正処理は、π条件でIR法を用いて収集されたMRデータに基づく複素画像に対して、位相補正を実行する処理である。位相補正処理により、2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間T1の差により生じる位相差が、補正されることとなる。
【0048】
図5は、位相補正処理の概要を示す図である。
図6は、位相補正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図7は、第1逓倍機能1531による第1逓倍処理の前後における位相データと、実画像との差異の一例を示す図である。位相補正処理の実行に先立って、例えば、入出力インターフェース17を介した操作者の指示、もしくは通信インターフェース11を介した検査オーダー情報により、撮像対象として内耳が含まれている場合、観察対象としてCSFとWMとが設定される。これにより、撮像制御回路121は、π条件を設定する。
【0049】
(位相補正処理)
(ステップS601)
撮像制御回路121は、設定されたπ条件でIR法を用いて、被検体Pを撮像する。これにより、撮像制御回路121は、MRデータを収集する。
【0050】
(ステップS602)
処理回路15は、取得機能150により、π条件でIR法を用いて収集されたMRデータを取得する。取得機能150は、取得されたMRデータを、メモリ13に記憶させる。
【0051】
(ステップS603)
処理回路15は、画像生成機能159により、MRデータに対してフーリエ変換を実行することで、複素画像を生成する。画像生成機能159は、生成された複素画像を、メモリ13に記憶させる。なお、画像生成機能159は、複素画像に基づいて、実画像を生成してもよい。
図5および
図7に示すように、実画像RIには、位相変化に伴う縞模様が表れている。
【0052】
(ステップS604)
処理回路15は、位相データ生成機能151により、複素画像に基づいて位相データを生成する。
図5および
図7に示すように、位相データPDには、位相変化に伴う縞模様、およびCSFとWMとにおける位相角の正負の違い(
図3参照)に伴う位相の相違が、不連続的な濃淡として表れている。
【0053】
(ステップS605)
処理回路15は、第1逓倍機能1531により、位相データPDを2乗することにより、第1逓倍位相データMPDを生成する。
図7に示すように、第1逓倍機能1531における逓倍処理により生成された第1逓倍位相データMPDと、逓倍処理後の実部画像MuRIとにおいて、位相角の正負による違いが緩和されている。
【0054】
(ステップS606)
処理回路15は、位相アンラップ機能155により、第1逓倍位相データMPDに対して低域通過フィルタを適用する。これにより、
図5に示す第1逓倍位相データMPDにおける高周波成分のノイズが低減される。位相アンラップ機能155は、第1逓倍位相データMPDに対する低域通過フィルタの適用により、高周波のノイズが低減された逓倍位相データ(以下、フィルタ後逓倍データと呼ぶ)FMPDを生成する。なお、第1逓倍位相データMPDに対する低域通過フィルタの適用は、第1逓倍機能1531または画像生成機能159などの他の機能により実現されてもよい。
【0055】
(ステップS607)
処理回路15は、位相アンラップ機能155により、低域通過フィルタを適用した第1逓倍位相データに対して、位相アンラップ処理を実行する。すなわち、位相アンラップ機能155は、2n倍した位相角を有するフィルタ後逓倍データに対して位相アンラップ処理を適用し、フィルタ後逓倍データの位相の折り返しを除去する。
【0056】
(ステップS608)
処理回路15は、第2逓倍機能1532により、折り返しが除去された位相データの位相角を1/(2n)倍する。具体的には、第2逓倍機能1532は、位相アンラップ処理を適用後のアンラップ後逓倍データに対して平方根を適用し、第2逓倍位相データURPDを生成する。これにより、第2逓倍位相データURPDにおける位相角は、位相データPDと同じ位相角に戻る。このとき、CSFの位相角は、
図4に示すように、2n倍後に2θとなる。このため、第2逓倍処理後のCSFとWMとの位相角は、同一の角度となる。
【0057】
(ステップS609)
処理回路15は、補正マップ生成機能157により、第2逓倍位相データURPDに対して複素共役の処理(補正マップ生成処理)を実行し、位相補正マップPCMを生成する。
図5に示すように、位相補正マップPCMは、ノイズが低減され、かつ位相データにおける位相角が逆位相となっている。
【0058】
(ステップS610)
処理回路15は、画像生成機能159により、複素画像CIに位相補正マップPCMを乗算し、位相補正複素画像を生成する。位相補正複素画像は、MRデータに基づいて生成された複素画像に対して、位相差による濃淡の村が低減された画像となる。
【0059】
(ステップS611)
処理回路15は、画像生成機能159により、位相補正複素画像に基づいて、実部画像PCRIを生成する。
図5に示すように、位相補正処理が適用された実部画像PCRIは、位相補正処理の適用前の実部画像に比べて、周期的な濃淡(位相ムラ)およびCSFとWMとにおける位相差による濃淡が低減されている。
【0060】
以上に述べた実施形態に係るMRI装置100は、2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間の差により当該2以上の観察対象に関する複素信号の位相差がπとなる条件で、反転回復法を用いてMRデータを収集する。これにより、実施形態に係るMRI装置100によれば、2以上の観察対象に対して複素信号の位相差がπとなるMRデータを収集することができる。このため、本MRI装置100によれば、位相補正処理を効果的に実行することができ、例えば内耳などの診断に関する実部画像における背景位相を良好に除去することができる。
【0061】
また、実施形態に係るMRI装置100は、2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間の差により当該2以上の観察対象に関する複素信号の位相差がπとなる条件で、反転回復法を用いて収集されたMRデータを取得し、MRデータに基づいて、少なくとも位相データPDを生成し、位相データPDにおける位相角を2n(nは自然数)倍し、2n倍した位相角を有する位相データ(第1逓倍位相データMPD)の位相の折り返しを除去し、折り返しが除去された位相データ(アンラップ後逓倍データ)の位相角を1/(2n)倍し、1/(2n)倍した位相角を有する位相データ(第2逓倍位相データ)URPDに対して複素共役を適用することで、MRデータに基づく複素画像における複素信号に対する位相の補正に用いられる位相補正マップPCMを生成し、位相補正マップを用いて、MRデータの位相補正を行う。
【0062】
例えば、実施形態に係るMRI装置100は、2n倍された位相データ(第1逓倍位相データ)MPDに対して低域通過フィルタを適用した位相データ(フィルタ後逓倍データ)FMPDに対して位相アンラップ処理を実行し、フィルタ後逓倍データFMPDの位相の折り返しを除去する。また、実施形態に係るMRI装置100は、複素画像CIと位相補正マップPCMとに基づいて、複素画像CIにおける複素信号の位相が補正された位相補正複素画像を生成し、位相補正複素画像に基づいて、位相補正複素画像の実部画像PCRIを生成する。
【0063】
これらのことから、実施形態に係るMRI装置100によれば、テンプレート画像を用いることなく、MR画像に対する位相補正を実行することができる。これにより、本実施形態に係るMRI装置100によれば、撮像時間を短縮することができるため、被検体Pおよび操作者に対する検査の負担を軽減でき、検査のスループットを向上させることができる。さらに、実施形態に係るMRI装置100によれば、マスクに関する閾値を最適化することなく、簡便にかつ高精度で、MR画像に対する位相補正を実行することができる。
【0064】
以上のことから、実施形態に係るMRI装置100によれば、例えば、CSFとWM/GM、正常心筋と障害心筋、WMとGMと脂肪などを含む撮像対象に関して、より短時間かつ良好に位相補正したMR画像を生成することができる。
【0065】
本実施形態における変形例として、本実施形態における技術的思想は、画像処理装置1により実現されてもよい。このとき、画像処理装置1は、処理回路15における取得機能150により、MRI装置からMRデータを取得する。当該MRデータは、π条件でIR法を用いて収集されたMRデータである。画像処理装置1における位相補正処理の処理手順は、
図6に示すフローチャートにおいて、ステップS601の処理を除いたものとなる。他の処理の手順および効果は、実施形態における記載と同様なため、説明は省略する。
【0066】
実施形態における技術的思想を位相補正方法で実現する場合、当該位相補正方法は、2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間の差により当該2以上の観察対象に関する複素信号の位相差がπとなる条件で、反転回復法を用いて収集されたMRデータを取得し、当該MRデータに基づいて少なくとも位相データPDを生成し、位相データにおける位相角を2n(nは自然数)倍し、2n倍した位相角を有する位相データの位相の折り返しを除去し、折り返しが除去された位相データの位相角を1/(2n)倍し、1/(2n)倍した位相角を有する位相データに対して複素共役を適用することで、複素信号に対する位相の補正に用いられる位相補正マップPCMを生成し、位相補正マップPCMを用いてMRデータの位相補正を行う。本位相補正方法に関する位相補正処理の手順および効果は、実施形態における記載と同様なため、説明は省略する。
【0067】
実施形態における技術的思想を位相補正プログラムで実現する場合、当該位相補正プログラムは、コンピュータに、2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間の差により観察対象に関する位相差がπとなる条件で、反転回復法を用いて収集されたMRデータを取得し、取得されたMRデータに基づいて少なくとも位相データPDを生成し、生成された位相データPDにおける位相角を2n(nは自然数)倍し、2n倍した位相角を有する位相データ(第1逓倍位相データ)MPDの位相の折り返しを除去し、折り返しが除去された位相データの位相角を1/(2n)倍し、1/(2n)倍した位相角を有する位相データ(第2逓倍位相データ)URPDに対して複素共役を適用することで、複素信号に対する位相の補正に用いられる位相補正マップPCMを生成し、位相補正マップPCMを用いてMRデータの位相補正を行うこと、を実現させる。
【0068】
例えば、MRI装置100などのモダリティ、PACSサーバまたは各種画像処理サーバなどにおけるコンピュータに位相補正プログラムをインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても、位相補正処理を実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。位相補正プログラムによる位相補正処理の手順および効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0069】
また、実施形態における技術的思想を撮像制御方法で実現する場合、当該撮像制御方法は、2以上の観察対象における縦磁化の緩和時間の差により前記2以上の観察対象に関する複素信号の位相差がπとなる条件で、反転回復法を用いて磁気共鳴データを収集する。撮像制御方法による撮像の手順および効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0070】
以上説明した少なくとも1つの実施形態等によれば、位相補正を適切に実行可能な磁気共鳴データを収集することができる。これにより、実施形態等によれば、位相補正を適切に実行することができる。
【0071】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
1 画像処理装置
11 通信インターフェース
13 メモリ
15 処理回路
17 入出力インターフェース
100 磁気共鳴イメージング装置
101 静磁場磁石
103 傾斜磁場コイル
105 傾斜磁場電源
107 寝台
109 寝台制御回路
111 ボア
113 送信回路
115 送信コイル
117 受信コイル
119 受信回路
121 撮像制御回路
123 システム制御回路
125 記憶装置
150 取得機能
151 位相データ生成機能
153 逓倍機能
155 位相アンラップ機能
157 補正マップ生成機能
159 画像生成機能
1531 第1逓倍機能
1532 第2逓倍機能