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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180403
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】パネル部材及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/04 20060101AFI20231214BHJP
   H01H 9/16 20060101ALI20231214BHJP
   G09F 13/00 20060101ALI20231214BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20231214BHJP
   B32B 3/24 20060101ALI20231214BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20231214BHJP
【FI】
G09F13/04 K
H01H9/16 A
G09F13/00 R
B32B7/023
B32B3/24 Z
F21S2/00 481
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093691
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守屋 隆紘
(72)【発明者】
【氏名】菱山 浩昭
【テーマコード(参考)】
3K244
4F100
5C096
5G052
【Fターム(参考)】
3K244AA09
3K244BA04
3K244BA50
3K244CA02
3K244GA06
4F100AK41A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA13A
4F100CA13B
4F100CA13C
4F100DC11B
4F100DC11C
4F100GB41
4F100HB31A
4F100HB31B
4F100HB31C
4F100HB35A
4F100JL10A
4F100JN01A
4F100JN02B
4F100JN02C
4F100JN08A
4F100JN28A
5C096AA01
5C096BA01
5C096CA04
5C096CA13
5C096CA28
5C096CB01
5C096CC06
5C096FA12
5C096FA18
5G052AA21
5G052BB10
5G052JA02
5G052JA09
5G052JB05
5G052JC04
(57)【要約】
【課題】発色効果を高めることができるパネル部材及びそのようなパネル部材を備える電子機器を提供すること。
【解決手段】パネル部材36は、光源32aからの光に対して透過性を有する発色層38と、発色層38の裏面側に設けられ、光源32aからの光の少なくとも一部に対して隠蔽性を有するとともに開口部が設けられた第1隠蔽層39aと、第1隠蔽層39aの裏面側に設けられ、光源からの光の少なくとも一部に対して隠蔽性を有するとともに第1隠蔽層39aの開口部に対応する開口部が設けられた第2隠蔽層39bと、を備え、発色層38は、第1隠蔽層39a及び第2隠蔽層39bとは異なる色に発色されており、第1隠蔽層39aは、明度が、第2隠蔽層39bより高い。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光に対して透過性を有する発色層と、
前記発色層の裏面側に設けられ、前記光源からの光の少なくとも一部に対して隠蔽性を有するとともに開口部が設けられた第1隠蔽層と、
前記第1隠蔽層の裏面側に設けられ、前記光源からの光の少なくとも一部に対して隠蔽性を有するとともに前記第1隠蔽層の開口部に対応する開口部が設けられた第2隠蔽層と、を備え、
前記発色層は、前記第1隠蔽層及び前記第2隠蔽層とは異なる色に発色されており、
前記第1隠蔽層は、明度が、前記第2隠蔽層より高い、
パネル部材。
【請求項2】
前記発色層は白色系又は黄色系の色である、請求項1に記載のパネル部材。
【請求項3】
前記発色層は、複数の顔料又は複数の染料を含む第1層と、前記第1層の裏面側に設けられ、前記第1層より少ない種類の顔料又は前記第1層より少ない種類の染料と、不揮発性の透明部材と、を含む第2層と、を有する、請求項1に記載のパネル部材。
【請求項4】
前記第2隠蔽層に設けられた前記開口部の開口幅は、前記第1隠蔽層に設けられた前記開口部の開口幅より大きい、請求項1に記載のパネル部材。
【請求項5】
前記明度は、マンセル表色系における明度である、請求項1に記載のパネル部材。
【請求項6】
前記表示部は、タッチパネルのタッチ操作に応じて照光表示されるアイコン部を含む、請求項1に記載のパネル部材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のパネル部材と、
前記パネル部材の裏面側に光を照射する光源と、を備える、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル部材及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、裏面側に光源からの光を照射することにより、表面に文字や図形、記号等を照光表示するパネル部材が知られている。例えば特許文献1には、表示部である文字や図形が設けられたタッチスイッチを有する装飾パネルが開示されている。この装飾パネルは、裏面側から順に導光部材、支持部材、透光性を有する成形樹脂層、遮光層、透光性を有するフロントプレートを備えている。遮光層には、タッチスイッチの文字や図形に対応する透光孔が設けられている。装飾パネルでは、裏面側に設けられた光源が発光すると、その光が導光部材内を導光して成形樹脂層に入射し、透光孔を通るものだけがフロントプレートから前方へ照射される。これにより、表示部である文字や図形が透光孔の形状で照光表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-85456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の装飾パネルでは、表示部である文字や図形の周りの部分は、フロントプレートを透過した遮光層の色(例えば黒色)が視認される。一方で、このような文字や図形の周りの部分を遮光層とは異なる任意の発色としたい場合がある。しかしながら、遮光層の表面側に透光性を有する任意の有色層を設けた場合、遮光層の色が有色層を透けて視認され、表示部の周りの部分を所望の発色にできないことがある。
【0005】
本発明は、発色効果を高めることができるパネル部材及びそのようなパネル部材を備える電子機器を提供することを利点の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のパネル部材は、光源からの光に対して透過性を有する発色層と、前記発色層の裏面側に設けられ、前記光源からの光の少なくとも一部に対して隠蔽性を有するとともに開口部が設けられた第1隠蔽層と、前記第1隠蔽層の裏面側に設けられ、前記光源からの光の少なくとも一部に対して隠蔽性を有するとともに前記第1隠蔽層の開口部に対応する開口部が設けられた第2隠蔽層と、を備え、前記発色層は、前記第1隠蔽層及び前記第2隠蔽層とは異なる色に発色されており、前記第1隠蔽層は、明度が、前記第2隠蔽層より高い。
【0007】
本発明の一態様の電子機器は、前記パネル部材と、前記パネル部材の裏面側に光を照射する光源と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発色効果を高めることができるパネル部材及びそのようなパネル部材を備える電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る電子鍵盤楽器の全体斜視図である。
図2】実施形態に係る電子鍵盤楽器の操作パネル部の平面図である。
図3】実施形態に係る電子鍵盤楽器の操作パネル部の断面模式図である。
図4】実施形態に係る電子鍵盤楽器のパネル部材の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1に示す電子鍵盤楽器(電子楽器等の電子機器)1は、白鍵と黒鍵といった複数の鍵を有する鍵盤部10、及びケース20を備えている。ケース20の内部には、図示しない制御基板等が収納される。なお、以下では、電子鍵盤楽器1の複数の鍵の配列方向を左右方向(図1の左側を左方向とする)とし、各鍵の前後方向を前後方向(図1の手前側を前方向とする)とし、電子鍵盤楽器1の上下方向を上下方向(図1の上側を上方向とする)として説明する。
【0011】
ケース20は、上方から見て、左右方向を鍵盤全体の長手方向とする横長略矩形状であり、上ケース22、下ケース24、左ケース26、及び右ケース28を有している。少なくとも上ケース22は、例えば白色系又は黄色系で、合成樹脂によって形成されている。例えば白色系には、アイボリー色、ベージュ色、鳥の子色、胡粉色、乳白色、生成り色、スノーホワイト色(青白色)等があり、ケース20は、デザインに応じた色が選択されている。上ケース22の上面は、可視光に対して透過性を有するアクリル樹脂を含む上面パネル20aとされている。
【0012】
上ケース22の上面には、電子鍵盤楽器1の電源をオンオフするための電源ボタン2、楽音のボリュームを制御するためのボリューム摘み4、液晶表示部6、及び操作パネル部30が設けられている。左ケース26の上面には、楽音にピッチベンドを付与して制御するためのピッチベンダー26a、各種設定用の設定ボタン26b等が設けられている。左ケース26の前面には、イヤホンジャック26cが設けられている。電子鍵盤楽器1は、プロセッサを備え、電源がオンされて起動すると、プロセッサは、操作パネル部30を点灯させるよう制御する。
【0013】
図2に示すように、操作パネル部30には、点灯する点灯部L(点灯領域)及びタッチパネル方式の複数のタッチスイッチTSが設けられている。各タッチスイッチTSは、電子鍵盤楽器1に関する各種機能を実行するための静電容量スイッチであり、デモ演奏や音色、明るさ変更等の各種操作が割り当てられている。各タッチスイッチTSの周囲には、各タッチスイッチTSの場所を示す円環状や等号状の図形や、「FUNCTION」といったタッチスイッチTSの役割を示す文字、記号を有する点灯するアイコン部(表示部)Iが設けられている。以下の説明で述べるアイコン部Iは、点灯部Lと同様に、光源32aによって点灯することから点灯領域でもある。
【0014】
点灯領域の周辺に位置する周辺部Sは、後述するパネル部材36の発色層38の色によって白色又黄色に視認される。各アイコン部Iでは、後述するLED等の光源32aから照射された光がアイコン部Iから上方に出射されるため明るく表示される。周辺部Sでは、後述するパネル部材36の隠蔽層39が光源32aから照射された光を隠蔽するために、操作パネル部30の上方から見てアイコン部Iとは異なり暗く見えるため、アイコン部Iが、周辺部Sから浮かび上がって見えるようになっている。
【0015】
図3に示すように、操作パネル部30は、概略、下側(裏側)から順に、上ケース22と独立して設けられた内部ケース21、回路基板32、回路基板32に配置されたタッチセンサ部34、上ケース22における操作パネル部30に対応する部分(以下、「対応部22a」という。)、及びパネル部材36を備えている。回路基板32は、操作パネル部30の略全域に亘って延びる横長の略矩形状をなしている。回路基板32の上面には、上下方向において各タッチスイッチTS及び点灯部Lに対応する領域に、上方、つまりパネル部材36に向けて光を出射するように光源32aが設けられている。回路基板32には、各種配線が引き回されている。
【0016】
光源32aが接続されている回路基板32は、内部ケース21及び対応部22aによって挟まれることで固定されている。各タッチスイッチTSにおいて、光源32aとタッチセンサ部34との間の空間の周囲には、図示しない反射ケースが設けられている。反射ケースは、光源32aからの光に対して反射性を示すためのパネル部材36からの光出射効率が高くなり、高コントラストな表示が可能となる。
【0017】
タッチセンサ部34は、例えば、静電容量方式のタッチセンサを備え、中央が開口されたタッチパネルの電極を構成する板金部材等を含んでいる。各タッチスイッチTSにおいてパネル部材36にタッチ操作が行われると(人の指が接触又は近付くと)、タッチセンサ部34において電極である板金部材の静電容量が変化する。回路基板32は、この静電容量の変化を検出し、検出信号を送信する。電子鍵盤楽器1のプロセッサは、この検出信号に応じて、タッチされたタッチスイッチTSに対応する機能を実行するよう指示する。
【0018】
また、電子鍵盤楽器1のプロセッサは、タッチ操作が検出されたことを、タッチ操作者に報知するため、タッチ操作が行われたタッチスイッチTSに対応する光源32aの発光態様を、タッチ操作が行われていないタッチスイッチTSに対応する光源32aの発光態様(例えば点灯)と異ならせる(例えば点滅)ように制御してもよい。タッチセンサ部34の板金の開口では、光源32aからの光がタッチセンサ部34の上方に位置するパネル部材36に向けて出射される。
【0019】
図4に示すように、パネル部材36は、光源32a等からの光に対して透過性を有するアクリル等の基板(基板)37を備えている。アクリル等の透明な基板37の厚みは、例えば1~3mmの範囲に設定されている。基板37の裏面側(下面側)には、複数の層が積層されている。具体的には、基板37の裏面側に光を隠蔽(遮蔽)する隠蔽層39が設けられている。発色層38は、二層構造とされており、基板37に近い側(上側)から順に調色層(第1発色層)38a、透過調整層(第2発色層)38bを有している。隠蔽層39は、二層構造とされており、発色層38に近い側(上側)から順に第1隠蔽層39a、第2隠蔽層39bを有している。隠蔽層39の下方には、タッチセンサ部34が配置されている。
【0020】
また、パネル部材36の裏面側、隠蔽層39の下方側には、タッチセンサ部34を透過した各光源32aからの光が照射される。発色層38は、隠蔽層39よりも隠蔽力が低いため、光が入射されると、隠蔽層39の色を隠蔽し難い。これに対して隠蔽層39は、周辺部Sを隠蔽し、周辺部Sと点灯領域との間で十分なコントラスト比を調整することができる。
【0021】
発色層38の調色層38aは、白色系又は黄色系等の複数の顔料を混合したインクにより形成されている。調色層38aの色は、基板37を介して操作パネル部30の表面の周辺部Sで視認される色の主たる色であり、周辺部Sで発色させたい色に合わせて予め複数の顔料を調合することでなしている。発色層38の透過調整層38bは、調色層38aと同色系又は白色系の顔料を含む単一のインクに不揮発性の透明部材を含む透明インクを配合することにより形成されている。上記単一のインクには、市販の標準インクを用いることができる。上記透明インクには、例えばメジウム(ポリエステル樹脂等に溶剤及び添加剤を配合した透明のもの)を用いることができる。調色層38a、透過調整層38bのそれぞれの厚みは、例えば10~100μmとされる。
【0022】
なお、メジウムは、調色層(第1発色層)38a、第1隠蔽層39a、第2隠蔽層39bにも含まれていてもよい。透過調整層38bは、調色層38a単層では、操作パネル部30に求められる色合いを発色させるために色味が不足したり、隠蔽層39の色の隠蔽が不足したりするのを調整するための調整層である。このように、発色層38は、それぞれ発色された層を積層することで、デザインに応じてアイボリー色、ベージュ色、鳥の子色、胡粉色、乳白色、生成り色、スノーホワイト色(青白色)等の白色系や黄色系のような色合いに発色することができる。また透過調整層38bは、アイコン部Iや点灯部Lといった点灯領域の点灯時の輝度の調整や、隠蔽層39に対応する周辺部Sの非点灯時の色合いバランスを調整するために、光透過性を有するメジウムの添加量が調整されている層である。
【0023】
隠蔽層39の第1隠蔽層39aは、マンセル表色系における明度が第2隠蔽層39bより高い、淡い色合い(例えばライトグレー)のインクにより形成されている。第2隠蔽層39bは、マンセル表色系における明度が第1隠蔽層39aより低い、濃い色合い(例えばダークグレー)のインクにより形成されている。具体的には、第1隠蔽層39aには、例えばマンセル表色系における色相がNでの明度が7.0~8.0の範囲内のインクを用いることができる。第2隠蔽層39bには、例えばマンセル表色系における色相がNでの明度が1.0~5.0の範囲内のインクを用いることができる。第1隠蔽層39a、第2隠蔽層39bのそれぞれの厚みは、例えば10~100μmとされる。
【0024】
マンセル表色系における色相がNでの明度が低い方が、隠蔽力が高いため、第2隠蔽層39bは第1隠蔽層39aよりも隠蔽力が高い。操作パネル部30では、特に、第2隠蔽層39bより上方に位置する、より高い明度の第1隠蔽層39aによって、第1隠蔽層39aの代わりに第2隠蔽層39bを設けた場合に比べて、周辺部Sでの明るさを暗過ぎない色合いに調整できるため、デザイン性の自由度が高くなる。
【0025】
第1隠蔽層39aのうち上下方向(厚さ方向)において、点灯部Lや各タッチスイッチTSの点灯領域には、第1隠蔽層39aを貫通するように開口する第1開口部(開口部)39a1が配置されるよう、第1隠蔽層39aが白抜き印刷により設けられている。複数の第1開口部39a1は、それぞれ各アイコン部Iや点灯部Lと上下方向において重なるように各アイコン部Iや点灯部Lの形状、サイズに合わせて設けられている。また、第2隠蔽層39bのうち上下方向において第1開口部39a1と重なる部分には、第2隠蔽層39bを貫通するように開口する第2開口部(開口部)39b1が白抜き印刷により設けられている。第2開口部の39b1の開口幅は、第1開口部39a1の開口幅よりわずかに大きく(例えば0.1~1.5mm程度大きく)されている。換言すれば、第2開口部39b1は、第1開口部39a1に対してオフセットした配置で設けられている。
【0026】
このように点灯部Lや各タッチスイッチTSの点灯領域では、隠蔽層39に第1開口部39a1及び第2開口部39b1が設けられていることにより、タッチスイッチTSの光源32aから出射された光が第1開口部39a1及び第2開口部39b1を通過し、発色層38を透過して基板37の裏面側に照射される。これにより、基板37の表面側において、点灯部Lや各タッチスイッチTSのアイコン部Iが照光表示されるようになっている。
【0027】
次に、基板37の裏面側に印刷された各層の機能について説明する。調色層38aは、複数の顔料の配合が調整されることにより、操作パネル部30の表面で視認される色(本実施形態ではデザインの要望に合わせて調色された白色系、又は黄色系の色)を発色する。この層は複数の顔料が含まれるため量産において配合量のばらつきに応じた色合いのばらつきが発生し易い。この層を複数積層させると、各層の色合いのばらつきの影響を受けて、操作パネル部30の表面で視認される色合いのばらつきが大きくなるため、必要最低限の層数にすることが好ましく、本実施形態では、単層としている。
【0028】
透過調整層38bは、調色層38aと同系色、又は白色系の層であり、メジウム等の透明インクの配合量が調整されている。発色層38を、調色層38a単層のみで構成すると、調色層38aが薄すぎるため、発色が不十分なため所望の色合いになり難くても、透過調整層38bが加わることによって発色層38の色合いを調整することができる。透過調整層38bで用いる顔料は、単色の材料等、調色層38aよりも少ない材料種としているため、透過調整層38bの代わりに調色層38aを積層させた場合に比べて、製造時の顔料配合等のばらつきによる色合いのばらつきを抑制できる。また、透過調整層38bは、メジウム等の透明インクの配合量が調整されているため、調色層38aよりも、光透過性に優れている。このため、光源32aからの光をパネル部材36の外に出射し易くなり、点灯時には、アイコン部I等の点灯領域を明るくすることができる。
【0029】
第2隠蔽層39bは、第1隠蔽層39aより明度の低い色合いで形成されることにより光源32aから出射された光を効果的に隠蔽する。一方で、発色層38を色合いのばらつきを抑えるために少ない積層数にしたため、特に、非点灯時においては、発色層38は、隠蔽層39の色を十分隠蔽し難い。
【0030】
ここで、比較例として、仮に本実施形態の第1隠蔽層39aを省略して隠蔽層39が第2隠蔽層39bのみである場合を検討する。この場合、点灯時に点灯領域と周辺部Sとの所望のコントラスト比を満たすため、第2隠蔽層39bの明度は本実施形態と同様に十分低く設定されている。発色層38は、隠蔽層39による色の隠蔽が不十分になり、特に非点灯時では、操作パネル30の外側から入射される外光の一部が、発色層38により反射、散乱されることによって発色層38の色合いに応じた光が操作パネル30の外側に向けて出射されるが、外光の他の一部は、隠蔽層39に吸収されることになる。発色層38の直下の隠蔽層39、即ち第2隠蔽層39bの明度が低いため、外光の吸収量が多くなり、結果として、操作パネル部30が、発色層38単体による色合いよりも暗くなり過ぎてしまいがちになる。
【0031】
しかしながら本実施形態では、発色層38と第2隠蔽層39bとの間に、第2隠蔽層39bよりも相対的に、マンセル表色系における色相がNでの明度が高く、淡い色合いの第1隠蔽層39aを介在させたので、第2隠蔽層39bよりも多少光の吸収量が抑えられ、発色層38の隠蔽力が十分ではなかったとしても、操作パネル部30は、発色層38のベースの色で暗くなり過ぎることなく視認することができる。なお、第2隠蔽層39b及び第1隠蔽層39aは、光を完全に隠蔽するものに限定されず、光をわずかに透過するものであってもよい。
【0032】
以上説明したように本実施形態に係るパネル部材36は、光源32aからの光に対して透過性を有する発色層38と、発色層38の裏面側に設けられ、光源32aからの光の少なくとも一部に対して隠蔽性を有するとともに開口部が設けられた第1隠蔽層39aと、第1隠蔽層39aの裏面側に設けられ、光源からの光の少なくとも一部に対して隠蔽性を有するとともに第1隠蔽層39aの開口部に対応する開口部が設けられた第2隠蔽層39bと、を備え、発色層38は、第1隠蔽層39a及び第2隠蔽層39bとは異なる色に発色されており、第1隠蔽層39aは、明度が、第2隠蔽層39bより高い。
【0033】
本実施形態に係るパネル部材36は、視認側の発色層38を、パネル部材36の色合いを出すため複数の発色材料が配合された調色層38と、単一の発色材料及び透明なメジウムが配分された透過調整層38bの二層構造としたので、パネル部材36の色合いを保ちつつ、点灯領域において、光源32aの光を効率よく透過することができ、また、パネル部材36の裏面側で出射された光源32aからの光が第2隠蔽層39bにより効果的に隠蔽されているので、点灯領域とその周辺領域とにおいて、良好な色合いで、かつ高いコントラスト比の表示を行うことができる。そして、発色層38が隠蔽層39の色を十分隠蔽できなかったとしても、第2隠蔽層39bと発色層38の間に設けられた第1隠蔽層39aの色の明度が高いため、第1隠蔽層39aが介在していない場合に比べて、パネル部材36の表面側では発色層38の色合いが強く、明るく視認することができる。
【0034】
また、パネル部材36では、発色層38は白色系又は黄色系の色に発色されている。これにより、表面側で発色効果が高められた白色系等の淡い色が視認されるパネル部材36を提供することができる。
【0035】
また、パネル部材36では、発色層38は、発色材料として複数の顔料又は複数の染料を含む調色層38aと、調色層38aの裏面側に設けられ、単一種の顔料又は単一種の染料のように、調色層38aより少ない種類の顔料、又は調色層38aより少ない種類の染料、及び不揮発性の透明部材を含む透過調整層38bと、を有する。これにより、透過調整層38b単体で不十分な色合いを補填することによって操作パネル部30の表面側で視認される色を調整することができる。このため、パネル部材36の発色効果を高めながら、調色層38aを三層以上積層させて色合いを調整するよりも、光透過率を向上できるとともに製造時での配合ばらつきによる色合いのばらつきを抑制することができる。さらに、操作パネル部30の表面側で視認される色を1層の調色層38aのみで調整することができるため、基板37の裏面側への発色層38の印刷回数を抑制することができ、印刷に伴う製造コストを抑制することができる。
【0036】
また、パネル部材36では、第2隠蔽層39bに設けられた第2開口部39b1の開口幅は、第1隠蔽層39aに設けられた第1開口部39a1の開口幅より大きい。これにより、パネル部材36の製造時において第1隠蔽層39aよりも後に印刷される第2隠蔽層39bに印刷ズレが生じた場合であっても、第2開口部39b1を上下方向において第1開口部39a1と重なるように設けることができる。
【0037】
また、パネル部材36では、明度は、マンセル表色系における明度である。これにより、第1隠蔽層39aの明度と第2隠蔽層39bの明度を区別するための明確な基準を提供することができる。
【0038】
また、パネル部材36では、表示部として、タッチパネルのタッチ操作に応じて照光表示されるアイコン部I等の点灯領域を含む。これにより、表示部の具体的な態様を提供することができ、点灯領域の発色効果が高められたタッチパネルを実現することができる。
【0039】
また、実施形態に係る電子鍵盤楽器1は、パネル部材36を備えている。これにより、操作パネル部30の表面側で視認される色を電子鍵盤楽器1のケース20の色に合わせて調整することができ、さらに、操作パネル部30の発色効果が高められた電子鍵盤楽器1を実現することができる。
【0040】
なお、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば上記の実施形態では、光源がパネル部材の下方側に設けられた構成を例示したが光源がパネル部材の側方側に設けられ、光源からの光が導光部材を介してパネル部材の裏面側に入射する構成であってもよい。また、例えば上記の実施形態では、発色層が1層の透過調整層を有する構成を例示したが、発色層が複数の透過調整層を有する構成であってもよい。
【0041】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]光源からの光に対して透過性を有する発色層と、
前記発色層の裏面側に設けられ、前記光源からの光の少なくとも一部に対して隠蔽性を有するとともに開口部が設けられた第1隠蔽層と、
前記第1隠蔽層の裏面側に設けられ、前記光源からの光の少なくとも一部に対して隠蔽性を有するとともに前記第1隠蔽層の開口部に対応する開口部が設けられた第2隠蔽層と、を備え、
前記発色層は、前記第1隠蔽層及び前記第2隠蔽層とは異なる色に発色されており、
前記第1隠蔽層は、明度が、前記第2隠蔽層より高い、
パネル部材。
[2]前記発色層は白色系又は黄色系の色である、前記[1]に記載のパネル部材。
[3]色層は、複数の顔料又は複数の染料を含む第1層と、前記第1層の裏面側に設けられ、前記第1層より少ない種類の顔料又は前記第1層より少ない種類の染料と、不揮発性の透明部材と、含む第2層と、を有する、前記[1]に記載のパネル部材。
[4]前記第2隠蔽層に設けられた前記開口部の開口幅は、前記第1隠蔽層に設けられた前記開口部の開口幅より大きい、前記[1]に記載のパネル部材。
[5]前記明度は、マンセル表色系における明度である、前記[1]に記載のパネル部材。
[6]前記表示部は、タッチパネルのタッチ操作に応じて照光表示されるアイコン部を含む、前記[1]に記載のパネル部材。
[7]前記[1]から[6]のいずれか1項に記載のパネル部材と、
前記パネル部材の裏面側に光を照射する光源と、を備える、
電子機器。
【符号の説明】
【0042】
1 電子鍵盤楽器 2 電源ボタン
4 ボリューム摘み 6 液晶表示部
10 鍵盤部 20 ケース
20a 上面パネル 21 内部ケース
22 上ケース 22a 対応部
24 下ケース 26 左ケース
26a ピッチベンダー 26b 設定ボタン
26c イヤホンジャック 28 右ケース
30 操作パネル部 32 回路基板
32a 光源 34 タッチセンサ部
36 パネル部材 37 基板
38 発色層 38a 調色層
38b 透過調整層 39 隠蔽層
39a 第1隠蔽層 39a1 第1開口部
39b 第2隠蔽層 39b1 第2開口部
I アイコン部 L 点灯部
TS タッチスイッチ S 周辺部
図1
図2
図3
図4