(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180404
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20231214BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20231214BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20231214BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20231214BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20231214BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20231214BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20231214BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20231214BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04537
H01M8/00 A
H01M8/04225
H01M8/04228
H01M8/04302
H01M8/04303
H01M8/04858
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093692
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】上島 鷹之
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC01
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB26
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127DA01
5H127DA08
5H127DA11
5H127DB89
5H127DC44
5H127DC47
5H127DC89
(57)【要約】
【課題】正常・異常の判定を適切に実行することができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池又は蓄電装置からの電圧を変圧するDCDCコンバータと、前記電圧により稼働される対象負荷と、前記DCDCコンバータに供給される電流を検出する電流センサと、前記電流センサによる検出電流に基づいて燃料電池システムの正常・異常の判定を行う制御部と、を有し、前記制御部は、前記対象負荷の稼働状態では、前記電流センサによる検出電流を第1の閾値と比較することで、前記燃料電池システムの正常・異常の判定を行い、前記対象負荷の非稼働状態では、前記電流センサによる検出電流を前記第1の閾値よりも低い第2の閾値と比較することで、前記燃料電池システムの正常・異常の判定を行う、ことを特徴とする燃料電池システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池又は蓄電装置からの電圧を変圧するDCDCコンバータと、
前記電圧により稼働される対象負荷と、
前記DCDCコンバータに供給される電流を検出する電流センサと、
前記電流センサによる検出電流に基づいて燃料電池システムの正常・異常の判定を行う制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記対象負荷の稼働状態では、前記電流センサによる検出電流を第1の閾値と比較することで、前記燃料電池システムの正常・異常の判定を行い、
前記対象負荷の非稼働状態では、前記電流センサによる検出電流を前記第1の閾値よりも低い第2の閾値と比較することで、前記燃料電池システムの正常・異常の判定を行う、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記対象負荷は、前記燃料電池システムの始動フェーズと、前記燃料電池システムの終了フェーズと、前記燃料電池システムの間欠運転モードにおける休止フェーズとの少なくとも1つにおいて非稼働状態となり、それ以外のフェーズにおいて稼働状態となる、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記DCDCコンバータは、
相対的に高い電圧領域での変圧を行う高電圧側DCDCコンバータと、
相対的に低い電圧領域での変圧を行う低電圧側DCDCコンバータと、
を有し、
前記電流センサは、前記低電圧側DCDCコンバータに供給される電流を検出する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記DCDCコンバータは、
相対的に高い電圧領域での変圧を行う高電圧側DCDCコンバータと、
相対的に低い電圧領域での変圧を行う低電圧側DCDCコンバータと、
を有し、
前記電圧により稼働される負荷は、前記高電圧側DCDCコンバータに対応する高電圧側対象負荷と、前記低電圧側DCDCコンバータに対応する低電圧側対象負荷とを含み、
前記対象負荷は、前記低電圧側対象負荷の少なくとも一部である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記対象負荷は、インジェクタと、バルブと、モータと、コイル負荷と、抵抗負荷との少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記対象負荷の稼働状態と非稼働状態にかかわらず、前記燃料電池システムの異常を判定したときは、前記DCDCコンバータへの電流供給を停止する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力側に電流センサが接続され、入力電力を電圧変換して出力側に接続された機器に出力する、並列に接続された複数のDC-DCコンバータの故障を診断する故障診断装置が記載されている。この故障診断装置では、機器の要求電力値がDC-DCコンバータのそれぞれの出力電力値よりも大きく、且つ電流センサが測定した電流より求めた各DC-DCコンバータの入力電力の合算値に、予め定められた係数を乗算した値が機器の要求電力値よりも小さい場合に、DC-DCコンバータのうち少なくとも1つが故障していると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の故障診断装置では、機器(負荷)の種類や状態等の特性が電流波形に与える影響を低減して高精度な故障診断を行うという観点において改良の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の問題意識に基づいてなされたものであり、正常・異常の判定を適切に実行することができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一つの形態である燃料電池システムは、燃料電池又は蓄電装置からの電圧を変圧するDCDCコンバータと、前記電圧により稼働される対象負荷と、前記DCDCコンバータに供給される電流を検出する電流センサと、前記電流センサによる検出電流に基づいて燃料電池システムの正常・異常の判定を行う制御部と、を有し、前記制御部は、前記対象負荷の稼働状態では、前記電流センサによる検出電流を第1の閾値と比較することで、前記燃料電池システムの正常・異常の判定を行い、前記対象負荷の非稼働状態では、前記電流センサによる検出電流を前記第1の閾値よりも低い第2の閾値と比較することで、前記燃料電池システムの正常・異常の判定を行う。
【0007】
検出電流の変動が起こり易い対象負荷を設定・選択して、当該対象負荷の稼働状態では、電流センサによる検出電流を第1の閾値と比較することで、燃料電池システムの正常・異常の判定を行い、当該対象負荷の非稼働状態では、電流センサによる検出電流を第1の閾値よりも低い第2の閾値と比較することで、燃料電池システムの正常・異常の判定を行う。すなわち、対象負荷の稼働状態では、当該対象負荷に起因する検出電流の変動を考慮した相対的に高い第1の閾値を基準として、燃料電池システムの故障判定を行う一方、対象負荷の非稼働状態では、当該対象負荷に起因する検出電流の変動を考慮しない相対的に低い第2の閾値を基準として、故障には至らないまでも燃料電池システムの初期段階での異常兆候を検知する。これにより、燃料電池システムの正常・異常の判定を適切に実行することができる。
【0008】
前記対象負荷は、前記燃料電池システムの始動フェーズと、前記燃料電池システムの終了フェーズと、前記燃料電池システムの間欠運転モードにおける休止フェーズとの少なくとも1つにおいて非稼働状態となり、それ以外のフェーズにおいて稼働状態となる。
【0009】
燃料電池システムの始動フェーズと終了フェーズと間欠運転モードにおける休止フェーズでは、検出電流の変動が起こり易い対象負荷が非稼働状態となる(とする)ことが多い。対象負荷が非稼働状態となるこのようなタイミングに注目して(対象負荷が動作していないタイミングを制御的に設けて)、第2の閾値を基準とした判定を行うことで、故障には至らないまでも燃料電池システムの初期段階での異常兆候を検知することができる。なお、対象負荷が稼働状態となるその他のタイミングでは、第1の閾値を基準とした燃料電池システムの故障判定を行うことができる。
【0010】
前記DCDCコンバータは、相対的に高い電圧領域での変圧を行う高電圧側DCDCコンバータと、相対的に低い電圧領域での変圧を行う低電圧側DCDCコンバータと、を有し、前記電流センサは、前記低電圧側DCDCコンバータに供給される電流を検出する。
【0011】
高電圧側DCDCコンバータには自己監視機能(例えばCAN通信等により自己診断結果を外部送信する機能)が搭載されることが多いのに対して、低電圧側DCDCコンバータには自己監視機能が搭載されないことが多い。そのような場合(自己監視機能が搭載されない場合)でも、電流センサが低電圧側DCDCコンバータに供給される電流を検出することで、燃料電池システムの正常・異常の判定を適切に実行することができる。
【0012】
前記DCDCコンバータは、相対的に高い電圧領域での変圧を行う高電圧側DCDCコンバータと、相対的に低い電圧領域での変圧を行う低電圧側DCDCコンバータと、を有し、前記電圧により稼働される負荷は、前記高電圧側DCDCコンバータに対応する高電圧側対象負荷と、前記低電圧側DCDCコンバータに対応する低電圧側対象負荷とを含み、前記対象負荷は、前記低電圧側対象負荷の少なくとも一部である。
【0013】
低電圧側対象負荷は、検出電流の変動が起こり易い負荷が多いため、低電圧側対象負荷の少なくとも一部を対象負荷とすることで、より一層、燃料電池システムの正常・異常の判定を適切に実行することができる。
【0014】
前記対象負荷は、インジェクタと、バルブと、モータと、コイル負荷と、抵抗負荷との少なくとも1つを含む。
【0015】
インジェクタとバルブとモータとコイル負荷と抵抗負荷は、検出電流の変動が起こり易い負荷であり、これらの少なくとも1つを対象負荷とすることで、より一層、燃料電池システムの正常・異常の判定を適切に実行することができる。
【0016】
前記制御部は、前記対象負荷の稼働状態と非稼働状態にかかわらず、前記燃料電池システムの異常を判定したときは、前記DCDCコンバータへの電流供給を停止する。
【0017】
燃料電池システムの異常を判定した段階で、直ちにDCDCコンバータへの電流供給を停止すれば、修理や交換等の適切な手当てを行って、燃料電池システムの内部の他の構成部品へのストレスを軽減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、正常・異常の判定を適切に実行することができる燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
【
図2】低電圧側DCDCコンバータ及びその周辺部位を拡大して描いた図である。
【
図3】対象負荷が稼働状態と非稼働状態になる時間的なタイミングの一例を示す図である。
【
図4】実施形態の燃料電池システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において、「電圧」と「電流」の文言は互いに読み替えられてもよい。例えば、「電流センサによる検出電流」は、「電圧センサによる検出電圧」と読み替えられてもよい。
【0021】
図1は、実施形態の燃料電池システム1の一例を示す図である。
【0022】
図1に示す燃料電池システム1は、例えば、フォークリフトなどの産業車両や自動車などの車両Veに搭載される。なお、車両Veには、走行用モータを駆動するインバータなどの外部負荷Loが搭載され、燃料電池システム1から外部負荷Loに電力が供給される。
【0023】
また、燃料電池システム1は、燃料電池FCと、燃料タンクTと、主止弁SVと、インジェクタINJと、気液分離機GLSと、循環ポンプHPと、排気排水弁EDVと、希釈器DILと、エアコンプレッサACPと、エア調圧弁ARVと、エアシャット弁ASVとを備える。
【0024】
また、燃料電池システム1は、さらに、ラジエタRと、ファンFと、ウォータポンプWPと、インタークーラICと、高電圧側DCDCコンバータCNVHと、低電圧側DCDCコンバータCNVLと、高電圧側蓄電装置BHと、低電圧側蓄電装置BLと、電流センサSifと、電圧センサSvfと、記憶部2と、制御部3とを備える。
【0025】
燃料電池FCは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成される燃料電池であり、燃料ガス(水素ガスなど)に含まれる水素と酸化剤ガス(空気など)に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。
【0026】
燃料タンクTは、燃料ガスの貯蔵容器である。燃料タンクTに貯蔵された燃料ガスは主止弁SV及びインジェクタINJを介して燃料電池FCに供給される。
【0027】
主止弁SVは、コイルを含む電磁弁などにより構成され、燃料ガスをインジェクタINJに供給する。また、主止弁SVは、制御部3の動作制御によりインジェクタINJへの燃料ガスの供給を遮断する。
【0028】
インジェクタINJは、燃料電池FCに供給される燃料ガスの圧力が一定になるように燃料ガスの流量を調整する。
【0029】
気液分離機GLSは、燃料電池FCから排出される燃料ガスと液水とを分離する。
【0030】
循環ポンプHPは、気液分離機GLSにより分離された燃料ガスを燃料電池FCに再度供給する。
【0031】
排気排水弁EDVは、気液分離機GLSにより分離された液水を希釈器DILに送る。希釈器DILに送られた液水は、希釈器DIL内のタンクに溜まる。また、燃料電池FCから排出された燃料ガスと酸化剤ガスは希釈器DILで合流し、燃料電池システム1の外部に排出される。
【0032】
エアコンプレッサACPは、燃料電池システム1の周囲に存在する酸化剤ガスをモータが回転することにより圧縮しインタークーラIC及びエアシャット弁ASVを介して燃料電池FCに供給する。なお、エアコンプレッサACPの圧縮率は、燃料電池FCの下流に設けられるエア調圧弁ARVの開度を調節することで制御される。
【0033】
インタークーラICは、圧縮により高温になった酸化剤ガスをインタークーラICに流れる冷却水などの冷媒と熱交換させる。
【0034】
エアシャット弁ASVは、制御部3の動作制御により燃料電池FCへの酸化剤ガスの供給を遮断する。なお、イグニッションオン状態であり車両Veが駆動しているとき(荷役作業や走行が可能な状態であるとき)、エアシャット弁ASVは全開になっているものとする。エアシャット弁ASVは電動のバタフライ弁で、通電に応じて開度が調整される。
【0035】
エア調圧弁ARVは、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの圧力や流量を調整する。エア調圧弁ARVは電動のバタフライ弁で、通電に応じて開度が調整される。
【0036】
ラジエタRは、燃料電池FCの発熱により温められた冷媒を外気と熱交換させる。
【0037】
ファンFは、ラジエタRの放熱量を上昇させる。
【0038】
ウォータポンプWPは、ラジエタRにより冷却された冷媒をインタークーラICを介して燃料電池FCに供給する。
【0039】
高電圧側DCDCコンバータCNVHは、燃料電池FCの後段に接続され、燃料電池FCから出力される電圧Vfc(図示略、例えば90[V])を電圧Vch(図示略、例えば48[V])に変換する。また、高電圧側DCDCコンバータCNVHから出力される電力は、外部負荷Lo、高電圧側内部負荷(高電圧側対象負荷、48V系負荷)、及び高電圧側蓄電装置BHに供給される。なお、高電圧側内部負荷(高電圧側対象負荷、48V系負荷)は、例えば、循環ポンプHP、エアコンプレッサACP、及びウォータポンプWPがこれに相当し得る。
【0040】
高電圧側蓄電装置BHは、リチウムイオンキャパシタなどにより構成され、高電圧側DCDCコンバータCNVHと外部負荷Loとの間に接続されている。
【0041】
低電圧側DCDCコンバータCNVLは、高電圧側DCDCコンバータCNVH及び高電圧側蓄電装置BHの後段に接続され、高電圧側DCDCコンバータCNVHから出力される電圧Vch(図示略)または高電圧側蓄電装置BHの電圧Vbh(図示略)を電圧Vbl(図示略、例えば12[V])に変換する。また、低電圧側DCDCコンバータCNVLから出力される電力は、低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)、及び低電圧側蓄電装置BLに供給される。なお、低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)は、例えば、上述した循環ポンプHP、エアコンプレッサACP、及びウォータポンプWP以外の負荷の全部又は一部がこれに相当し得る。例えば、低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)は、主止弁SV、インジェクタINJ、気液分離機GLS、排気排水弁EDV、希釈器DIL、エア調圧弁ARV、エアシャット弁ASV、ラジエタR、ファンF、インタークーラIC、及び制御部3の全部又は一部であってもよい。低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)は、インジェクタとバルブとモータとコイル負荷と抵抗負荷との少なくとも1つを含む負荷と読み替えてもよい。
【0042】
低電圧側蓄電装置BLは、鉛電池などにより構成され、低電圧側DCDCコンバータCNVLの後段に接続されている。
【0043】
高電圧側DCDCコンバータCNVHから出力される電力と、高電圧側内部負荷(高電圧側対象負荷、48V系負荷)及び低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)にそれぞれ供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、外部負荷Loから要求される要求電力より大きい場合、その供給電力のうちの要求電力に相当する電力が外部負荷Loに供給されるとともに残りの電力が高電圧側蓄電装置BHや低電圧側蓄電装置BLに供給される。高電圧側DCDCコンバータCNVHから高電圧側蓄電装置BHに電力が供給されると、高電圧側蓄電装置BHが充電され高電圧側蓄電装置BHの充電量CH(図示略)が増加する。また、高電圧側DCDCコンバータCNVHから出力される電力と、高電圧側内部負荷(高電圧側対象負荷、48V系負荷)及び低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)にそれぞれ供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、外部負荷Loから要求される要求電力より小さい場合、その供給電力が外部負荷Loに供給されるとともに足りない分の電力が高電圧側蓄電装置BHから外部負荷Loに供給される。高電圧側蓄電装置BHから外部負荷Loに電力が供給されると、高電圧側蓄電装置BHが放電され高電圧側蓄電装置BHの充電量CH(図示略)が減少する。なお、充電量CH(図示略)とは、高電圧側蓄電装置BHの充電率[%](高電圧側蓄電装置BHの満充電容量に対する残容量の割合)、または、高電圧側蓄電装置BHに電流が流れていないときの高電圧側蓄電装置BHの開回路電圧[V]、または、高電圧側蓄電装置BHに電流が流れているときの高電圧側蓄電装置BHの閉回路電圧[V]、または、高電圧側蓄電装置BHに流れる電流の積算値[Ah]などとする。
【0044】
低電圧側DCDCコンバータCNVLから出力される電力が、低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)において消費される電力より大きい場合、低電圧側DCDCコンバータCNVLから出力される電力のうち、低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)で消費される電力以外の残りの電力が低電圧側蓄電装置BLに供給される。高電圧側DCDCコンバータCNVHや低電圧側DCDCコンバータCNVLから低電圧側蓄電装置BLに電力が供給されると、低電圧側蓄電装置BLが充電され低電圧側蓄電装置BLの充電量CL(図示略)が増加する。また、低電圧側DCDCコンバータCNVLから出力される電力が、低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)において消費される電力より小さい場合、低電圧側DCDCコンバータCNVLから出力される電力が低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)に供給されるとともに足りない分の電力が低電圧側蓄電装置BLから低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)に供給される。低電圧側蓄電装置BLから低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)に電力が供給されると、低電圧側蓄電装置BLが放電され低電圧側蓄電装置BLの充電量CL(図示略)が減少する。なお、充電量CL(図示略)とは、低電圧側蓄電装置BLの充電率[%](低電圧側蓄電装置BLの満充電容量に対する残容量の割合)、または、低電圧側蓄電装置BLに電流が流れていないときの低電圧側蓄電装置BLの開回路電圧[V]、または、低電圧側蓄電装置BLに電流が流れているときの低電圧側蓄電装置BLの閉回路電圧[V]、または、低電圧側蓄電装置BLに流れる電流の積算値[Ah]などとする。
【0045】
電流センサSifは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、燃料電池FCから高電圧側DCDCコンバータCNVHに流れる電流Ifc(図示略)を検出し、その検出した電流Ifcを制御部3に送る。
【0046】
電圧センサSvfは、分圧抵抗などにより構成され、燃料電池FCの電圧Vfc(図示略)を検出し、その検出した電圧Vfcを制御部3に送る。
【0047】
記憶部2は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などにより構成される。記憶部2は、制御部3による各種制御に使用するための各種情報を記憶する。
【0048】
制御部3は、マイクロコンピュータなどにより構成される。制御部3は、燃料電池システム1の稼働時、高電圧側蓄電装置BHの充電量CH(図示略)に応じて目標発電電力Pt(図示略)を段階的に変化させてもよい。制御部3は、燃料電池システム1の稼働時、燃料電池FCの発電電力(電流Ifc(図示略)と電圧Vfc(図示略)との乗算値)が目標発電電力Pt(図示略)に追従するように、高電圧側内部負荷(高電圧側対象負荷、48V系負荷)及び低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)の動作を制御してもよい。例えば、制御部3は、燃料電池システム1の稼働時、PI(Proportional-Integral)制御により、燃料電池FCの発電電力と目標発電電力Pt(図示略)との差がゼロになるように、高電圧側内部負荷(高電圧側対象負荷、48V系負荷)及び低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)の動作を制御してもよい。
【0049】
このように、高電圧側DCDCコンバータCNVH及び低電圧側DCDCコンバータCNVLに繋がる伝送路は、燃料電池FC又は蓄電装置(低電圧側蓄電装置BL、高電圧側蓄電装置BH)からの電圧が供給される高電圧ラインを構成する。また、高電圧側DCDCコンバータCNVH及び低電圧側DCDCコンバータCNVLは、高電圧ラインに接続されるとともに、燃料電池FC又は蓄電装置(低電圧側蓄電装置BL、高電圧側蓄電装置BH)からの電圧を下流側に変圧する。高電圧側DCDCコンバータCNVHは、相対的に高い電圧領域での変圧(例えば36V⇒48V)を行い、低電圧側DCDCコンバータCNVLは、相対的に低い電圧領域での変圧(例えば48V⇒12V)を行う。すなわち、燃料電池システム1は、システム電源(例えば48V)と制御電源(例えば12V)を有しており、制御電源は、12VのDCDCコンバータを複数並列に接続させてシステム電源を変換し、12Vバッテリで平滑化している。DCDCコンバータは、入出力回路(入出力端子)を有するとともに、出力側の過電流/電流制限を行う保護機能を有している。この場合、高電圧側DCDCコンバータCNVHは、自己監視機能(例えばCAN通信等により自己診断結果を外部送信する機能)が搭載されるのに対して、低電圧側DCDCコンバータCNVLは、自己監視機能(例えばCAN通信等により自己診断結果を外部送信する機能)が搭載されなくてもよい。
【0050】
ところで、燃料電池システム1の異常判定、とりわけ低電圧側DCDCコンバータCNVLの異常判定を行う場合、低電圧側DCDCコンバータCNVLに供給される電流をモニタリングして、そのモニタリング結果に応じて、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の正常・異常の判定を行うことが考えられる。
【0051】
しかしながら、本発明者の鋭意研究によると、複数の低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)の特性に起因した突入電流や保持電流による検出電流の変動(電流波形に与える影響)が大きいため(無視できないため)、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の正常・異常の判定を行うための基準となる閾値を大きく設定せざるを得ないという問題がある。その結果、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の初期段階での異常兆候を検出することが困難になってしまう。ここで、「燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の初期段階での異常兆候」とは、回路(半導体やスイッチング素子)の短絡(ショート)といった致命的な事象(故障)に至ってはいないが、その状況を放置するとやがて故障に陥ってしまう可能性が高い状況を意味する。
【0052】
例えば、従来の燃料電池システムでは、当該燃料電池システムの主制御ECU(Electronic Control Unit)により、低電圧側DCDCコンバータの供給電流を常時検出しているが、複数の低電圧側内部負荷の動作不安定性(コイル負荷、モータ負荷、ECUの電源負荷等のオンオフに起因)のため、その検出電流も大きく変動する。このため、全ての低電圧側内部負荷の突入電流や保持電流を目安に閾値を大きく設定する(例えば30A)。そして、閾値以上の電流値を一定時間以上検知した場合に、低電圧側DCDCコンバータの入力側のリレーをオフにする。以上の従来の燃料電池システムでは、燃料電池システム(低電圧側DCDCコンバータ)の異常時に入力側の大きな電流(過電流)は検知可能だが、「燃料電池システム(低電圧側DCDCコンバータ)の初期段階での異常兆候」は検知できない。
【0053】
本実施形態では、上記の問題を重要な技術課題として捉えて、燃料電池FC又は蓄電装置(低電圧側蓄電装置BL、高電圧側蓄電装置BH)からの電圧により稼働される負荷のうち、検出電流の変動が起こり易い「対象負荷」を設定・選択する。より具体的に、負荷は、高電圧側DCDCコンバータCNVHに対応する高電圧側内部負荷(高電圧側対象負荷、48V系負荷)と、低電圧側DCDCコンバータCNVLに対応する低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)を含むところ、「対象負荷」を低電圧側内部負荷(低電圧側対象負荷、12V系負荷)の少なくとも一部とすることができる。例えば、「対象負荷」は、主止弁SV、インジェクタINJ、気液分離機GLS、排気排水弁EDV、希釈器DIL、エア調圧弁ARV、エアシャット弁ASV、ラジエタR、ファンF、インタークーラIC、及び制御部3の全部又は一部であってもよい。また、「対象負荷」は、インジェクタとバルブとモータとコイル負荷と抵抗負荷との少なくとも1つを含む負荷であってもよい。そして、「対象負荷」の稼働状態と非稼働状態とで、低電圧側DCDCコンバータCNVLに供給される電流に基づく異なる態様で、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の正常・異常の判定を行う。ここで、「対象負荷」の稼働状態と非稼働状態の切り替え制御(オンオフ制御)は、制御部3により実行されてもよい。
【0054】
上記のように、燃料電池システム1に含まれる負荷のうちのどれを「対象負荷」に設定するかには自由度があり、種々の設計変更が可能であるが、とりわけ、インジェクタINJを「対象負荷」に設定することが好ましい。これは、インジェクタINJの突入電流や保持電流による検出電流の変動が大きいためである。
【0055】
図2A、
図2Bは、低電圧側DCDCコンバータCNVL及びその周辺部位を拡大して描いた図である。
【0056】
図2A、
図2Bに示すように、低電圧側DCDCコンバータCNVLの上流側(前段)には、高電圧側DCDCコンバータCNVHまたは高電圧側蓄電装置BHから供給される電流を検出する電流センサ4が設けられている。また、電流センサ4と低電圧側DCDCコンバータCNVLの間の伝送路には、当該伝送路の導通・遮断を切り替えるためのリレースイッチ5が設けられている。
【0057】
制御部3は、電流センサ4による検出電流に基づいて、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の正常・異常の判定を行う。
【0058】
より具体的に、制御部3は、「対象負荷」の稼働状態では、電流センサ4による検出電流を第1の閾値と比較することで、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の正常・異常の判定を行う。例えば、制御部3は、電流センサ4による検出電流が第1の閾値未満である場合は、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)が正常である、すなわち、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)が故障していないと判定する。また、制御部3は、電流センサ4による検出電流が第1の閾値以上である場合は、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)が異常である、すなわち、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)が故障していると判定する。
【0059】
一方、制御部3は、「対象負荷」の非稼働状態では、電流センサ4による検出電流を第1の閾値よりも低い第2の閾値と比較することで、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の正常・異常の判定を行う。例えば、制御部3は、電流センサ4による検出電流が第2の閾値未満である場合は、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)が正常である、すなわち、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の初期段階での異常兆候が存在しないと判定する。また、制御部3は、電流センサ4による検出電流が第2の閾値以上である場合は、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)が異常である、すなわち、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の初期段階での異常兆候が存在すると判定する。
【0060】
ここで、第1、第2の閾値は、第1の閾値>第2の閾値を満足する限りにおいて設定の自由度があるが、例えば、第1の閾値を30Aに設定して、第2の閾値を5Aに設定することが可能である。「対象負荷」の稼働状態で使用される第1の閾値は、対象負荷による電流変動を考慮した大きな値に設定され、「対象負荷」の非稼働状態で使用される第2の閾値は、対象負荷による電流変動を想定しない小さな値に設定される。
【0061】
制御部3は、「対象負荷」の稼働状態と非稼働状態にかかわらず、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の異常を判定したとき(第1の閾値または第2の閾値以上の電流値を一定時間以上検知したとき)は、低電圧側DCDCコンバータCNVLへの電流供給を停止する。すなわち、制御部3は、正常判定時には導通状態(オン状態)で低電圧側DCDCコンバータCNVLへの電流供給を許容するリレースイッチ5を操作して、異常判定時の遮断状態(オフ状態)に切り替える。
図2Aはリレースイッチ5の導通状態(オン状態)を描いており、
図2Bはリレースイッチ5の遮断状態(オフ状態)を描いている。
【0062】
続いて、「対象負荷」が稼働状態と非稼働状態になる時間的なタイミングについて説明する。上述したように、「対象負荷」の稼働状態と非稼働状態の切り替え制御(オンオフ制御)は、制御部3により実行されてもよい。
【0063】
図3A~
図3Cは、対象負荷が稼働状態と非稼働状態になる時間的なタイミングの一例を示す図である。
図3A~
図3Cにおいて、燃料電池システム1の運転開始から運転終了までを便宜的にフェーズ0~フェーズ100で定義する(図中の左から右に向かってフェーズが進む)。そして、運転開始後のフェーズ0~フェーズ15を「燃料電池システム1の始動フェーズ(キーオンフェーズ)」と定義し、運転終了前のフェーズ85~フェーズ100を「燃料電池システム1の終了フェーズ(キーオフフェーズ)」と定義し、フェーズ15~フェーズ85を「燃料電池システム1の運転中フェーズ」と定義する。「燃料電池システム1の運転中フェーズ」では、燃料電池システム1の運転と休止を周期的に繰り返す間欠運転モードを実行する。なお、この間欠運転モードは必須ではなく、燃料電池システム1の運転中フェーズでは、休止期間を設けることなく、断続的な運転期間を設けてもよい。
【0064】
図3Aでは、燃料電池システム1の始動フェーズにおいて、「対象負荷」が非稼働状態となり、その他の負荷が稼働状態となり、第2の閾値を基準とした異常判定が実行される。
図3Bでは、燃料電池システム1の終了フェーズにおいて、「対象負荷」が非稼働状態となり、その他の負荷が稼働状態となり、第2の閾値を基準とした異常判定が実行される。
図3Cでは、燃料電池システム1の間欠運転モードにおける休止フェーズにおいて、「対象負荷」が非稼働状態となり、その他の負荷が稼働状態となり、第2の閾値を基準とした異常判定が実行される。このように、「対象負荷」は、燃料電池システム1の始動フェーズと、燃料電池システム1の終了フェーズと、燃料電池システム1の間欠運転モードにおける休止フェーズとの少なくとも1つにおいて非稼働状態となり、それ以外のフェーズにおいて稼働状態となる。「対象負荷」の稼働状態では、第2の閾値よりも大きい第1の閾値を基準とした異常判定が実行される。
【0065】
図3A~
図3Cに示すように、突入電流や保持電流等の電流変動の影響を受け易い対象負荷(コイルやモータを有する負荷)が非稼働状態となるタイミングに注目して(対象負荷が動作していないタイミングを制御的に設けて)、第2の閾値を基準とした判定を行うことで、故障には至らないまでも燃料電池システム1の初期段階での異常兆候を検知することができる。
【0066】
図4は、実施形態の燃料電池システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
図4の各処理ステップは、例えば、制御部3を構成するコンピュータ(CPU:Central Processing Unit)によって実行される。
【0067】
ステップST1では、突入電流や保持電流等の電流変動の影響を受け易い対象負荷(コイルやモータを有する負荷)が稼働状態であるか否かを判定する。対象負荷が稼働状態である場合には(ステップST1:Yes)、ステップST2に進み、対象負荷が非稼働状態である場合には(ステップST1:No)、ステップST5に進む。
【0068】
ステップST2では、電流センサ4による検出電流を第1の閾値と比較することで、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の正常・異常の判定を行う。燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)が正常である場合には(ステップST2:Yes)、ステップST3に進んで、リレースイッチ4を導通状態(オン状態)として低電圧側DCDCコンバータCNVLへの電流供給を許容する。燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)が異常である場合には(ステップST2:No)、ステップST4に進んで、リレースイッチ5を遮断状態(オフ状態)として低電圧側DCDCコンバータCNVLへの電流供給を禁止する。
【0069】
ステップST5では、電流センサ4による検出電流を第1の閾値よりも低い第2の閾値と比較することで、燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)の正常・異常の判定を行う。燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)が正常である場合には(ステップST5:Yes)、ステップST6に進んで、リレースイッチ4を導通状態(オン状態)として低電圧側DCDCコンバータCNVLへの電流供給を許容する。燃料電池システム1(低電圧側DCDCコンバータCNVL)が異常である場合には(ステップST5:No)、ステップST7に進んで、リレースイッチ5を遮断状態(オフ状態)として低電圧側DCDCコンバータCNVLへの電流供給を禁止する。
【0070】
このように、本実施形態では、電流センサによる検出電流に基づいて燃料電池システムの正常・異常の判定を行う制御部が、対象負荷の稼働状態では、電流センサによる検出電流を第1の閾値と比較することで、燃料電池システムの正常・異常の判定を行い、対象負荷の非稼働状態では、電流センサによる検出電流を第1の閾値よりも低い第2の閾値と比較することで、燃料電池システムの正常・異常の判定を行う。検出電流の変動が起こり易い対象負荷を設定・選択して、当該対象負荷の稼働状態では、電流センサによる検出電流を第1の閾値と比較することで、燃料電池システムの正常・異常の判定を行い、当該対象負荷の非稼働状態では、電流センサによる検出電流を第1の閾値よりも低い第2の閾値と比較することで、燃料電池システムの正常・異常の判定を行う。すなわち、対象負荷の稼働状態では、当該対象負荷に起因する検出電流の変動を考慮した相対的に高い第1の閾値を基準として、燃料電池システムの故障判定を行う一方、対象負荷の非稼働状態では、当該対象負荷に起因する検出電流の変動を考慮しない相対的に低い第2の閾値を基準として、故障には至らないまでも燃料電池システムの初期段階での異常兆候を検知する。これにより、燃料電池システムの正常・異常の判定を適切に実行することができる。
【0071】
また、本実施形態では、燃料電池システムの開始フェーズ(例えばキーオン時)や終了フェーズ(例えばキーオフ時)に、突入電流や保持電流等の電流変動の影響を受け易い対象負荷(コイルやモータを有する負荷)が停止しているタイミングを見計らって異常電流の検知を行う。このため、DCDCコンバータの初期段階での異常兆候を検知して、修理や交換等の適切な手当てを行うことで、燃料電池システムの内部の他の構成部品(例えばハーネスやリレー等)への電気的ストレスを軽減することができる。また、交換部品や修理箇所を少なくできる効果も得られる。さらに、入力側や出力側のセンサを無暗に増やすことなく、精度が高い故障検知が可能となる。
【0072】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0073】
例えば、上記実施形態では、低電圧側DCDCコンバータCNVLの近傍に電流センサを設けて、低電圧側DCDCコンバータCNVLに供給される電流を検出する場合を例示して説明したが、高電圧側DCDCコンバータCNVHの近傍に電流センサを設けて、高電圧側DCDCコンバータCNVHに供給される電流を検出してもよい(高電圧側DCDCコンバータCNVHの異常判定を行ってもよい)。また、低電圧側DCDCコンバータCNVLと高電圧側DCDCコンバータCNVHを1つのコンバータとして捉えて、当該1つのコンバータの近傍に電流センサを設けて、当該1つのコンバータに供給される電流を検出してもよい(当該1つのコンバータの異常判定を行ってもよい)。また、異なる電圧領域の複数のDCDCコンバータ(例えば48V系と12V系のDCDCコンバータ)と、異なる電圧領域の複数の負荷(例えば48V系と12V系の負荷)を組み合わせて、本実施形態の燃料電池システム1を構成してもよい。
【0074】
例えば、本実施形態の燃料電池システム1のマイコン内で異常判定の演算を実施するのではなく、異常判定の演算に必要なデータ(例えば燃料電池システム1の稼働状態等)をクラウド上にアップロードして、クラウド上で自動解析する態様も可能である。
【0075】
例えば、対象負荷を変動電流の度合いに応じた複数のグループに分けて、一部のグループの対象負荷のみが稼働停止している場合、全てのグループの対象負荷が稼働停止している場合、及び全てのグループの対象負荷が稼働している場合で、異常判定を実行する基準となる閾値を変えることも可能である。対象負荷グループX、Yが存在する場合、対象負荷グループX、Yがともに稼働している場合には、最も大きい第1の閾値を使用し、対象負荷グループX、Yの一方が稼働して他方が稼働停止している場合には、2番目に大きい第2の閾値を使用し、対象負荷グループX、Yがともに稼働停止している場合には、最も小さい第3の閾値を使用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 燃料電池システム
2 記憶部
3 制御部(低電圧側内部負荷、低電圧側対象負荷、12V系負荷)
4 電流センサ
5 リレースイッチ
Ve 車両
Lo 外部負荷
FC 燃料電池
T 燃料タンク
SV 主止弁(低電圧側内部負荷、低電圧側対象負荷、12V系負荷)
INJ インジェクタ(低電圧側内部負荷、低電圧側対象負荷、12V系負荷)
GLS 気液分離機(低電圧側内部負荷、低電圧側対象負荷、12V系負荷)
HP 循環ポンプ(高電圧側内部負荷、高電圧側対象負荷、48V系負荷)
EDV 排気排水弁(低電圧側内部負荷、低電圧側対象負荷、12V系負荷)
DIL 希釈器(低電圧側内部負荷、低電圧側対象負荷、12V系負荷)
ACP エアコンプレッサ(高電圧側内部負荷、高電圧側対象負荷、48V系負荷)
ARV エア調圧弁(低電圧側内部負荷、低電圧側対象負荷、12V系負荷)
ASV エアシャット弁(低電圧側内部負荷、低電圧側対象負荷、12V系負荷)
R ラジエタ(低電圧側内部負荷、低電圧側対象負荷、12V系負荷)
F ファン(低電圧側内部負荷、低電圧側対象負荷、12V系負荷)
WP ウォータポンプ(高電圧側内部負荷、高電圧側対象負荷、48V系負荷)
IC インタークーラ(低電圧側内部負荷、低電圧側対象負荷、12V系負荷)
CNVH 高電圧側DCDCコンバータ(DCDCコンバータ)
CNVL 低電圧側DCDCコンバータ(DCDCコンバータ)
BH 高電圧側蓄電装置(蓄電装置)
BL 低電圧側蓄電装置(蓄電装置)
Sif 電流センサ
Svf 電圧センサ