(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180408
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】マニピュレータ搬送用治具
(51)【国際特許分類】
B66C 1/62 20060101AFI20231214BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B66C1/62 Z
B25J19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093699
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 隼弘
【テーマコード(参考)】
3C707
3F004
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS12
3C707BS13
3C707HS27
3F004EA40
(57)【要約】
【課題】マニピュレータを簡易に且つ安定して搬送可能なマニピュレータ搬送用治具を提供することである。
【解決手段】マニピュレータ搬送用治具100は、搬送姿勢で搬送される垂直多関節型のマニピュレータ10に取り付けられるマニピュレータ搬送用治具であって、マニピュレータ10の基台20に固設される第1部分110と、第1部分110の両端から上方に延伸する2つの第2部分120A,120Bと、を備え、2つの第2部分120A,120Bの先端領域に、マニピュレータ10を吊持するための孔部121A,121Bがそれぞれ設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送姿勢で搬送される垂直多関節型のマニピュレータに取り付けられるマニピュレータ搬送用治具であって、
前記マニピュレータの基台に固設される第1部分と、
前記第1部分の両端から上方に延伸する2つの第2部分と、を備え、
前記2つの第2部分の先端領域に、前記マニピュレータを吊持するための孔部がそれぞれ設けられている、
マニピュレータ搬送用治具。
【請求項2】
前記マニピュレータに取り付けられた際に、前記孔部は、前記マニピュレータの重心位置よりも高い位置に位置する、
請求項1に記載のマニピュレータ搬送用治具。
【請求項3】
前記第1部分は、
前記マニピュレータの基台の上面に当接して固設される基面部と、
前記基面部のうち、前記マニピュレータの基台側に配置される下部アームの基端側において立直するように形成されたリブと、を含む、
請求項1に記載のマニピュレータ搬送用治具。
【請求項4】
前記2つの第2部分は、前記マニピュレータの基台側に配置される下部アームの基端側とは反対側において、それぞれ内側に向かって形成されたリブを有する、
請求項3に記載のマニピュレータ搬送用治具。
【請求項5】
前記2つの第2部分は、前記孔部が設けられる位置よりも下方において、前記マニピュレータの基台側に配置される下部アームの基端側から遠ざかる方向に凹む領域を有する、
請求項1に記載のマニピュレータ搬送用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータ搬送用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業界において、多くのロボットが普及している。当該ロボットは、例えば、電子部品及び機械部品の組み立て、溶接及び搬送等に用いられ、工場の生産ラインの効率化及び自動化が図られている。これらのロボットとして、例えば、6軸などの複数の軸を備えたマニピュレータが知られており、複数の軸それぞれにおいて、モータによって各アームを動作させる。
【0003】
このようなマニピュレータを入出荷したり、工場内に設置したりする際には、モータに負荷や衝撃が掛からないようにマニピュレータを搬送することが好ましい。モータに負荷や衝撃が加わると、モータの故障に繋がり、その結果、各アームを適切に動作させることができなくなる虞があるためである。
【0004】
ところで、特許文献1では、載置台に載置された搬送物を載置台とともに吊り上げる吊り具に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、マニピュレータを搬送する際に、当該マニピュレータを載置台に載置しなければならないため、作業用スペースを設けたり、また、載置台の保守や点検などを行ったりする必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、マニピュレータを簡易に且つ安定して搬送可能なマニピュレータ搬送用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るマニピュレータ搬送用治具は、搬送姿勢で搬送される垂直多関節型のマニピュレータに取り付けられるマニピュレータ搬送用治具であって、マニピュレータの基台に固設される第1部分と、第1部分の両端から上方に延伸する2つの第2部分と、を備え、2つの第2部分の先端領域に、マニピュレータを吊持するための孔部がそれぞれ設けられている。
【0009】
この態様によれば、第1部分は、マニピュレータの基台に固設され、2つの第2部分は、第1部分の両端から上方に延伸され、2つの第2部分の先端領域に、マニピュレータを吊持するための孔部がそれぞれ設けられている。すなわち、マニピュレータのうちの低い位置にマニピュレータ搬送用治具を取り付けて、高い位置の孔部で吊り上げ部材と連結してマニピュレータを吊持することにより、マニピュレータを簡易に且つ安定して搬送することができる。
【0010】
上記態様において、マニピュレータに取り付けられた際に、孔部は、マニピュレータの重心位置よりも高い位置に位置してもよい。
【0011】
この態様によれば、孔部は、マニピュレータの重心位置よりも高い位置に位置しているため、マニピュレータを吊持する際に、より安定して、マニピュレータを吊持することができる。
【0012】
上記態様において、マニピュレータの基台の上面に当接して固設される基面部と、基面部のうち、マニピュレータの基台側に配置される下部アームの基端側において立直するように形成されたリブと、を含んでもよい。
【0013】
この態様によれば、基面部は、マニピュレータの基台の上面に当接して固設され、基面部のうち下部アームの基端側において立直するようにリブが形成されているため、マニピュレータ搬送用治具の強度が向上するとともに、下部アームの基端側とは反対側から作業する際にリブが邪魔にならず、マニピュレータ搬送用治具をマニピュレータの基台の上面に取り付けることができる。
【0014】
上記態様において、2つの第2部分は、マニピュレータの基台側に配置される下部アームの基端側とは反対側において、それぞれ内側に向かって形成されたリブを有してもよい。
【0015】
この態様によれば、2つの第2部分は、マニピュレータの下部アームの基端側とは反対側において、それぞれ内側に向かってリブが形成されているため、下部アームの基端側とは反対側から作業する際にリブが邪魔にならず、さらに、マニピュレータ搬送用治具の強度を向上させることができる。
【0016】
上記態様において、2つの第2部分は、孔部が設けられる位置よりも下方において、マニピュレータの基台側に配置される下部アームの基端側から遠ざかる方向に凹む領域を有してもよい。
【0017】
この態様によれば、2つの第2部分は、孔部が設けられる位置よりも下方において、マニピュレータの下部アームの基端側から遠ざかる方向に凹む領域を有しているため、ケーブルを配置し易い構成となっている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、マニピュレータを簡易に且つ安定して搬送可能なマニピュレータ搬送用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る溶接ロボットシステムに用いられるマニピュレータ10の概要を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るマニピュレータ搬送用治具100の構成を示す図である。
【
図3】マニピュレータ搬送用治具100がマニピュレータ10に取り付けられた状態を示す一具体例である。
【
図4】マニピュレータ搬送用治具100がマニピュレータ10に取り付けられた状態で吊持される様子を示す一具体例である。
【
図5】他の実施例に係るマニピュレータ搬送用治具200の構成を示す図である。
【
図6】他の実施例に係るマニピュレータ搬送用治具300の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0021】
<一実施形態>
[マニピュレータの概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る溶接ロボットシステムに用いられるマニピュレータ10の概要を示す図である。
図1に示されるように、マニピュレータ10は、6軸の垂直多関節ロボットであり、基台20、下部アーム30、上部アーム40、手首50、およびエンドエフェクタ(溶接トーチ、図示せず)を備え、さらに、これらを接続する各軸(各関節)は、サーボモータによって動作する。
【0022】
マニピュレータ10は、下部アーム30及び上部アーム40などが折り畳まれて、全体として小型化された状態である搬送姿勢で搬送される。
【0023】
[マニピュレータ搬送用治具の構成]
図2は、本発明の一実施形態に係るマニピュレータ搬送用治具100の構成を示す図であり、
図3は、マニピュレータ搬送用治具100がマニピュレータ10に取り付けられた状態を示す一具体例である。
図2に示されるように、マニピュレータ搬送用治具100は、第1部分110及び2つの第2部分120A,120Bを備える略U字形状であり、
図3に示されるように、マニピュレータ搬送用治具100は、下部アーム30及び上部アーム40が折り畳まれた状態のマニピュレータ10に取り付けられている。
【0024】
(第1部分について)
図3に示されるように、第1部分110は、マニピュレータ10の基台20に固設されている。典型的には、第1部分110は、略水平方向に延伸する形状であって、マニピュレータ10の基台20の上面に当接する基面部111を有する。
【0025】
マニピュレータ搬送用治具100をマニピュレータ10に取り付ける方法としては、例えば、マニピュレータ10の基台20に雌ネジを形成しておき、第1部分110は、当該基台20に形成された雌ネジの位置に適合するように、基面部111に貫通孔を設けておく。そして、雄ネジが当該貫通孔を介して雌ネジに締結されることによって、第1部分110の基面部111をマニピュレータ10の基台20の上面に当接するように固設すればよい。すなわち、マニピュレータ搬送用治具100をマニピュレータ10に取り付ける。
【0026】
なお、マニピュレータ10の基台20に形成される雌ネジ及びマニピュレータ搬送用治具100の第1部分110の基面部111に設けられる貫通孔は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0027】
さらに、マニピュレータ10の基台20に形成される雌ネジの数と、マニピュレータ搬送用治具100の第1部分110の基面部111に設けられる貫通孔の数とは、同一でなくても構わないし、雄ネジを用いて全てを締結させなくても構わない。マニピュレータ搬送用治具100をマニピュレータ10に取り付けて、当該マニピュレータ10を吊持して搬送する際に、その強度を確保することができるように、適宜、必要な数及び箇所でのみ雄ネジを用いて締結させるとよい。例えば、異なる大きさや種類のマニピュレータに対しても、そのマニピュレータに応じて設けられた雌ネジの位置に第1部分110の基面部111に設けられた貫通孔のいずれかを適合させることにより、マニピュレータ搬送用治具100を用いることができる。
【0028】
また、第1部分110の基面部111に設けられる貫通孔の形状は、典型的には、円形や正方形などであるが、これに限定されるものではなく、例えば、第1部分110の長手方向に沿って、長方形、楕円形又は長円形であっても構わない。このように貫通孔の形状により、その貫通孔の範囲において締結位置を調整できるため、マニピュレータ搬送用治具100をマニピュレータ10に取り付ける位置において微調整が可能となる。これにより、マニピュレータ10の種類又はマニピュレータ10の基台20に形成される雌ネジの位置に応じて、マニピュレータ搬送用治具100を汎用的に適合させることができる。
【0029】
第1部分110は、基面部111のうち、マニピュレータ10の基台20側に配置される下部アーム30の基端側において立直するように形成されたリブ112を有する。具体的には、リブ112は、基面部111から略垂直に上方に延伸し、基面部111の長手方向に沿って形成されている。なお、基面部111とリブ112とは、例えば、1枚の金属板から折り曲げ加工により形成されるとよい。
【0030】
リブ112は、第1部分110の両端からそれぞれ上方に延伸する2つの第2部分120A,120Bの下端部近傍同士を繋ぐように構成されているため、第1部分110と2つの第2部分120A,120Bとの連結(一体性)をより強固なものとしている。すなわち、マニピュレータ搬送用治具100の強度を確保している。例えば、リブ112と、2つの第2部分120A,120Bの下端部近傍それぞれとは、溶接によって接続されているとよい。
【0031】
リブ112は、基面部111のうちマニピュレータ10の下部アーム30の基端側(
図3の奥側)において立直するように形成されていることにより、次のような利点がある。例えば、マニピュレータ搬送用治具100をマニピュレータ10の基台20の上面に取り付ける際、下部アーム30の基端側は、基台20と連結部分(第2軸)が存在して邪魔になるため、作業者は、下部アーム30の基端側とは反対側(
図3の手前側)から作業する。この際、リブ112は、下部アーム30の基端側(
図3の奥側)において立直するように形成されていることにより、下部アーム30の基端側とは反対側(
図3の手前側)においては、邪魔になることなく、作業者は、作用し易く、マニピュレータ搬送用治具100をマニピュレータ10の基台20の上面に、容易に取り付けることができる。さらに、作業する際には、第2軸を駆動させて下部アーム30の先端側を上方に移動させれば、下部アーム30の基端側とは反対側(
図3の手前側)は、より広く使用することもできる。
【0032】
第1部分110は、基面部111及びリブ112の一部に切り欠き部113を有する。例えば、マニピュレータ10において第1軸のモータが内蔵されており、そのモータカバーが基台20の上面に突起して現れている場合、当該突起部分に切り欠き部113を対応させることにより、マニピュレータ搬送用治具100の第1部分110の基面部111をマニピュレータ10の基台20の上面に適切に当接させることができる。その結果、マニピュレータ搬送用治具100をマニピュレータ10の基台20の上面に安定して取り付けることができる。
【0033】
また、マニピュレータ搬送用治具100をマニピュレータ10の基台20の上面に取り付ける際に、作業者は、切り欠き部113を利用して、当該マニピュレータ搬送用治具100を把持することによって、安定して保持することができる。すなわち、作業者は、所望の位置において、マニピュレータ搬送用治具100を安定して固定させて、容易に、マニピュレータ10に取り付けることができる。
【0034】
なお、切り欠き部113が形成される位置や形状は、これに限定されるものではなく、例えば、マニピュレータ搬送用治具100が取り付けられるマニピュレータ10の基台20の上面の形状に応じて形成されるとよい。
【0035】
(第2部分について)
2つの第2部分120A,120Bは、第1部分110の両端からそれぞれ上方に延伸するように形成されている。例えば、2つの第2部分120A,120Bは、マニピュレータ搬送用治具100がマニピュレータ10に取り付けられた際に、マニピュレータ10の基台20の上面に当接して固設された第1部分110の両端からそれぞれ上方に延伸して、折り畳まれたマニピュレータ10の下部アーム30を両側から挟み込むように形成されている。さらに、典型的には、2つの第2部分120A,120Bは、平行に対向するように形成されており、第1部分110の両端において、当該第1部分110と、2つの第2部分120A,120Bの下端部それぞれとは、溶接によって接続されているとよい。
【0036】
2つの第2部分120A,120Bの先端領域には、マニピュレータ10を吊持するための孔部121A,121Bがそれぞれ設けられている。例えば、2つの第2部分120A,120Bの先端領域における孔部121A,121Bは、対向するように設けられており、孔部121A,121Bに、マニピュレータ10を上から吊持するための紐状又は棒状の吊持部材の先端に備えられたフックなどを引っ掛ける。また、マニピュレータ10を上から吊持するための紐状の吊持部材を、孔部121A,121Bに挿通させることにより、当該吊持部材によってマニピュレータ10を上から吊持しても構わない。
【0037】
図4は、マニピュレータ搬送用治具100がマニピュレータ10に取り付けられた状態で吊持される様子を示す一具体例である。
図4に示されるように、2つの第2部分120A,120Bの先端領域における孔部121A,121Bは、対向するように設けられていることにより、マニピュレータ10の下部アーム30を挟み込むように両側からバランス良く吊持することができる。
【0038】
なお、マニピュレータ10は、一般的に、基台20の重量が大きく、その基台20よりも可能な限り上方において、上述した吊持部材によって吊持されると安定する。例えば、
図4に示されるように、2つの第2部分120A,120Bの先端領域における孔部121A,121Bは、下部アーム30の基端側の第2軸の中心位置31の水平位置よりも上方に設けられるとよい。
【0039】
さらに、2つの第2部分120A,120Bの先端領域におけるそれぞれ孔部121A,121Bは、マニピュレータ搬送用治具100がマニピュレータ10に取り付けられた際に、当該マニピュレータ10の重心位置よりも高い位置に位置するように形成されているとよい。換言すれば、2つの第2部分120A,120Bは、第1部分110の両端から上方に所定の長さ以上、延伸して形成されており、マニピュレータ10の基台20よりも所定の長さ以上、高い位置に位置する孔部121A,121Bにおいて、上述した吊持部材によって吊持される。これにより、マニピュレータ10を吊持する際に、より安定して、マニピュレータ10を吊持することができる。
【0040】
図2及び
図3に示されるように、2つの第2部分120A,120Bは、マニピュレータ10の下部アーム30の基端側とは反対側において、それぞれ内側に向かって形成されたリブ122A,122Bを有する。具体的には、リブ122A,122Bは、2つの第2部分120A,120Bにおいて、それぞれ孔部121A,121Bが形成される面から略垂直に内側に向かって形成され、2つの第2部分120A,120Bの上下方向に沿って形成されている。なお、第2部分120Aにおけるリブ122A及び第2部分120Bにおけるリブ122Bそれぞれは、例えば、1枚の金属板から折り曲げ加工により形成されるとよい。
【0041】
リブ122A,122Bは、2つの第2部分120A,120Bそれぞれをより強固なもとし、マニピュレータ搬送用治具100の強度を確保している。さらに、リブ122A,122Bは、マニピュレータ10の下部アーム30の基端側とは反対側に形成されており、上述した第1部分110のリブ112と対向する位置関係にある。これにより、当該対向する方向におけるマニピュレータ搬送用治具100の剛性をさらに向上させることができる。
【0042】
リブ122A,122Bは、マニピュレータ10の下部アーム30の基端側とは反対側に形成されているものの、第1部分110の両端部分であり、第1部分110の中央部分には存在しない。このため、作業者は、下部アーム30の基端側とは反対側から作業する際に、リブ122A,122Bが邪魔になることなく、作業者は、作用し易く、マニピュレータ搬送用治具100をマニピュレータ10の基台20の上面に、容易に取り付けることができる。
【0043】
2つの第2部分120A,120Bは、孔部121A,121Bが設けられる位置よりも下方において、マニピュレータ10の下部アーム30の基端側から遠ざかる方向に凹む領域123A,123Bを有する。具体的には、凹む領域123A,123Bは、2つの第2部分120A,120Bにおいて、孔部121A,121Bが設けられている領域よりも細くなるように形成されている。
【0044】
このように、凹む領域123A,123Bが形成されることにより、マニピュレータ搬送用治具100の必要な強度を確保した上で、無駄な材料コストを削減しつつ、当該凹んだ領域には、例えば、ケーブルなどを配置し易い構成とすることができる。具体的には、下部アーム30の外側には、通常、下部アーム30及び上部アーム40に這わせるようにして、マニピュレータ10の先端のエンドエフェクタ等に電力を供給するためのケーブルなどを取り付けることがある。各軸部分には可動範囲があるため、ケーブルの長さに余裕を持って配置させる関係上、ケーブルが膨らんで取り付けられることがある。そのため、2つの第2部分120A,120Bにおいて、マニピュレータ10の下部アーム30の中心部分に近い側には、リブ122A,122Bが設けられ、第2軸に近い側には、リブがなく且つ凹む領域123A,123Bが形成されていることにより、ケーブルが配置し易い構成としている。
【0045】
以上のように、本発明の一実施形態に係るマニピュレータ搬送用治具100によれば、第1部分110は、マニピュレータ10の基台20に固設され、2つの第2部分120A,120Bは、第1部分110の両端から上方に延伸するように形成され、マニピュレータ搬送用治具100は、略U字形状となっている。そして、2つの第2部分120A,120Bの先端領域には、マニピュレータ10を吊持するための孔部121A,121Bがそれぞれ設けられているため、マニピュレータ10のうちの低い位置にマニピュレータ搬送用治具100を取り付けて、高い位置の孔部121A,121Bで吊り上げ部材と連結してマニピュレータ10を吊持することにより、マニピュレータ10を簡易に且つ安定して搬送することができる。
【0046】
また、マニピュレータ搬送用治具100は、マニピュレータ10の基台20に取り付けられるため、モータによって駆動する各アームなどに負荷や衝撃が加わることを軽減し、すなわち、モータにも負荷や衝撃が加わることを軽減することができるため、故障を防止することができる。
【0047】
さらに、マニピュレータ搬送用治具100は、ネジなどを用いてマニピュレータ10の基台20に取り付けられるため、載置台やその他保護部材などを用いる必要がなく、容易に、着脱することが可能である。
【0048】
なお、本実施形態においては、マニピュレータ10を6軸の垂直多関節ロボットとして説明したが、マニピュレータ搬送用治具100が取り付けられて搬送されるマニピュレータは、これに限定されるものではなく、例えば、7軸の垂直多関節ロボットであっても構わないし、その他のロボットであっても構わない。
【0049】
<他の実施例>
図5は、他の実施例に係るマニピュレータ搬送用治具200の構成を示す図である。
図5に示されるように、マニピュレータ搬送用治具200は、第1部分210と、第1部分210の両端から斜め上方に延伸する2つの第2部分220A,220Bを備える。
【0050】
マニピュレータ搬送用治具200によれば、マニピュレータ搬送用治具を取り付けるマニピュレータの形状や重心位置に応じて、当該マニピュレータをバランス良く、より安定的に吊持できる場合がある。
【0051】
図6は、他の実施例に係るマニピュレータ搬送用治具300の構成を示す図である。
図6に示されるように、マニピュレータ搬送用治具300は、第1部分310と、第1部分310の両端から上方に延伸する2つの第2部分320A,320Bを備え、2つの第2部分320A,320Bの先端領域には、マニピュレータを吊持するための孔部321A,321Bがそれぞれ設けられている。
【0052】
そして、孔部321A,321Bは、それぞれ3つずつ孔を有する。これらのうち、いずれかの孔に、マニピュレータを上から吊持するための紐状又は棒状の吊持部材の先端に備えられたフックなどを引っ掛けることにより、当該吊持部材によってマニピュレータを上から吊持する。
【0053】
このように、孔部321A,321Bにおいて、それぞれ複数の孔を有することにより、マニピュレータ搬送用治具を取り付けるマニピュレータの形状や重心位置に応じて、当該マニピュレータをバランス良く、より安定的に吊持できる場合がある。
【0054】
なお、ここでは、孔部321A,321Bは、それぞれ3つずつ孔を有していたが、これに限定されるものではなく、例えば、2つであっても、4つ以上であっても構わない。
【0055】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10…マニピュレータ、20…基台、30…下部アーム、31…第2軸の中心位置、40…上部アーム、50…手首、100,200,300…マニピュレータ搬送用治具、110,210,310…第1部分、111…基面部、112,122A,122B…リブ、113…切り欠き部、120A,120B,220A,220B,320A,320B…第2部分、121A,121B,321A,321B…孔部、123A,123B…凹む領域