(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180410
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】除去方法、及び、リサイクル品の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 11/00 20060101AFI20231214BHJP
D06M 11/05 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
D06M11/00
D06M11/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093707
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 篤志
【テーマコード(参考)】
4L031
【Fターム(参考)】
4L031AA02
4L031AA22
4L031AB31
4L031BA08
4L031CA07
4L031DA00
(57)【要約】
【課題】繊維構造物からポリウレタンを容易に除去する除去方法、及び、リサイクル品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のある局面に従う除去方法は、ポリウレタンの除去方法である。この除去方法は、ポリウレタンと、ポリウレタン以外の少なくとも1種類の原料とを含む繊維構造物に処理を施すステップと、処理後の繊維構造物からポリウレタンを除去するステップとを含む。処理によって、繊維構造物からのポリウレタンの除去が容易になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンの除去方法であって、
前記ポリウレタンと、前記ポリウレタン以外の少なくとも1種類の原料とを含む繊維構造物に処理を施すステップと、
前記処理後の前記繊維構造物から前記ポリウレタンを除去するステップとを含み、
前記処理によって、前記繊維構造物からの前記ポリウレタンの除去が容易になる、除去方法。
【請求項2】
前記処理によって前記ポリウレタンの強度が低下する度合いは前記処理によって前記原料の強度が低下する度合いよりも大きい、又は、前記処理を経て前記原料が繊維形状をとどめる度合いは前記処理を経て前記ポリウレタンが繊維形状をとどめる度合いよりも大きい、請求項1に記載の除去方法。
【請求項3】
前記処理は、前記ポリウレタンの加水分解を促す、請求項1又は請求項2に記載の除去方法。
【請求項4】
前記処理において、前記繊維構造物は密閉空間内で水に漬けられ、
前記水の温度は、20℃以上、260℃以下である、請求項3に記載の除去方法。
【請求項5】
前記繊維構造物は衣料品である、請求項1又は請求項2に記載の除去方法。
【請求項6】
リサイクル品の製造方法であって、
ポリウレタンと、前記ポリウレタン以外の少なくとも1種類の原料とを含む繊維構造物に処理を施すステップと、
前記処理後の前記繊維構造物から前記ポリウレタンを除去することによって前記リサイクル品を製造するステップとを含み、
前記処理によって、前記繊維構造物からの前記ポリウレタンの除去が容易になる、リサイクル品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除去方法、及び、リサイクル品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007-70485号公報(特許文献1)は、ポリウレタン廃棄物の分解処理方法を開示する。この分解処理方法においては、ポリウレタン廃棄物に過熱水蒸気を接触させることによって、ポリウレタン廃棄物の分解処理が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境負荷を考えた場合に、衣料品等の繊維構造物の再利用は重要な課題である。複数の原料によって構成された繊維構造物に関し、繊維構造物に含まれている原料の種類を減少させることによって、繊維構造物の再利用が容易になる。例えば、ポリウレタンと、ポリウレタン以外の原料とによって構成された繊維構造物の再利用を考えた場合に、繊維構造物からポリウレタンを除去することは、繊維構造物の再利用の観点から有効である。しかしながら、このような課題の解決手段は、上記特許文献1に開示されていない。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、繊維構造物からポリウレタンを容易に除去する除去方法、及び、リサイクル品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従う除去方法は、ポリウレタンの除去方法である。この除去方法は、ポリウレタンと、ポリウレタン以外の少なくとも1種類の原料とを含む繊維構造物に処理を施すステップと、処理後の繊維構造物からポリウレタンを除去するステップとを含む。処理によって、繊維構造物からのポリウレタンの除去が容易になる。
【0007】
この除去方法においては、繊維構造物に処理が施されることによって、繊維構造物からのポリウレタンの除去が容易になる。このように、この除去方法によれば、ポリウレタン除去前に繊維構造物に上記処理が施されるため、繊維構造物からポリウレタンを容易に除去することができる。
【0008】
上記除去方法において、処理によってポリウレタンの強度が低下する度合いは処理によって上記ポリウレタン以外の原料の強度が低下する度合いよりも大きくてもよく、又は、処理を経て上記ポリウレタン以外の原料が繊維形状をとどめる度合いは処理を経てポリウレタンが繊維形状をとどめる度合いよりも大きくてもよい。
【0009】
この除去方法においては、処理によってポリウレタンの強度が低下する度合いが、処理によってポリウレタン以外の原料の強度が低下する度合いよりも大きい、又は、処理を経てポリウレタン以外の原料が繊維形状をとどめる度合いが、処理を経てポリウレタンが繊維形状をとどめる度合いよりも大きい。処理後の繊維構造物においては、ポリウレタンの強度が大きく低下している、又は、ポリウレタンが繊維形状をとどめる度合いが小さいため、ポリウレタンの除去が容易になっている。
【0010】
上記除去方法において、処理は、ポリウレタンの加水分解を促してもよい。
【0011】
ポリウレタンは、多くの他の繊維よりも加水分解しやすい。この除去方法によれば、加水分解によってポリウレタンの強度が大きく低下する、又は、加水分解によってポリウレタンが繊維形状をとどめる度合いが大きく低下するため、繊維構造物からポリウレタンを容易に除去することができる。例えば、ポリウレタンが繊維の形状をとどめずに繊維構造物から流出することによって、繊維構造物からポリウレタンが容易に除去される。
【0012】
上記除去方法においては、処理において、繊維構造物が密閉空間内で水に漬けられ、水の温度が、20℃以上、260℃以下であってもよい。
【0013】
上記除去方法において、繊維構造物は衣料品であってもよい。
【0014】
この除去方法によれば、衣料品を構成する繊維構造物からポリウレタンを容易に除去できるため、衣料品廃棄物の一部の繊維の再利用を容易にすることができる。
【0015】
本発明の他の局面に従うリサイクル品の製造方法は、ポリウレタンと、ポリウレタン以外の少なくとも1種類の原料とを含む繊維構造物に処理を施すステップと、処理後の繊維構造物からポリウレタンを除去することによってリサイクル品を製造するステップとを含む。処理によって、繊維構造物からのポリウレタンの除去が容易になる。
【0016】
このリサイクル品の製造方法においては、繊維構造物に処理が施されることによって、繊維構造物からのポリウレタンの除去が容易になる。このように、このリサイクル品の製造方法によれば、ポリウレタン除去前の処理によってポリウレタンの除去が容易になるため、繊維構造物からポリウレタンを容易に除去することができ、リサイクル品を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、繊維構造物からポリウレタンを容易に除去する除去方法、及び、リサイクル品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】除去方法の手順を示すフローチャートである。
【
図2】実験に用いられた生地の一部の写真を示す図である。
【
図3】実験を経た後の生地の一部の写真を示す図である。
【
図4】実験を経た後の生地に含まれていた褐色の多孔体の写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施の形態」とも称する。)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図面は、理解の容易のために、適宜対象を省略又は誇張して模式的に描かれている。
【0020】
[1.概要]
本実施の形態に従う除去方法は、繊維構造物からポリウレタンを除去する方法である。繊維構造物は、例えば、編物又は織物であり、糸によって構成される。繊維構造物の一例としては、衣服等の衣料品を構成する生地が挙げられる。繊維構造物は、ポリウレタンと、ポリウレタン以外の少なくとも1種類の原料とを含んでいる。
【0021】
ポリウレタン以外の原料の一例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ウール及びセルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維の一例としては、再生セルロース、レーヨン及びキュプラが挙げられる。繊維構造物は、例えば、ポリウレタン製の糸と、ポリウレタン以外の原料製の糸とによって構成される。また、繊維構造物は、ポリウレタン以外の原料製の糸であって、外周がポリウレタンの膜で覆われた糸によって構成されてもよい。
【0022】
環境負荷を考えた場合に、繊維構造物の再利用は重要な課題である。複数の原料によって構成された繊維構造物に関し、繊維構造物に含まれている原料の種類を減少させることによって、繊維構造物の再利用が容易になる。ポリウレタンと、ポリウレタン以外の原料とによって構成された繊維構造物の再利用を考えた場合に、繊維構造物からポリウレタンを除去することは、繊維構造物の再利用の観点から有効である。上述のように、本実施の形態に従う除去方法は、繊維構造物からポリウレタンを除去する方法である。以下、本実施の形態に従う除去方法について説明する。
【0023】
[2.ポリウレタンの除去方法]
図1は、本実施の形態に従う除去方法の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される各工程は、例えば、作業者によって行なわれる。
【0024】
図1を参照して、作業者は、繊維構造物を水に浸漬させる(ステップS100)。例えば、密閉系の容器内に水が貯留されており、作業者は、当該容器内に繊維構造物を投入することによって、繊維構造物を水に浸漬させる。容器内に貯留された水の温度は、例えば、20℃以上、260℃以下である。260℃はセルロースの引火点であるため、水の温度を260℃より高くすることは好ましくない。また、容器内に貯留された水の温度は、例えば、20℃以上、200℃未満であることが好ましい。200℃はセルロースの熱劣化が加速する温度であるため、水の温度を200℃未満とすることでセルロースの熱劣化を抑制することができる。
【0025】
例えば、容器内に貯留された水の温度が、20℃以上、80℃未満である場合には、ポリウレタンの加水分解に要する時間は長くなるが、開放系(大気圧)での反応が可能となるため、使用する装置の構成を簡易にすることができる。また、例えば、容器内に貯留された水の温度が、80℃以上、200℃未満である場合には、閉鎖系(要加圧)での反応が必要となるが、ポリウレタンの加水分解に要する時間を短くすることができる。
【0026】
また、密閉系の容器内の圧力は、例えば、容器内の水の温度によって調整されてもよい。例えば、容器内の水の温度が、20℃以上、80℃未満である場合には、容器内の圧力が大気圧とされてもよい。また、例えば、容器内の水の温度が200℃である場合には容器内の圧力が1.6MPaとされてもよく、容器内の水の温度が260℃である場合には容器内の圧力が4.7MPaとされてもよい。また、例えば、酸又はアルカリが分解反応の触媒として添加されてもよい。
【0027】
繊維構造物を水に浸漬させることによって、繊維構造物に含まれるポリウレタンの加水分解が促される。加水分解によってポリウレタンの強度が低下する度合いは、繊維構造物に含まれるポリウレタン以外の原料の強度が加水分解によって低下する度合いよりも大きい。したがって、繊維構造物が水に浸漬されることによって、ポリウレタンの強度が、繊維構造物に含まれる他の原料の強度よりも大きく低下する。また、加水分解を経て繊維構造物に含まれるポリウレタン以外の原料が繊維形状をとどめる度合いは、加水分解を経てポリウレタンが繊維形状をとどめる度合いよりも大きくてもよい。したがって、繊維構造物が水に浸漬されることによって、ポリウレタンが繊維形状をとどめる度合いが大きく低下してもよい(例えば、ポリウレタンがゲル状になってもよい。)。すなわち、加水分解を経て、繊維構造物からのポリウレタンの除去が容易になればよい。
【0028】
繊維構造物が水に浸漬されて所定時間が経過すると、作業者は、繊維構造物からポリウレタンを除去する(ステップS110)。作業者は、例えば、所定時間水に浸漬された繊維構造物を、界面活性剤を用いて洗濯することによって、繊維構造物からポリウレタンを除去する。すなわち、作業者は、繊維構造物に化学的な作用を加えることによって繊維構造物からポリウレタンを除去する。また、作業者は、強度が低下したポリウレタンを千切りながら、繊維構造物からポリウレタンを除去してもよい。すなわち、作業者は、繊維構造物に物理的な作用を加えることによって繊維構造物からポリウレタンを除去してもよい。
【0029】
これにより、繊維構造物からポリウレタンの除去が完了し、ポリウレタン以外の原料が残る。ポリウレタン以外の原料のリサイクルが行なわれ、リサイクル品が製造される。
【0030】
[3.特徴]
以上のように、本実施の形態に従う除去方法においては、繊維構造物が水に浸漬されること(繊維構造物に処理が施されることの一例)によって、繊維構造物からのポリウレタンの除去が容易になる。このように、本実施の形態に従う除去方法によれば、ポリウレタン除去前に繊維構造物が水に漬けられることによってポリウレタンの除去が容易になるため、繊維構造物からポリウレタンを容易に除去することができる。
【0031】
繊維構造物からポリウレタンが除去されることによって、繊維構造物の再利用が容易になる。この技術を用いることによって、例えば、アパレル産業における環境負荷を低減することができ、廃棄された衣料品等(廃棄物)を再利用した新規産業を興すことができる。
【0032】
また、本実施の形態に従う除去方法においては、水によってポリウレタンが分解(加水分解)され、ポリウレタンの強度低下及び/又は繊維形状変化が引き起こされる。例えば、ポリウレタンをモノマー化することによってポリウレタンを分解する方法が存在する。しかしながら、ポリウレタンをモノマー化するには、ポリウレタンの強度低下及び/又は繊維形状変化を引き起こすよりも大きいエネルギーが必要である。ポリウレタンの強度低下及び繊維形状変化は、ポリウレタンをモノマー化する場合と比較して、高い分子量でも発生するためである。したがって、本実施の形態に従う除去方法によれば、ポリウレタンのモノマー化が行なわれるわけではなく、ポリウレタンの強度低下及び/又は繊維形状変化が引き起こされるため、比較的省エネルギーで繊維構造物からのポリウレタン除去を容易にすることができる。
【0033】
また、ポリウレタンをモノマー化することによってポリウレタンを分解すると、モノマー化に要するエネルギーが比較的大きいため、例えば、再利用する他の原料(例えば、生地)も大きいダメージを受ける。一方、ポリウレタンの強度低下及び/又は繊維形状変化に要するエネルギーは比較的小さいため、本実施の形態に従う除去方法において、ポリウレタン以外の原料が受けるダメージは比較的小さい。したがって、本実施の形態に従う除去方法によれば、再利用する原料が受けるダメージを抑えながら、繊維構造物からポリウレタンを除去することができる。
【0034】
[4.他の実施の形態]
上記実施の形態の思想は、以上で説明された実施の形態に限定されない。以下、上記実施の形態の思想を適用できる他の実施の形態の一例について説明する。
【0035】
上記実施の形態に従う除去方法においては、加水分解によってポリウレタンの強度が下げられた。また、加水分解によって、ポリウレタンが繊維形状をとどめる度合いが下げられた。しかしながら、ポリウレタンの強度を低下させる方法、又は、ポリウレタンが繊維形状をとどめる度合いを低下させる方法はこれに限定されない。すなわち、ポリウレタンの除去前に繊維構造物に施される処理は、繊維構造物を水に浸漬させることに限定されない。例えば、繊維構造物に含まれるポリウレタンは、微生物によって分解されてもよいし、酵素によって分解されてもよい。この場合には、例えば、ポリウレタンのみを分解する微生物又は酵素が用いられてもよい。
【0036】
また、ポリウレタンの除去前に繊維構造物に施される処理は、例えば、繊維構造物に加熱水蒸気を接触させる処理であってもよい。過熱水蒸気とは、100℃で蒸発した飽和蒸気をさらに加熱した熱放射性H2Oガスのことをいう。過熱水蒸気の発生には、例えば、公知の種々の過熱水蒸気発生器が用いられてもよい。繊維構造物においては、加熱水蒸気が接触することによって、ポリウレタンの加水分解が促される。なお、ポリウレタンの除去前に繊維構造物に過熱水蒸気を接触させる場合に、繊維構造物と過熱水蒸気との接触は、必ずしも閉鎖系で行なわれなくてもよい。
【0037】
また、例えば、繊維構造物に含まれるポリウレタンは、溶媒によって溶解されてもよい。この場合には、例えば、ポリウレタンの強度が低下する度合いが、他の原料の強度が低下する度合いよりも大きくなるような溶媒が、ポリウレタンの溶解に用いられてもよい。また、例えば、繊維形状をとどめる度合いが、ポリウレタンの方が他の原料よりも大きく低下するような溶媒が、ポリウレタンの溶解に用いられてもよい。溶媒の一例としては、アセトン、キシレン、ベンゼン、メチルエチルケトン、アルコール類、アセトアルデヒド、酢酸エチル、スチレンモノマー、濃硫酸、濃硝酸、濃塩酸、フェノール酸、ギ酸、クロム酸、次亜塩素酸ナトリウム、苛性ソーダ、トリクロロエチレン、塩化メチル、塩化エチル、四塩化炭素、クロロホルム、ニトロベンゼン及びアニリンが挙げられる。
【0038】
また、繊維構造物に含まれるポリウレタンは、熱によって溶融されてもよい。この場合には、例えば、繊維構造物に含まれているポリウレタン以外の原料の軟化点が、ポリウレタンの軟化点よりも高い。例えば、繊維構造物に含まれているポリウレタン以外の原料がセルロース系繊維であるような場合に、熱によってポリウレタンを溶融する方法は有効である。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について例示的に説明した。すなわち、例示的な説明のために、詳細な説明及び添付の図面が開示された。よって、詳細な説明及び添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が詳細な説明及び添付の図面に記載されているからといって、それらの必須でない構成要素が必須であると直ちに認定されるべきではない。
【0040】
また、上記実施の形態は、あらゆる点において本発明の例示にすぎない。上記実施の形態は、本発明の範囲内において、種々の改良や変更が可能である。すなわち、本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じて具体的構成を適宜採用することができる。
【0041】
[5.実験例]
<5-1.実験内容>
繊維構造物の一例として、糸によって構成された生地を準備した。この生地は、綿の糸と、ポリウレタンの糸とによって構成されていた。この生地に含まれる各原料の比率は、綿が65%、ポリウレタンが35%であった。
【0042】
図2は、実験に用いられた生地10の一部の写真を示す図である。
図2を参照して、生地10には、不透明な糸状の綿11と、透明な糸状のポリウレタン12とが含まれていた。
【0043】
実験を経る前の生地10に関し、FTIR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)が行なわれた。FTIRを通じて、生地10に含まれる不透明な糸がセルロース(綿)であり、透明な糸がポリウレタンであることが確認された。
【0044】
この実験においては、生地10が、密閉系の筒に入れられた状態で、180℃の水に30分間浸漬された。なお、この実験においては、ミニカラー染色機が用いられた。
【0045】
<5-2.実験結果>
図3は、実験を経た後の生地10の一部の写真を示す図である。
図3に示されるように、実験を経た後の生地10においては、不透明な糸(綿11)のみが含まれており、透明な糸(ポリウレタン12)が消失していた。実験を経た後の生地10においては、透明な糸の代わりに、褐色の多孔体(ポリウレタン12)が含まれていた。FTIRを通じて、不透明な糸がセルロースであることが確認された。
【0046】
図4は、実験を経た後の生地10に含まれていた褐色の多孔体の写真を示す図である。
図4を参照して、FTIRを通じて、褐色の多孔体がポリウレタンであることが確認された。このように、本実験を通じて、生地10を水に浸漬させることによって、生地10からポリウレタン12を容易に分離可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0047】
10 生地、11 綿、12 ポリウレタン。