(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180416
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】終端装置、分析方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 43/04 20220101AFI20231214BHJP
H04L 43/022 20220101ALI20231214BHJP
H04L 12/44 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H04L43/04
H04L43/022
H04L12/44 200
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093714
(22)【出願日】2022-06-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】吉山 正晃
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA05
5K033EA02
5K033EA04
5K033EA06
(57)【要約】
【課題】光通信回線における光インタフェース区間の故障の予兆を検知することに貢献する終端装置、分析方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】通信回線の状況を示す回線状況データを所定期間毎に取得する取得部と、前記回線状況データを蓄積する蓄積部と、前記蓄積部に蓄積された前記回線状況データを分析する分析部と、前記分析部の分析結果を出力する出力部と、を有し、前記取得部は前記回線状況データを送信側と受信側とで対をなして取得し、前記蓄積部に蓄積する、終端装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線の状況を示す回線状況データを所定期間毎に取得する取得部と、
前記回線状況データを蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積された前記回線状況データを分析する分析部と、
前記分析部の分析結果を出力する出力部と、を有し、
前記取得部は前記回線状況データを送信側と受信側とで対をなして取得し、前記蓄積部に蓄積する、
終端装置。
【請求項2】
前記分析部は、前記回線状況データの、送信側と受信側との信号レベルの差分を算出することにより分析を実行する、
請求項1の終端装置。
【請求項3】
前記分析部は、上り通信における送信側と受信側との信号レベルの差分と、下り通信における送信側と受信側との信号レベルの差分とに基づいて分析を実行する、
請求項2の終端装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記回線状況データとして非通信区間の信号レベルを取得し、
前記分析部は、前記非通信区間の信号レベルに基づいて分析を実行する、
請求項3の終端装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記回線状況データとしてエラー検出訂正頻度を取得し、
前記分析部は、前記エラー検出訂正頻度に基づいて分析を実行する、
請求項1の終端装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記回線状況データとして送信側と受信側との間の距離情報を取得し、
前記分析部は、前記距離情報に基づいて分析を実行する、
請求項1の終端装置。
【請求項7】
前記通信回線は光ファイバ回線であり、
前記取得部は通信路に接続されている光トランシーバの状態を収集することにより回線状況を取得する、
請求項1から6のいずれか一の終端装置。
【請求項8】
前記通信回線はPONシステムの回線であり、前記取得部は前記回線状況データとしてOLT側の光トランシーバとONU側の光トランシーバとの状態を取得する、
請求項7の終端装置。
【請求項9】
コンピュータが実行する分析方法であって、
通信回線の状況を示す回線状況データを所定期間毎に取得するステップと、
前記回線状況データを蓄積するステップと、
前記回線状況データを分析するステップと、
分析結果を出力するステップと、を含み、
前記回線状況データを取得するステップは前記回線状況データを送信側と受信側とで対をなして取得し、記憶域に蓄積する、
分析方法。
【請求項10】
通信回線の状況を示す回線状況データを所定期間毎に取得する処理と、
前記回線状況データを蓄積する処理と、
前記回線状況データを分析する処理と、
分析結果を出力する処理と、を含み、
前記回線状況データを取得する処理は前記回線状況データを送信側と受信側とで対をなして取得し、記憶域に蓄積する、
コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、終端装置、分析方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
PON(Passive Optical Network)システムでは、一つの光回線に複数ユーザの終端装置(ONU:Optical Network Unit)を接続して時分割で利用する形式を採用しており、決められた時間に各ONUが光信号を送受信する機能となっている。特にOLT(Optical Line Terminal:光回線終端装置)に実装されたユーザ光モジュールでは、1つのPON光回線に複数ユーザのONUを接続しているため、その故障は複数ユーザの通信停止となってしまうため信頼性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
なお、上記先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。以下の分析は、本発明者らによってなされたものである。
【0005】
上記信頼性の向上のために、例えば、特許文献1のような解決手段が提案されている。特許文献1の解決手段では、光ファイバ通信に使用される光モジュールのステータスを確認するためのDDM(デジタル診断監視:digital diagnostics monitoring)機能をできるだけ活用し、障害時の分析に役立てる仕組み作りを検討し、システムに組み込めるようにする。すなわち、光モジュールが有するEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)のユーザ利用可能領域を時刻情報付のログ格納エリアとして活用し、障害発生時にはそのログ情報を解析することで光ネットワークを有する装置、もしくは、光モジュールを回収せずに被疑箇所の特定を可能にする。本実施形態においては、光モジュール自身の運用状態と光モジュールに接続されるインタフェースの運用状態を定期的に確認し、光モジュールの持つEEPROMへ運用状態を記録する。そして、その記録(ログ)を光モジュールと光ファイバによって接続されている装置へ提供する。
【0006】
しかしながら、現在の10GEPON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)システムでは、OLTのXFP(10 Gigabit Small Form Factor Pluggable)モジュールとONUの光インタフェース部の状態管理について、標準化された管理インタフェース機能を利用し、定期的に監視する機能を実装しているが、光インタフェース区間の故障判定については、それら光送受信レベルの管理機能を利用した光レベルに関する閾値内かどうかの判定、及びに各光モジュールのハードウエア故障に限定され、故障に至る予兆状態の検知が不可能であるといった問題が存在する。
【0007】
そこで、本発明は光通信回線における光インタフェース区間の故障の予兆を検知することに貢献する終端装置、分析方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明乃至開示の第一の視点によれば、通信回線の状況を示す回線状況データを所定期間毎に取得する取得部と、前記回線状況データを蓄積する蓄積部と、前記蓄積部に蓄積された前記回線状況データを分析する分析部と、前記分析部の分析結果を出力する出力部と、を有し、前記取得部は前記回線状況データを送信側と受信側とで対をなして取得し、前記蓄積部に蓄積する、終端装置が提供される。
【0009】
本発明乃至開示の第二の視点によれば、通信回線の状況を示す回線状況データを所定期間毎に取得するステップと、前記回線状況データを蓄積するステップと、前記回線状況データを分析するステップと、分析結果を出力するステップと、を含み、前記回線状況データを取得するステップは前記回線状況データを送信側と受信側とで対をなして取得し、記憶域に蓄積する、分析方法が提供される。
【0010】
本発明乃至開示の第三の視点によれば、通信回線の状況を示す回線状況データを所定期間毎に取得する処理と、前記回線状況データを蓄積する処理と、前記回線状況データを分析する処理と、分析結果を出力する処理と、を含み、前記回線状況データを取得する処理は前記回線状況データを送信側と受信側とで対をなして取得し、記憶域に蓄積する、コンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明乃至開示の各視点によれば、本発明は光通信回線における光インタフェース区間の故障の予兆を検知することに貢献する終端装置、分析方法、及びプログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る終端装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る終端装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】第1の実施形態に係る終端装置のハードウエア構成を示す概略図である。
【
図4】第2の実施形態に係る終端装置(OLT)が含まれるPONシステムの概要を示す図である。
【
図5】第2の実施形態に係る終端装置(OLT)の一構成例を示す図である。
【
図6】XFPとONUとの光送受信レベル分析例を示す図である。
【
図7】OLTのXFPでの光受信レベル及び各ONUのSFPでの光受信レベルを示すための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
初めに、一実施形態の概要について説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、この概要の記載はなんらの限定を意図するものではない。また、各図におけるブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。さらに、本願開示に示す回路図、ブロック図、内部構成図、接続図などにおいて、明示は省略するが、入力ポート及び出力ポートが各接続線の入力端及び出力端のそれぞれに存在する。入出力インタフェースも同様である。
【0014】
図1は一実施形態に係る終端装置10の構成の一例を示すブロック図である。この図にあるように、一実施形態に係る終端装置10は、取得部11と、蓄積部12と、分析部13と、出力部14を有する。
【0015】
取得部11は通信回線の状況を示す回線状況データを所定期間毎に取得する。蓄積部12は回線状況データを蓄積する。分析部13は蓄積部12に蓄積された回線状況データを分析する。出力部14は分析部13の分析結果を出力する。
【0016】
一実施形態の終端装置10は、取得部11が回線状況データを送信側と受信側とで対をなして取得し、蓄積部12に蓄積する点を特徴とする。蓄積部12の回線状況データは分析部13により分析される。送信側と受信側との回線状況データを対として蓄積し分析することで、標準化された管理インタフェース機能で提供される、単に機器単体を監視することによる故障等の検出にとどまらず、長期的な回線状況データの推移等の多面的な観点から総合的に分析を行うことで、ネットワーク機器や回線の故障あるいはその予兆を検出することが可能である。
【0017】
これにより、故障による急な通信の停止に起因したサービスの停止を未然に防ぐことが可能となり、サービスの信頼性を向上することが可能となる。
【0018】
なお、一実施形態における終端装置10は、光ファイバ通信への適用以外にも、他の通信方式に適用が可能である。例えば無線通信や、光ファイバ以外のメタル等の媒体を用いた通信にも適用が可能である。
【0019】
以下に具体的な実施の形態について、図面を参照してさらに詳しく説明する。なお、各実施形態において同一構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る終端装置の構成の一例は
図1と同様である。
図1にあるように本実施形態にかかる終端装置10は、取得部11と、蓄積部12と、分析部13と、出力部14を有する。
【0021】
取得部11は通信回線の状況を示す回線状況データを所定期間毎に取得する。「所定期間毎に取得」とは、例えば、所定期間が1週間であった場合、回線状況データを取得したら次の取得は1週間後である場合と、例えば機器の状態の取得間隔は1時間毎に行われており、これらの状態を1週間経過する毎にまとめて回線状況データとして蓄積部12へ送り蓄積するといったいずれの場合も含まれる。「通信回線」は上述の通り、有線又は無線を問わない。また通信媒体も光ファイバに限られない。「回線状況データ」とは、少なくとも送信側と受信側とで取得される信号の状況を示すデータが含まれる。このデータは既存の、標準的な管理プロトコルのために取得されるものでも良い。例えば送信側及び受信側の通信インタフェースにより取得されるものであってよく、取得部11を有する終端装置10の通信先の終端装置等で取得されたデータは、通信回線を経由して終端装置10に送信されるものであって良い。
【0022】
「所定期間」とは任意の期間でもよいが、取得部11にて取得される各回線状況データの特性を踏まえ、分析部13にて故障の予兆を最も正確に、又は早期に検出可能に最適化された期間であってもよい。例えば、信号レベルの推移を回線状況データとして1週間毎に取得し、蓄積部12に蓄積し分析しても良い。
【0023】
所定期間の長さは可変であっても良い。例えば、デフォルト値では1週間毎に回線状況データを取得する設定であって、何らかの異常が検出されると1日毎、1時間毎に取得の期間を短くしていっても良い。
【0024】
本実施形態の終端装置10は、上述したように、取得部11が回線状況データを送信側と受信側とで対をなして取得し、蓄積部12に蓄積する。これにより例えば、分析部13において所定期間に渡る下り通信の信号レベル差等を算出することで、回線の故障の予兆を検出する等の処理が可能である。
【0025】
「対をなして」とは、データを送受信する回線の両端、又は一区間における始端と終端における回線状況データを関連付けて取得するといった意である。なおその場合、取得部11を有する終端装置10から見て下り通信の回線状況データであっても良いし、上り通信の回線状況データであっても良いし、これらの両方であっても良い。このように、単なる一地点における故障の検出にとどまらず、分析部13において複数の回線状況データを総合的に分析することで故障の予兆を検出するのが本発明の特徴である。
【0026】
蓄積部12は回線状況データを蓄積する。終端装置10が有する記憶域や、終端装置10に接続されている機器の記憶域に回線状況データを格納する。蓄積は、例えば下り通信の送信側と受信側の回線状況データを関連付けて記憶域に格納する等の態様で蓄積される。
【0027】
分析部13は蓄積部12に蓄積された回線状況データを分析する。「分析」は、機器や回線の故障の予兆を検出することを目的とする。複数の観点から回線状況データを切り取り、必要に応じて加工することで故障の予兆の有無を評価し判断するところまでを本発明の「分析」は含む。
【0028】
出力部14は分析部13の分析結果を出力する。具体的には、分析部13から分析結果を取得し、通信回線等を介して端末に送信し、端末のディスプレイ等の入出力インタフェースにより分析結果を表示出力する。
【0029】
[動作の説明]
本実施形態の終端装置10の動作の一例について
図2を用いて説明する。
図2は、第1の実施形態に係る終端装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
【0030】
この図にあるように、終端装置10は動作を開始すると、所定期間経過後(ステップS21、Y)に回線状況データを取得する(ステップS22)。次に取得したデータを蓄積する(ステップS23)。次に蓄積された回線状況データを分析する(ステップS25)が、その前に分析を開始するか否かの判断処理があっても良い(ステップS24)。分析が終了後分析結果を出力する(ステップS26)。
【0031】
[ハードウエア構成]
本実施形態の終端装置10は、情報処理装置(コンピュータ)により構成可能であり、
図3に例示する構成を備える。例えば、終端装置10は、内部バス35により相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)31、メモリ32、入出力インタフェース33及び通信手段であるNIC(Network Interface Card)34等を備える。
【0032】
但し、
図3に示す構成は、終端装置10のハードウエア構成を限定する趣旨ではない。終端装置10は、図示しないハードウエアを含んでもよいし、必要に応じて入出力インタフェース33を備えていなくともよい。また、終端装置10に含まれるCPU等の数も
図3の例示に限定する趣旨ではなく、例えば、複数のCPUが終端装置10に含まれていてもよい。
【0033】
メモリ32は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
【0034】
入出力インタフェース33は、図示しない表示装置や入力装置のインタフェースとなる手段である。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ等である。入力装置は、例えば、タッチパネル、キーボードやマウス等のユーザ操作を受付ける装置である。
【0035】
終端装置10の機能は、メモリ32に格納された取得プログラム、分析プログラム、出力プログラム等といったプログラム群(処理モジュール)と、取得された回線状況データが蓄積されたデータ群により実現される。当該処理モジュールは、例えば、メモリ32に格納された各プログラムをCPU31が実行することで実現される。また、そのプログラムは、ネットワークを介してダウンロードするか、あるいは、プログラムを記憶した記憶媒体を用いて、更新することができる。さらに、上記処理モジュールは、半導体チップにより実現されてもよい。即ち、上記処理モジュールが行う機能を何らかのハードウエア、及び/又は、ソフトウエアで実行する手段があればよい。
【0036】
[ハードウエアの動作]
終端装置10は動作を開始すると、まず取得プログラムがメモリ32から呼び出されCPU31にて実行状態となる。取得プログラムは、所定期間経過時にNIC34を介して回線状況データを取得する。取得された回線状況データは相互に関連付けられてメモリ32上の回線状況データを蓄積するための領域に格納される。
【0037】
次に分析プログラムがメモリ32から呼び出されCPU31にて実行状態となる。分析プログラムは回線状況データを用いて分析を実行する。例えば、上り及び下り通信における信号レベルを送信側の機器により取得された信号レベルと受信側の機器により取得された信号レベルとのレベル差を演算によりそれぞれ求め、これら上りと下りのレベル差のさらに差分を算出する処理等を実行する。分析プログラムは、例えば算出された差分が所定の範囲にあるか否かを判断し、所定の範囲内であった場合には故障の予兆を有すると判断する等の処理を実行する。
【0038】
次に出力プログラムがメモリ32から呼び出されCPU31にて実行状態となり、分析プログラムより判断結果を取得する。同プログラムはNIC34を介してネットワークに接続された端末装置等に判断結果を送信し、端末装置等のディスプレイ等の入出力インタフェースにより出力される。
【0039】
[効果の説明]
上記第1の実施形態に係る終端装置により、送信側と受信側との回線状況データを対として蓄積し分析することで、標準化された管理インタフェース機能で提供される、単に機器単体を監視することによる故障等の検出にとどまらず、長期的な回線状況データの推移等の多面的な観点から総合的に分析を行うことで、ネットワーク機器や回線の故障あるいはその予兆を検出することが可能である。
【0040】
[第2の実施形態]
第2の実施形態以降では、上記実施形態の終端装置(OLT)を光ファイバ回線、特にPONシステムに適用した場合の構成及び動作について説明する。
【0041】
[概要]
図4は本実施形態の終端装置(OLT)が含まれるPONシステムの概要を示す図である。PONシステムは、OLT41、複数の通信端末であるONU#1 45、ONU#2 48、ONU#3 49…、及びONU#1 45、ONU#2 48、ONU#3 49、…を接続する光ファイバ、及び光スプリッタにより構成される。OLT41は通信事業者の中継局とネットワークを介して接続されている。
【0042】
GEPONシステムは、
図4に示す様にOLT41のPON MAC部42により制御されたPON通信の電気信号が、XFP型光モジュール43で光送受信信号に変換され、光ファイバ及び光スプリッタで構成された光通信路を介し、ONU#1 45のSFP型光モジュール46に入出力され、再び光送受信信号からPON通信電気信号に変換されてPON MAC部47に入出力されることにより、PON通信ができる構成となっている。
【0043】
また、PON光通信路には、ONU#2 48、ONU#3 49等も同時に接続され、PON通信の時分割通信制御により、上位ネットワークと各ユーザのデータ通信が実現される。現在ファイバONシステムでは、OLT側の各XFPモジュールの光インタフェース部の状態については、XFPのMSA(Multi Source Agreement)規格の“10 Gigabit Small form Factor Pluggable Module”,INF 8077i.で標準化された管理インタフェースDDMI(Digital Diagnostic Memory Indicator)機能を利用し収集でき、本実施形態ではXFP型光モジュール43からPON MAC部42への点線で示す部分で収集している。
【0044】
各ユーザの通信端末(ONU)でも、同様にMSAのSFP+規格SFF-8431とその管理インタフェース規格SFF-8472で標準化されたDMI(Diagnostic Monitoring Interface)を利用して収集できる機能を実装し、収集した光送受信レベル等のデータをPON管理プロトコルに乗せOLT側に送ることができ、各ONUのデータをOLT41のPON MAC部42で収集することができる。複数接続された各ONUに同様の機能がある。
【0045】
OLT41の各PONインタフェースに採用するXFP型光モジュール43と各ONUのSFP+の光送受信レベルデータは、上述の機能によりOLT41のPON MAC部42に収集し、状態モニター及び設定部44で常時監視し、定期記録して、さらに上位ネットワークにある管理用装置に転送することで管理を行っている。
【0046】
[構成]
図5に本実施形態の終端装置(OLT)の構成を示す。OLT100は、収集部101と、記憶部102と、出力部103とを備える。収集部101は、OLT100のXFP型光モジュール、及び各ONUのSFP型光モジュールの状態を収集し、記憶部102に記憶する。出力部103は、一定期間のデータを分析し故障の予兆が検出されると、上位ネットワーク装置(通信事業者の中継局)に通知する。
図4のPON MAC部42が収集部101、状態モニター及び設定部44が記憶部102、出力部103に相当する。
【0047】
状態を収集する頻度は、例えば2時間毎などを想定しているが、一定周期あるいは不定周期のいずれでもよい。
【0048】
出力部103は、収集した状態の一定期間のデータ(例えば1週間)を使用して分析し故障の予兆が検出されると、上位ネットワーク装置(通信事業者の中継局)に通知する。本実施形態では、収集した状態を各送受信ペアの信号として監視し(送信レベルと受信レベルの差分を算出することで、送信側の影響を排除した分析ができるようになる)、一定期間(例えば1週間)のデータを分析することで、送信レベル、受信レベル、及び光ファイバの故障予兆を検出することを特徴とする。
【0049】
図6にXFPとONUとの光送受信レベル分析例を示す。XFP-TX、XFP-RX、XFP-RX*は、XFP型光モジュールから収集した状態の一部のデータ(XFP-RX*は信号を受信していない時の受信レベル)であり、ONU-RX、ONU-TXはONUのSFP型光モジュールから収集した状態の一部のデータである。ONUの状態は各ONU毎に収集されるが、
図6では各ONU毎のデータを区別して記載していない。また送受信ペアの信号として監視するため、下り信号レベル差、上り信号レベル差、及び下り信号レベル差を使用している波長の損失(例えば0.3)で除算した値と上り信号レベル差を使用している波長の損失(例えば0.4)で除算した値の差分である上下レベル信号のレベル差を算出して記憶する。
【0050】
なお、+2~+4のように範囲で記載されているデータは、一定期間のデータがばらついていることを示している(実際には、例えば+2、+4、+2、のように収集するたびに記憶されている)。
【0051】
ONU#2にOLTの送信レベルNGの例を示す。OLTの送信レベルXFP-TXが+2~+4とばらついていることによって、ONUの受信レベルONU-RXが-11~-9とばらついているが、差分である下り信号レベル差は13と一定で変動していないことからOLTの送信レベルNG(予兆)と判断できる。
【0052】
ONU#3にOLTの受信レベルNGの例を示す。ONUの送信レベルは+6.5と一定で、OLTの受信レベルXFP-RXが-11.5~-8.5、及び差分で上り信号レベル差が15~18とばらついていることからOLTの受信レベルNG(予兆)と判断できる。また、合わせて非通信区間XFP受信レベルXFP-RX*で通常みられないレベルが観測されているため、受信デバイスが劣化していることが考えられる。
【0053】
ONU#4にONUの送信レベルNGの例を示す。ONUの送信レベルONU-TXが+6~+9とばらついていることによって、OLTの受信レベルXFP-RXが-11.5~-8.5とばらついているが、差分である上り信号レベル差は17.5と一定で変動していないことからONUの送信レベルNG(予兆)と判断できる。
【0054】
ONU#5にONUの受信レベルNGの例を示す。OLTの送信レベルは+3と一定で、ONUの受信レベルONU-RXが-11~-9、及び差分で下り信号レベル差が12~14とばらついていることからONUの受信レベルNG(予兆)と判断できる。
【0055】
ONU#6にファイバNGの例を示す。上り信号レベル差と下り信号レベル差が同じタイミングでばらついていることからファイバNG(予兆)と判断できる。
【0056】
ONU#6のファイバNGの場合、他のONUの状態と比較することで、PONネットワークの光ファイバの幹部分/枝部分の問題切り分けが可能となる。また、ONU#5のOLTの受信レベルNGの場合、他のONUの状態と比較することで、XFP型光モジュールの受信回路の、特にAGC(Automatic Gain Control)機能(各ONUからレベル差のある信号が入力された場合)の状態監視が可能になる。
【0057】
図7はOLTのXFPでの光受信レベル及び各ONUのSFPでの受信レベルを示すための概略図である。この図の(A)にあるように、OLTのXFPでの光受信レベルは、通常は各ONUとの距離に応じたファイバの減衰により光受信レベルがほぼ一定である。またこの図の(B)にあるように各ONUのSFPでの光受信レベルも、通常は各ONUでの光受信レベルは各ONUとの距離に応じたファイバの減衰によりほぼ一定である。ONU#6のファイバNGの場合においては、
図7の(A)及び(B)の状態において各ONUに割り当てられたOLT側とONU側のそれぞれの光受信レベルが両方とも変動することになるため、光ファイバの枝部分に問題が生じていると、問題を切り分けることができる。
なお、PONシステムが管理する各ONUとのエラー訂正状況、距離情報(送信時間と受信時間の差分から距離を算出)を併せて記憶し、分析してもよい。
10GEPONシステムでは、ONU→XFPの上り方向に対しFEC (Forward Error Correction)機能を設定でき、そのエラー訂正状況をモニターする機能を有している。エラー訂正状況を光通信の品質指標として分析に加えることで、各PONインタフェースのXFPとONU故障の予兆検知に利用できる。例えばエラー訂正が多くなった場合に故障の予兆としてもよい。FEC機能は受信光レベルが低い場合の通信状態確保の側面もあるため、送受信光レベルとの相関性も加えた分析とすることで、より適正な予兆検知が可能となる。また、距離情報は、通信遅延によるため通常一定になるため、時系列で変化する場合は故障の予兆としてもよい。
【0058】
[効果の説明]
本実施形態の終端装置(OLT)によると、収集した状態を各送受信ペアの信号として監視し、一定期間のデータを使用して分析することで、各回に収集した状態ではNGと判断できない送信レベル、受信レベル、及びファイバの故障予兆を検出することが可能となる。検出した故障予兆を、他のONUの状態と比較することで、光ファイバの幹部分/枝部分の問題切り分け、及びXFP型光モジュールの受信回路の、特にAGC機能の状態監視が可能になる。
【0059】
このように本実施形態の終端装置(OLT)により、XFP故障及びONU故障が起きる前に各光インタフェース部の故障予測ができるため対象部位の予防交換ができ、結果的に各利用ユーザの急な通信停止を減少させることができる。
【0060】
前述の実施形態の一部又は全部は、以下の各付記のようにも記載することができる。しかしながら、以下の各付記は、あくまでも、本発明の単なる例示に過ぎず、本発明は、かかる場合のみに限るものではない。
[付記1]
上述の第一の視点に係る終端装置のとおりである。
[付記2]
分析部は、回線状況データの、送信側と受信側との信号レベルの差分を算出することにより分析を実行する、好ましくは付記1の終端装置。
[付記3]
分析部は、上り通信における送信側と受信側との信号レベルの差分と、下り通信における送信側と受信側との信号レベルの差分とに基づいて分析を実行する、好ましくは付記2の終端装置。
[付記4]
取得部は、回線状況データとして非通信区間の信号レベルを取得し、分析部は、非通信区間の信号レベルに基づいて分析を実行する、好ましくは付記3の終端装置。
[付記5]
取得部は、回線状況データとしてエラー検出訂正頻度を取得し、分析部は、エラー検出訂正頻度に基づいて分析を実行する、好ましくは付記1の終端装置。
[付記6]
取得部は、前記回線状況データとして送信側と受信側との間の距離情報を取得し、分析部は、距離情報に基づいて分析を実行する、好ましくは付記1の終端装置。
[付記7]
通信回線は光ファイバ回線であり、取得部は通信路に接続されている光トランシーバの状態を収集することにより回線状況を取得する、好ましくは付記1から6のいずれか一の終端装置。
[付記8]
通信回線はPONシステムの回線であり、取得部は回線状況データとしてOLT側の光トランシーバとONU側の光トランシーバとの状態を取得する、好ましくは付記7の終端装置。
[付記9]
上述の第二の視点に係る分析方法のとおりである。
[付記10]
上述の第三の視点に係るプログラムのとおりである。
なお、付記9及び10は、付記1と同様に、付記2~8に展開することが可能である。
【0061】
なお、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(特許請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施形態の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0062】
10:終端装置
11:取得部
12:蓄積部
13:分析部
14:出力部
31:CPU
32:メモリ
33:入出力インタフェース
34:NIC
35:内部バス
41:OLT
42:PON MAC部
43:XFP型光モジュール
44:状態モニター及び設定部
45:ONU#1
46:SFP型光モジュール
47:PON MAC部
48:ONU#2
49:ONU#3
100:OLT
101:収集部
102:記憶部
103:出力部
【手続補正書】
【提出日】2023-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線の状況を示す回線状況データを所定期間毎に取得する取得部と、
前記回線状況データを蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積された前記回線状況データを分析する分析部と、
前記分析部の分析結果を出力する出力部と、を有し、
前記取得部は前記回線状況データとして送信側と受信側との間の距離情報を送信側と受信側とで対をなして取得し、前記蓄積部に蓄積し、
前記分析部は、前記距離情報に基づいて分析を実行する、
終端装置。
【請求項2】
前記分析部は、前記回線状況データの、送信側と受信側との信号レベルの差分を算出することにより分析を実行する、
請求項1の終端装置。
【請求項3】
前記分析部は、上り通信における送信側と受信側との信号レベルの差分と、下り通信における送信側と受信側との信号レベルの差分とに基づいて分析を実行する、
請求項2の終端装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記回線状況データとして非通信区間の信号レベルを取得し、
前記分析部は、前記非通信区間の信号レベルに基づいて分析を実行する、
請求項3の終端装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記回線状況データとしてエラー検出訂正頻度を取得し、
前記分析部は、前記エラー検出訂正頻度に基づいて分析を実行する、
請求項1の終端装置。
【請求項6】
前記通信回線は光ファイバ回線であり、
前記取得部は通信路に接続されている光トランシーバの状態を収集することにより回線状況を取得する、
請求項1から5のいずれか一の終端装置。
【請求項7】
前記通信回線はPONシステムの回線であり、前記取得部は前記回線状況データとしてOLT側の光トランシーバとONU側の光トランシーバとの状態を取得する、
請求項6の終端装置。
【請求項8】
コンピュータが実行する分析方法であって、
通信回線の状況を示す回線状況データを所定期間毎に取得するステップと、
前記回線状況データを蓄積するステップと、
前記回線状況データを分析するステップと、
分析結果を出力するステップと、を含み、
前記回線状況データを取得するステップは前記回線状況データとして送信側と受信側との間の距離情報を送信側と受信側とで対をなして取得し、記憶域に蓄積し、
前記回線状況データを分析するステップでは、前記距離情報に基づいて分析を実行する、
分析方法。
【請求項9】
通信回線の状況を示す回線状況データを所定期間毎に取得する処理と、
前記回線状況データを蓄積する処理と、
前記回線状況データを分析する処理と、
分析結果を出力する処理と、を含み、
前記回線状況データを取得する処理は前記回線状況データとして送信側と受信側との間の距離情報を送信側と受信側とで対をなして取得し、記憶域に蓄積し、
前記回線状況データを分析する処理では、前記距離情報に基づいて分析を実行する、
コンピュータに実行させるためのプログラム。