(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180423
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ウインドスクリーン装置およびそれを備えた鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 17/04 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B62J17/04
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093728
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高良 幸司
(72)【発明者】
【氏名】島田 卓
(72)【発明者】
【氏名】今井 祐輔
(57)【要約】
【課題】ウインドスクリーンの高さおよび傾斜角度を手動により容易に変更可能であり、ウインドスクリーンを良好にロックすることができ、小型化が容易なウインドスクリーン装置を提供する。
【解決手段】ウインドスクリーン装置20は、ウインドスクリーン21を支持するスクリーン支持部材22と、車体10に固定される固定部材23と、スクリーン支持部材22を固定部材23に回転可能に連結するヒンジ機構24とを備える。ヒンジ機構24は、スクリーン支持部材22に設けられたアーム部材25を固定部材23に対して回転可能に支持する支持軸26と、アーム部材25に取り付けられたスライド部材27と、スライド部材27に設けられたピン28と、を有する。固定部材23の第1対向面29a、第2対向面29bに、それぞれピン28が挿入可能な第1ピン孔30a、第2ピン孔30bが形成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両に備えられるウインドスクリーン装置であって、
ウインドスクリーンと、
前記ウインドスクリーンを支持するスクリーン支持部材と、
車体に固定される固定部材と、
前記スクリーン支持部材を前記固定部材に回転可能に連結するヒンジ機構と、を備え、
前記ヒンジ機構は、
前記スクリーン支持部材に設けられたアーム部材と、
前記アーム部材を前記固定部材に対して回転可能に支持する支持軸と、
前記アーム部材に取り付けられ、前記固定部材に対して接近する方向である第1方向および離反する方向である第2方向にスライド可能なスライド部材と、
前記スライド部材に設けられ、前記第1方向に突出したピンと、を有し、
前記固定部材は、前記ウインドスクリーンが第1の位置にあるときに前記スライド部材に対向する第1対向面と、前記ウインドスクリーンが第2の位置にあるときに前記スライド部材に対向する第2対向面と、を有し、
前記固定部材の前記第1対向面、前記第2対向面に、それぞれ前記ピンが挿入可能な第1ピン孔、第2ピン孔が形成されている、ウインドスクリーン装置。
【請求項2】
前記スライド部材は、前記ウインドスクリーンが前記第1の位置にあるときに前記固定部材の前記第1対向面と接触し、前記ウインドスクリーンが前記第2の位置にあるときに前記固定部材の前記第2対向面と接触する接触面を有している、請求項1に記載の鞍乗型車両のウインドスクリーン装置。
【請求項3】
前記固定部材には、前記第1ピン孔と前記第2ピン孔とをつなぐ溝が形成され、
前記溝の深さは、前記第1ピン孔の深さよりも浅く、かつ、前記第2ピン孔の深さよりも浅い、請求項1に記載のウインドスクリーン装置。
【請求項4】
前記固定部材の前記第1対向面と前記第2対向面との間に角部が設けられている、請求項1に記載のウインドスクリーン装置。
【請求項5】
前記ヒンジ機構は、前記スライド部材を前記第1方向に付勢する付勢部材を有している、請求項1に記載のウインドスクリーン装置。
【請求項6】
前記スライド部材は、凸部または凹部からなり、人の指が引っ掛けられる引っ掛け部を有している、請求項1に記載のウインドスクリーン装置。
【請求項7】
ヘッドパイプを有する車体フレームと、前記ヘッドパイプに左右に回転可能に支持されたステアリング軸と、前記ステアリング軸に固定され、前記ヘッドパイプの上方に配置されたハンドルバーと、を有する車体と、
少なくとも一部が前記ハンドルバーの前方に配置された請求項1~6のいずれか一つに記載のウインドスクリーン装置と、を備えた鞍乗型車両。
【請求項8】
前記ウインドスクリーンの前記第1の位置は、前記第2の位置よりも低い位置であり、
前記車体に固定された係止部材を有し、
前記ウインドスクリーン装置は、前記係止部材に係止された第1係止部と前記アーム部材に係止された第2係止部とを有し、前記アーム部材および前記スクリーン支持部材を介して前記ウインドスクリーンを前記第1位置に向けて付勢するスプリングを有している、請求項7に記載の鞍乗型車両。
【請求項9】
前記ヒンジ機構の前記支持軸は、左右方向に延びており、
前記固定部材は、
前記支持軸を回転可能に支持する左側板と、
前記左側板の右方に配置され、前記支持軸を回転可能に支持する右側板と、
前記左側板と前記右側板とに架け渡され、前記第1対向面および前記第2対向面を含む上面を有する上板と、を有し、
前記第1ピン孔および前記第2ピン孔は、前記上板に形成され、
前記スライド部材は、前記アーム部材に上方および下方にスライド可能に取り付けられ、
前記ピンは、前記スライド部材から下方に突出している、請求項7に記載の鞍乗型車両。
【請求項10】
前方かつ上方に向けて凸状となるように湾曲したスライド溝が形成され、前記車体に固定されたレール部材と、
前記スクリーン支持部材に設けられ、前記スライド溝にスライド可能に係合した左右に延びるスライドバーと、
を備えた、請求項7に記載の鞍乗型車両。
【請求項11】
前記レール部材は、前記スライド溝の一端部を仕切る第1端部と、前記スライド溝の他端部を仕切る第2端部とを有し、
前記第1端部は、前記ウインドスクリーンが前記第1の位置にあるときに前記スライドバーと当接するように形成され、
前記第2端部は、前記ウインドスクリーンが前記第2の位置にあるときに前記スライドバーと当接するように形成されている、請求項10に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に備えられるウインドスクリーン装置およびそれを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、走行に伴って発生する前方からの風を遮るために、ハンドルバーの前方にウインドスクリーン装置を備えた鞍乗型車両が知られている。また、乗員の好みに応じてウインドスクリーンの高さおよび傾斜角度を手動で変更可能なウインドスクリーン装置が知られている。例えば特許文献1に、そのようなウインドスクリーン装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたウインドスクリーン装置は、ウインドスクリーンを支持するスクリーンブラケットと、スクリーンブラケットを前後に回転可能に支持する回転軸が設けられた支持ブラケットと、支持ブラケットに対するスクリーンブラケットの位置をロックするラチェット機構とを備えている。ラチェット機構は、支持ブラケットに回転可能に設けられた爪部材と、スクリーンブラケットに設けられた上下に並ぶ複数の係合溝と、係合溝に係合するように爪部材を付勢するねじりコイルバネとを有している。ラチェット機構は、スクリーンブラケットの前方への回転を許容するが、後方への回転を規制するように構成されている。また、ラチェット機構は、スクリーンブラケットが所定の角度だけ前方に回転した後は、後方への回転を許容するように構成されている。
【0004】
上記ウインドスクリーン装置において、乗員がウインドスクリーンを前方に回転させると、爪部材が係合溝から外れる。これにより、スクリーンブラケットのロックが解除され、スクリーンブラケットは回転可能となる。乗員がウインドスクリーンを更に前方に回転させると、爪部材は上記係合溝の下方の溝に係合する。これにより、ウインドスクリーンの高さおよび傾斜角度が変更され、スクリーンブラケットは変更後の位置にロックされる。特許文献1には、このような機構により、ウインドスクリーンの傾斜角度を手動で容易に変更することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたウインドスクリーン装置では、ラチェット機構の係合爪と係合溝との係合により、ウインドスクリーンをロックする。しかし、係合爪と係合溝との係合では、ウインドスクリーンを十分にロックできない場合がある。また、特許文献1に開示されたウインドスクリーン装置では、ラチェット機構は、スクリーンブラケットを回転可能に支持する回転軸から比較的遠い位置に配置されている。ウインドスクリーンの高さおよび傾斜角度を変更可能とする機構(すなわち、回転軸を含むヒンジ機構)と、ウインドスクリーンをロックする機構(すなわち、ラチェット機構)とは、互いに遠く離れた位置に配置されている。そのため、ウインドスクリーン装置が大型化する傾向がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウインドスクリーンの高さおよび傾斜角度を手動により容易に変更可能であり、ウインドスクリーンを良好にロックすることができ、小型化が容易なウインドスクリーン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示されるウインドスクリーン装置は、鞍乗型車両に備えられるウインドスクリーン装置であって、ウインドスクリーンと、前記ウインドスクリーンを支持するスクリーン支持部材と、車体に固定される固定部材と、前記スクリーン支持部材を前記固定部材に回転可能に連結するヒンジ機構と、を備える。前記ヒンジ機構は、前記スクリーン支持部材に設けられたアーム部材と、前記アーム部材を前記固定部材に対して回転可能に支持する支持軸と、前記アーム部材に取り付けられ、前記固定部材に対して接近する方向である第1方向および離反する方向である第2方向にスライド可能なスライド部材と、前記スライド部材に設けられ、前記第1方向に突出したピンと、を有している。前記固定部材は、前記ウインドスクリーンが第1の位置にあるときに前記スライド部材に対向する第1対向面と、前記ウインドスクリーンが第2の位置にあるときに前記スライド部材に対向する第2対向面と、を有している。前記固定部材の前記第1対向面、前記第2対向面に、それぞれ前記ピンが挿入可能な第1ピン孔、第2ピン孔が形成されている。
【0009】
上記ウインドスクリーン装置によれば、スライド部材を第2方向にスライドさせることによってピンをピン孔から引き抜き、アーム部材を固定部材に対して回転させることにより、ウインドスクリーンの高さおよび傾斜角度を手動により容易に変更することができる。また、スライド部材を第1方向にスライドさせることによってピンをピン孔に挿入することにより、ヒンジ機構をロックすることができる。ピンとピン孔との係合により、ウインドスクリーンの位置を良好にロックすることができる。また、アーム部材を固定部材に対して回転可能に支持する支持軸と、ヒンジ機構をロックするピンおよびピン孔とは、いずれもヒンジ機構に設けられているので、互いに近い位置に配置されている。そのため、ウインドスクリーン装置の小型化が容易である。
【0010】
前記スライド部材は、前記ウインドスクリーンが前記第1の位置にあるときに前記固定部材の前記第1対向面と接触し、前記ウインドスクリーンが前記第2の位置にあるときに前記固定部材の前記第2対向面と接触する接触面を有していてもよい。
【0011】
このことにより、ウインドスクリーンが第1の位置にあるときに、スライド部材の接触面が固定部材の第1対向面と接触するので、スライド部材は固定部材上に安定して支持される。スライド部材の位置ずれを良好に防止することができるので、ウインドスクリーンを第1の位置に良好に保持することができる。同様に、ウインドスクリーンが第2の位置にあるときに、スライド部材の接触面が固定部材の第2対向面と接触するので、スライド部材は固定部材上に安定して支持される。スライド部材の位置ずれを良好に防止することができるので、ウインドスクリーンを第2の位置に良好に保持することができる。
【0012】
前記固定部材には、前記第1ピン孔と前記第2ピン孔とをつなぐ溝が形成されていてもよい。前記溝の深さは、前記第1ピン孔の深さよりも浅く、かつ、前記第2ピン孔の深さよりも浅くてもよい。
【0013】
このことにより、ウインドスクリーンの位置を変更する際に、例えば、ピンを第1ピン孔から完全に抜かなくても、ピンを溝に沿って第1ピン孔から第2ピン孔に移動させることができ、第2ピン孔に挿入することができる。よって、ウインドスクリーンの位置を第1の位置から第2の位置に変更する作業を容易かつ迅速に行うことができる。同様に、ウインドスクリーンの位置を第2の位置から第1の位置に変更する作業を容易かつ迅速に行うことができる。また、ピンの一部が溝に挿入されたままウインドスクリーンの位置を変更することができるので、ウインドスクリーンの位置を変更する作業を安定して行うことができる。
【0014】
前記固定部材の前記第1対向面と前記第2対向面との間に角部が設けられていてもよい。
【0015】
このことにより、スライド部材が固定部材の角部を乗り越えない限り、固定部材に対するスライド部材の位置は変更されない。そのため、ウインドスクリーンの位置を更に良好にロックすることができる。
【0016】
前記ヒンジ機構は、前記スライド部材を前記第1方向に付勢する付勢部材を有していてもよい。
【0017】
このことにより、ピンおよびピン孔の互いの位置が合ったときに、スライド部材が付勢部材の付勢力により第1方向に移動するので、ピンがピン孔に自動的に挿入される。そのため、ウインドスクリーンをロックする作業が容易である。また、ピンがピン孔から抜けにくいので、ウインドスクリーンを良好にロックすることができる。
【0018】
前記スライド部材は、凸部または凹部からなり、人の指が引っ掛けられる引っ掛け部を有していてもよい。
【0019】
このことにより、例えば、引っ掛け部に指を引っ掛け、スライド部材を第2方向にスライドさせることにより、ピンをピン孔から容易に引き抜くことができる。ウインドスクリーンの位置を変更する作業が容易となる。
【0020】
ここに開示される鞍乗型車両は、ヘッドパイプを有する車体フレームと、前記ヘッドパイプに左右に回転可能に支持されたステアリング軸と、前記ステアリング軸に固定され、前記ヘッドパイプの上方に配置されたハンドルバーと、を有する車体を備える。前記鞍乗型車両は、少なくとも一部が前記ハンドルバーの前方に配置された前記ウインドスクリーン装置を備える。
【0021】
前記ウインドスクリーンの前記第1の位置は、前記第2の位置よりも低い位置であってもよい。前記鞍乗型車両は、前記車体に固定された係止部材を有していてもよい。前記ウインドスクリーン装置は、前記係止部材に係止された第1係止部と前記アーム部材に係止された第2係止部とを有し、前記アーム部材および前記スクリーン支持部材を介して前記ウインドスクリーンを前記第1位置に向けて付勢するスプリングを有していてもよい。
【0022】
このことにより、万が一ピンが破損した場合に、ウインドスクリーンはスプリングにより第1位置に位置付けられる。そのため、鞍乗型車両が凹凸のある路面を走行する場合等に、ウインドスクリーンが不安定に動いてしまうことを抑制することができる。
【0023】
前記ヒンジ機構の前記支持軸は、左右方向に延びていてもよい。前記固定部材は、前記支持軸を回転可能に支持する左側板と、前記左側板の右方に配置され、前記支持軸を回転可能に支持する右側板と、前記左側板と前記右側板とに架け渡され、前記第1対向面および前記第2対向面を含む上面を有する上板と、を有していてもよい。前記第1ピン孔および前記第2ピン孔は、前記上板に形成されていてもよい。前記スライド部材は、前記アーム部材に上方および下方にスライド可能に取り付けられていてもよい。前記ピンは、前記スライド部材から下方に突出していてもよい。
【0024】
このことにより、比較的簡易な構成により、前述の効果を得ることができる。また、乗員がスライド部材を上下にスライドさせることにより、ウインドスクリーンのロックおよびその解除を容易に行うことができる。乗員は、鞍乗型車両に乗車したままウインドスクリーンの位置および傾斜角度を変更することができる。
【0025】
前記鞍乗型車両は、前方かつ上方に向けて凸状となるように湾曲したスライド溝が形成され、前記車体に固定されたレール部材と、前記スクリーン支持部材に設けられ、前記スライド溝にスライド可能に係合した左右に延びるスライドバーと、を備えていてもよい。
【0026】
このことにより、レール部材およびスライドバーがウインドスクリーンの移動を案内するので、ウインドスクリーンの位置を変更する作業が容易となる。
【0027】
前記レール部材は、前記スライド溝の一端部を仕切る第1端部と、前記スライド溝の他端部を仕切る第2端部とを有していてもよい。前記第1端部は、前記ウインドスクリーンが前記第1の位置にあるときに前記スライドバーと当接するように形成されていてもよい。前記第2端部は、前記ウインドスクリーンが前記第2の位置にあるときに前記スライドバーと当接するように形成されていてもよい。
【0028】
このことにより、スライドバーをレール部材の第1端部に当接させることにより、ウインドスクリーンを第1の位置に容易に位置決めすることができる。同様に、スライドバーをレール部材の第2端部に当接させることにより、ウインドスクリーンを第2の位置に容易に位置決めすることができる。よって、ウインドスクリーンの位置を変更する作業が容易となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ウインドスクリーンの高さおよび傾斜角度を手動により容易に変更可能であり、ウインドスクリーンを良好にロックすることができ、小型化が容易なウインドスクリーン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【
図3】
図3は、ウインドスクーンがハイポジションにあるときのウインドスクリーン装置の左側面図である。
【
図4】
図4は、ウインドスクーンがローポジションにあるときのウインドスクリーン装置の左側面図である。
【
図5】
図5はウインドスクリーン装置の一部の背面図である。
【
図6】
図6は、ウインドスクリーンがハイポジションにあるときのウインドスクリーン装置の斜視図である。
【
図7】
図7は、ウインドスクリーンがローポジションにあるときのウインドスクリーン装置の斜視図である。
【
図11】
図11は、ウインドスクリーンがローポジションにあって、かつ、ピンが第1ピン孔に挿入されているときのヒンジ機構の拡大斜視図である。
【
図12】
図12は、ウインドスクリーンがローポジションにあって、かつ、ピンが第1ピン孔から引き抜かれたときのヒンジ機構の拡大斜視図である。
【
図13】
図13は、ウインドスクリーンがハイポジションにあって、かつ、ピンが第2ピン孔に挿入される前のヒンジ機構の拡大斜視図である。
【
図14】
図14は、ウインドスクリーンがハイポジションにあって、かつ、ピンが第2ピン孔に挿入されたときのヒンジ機構の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、ウインドスクリーン装置および鞍乗型車両の実施の形態について説明する。
図1は、鞍乗型車両の一例である自動二輪車1の左側面図である。
【0032】
以下の説明では特に断らない限り、前、後、左、右、上、下とは、乗員が乗車せずかつ荷物が載せられていない自動二輪車1が水平面上に直立した状態で停止している場合に、シート17に着座した仮想的な乗員から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図中のF、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。
【0033】
自動二輪車1は、車体10と、乗員が座るシート17と、走行用の駆動源13と、前輪6と、後輪8と、ウインドスクリーン装置20とを備えている。
【0034】
車体10は、ヘッドパイプ3を有する車体フレーム2(
図2参照)と、ヘッドパイプ3に左右に回転可能に支持されたステアリング軸5と、ステアリング軸5に固定されたハンドルバー11とを有している。ハンドルバー11はヘッドパイプ3の上方に配置されている。ヘッドパイプ3の前方には、フロントカバー15が配置されている。
図2は、車体フレーム2の側面図である。車体フレーム2は、ヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から後方に延びるメインフレーム4と、メインフレーム4から後方に延びるシートフレーム7とを有している。なお、
図1では、車体フレーム2のうちヘッドパイプ3のみを図示している。
【0035】
図1に示すように、車体10は、ステアリング軸5に固定されたフロントフォーク12を有している。前輪6はフロントフォーク12に支持されている。駆動源13は、内燃機関または電動モータを有している。駆動源13は車体フレーム2に支持されている。後輪8は駆動源13に連結されている。後輪8は駆動源13によって駆動される。シート17はシートフレーム7(
図2参照)に支持されている。シート17は、前輪6および後輪8よりも上方に配置されている。
【0036】
ウインドスクリーン装置20は、自動二輪車1の走行に伴って発生する前方からの風を遮るための装置である。ウインドスクリーン装置20の少なくとも一部はハンドルバー11の前方に配置されている。次に、ウインドスクリーン装置20の詳細について説明する。
【0037】
図3および
図4は、ウインドスクリーン装置20の左側面図である。
図5は、ウインドスクリーン装置20の一部の背面図である。
図6および
図7は、ウインドスクリーン装置20一部を斜め後方から見た斜視図である。
図7に示すように、ウインドスクリーン装置20は、ウインドスクリーン21と、ウインドスクリーン21を支持するスクリーン支持部材22と、車体10に固定された左右の固定部材23と、スクリーン支持部材22を固定部材23に回転可能に連結するヒンジ機構24とを有している。
【0038】
スクリーン支持部材22を固定部材23に対して回転させることにより、ウインドスクリーン21の位置を変更することができる。なお、ウインドスクリーン21の位置の変更とは、ウインドスクリーン21の高さの変更、および/または、車両側面視におけるウインドスクリーン21の水平線に対する角度(以下、単に傾斜角度という)の変更のことである。本実施形態では、ウインドスクリーン21の位置の変更とは、ウインドスクリーン21の高さおよび傾斜角度の両方の変更を意味するものとする。
図3および
図6は、ウインドスクリーン21がハイポジションにあるときの状態を表している。
図4および
図7は、ウインドスクリーン21がローポジションにあるときの状態を表している。ハイポジションはローポジションよりも高い位置である。本実施形態では、ウインドスクリーン21がハイポジションにあるときの傾斜角度は、ローポジションにあるときの傾斜角度よりも大きい。なお、ローポジションは第1の位置の一例であり、ハイポジションは第2の位置の一例である。
【0039】
ウインドスクリーン21の材料は特に限定されないが、例えば、透明な樹脂材料などである。
図1に示すように、ウインドスクリーン21は、ハンドルバー11よりも上方に延びている。スクリーン支持部材22は、ウインドスクリーン21の下部に固定されている。
【0040】
固定部材23は車体10に固定されていればよく、ここでは図示しないブラケットを介して車体フレーム2のヘッドパイプ3に固定されている。固定部材23の材料は特に限定されず、鉄などの金属であってもよく、樹脂材料であってもよい。
図8は、固定部材23の斜視図である。固定部材23の形状は特に限定されない。本実施形態では、固定部材23は、左側板23Lと、右側板23R(
図6参照)と、上板23Uとを有している。右側板23Rは左側板23Lの右方に配置されている。上板23Uは左側板23Lと右側板23Rとに架け渡されている。上板23Uは、後述するスライド部材27に対向する第1対向面29aおよび第2対向面29bを有している。第2対向面29bは第1対向面29aの後方かつ上方に位置している。第1対向面29aと第2対向面29bとは互いに非平行である。第1対向面29aと第2対向面29bとの間には、角部29cが設けられている。
【0041】
左側板23Lおよび右側板23Rには、左右に延びる貫通孔32が形成されている。上板23Uには、第1ピン孔30aおよび第2ピン孔30bが形成されている。第1ピン孔30aは第1対向面29aに形成されている。第1ピン孔30aは第1対向面29aから窪んでいる。第2ピン孔30bは第2対向面29bに形成されている。第2ピン孔30bは第2対向面29bから窪んでいる。第1ピン孔30aは第1対向面29aに対して垂直な方向に延び、第2ピン孔30bは第2対向面29bに対して垂直な方向に延びている。また、固定部材23には、第1ピン孔30aと第2ピン孔30bとをつなぐ溝34が形成されている。溝34は後方かつ上方に延びている。溝34は、角部29cを跨がって形成されている。溝34の深さは、第1ピン30aの深さよりも浅く、かつ、第2ピン孔30bの深さよりも浅い。
【0042】
図6に示すように、ヒンジ機構24は、スクリーン支持部材22に設けられたアーム部材25と、アーム部材25を固定部材23に対して回転可能に支持する支持軸26と、アーム部材25にスライド可能に取り付けられたスライド部材27とを有している。アーム部材25は、スクリーン支持部材22に固定された中央アーム25aと、中央アーム25aから後方に延びる左右の後方アーム25bと、後方アーム25bから下方に延びる下方アーム25cとを有している。支持軸26は、左右方向に延びている。支持軸26は、固定部材23の貫通孔32に挿入されている。
【0043】
スライド部材27は、下方アーム25cにスライド可能に取り付けられている。スライド部材27は、固定部材23に対して接近する方向である第1方向D1と、固定部材23から離反する方向である第2方向D2とにスライド可能である。ここでは、第1方向D1は下方であり、第2方向D2は上方である。スライド部材27の第2方向D2への移動は、乗員によって行われる。スライド部材27は、乗員の指が引っ掛けられる引っ掛け部27aを有している。引っ掛け部27aは、例えば凸部または凹部によって形成されている。また、スライド部材27は、固定部材23と接触する接触面27bを有している。スライド部材27の接触面27bは、固定部材23の第1対向面29aまたは第2対向面29bと接触する。
【0044】
図9は
図6のIX-IX線断面図である。
図9に示すように、スライド部材27にはピン28が設けられている。ピン28は、スライド部材27から第1方向D1に突出している。ピン28は、第1ピン孔30aおよび第2ピン孔30bに挿入可能に構成されている。スライド部材27を第1方向D1に移動させることにより、ピン28を第1ピン孔30aまたは第2ピン孔30bに挿入することができる。ピン28が第1ピン孔30aまたは第2ピン孔30bに挿入されると、固定部材23に対するアーム部材25の回転は規制される。これにより、ヒンジ機構24をロックすることができる。スライド部材27を第2方向D2に移動させることにより、ピン28を第1ピン孔30aまたは第2ピン孔30bから引き抜くことができる。これにより、ヒンジ機構24のロックを解除することができる。ピン28が第1ピン孔30aおよび第2ピン孔30bから抜けると、アーム部材25を固定部材23に対して回転させることが可能となる。
【0045】
前述したように、固定部材23には、第1ピン孔30aと第2ピン孔30bとをつなぐ溝34が形成されている。ピン28を溝34内で移動させることにより、ピン28を第1ピン孔30aと第2ピン孔30bとの間で移動させることができる。第1ピン孔30aは、溝34よりも深い奥部30aaと、奥部30aaよりも浅い部分30abとを含んでいる。第2ピン孔30bは、溝34よりも深い奥部30baと、奥部30baよりも浅い部分30bbとを含んでいる。ピン28を第1ピン孔30aの全体または第2ピン孔30bの全体から引き抜かなくても、第1ピン孔30aの奥部30aaまたは第2ピン孔30bの奥部30baから引き抜くだけで、ピン28を第1ピン孔30aと第2ピン孔30bとの間で移動させることができる。そのため、ピン28を第1ピン孔30aの全体または第2ピン孔30bの全体から引き抜かなくても、アーム部材25を固定部材23に対して回転させることが可能である。
【0046】
図9に示すように、ヒンジ機構24は、スライド部材27を第1方向D1に付勢するばね33を有している。ここでは、ばね33はコイルスプリングによって構成されている。ただし、ばね33の形態は特に限定されない。また、ばね33は付勢部材の一例であるが、付勢部材はばね33に限定されない。乗員がばね33の付勢力に抗してスライド部材27を第2方向D2に移動させると、
図10に示すように、ピン28は第2ピン孔30bの奥部30baまたは第1ピン孔30aの奥部30aaから引き抜かれる。乗員がスライド部材27を放すと、ばね33の付勢力によってスライド部材27が第1方向D1に移動することにより、ピン28は第2ピン孔30bの奥部30baまたは第1ピン孔30aの奥部30aaに挿入される(
図9参照)。
【0047】
図11および
図12は、ウインドスクリーン21がローポジションにあるときのヒンジ機構24の拡大斜視図である。
図11は、ピン28が第1ピン孔30aに挿入されているときの図である。
図12は、ピン28が第1ピン孔30aから引き抜かれたときの図である。
図11に示すように、ウインドスクリーン21がローポジションにあるときに、スライド部材27の接触面27b(
図9参照)は固定部材23の第1対向面29aと接触する。スライド部材27は固定部材23の第1対向面29aに支持される。
【0048】
図13および
図14は、ウインドスクリーン21がハイポジションにあるときのヒンジ機構24の拡大斜視図である。
図13は、ピン28が第2ピン孔30bに挿入される前の図である。
図14は、ピン28が第2ピン孔30bに挿入されているときの図である。
図14に示すように、ウインドスクリーン21がハイポジションにあるときに、スライド部材27の接触面27bは固定部材23の第2対向面29bと接触する。スライド部材27は固定部材23の第2対向面29bに支持される。
【0049】
ウインドスクリーン21の位置を変更する際に、アーム部材25は支持軸26の軸線26c周りに回転する(
図6および
図7参照)。スクリーン支持部材22はアーム部材25に固定されている。そのため、ウインドスクリーン21の位置を変更する際に、スクリーン支持部材22は支持軸26の軸線26c周りに回転する。
図6および
図7に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1は、スクリーン支持部材22の回転を案内するレール部材41を備えている。
【0050】
レール部材41は車体10に固定されている。ここではレール部材41は、図示しないブラケットを介して車体フレーム2のヘッドパイプ3に固定されている。レール部材41には、前方かつ上方に向けて凸状となるように湾曲したスライド溝40が形成されている(
図3参照)。スクリーン支持部材22には、スライド溝40にスライド可能に係合したスライドバー42が設けられている。スライドバー42は左右方向に延びている。スライドバー42がスライド溝40に沿って上方または下方に移動することにより、スクリーン支持部材22はレール部材41によって上方または下方に案内される。
【0051】
レール部材41は、スライド溝40の一方の端部を仕切る第1端部41aと、他方の端部を仕切る第2端部41bとを有している。スライドバー42は、スライド溝40内において、第1端部41aと第2端部41bとの間で移動可能である。
図7に示すように、第1端部41aは、ウインドスクリーン21がローポジションにあるときにスライドバー42と当接するように形成されている。スクリーン支持部材22が支持軸26の軸線26c周りに下方に回転したときに、スライドバー42が第1端部41aに当接することにより、スクリーン支持部材22の下方への移動が規制される。これにより、ウインドスクリーン21はローポジションに位置決めされる。第2端部41bは、ウインドスクリーン21がハイポジションにあるときにスライドバー42と当接するように形成されている。スクリーン支持部材22が支持軸26の軸線26c周りに上方に回転したときに、スライドバー42が第2端部41bに当接することにより、スクリーン支持部材22の上方への移動が規制される。これにより、ウインドスクリーン21はハイポジションに位置決めされる。
【0052】
図5に示すように、自動二輪車1は、スクリーン支持部材22を下方に付勢するスプリング35を備えている。車体10には係止部材34が固定されている。係止部材34は、例えば、図示しないブラケットを介してヘッドパイプ3に固定されている。ここでは、スプリング35は、ねじりコイルばねによって形成されている。スプリング35は、係止部材34に係止された第1係止部35aと、アーム部材25の中央アーム25aに係止された第2係止部35bとを有している。スプリング35は、アーム部材25を下方に向けて付勢している。アーム部材25はスクリーン支持部材22に固定され、ウインドスクリーン1はスクリーン支持部材22に支持されている。そのため、スプリング35は、アーム部材25およびスクリーン支持部材22を介して、ウインドスクリーン1をローポジションに向けて付勢している。
【0053】
以上がウインドスクリーン装置20の構成である。次に、ウインドスクリーン21の位置を変更する作業について説明する。
【0054】
ウインドスクリーン21の位置の変更は手動により行われる。ウインドスクリーン21の位置の変更は、例えば乗員により行われる。ウインドスクリーン21をローポジションからハイポジションに移動させるときには、まず、乗員が左および右のスライド部材27を第2方向D2に押し上げる。この際、指を引っ掛け部27aに引っ掛けることにより、スライド部材27を容易に移動させることができる。
図12に示すように、スライド部材27が第2方向D2に移動すると、スライド部材27の接触面27bは固定部材23の第1対向面29aから離反し、ピン28は第1ピン孔30aから引き抜かれる。これにより、ヒンジ機構24のロックが解除される。なお、前述したように、固定部材23には、第1ピン孔30aと第2ピン孔30bとをつなぐ溝34が形成されている。ピン28を第1ピン孔30aの奥部30aaから引き抜くだけで、ヒンジ機構24のロックを解除することができる。
【0055】
次に、乗員は、アーム部材25を支持軸26の軸線26c周りに上方に回転させる。この際、スライドバー42はレール部材41のスライド溝40に沿って、第1端部41aから第2端部41bに向けて移動する。レール部材41は、アーム部材25、スクリーン支持部材22、およびウインドスクリーン21の移動を案内する。そのため、ウインドスクリーン21は円滑に移動する。ウインドスクリーン21がハイポジションに到達すると、スライドバー42が第2端部41bに当接し、アーム部材25の更なる回転は規制される。このとき、
図13に示すように、ピン28は第2ピン孔30bの真上に位置することとなる。
【0056】
乗員がスライド部材27を放すと、ばね33(
図9参照)の付勢力によりスライド部材27は第1方向D1に移動する。その結果、ピン28は第2ピン孔30bに差し込まれる(
図14参照)。これにより、アーム部材25の回転が規制され、ヒンジ機構24はロックされる。ウインドスクリーン21は、ハイポジションにロックされる。
【0057】
このように、ウインドスクリーン21の位置をローポジションからハイポジションに変更する作業は、ドライバー等のツールを用いずに行うことができる。また、乗員がシート17に着座したまま行うことができる。
【0058】
ウインドスクリーン21の位置をハイポジションからローポジションに変更する作業も同様に行うことができる。すなわち、ウインドスクリーン21をローポジションからハイポジションに移動させる作業と逆の作業を行うことにより、ウインドスクリーン21をハイポジションからローポジションにツールを用いずに手動で移動させることができる。
【0059】
本実施形態によれば、様々な効果を得ることができる。次に、本実施形態によってもたらされる様々な効果について説明する。
【0060】
本実施形態に係るウインドスクリーン装置20によれば、スライド部材27を第2方向D2にスライドさせることによってピン28を第1ピン孔30aまたは第2ピン孔30bから引き抜き、アーム部材25を固定部材23に対して回転させることにより、ウインドスクリーン21の高さおよび傾斜角度を手動により容易に変更することができる。また、スライド部材27を第1方向D1にスライドさせることによってピン28を第1ピン孔30aまたは第2ピン孔30bに挿入することにより、ヒンジ機構24をロックすることができる。ピン28と第1ピン孔30aまたは第2ピン孔30bとの係合により、ウインドスクリーン21を良好にロックすることができる。また、アーム部材25を固定部材23に対して回転可能に支持する支持軸26と、ヒンジ機構24をロックするピン28、第1ピン孔30a、および第2ピン孔30bとは、いずれもヒンジ機構24に設けられているので、互いに近い位置に配置されている。そのため、ウインドスクリーン装置20の小型化が容易である。以上のように、本実施形態に係るウインドスクリーン装置20によれば、ウインドスクリーン21の高さおよび傾斜角度を手動により容易に変更可能であり、ウインドスクリーン21を良好にロックすることができ、小型化が容易である。
【0061】
本実施形態によれば、ウインドスクリーン21がローポジションにあるときに、スライド部材27の接触面27bが固定部材23の第1対向面29aと接触するので、スライド部材27は固定部材23上に安定して支持される。スライド部材27の位置ずれを良好に防止することができるので、ウインドスクリーン21をローポジションに良好に保持することができる。同様に、ウインドスクリーン21がハイポジションにあるときに、スライド部材27の接触面27bが固定部材23の第2対向面29bと接触するので、スライド部材27は固定部材23上に安定して支持される。スライド部材27の位置ずれを良好に防止することができるので、ウインドスクリーン21をハイポジションに良好に保持することができる。
【0062】
本実施形態によれば、固定部材23に第1ピン孔30aと第2ピン孔30bとをつなぐ溝34が形成されている。例えばウインドスクリーン21の位置をローポジションからハイポジションに変更する際に、ピン28を第1ピン孔30aから完全に引き抜かなくても、第1ピン孔30aの奥部30aaから引き抜くだけで、ピン28を溝34に沿って第1ピン孔30aから第2ピン孔30bに移動させることができ、第2ピン孔30bに挿入することができる。よって、ウインドスクリーン21の位置をローポジションからハイポジションに変更する作業を容易かつ迅速に行うことができる。同様に、ウインドスクリーン21の位置をハイポジションからローポジションに変更する作業を容易かつ迅速に行うことができる。また、ウインドスクリーン21の位置を変更する際に、ピン28の一部が溝34に挿入されているので、アーム部材25が左右にぶれることはピン28によって防止される。アーム部材25は左右にぶれにくいので、ウインドスクリーン21を安定して移動させることができる。
【0063】
本実施形態によれば、固定部材23の第1対向面29aと第2対向面29bとの間に角部29cが設けられている。万が一、ピン28が破損した場合であっても、スライド部材27が固定部材23の角部29cを乗り越えない限り、固定部材23に対するスライド部材27の位置は変更されない。そのため、ウインドスクリーン21の位置を良好に保持することができる。
【0064】
本実施形態によれば、ヒンジ機構24はスライド部材27を第1方向D1に付勢するばね33を有している。ピン28および第1ピン孔30aの互いの位置があったとき、および、ピン28および第2ピン孔30bの互いの位置が合ったときに、スライド部材27はばね33の付勢力により第1方向D1に移動する。そのため、ピン28は第1ピン孔30aまたは第2ピン孔30bに自動的に挿入される。よって、ヒンジ機構24をロックする作業が容易であり、ウインドスクリーン21をローポジションまたはハイポジションにロックする作業は容易である。また、ピン28が第1ピン孔30aまたは第2ピン孔30bから抜けにくいので、ウインドスクリーン21を良好にロックすることができる。
【0065】
本実施形態によれば、スライド部材27は、人の指が引っ掛けられる引っ掛け部27aを有している。引っ掛け部27aに指を引っ掛け、スライド部材27を第2方向D2にスライドさせることにより、第1ピン孔30aまたは第2ピン孔30bからピン28を容易に引き抜くことができる。よって、ウインドスクリーン21の位置を変更する作業を容易に行うことができる。
【0066】
本実施形態によれば、ウインドスクリーン装置20は、アーム部材25およびスクリーン支持部材22を介してウインドスクリーン21をローポジションに向けて付勢するスプリング35を有している。そのため、ピン28の破損等によりヒンジ機構24がロック不能となった場合に、ウインドスクリーン21はスプリング35によりローポジションに位置付けられる。よって、自動二輪車1が凹凸のある路面を走行する場合等に、ウインドスクリーン21が不安的に動いてしまうことを抑制することができる。
【0067】
本実施形態によれば、自動二輪車1は、車体10に固定されたレール部材41と、スクリーン支持部材2に設けられたスライドバー42とを備えている。スライドバー42は、レール部材41のスライド溝40にスライド可能に係合している。レール部材41およびスライドバー42がウインドスクリーン21の移動を案内するので、ウインドスクリーン21の位置を変更する作業が容易となる。
【0068】
レール部材41は、スライド溝40の一方の端部を仕切る第1端部41aと、スライド溝40の他方の端部を仕切る第2端部41bとを有している。スライドバー42を第1端部41aに当接させることにより、ウインドスクリーン21をローポジションに容易に位置決めすることができる。同様に、スライドバー42を第2端部41bに当接させることにより、ウインドスクリーン21をハイポジションに容易に位置決めすることができる。よって、ウインドスクリーン21の位置を変更する作業が容易となる。
【0069】
以上、一実施形態について説明した。しかし、前記実施形態は例示に過ぎず、他にも様々な実施形態が可能である。
【0070】
固定部材23の形状は特に限定されない。固定部材23の第1対向面29aと第2対向面29bとの間には、角部29cが設けられていなくてもよい。また、第1対向面29aと第2対向面29bとは、面一になっていてもよい。
【0071】
第1ピン孔30aと第2ピン孔30bとをつなぐ溝12は無くてもよい。
【0072】
スライド部材27を第1方向D1に付勢するばね33は無くてもよい。ばね33を省略し、ピン28が第1ピン孔30aまたは第2ピン孔30bに挿入されたときにスライド部材27をロックするロック機構を設けてもよい。
【0073】
スライド部材27は引っ掛け部27aを有していなくてもよい。
【0074】
ウインドスクリーン21をローポジションに向けて付勢するスプリング35は無くてもよい。
【0075】
レール部材41およびスライドバー42は無くてもよい。レール部材41の第1端部40aまたは第2端部40bは無くてもよい。
【0076】
鞍乗型車両とは、乗員が跨がって乗車する車両のことである。鞍乗型車両は自動二輪車1に限定されない。鞍乗型車両は、例えば、自動三輪車、ATV(All Terrain vehicle)、スノーモービルであってもよい。
【0077】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0078】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、2…車体フレーム、3…ヘッドパイプ、5…ステアリング軸、10…車体、11…ハンドルバー、20…ウインドスクリーン装置、21…ウインドスクリーン、22…スクリーン支持部材、23…固定部材、23L…左側板、23R…右側板、23U…上板、24…ヒンジ機構、25…アーム部材、26…支持軸、27…スライド部材、27a…引っ掛け部、27b…接触面、28…ピン、29…上面、29a…第1対向面、29b…第2対向面、29c…角部、30a…第1ピン孔、30b…第2ピン孔、33…ばね(付勢部材)、34…係止部材、35…スプリング、35a…第1係止部、35b…第2係止部、34…溝、40…スライド溝、41…レール部材、41a…第1端部、41b…第2端部、42…スライドバー、D1…第1方向、D2…第2方向