IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライオン株式会社の特許一覧

特開2023-180425液体洗浄剤組成物及び液体洗浄剤製品
<>
  • 特開-液体洗浄剤組成物及び液体洗浄剤製品 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180425
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】液体洗浄剤組成物及び液体洗浄剤製品
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/04 20060101AFI20231214BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20231214BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20231214BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C11D17/04
C11D3/48
C11D3/43
C11D1/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093730
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】小熊 知美
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC15
4H003AE05
4H003BA20
4H003DA01
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB05
4H003EB06
4H003ED02
4H003FA27
4H003FA28
4H003FA34
(57)【要約】
【課題】衣類等に直接スプレーすることにより、非イオン性抗菌剤の効果を充分に発揮できると共に、吐出部のつまりが生じにくい液体洗浄剤組成物、及びこの液体洗浄剤組成物をスプレー容器に収容した洗浄剤製品を提供する。
【解決手段】スプレー容器に収容される液体洗浄剤組成物であって、(A)成分:非イオン性抗菌剤と、(B)成分:界面活性剤と、(C)成分:溶剤とを含有し、(B)成分は、(B1)成分:半極性界面活性剤を含み、(C)成分は、プロピレングリコール、ブチルカルビトール、グリセリン、及びソルビトールから選択される溶剤であり、(A)成分の含有量が0.001~1質量%であり、(B1)成分の含有量が1~5質量%であり、(C)成分の含有量が1~15質量%である、液体洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容した液を吐出することが可能なスプレー容器に収容される液体洗浄剤組成物であって、
(A)成分:非イオン性抗菌剤と、
(B)成分:界面活性剤と、
(C)成分:溶剤とを含有し、
前記(B)成分は、(B1)成分:半極性界面活性剤を含み、
前記(C)成分は、プロピレングリコール、ブチルカルビトール、グリセリン、及びソルビトールから選択される溶剤であり、
前記(A)成分の含有量が液体洗浄剤組成物の総質量に対して0.001~1質量%であり、
前記(B1)成分の含有量が液体洗浄剤組成物の総質量に対して1~5質量%であり、
前記(C)成分の含有量が液体洗浄剤組成物の総質量に対して1~15質量%である、液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記(B1)成分の含有量が前記(B)成分全体の含有量に対して20質量%以上である、請求項1に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(B)成分全体の含有量が液体洗浄剤組成物の総質量に対して1~15質量%である、請求項1又は2に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
pHが7~12である、請求項1又は2に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
スプレー容器と、前記スプレー容器に収容された液体洗浄剤組成物とを備え、
前記液体洗浄剤組成物は、請求項1又は2に記載の液体洗浄剤組成物である、液体洗浄剤製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体洗浄剤組成物及び液体洗浄剤製品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、洗濯時に水で希釈する際の「原液の洗剤使用量」は10~40g程度と少ない。希釈された洗浄処理液で、ある成分が衣類に対して効果を発揮できるよう、原液中の当該成分の配合濃度を高くすることには、困難が伴う場合がある。
そこで、特定の成分を高濃度に配合した前処理剤を、スプレー容器を用いて直接衣類等に塗布することが行われている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-88352号公報
【特許文献2】特開2003-34800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗濯後の衣類等の繊維製品に抗菌性を付与する成分として非イオン性抗菌剤が知られている。非イオン性抗菌剤についても、衣類等に対して、高濃度で作用させるため、界面活性剤と共に直接衣類等に塗布することが考えられる。
しかし、本発明者が確認したところ、非イオン性抗菌剤は、界面活性剤の種類によっては、その効果を発揮できないことがわかった。
【0005】
さらに、スプレー容器を用いるにあたっては、吐出部のつまりが生じないことが重要であるが、本発明者が確認したところ、界面活性剤の種類によっては、つまりの問題が生じやすいことがわかった。
本発明は、上記事情に鑑みて、衣類等に直接スプレーすることにより、非イオン性抗菌剤の効果を充分に発揮できると共に、吐出部のつまりが生じにくい液体洗浄剤組成物、及びこの液体洗浄剤組成物をスプレー容器に収容した洗浄剤製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]収容した液を吐出することが可能なスプレー容器に収容される液体洗浄剤組成物であって、
(A)成分:非イオン性抗菌剤と、
(B)成分:界面活性剤と、
(C)成分:溶剤とを含有し、
前記(B)成分は、(B1)成分:半極性界面活性剤を含み、
前記(C)成分は、プロピレングリコール、ブチルカルビトール、グリセリン、及びソルビトールから選択される溶剤であり、
前記(A)成分の含有量が液体洗浄剤組成物の総質量に対して0.001~1質量%であり、
前記(B1)成分の含有量が液体洗浄剤組成物の総質量に対して1~5質量%であり、
前記(C)成分の含有量が液体洗浄剤組成物の総質量に対して1~15質量%である、液体洗浄剤組成物。
[2]前記(B1)成分の含有量が前記(B)成分全体の含有量に対して20質量%以上である、[1]に記載の液体洗浄剤組成物。
[3]前記(B)成分全体の含有量が液体洗浄剤組成物の総質量に対して1~15質量%である、[1]又は[2]に記載の液体洗浄剤組成物。
[4]pHが7~12である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の液体洗浄剤組成物。
[5]スプレー容器と、前記スプレー容器に収容された液体洗浄剤組成物とを備え、
前記液体洗浄剤組成物は、[1]~[4]の何れか一項に記載の液体洗浄剤組成物である、液体洗浄剤製品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体洗浄剤組成物及び液体洗浄剤製品は、衣類等に直接スプレーすることにより、非イオン性抗菌剤の効果を充分に発揮できると共に、吐出部のつまりが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の液体洗浄剤製品を構成するトリガー式スプレー容器の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の液体洗浄剤組成物は、後述する(A)成分、(B)成分、(C)成分及び水を含有する液体洗浄剤組成物である。
以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、酸の形態と塩の形態をとりうる成分の含有量は、酸の形態としての含有量である。
【0010】
<(A)成分>
(A)成分は、非イオン性抗菌剤である。(A)成分は、洗濯後の衣類等の繊維製品に抗菌性を付与する成分である。
非イオン性抗菌剤は、他成分の極性に性能を左右されない点で好ましい。非イオン性抗菌剤としてはフェノール構造を有する抗菌剤が挙げられる。
【0011】
フェノール構造を有する抗菌剤とは、芳香族炭化水素核の水素原子の1以上がヒドロキシ基で置換された構造を有する抗菌剤である。
フェノール構造を有する抗菌剤としては、公知のフェノール誘導体又はジフェニル化合物が挙げられる。
フェノール構造を有する抗菌剤の中でも、疎水性繊維への吸着量が高く、本発明を適用することによる効果が大きい点から、下式(a1)で表される2-ヒドロキシジフェニル化合物(以下、化合物(a1)という。)が好ましい。
【0012】
【化1】
【0013】
ただし、式(a1)中、Xは酸素原子又は炭素数1~4のアルキレン基であり、Yは塩素原子又は臭素原子であり、ZはSOH、NO、又は炭素数1~4のアルキル基であり、a、b、cはそれぞれ独立に0又は1~3の整数であり、dは0又は1であり、mは0又は1であり、nは0又は1である。
なお、-(Y)bは、ベンゼン環の水素原子のb個がYに置換されていることを意味する。-(Y)c、-(Z)d、-(OH)m及び-(OH)nについても同様である。
【0014】
化合物(a1)は、Xが酸素原子でaが1である2-ヒドロキシジフェニル化合物を含むことが好ましい。
また、化合物(a1)としては、Xが酸素原子又はメチレン基であり、Yが塩素原子又は臭素原子であり、mが0であり、nが0又は1であり、aが1であり、bが0、1又は2であり、cが0、1又は2であり、かつdが0である化合物が好ましい。
【0015】
より好適な具体例として、Xが酸素原子、aが1であり、Yが塩素原子、bまたはcの一方が1で他方が0であり、dが0、mが0、nが0であるモノクロロヒドロキシジフェニルエーテル;Xが酸素原子、aが1であり、Yが塩素原子、bが1、cが1、dが0、mが0、nが0であるジクロロヒドロキシジフェニルエーテル;Xが酸素原子、aが1であり、Yが塩素原子、bまたはcの一方が1で他方が2であり、dが0、mが0、nが0であるトリクロロヒドロキシジフェニルエーテル;Xがメチレン基、aが1であり、Yが塩素原子、bが0、cが1、dが0、mが0、nが0であるベンジルクロロフェノールが挙げられる。
【0016】
特に好適な具体例として、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール(慣用名:トリクロサン)、5-クロロ-2-(4-クロロフェノキシ)フェノール(慣用名:ダイクロサン)、o-ベンジル-p-クロロフェノール(慣用名:クロロフェン)が挙げられる。
【0017】
(A)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.001~1質量%が好ましく、0.01~0.1質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が上記好ましい下限値以上であると、液体洗浄剤組成物の抗菌性がより優れる。(A)成分の含有量が上記好ましい上限値以下であると、液安定性とコストの観点から有利である。
【0018】
<(B)成分>
(B)成分は界面活性剤である。(B)成分としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、半極性界面活性剤などが挙げられる。
(B)成分は、1種の界面活性剤を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明における(B)成分は、(A)成分の機能を阻害しない観点から、(B1)成分を含有する。
(B1)成分は、半極性界面活性剤である。本発明において、「半極性界面活性剤」とは、半極性結合(無極性結合及び極性結合の中間の性質を有する結合)を有する界面活性剤のことであり、半極性界面活性剤が溶解する溶液又は分散する分散系のpHにより、陽イオン性、陰イオン性、又は両極性となるものをいう。
(B1)成分は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
半極性界面活性剤のなかで好適なものとしては、アミンアルキレンオキサイド型界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤などが挙げられる。なかでも、油汚れに対する洗浄力が良好であることから、アミンオキシド型界面活性剤が好ましい。
アミンオキシド型界面活性剤としては、アルキルアミンオキシド、アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド等が挙げられ、なかでも下記一般式(b1)で表される化合物(以下、化合物(b1)という。)が好適なものとして挙げられる。
【0021】
【化2】
【0022】
[式中、Rは、炭素数7~22の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数7~22の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基である。Xは、-CONH-、-NHCO-、-COO-又は-OCO-である。Rは、炭素数1~5のアルキレン基である。R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は炭素数1~3のヒドロキシアルキル基である。pは、0又は1である。]
【0023】
前記式(b1)中、Rは、炭素数7~22の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数9~14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。
前記式(b1)中、Xは、-CONH-又は-NHCO-が好ましく、式(b1)におけるX-Rが-CONH-Rとなるものがより好ましい。
前記式(b1)中、Rは、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、炭素数3のプロピレン基がより好ましい。
【0024】
前記式(b1)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。中でも、R及びRは、いずれもメチル基であることがより好ましい。
前記式(b1)中、pは、1が好ましい。
化合物(b1)の中でも、下記の一般式(b1-1)で表される化合物、又は一般式(b1-2)で表される化合物が好ましい。
【0025】
【化3】
【0026】
[式中、Rは、炭素数8~18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数8~18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基である。R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は炭素数1~3のヒドロキシアルキル基である。]
【0027】
前記式(b1-1)中、Rは、炭素数8~18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数10~14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。
前記式(b1-1)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。中でも、R及びRは、いずれもメチル基であることがより好ましい。
【0028】
前記式(b1-1)で表される化合物としては、例えば、カプリルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、パルミチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、オレイルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、ラウリルジエチルアミンオキシド等が挙げられる。
【0029】
【化4】
【0030】
[式中、Rは、炭素数7~22の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数7~22の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基である。R及びR10は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は炭素数1~3のヒドロキシアルキル基である。qは、1~5の整数である。]基が好ましく、炭素数9~13の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。
【0031】
前記式(b1-2)中、R及びR10は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。中でも、R及びR10は、いずれもメチル基であることがより好ましい。
前記式(b1-2)中、qは、1~3の整数が好ましく、3がより好ましい。
【0032】
前記式(b1-2)で表される化合物としては、例えば、カプリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、ミリスチン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、パルミチン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、ステアリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、ベヘニン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、オレイン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、ヤシ脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
【0033】
(B1)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して1~5質量%である。(B1)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して1~4質量%であることが好ましく、1~3質量%であることがより好ましい。
(B1)成分の含有量が1質量%以上であることにより、液体洗浄剤組成物の液の安定性が向上する。(B1)成分の含有量が5質量%以下であることにより、スプレー容器における吐出部のつまりが生じにくい。
【0034】
(B)成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、(B1)成分以外の界面活性剤を含んでいてもよい。(B1)成分以外の界面活性剤としては、ノニオン活性剤及びアニオン活性剤の一方又は両方が好ましい。
(B1)成分以外の界面活性剤の含有量(2種以上の場合は、合計の含有量)は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
(B1)成分の含有量は、(B)成分全体の含有量に対して50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
(B)成分全体の含有量に対する(B1)成分の含有量の割合が高いほど、(A)成分が効果を発揮しやすい。
【0036】
(B)成分全体の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して1~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。(B)成分全体の含有量が好ましい範囲の下限値以上であることにより、液体洗浄剤組成物の液安定性が向上する。(B)成分全体の含有量が好ましい範囲の上限値以下であることにより、スプレー容器における吐出部のつまりが生じにくい。
【0037】
<(C)成分>
(C)成分は、プロピレングリコール、ブチルカルビトール、グリセリン、及びソルビトールから選択される溶剤である。(C)成分を含有することにより、(B1)成分を使用してもスプレー容器における吐出部のつまりが生じにくい。
(C)成分は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
(C)成分が、吐出部のつまり防止効果を発揮するのは、沸点が水の100℃よりも高いためであると考えられる。各々の沸点は、プロピレングリコールが188℃、ブチルカルビトールが230℃、グリセリンが290℃、ソルビトールが105℃である。
(C)成分は、沸点が充分高いだけでなく、入手が容易であるという点でも好ましい。
【0039】
(C)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して1~15質量%である。(C)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して2~10質量%であることが好ましく、2~5質量%であることがより好ましい。
(C)成分の含有量が1質量%以上であることにより、スプレー容器における吐出部のつまりが生じにくく、また、液体洗浄剤組成物の液安定性が向上する。(C)成分の含有量が15質量%以下であることにより、臭気の問題が生じにくい。
【0040】
<比率等>
本発明の洗浄剤組成物は、(C)成分の質量に対する(B1)成分の質量の比[(B1)/(C)]は、0.1~10が好ましく、0.5~5がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
[(B1)/(C)]が上記下限値以上であることにより、充分な洗浄効果が発揮される。[(B1)/(C)]が上記上限値以下であることにより、スプレー容器における吐出部のつまりが生じにくくなる。
【0041】
本発明の洗浄剤組成物は、(C)成分の質量に対する(B)成分の質量の比[(B)/(C)]は、0.1~10が好ましく、0.5~5がより好ましい。
[(B)/(C)]が上記下限値以上であることにより、充分な洗浄効果が発揮される。[(B)/(C)]が上記上限値以下であることにより、スプレー容器における吐出部のつまりが生じにくくなる。
【0042】
(B)成分の質量に対する(A)成分の質量の比[(A)/(B)]は、0.001~0.1が好ましく、0.005~0.05がより好ましい。上記範囲内とすることで液安定性が確保される。
【0043】
<その他の抗菌剤>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(A)成分以外の抗菌剤を含有してもよい。(A)成分以外の抗菌剤としては、カチオン性抗菌剤、ヨウ素系抗菌剤、両性界面活性剤系抗菌剤が挙げられる。
(A)成分以外の抗菌剤を含有する場合、その含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して0.001~1質量%であることが好ましく、0.01~0.1質量%であることがより好ましい。
【0044】
<pH調整剤>
本発明の液体洗浄剤組成物は、pH調整剤を含有してもよい。
pH調整剤としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニアなどが挙げられる。
pH調整剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0045】
<その他>
本発明の液体洗浄剤組成物は、上述した以外にも、任意成分として、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等の無機ビルダー、香料、色素、ラジカルトラップ剤、酵素、防腐剤等を配合することができる。
【0046】
<物性>
液体洗浄剤組成物のB型粘度計で測定した25℃における粘度は30mPa・s以下が好ましく、20mPa・sがより好ましい。この粘度にすることでスプレーとしての使用性が向上する。
液体洗浄剤組成物のpHは、25℃でのpHが7~11であることが好ましく、より好ましくは8~11ある。このpHとすることで、スプレー容器における吐出部のつまりが生じることを、より確実に抑制できる。
【0047】
<製造方法>
本発明の洗浄剤組成物は、従来公知の洗浄剤組成物の製造方法に準じて製造することができる。例えば、水の一部に、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、必要に応じて任意成分とを加えて溶解させ、必要に応じてpH調整剤でpHを調整し、残りの水を加えることにより調製される。
【0048】
<スプレー容器>
本発明の液体洗浄剤製品を構成するスプレー容器は、収容した液を吐出することが可能な容器である。スプレー容器は、液体洗浄剤組成物を収容する容器本体と、容器本体の開口を閉止するとともに、容器本体内に収容された液体洗浄剤組成物を噴射するためのアクチュエータで構成される。アクチュエータには、液体洗浄剤組成物が噴出する開口である吐出部が形成されている。
【0049】
容器本体の材質は特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂を使用することができる。
アクチュエータの種類に限定はないが、トリガーレバーの操作により液体洗浄剤組成物を噴射するトリガータイプ、プッシュボタンの押し下げ操作により液体洗浄剤組成物を噴射するフィンガーポンプタイプ等を使用することができる。
【0050】
トリガータイプのアクチュエータの場合、容器本体に収容された液体洗浄剤組成物を取り出すためのバルブ機構と、バルブ機構を作動するためのステム機構と、ステム機構と連動し、バルブ機構によって取り出された液体洗浄剤組成物を噴射するための噴射部材とを備える。噴射部材には、液体洗浄剤組成物が噴出する開口である吐出部が形成されている。また、噴射部材は、使用者に操作されるトリガー部を備える。
【0051】
図1に、トリガー式スプレー容器の一例を示す。
図1のトリガー式スプレー容器1は、噴出される洗浄剤を収納する収容器2と、図示略の噴出機構を備え、収容器2の口部15に取り付けられるポンプ体3と、収容器内の洗浄剤を噴出機構に供給するチューブ4とを有している。
【0052】
ポンプ体3は、キャップ5、レバー8、噴出口9、ストッパー10、嵌合部材12、パッキン13、ボール21、および図示略の噴出機構を備えている。噴出口9には、必要に応じて泡形成機構を設けてもよい。
嵌合部材12は、筒形とされていて、その上部12aをポンプ体3の底部に形成された筒部3aに嵌合して、ポンプ体の底部側に接続されている。
【0053】
嵌合部材12の内上部には、水平の隔壁12bが形成され、この隔壁12bの中心から外れた偏心位置を上下に貫通して筒状の小径のチューブ固定部11が形成され、このチューブ固定部11の下部側にチューブ4の上端が嵌め込まれている。チューブ固定部11の内部周壁にはその内周まわりに複数のリブを形成して内径を絞った圧入部22が形設され、チューブ4はこの圧入部22に挿入されて脱着自在に取り付けられている。チューブ固定部11の下部開口には内向きの傾斜面からなるチューブガイド23が形成されている。
【0054】
嵌合部材12の外周底部側には鍔型のフランジ部12dが形成されている。チューブ固定部11の上端は、ボール21の受け部12cとされている。先の嵌合部材12の下部側には、キャップ5が設けられ、このキャップ5の天井部5aに形成された孔部5bに嵌合部材12を挿通してフランジ部12dがキャップ5の天井部5aを支持することで、キャップ5が嵌合部材12の周まわりに回転自在に支持されている。キャップ5の内周面には、収容器2の口部15にねじ込み固定するための螺旋溝24が形成されている。
【0055】
フランジ部12dの下面側にはパッキン13が設けられ、このパッキン13は、収容器2とポンプ体3とを連結した状態で、収容器内の洗浄剤が収容器2とポンプ体3との連結部から漏れることを防止するものである。嵌合部材12の隔壁12bには、収容器内の空気圧を一定に保つための空気孔20が形成されている。
【0056】
<洗浄剤製品>
本発明の液体洗浄剤製品は、本発明の液体洗浄剤組成物をスプレー容器に収容したものである。スプレー容器としては、例えば、前記トリガー式スプレー容器1を使用することができる。
【実施例0057】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
本実施例において使用した原料は、下記の<使用原料>に示す通りである。
【0058】
<使用原料>
[(A)成分]
・A-1:ダイクロサン、4,4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル、商品名「Tinosan HP100」、BASF社製。
・A-2:トリクロサン、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール、商品名「トリクロサン」、和光純薬工業社製。
【0059】
[(AX)成分]
・AX-1:ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、商品名「アーカード12-37W」、ライオン・スペシャリティケミカルズ株式会社製。
・AX-2:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、商品名「アーカード210-80E」、ライオンアクゾ株式会社製。
【0060】
[(B1)成分]
・B1―1:n-ドデシルジメチルアミンオキシド、商品名「カデナックスDM12D-W」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製。
・B1―2:ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド(APAX)、商品名「GENAMINOX AP」、クラリアント社製。
【0061】
[(BX)成分]
・BX―1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(下式(b’-1)において、Rが炭素数12のアルキル基(C12)及び炭素数14のアルキル基(C14)(質量比でC12:C14=75:25)、R10が水素原子、EOがエチレンオキシ基、POがプロピレンオキシ基、sが6、tが0、uが0である化合物)、商品名「LMAF-90」、ライオン社製。
-O-[(EO)/(PO)]-(EO)-R10 ・・・(b’-1)
【0062】
[(C)成分]
・C―1:プロピレングリコール、旭硝子株式会社製。
・C―2:ブチルカルビトール、日本乳化剤株式会社製。
・C―3:グリセリン、商品名「化粧品用グリセリン」、阪本薬品工業社製。
・C―4:ソルビトール、商品名「ソルビットL-70」、三菱商事フードテック社製。
【0063】
[(CX)成分]
・CX―1:エタノール(BP:78℃)、商品名「特定アルコール95度合成」、日本アルコール販売株式会社製。
【0064】
[その他]
・pH調整剤:苛性ソーダ、小西安株式会社製。
・水:蒸留水。
【0065】
<実施例1~13、比較例1~5>
表1~3の配合(単位:質量%)に従い、各例の液体洗浄剤組成物1000gを調整した。なお、各例の組成における空欄部分は、当該成分を配合していないことを示す。各例の液体洗浄剤組成物1000gは、下記の手順で調製した。
【0066】
1Lビーカーに水の一部と(A)成分、(B)成分、(C)成分を入れ、マグネチックスターラー(Fine社製、「F-606N」)で充分に攪拌した。攪拌後、25℃のpHが表1~3の値となるように必要に応じてpH調整剤を適量添加した後、全体量が100質量%になるように水を入れ、さらによく攪拌し、液体洗浄剤組成物を得た。
【0067】
液体洗浄剤組成物のpH(25℃)は、液体洗浄剤組成物を25℃に調温し、ガラス電極式pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM-30G」)を用い、ガラス電極を液体洗浄剤組成物に直接浸漬し、1分間経過後に示すpHを測定した。測定方法はJIS Z 8802:1984「pH測定方法」に準拠して行った。
各例で得られた液体洗浄剤組成物の抗菌性・防臭力と詰まり抑制効果を以下の評価方法により評価した。結果を表1~3に示す。
【0068】
<抗菌性・防臭力>
[評価布の前処理]
成人男性が8時間着用した靴下(ユニクロ製スーピマコットンカノコソックス)に各例の液体洗浄剤組成物を片足5g塗布し、5分静置後、全自動電気洗濯機(Haier社製、製品名「JW-K33F(W)」)に、約750gの綿肌シャツ(B.V.D.社製)とともに投入した[浴比(洗濯水量/被洗布総質量)30倍]。
【0069】
次に、前記全自動電気洗濯機に、市販の洗剤(ライオン株式会社製「トップ スーパーNANOX」)を標準使用量(10g/水30L)加え、標準コースで洗浄、すすぎ、脱水を順次行う洗浄操作を行った。その際、洗浄時間、すすぎ、脱水、水量(低水位に設定、水量約15L)に関しては一切調整せず、洗濯機の標準コース設定をそのまま使用した。
洗濯終了後、靴下を取り出し、室温に放置して乾燥させた。
【0070】
[評価]
各例の液体洗浄剤組成物で処理した上記靴下の臭気を、専門パネル5名が、以下の6段階臭気強度を用いて判定し、5名の専門パネルによる判定点の平均から、以下の評価基準で評価した。
【0071】
(6段階臭気強度)
5点:強烈なニオイ。
4点:強いニオイ。
3点:楽に感知できるニオイ。
2点:何のニオイであるかわかる弱いニオイ。
1点:やっと感知できるニオイ。
0点:無臭。
【0072】
(評価基準)
◎:6段階臭気強度の平均が2点以下。
〇:6段階臭気強度の平均が2点以上3.5点未満。
×:6段階臭気強度の平均が3.5点以上。
【0073】
<詰まり抑制効果>
スプレー容器(ライオン株式会社製「NANOXスプレー」)に各例の液体洗浄剤組成物を充填し、トリガーを1回引いてスプレー吐出した後、風乾することを繰り返し、以下の基準により評価した。
【0074】
(評価基準)
◎:50回繰り返しても吐出不良が起きない。
〇:30~50回繰り返しで吐出不良が起きる。
×:30回繰り返し以下で吐出不良が起きる。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
表1、2に示すように、実施例の液体洗浄剤組成物は、抗菌性・防臭力と詰まり抑制効果の双方において優れていた。これに対して、比較例の液体洗浄剤組成物は、抗菌性・防臭力と詰まり抑制効果の何れかで劣っていた。
【符号の説明】
【0079】
1・・・トリガー式スプレー容器、2・・・収容器、3・・・ポンプ体、3a・・・筒部、4・・・チューブ、5・・・キャップ、5a・・・天井部、5b・・・孔部、8・・・レバー、9・・・噴出口、10・・・ストッパー、11・・・チューブ固定部、12・・・嵌合部材、12a・・・上部、12b・・・隔壁、12c・・・受け部、12d・・・フランジ部、13・・・パッキン、15・・・口部、20・・・空気孔、21・・・ボール、22・・・圧入部、23・・・チューブガイド、24・・・螺旋溝
図1