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特開2023-180430硬貨処理装置、貨幣取扱装置及びカバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180430
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】硬貨処理装置、貨幣取扱装置及びカバー
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/14 20190101AFI20231214BHJP
   G07G 1/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G07D11/14
G07G1/00 331A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093744
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】松本 淳
【テーマコード(参考)】
3E141
3E142
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141BA12
3E141DA05
3E141FF03
3E141GA05
3E141GB03
3E141HA06
3E141LA77
3E142AA01
3E142AA03
3E142FA35
3E142GA24
3E142KA01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により、硬貨出金トレイのシャッタが不用意に開放されることを規制し得るようにする。
【解決手段】レジ精算機1の硬貨処理装置6は、精算処理が行われる場合、硬貨出金トレイ12のシャッタ25が閉鎖状態とされ、外底面23のカバー取付部40にカバー30が取り付けられる。これにより硬貨処理装置6は、硬貨収納庫16から出金された硬貨を硬貨出金トレイ12の貯留空間20S内に貯留できると共に、シャッタ25が開放状態に切り替えられてしまうことを、簡素に構成されたカバー30により高い確度で阻止できる。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨が収納される硬貨収納庫と、
前記硬貨収納庫から排出される前記硬貨を、外部から取り出し可能な状態で貯留する貯留空間を形成する出金トレイ部と
を有し、
前記出金トレイ部は、
前記硬貨が通過可能な通過孔が形成された底部と、
前記通過孔を開放状態又は閉鎖状態へ切替可能に設けられるシャッタと、
前記底部における前記貯留空間の反対側である外底面に設けられ、該シャッタを覆う被覆状態にさせるカバーが取り付けられるカバー取付部と
を具えることを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記シャッタは、
前記出金トレイ部の前記底部に設けられた軸を中心に回動可能であり、
前記閉鎖状態であるときには前記貯留空間の底面を形成し、
前記閉鎖状態であるときに前記外底面側から前記貯留空間側に向けて外力が加えられると前記開放状態に切り替えられ、
前記カバーにより前記被覆状態であるとき、前記閉鎖状態から前記開放状態への切替が規制される
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記カバー及び前記カバー取付部は、少なくとも一方が他方に当接されると付着する性質又は構造を有し、
前記カバーは、前記被覆状態において前記カバー取付部から離れる方向に外力が加えられると、当該被覆状態から前記シャッタを前記外底面側に露出させた露出状態とし、当該シャッタの前記閉鎖状態から前記開放状態への切替を許容する
ことを特徴とする請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記カバーは、磁性材料により形成され、
前記カバー取付部は、磁力により前記カバーを吸着して前記シャッタを前記被覆状態とする
ことを特徴とする請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記カバーは、前記通過孔を中心として前記外底面内で所定角度だけ回転させた場合にも前記カバー取付部に取付可能な形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記カバーを前記カバー取付部における適切な位置に取り付けさせる取付案内部
をさらに具えることを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記シャッタは、前記閉鎖状態であるときに、当該シャッタにおける前記貯留空間と反対側の面のうち少なくとも一部が、前記外底面よりも前記貯留空間側に位置し、
前記取付案内部は、前記カバー取付部に付着される付着面から突出し、前記被覆状態において前記通過孔内に入り込む
ことを特徴とする請求項6に記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記カバー及び前記底部を接続すると共に、当該底部に対する当該カバーの角度を変化させることにより、前記シャッタを前記外底面側に露出させた露出状態と前記被覆状態との間で当該カバーを遷移させる接続部材
をさらに具えることを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項9】
硬貨に関する処理を指示する指示部と、
前記硬貨が収納される硬貨収納庫と、
前記硬貨収納庫から排出される前記硬貨を、外部から取り出し可能な状態で貯留する貯留空間を形成する出金トレイ部と
を有し、
前記出金トレイ部は、
前記硬貨が通過可能な通過孔が形成された底部と、
前記通過孔を開放状態又は閉鎖状態へ切替可能に設けられるシャッタと、
前記底部における前記貯留空間の反対側である外底面に設けられ、該シャッタを覆う被覆状態にさせるカバーが取り付けられるカバー取付部と
を具えることを特徴とする貨幣取扱装置。
【請求項10】
カバー本体部と、
前記カバー本体部の一面であり、所定のカバー取付部との間で付着力を作用させる付着面と、
前記カバー本体部の前記付着面に設けられ、該付着面から突出した突出部と
を具え、
前記突出部は、前記付着面が前記カバー取付部に付着された場合に、当該カバー取付部に形成されている孔の内側に入る形状に形成されている
ことを特徴とするカバー。
【請求項11】
前記カバー本体部は、可撓性を有する材料により構成される
ことを特徴とする請求項10に記載のカバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨処理装置、貨幣取扱装置及びカバーに関し、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア等のような小売店の精算所において精算処理等に使用されるレジ精算機に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レジ精算機においては、POS(Point Of Sales)システム等に接続されると共に、紙幣や硬貨の入出金処理を行うものが普及しつつある。このレジ精算機において硬貨を処理する硬貨処理装置としては、例えば硬貨が投入される硬貨入金口、硬貨の種類等を鑑別する鑑別部、硬貨を金種別に収納する収納庫、及び該収納庫から出金された硬貨を貯留して取り出させる硬貨出金トレイ等を有したものがある。
【0003】
このうち硬貨出金トレイは、主に釣銭として出金された硬貨を一時的に貯留する部分であるため、多くとも50枚程度の硬貨を貯留し得るように構成されている。その一方で硬貨処理装置では、例えば収納庫に収納されている多数(例えば数十枚ないし数百枚)の硬貨を回収する回収処理を行う場合があるものの、この多数の硬貨を硬貨出金トレイに貯留させることができない。
【0004】
そこで硬貨処理装置のなかには、硬貨出金トレイの底部に硬貨の直径よりも大きい通過孔を設けると共に、この通過孔を開閉可能なシャッタを設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この硬貨処理装置は、精算処理を行う場合、硬貨出金トレイのシャッタを閉鎖しておくことにより、出金された硬貨を硬貨出金トレイに貯留でき、この硬貨を取り出させることができる。またこの硬貨処理装置は、硬貨の回収処理等を行う場合、硬貨出金トレイのシャッタを開放させると共に該硬貨出金トレイの下側に所定の硬貨回収袋を取り付けさせることにより、出金された多数の硬貨を通過孔から落下させ、連続して硬貨回収袋に収納させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-118672号公報(図1B等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年では、小売店のレジ係員では無く、顧客が自らレジ精算機の操作を行う、セルフレジと呼ばれる運用形態が普及しつつある。このセルフレジを運用している小売店では、レジ精算機の近傍に顧客が到来して種々の操作が行われる。
【0007】
また小売店では、親に連れられた子供が来店する場合がある。一般に子供は、大人よりも目線が低いため、硬貨出金トレイを下側から見上げた際にシャッタの存在に気付きやすく、興味本位で触れた場合に当該シャッタを開放し、そのまま立ち去ってしまう可能性がある。そうするとレジ精算機では、例えば次の顧客が精算処理を行う際に、硬貨出金トレイのシャッタが開放されていることに気付かずに精算処理を進めてしまい、出金された釣銭を該硬貨出金トレイの通過孔から落下させる恐れがある、という問題があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、簡易な構成により、硬貨出金トレイのシャッタが不用意に開放されることを規制し得る硬貨処理装置、貨幣取扱装置及びカバーを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨処理装置においては、硬貨が収納される硬貨収納庫と、硬貨収納庫から排出される硬貨を、外部から取り出し可能な状態で貯留する貯留空間を形成する出金トレイ部とを設け、出金トレイ部には、硬貨が通過可能な通過孔が形成された底部と、通過孔を開放状態又は閉鎖状態へ切替可能に設けられるシャッタと、底部における貯留空間の反対側である外底面に設けられ、該シャッタを覆う被覆状態にさせるカバーが取り付けられるカバー取付部とを設けるようにした。
【0010】
また本発明の貨幣取扱装置においては、硬貨に関する処理を指示する指示部と、硬貨が収納される硬貨収納庫と、硬貨収納庫から排出される硬貨を、外部から取り出し可能な状態で貯留する貯留空間を形成する出金トレイ部とを設け、出金トレイ部は、硬貨が通過可能な通過孔が形成された底部と、通過孔を開放状態又は閉鎖状態へ切替可能に設けられるシャッタと、底部における貯留空間の反対側である外底面に設けられ、該シャッタを覆う被覆状態にさせるカバーが取り付けられるカバー取付部とを設けるようにした。
【0011】
さらに本発明のカバーにおいては、カバー本体部と、カバー本体部の一面であり、所定のカバー取付部との間で付着力を作用させる付着面と、カバー本体部の付着面に設けられ、該付着面から突出した突出部とを設け、突出部は、付着面がカバー取付部に付着された場合に、当該カバー取付部に形成されている孔の内側に入る形状に形成されているようにした。
【0012】
本発明は、カバー取付部にカバーを取り付けて被覆状態とすることにより、通過孔の存在をわかりにくくし、底部側からのシャッタに対する不用意な切替操作を未然に防止でき、該シャッタを閉鎖状態に維持して硬貨を貯留空間内に良好に貯留させることができる。その一方で本発明は、カバー取付部からカバーが取り外されると、底部側の通過孔を露出させることができ、該通過孔を介してシャッタを開放状態に切り替えさせることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成により、硬貨出金トレイのシャッタが不用意に開放されることを規制し得る硬貨処理装置、貨幣取扱装置及びカバーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】レジ精算機の全体構成を示す略線的斜視図である。
図2】硬貨処理装置の構成を示す略線的斜視図である。
図3】硬貨処理装置の構成を示す略線的斜視図である。
図4】硬貨処理装置の構成を示す略線的断面図である。
図5】第1の実施の形態によるカバーの構成を示す略線的斜視図である。
図6】第1の実施の形態によるカバーの構成を示す略線図である。
図7】第1の実施の形態による硬貨処理装置に対するカバーの取付を示す略線的斜視図である。
図8】第2の実施の形態によるカバー及び接続部材の構成を示す略線図である。
図9】第2の実施の形態による硬貨処理装置に対するカバーの取付及び引き剥がしを示す略線的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0016】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.レジ精算機の構成]
図1に模式的な外観を示すように、第1の実施の形態によるレジ精算機1は、セルフレジと呼ばれる形態で運用されており、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアのような小売店舗の精算所(いわゆるレジ)に設置されている。この小売店舗では、顧客が購入を希望する商品を買い物かご等に入れた状態で精算所に到来し、該顧客がレジ精算機1を操作することにより各商品を登録し、さらに合計金額を支払うことにより、精算の手続を行うようになっている。
【0017】
貨幣取扱装置としてのレジ精算機1は、図示しない台座の上に取り付けられ、顧客により操作しやすい高さに設置されている。以下では、顧客が対峙する側面及びその反対面をそれぞれ前面及び後面とし、さらに該顧客から見て左右及び上下を定義して説明する。
【0018】
レジ精算機1は、大きく分けて、上側に配置されると共に所定のPOS(Point of Sales)システムと接続されたPOSレジ装置2と、下側に配置され現金(すなわち紙幣及び硬貨)に関する処理を行う現金処理装置3とにより構成されている。さらに現金処理装置3は、大きく分けて、左側に設けられ紙幣の入出金に関する処理を行う紙幣処理装置5と、その右側に設けられた硬貨の入出金に関する処理を行う硬貨処理装置6とにより構成されている。
【0019】
指示部としてのPOSレジ装置2は、例えば種々の演算処理等を行う制御部、タッチパネル等により構成され種々の情報を表示すると共に操作を受け付ける表示操作部、商品のバーコードを読み取る読取部、レシートを発行するレシート処理部(何れも図示せず)等を有している。
【0020】
POSレジ装置2は、顧客の操作に基づき、読取部により各商品のバーコードを読み取って商品を順次登録する。やがてPOSレジ装置2は、全ての商品が登録されると、各商品の金額を合計した請求額を算出し、この請求額を表示操作部に表示して顧客に代金の支払いを促すと共に、現金処理装置3に対して入金処理を指示する。またPOSレジ装置2は、現金処理装置3から入金された現金の合計金額である入金額を受け取ると、この入金額と合計金額との差額である釣銭額を算出し、現金処理装置3に対してこの釣銭額を出金するような出金処理を指示する。
【0021】
紙幣処理装置5は、紙幣に関する処理を行う部分であり、紙幣が入金される紙幣入金口、紙幣を鑑別する紙幣鑑別部、紙幣を搬送する紙幣搬送部、紙幣を金種別に収納する紙幣収納庫、及び紙幣を出金する紙幣出金口等を有している。
【0022】
具体的に紙幣処理装置5は、POSレジ装置2から入金処理が指示されると、紙幣入金口に入金された紙幣があれば、これを1枚ずつに分離しながら取り込み、紙幣搬送部により搬送すると共に紙幣鑑別部により金種や正損等を鑑別する。続いて紙幣処理装置5は、取扱不可能な金種や損傷の程度が大きい等の理由で受入不可能な紙幣であるリジェクト紙幣があれば、これを紙幣出金口から返却する。また紙幣処理装置5は、受入可能な紙幣があれば、金種毎に分別して紙幣収納庫に収納すると共に、その金種及び枚数を計数していく。やがて紙幣処理装置5は、入金された全ての紙幣を取り込み終えると、受け入れた紙幣の金種及び枚数から合計金額を算出し、これをPOSレジ装置2へ通知して入金処理を終了する。
【0023】
また紙幣処理装置5は、POSレジ装置2から出金処理が指示されると、釣銭額に応じて出金すべき紙幣の金種及び枚数を決定し、決定された金種及び枚数の紙幣を紙幣収納庫から繰り出して順次搬送した後、紙幣出金口に集積して顧客に取り出させる。
【0024】
硬貨処理装置6は、図2に一部を拡大して示すように、その前側部分に、硬貨が入金される硬貨入金口11、出金する硬貨を貯留する硬貨出金トレイ12、及び入金できないリジェクト硬貨を返却するリジェクトトレイ13等を有している。また硬貨処理装置6の内部には、硬貨を搬送する硬貨搬送部14、硬貨を鑑別する硬貨鑑別部15、及び硬貨を金種別に収納する硬貨収納庫16等が設けられている。なお図2は、硬貨処理装置6の前側部分を前斜め右上方向から見下ろした様子を表す略線的な斜視図である。
【0025】
具体的に硬貨処理装置6は、POSレジ装置2から入金処理が指示されると、硬貨入金口11に投入された硬貨があれば、これを1枚ずつに分離しながら取り込み、硬貨搬送部14により搬送すると共に、硬貨鑑別部15により金種や正損等を鑑別する。
【0026】
続いて硬貨処理装置6は、取扱不可能な金種や損傷の程度が大きい等の理由で受入不可能な硬貨であるリジェクト硬貨があれば、これをリジェクトトレイ13から排出して返却する。また硬貨処理装置6は、受入可能な硬貨(以下これを受入可能硬貨と呼ぶ)があれば、金種毎に分別して硬貨収納庫16に収納すると共に、その金種及び枚数を計数していく。やがて硬貨処理装置6は、投入された全ての硬貨を取り込み終えると、受け入れた硬貨の金種及び枚数から合計金額を算出し、これをPOSレジ装置2へ通知して入金処理を終了する。
【0027】
また硬貨処理装置6は、POSレジ装置2から出金処理が指示されると、釣銭額に応じて出金すべき硬貨の金種及び枚数を決定し、決定された金種及び枚数の硬貨を硬貨収納庫16から繰り出して順次搬送した後、硬貨出金トレイ12へ搬送して貯留させ、顧客に取り出させる。
【0028】
[1-2.硬貨出金トレイの構成]
次に、硬貨出金トレイ12の詳細な構成について、図2図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、硬貨処理装置6の前側部分を図2とは異なる方向から見た様子を、詳細には前斜め右下方向見上げた様子を表す略線的な斜視図である。また図4は、左右方向を法線とする仮想的な切断面を左方向から見た様子を表す略線的な断面図である。
【0029】
出金トレイ部としての硬貨出金トレイ12は、トレイ本体部20を中心に構成されている。このトレイ本体部20は、全体的な形状が椀やボウル等に類似しており、上側から見て前後方向に対し左右方向にやや長い楕円形状であり、且つ下方向に窪んだ形状となっている。またトレイ本体部20は、内側の表面である内側面21、前側の表面である前側面22、及び下側の側面であり外側の底面でもある外底面23等を有すると共に、内側面21の内側に硬貨を貯留する貯留空間20Sを形成している。
【0030】
トレイ本体部20は、所定形状に形成された樹脂材料や金属部品等の組み合わせにより構成されている。例えば内側面21は、十分な強度や耐久性を有する樹脂材料による成形部品を中心に構成されている。前側面22は、硬貨処理装置6の前面部分を覆うように取り付けられた化粧板8の一部となっており、内側面21を構成する部品とは異なる樹脂材料による成形部品となっている。
【0031】
外底面23は、板状の下側板9を中心に構成されている。この下側板9は、内側面21及び前側面22を構成する樹脂材料とは異なり、磁性材料(磁性体とも呼ばれる)である鋼板となっている。また下側板9の前端近傍は、その前側及び下側が化粧板8の一部により覆われている。このため外底面23は、下側板9が露出している部分と比較して、化粧板8の一部により覆われている部分の方が、僅かに(例えば0.5[mm]程度)下側へ突出している。
【0032】
トレイ本体部20の底部中央付近には、トレイ本体部20を上下方向に貫通する通過孔24が形成されている。この通過孔24は、開口部とも呼ばれており、内側面21に穿設された内側面孔21Hと外底面23に穿設された外底面孔23Hとを繋いでいる。
【0033】
内側面孔21Hは、図2にその一部を示すように、真上から見た場合に、長方形の各頂点近傍を丸めたような形状となっている。一方、外底面孔23Hは、図3に示すように、ほぼ長方形に形成されている。また通過孔24の大きさ、すなわち内側面孔21H及び外底面孔23Hにおける左右方向及び前後方向の長さは、受入可能硬貨の直径よりも十分に大きくなっている。このため通過孔24は、受入可能硬貨を通過させることができる。
【0034】
これに加えて硬貨出金トレイ12には、トレイ本体部20の底部中央付近にシャッタ25が設けられている。シャッタ25は、全体として上下方向に薄い板状に構成されている。またシャッタ25は、前後方向及び左右方向に関する外形が内側面孔21Hよりも一回り小さく形成され、且つ下側に向けて凸となるように湾曲している。さらにシャッタ25の前側部分には、シャッタ回動軸26が設けられている。このシャッタ回動軸26は、概ね左右方向に沿った円柱状に形成されており、トレイ本体部20における内側面21の下側に設けられた軸受部27により、回動可能に支持されている。
【0035】
かかる構成により硬貨出金トレイ12では、トレイ本体部20に対しシャッタ25を回動させることにより、図4(A)に示したように通過孔24を閉鎖した閉鎖状態と、図4(B)に示したように通過孔24を開放した開放状態とに切り替えることができる。
【0036】
硬貨出金トレイ12は、閉鎖状態(図4(A))において、内側面21とシャッタ25の上面とが連続した湾曲面を形成し、貯留空間20S内に硬貨を貯留させることができる。またシャッタ25は、閉鎖状態において後端部分をトレイ本体部20に当接させており、該後端部分を上昇させる方向に回動し得る一方、下降させる方向には回動し得ないようになっている。このときシャッタ25は、通過孔24内における上寄りに位置しているため、その下側に十分な空間を形成している。
【0037】
このため硬貨出金トレイ12は、シャッタ25の上側から下方向へ向かう力が加えられた場合、例えば貯留空間20S内に貯留された硬貨の荷重が加えられた場合や、顧客の指先等によりシャッタ25の上面に対し下方向へ向かう力が加えられた場合であっても、この閉鎖状態を維持する。
【0038】
硬貨出金トレイ12は、この閉鎖状態においてシャッタ25の下面に対し上方向へ向かう力が加えられた場合、すなわち外底面23の下側から通過孔24を介して指先等により該シャッタ25が押し上げられた場合に、後端部分を上前側へ変位させるように回動し、開放状態(図4(B))に切り替わる。
【0039】
このとき硬貨出金トレイ12は、貯留空間20Sと外底面23の下側の空間とを通過孔24により連通させている。このため硬貨出金トレイ12は、仮に硬貨収納庫16(図2)から出金された硬貨が貯留空間20S内へ降下してきた場合、当該硬貨を通過孔24から下方へ落下させる。
【0040】
硬貨処理装置6では、例えば小売店の営業時間内に、顧客の操作に基づき精算処理が行われる。このとき硬貨出金トレイ12は、閉鎖状態とされることにより、硬貨収納庫16から釣銭として出金される硬貨を、貯留空間20S内に確実に貯留し、顧客に受け取らせることができる。
【0041】
一方、硬貨処理装置6では、例えば小売店の営業時間外に、店員等の操作に基づき、硬貨収納庫16に収納されている硬貨を回収する回収処理が行われる場合がある。このとき硬貨処理装置6では、硬貨出金トレイ12のシャッタ25が開放状態に切り替えられると共に該硬貨出金トレイ12の下側に所定の収納袋が取り付けられた状態で、硬貨収納庫16から硬貨を出金させる。これにより硬貨処理装置6では、硬貨収納庫16から連続的に出金される硬貨を収納袋に順次収納させることができる。
【0042】
また硬貨処理装置6では、例えば特許文献1に記載された硬貨精査補助ユニットを使用して精査処理等が行われる場合にも、硬貨出金トレイ12のシャッタ25が開放状態に切り替えられる。
【0043】
[1-3.カバーの構成及び装着]
かかる構成に加えて、硬貨処理装置6の硬貨出金トレイ12には、図5及び図6に示すカバー30が取付可能となっている。なお図5(A)及び(B)は、カバー30をそれぞれ異なる方向から見た様子を表す斜視図である。また図6(A)及び(B)は、それぞれカバー30の平面図及び前側面図である。
【0044】
カバー30は、全体として上下方向に薄い板状に形成されており、大きく分けて、下側のカバー本体部31と、該カバー本体部31の上面から上側に突出する突出部32とにより、比較的簡素に構成されている。カバー本体部31は、例えば1~2[mm]程度の厚さを有するマグネットシートであり、その上面である付着面31Uが十分な磁力を有しており、且つ可撓性を有している。またカバー本体部31の下面31Lは、例えば所定の樹脂材料でなる保護層により覆われており、外底面23の大部分を構成する下側板9(図3等)と類似した色(例えば灰色)となっている。
【0045】
このカバー本体部31は、上方向から見て、全体的に平行四辺形に類似した形状となっており、前辺及び後辺が何れもほぼ左右方向に沿っている一方、左辺及び右辺が左後及び右前を結ぶように傾斜されている。さらにカバー本体部31は、左後側の頂点近傍及び右前側の頂点近傍が切り落とされた上で各頂点が丸められたような形状となっている。
【0046】
取付案内部としての突出部32は、全体として上下方向に薄い板状でなり、上方向から見てカバー本体部31よりも一回り小さい長方形状に形成されている。この突出部32における左右方向及び前後方向の長さは、トレイ本体部20の外底面23に形成された外底面孔23Hにおける左右方向及び前後方向の長さと比較して、それぞれ僅かずつ短くなっている。また突出部32は、カバー本体部31の付着面31Uとはやや異なる色となっている。
【0047】
このためカバー30は、全体として、カバー本体部31の付着面31Uと平行な平面内において、前後方向及び左右方向の中心を通り上下方向に沿った仮想線であるカバー中心軸30Xを中心とした180度の回転対称形状となっている。すなわちカバー30は、このカバー中心軸30Xを中心として半回転された場合にも、この半回転の前後で互いに同等の形状となる。
【0048】
このカバー30は、硬貨出金トレイ12における外底面23の下側に当接されると、下側板9とカバー本体部31の付着面31Uとの間に磁力を作用させる。これによりカバー30は、図7に模式的な斜視図を示すように、カバー本体部31の付着面31Uを外底面23に付着させ、通過孔24やシャッタ25の下面側を下側から覆うようにして、トレイ本体部20に取り付けられる。以下、この状態を被覆状態とも呼ぶ。また、図3に示したように、カバー30が取り付けられておらず通過孔24やシャッタ25が下側に露出している状態を露出状態と呼ぶ。
【0049】
このときカバー30は、突出部32が外底面孔23Hに入り込むことにより、外底面23に対する前後方向及び左右方向の位置並びにカバー中心軸30Xを中心とした回転角度がそれぞれ規制されるため、硬貨出金トレイ12に対する適切な位置に案内された状態、すなわち適切に位置決めされた状態となる。またこのときカバー30は、左前側の斜辺が化粧板8から僅かに右後側に離れており、該化粧板8に乗り上げること無く、付着面31Uが下側板9に当接して磁力を作用させている。その一方でカバー30は、右前側の頂点近傍が化粧板8に乗り上げた状態となる。
【0050】
説明の都合上、以下では、硬貨出金トレイ12の外底面23のうちカバー30が取り付けられる部分をカバー取付部40と呼ぶ。このカバー取付部40の外形を表す境界線は、仮想的な線であり、カバー30におけるカバー本体部31の輪郭と対応する平行四辺形状となる。このカバー取付部40は、その大部分が下側板9となっているものの、右前側の頂点近傍となる一部分にのみ化粧板8の一部が含まれている。
【0051】
[1-4.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態によるレジ精算機1の硬貨処理装置6は、例えば小売店の営業時間内のように、顧客の操作に基づき精算処理が行われる場合、硬貨出金トレイ12のシャッタ25が閉鎖状態とされた上で、外底面23のカバー取付部40にカバー30が取り付けられた被覆状態となる(図7)。
【0052】
これにより硬貨処理装置6は、出金処理において硬貨収納庫16から釣銭として出金された硬貨を硬貨出金トレイ12の貯留空間20S内に貯留させ、これを顧客に取り出させること、すなわち釣銭を確実に顧客に受け取らせることができる。
【0053】
また硬貨処理装置6は、硬貨出金トレイ12の外底面23にカバー30を取り付けた被覆状態であるため、目線が低い子供等が通過孔24の存在やシャッタ25が開閉可能であることに気づく可能性を、各段に低減させることができる。これにより硬貨処理装置6は、精算処理が行われる状況下において、子供等により意図的に若しくは偶発的にシャッタ25が開放状態に切り替えられることを、高い確度で阻止できる。換言すれば、硬貨処理装置6は、外底面23にカバー30を取り付けることにより、顧客等によってシャッタ25に対し外底面23側から貯留空間20S側に向けて外力が加えられることを規制でき、該シャッタ25が開放状態となってしまうことを防止できる。
【0054】
このときカバー30は、カバー取付部40のうち右前側部分以外の大部分において、カバー本体部31の付着面31Uと下側板9との間で磁力を作用させている。このため硬貨処理装置6は、カバー取付部40とカバー30との間で十分に大きい付着力を作用させることができ、該カバー30が不用意に外れることを良好に回避できる。
【0055】
さらにカバー30は、カバー本体部31の下面31Lを、下側板9に近い色とした。このため硬貨処理装置6は、硬貨出金トレイ12の外底面23にカバー30が取り付けられた場合に、該カバー30の存在を気づきにくくさせ、該カバー30が無断で取り外されることを良好に抑えることができる。
【0056】
その一方で硬貨処理装置6は、小売店の営業時間外に硬貨の回収処理が行われる場合等に、硬貨出金トレイ12の外底面23からカバー30を取り外させて露出状態とする(図3)。これにより硬貨処理装置6は、シャッタ25に対して外底面23側から貯留空間20S側に向かって外力を加えることを許容し、通過孔24の下側から指先等によりシャッタ25を押し上げさせることで、開放状態に切り替えさせることができる(図4)。
【0057】
このときカバー30は、ネジ等を使用すること無く、カバー本体部31の付着面31Uと下側板9との間に作用する磁力により付着している。このため硬貨処理装置6では、指先等によりカバー本体部31の一部に対して下方に力を作用させるだけで、該カバー本体部31を下側板9から徐々に引き剥がさせ、容易に取り外させることができる。
【0058】
またカバー30は、右前側の頂点付近が化粧板8に乗り上げた状態、すなわち下側板9からやや浮き上がった状態で、外底面23に貼り付けられている。このため硬貨処理装置6は、このカバー30を右前側の頂点付近から比較的容易に剥がさせることができる。
【0059】
さらにカバー30は、カバー本体部31が可撓性を有する材料により構成されている。このため硬貨処理装置6では、該カバー30を被覆状態から引き剥がさせる際に、比較的小さい力を作用させてカバー本体部31を撓ませながら少しずつ引き剥がさせれば良く、カバー取付部40との間に作用している全ての磁力を上回るような大きい力を一度に加えさせる必要が無い。
【0060】
ところで硬貨処理装置6では、回収処理等が終了した場合、硬貨出金トレイ12のシャッタ25が再び閉鎖状態に切り替えられると共に、外底面23のカバー取付部40にカバー30が取り付けられ、被覆状態となる。
【0061】
このとき硬貨出金トレイ12では、シャッタ25を開放状態としたままで先にカバー30が取り付けられ、その後に該シャッタ25が閉鎖状態に切り替えられる。またカバー30は、カバー本体部31の付着面31Uの色と突出部32の色とが相違している。このため硬貨処理装置6では、硬貨出金トレイ12の外底面23にカバー30が取り付けられる際に、通過孔24を介してカバー30の上面側を目視させながら、突出部32の外形を容易に視認させ、該突出部32の位置を通過孔24に対し容易に合致させることができる。
【0062】
他の観点から見ると、仮にカバー30を有しない硬貨処理装置が製造され、既に設置及び運用されていたとしても、カバー取付部40として利用可能な部分が形成されていれば、別途カバー30を用意することにより、本実施の形態による硬貨処理装置6と同様の構成とすることができる。この場合、既存の硬貨処理装置に対して改修等の作業を行う必要が無く、極めて容易にカバー30を使用することができる。
【0063】
以上の構成によれば、第1の実施の形態によるレジ精算機1の硬貨処理装置6は、精算処理が行われる場合、硬貨出金トレイ12のシャッタ25が閉鎖状態とされ、外底面23のカバー取付部40にカバー30が取り付けられる。これにより硬貨処理装置6は、硬貨収納庫16から出金された硬貨を硬貨出金トレイ12の貯留空間20S内に貯留できると共に、シャッタ25が開放状態に切り替えられてしまうことを、簡素に構成されたカバー30により高い確度で阻止できる。
【0064】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態によるレジ精算機201は、第1の実施の形態によるレジ精算機1と比較して、現金処理装置3に代わる現金処理装置203を有する点において相違する。現金処理装置203は、第1の実施の形態による現金処理装置3と比較して、硬貨処理装置6に代わる硬貨処理装置206を有する点において相違する。
【0065】
硬貨処理装置206は、第1の実施の形態による硬貨処理装置6と比較して、硬貨出金トレイ12に代わる硬貨出金トレイ212を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨出金トレイ212は、着脱式のカバー30に代わるカバー230が外底面23に取り付けられている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0066】
カバー230は、図8に正面図、平面図及び右側面図による三面図を示すように、全体として上下方向に薄い板状に形成されており、第1の実施の形態におけるカバー本体部31に相当するカバー本体部231のみにより、比較的簡素に構成されている。
【0067】
カバー本体部231は、第1の実施の形態によるカバー本体部31と同様、例えば1~2[mm]程度の厚さを有するマグネットシートであり、その上面である付着面231Uが十分な磁力を有しており、且つ可撓性を有している。またカバー本体部231の下面231Lは、例えば所定の樹脂材料でなる保護層により覆われており、第1の実施の形態と同様に、下側板9(図3等)と類似した灰色となっている。
【0068】
ただしカバー本体部231は、第1の実施の形態によるカバー本体部31とは一部異なる形状であり、上方向又は下方向から見て概ね長方形状に形成され、左前側の頂点近傍部分が斜めに切り落とされ、且つ各頂点が丸められたような形状となっている。
【0069】
このカバー230は、図7と対応する図9に模式的な斜視図を示すように、硬貨出金トレイ212の外底面23に対し、接続部材251により取り付けられている。接続部材251は、例えば可撓性を有する樹脂材料により構成され、全体として上下方向に薄い平板状に形成されている。また接続部材251は、下方向から見て、左右方向の長さがカバー本体部231よりも僅かに短い長方形状となっている。この接続部材251の下面は、カバー本体部231の下面231Lと同様、下側板9(図3等)と類似した灰色となっている。
【0070】
接続部材251の上面には、所定の接着剤が塗布されている。接続部材251は、その前側の約半分が、カバー本体部231の下面231Lにおける後側の約半分と重なるように貼り付けられている。また接続部材251は、その後側の約半分が、硬貨出金トレイ212の外底面23における通過孔24のやや後側に貼り付けられている。
【0071】
かかる構成によりカバー230は、図9に破線で示したように、カバー本体部231の上面231Uを磁力により硬貨出金トレイ212の外底面23に貼り付けることにより、第1の実施の形態と同様に、通過孔24やシャッタ25の下面側を覆うことができる。以下、このときカバー230により覆われている部分をカバー取付部240と呼ぶ。
【0072】
またカバー230は、外底面23に貼り付けられた状態で、前端近傍に対し下斜め後ろ方向に力が加えられると、該外底面23から引き剥がされ、図9に実線で示したように、接続部材251を撓ませて上面231Uを前方向に向け、通過孔24等を開放して露出させた状態となる。これにより硬貨出金トレイ212では、該通過孔24を介してシャッタ25に対し上方向に力が加えられると、該シャッタ25を開放状態に切り替えさせることができる。
【0073】
このように、第2の実施の形態によるレジ精算機201の硬貨処理装置206では、第1の実施の形態と同様に、簡素に構成されたカバー230により、硬貨出金トレイ212のシャッタ25が不用意に閉鎖状態から開放状態に切り替えられることを良好に阻止できる。
【0074】
これに加えて硬貨出金トレイ212では、接続部材251の後側部分を硬貨出金トレイ212の外底面23に貼り付けるようにした(図9)。このため硬貨処理装置206では、外底面23から引き剥がされたカバー230が紛失される可能性を排除できる。
【0075】
また硬貨出金トレイ212では、カバー230の状態に関わらず、該外底面23に対する接続部材251の貼付位置が不変である。このため硬貨出金トレイ212では、外底面23から引き剥がされていたカバー230に対し、前上方向に押し上げて該接続部材251の撓んだ部分を平面状に戻させるだけで、該カバー230をカバー取付部240に合わせて貼り付けさせることができる。
【0076】
その他の点においても、第2の実施の形態によるレジ精算機201では、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0077】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、カバー30におけるカバー本体部31の上面である付着面31Uが磁力を有し、トレイ本体部20の外底面23におけるカバー取付部40に対し、この磁力を作用させて吸着する場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばカバー取付部40に磁力を持たせると共にカバー本体部31を鋼板のような磁性材料により構成しても良い。要は、カバー本体部31のうち少なくとも付着面31Uを構成する部分及びカバー取付部40を何れも磁性材料により構成し、そのうち少なくとも一方を磁化させることにより、磁力を利用してカバー30をカバー取付部40に付着させることができれば良い。
【0078】
また、例えば付着面31Uに粘着剤を塗布し、この粘着力によりカバー30をカバー取付部40に取り付けさせても良い。この場合、粘着剤の粘着力を適度に弱くなるよう調整することにより、適切な力を加えるだけでカバー30を引き剥がすことができ、且つ再度取り付け得るようにすることができる。或いは、例えば面ファスナーを構成する一方の素材を付着面31Uに設けると共に他方の素材をカバー取付部40に設けておき、この面ファスナーの機能を利用してカバー30をカバー取付部40に取り付けさせ、また引き剥がさせるようにしても良い。さらにカバー30は、付着面31Uのうち少なくとも一部分がカバー取付部40との間に付着力を作用させれば良い。要は、カバー取付部40に対しカバー30を当接させるだけで種々の付着力を作用させてカバー取付部40に付着させると共にその状態を維持することができ、且つ該カバー30に対し作業者が容易に加えられる程度の大きさの力を該カバー取付部40から離れる方向に加えるだけで引き剥がさせることができ、さらに再付着ができれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0079】
さらに上述した第1の実施の形態においては、カバー30のカバー本体部31に可撓性を持たせることにより、該カバー30を被覆状態から引き剥がす際に、該カバー本体部31を撓ませながら少しずつ引き剥がさせる場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばカバー30及びカバー取付部40の間に作用する磁力が比較的弱い場合に、カバー本体部31を剛体として構成し、被覆状態から引き剥がす際に、該カバー本体部31を撓ませることなく一度に引き剥がさせるようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0080】
さらに上述した第1の実施の形態においては、カバー30を180度の回転対称形状とする場合について述べた(図5及び図6)。しかし本発明はこれに限らず、例えばカバー30を120度や90度等、他の所定角度の回転対称形状としても良い。これにより、カバー取付部40に対しカバー30を正しい状態で取り付ける作業がさらに容易となる。或いは、カバー30を回転対称では無い形状としても良い。
【0081】
さらに上述した第1の実施の形態においては、カバー30においてカバー本体部31の上側に突出部32を設け、該突出部32を通過孔24に嵌め込むことにより、該カバー30をカバー取付部40の位置に合わせて取り付ける場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばカバー30の付着面31Uにおける複数箇所に位置決め用の突起を設けておき、カバー取付部40内において各突起と対応する位置に孔をそれぞれ設けておき、各突起を各孔に嵌め込むようにしても良い。或いは、例えば下側板9におけるカバー取付部40以外の部分に非磁性材料でなる位置決め板を取り付けておいても良い。要は、物理的な干渉や磁気に反応する範囲を制限すること等により、カバー30を下側板9におけるカバー取付部40の位置に合わせて取り付けさせるよう、カバー30及び下側板9の少なくとも一方に、該カバー30を取り付ける位置を案内する取付案内部を設ければ良い。若しくは、単にカバー30から突出部32を省略しても良い。
【0082】
さらに上述した第1の実施の形態においては、カバー30において突出部32をカバー本体部31の付着面31Uとやや異なる色とする場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば突出部32を付着面31Uと同色としても良い。
【0083】
さらに上述した第1の実施の形態においては、化粧板8の一部をカバー取付部40に含めることにより、該カバー取付部40にカバー30を取り付けた際に、その一部が下側板9から浮き上がった状態とする場合について述べた(図7)。しかし本発明はこれに限らず、例えば下側板9におけるカバー取付部40の境界線(外周線)の近傍若しくは該境界線にまたがる部分に、局所的に上方向に屈曲した凹部や下方向に屈曲した凸部、或いは段差等を形成しても良い。これにより、カバー取付部40に取り付けられているカバー30の端部に指先や爪等を引っ掛けやすくなり、該カバー30を容易に引き剥がさせることができる。またこの場合、カバー取付部40に化粧板8が含まれないようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0084】
さらに上述した第2の実施の形態においては、接続部材251を可撓性を有する樹脂材料により構成された薄板状の部材とし、撓むことによりカバー取付部240に対するカバー230の位置や姿勢を変化させる場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば接続部材251に代えて、左右方向に沿った回動軸を中心として後側部分に対し前側部分が回動する蝶番を有する接続部材を使用する等、種々の構成でなる接続部材251を使用しても良い。要は、カバー取付部240に対するカバー230の位置や姿勢を変化させ得ると共に、該カバー230を下側板9に近接させた際に該カバー230をカバー取付部240に合わせて付着させることができれば良い。或いは、例えば接続部材251に代えて上下方向に沿った回動軸を有する接続部材を下側板9に設け、カバー230を若干下方向へ撓ませる等しながら該回動軸を中心として該下側板9と平行な平面に沿って回動させることにより、被覆状態と露出状態とに遷移させるようにしても良い。また、例えばカバー230を前後方向に移動(すなわちスライド)可能な構造とし、該カバー230を若干下方向に撓ませる等しながら前後方向へほぼ平行にスライド移動させることにより、被覆状態と露出状態とに遷移させるようにしても良い。
【0085】
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨出金トレイ12においてトレイ本体部20に対してシャッタ25がシャッタ回動軸26を中心として回動することにより、閉鎖状態又は開放状態に切り替える場合について述べた(図4等)。しかし本発明はこれに限らず、例えばトレイ本体部20に対してシャッタ25が着脱される構成等、種々の構成とすることにより、閉鎖状態又は開放状態に切り替えるようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0086】
さらに上述した第1の実施の形態においては、現金処理装置3に紙幣処理装置5及び硬貨処理装置6を設ける場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば現金処理装置3において紙幣を取り扱う必要が無い場合に、紙幣処理装置5を省略した構成としても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0087】
さらに上述した第1の実施の形態においては、いわゆるセルフレジとして運用するレジ精算機1に本発明を適用し、該レジ精算機1が顧客の操作により商品のバーコードを読み取って登録し、現金の支払に関する入金処理や出金処理を行う場合について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばいわゆるセミセルフレジとして運用する精算機に本発明を適用しても良い。この場合、当該精算機にPOSレジを接続した構成とし、レジ係員に操作されるPOSレジにより商品のバーコードを読み取って登録した後、合計金額を該POSレジから当該精算機に通知し、当該精算機において顧客の操作により現金の支払いに関する入金処理や出金処理を行うようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0088】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0089】
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨収納庫としての硬貨収納庫16と、出金トレイ部としての硬貨出金トレイ12とによって硬貨処理装置としての硬貨処理装置6を構成する場合について述べた。またこの場合、底部としての外底面23と、シャッタとしてのシャッタ25と、カバー取付部としてのカバー取付部40とによって出金トレイ部を構成した。しかし本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる硬貨収納庫と、出金トレイ部とによって硬貨処理装置を構成し、その他種々の構成でなる底部と、シャッタと、カバー取付部とによって出金トレイ部を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、例えば小売店において顧客の操作により精算処理を行うレジ精算機で利用できる。
【符号の説明】
【0091】
1、201……レジ精算機、2……POSレジ装置、3、203……現金処理装置、5……紙幣処理装置、6、206……硬貨処理装置、8……化粧板、9……下側板、12、212……硬貨出金トレイ、16……硬貨収納庫、20……トレイ本体部、20S……貯留空間、21……内側面、21H……内側面孔、22……前側面、23……外底面、23H……外底面孔、24……通過孔、25……シャッタ、26……シャッタ回動軸、27……軸受部、30、230……カバー、30X……カバー中心軸、31、231……カバー本体部、31L、231L……下面、31U、231U……付着面、32……突出部、40、240……カバー取付部、251……接続部材。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9