(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180432
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】耐火構造および耐火構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
E04B1/94 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093755
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】金森 誠治
(72)【発明者】
【氏名】三宅 朗彦
(72)【発明者】
【氏名】初田(本田) あかり
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA59
2E001GA63
2E001HA03
2E001HA21
2E001HC01
2E001KA01
2E001LA01
2E001LA04
2E001LA09
2E001LA12
(57)【要約】
【課題】容易に解体することができると共に留付け部材が熱橋となることを防ぐことができる耐火構造を提供する。
【解決手段】
木造建築物の主要構造部である木質芯材10に設けられる耐火構造1は、木質芯材10に積層されて第1留付け部材21で固定される第1耐火被覆材11と、第1耐火被覆材11に積層され、第2留付け部材22を木質芯材10に結合させることで固定される第2耐火被覆材12と、を備え、第2耐火被覆材12には、第2留付け部材22の頭部22Aを埋没させる凹部26が凹設され、凹部26には、第2留付け部材22の頭部22Aを覆い隠す耐火充填材15が着脱可能に嵌合する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の主要構造部である木質芯材に設けられる耐火構造であって、
前記木質芯材に積層されて第1留付け部材で固定される第1耐火被覆材と、
前記第1耐火被覆材に積層され、第2留付け部材を前記木質芯材に結合させることで固定される第2耐火被覆材と、を備え、
前記第2耐火被覆材には、前記第2留付け部材の頭部を埋没させる凹部が凹設され、
前記凹部には、前記第2留付け部材の前記頭部を覆い隠す耐火充填材が着脱可能に嵌合することを特徴とする耐火構造。
【請求項2】
前記第2留付け部材は、強磁性体で形成され、
前記耐火充填材は、
前記第2耐火被覆材の前記凹部を塞ぐ耐火部と、
前記耐火部に固定され、前記第2留付け部材の前記頭部に対して磁気的に固定される磁石部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の耐火構造。
【請求項3】
前記第2耐火被覆材は、
前記第1耐火被覆材に積層され、前記第2留付け部材が貫通する第2下層材と、
前記凹部を形成する貫通穴が穿設され、前記第2下層材の表面に接着される第2上層材と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の耐火構造。
【請求項4】
前記第2耐火被覆材は、
前記第1耐火被覆材に積層され、前記第2留付け部材が貫通する第2下層材と、
前記凹部となる位置を避けて前記第2下層材の表面に接着される複数の第2上層材と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の耐火構造。
【請求項5】
木造建築物の主要構造部である木質芯材に設けられる耐火構造の施工方法であって、
前記木質芯材に積層した第1耐火被覆材を第1留付け部材で固定する第1工程と、
第2耐火被覆材で前記第1耐火被覆材の表面を覆い、第2留付け部材を前記第2耐火被覆材および前記第1耐火被覆材に貫通させ、前記第2留付け部材の頭部を前記第2耐火被覆材に凹設された凹部に埋没させながら、前記第2留付け部材の先端部を前記木質芯材に結合させることで、前記第1耐火被覆材に積層された前記第2耐火被覆材を固定する第2工程と、
前記第2耐火被覆材の前記凹部に耐火充填材を着脱可能に嵌合させ、前記第2留付け部材の前記頭部を覆い隠す第3工程と、を備えていることを特徴とする耐火構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火構造および耐火構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、間柱に面材を固定し、面材に接着剤を介して断熱パネルを固定した断熱構造が開示されている。特許文献2には、木材片に不燃材から成る不燃層をビス部材で固定した耐火パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-119706号公報
【特許文献2】特開2022-21793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、断熱パネルが接着剤によって面材に固定されているため、面材(間柱)と断熱パネルとを分離(断熱構造を解体)することが困難であった。このため、間柱(木材)を再利用したり、パーティクルボード等の原料として再資源化したりすることが難しくなるという問題があった。
【0005】
特許文献2に記載の技術では、ビス部材を外すことで、木材片と不燃層とを分離(耐火パネルを解体)することができるため、上記したような問題を解決することが可能になる。しかしながら、不燃層の表面に露出したビス部材が熱橋となって木材片に熱が伝わり易く、木造建築物の耐火構造として使用することができなかった。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、容易に解体することができると共に留付け部材が熱橋となることを防ぐことができる耐火構造および耐火構造の施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、木造建築物の主要構造部である木質芯材に設けられる耐火構造であって、前記木質芯材に積層されて第1留付け部材で固定される第1耐火被覆材と、前記第1耐火被覆材に積層され、第2留付け部材を前記木質芯材に結合させることで固定される第2耐火被覆材と、を備え、前記第2耐火被覆材には、前記第2留付け部材の頭部を埋没させる凹部が凹設され、前記凹部には、前記第2留付け部材の前記頭部を覆い隠す耐火充填材が着脱可能に嵌合する。
【0008】
この場合、前記第2留付け部材は、強磁性体で形成され、前記耐火充填材は、前記第2耐火被覆材の前記凹部を塞ぐ耐火部と、前記耐火部に固定され、前記第2留付け部材の前記頭部に対して磁気的に固定される磁石部と、を有してもよい。
【0009】
この場合、前記第2耐火被覆材は、前記第1耐火被覆材に積層され、前記第2留付け部材が貫通する第2下層材と、前記凹部を形成する貫通穴が穿設され、前記第2下層材の表面に接着される第2上層材と、を有してもよい。
【0010】
この場合、前記第2耐火被覆材は、前記第1耐火被覆材に積層され、前記第2留付け部材が貫通する第2下層材と、前記凹部となる位置を避けて前記第2下層材の表面に接着される複数の第2上層材と、を有してもよい。
【0011】
本発明は、木造建築物の主要構造部である木質芯材に設けられる耐火構造の施工方法であって、前記木質芯材に積層した第1耐火被覆材を第1留付け部材で固定する第1工程と、第2耐火被覆材で前記第1耐火被覆材の表面を覆い、第2留付け部材を前記第2耐火被覆材および前記第1耐火被覆材に貫通させ、前記第2留付け部材の頭部を前記第2耐火被覆材に凹設された凹部に埋没させながら、前記第2留付け部材の先端部を前記木質芯材に結合させることで、前記第1耐火被覆材に積層された前記第2耐火被覆材を固定する第2工程と、前記第2耐火被覆材の前記凹部に耐火充填材を着脱可能に嵌合させ、前記第2留付け部材の前記頭部を覆い隠す第3工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐火構造を容易に解体することができると共に留付け部材が熱橋となることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る耐火構造を示す斜視図(断面図)である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る耐火構造の一部を示す分解斜視図(断面図)である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る耐火構造の施工方法(第1工程)を説明する断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る耐火構造の施工方法(第2工程)を説明する断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る耐火構造の施工方法(第3工程)を説明する断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る耐火構造を示す斜視図(断面図)である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る耐火構造の一部を示す分解斜視図(断面図)である。
【
図8】本発明の第1実施形態の変型例に係る耐火構造の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0015】
[第1実施形態:耐火構造]
図1および
図2を参照して、第1実施形態に係る耐火構造1について説明する。
図1は耐火構造1を示す斜視図(断面図)である。
図2は耐火構造1の一部を示す分解斜視図(断面図)である。
【0016】
図1に示すように、耐火構造1は、木造建築物の主要構造部である木質芯材10に設けられている。耐火構造1には、木造建築物の外部または内部での火災において、消火活動に頼らずとも、木質芯材10の燃焼を抑制し、木造建築物の崩壊を防止することが求められる。
【0017】
<木質芯材>
木質芯材10は、例えば、長方形状の断面を有する梁材であって、上階の床スラブFを支持している。なお、第1実施形態では、木質芯材10(主要構造部)が、梁材であることを想定しているが、これに限らず、例えば柱材等、他の所要構造部であってもよい。なお、
図2では、床スラブFは省略している。
【0018】
[耐火構造]
耐火構造1は、木質芯材10の上面を除く3面(左側面、右側面および下面)に覆設されている。耐火構造1は、3つの第1耐火被覆材11と、3つの第2耐火被覆材12と、複数の耐火充填材15と、を備えている。なお、本明細書では、第1耐火被覆材11および第2耐火被覆材12に共通する説明では、単に「耐火被覆材11,12」と呼ぶこととする。また、本明細書では、説明を簡単にするため、木質芯材10の右側面に設けられた1つの耐火被覆材11、12および1つの耐火充填材15について説明する。なお、第1実施形態に係る耐火構造1は、3つの耐火被覆材11,12および複数の耐火充填材15を備えているが、これに限らず、1つ以上の耐火被覆材11,12および1つ以上の耐火充填材15を備えていればよい。
【0019】
<第1耐火被覆材>
第1耐火被覆材11は、例えば、厚さ20mm程度の石こうボードで構成されている。
図1および
図2に示すように、第1耐火被覆材11は、木質芯材10(の表面)に積層されて複数の第1留付け部材21で固定される。なお、複数の第1留付け部材21は同一構造であるため、本明細書では、1つの第1留付け部材21について説明する。
【0020】
(第1留付け部材)
第1留付け部材21は、例えば、金属製(鉄、アルミ合金、ステンレス等)のビス(または木ネジ)である。第1留付け部材21は、第1耐火被覆材11を厚さ方向に貫通し、その先端部を木質芯材10に捩じ込ませることで、木質芯材10に結合される。第1留付け部材21の頭部21Aは、第1耐火被覆材11の表面と略同一平面となるように第1耐火被覆材11に埋め込まれる。
【0021】
<第2耐火被覆材>
図1および
図2に示すように、第2耐火被覆材12は、第1耐火被覆材11に積層される第2下層材23と、第2下層材23の表面に接着剤を介して接着される第2上層材24と、を有している。第2下層材23および第2上層材24は、例えば、厚さ20mm程度の石こうボードで構成されている。つまり、石こうボードが2枚重ねられて第2耐火被覆材12を構成している。第2耐火被覆材12は、第1耐火被覆材11に積層されて複数の第2留付け部材22で固定される。なお、複数の第2留付け部材22は同一構造であるため、本明細書では、1つの第2留付け部材22について説明する。
【0022】
(第2留付け部材)
第2留付け部材22は、例えば、鉄等の強磁性体で形成されたビス(または木ネジ)である。第2留付け部材22は、第2下層材23と第1耐火被覆材11を厚さ方向に貫通し、その先端部を木質芯材10に捩じ込ませることで、木質芯材10に結合される。第2耐火被覆材12は、第2留付け部材22を木質芯材10に結合させることで、木質芯材10との間に第1耐火被覆材11を挟み込むように固定される。
【0023】
なお、第2留付け部材22は、第1留付け部材21よりも長く形成されているが、これに限定されるものではなく、木質芯材10に届く長さであればよい。また、本明細書では、第1留付け部材21および第2留付け部材22に共通する説明では、単に「留付け部材21,22」と呼ぶこととする。
【0024】
(凹部)
第2耐火被覆材12には、第2留付け部材22の頭部22Aを埋没させる凹部26が凹設されている。詳細に説明すると、第2上層材24には厚さ方向に貫通した円形状の貫通穴24A(
図2参照)が穿設されており、第2上層材24を第2下層材23に接着することで、貫通穴24Aの一面が第2下層材23の表面で塞がれ、有底の凹部26が形成される(後述する
図4を参照)。凹部26は、円形状の底面26A(貫通穴24A内に露出した第2下層材23の表面)と、底面26Aの縁から立ち上がる円筒状の内周面26Bと、を有している(後述する
図4を参照)。
【0025】
<耐火充填材>
図1および
図2に示すように、耐火充填材15は、凹部26に着脱可能に嵌合する。耐火充填材15は、凹部26に嵌められることで、凹部26に配置された第2留付け部材22の頭部22Aを覆い隠す。耐火充填材15は、耐火部31と、磁石部32と、を有している。
【0026】
(耐火部)
耐火部31は、例えば、第2上層材24と略同一厚となる石こうボードで構成されている。耐火部31は、円板状(円柱状)に形成され、耐火充填材15の外形を構成している。耐火部31は、第2耐火被覆材12の凹部26に遊嵌され、凹部26を塞ぐ(埋める)。耐火部31の外周面31Bと凹部26(貫通穴24A)の内周面26Bとの間には僅かな隙間が形成されており、凹部26に対する耐火部31の着脱が許容されている。
【0027】
(磁石部)
磁石部32は、例えば、永久磁石であって、耐火部31よりも小径となる円板状に形成されている。磁石部32は、耐火部31の端面に埋め込まれて固定(接着)されている。耐火充填材15(耐火部31)が凹部26に嵌合すると、磁石部32は、第2留付け部材22の頭部22Aに対して磁気的に固定される。これにより、耐火充填材15が凹部26に嵌合した状態に保持される。
【0028】
[耐火構造の施工方法]
次に、
図1、
図3ないし
図5を参照して、耐火構造1の施工方法について説明する。
図3ないし
図5は耐火構造1の施工方法(第1工程~第3工程)を説明する断面図である。
【0029】
耐火構造1の施工方法は、第1工程、第2工程および第3工程を備えている。耐火構造1は、接着剤等を用いることなく施工される。なお、耐火被覆材11,12は、適切な大きさ、形状にカットされているものとする。
【0030】
図3に示すように、第1工程では、作業者は、第1耐火被覆材11で木質芯材10の表面を覆い、木質芯材10に積層した第1耐火被覆材11を第1留付け部材21で固定する。第1留付け部材21は、その頭部21Aが第1耐火被覆材11の表面と略面一となるように(または僅かに潜り込むように)、木質芯材10に捩じ込まれる。
【0031】
図4に示すように、第2工程では、作業者は、第2耐火被覆材12で第1耐火被覆材11の表面を覆い、第1耐火被覆材11に積層した第2耐火被覆材12を第2留付け部材22で固定する。第2留付け部材22は、第2耐火被覆材12に凹設された凹部26に差し込まれ、凹部26の底面26Aから第2耐火被覆材12(第2下層材23)および第1耐火被覆材11を貫通する。第2留付け部材22は、その頭部22Aを凹部26に埋没させながら、その先端部を木質芯材10に結合させる(捩じ込まれる)。第2留付け部材22は、その頭部22Aが第2下層材23の表面(凹部26の底面26A)と略面一となるように(または僅かに潜り込むように)、木質芯材10に捩じ込まれる。これにより、第2耐火被覆材12が、第1耐火被覆材11を挟んで木質芯材10に固定される。
【0032】
図5に示すように、第3工程では、作業者は、第2耐火被覆材12の凹部26に耐火充填材15を着脱可能に嵌合させ、第2留付け部材22の頭部22Aを覆い隠す。詳細には、耐火充填材15(耐火部31)を凹部26に進入させると、磁石部32と第2留付け部材22の頭部22Aとの間に磁気的な吸引力が働き、耐火充填材15は凹部26内に引き込まれる。磁石部32は第2留付け部材22の頭部22Aに磁気的に接着され、耐火充填材15は凹部26から離脱可能な状態で固定される(
図1参照)。
【0033】
以上によって、耐火構造1の施工が完了し、耐火構造1が完成する(
図1参照)。なお、例えば、第2耐火被覆材12の表面には胴縁が固定され、胴縁には仕上げ材(居室の内装となる部材)が固定されてもよい(図示せず)。また、例えば、第2耐火被覆材12の表面に仕上げ材が直貼りされてもよい(図示せず)。
【0034】
[耐火構造の解体]
上記した耐火構造1は、施工方法とは逆の手順で解体(分解)することができる。すなわち、作業者は、仕上げ材や胴縁を除去し、凹部26に嵌合した耐火充填材15を取り外す(引き抜く)。詳細には、作業者は、凹部26と耐火部31との隙間に治具(マイナスドライバーやスパチュラ等)の先端部を差し込んで、梃子の原理で耐火充填材15を凹部26から取り外すとよい。耐火充填材15は、磁石部32による磁気的吸引力によって第2留付け部材22の頭部22Aに固定されているため、磁気的吸引力よりも大きな引張力を耐火充填材15に作用させることで、耐火充填材15を凹部26から簡単に取り外すことができる。
【0035】
続いて、作業者は、耐火充填材15を取り外すことで凹部26内に露出した第2留付け部材22の頭部22Aに工具(ドライバー等)を噛み合わせ、第2留付け部材22を引き抜き方向に回転させて取り外す。これにより、第2耐火被覆材12が第1耐火被覆材11から分離される。
【0036】
次に、作業者は、第2耐火被覆材12を取り外すことで露出した第1留付け部材21の頭部21Aに工具(ドライバー等)を噛み合わせ、第1留付け部材21を引き抜き方向に回転させて取り外す。これにより、第1耐火被覆材11が木質芯材10から分離される。
【0037】
以上によって、耐火構造1の解体が完了する。
【0038】
以上説明した第1実施形態に係る耐火構造1では、第2留付け部材22の頭部22Aが第2耐火被覆材12の凹部26に埋没し、耐火充填材15が着脱可能に凹部26に嵌め合わされていた。この構成によれば、耐火充填材15を取り外すことで、第2留付け部材22の頭部22Aが露出するため、容易に第2留付け部材22を取り外すことができ、第2耐火被覆材12を第1耐火被覆材11から分離することができる。また、第2耐火被覆材12を分離することで、第1留付け部材21(頭部21A)が露出するため、第1留付け部材21を取り外すことができ、第1耐火被覆材11を木質芯材10から分離することができる。このように、耐火被覆材11,12の固定に接着剤等を使用していないため、耐火構造1を容易に解体することができる。木質芯材10と耐火被覆材11,12とを完全に分離することができるため、木質芯材10を再利用したり、パーティクルボード等の原料として再資源化したりすることが容易となる。また、第1留付け部材21(頭部21A)は第2耐火被覆材12に覆われ、第2留付け部材22(頭部22A)は耐火充填材15に覆われているため、留付け部材21,22が熱橋となることを防ぐことができる。
【0039】
また、第1実施形態に係る耐火構造1では、耐火充填材15が磁石部32の磁力によって第2留付け部材22の頭部22Aに固定されていた。この構成によれば、耐火充填材15を容易に着脱することができる。この構成によれば、工具等を用いることなく耐火充填材15を頭部22Aに簡単に取り付けることができる。また、耐火構造1の解体時には耐火充填材15を容易に取り外すことができる。
【0040】
また、第1実施形態に係る耐火構造1によれば、貫通穴24Aが開口した第2上層材24が第2下層材23に貼り付けられることで、貫通穴24Aが開口した位置に凹部26を形成することができる。これにより、第2下層材23および第2上層材24として1枚の板状の既製品を用いることができるため、仮に1枚の耐火被覆材に有底の凹部26を形成する場合に比べて、凹部26を簡単に形成することができ、第2耐火被覆材12を低コストで製造することが可能になる。なお、本発明は、有底の凹部26が1枚の耐火被覆材に形成されることを妨げるものではない。
【0041】
なお、第1実施形態に係る耐火構造1では、耐火充填材15の磁石部32が耐火部31よりも小径となる円板状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。磁石部32は、耐火部31と同一径の円板状に形成されてもよい(図示せず)。また、磁石部32が耐火部31に埋め込まれていたが、これに限らず、耐火部31の端面から突出するように設けられてもよい(図示せず)。この場合には、耐火部31と磁石部32とを合わせた厚さが、第2上層材24と略同一厚となるようにするとよい(図示せず)。
【0042】
また、第1実施形態に係る耐火構造1では、凹部26が円筒状に形成され、耐火充填材15(耐火部31、磁石部32)が凹部26と相補的な円板状(円柱状)に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、凹部26や耐火充填材15は、直方体状等、多面体形状に形成されてもよい(図示せず)。つまり、凹部26および耐火充填材15は、互いに対応する形状(相補的な形状)であればよい。
【0043】
[第2実施形態:耐火構造]
図6および
図7を参照して、第2実施形態に係る耐火構造2について説明する。
図6は耐火構造2を示す斜視図(断面図)である。
図7は耐火構造2の一部を示す分解斜視図(断面図)である。なお、第2実施形態に係る耐火構造2の説明では、上記した第1実施形態に係る耐火構造1と同様の構成には同一の符号を付し、同様または対応する構成の説明は省略する。
【0044】
第1実施形態に係る耐火構造1では、第2耐火被覆材12の第2上層材24に貫通穴24Aが形成されていたが、第2実施形態に係る耐火構造2では、第2耐火被覆材13が貫通穴24Aのない複数の第2上層材25を有している点で相違する。このため、第2実施形態に係る耐火構造2では、凹部27や耐火充填材16の形状が、第1実施形態に係る耐火構造1の凹部26や耐火充填材15と相違する。なお、引き続き、木質芯材10の右側面に設けられた1つの耐火被覆材11、13および1つの耐火充填材16について説明する。
【0045】
複数(例えば
図6および
図7では2つ)の第2上層材25は、それぞれ第2下層材23よりも幅狭い板状に形成され、前後方向(木質芯材10の伸長方向)に間隔をあけて第2下層材23の表面に接着されている。隣接する第2上層材25の間には、U字溝状の凹部27が上下方向(木質芯材10の伸長方向に直交する方向)に延設されている。つまり、複数の第2上層材25は、凹部27となる位置を避けて第2下層材23の表面に接着されている。複数の第2留付け部材22は、凹部27の底面に所定の間隔で打たれ、第2下層材23および第1耐火被覆材11を貫通して木質芯材10に捩じ込まれる。なお、凹部27の底面となる第2下層材23の表面には、複数の第2留付け部材22を打つ位置を示す複数のマーク(図示せず)が所定の間隔で形成されるとよい。
【0046】
また、耐火充填材16の耐火部33は、凹部27に対応するように、上下方向に長い棒状に形成されている。耐火部33には、複数の第2留付け部材22に対応するように複数の磁石部32が取り付けられている。耐火充填材16は、凹部27に嵌合し、複数の磁石部32の磁力によって複数の第2留付け部材22の頭部22Aに固定される。
【0047】
なお、耐火構造2の施工方法は、第1実施形態に係る耐火構造1の施工方法と同様であるため、その説明は省略する。
【0048】
以上説明した第2実施形態に係る耐火構造2によれば、複数の第2上層材25が間隔をあけて第2下層材23に貼り付けられることで、凹部27を形成することができる。この構成によれば、第2上層材25に穴開け加工を施す必要がなくなり、第2耐火被覆材13を低コストで製造することが可能になる。
【0049】
なお、第1~第2実施形態に係る耐火構造1,2では、耐火充填材15,16(耐火部31,33)が第2耐火被覆材12,13の凹部26,27に遊嵌されていたが、本発明はこれに限定されない。耐火充填材15,16は、凹部26,27に対する着脱が許容されることを条件に、耐火部31,33が凹部26,27にややきつく嵌合する寸法に形成されてもよい(図示せず)。
【0050】
また、第1~第2実施形態に係る耐火構造1,2では、耐火充填材15,16が磁石部32を有していたが、これに限らず、磁石部32が省略されてもよい(図示せず)。すなわち、耐火充填材15,16が耐火部31,33のみで構成されてもよい。この場合、耐火充填材15,16(耐火部31,33)は、接着剤や両面テープ等を介して第2留付け部材22の頭部22Aに接着(固定)されるとよい(図示せず)。また、耐火充填材15,16(耐火部31,33)は、接着剤を介して凹部26の内周面26Bや凹部27の内側面に接着(固定)されてもよい(図示せず)。他にも、耐火部31,33のみから成る耐火充填材15,16は、接着剤を付けずに、凹部26,27に圧入されてもよい(図示せず)。これらの場合、耐火充填材15,16を凹部26,27から取り出し難くなるが、解体時には、耐火充填材15,16を破壊してもよいため、比較的容易に第2留付け部材22を露出させることができると考えられる。また、これらの場合、第2留付け部材22は強磁性体でなくてもよい。
【0051】
また、第1~第2実施形態に係る耐火構造1,2では、凹部26,27に嵌め込まれた耐火充填材15,16(耐火部31,33)の表面は、第2耐火被覆材12,13(第2上層材24,25)の表面と略同一平面を成していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、耐火充填材15,16は、その表面が第2耐火被覆材12,13の表面から突出するように形成されてもよい(図示せず)。また、例えば、作業者が指でつまむことができるように、耐火部31,33にリブ状のつ凸部が形成されてもよい(図示せず)。これにより、作業者が耐火充填材15,16を掴み易くなるため、凹部26,27から耐火充填材15,16を取り外し易くすることができる。また、取り外しし難くなるが、耐火充填材15は、その表面が第2耐火被覆材12の表面から僅かに凹むように形成されることを妨げない(図示せず)。
【0052】
また、耐火充填材15,16を取り外し易くする構造として、例えば、
図8に示すように、耐火部31(および磁石部32)の先端面(磁石部32を設けた面)の下部と、先端側の天面とに傾斜を設けてもよい。耐火部31の表面下部を押すことで、耐火充填材15が凹部26内で傾斜姿勢となって、耐火部31の表面上部が飛出す(
図8の太矢印参照)。なお、
図8では、第1実施形態に係る耐火構造1の耐火充填材15を図示したが、当該構造は、第2実施形態に係る耐火構造2の耐火充填材16に適用してもよい(図示せず)。
【0053】
また、第1~第2実施形態に係る耐火構造1,2では、第1耐火被覆材11が、1枚の石こうボードで構成されていたが、これに限らず、複数の石こうボードを積層することで構成されてもよい(図示せず)。また、第2耐火被覆材12,13が、2枚の石こうボードを積層して構成されていたが、これに限らず、3枚以上の石こうボードを積層することで構成されてもよいし、1枚の石こうボードで構成されてもよい(図示せず)。
【0054】
また、第1~第2実施形態に係る耐火構造1,2では、耐火被覆材11,12,13や耐火充填材15,16の耐火部31,33が石こうボードで構成されていたが、これに限らず、例えば、ケイ酸カルシウム板等、他の不燃性の建材で構成されてもよい。また、耐火被覆材11,12,13や耐火部31,33の厚さは、20mmに限らず、求められる耐火性能に応じて適宜変更してもよい。
【0055】
また、本実施形態に係る耐火構造1では、留付け部材21,22がビス(または木ネジ)であったが、これに限らず、例えば、釘やステープル(略U字状の針)等であってもよい(図示せず)。
【0056】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る耐火構造および耐火構造の施工方法における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0057】
1,2 耐火構造
10 木質芯材
21 第1留付け部材
22 第2留付け部材
11 第1耐火被覆材
12,13 第2耐火被覆材
22A 頭部
26,27 凹部
15,16 耐火充填材
31,33 耐火部
32 磁石部
23 第2下層材
24,25 第2上層材
24A 貫通穴