(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180440
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】操作ワイヤの接合方法、および医療用機器
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20231214BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20231214BHJP
A61B 17/22 20060101ALI20231214BHJP
A61B 17/94 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B1/018 515
A61B17/22 528
A61B17/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093765
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 雄大
(72)【発明者】
【氏名】浅見 桂一
(72)【発明者】
【氏名】今村 友紀
【テーマコード(参考)】
4C160
4C161
【Fターム(参考)】
4C160EE22
4C160KK03
4C160KK06
4C160NN11
4C161AA00
4C161BB00
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF43
4C161HH57
4C161JJ06
(57)【要約】
【課題】簡易、かつ高精度に硬質長を制御しうる操作ワイヤの接合方法、および医療用機器を提供する。
【解決課題】本発明の操作ワイヤの接合方法は、操作ワイヤの接合領域の隣接領域を局所加熱して、前記隣接領域に酸化物を生成する局所加熱工程と、前記接合領域および隣接領域をフラックスで被覆し、前記接合領域および隣接領域の酸化物を除去する酸化物除去工程と、連結部材の貫通孔に前記操作ワイヤの接合端部を当接または近接させて挿入し、前記連結部材と前記操作ワイヤとの間に溶融した接合材を注入して、前記連結部材と前記操作ワイヤを一体的に接合する接合工程と、を有し、前記接合工程において、前記隣接領域に残存する酸化物が前記接合材の濡れ広がりを防止することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用機器に使用する操作ワイヤの接合方法において、
前記操作ワイヤの接合領域の隣接領域を局所加熱して、前記隣接領域に酸化物を生成する局所加熱工程と、
前記接合領域および隣接領域をフラックスで被覆し、前記接合領域および隣接領域の酸化物を除去する酸化物除去工程と、
連結部材の貫通孔に前記操作ワイヤの接合端部を当接または近接させて挿入し、前記連結部材と前記操作ワイヤとの間に溶融した接合材を注入して、前記連結部材と前記操作ワイヤを一体的に接合する接合工程と、を有し、
前記接合工程において、前記隣接領域に残存する酸化物が前記接合材の濡れ広がりを防止することを特徴とする操作ワイヤの接合方法。
【請求項2】
前記操作ワイヤは機能部材と接合され、
前記局所加熱工程は、前記操作ワイヤおよび機能部材の接合領域の隣接領域を局所加熱して、前記隣接領域に酸化物を生成し、
前記接合工程は、前記連結部材の貫通孔に前記操作ワイヤおよび機能部材の接合端部を当接または近接させて挿入し、前記連結部材と前記操作ワイヤおよび機能部材との間に溶融した接合材を注入して、前記連結部材と前記操作ワイヤおよび機能部材を一体的に接合することを特徴とする請求項1に記載の操作ワイヤの接合方法。
【請求項3】
前記操作ワイヤはステンレスワイヤであり、
前記酸化物は酸化クロムであることを特徴とする、請求項1に記載の操作ワイヤの接合方法。
【請求項4】
前記操作ワイヤは複数の細線が撚られた撚線ワイヤからなり、
前記酸化物は、撚線ワイヤ内部の細線表面にも形成されることを特徴とする請求項1に記載の操作ワイヤの接合方法。
【請求項5】
前記連結部材は金属パイプであることを特徴とする請求項1に記載の操作ワイヤの接合方法。
【請求項6】
前記局所加熱は、レーザー照射により行うことを特徴とする請求項1に記載の操作ワイヤの接合方法。
【請求項7】
前記接合材はロウ材であることを特徴とする請求項1に記載の操作ワイヤの接合方法。
【請求項8】
前記医療用機器は、内視鏡または医療用処置具であることを特徴とする請求項1に記載の操作ワイヤの接合方法。
【請求項9】
連結部材の貫通孔に挿入された操作ワイヤの端部が接合材により接合されている医療用機器であって
前記接合材は前記連結部材の端部でコーン形状をなし、前記操作ワイヤは前記接合材で接合する接合領域に隣接する領域に酸化物からなる前記接合材の濡れ広がり防止領域を有することを特徴とする医療用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ワイヤの接合方法、および医療用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野においては、患者等の被検体の臓器を観察する際に内視鏡システムが用いられている。内視鏡システムは医療用機器に属する。このような内視鏡システムとして、挿入部と撮像素子と外部装置とを有するものが知られている。挿入部は可撓性を有する細長形状をなし、被検体の体腔内に挿入される。撮像素子は挿入部の先端に設けられて体内画像を撮像する。外部装置は、ケーブルを介して挿入部に接続され、撮像素子が撮像した体内画像の画像処理を行って、体内画像を表示部等に表示させる。
【0003】
上述した内視鏡システムで使用される処置具は、機能部材と操作ワイヤと可撓性シースを有する。機能部材は略線状をなし、所定の処置を施すための部材である。操作ワイヤは機能部材に接続する。可撓性シースは、挿入部の内部に設けられ、機能部材および操作ワイヤを進退自在に挿通する管状の部材である。この機能部材としては、例えば、高周波ナイフやバスケット鉗子や手術針(生検針)などが挙げられる。高周波ナイフは粘膜等の生体組織を切除する。バスケット鉗子は、バスケット状をなし、バスケットが形成する内部空間で体内の組織などを補足する。手術針(生検針)は、体腔内の壁面を穿刺して、筒状の中空空間を介して細胞または組織を採取可能である。
【0004】
機能部材および操作ワイヤは、例えばSUSなどのステンレス鋼からなる金属パイプ等の連結部材と、ロウや半田などの接合材とを用いて連結されている。また、操作ワイヤ同士も同様に、連結部材と、接合材とを用いて連結されている。具体的には、連結部材の両端から機能部材と操作ワイヤとをそれぞれ挿入して、連結部材の内部において機能部材と操作ワイヤとの端部同士を当接または近接させる。この当接または近接させた機能部材と操作ワイヤの接続部分を連結部材によって被覆された状態である。この被覆状態で連結部材の内部に溶融した接合材を注入して連結部材、機能部材および操作ワイヤを一体的に接合することによって、機能部材および操作ワイヤを接続している。
【0005】
操作ワイヤおよび機能部材の表面に酸化物が存在すると接合の邪魔となる。このため接合は、操作ワイヤおよび機能部材にフラックスを塗付し、酸化物を除去した後に行う。連結部材の端部からあふれ出た余分の接合材はフィレットと呼ばれる。ここでフラックスの塗付領域、操作ワイヤおよび機能部材と連結部材との隙間のばらつき、接合材の供給量等により、連結部材端部に形成されるフィレットの長さが変化する場合がある。
図6は、従来の接合方法を説明する図である。連結部材68の中央部の供給孔68aから接合材69aを溶融させて連結部材68内部に導入する。連結部材68内部には2本の操作ワイヤ67が端面を接した状態で収納されている。連結部材68の両端からあふれ出た接合材69aは硬化して接合材69bとなる。この硬化した接合材69bがフィレットである。このとき連結部材68の両端に形成されるフィレット(硬化した接合材69b)の端から端までが硬質長となる。
図6(a)に示すように、連結部材68の端部から接合材69bが長く染み出すと硬質長が長くなる。硬質長が長すぎると屈曲量が不十分となる。一方、
図6(b)に示すように、連結部材68の端部に接合材69bが染み出さずフィレットが形成されないと、硬質長が短い。一方、フィレットによるスロープが無いので段部が形成され、連結部材69の端部と操作ワイヤ67との段部によりワイヤ挿入がスムーズに行えないという不具合が生じる。
【0006】
特許文献1には、溶融ロウにより電子部品が接合される導電回路上の適所に、溶融ロウの濡れ広がり防止手段として酸化タンタル層を設けたことを特徴とする配線基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、窒化タンタル層を高温の酸化雰囲気下で酸化処理して酸化タンタル層を形成するものであるため、予めスパッタリング等により窒化タンタル層を形成する必要があり、工程が煩雑となる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操作ワイヤの接合領域の隣接領域にロウ材等の接合材の濡れ広がり防止領域を形成することにより、簡易、かつ高精度に硬質長を制御しうる操作ワイヤの接合方法、および当該操作ワイヤの接合法を採用した医療用機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る操作ワイヤの接合方法は、医療用機器に使用する操作ワイヤの接合方法において、前記操作ワイヤの接合領域の隣接領域を局所加熱して、前記隣接領域に酸化物を生成する局所加熱工程と、前記接合領域および隣接領域をフラックスで被覆し、前記接合領域および隣接領域の酸化物を除去する酸化物除去工程と、連結部材の貫通孔に前記操作ワイヤの接合端部を当接または近接させて挿入し、前記連結部材と前記操作ワイヤとの間に溶融した接合材を注入して、前記連結部材と前記操作ワイヤを一体的に接合する接合工程と、を有し、前記接合工程において、前記隣接領域に残存する酸化物が前記接合材の濡れ広がりを防止することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る操作ワイヤの接合方法は、上記発明において、前記操作ワイヤは機能部材と接合され、前記局所加熱工程は、前記操作ワイヤおよび機能部材の接合領域の隣接領域を局所加熱して、前記隣接領域に酸化物を生成し、前記接合工程は、前記連結部材の貫通孔に前記操作ワイヤおよび機能部材の接合端部を当接または近接させて挿入し、前記連結部材と前記操作ワイヤおよび機能部材との間に溶融した接合材を注入して、前記連結部材と前記操作ワイヤおよび機能部材を一体的に接合することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る操作ワイヤの接合方法は、上記発明において、前記操作ワイヤはステンレスワイヤであり、前記酸化物は酸化クロムであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る操作ワイヤの接合方法は、上記発明において、前記操作ワイヤは複数の細線が撚られた撚線ワイヤからなり、前記酸化物は、撚線ワイヤ内部の細線表面にも形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る操作ワイヤの接合方法は、上記発明において、前記連結部材は金属パイプであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る操作ワイヤの接合方法は、上記発明において、前記局所加熱は、レーザー照射により行うことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る操作ワイヤの接合方法は、上記発明において、前記接合材はロウ材であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る操作ワイヤの接合方法は、上記発明において、前記医療機器は、内視鏡または医療用処置具であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る医療用機器は、連結部材の貫通孔に挿入された操作ワイヤの端部が接合材により接合されている医療用機器であって、前記接合材は前記連結部材の端部でコーン形状をなし、前記操作ワイヤは前記接合材で接合する接合領域に隣接する領域に酸化物からなる前記接合材の濡れ広がり防止領域を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、硬質長が制御された内視鏡、および医療用処置具等の医療用機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態にかかる内視鏡システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態にかかる処置具先端の構成を説明する断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る操作ワイヤの接合方法のフローを説明する図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る操作ワイヤの接合方法の原理を説明する図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る操作ワイヤの接合方法を説明する図である。
【
図6】
図6は、従来の接合方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)として、患者等の被検体の体腔内の画像を撮像して表示する医療用の内視鏡システムについて説明する。また、この実施の形態により、この発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。さらにまた、図面は、模式的なものであり、各部材の厚みと幅との関係、各部材の比率等は、現実と異なることに留意する必要がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法や比率が異なる部分が含まれている。
【0022】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態にかかる内視鏡システム1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、内視鏡システム1は、内視鏡2と、制御装置3と、光源装置4と、表示装置5と、処置具6を備える。内視鏡2は被検体の体腔内に先端部を挿入することによって被検体の体内画像を撮像する。制御装置3は内視鏡2が撮像した体内画像に所定の画像処理を施すとともに、内視鏡システム1全体の動作を統括的に制御する。光源装置4は内視鏡2の先端から出射する照明光を発生する。表示装置5は制御装置3が画像処理を施した体内画像を表示する。処置具6は機能部材を先端に有し、内視鏡2に挿通されて先端部24の先端から表出する。
【0023】
内視鏡2は、挿入部21と操作部22とユニバーサルコード23を有する。挿入部21は可撓性を有する細長形状をなす。操作部22は挿入部21の基端側に接続され、各種の操作信号の入力を受け付ける。ユニバーサルコード23は操作部22から挿入部21が延びる方向と異なる方向に延び、制御装置3および光源装置4と接続する各種ケーブルを内蔵する。
【0024】
挿入部21は、先端部24と湾曲部25と可撓管部26を有する。先端部24は撮像素子を内蔵する。湾曲部25は複数の湾曲駒によって構成された湾曲自在な部位である。可撓管部26は、湾曲部25の基端側に接続され、可撓性を有する長尺状の部位である。
【0025】
撮像素子は、外部からの光を受光して電気信号に光電変換して所定の信号処理を施す。撮像素子は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを用いて実現される。
【0026】
操作部22と先端部24との間には、制御装置3との間で電気信号の送受信を行う複数の信号線が束ねられた集合ケーブルが接続されている。複数の信号線には、撮像素子が出力した映像信号を制御装置3へ伝送する信号線および制御装置3が出力する制御信号を撮像素子へ伝送する信号線が含まれる。
【0027】
操作部22は、湾曲ノブ221と処置具挿入部222と複数のスイッチ223を有する。湾曲ノブ221は湾曲部25を上下方向および左右方向に湾曲させる。処置具挿入部222は、体腔内に生体鉗子、レーザメスおよび検査プローブ等の処置具6を挿入する。複数のスイッチ223は、制御装置3、光源装置4に加えて、送気手段、送水手段、送ガス手段等の周辺機器の操作指示信号を入力する操作入力部である。
【0028】
ユニバーサルコード23は、ライトガイドおよび集合ケーブルを少なくとも内蔵している。また、ユニバーサルコード23の操作部22に連なる側と異なる側の端部には、コネクタ部27と電気コネクタ部28が設けられている。コネクタ部27は光源装置4に着脱自在である。電気コネクタ部28は、コイル状をなすコイルケーブル270を介してコネクタ部27と電気的に接続され、制御装置3と着脱自在である。
【0029】
制御装置3は、先端部24から出力された画像信号をもとに、表示装置5が表示する体内画像を生成する。制御装置3は、例えばホワイトバランス(WB)調整処理、ゲイン調整処理、γ補正処理、D/A変換処理、フォーマット変更処理などを行う。
【0030】
光源装置4は、例えば、光源、回転フィルタ、および光源制御部を備える。光源は、白色LED(Light Emitting Diode)またはキセノンランプ等を用いて構成され、光源制御部の制御のもと、白色光を発生する。光源が発生した光は、ライトガイドを経由して先端部24の先端から照射される。
【0031】
表示装置5は、映像ケーブルを介して制御装置3が生成した体内画像を制御装置3から受信して表示する機能を有する。表示装置5は、例えば液晶または有機EL(Electro Luminescence)を用いて構成される。
【0032】
処置具6は、内視鏡2の処置具挿入部222に挿通可能な挿入部61と、挿入部61の基端に設けられた操作部62とを備える。挿入部61の先端には、機能部材63が設けられている。本実施の形態の例では、機能部材63が、高周波電流を通電させることにより生体組織を切除可能となる高周波ナイフを例として説明する。
【0033】
操作部62は、細長い筒の端部に支持部64aが設けられた操作部本体64と、操作部本体64に対し、軸方向に沿ってスライド可能なワイヤ操作ハンドル65とを備える。ワイヤ操作ハンドル65には、機能部材63に高周波電流を供給する高周波発生装置から延伸されるコードが電気的に接続されるコネクタ部66が設けられている。
【0034】
図2は、
図1に示す挿入部61の先端部を拡大して示す一部断面図である。
図2に示すように、挿入部61は、可撓性シース70と、機能部材63と、操作ワイヤ67と、連結部材68を備える。機能部材63は可撓性シース70の先端から突没可能に設けられている。操作ワイヤ67は可撓性シース70内に挿通され、機能部材63と接続されている。連結部材68は、機能部材63と操作ワイヤ67または操作ワイヤ67同士を接続する。
【0035】
機能部材63は、棒状をなす棒状電極部63aと、棒状電極部63aの先端に設けられた先端電極部63bとを含む。棒状電極部63a及び先端電極部63bは、ステンレス鋼(例えばSUS304)等の導電性材料により、例えば切削加工によって一体的に形成されている。あるいは、棒状電極部63aと先端電極部63bとを、異なる材料によって形成しても良い。
【0036】
操作ワイヤ67は、ステンレス鋼(例えばSUS304)等の導電性材料からなる撚線(例えば7本撚り)であり、可撓性シース70に設けられた挿通孔70a内を軸方向に移動可能に挿通されている。操作ワイヤ67は、先端側において機能部材63と電気的に接続され、基端側においてコネクタ部66と電気的に接続される。操作ワイヤ67の材料としては、ステンレスに加えてニッケルチタンも採用することができる。
【0037】
機能部材63及び操作ワイヤ67は、連結部材68を介して互いに電気的に接続されていると共に、それぞれが連結部材68と接合されている。連結部材68は、ステンレス鋼(例えばSUS304)等の導電性材料からなる金属パイプであり、棒材又は管材から作製される。連結部材68に棒状電極部63a及び操作ワイヤ67を、端面同士が対向するように挿入し、連結部材68と機能部材63及び操作ワイヤ67とを接合材69により接合する。同様に、連結部材68に操作ワイヤ67を、端面同士が対向するように挿入し、連結部材68と操作ワイヤ67とを接合材69により接合する。接合材69は半田や、金属からなるロウなどが用いられる。
【0038】
続いて、本発明の実施の形態に係る操作ワイヤ67の接合方法について、図を参照して説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係る操作ワイヤ67の接合方法のフローを説明する図である。
図4は、本発明の実施の形態に係る操作ワイヤ67の接合方法の原理を説明する図である。
【0039】
まず、操作ワイヤ67の接合領域の隣接領域を局所加熱する。これにより周囲の酸素が化合して、隣接領域に酸化物を生成する(ステップS1)。局所加熱の方法は限定されるものではないが、所定領域を短時間で加熱可能なレーザーにより行うことが好ましい。局所加熱の条件は使用する操作ワイヤ67の材料、径等により適宜変更して行うことが好ましいが、例えば、ステンレスの場合は400℃~600℃で1~3秒程度行うことが好ましく、ニッケルチタンの場合は、600℃~900℃で1~3秒程度行うことが好ましい。操作ワイヤ67がステンレスである場合、
図4(a)に示すように、ステンレスからなる内部領域67bの表面には、ステンレスの構成成分であるクロムの酸化物67a(酸化クロム)が形成されている。隣接領域67dの局所加熱により、
図4(b)に示すように、隣接領域67dの酸化物67aは、他の領域の酸化物67aより厚みが厚くなる。また、操作ワイヤ67として撚線を使用した場合、従来の方法では接合材69が撚線内部にも浸透し、硬質長を制御することが非常に困難であったが、本実施の形態では、局所加熱により酸化物67aは撚線ワイヤ内部の細線表面にも形成されるため、撚線内部への接合材69の浸透を防止でき、硬質長の制御が容易となる。
【0040】
続いて、操作ワイヤ67にフラックスを塗付し(ステップS-2)、操作ワイヤ67の表面の酸化物67aを除去する(ステップS-3)。
図4(c)に示すように、接合領域67cおよび隣接領域67dをフラックス80で被覆し、接合領域67cおよび隣接領域67dの酸化物67aを除去する。フラックス80の塗付により接合領域67cの酸化物67aが除去されて接合材69による接合が可能となる。隣接領域67dにおいても酸化物67aは除去されるが、隣接領域67dの酸化物67aは接合領域67cよりも厚いため、
図4(d)に示すように残存する。本実施の形態では、隣接領域67cの酸化物67aの厚さが厚いため、フラックス80を接合領域67cの範囲を超えて塗付した場合でも、隣接領域67dには酸化物67aが残存するため、フラックス80が接合領域67cを超えて流れ出ることを防止できるため、硬質長の制御が容易となる。
【0041】
接合領域67cの酸化物67aを除去した後、連結部材68の貫通孔に操作ワイヤ67を配置する(ステップS-4)。操作ワイヤ67は、接合領域67c側の端部を接合する操作ワイヤ67の端部と当接または近接させて配置する。なお、連結部材68の貫通孔への操作ワイヤ67の配置は、操作ワイヤ67の局所加熱の前に行ってもよい。
【0042】
連結部材68内に操作ワイヤ67を配置後、連結部材68の加熱を開始し(ステップS-5)、連結部材68に設けられた供給孔68aに接合材69aを供給し、接合材69aを加熱することにより溶融して、溶融した接合材69bを連結部材68と操作ワイヤ67との隙間に供給する(ステップS-6)。加熱温度は、操作ワイヤ67の材料、接合材69により適宜変更して行うことが好ましいが、例えば、接合材69としてロウ材を使用する場合は600℃~900℃で行うことが好ましく、半田を使用する場合は、300℃~500℃で行うことが好ましい。
【0043】
接合材69aの供給後、連結部材68の端部から溶融した接合材69bの染み出しがあるか否かを確認する(ステップS-7)。接合材69bの染み出しがない場合(ステップS-7:No)、接合材69aの供給を続ける。
【0044】
接合材69bが連結部材68の端部から染み出した場合(ステップS-7:Yes)、連結部材68の端部の操作ワイヤ67の線径が所定値以上か確認する(ステップS-8)。ここでの線径は、接合材69bにより被覆された状態のものである。線径が所定値に達しない場合(ステップS-8:No)、接合材69aの供給を続ける。
【0045】
線径が所定値に達した場合(ステップS-8:Yes)、接合材69aの供給を停止し(ステップS-9)、連結部材68の加熱を停止して接合を終了する。
【0046】
本実施の形態の方法によれば、
図4eに示すように、接合領域67cの隣接領域67dには、酸化物67aが残存するため、接合材69bの濡れ広がりを防止することができる。隣接領域67dの酸化物67aは、接合材69bの濡れ広がり防止領域として機能する。
【0047】
図5は、本発明の実施の形態に係る操作ワイヤの接合方法を説明する図である。
図5に示すように、連結部材68の供給孔68aから供給された接合材69は、連結部材68の端部から染み出し、操作ワイヤ67の酸化物67aが残存する隣接領域67dまで広がる。接合材69は、隣接領域67dと接する側を頂点とするコーン形状のフィレットを形成するが、本実施の形態によれば、接合領域の隣接領域67dを局所加熱することにより、操作ワイヤ67の接合領域の硬質長の制御を容易に行うことができる。
【0048】
以上の説明では、操作ワイヤ67同士の接合について説明したが、操作ワイヤ67と機能部材63との接合も同様に行うことにより、硬質長の制御を容易に行うことができる。
【0049】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表し、かつ記述した特定の詳細及び代表的な実施の形態に限定されるものではない。従って、添付のクレーム及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【実施例0050】
以下、本実施の形態に係る操作ワイヤの接合方法について、実施例に基づき説明する。
【0051】
[使用した部材]
・連結部材:材料(SUS304)、サイズ(外径1.03mm、内径0.85mm、長さ7mm、供給孔幅mm)
・操作ワイヤ:材料(SUS304)、サイズ(径0.62mm、撚り数7×7、長さ100mm)
・接合材:材料(銀ロウ)、サイズ(径0.3mm、長さ32mm)
【0052】
(実施例)
連結部材の貫通孔に操作ワイヤの接合端部を当接させて挿入した状態で、連結部材の端面から左右に3mmの位置にレーザーを照射して、400℃~500℃で2秒間加熱した。連結部材および操作ワイヤにフラックスを塗付し、連結部材の供給孔からレーザーで600~900℃に加熱して溶解した接合材を供給した(
図5参照)。ロウ材供給後、レーザー照射位置を、連結部材の端面の左右4mmの位置まで1mm/秒の速度で3往復移動させて連結部材および操作ワイヤを加熱し、接合材を濡れ広げた。接合材硬化後に、連結部材の左右端部からの硬質長を測定した。結果を表1に示す。3回測定した平均は、1.9mmであった。
【0053】
(比較例)
操作ワイヤの局所加熱を行わない以外は、実施例と同じ部材、条件で操作ワイヤを接合し、連結部材の左右端部からの硬質長を測定した。結果を表1に示す。3回測定した平均は、3.7mmであった。
【0054】
【0055】
上記の結果では、酸化物を形成した実施例では、比較例に比べて平均52%の長さに硬質長を抑えられることがわかった。