(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180443
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】測量システム及び測量方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20231214BHJP
G01C 15/06 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G01C15/00 104D
G01C15/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093775
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】591284601
【氏名又は名称】株式会社演算工房
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】森野 弘之
(72)【発明者】
【氏名】網谷 一之
(72)【発明者】
【氏名】山本 信吾
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳
(72)【発明者】
【氏名】林 稔
(57)【要約】
【課題】
トータルステーションを用いた自動計測を素早く正確に行うことができる測量システム及び測量方法を提供する。
【解決手段】トンネルの坑内で使用する建設機械の位置情報を、トンネルに配置されたトータルステーション(TS2)を用いて建設機械に搭載された複数のターゲット(建機ターゲット1a、1b)を自動視準して測量する測量システムであって、トンネルの出来形情報に基づいて、建設機械の配置が想定される複数のサーチ範囲を設定する測量サーバ5と、建設機械に搭載され、サーチ範囲の選択入力を受け付ける測量指示端末3と、を具備し、TS2は、前記測量指示端末によって選択入力を受け付けた前記サーチ範囲に応じた左右のサーチ角度内で前記ターゲットを自動視準する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの坑内で使用する建設機械の位置情報を、前記トンネルに配置されたトータルステーションを用いて前記建設機械に搭載された複数のターゲットを自動視準して測量する測量システムであって、
前記トンネルの出来形情報に基づいて、前記建設機械の配置が想定される複数のサーチ範囲を設定する測量サーバと、
前記建設機械に搭載され、前記サーチ範囲の選択入力を受け付ける測量指示端末と、を具備し、
前記トータルステーションは、前記測量指示端末によって選択入力を受け付けた前記サーチ範囲に応じた左右のサーチ角度内で前記ターゲットを自動視準することを特徴とする測量システム。
【請求項2】
前記測量サーバは、前記建設機械の種別毎に異なる前記サーチ範囲を設定し、
前記トータルステーションは、前記測量指示端末によって選択入力を受け付けた前記サーチ範囲と、前記サーチ範囲の選択入力を受け付けた前記測量指示端末が搭載された前記建設機械の種別とに応じた左右のサーチ角度内で前記ターゲットを自動視準することを特徴とする請求項1記載の測量システム。
【請求項3】
前記測量サーバは、前記建設機械の種別毎に上下方向で異なる前記サーチ範囲を設定し、
前記トータルステーションは、前記測量指示端末によって選択入力を受け付けた前記サーチ範囲と、前記サーチ範囲の選択入力を受け付けた前記測量指示端末が搭載された前記建設機械の種別とに応じた上下左右のサーチ角度内で前記ターゲットを自動視準することを特徴とする請求項2記載の測量システム。
【請求項4】
前記ターゲットは、視準面を開閉するシャッタ機構を備え、
前記測量指示端末は、前記トータルステーションの視準動作に応じて1個の前記ターゲットを順次開状態とすることを特徴とする請求項1記載の測量システム。
【請求項5】
トンネルの坑内で使用する建設機械の位置情報を、前記トンネルに配置されたトータルステーションを用いて前記建設機械に搭載された複数のターゲットを自動視準して測量する測量方法であって、
前記トンネルの出来形情報に基づいて、前記建設機械の配置が想定される複数のサーチ範囲を設定し、
前記建設機械に搭載された測量指示端末によって前記サーチ範囲の選択入力を受け付け、
前記トータルステーションは、前記測量指示端末によって選択入力を受け付けた前記サーチ範囲に応じた左右のサーチ角度内で前記ターゲットを自動視準することを特徴とする測量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル坑内で使用する建設機械の位置座標を計測する測量システム及び測量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル坑内で使用するドリルジャンボ等の建設機械に位置座標を持たせる場合、複数のプリズムを建設機械に搭載し、トータルステーションによって複数のプリズムの位置を測定する必要がある(例えば、特許文献1参照)。測定した複数のプリズムの位置は、プリズム間の距離が予め設定された値と合致した場合、計測対象の建設機械のものと判断される。そして、複数のプリズムの位置によって、建設機械は、トンネル内における位置座標と、トンネル計画線に対する姿勢(ピッチング角、ローリング角及びヨーイング角)とを位置情報として認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トンネル坑内では、複数の建設機械が使用され、各建設機械の位置座標をそれぞれ計測することが求められている。例えば、切羽付近に並列設置された複数の建設機械で並列自動運転を行う場合、複数の建設機械のいずれにも位置情報(位置座標+姿勢)を与える必要がある。
【0005】
しかしながら、複数の建設機械が並列設置される場合、異なる建設機械に搭載されたプリズムが狭い角度に並んでいる状態となる。従って、トータルステーションで自動計測を行う場合、どのプリズムが同一の建設機械に搭載されものかを判断できず、測定エラーになることが多い。また、トータルステーションによる自動計測は、光の反射具合からプリズムを探す仕組みとなっているため、計測対象のプリズム以外の反射物を検知し、時間を要してしまい、最短の時間で測定することができない。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消し、複数の建設機械が並列設置される場合でも、トータルステーションを用いた自動計測を素早く正確に行うことができる測量システム及び測量方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の測量システムは、トンネルの坑内で使用する建設機械の位置情報を、前記トンネルに配置されたトータルステーションを用いて前記建設機械に搭載された複数のターゲットを自動視準して測量する測量システムであって、前記トンネルの出来形情報に基づいて、前記建設機械の配置が想定される複数のサーチ範囲を設定する測量サーバと、前記建設機械に搭載され、前記サーチ範囲の選択入力を受け付ける測量指示端末と、を具備し、前記トータルステーションは、前記測量指示端末によって選択入力を受け付けた前記サーチ範囲に応じた左右のサーチ角度内で前記ターゲットを自動視準することを特徴とする。
さらに、本発明の測量システムにおいて、前記測量サーバは、前記建設機械の種別毎に異なる前記サーチ範囲を設定し、前記トータルステーションは、前記測量指示端末によって選択入力を受け付けた前記サーチ範囲と、前記サーチ範囲の選択入力を受け付けた前記測量指示端末が搭載された前記建設機械の種別とに応じた左右のサーチ角度内で前記ターゲットを自動視準しても良い。
さらに、本発明の測量システムにおいて、前記測量サーバは、前記建設機械の種別毎に上下方向で異なる前記サーチ範囲を設定し、前記トータルステーションは、前記測量指示端末によって選択入力を受け付けた前記サーチ範囲と、前記サーチ範囲の選択入力を受け付けた前記測量指示端末が搭載された前記建設機械の種別とに応じた上下左右のサーチ角度内で前記ターゲットを自動視準しても良い。
さらに、本発明の測量システムにおいて、前記ターゲットは、視準面を開閉するシャッタ機構を備え、前記測量指示端末は、前記トータルステーションの視準動作に応じて1個の前記ターゲットを順次開状態としても良い。
また、本発明の測量方法は、トンネルの坑内で使用する建設機械の位置情報を、前記トンネルに配置されたトータルステーションを用いて前記建設機械に搭載された複数のターゲットを自動視準して測量する測量方法であって、前記トンネルの出来形情報に基づいて、前記建設機械の配置が想定される複数のサーチ範囲を設定し、前記建設機械に搭載された測量指示端末によって前記サーチ範囲の選択入力を受け付け、前記トータルステーションは、前記測量指示端末によって選択入力を受け付けた前記サーチ範囲に応じた左右のサーチ角度内で前記ターゲットを自動視準することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の建設機械が並列設置される場合でも、トータルステーションは、照射角度を限定できるため、建設機械に搭載されたターゲットを素早く正確に視準でき、トータルステーションを用いた自動計測を素早く正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る測量システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す測量指示端末及び測量サーバの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す測量指示端末の範囲受付画面例を示す図である。
【
図4】
図2に示すサーチ範囲情報例を示す図である。
【
図5】本発明に係る測量システムによる測量動作を説明するシーケンス図である。
【
図6】
図2に示すサーチ範囲情報の変形例を示す図である。
【
図7】
図2に示すサーチ範囲情報の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
本実施形態の測量システムは、トンネル坑内で使用するドリルジャンボ等の建設機械10のトンネル内における位置座標と、トンネル計画線に対する姿勢(ピッチング角、ローリング角及びヨーイング角)とを位置情報として測量するシステムである。測量システムは、
図1を参照すると、建設機械10に搭載された建機ターゲット1と、建機ターゲット1を視準するトータルステーション(以下、TSと称す)2と、建設機械10に搭載され、TS2に建機ターゲット1の視準を指示する測量指示端末3と、建設機械10に搭載され、建設機械10のピッチング角を計測する傾斜計4と、TS2による建機ターゲット1の計測結果を管理する測量サーバ5とを備える。TS2と、測量指示端末3と、測量サーバ5とは、いずれも無線LAN等の通信機能を備えており、直接もしくは間接的に通信可能に構成されている。
【0011】
建機ターゲット1は、TS2から投射された測距測角用の光を反射してTS2へ送り返す視準面(プリズム)と、視準面を開閉するシャッタ機構とを備える。建機ターゲット1のシャッタ機構は、測量指示端末3によって開閉制御される。
【0012】
建機ターゲット1は、2個(1a、1b)がドリルジャンボ等の建設機械10に左右方向に間隔をおいて搭載されている。
図1に示す例では、2台の建設機械10
1、10
2がトンネル坑内の切羽付近に並列設置され、建設機械10
1には、2個の建機ターゲット1a
1、1b
1が、建設機械10
2には、2個の建機ターゲット1a
2、1b
2がそれぞれ搭載されている。
【0013】
TS2は、建機ターゲット1を視準(距測角用の光を建機ターゲット1に向けて投射し、その反射光を受光)することで、建機ターゲット1との距離を測定する光波測距儀としての機能と、建機ターゲット1との角度を測定するセオドライトとしての機能を備える。また、TS2は、サーチ範囲内に存在する建機ターゲット1を自動的に視準する自動視準機能と、建機ターゲット1を自動追尾する自動追尾機能とを備える。
【0014】
TS2は、例えば、測量指示端末31からの計測指示通知を受信すると、測量サーバ5によって指定されたサーチ範囲内に存在する建機ターゲット1を自動的に視準する第1視準動作を実行し、視準に成功すると、第1視準成功通知を測量指示端末31に送信する。TS2は、第1視準成功通知を送信した後、サーチ範囲内に存在する建機ターゲット1を自動的に視準する第2視準動作を実行し、視準に成功すると、第2視準成功通知を測量指示端末31に送信すると共に、第1視準動作及び第2視準動作による計測結果(角度及び距離)を測量サーバ5に送信する。
【0015】
測量指示端末3は、プログラム制御で動作するコンピュータ等の情報処理装置であり、各建設機械10に搭載されている。測量指示端末3は、例えば、タブレット型端末装置、携帯端末装置等で構成される。
図1に示す例では、建設機械10
1には、測量指示端末3
1が、建設機械10
2には、測量指示端末3
2がそれぞれ搭載されている。
【0016】
測量指示端末3は、
図2を参照すると、入力部31と、出力部32と、端末記憶部33と、端末通信部34と、端末制御部35と、を備える。入力部31と出力部32は、例えば、各種指示入力の受付とデータの表示とを兼ね備えるタッチパネルである。
【0017】
端末記憶部33は、半導体メモリやHDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段であり、建機IDが記憶される。建機IDは、測量指示端末3が搭載された建設機械10を特定する識別情報である。
【0018】
端末通信部34は、LAN等のネットワークを介して、TS2及び測量サーバ5との間で各種データを送受信するデータ通信機能を有する。
【0019】
端末制御部35は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータ等の情報処理部である。ROMには測量指示端末3の動作制御を行うための制御プログラムが記憶されている。端末制御部35は、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、範囲受付部351、シャッタ開閉部352、計測指示送信部353として機能する。
【0020】
範囲受付部351は、
図3に示すような範囲受付画面6を出力部32に表示させる。範囲受付画面6には、建設機械10の建機ターゲット1a、1bのサーチ範囲を選択入力する範囲選択ボタン61と、計測開始を指示する計測開始ボタン62とがレイアウトされている。
図3に示すの画面例では、範囲選択ボタン61は、切羽に向かって「左範囲」、「中範囲」、「右範囲」のいずれかのサーチ範囲を選択する。範囲受付部351は、範囲選択ボタン61及び計測開始ボタン62の操作に基づいて、サーチ範囲の選択入力と計測指示とを受け付ける。
【0021】
建機ターゲット1a、1bのシャッタは、待機時に閉状態であり、シャッタ開閉部352は、範囲受付部351が計測指示の入力を受け付けると、一方(建機ターゲット1a)のシャッタを開状態とすると共に、他方(建機ターゲット1b)のシャッタを閉状態に維持する。次に、TS2から第1視準成功通知を受信すると、シャッタ開閉部352は、一方(建機ターゲット1a)のシャッタを閉状態とすると共に、他方(建機ターゲット1b)のシャッタを開状態にする。次に、TS2から第2視準成功通知を受信すると、シャッタ開閉部352は、両方(建機ターゲット1a、1b)のシャッタを待機時の閉状態とする。
【0022】
計測指示送信部353は、範囲受付部351が計測指示を受け付けると、計測指示通知をTS2と他の測量指示端末3とに送信する。他の測量指示端末3は、計測指示通知を受信すると、計測指示の入力の受け付けを停止する。
【0023】
また、計測指示送信部353は、範囲受付部351が計測指示を受け付けると、建機IDと、選択入力を受け付けたサーチ範囲と、傾斜計4で計測された建設機械10の傾斜角と、を測量サーバ5に送信する。
【0024】
測量サーバ5は、プログラム制御で動作するコンピュータ等の情報処理装置であり、事務所等の拠点に設けられる。測量サーバ5は、例えば、ディスクトップ型端末装置等で構成される。
【0025】
測量サーバ5は、
図2を参照すると、サーバ記憶部51と、サーバ通信部52と、サーバ制御部53と、を備える。
【0026】
サーバ記憶部51は、半導体メモリやHDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段であり、トンネル情報(線形情報、断面情報)511、建機情報512、サーチ範囲情報513が記憶される。
【0027】
トンネル情報511は、掘削指示書において指示されたトンネル計画線等の掘削指示情報と、実際に掘削されたトンネル出来形情報(トンネル線形情報、断面情報)と、トンネル坑内の既知点の位置座標と、TS2が設置された器械点座標と、を含む。なお、トンネル出来形情報は、トンネルのCIM(Construction Information Modeling/Management)総合管理システム7とのリンクによって適時に更新される。また、過去分の器械点座標は、新たな器械点座標によって基準点の位置座標として随時追加される。
【0028】
建機情報512は、建設機械10の建機IDと、建設機械10の種別と、建機ターゲット1a、1bの搭載位置と、を含む。
【0029】
サーチ範囲情報513は、建設機械10の設置状況を想定して設定された、建機ターゲット1を自動視準するサーチ範囲を示す情報である。本実施形態において、サーチ範囲情報513は、
図4に示すように、切羽付近に並列設置された2台の建設機械10を想定して設定される「左範囲」、「右範囲」と、切羽付近に単独設置された1台の建設機械10を想定して設定される「中範囲」と、を含む。
【0030】
サーバ通信部52は、LAN等のネットワークを介して、TS2及び測量指示端末3との間で各種データを送受信するデータ通信機能を有する。
【0031】
サーバ制御部53は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータ等の情報処理部である。ROMには測量サーバ5の動作制御を行うための制御プログラムが記憶されている。サーバ制御部53は、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、サーチ範囲設定部531、位置情報算出部532として機能する。
【0032】
サーチ範囲設定部531は、トンネル出来形情報が更新されると、更新されたトンネル出来形情報に基づいて、サーチ範囲情報513(「左範囲」、「右範囲」、「中範囲」)を設定する。なお、
図4に示す例は、サーチ範囲情報513として3つのサーチ範囲を設定したが、サーチ範囲の数や領域は、建設機械10の想定される配置に応じて適宜設定できる。また、サーチ範囲設定部531は、測量指示端末3からサーチ範囲を受信すると、サーチ範囲に対応する左右のサーチ角度をTS2に送信する。
【0033】
位置情報算出部532は、TS2の第1視準動作及び第2視準動作による計測結果(角度及び距離)と、傾斜計4で計測された建設機械10の傾斜角とに基づいて、建設機械10におけるトンネル内における位置座標と、トンネル計画線に対する姿勢(ピッチング角、ローリング角及びヨーイング角)とを位置情報として算出する。位置情報算出部532によって算出された位置情報は、建設機械10の車両制御システム8に送信され、建設機械10は、トンネル内における位置情報を認識できる。
【0034】
次に、TS2を用いた建設機械10
1の測量方法について
図5を参照して詳細に説明する。
まず、オペレータは、切羽付近で使用する建設機械10
1を視認可能な位置にTS2を設置し、位置座標が既知である複数の基準点を視準することで、TS2の器械点座標を確定させる。TS2による基準点の計測結果は、測量サーバ5に送信され、TS2は、計測指示通知の受信を待機する待機状態となる。
【0035】
TS2による基準点の計測結果を受信すると、測量サーバ5のサーバ制御部53は位置情報算出部532として機能し、基準点の位置座標を用いてTS2の器械点座標を算出する。算出された器械点座標は、トンネル情報511としてサーバ記憶部51として記憶される。
【0036】
操縦者は、建設機械101を切羽付近の作業位置に配置すると、測量指示端末31を操作して建設機械101の測量を指示する。測量指示端末31の範囲受付部351は、出力部32に表示された範囲受付画面6において、範囲選択ボタン61の操作による建設機械101(建機ターゲット1a1、1b1)のサーチ範囲の選択入力を受け付けて(ステップS101)、計測開始ボタン62の操作による計測指示を受け付ける(ステップS102)。
【0037】
ステップS102で計測指示を受け付けると、計測指示送信部353は、計測指示通知をTS2と他の測量指示端末3とに送信すると共に、建機IDと、選択入力を受け付けたサーチ範囲と、傾斜計41で計測された建設機械101の傾斜角と、を測量サーバ5に送信する。なお、計測指示通知は、他の測量指示端末32にも送信され、他の測量指示端末32は、計測指示通知を受信すると、計測指示の入力の受け付けを停止する。
【0038】
また、ステップS102で計測指示を受け付けると、シャッタ開閉部352は、一方(建機ターゲット1a1)のシャッタを開状態とすると共に、他方(建機ターゲット1b1)のシャッタを閉状態に維持する(ステップS103)。
【0039】
測量サーバ5のサーチ範囲設定部531は、ステップS102で測量指示端末31からサーチを受信すると(ステップS104)、ステップS102で受信したサーチ範囲に対応する左右のサーチ角度をTS2に送信する。
【0040】
TS2は、ステップS102で計測指示を受け付けると、測量サーバ5から受信した左右のサーチ角度内に存在する建機ターゲット1を自動的に視準する第1視準動作を実行する(ステップS105)。
【0041】
第1視準動作では、一方(建機ターゲット1a1)のシャッタのみが開状態であり、TS2は、一方(建機ターゲット1a1)の視準に成功すると、第1視準成功通知を測量指示端末31に送信する。第1視準動作において、照射角度を限定できると共に、視準対象を建機ターゲット1a1に限定できるため、TS2は、素早く正確に建機ターゲット1a1を視準できる。
【0042】
測量指示端末3のシャッタ開閉部352は、TS2からの第1視準成功通知を受信すると、一方(建機ターゲット1a1)のシャッタを閉状態とすると共に、他方(建機ターゲット1b1)のシャッタを開状態にする(ステップS106)。
【0043】
次に、TS2は、ステップS102で計測指示を受け付けると、測量サーバ5から受信した左右のサーチ角度内に存在する建機ターゲット1を自動的に視準する第2視準動作を実行する(ステップS107)。第2視準動作において、照射角度を限定できると共に、視準対象を建機ターゲット1bに限定できるため、TS2は、素早く正確に建機ターゲット1bを視準できる。
【0044】
第2視準動作では、他方(建機ターゲット1b1)のシャッタのみが開状態であり、TS2は、他方(建機ターゲット1b1)の視準に成功すると、第2視準成功通知を測量指示端末31に送信する。
【0045】
測量指示端末3のシャッタ開閉部352は、TS2からの第2視準成功通知を受信すると、両方(建機ターゲット1a1、1b1)のシャッタを閉状態とする待機状態に移行し(ステップS108)、一連の動作を終了する。
【0046】
次に、TS2は、第1視準動作及び第2視準動作による計測結果(角度及び距離)を測量サーバ5に送信し(ステップS109)、一連の動作を終了する。
【0047】
測量サーバ5の位置情報算出部532は、ステップS109でTS2から計測結果を受信すると、位置情報として算出し(ステップS110)、一連の動作を終了する。位置情報は、測量サーバ5から建設機械101の車両制御システム8に送信され、建設機械101は、トンネル内における位置情報を認識できる。位置情報算出部532は、ステップS109で受信したTS2の第1視準動作及び第2視準動作による計測結果(角度及び距離)と、ステップS102で受信した傾斜計41で計測された建設機械101の傾斜角に基づいて、建設機械101におけるトンネル内における位置座標と、トンネル計画線に対する姿勢(ピッチング角、ローリング角及びヨーイング角)とを位置情報として算出する。
【0048】
なお、本実施形態は、2個の建機ターゲットと、傾斜計4とを用いて建設機械10の位置情報を測量したが、3個の建機ターゲット1を用いて建設機械10の位置情報を測量しても良い。この場合も、3個の建機ターゲット1の内の一つのみのシャッタを開状態として順次視準動作するとよい。傾斜計4によって計測される傾斜角度は、3個の建機ターゲットを用いることで算出できる。
【0049】
トンネル情報511としてトンネル坑内に配置された計測用ターゲットの位置座標を記憶しておき、サーチ範囲設定部531は、計測用ターゲットを避けてサーチ範囲情報513(「左範囲」、「右範囲」、「中範囲」)を設定すると良い。この場合、TS2の照射角度内から計測用ターゲットを除外できるため、TS2は、素早く正確に目的の建機ターゲット1を視準できる。
【0050】
また、測量サーバ5は、トンネル情報511として計測用ターゲットの位置座標を記憶しておくと良い。計測用ターゲットの位置座標が既知である場合、測量サーバ5は、TS2によって建機ターゲット1を自動視準した建設機械10が計測用ターゲットを避ける走行ルートを算出できる。測量サーバ5は、TS2によって建機ターゲット1を自動視準した建設機械10が測量後の他の建設機械10を避ける走行ルートを算出しても良い。測量サーバ5によって算出された走行ルートは、走行案内として測量指示端末3に提供しても良く、自動走行のために建設機械10の車両制御システム8に提供しても良い。
【0051】
サーチ範囲設定部531は、建設機械10の種別毎に異なるサーチ範囲情報513(「左範囲」、「右範囲」、「中範囲」)を設定すると良い。例えば、サーチ範囲設定部531は、
図6に示すように、建設機械10(種別A、B、C)の想定される作業領域毎にサーチ範囲A
1~3、B
1~2、C
1~4をする。この場合、サーチ範囲設定部531は、測量指示端末3からサーチ範囲及び機器IDを受信すると、サーチ範囲及び建機IDに対応する左右のサーチ角度をTS2に送信する。これにより、建設機械10の種別に応じたサーチ範囲に限定できるため、TS2は、より素早く正確に目的の建機ターゲット1を視準できる。
【0052】
さらに、サーチ範囲設定部531は、上下方向のサーチ範囲も建設機械10の種別毎に異なるサーチ範囲情報513として設定すると良い。例えば、サーチ範囲設定部531は、
図7に示すように、建設機械10(種別A、B、C)に搭載された建機ターゲット1a、1bの高さに応じた上下方向のサーチ範囲A
1~3、B
1~2、C
1~4をする。この場合も、サーチ範囲設定部531は、測量指示端末3からサーチ範囲及び機器IDを受信すると、サーチ範囲及び建機IDに対応する上下左右のサーチ角度をTS2に送信する。これにより、建設機械10の種別に応じた上下方向のサーチ範囲を限定できるため、TS2は、さらに素早く正確に目的の建機ターゲット1を視準できる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態は、トンネルの坑内で使用する建設機械10の位置情報を、トンネルに配置されたトータルステーション(TS2)を用いて建設機械10に搭載された複数のターゲット(建機ターゲット1a、1b)を自動視準して測量する測量システムであって、トンネルの出来形情報に基づいて、建設機械10の配置が想定される複数のサーチ範囲を設定する測量サーバ5と、建設機械10に搭載され、サーチ範囲の選択入力を受け付ける測量指示端末3と、を具備し、TS2は、前記測量指示端末によって選択入力を受け付けた前記サーチ範囲に応じた左右のサーチ角度内で前記ターゲットを自動視準する。
この構成により、複数の建設機械が並列設置される場合でも、TS2は、照射角度を限定できるため、素早く正確に建機ターゲット1を視準でき、TS2を用いた自動計測を素早く正確に行うことができる。
【0054】
さらに、本実施形態において、測量サーバ5は、建設機械10の種別毎に異なるサーチ範囲を設定し、TS2、測量指示端末3によって選択入力を受け付けたサーチ範囲と、サーチ範囲の選択入力を受け付けた測量指示端末3が搭載された建設機械10の種別とに応じた左右のサーチ角度内で建機ターゲット1a、1bを自動視準する。
この構成により、建設機械10の種別に応じたサーチ範囲に限定できるため、TS2は、より素早く正確に目的の建機ターゲット1を視準できる。
【0055】
さらに、本実施形態において、測量サーバ5は、建設機械10の種別毎に上下方向で異なるサーチ範囲を設定し、TS2は、測量指示端末3によって選択入力を受け付けたサーチ範囲と、サーチ範囲の選択入力を受け付けた測量指示端末3が搭載された建設機械10の種別とに応じた上下左右のサーチ角度内で建機ターゲット1a、1bを自動視準する。
この構成により、建設機械10の種別に応じた上下方向のサーチ範囲を限定できるため、TS2は、さらに素早く正確に目的の建機ターゲット1を視準できる。
【0056】
さらに、本実施形態において、建機ターゲット1a、1bは、視準面を開閉するシャッタ機構を備え、測量指示端末3は、TS2の視準動作に応じて建機ターゲット1a、1bを順次開状態とする。
この構成により、TS2は、視準対象を1個の建機ターゲットに限定できるため、素早く正確に建機ターゲットを視準できる。
【0057】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0058】
1、1a、1b 建機ターゲット
2 トータルステーション(TS)
3 測量指示端末
4 傾斜計
5 測量サーバ
6 範囲受付画面
7 CIM総合管理システム
8 車両制御システム
10 建設機械
31 入力部
32 出力部
33 端末記憶部
34 端末通信部
35 端末制御部
51 サーバ記憶部
52 サーバ通信部
53 サーバ制御部
61 範囲選択ボタン
62 計測開始ボタン
351 範囲受付部
352 シャッタ開閉部
353 計測指示送信部
511 トンネル情報
512 建機情報
513 サーチ範囲情報
531 サーチ範囲設定部
532 位置情報算出部