(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180445
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20231214BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/02 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093778
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】小林 清高
(72)【発明者】
【氏名】岡田 将孝
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200FA02
2H200GA12
2H200GA16
2H200GA30
2H200GA34
2H200GA45
2H200GA47
2H200GB22
2H200GB23
2H200HA03
2H200HA28
2H200HA29
2H200HB12
2H200HB48
2H200NA09
2H200PA02
2H200PB24
2H200PB38
2H270KA04
2H270KA09
2H270LA01
2H270LA04
2H270LA32
2H270LA40
2H270LA95
2H270MA01
2H270MA41
2H270MB27
2H270MH06
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】簡易かつ安価な構成でOPCドラムの摩耗量を精度よく算出する。
【解決手段】画像形成装置(1)には、モノクロ用OPCドラム(21B)と、カラー用OPCドラム(21A)と、カラー用OPCドラムの感光層(29A)の表面を帯電させる帯電器(22A)と、トナー及びキャリアを含んだ現像剤を使用して現像する現像器(23A)と、カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量を算出する算出部(42)と、が設けられている。帯電器は、モノクロ印刷中のカラー用OPCドラムの感光層を、当該カラー用OPCドラムへのトナー付着及びキャリア付着を抑える表面電位に帯電させている。算出部は、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中のカラー用OPCドラムの感光層の摩耗量を少なく算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクロ用OPCドラムとカラー用OPCドラムを備えた画像形成装置であって、
前記カラー用OPCドラムの感光層の表面を帯電させる帯電器と、
トナー及びキャリアを含んだ現像剤を使用して現像する現像器と、
前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量を算出する算出部と、を備え、
前記帯電器は、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を、当該カラー用OPCドラムへのトナー付着及びキャリア付着を抑える表面電位に帯電させ、
前記算出部は、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量を少なく算出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記帯電器は、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を10[V]-150[V]に帯電させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
モノクロ用OPCドラムとカラー用OPCドラムを備えた画像形成装置であって、
前記カラー用OPCドラムの感光層の表面を帯電させる帯電器と、
トナー及びキャリアを含んだ現像剤を使用して現像する現像器と、
前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量を算出する算出部と、を備え、
前記帯電器は、カラー印刷中の表面電位よりも低く、かつモノクロ印刷中とカラー印刷中とで前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量の変化が抑えられる表面電位に、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を帯電させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記帯電器は、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を300[V]-400[V]に帯電させることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
モノクロ用OPCドラムとカラー用OPCドラムを備えた画像形成装置であって、
前記カラー用OPCドラムの感光層の表面を帯電させる帯電器と、
トナー及びキャリアを含んだ現像剤を使用して現像する現像器と、
前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量を算出する算出部と、を備え、
前記帯電器は、前記カラー用OPCドラムの感光層の膜厚が薄くなるのに伴って低くなるように、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を帯電させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記カラー用OPCドラムの感光層が第1の膜厚の場合に、前記帯電器は、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層をカラー印刷中と同じ第1の表面電位に帯電させ、
前記カラー用OPCドラムの感光層が第1の膜厚よりも薄い第2の膜厚の場合に、前記帯電器は、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を第1の表面電位よりも低く、かつモノクロ印刷中とカラー印刷中とで前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量の変化が抑えられる第2の表面電位に帯電させ、
前記カラー用OPCドラムの感光層が第2の膜厚よりも薄い第3の膜厚の場合に、前記帯電器は、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を第2の表面電位よりも低く、かつ前記カラー用OPCドラムへのトナー付着及びキャリア付着を抑える第3の表面電位に帯電させ、
モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層が第3の表面電位に帯電された場合に、前記算出部は、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量を少なく算出することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置において、感光体ドラムの表面を均一に帯電させる方式として、コロナ放電器を用いたコロナ放電方式と、帯電ローラー等に代表される導電性の帯電部材を用いた接触帯電方式が知られている。コロナ放電方式ではオゾン等のコロナ生成物が多く発生するので、オゾンによって空気中の成分が分解されてNOxやSOx等のイオン生成物が生成される。このため、近年では、オフィス環境の改善を目指して、コロナ放電方式に代えて、オゾン、NOx、SOx等の発生を抑えることができる接触帯電方式が採用されている。
【0003】
接触帯電方式では、感光体ドラムの表面付近で放電されることで帯電されるが、この放電によって感光体ドラムの感光層の摩耗が促進される。特に、感光体ドラムとして単層のOPC(有機感光体)ドラムが用いられる場合、感光層が摩耗すると静電容量が増大して、最適な静電潜像を形成するためにOPCドラムの表面に与えるべき電荷量が変化する。また、感光層の摩耗によって放電開始電圧が変化するため、一定の表面電位を維持しながら長期間に亘って安定した画像を形成するためには、感光層の膜厚に応じた帯電電圧を印加する必要がある。
【0004】
OPCドラムの摩耗の進行速度は、帯電部材への帯電電圧の印加状態、すなわちOPCドラムと帯電部材の間の帯電バイアスの印加状態によって異なる。このため、OPCドラムの摩耗量が単にOPCドラムの累積回転回数を用いた比例計算によって算出されると、OPCドラムの駆動状態や表面電位(印加電圧)によっては摩耗量の算出精度が悪化するおそれがある。摩耗量の算出方法としては、感光体ドラムの感光層と帯電ローラーとの間に流れる帯電電流に基づいて感光層の摩耗量を算出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カラー電子写真方式の画像形成装置には、モノクロ用OPCドラムとカラー用OPCドラムが設けられている。モノクロ印刷中にカラー用OPCドラムと転写ベルトが摺擦する構成では、電気特性の悪化に伴う性能劣化を抑えるためにカラー用OPCドラムにも帯電電圧を印加する必要がある。カラー用OPCドラムの表面電位によってはトナーやキャリアが消費されたり、感光層が過剰に摩耗したりする。このため、カラー用OPCドラムの表面電位を制御することが望ましいが、表面電位の変化によって感光層の摩耗量を精度よく算出することが難しくなる。
【0007】
特許文献1に記載の算出方法によって、感光体ドラムと帯電ローラーの間の帯電電流から感光層の摩耗量を算出することができるが、帯電電流を検出するための電流センサー等の専用のセンサーを画像形成装置に追加しなければならない。また、モノクロ印刷中に転写ベルトからカラー用OPCドラムを離間させて、カラー用OPCドラムの駆動を止めることで、上記の不具合を解消することができるが、画像形成装置の構成が複雑になると共にコストが増加するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、簡易かつ安価な構成でOPCドラムの摩耗量を精度よく算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様の画像形成装置は、モノクロ用OPCドラムとカラー用OPCドラムを備えた画像形成装置であって、前記カラー用OPCドラムの感光層の表面を帯電させる帯電器と、トナー及びキャリアを含んだ現像剤を使用して現像する現像器と、前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量を算出する算出部と、を備え、前記帯電器は、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を、当該カラー用OPCドラムへのトナー付着及びキャリア付着を抑える表面電位に帯電させ、前記算出部は、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量を少なく算出する。
【0010】
上記の第1の態様の画像形成装置において、前記帯電器は、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を10[V]-150[V]に帯電させる。
【0011】
本発明の第2の態様の画像形成装置は、モノクロ用OPCドラムとカラー用OPCドラムを備えた画像形成装置であって、前記カラー用OPCドラムの感光層の表面を帯電させる帯電器と、トナー及びキャリアを含んだ現像剤を使用して現像する現像器と、前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量を算出する算出部と、を備え、前記帯電器は、カラー印刷中の表面電位よりも低く、かつモノクロ印刷中とカラー印刷中とで前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量の変化が抑えられる表面電位に、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を帯電させる。
【0012】
上記の第2の態様の画像形成装置において、前記帯電器は、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を300[V]-400[V]に帯電させる。
【0013】
本発明の第3の態様の画像形成装置は、モノクロ用OPCドラムとカラー用OPCドラムを備えた画像形成装置であって、前記カラー用OPCドラムの感光層の表面を帯電させる帯電器と、トナー及びキャリアを含んだ現像剤を使用して現像する現像器と、前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量を算出する算出部と、を備え、前記帯電器は、前記カラー用OPCドラムの感光層の膜厚が薄くなるのに伴って低くなるように、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を帯電させる。
【0014】
上記の第3の態様の画像形成装置において、前記カラー用OPCドラムの感光層が第1の膜厚の場合に、前記帯電器は、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層をカラー印刷中と同じ第1の表面電位に帯電させ、前記カラー用OPCドラムの感光層が第1の膜厚よりも薄い第2の膜厚の場合に、前記帯電器は、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を第1の表面電位よりも低く、かつモノクロ印刷中とカラー印刷中とで前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量の変化が抑えられる第2の表面電位に帯電させ、前記カラー用OPCドラムの感光層が第2の膜厚よりも薄い第3の膜厚の場合に、前記帯電器は、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層を第2の表面電位よりも低く、かつ前記カラー用OPCドラムへのトナー付着及びキャリア付着を抑える第3の表面電位に帯電させ、モノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層が第3の表面電位に帯電された場合に、前記算出部は、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中の前記カラー用OPCドラムの感光層の摩耗量を少なく算出する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の態様の構成によれば、モノクロ印刷中にカラー用OPCドラムの感光層が帯電され、電気特性の悪化に伴う感光層の性能劣化が抑えられる。また、感光層の表面電位によってトナーやキャリア等の現像剤の消費が抑えられる。カラー印刷中よりもモノクロ印刷中の感光層の表面電位が低いため、放電による感光層の過剰な摩耗が抑えられる。カラー印刷中とモノクロ印刷中の表面電位の違いを考慮して感光層の摩耗量が精度よく算出され、専用のセンサーや離接機能等を画像形成装置に追加する必要がない。感光層の膜厚に応じた電圧が印加されることで、カラー印刷時のカブリ現像を抑えて画像品質を向上できる。
【0016】
本発明の第2の態様の構成によれば、モノクロ印刷中にカラー用OPCドラムの感光層が帯電され、電気特性の悪化に伴う感光層の性能劣化が抑えられる。また、現像器に現像電圧を印加して感光層と現像器の電位差を調整すれば、トナーやキャリア等の現像剤の消費が抑えられる。カラー印刷中と比べてモノクロ印刷中の感光層の表面電位が低く帯電されており、現像器の劣化を抑えることができる。モノクロ印刷中とカラー印刷中とでカラー用OPCドラムの感光層の摩耗量の変化が抑えられるため、簡易な算出方法を用いて感光層の摩耗量が算出され、専用のセンサーや離接機能等を画像形成装置に追加する必要がない。感光層の膜厚に応じた電圧が印加されることで、カラー印刷時のカブリ現像を抑えて画像品質を向上できる。
【0017】
本発明の第3の態様の構成によれば、モノクロ印刷中にカラー用OPCドラムの感光層が帯電され、電気特性の悪化に伴う感光層の性能劣化が抑えられる。また、現像器に現像電圧を印加して感光層と現像器の電位差を調整すれば、トナーやキャリア等の現像剤の消費が抑えられる。感光層の膜厚に合わせて帯電電圧を変えることで、帯電電圧の印加によって狙いの表面電位を得ることができる。感光層の表面電位によっては、簡易な算出方法を用いて感光層の摩耗量が算出され、専用のセンサーや離接機能等を画像形成装置に追加する必要がない。感光層の膜厚に応じた電圧が印加されることで、カラー印刷時のカブリ現像を抑えて画像品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態のプリンターの模式図である。
【
図2】第1の実施形態の画像形成ユニットの拡大模式図である。
【
図3】感光層の表面電位と帯電器の印加電圧の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照しつつ、第1の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、画像形成装置としてプリンターを例示して説明する。
図1は、第1の実施形態のプリンターの模式図である。
図2は、第1の実施形態の画像形成ユニットの拡大模式図である。なお、各図に適宜付される矢印Fr、Re、U、Loは、それぞれプリンターの前側、後側、上側、下側を示している。また、以下の説明において、画像形成ユニットを区別するときにはA、Bを付し、画像形成ユニットを区別しないときにはA、Bを省略する。
【0020】
図1に示すように、プリンター1は、各種機器が収容された箱型形状のハウジング10を備えている。ハウジング10の下部にはシート束がセットされる給紙カセット11が収容され、ハウジング10の上部には画像形成済みのシートが積み重ねられる排紙トレイ12が設けられている。排紙トレイ12の下方にはトナーが収容されたトナーコンテナ13がトナーの色(例えば、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色)毎に着脱可能にセットされている。複数のトナーコンテナ13の下方には、一対のローラー14、15に掛け渡された中間転写ベルト16が設けられている。
【0021】
中間転写ベルト16の下側には、中間転写ベルト16の搬送方向にモノクロ用又はカラー用の画像形成ユニット17が並んでいる。各画像形成ユニット17には、中間転写ベルト16に転接する単層のOPC(有機感光体:Organic Photo Conductor)ドラム21が回転可能に設けられている。各OPCドラム21の周囲には、帯電器22と、現像器23と、1次転写ローラー24と、除電部25と、クリーニング装置26とが1次転写のプロセス順に設置されている。各現像器23の撹拌室にはキャリアが収容されており、各トナーコンテナ13から供給されたトナーとキャリアが撹拌されて2成分現像剤が作られている。
【0022】
各画像形成ユニット17の下方には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)によって構成される露光装置18が設けられている。ハウジング10内の側部には、複数のローラーによって給紙カセット11から排紙トレイ12に向かうシートの搬送経路L1が形成されている。搬送経路L1の上流側(下側)には給紙部31が設けられ、搬送経路L1において給紙部31よりも下流側には中間転写ベルト16の側端に2次転写ローラー32が設けられている。搬送経路L1において2次転写ローラー32の下流側には定着装置33が設けられ、搬送経路L1の下流端側(上側)には排紙口34が設けられている。
【0023】
プリンター1の画像形成時には、帯電器22によってOPCドラム21の表面が帯電された後、露光装置18からのレーザー光によってOPCドラム21の表面に静電潜像が形成される。次に、現像器23からOPCドラム21の表面の静電潜像にトナーが付着されてトナー像が形成され、OPCドラム21の表面から中間転写ベルト16の表面にトナー像が1次転写される。各画像形成ユニット17において各色のトナー像が中間転写ベルト16に1次転写されることで、中間転写ベルト16の表面にフルカラーのトナー像が形成される。OPCドラム21に残留した電荷と廃トナーは除電部25及びクリーニング装置26によって除去される。
【0024】
一方で、給紙部31によって給紙カセット11又は手差しトレイ(不図示)からシートが取り込まれ、上記の画像形成動作にタイミングを合わせて2次転写ローラー32に向けてシートが搬送される。2次転写ローラー32によって中間転写ベルト16の表面からシートの表面にフルカラーのトナー像が2次転写され、2次転写ローラー32の下流の定着装置33に向けて転写済みのシートが搬送される。定着装置33においてシートにトナー像が定着され、定着済みのシートが排紙口34から排紙トレイ12上に排出される。このように、シートに転写されたトナー像が定着装置33を通過することによってシートの表面に画像が形成される。
【0025】
図2に示すように、プリンター1は、カラー印刷及びモノクロ印刷に対応しており、カラー用の画像形成ユニット17Aとモノクロ用の画像形成ユニット17Bが並んでいる。画像形成ユニット17AのOPCドラム(カラー用OPCドラム)21Aの表面が単層の感光層29Aによって形成され、同様に画像形成ユニット17BのOPCドラム(モノクロ用OPCドラム)21Bの表面が単層の感光層29Bによって形成されている。カラー印刷中には画像形成ユニット17A、17Bを用いて画像形成処理が実施され、モノクロ印刷中には画像形成ユニット17Bを用いて画像形成処理が実施される。
【0026】
プリンター1ではモノクロ印刷中でもカラー用のOPCドラム21Aと中間転写ベルト16等が接触している。モノクロ印刷中にOPCドラム21Aを帯電させないと、OPCドラム21Aの性能が劣化して、次回のカラー印刷時にOPCドラム21Aの表面電位を適切に制御できない。このとき、現像器23Aはトナーとキャリアを含む現像剤を使用して現像しており、感光層29Aの表面電位が低すぎるとプラスに帯電したトナーが引き寄せられ、感光層29Aの表面電位が高すぎるとマイナスに帯電したキャリアが引き寄せられる。このため、トナー付着とキャリア付着が起きない程度に感光層29Aが帯電されている。
【0027】
ところで、カラー印刷中にOPCドラム21Aの表面電位を一定に維持するためには、感光層29Aの膜厚に応じた帯電電圧を印加する必要がある。OPCドラム21Aの表面がオーバーコート無しの単層の感光層29Aで形成され、OPCドラム21Aの帯電時の放電によって感光層29Aが摩耗して膜厚が変化する。通常、感光層29Aの摩耗量はOPCドラム21Aの回転回数と摩耗レートを乗算することで求められる。この算出方法では、カラー印刷中とモノクロ印刷中でOPCドラム21Aの感光層29Aの表面電位が変化すると、感光層29Aの摩耗量を精度よく算出することができない。
【0028】
そこで、プリンター1では、カラー印刷中とモノクロ印刷中におけるOPCドラム21Aの感光層29Aの表面電位の違いを考慮して感光層29Aの摩耗量を算出している。画像形成ユニット17A、17Bにはコントローラー41が接続されており、コントローラー41には算出部42が設けられている。コントローラー41は、装置各部を統括制御しており、例えば帯電器22Aや現像器23Aの電源回路や各ローラーの駆動モータ等を制御している。算出部42は、次式(1)からOPCドラム21Aの感光層29Aの摩耗量を算出している。
式(1)
摩耗量=OPCドラムの回転回数×削れレート×補正係数
【0029】
なお、コントローラー41は、プロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサを用いる場合には、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶装置によって構成されている。
【0030】
ここで、算出部42による算出処理について説明する。モノクロ印刷中の帯電器22AはOPCドラム21Aの感光層29Aを、OPCドラム21Aへのトナー付着及びキャリア付着を抑える表面電位に帯電させている。すなわち、モノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が、トナーの付着が治まる電位よりも高く、キャリアの付着が起こる電位よりも低くなっている。具体的には、カラー印刷中の感光層29Aの表面電位が500[V]-700[V]に設定されているのに対して、モノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が10[V]-150[V]に設定されている。
【0031】
カラー印刷中よりもモノクロ印刷中にOPCドラム21Aの感光層29Aの表面電位が低くいため、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中の感光層29Aの実際の摩耗量が少ない。このため、算出部42は、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中のOPCドラム21Aの感光層29Aの摩耗量を少なく算出している。具体的には、カラー印刷中には式(1)の補正係数に1.0の値が設定されるのに対して、モノクロ印刷中には式(1)の補正係数に0.5-0.8の値が設定される。カラー印刷中とモノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位の違いを考慮して、算出部42によって感光層29Aの摩耗量が精度よく算出されている。
【0032】
カラー印刷中及びモノクロ印刷中のOPCドラム21Aの感光層29Aの摩耗量から感光層29Aの膜厚が求められる。よって、カラー印刷時には感光層29Aの膜厚に応じた帯電電圧を印加することで、感光層29Aを狙いの表面電位に維持しながら画像形成し、カブリ現像を抑えて画像品質を向上させることができる。特に、上記の算出部42による算出処理は、感光層29の膜厚が10[μm]以上変化し、印加電圧が100[V]以上変化する長寿命(例えば、A4サイズのシートを150000枚縦通しで印字可能)のOPCドラム21に有効である。
【0033】
以上、第1の実施形態によれば、モノクロ印刷中にカラー用のOPCドラム21Aの感光層29Aが帯電され、電気特性の悪化に伴う感光層29Aの性能劣化が抑えられる。また、感光層29Aの表面電位によってトナーやキャリア等の現像剤の消費が抑えられる。カラー印刷中よりもモノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が低いため、放電による感光層29Aの過剰な摩耗が抑えられる。カラー印刷中とモノクロ印刷中の表面電位の違いを考慮して感光層29Aの摩耗量が精度よく算出され、専用のセンサーや離接機能等をプリンター1に追加する必要がない。感光層29Aの膜厚に応じた電圧が印加されることで、カラー印刷時のカブリ現像を抑えて画像品質を向上できる。
【0034】
<第2の実施形態>
続いて、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態のプリンターは、カラー印刷中とモノクロ印刷中で感光層の摩耗量を変化させない点で第1の実施形態のプリンターと相違している。したがって、第2の実施形態については、第1実施形態と同様な構成については説明を省略する。また、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明する。
【0035】
第2の実施形態においても、モノクロ印刷中に帯電器22AがOPCドラム21Aの感光層29Aを帯電させている。モノクロ印刷中の感光層29Aは、カラー印刷中の感光層29Aの表面電位よりも低く、かつモノクロ印刷中とカラー印刷中とで感光層29Aの摩耗量の変化が抑えられる表面電位に帯電されている。感光層29Aの摩耗量の変化が抑えられることで、式(1)の削れレートの補正が不要になる。具体的には、カラー印刷中の感光層29Aの表面電位が500[V]-700[V]に設定されているのに対して、モノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が300[V]-400[V]に設定されている。
【0036】
モノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が300[V]程度に設定されているため、感光層29Aにキャリアが付着しないように現像器23Aには現像電圧Vdcが印加されている。感光層29Aと現像器23Aの電位差による力よりも現像ローラーの磁力が強く、感光層29Aへのキャリアの引き寄せが抑えられている。また、モノクロ印刷中のカラートナーの劣化を抑えるため現像器23Aが停止され、現像器23Aの停止中に電圧が印加されることで現像ローラーに異常が発生する場合がある。このため、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が低く設定されている。
【0037】
カラー印刷中とモノクロ印刷中とでOPCドラム21Aの感光層29Aの摩耗量の変化が小さいため、算出部42によってカラー印刷中の感光層29Aの摩耗量と同様にモノクロ印刷中の感光層29Aの摩耗量が算出される。具体的には、カラー印刷中もモノクロ印刷中も式(1)の補正係数に1.0の値が設定される。カラー印刷中及びモノクロ印刷中のOPCドラム21Aの感光層29Aの摩耗量から感光層29Aの膜厚が求められる。よって、カラー印刷時には感光層29Aの膜厚に応じた帯電電圧を印加することで、感光層29Aを狙いの表面電位に維持しながら画像形成して画像品質を向上できる。
【0038】
以上、第2の実施形態によれば、モノクロ印刷中にカラー用のOPCドラム21Aの感光層29Aが帯電され、電気特性の悪化に伴う感光層29Aの性能劣化が抑えられる。また、現像器23Aに現像電圧Vdcを印加して感光層29Aと現像器23Aの電位差を調整すれば、トナーやキャリア等の現像剤の消費が抑えられる。カラー印刷中と比べてモノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が低く帯電されて現像器23Aの劣化を抑えられる。モノクロ印刷中とカラー印刷中とで感光層29Aの摩耗量の変化が抑えられるため、簡易な算出方法を用いて感光層29Aの摩耗量が算出され、専用のセンサーや離接機能等をプリンター1に追加する必要がない。感光層29Aの膜厚に応じた電圧が印加されることで、カラー印刷時のカブリ現像を抑えて画像品質を向上できる。
【0039】
<第3の実施形態>
続いて、第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態のプリンターは、OPCドラムの感光層の膜厚に応じて感光層の表面電位を変化させる点で第1の実施形態のプリンターと相違している。したがって、第3の実施形態については、第1の実施形態と同様な構成については説明を省略する。また、第3の実施形態においては、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明する。
【0040】
図3に示すように、OPCドラムの感光層の膜厚毎に感光層の表面電位と帯電器22の印加電圧の関係が変化している。破線W1に示す薄膜ドラムでは、全体的に表面電位と印加電圧が略リニアに変化しており、印加電圧によって感光層29を狙った表面電位に設定することができる。一方で、一点鎖線W2及び実線W3に示す厚膜ドラムでは、表面電位が所定電位以下になると、表面電位と印加電圧がリニアに変化しなくなって、印加電圧によって感光層29を所定電位以下の表面電位に設定することが難しい。このため、感光層29の膜厚に応じて表面電位を変化させることが望ましい。
【0041】
第3の実施形態においても、モノクロ印刷中に帯電器22AがOPCドラム21Aの感光層29Aを帯電させている。モノクロ印刷中の感光層29Aは、感光層29Aの膜厚が薄くなるのに伴って低くなるように帯電される。具体的には、感光層29Aの膜厚が33[μm]以上では、感光層29Aの表面電位が500[V]-700[V]に設定される。感光層29Aの膜厚が30[μm]以上で33[μm]未満では、感光層29Aの表面電位が300[V]-400[V]に設定される。感光層29Aの膜厚が30[μm]未満では、感光層29Aの表面電位が10[V]-150[V]に設定される。
【0042】
例えば、感光層29Aの膜厚が33[μm]の場合、500[V]以上の表面電位であれば、表面電位と印加電圧が略リニアに変化して、印加電圧によって狙った表面電位に感光層29Aを帯電させることができる。このため、カラー印刷中もモノクロ印刷中も感光層29Aが同じ表面電位に帯電されている。モノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が500[V]程度に設定されているため、感光層29Aにキャリアが付着しないように現像器23Aには現像電圧Vdcが印加されている。なお、モノクロ印刷中にカラー用の現像器23Aを逆回転させてキャリアを回収してもよい。
【0043】
感光層29Aの膜厚が30[μm]以上で33[μm]未満の場合、300[V]以上の表面電位であれば、表面電位と印加電圧が略リニアに変化して、印加電圧によって狙った表面電位に感光層29Aを帯電させることができる。この場合、第2の実施形態と同様に、モノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が300[V]程度に設定されているため、感光層29Aにキャリアが付着しないように現像器23Aには現像電圧Vdcが印加されている。また、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が低く設定されることで現像ローラーの異常が抑えられている。
【0044】
感光層29Aの膜厚が30[μm]未満の場合、全体的に表面電位と印加電圧が略リニアに変化して、印加電圧によって狙った表面電位に感光層29Aを帯電させることができる。この場合、第1の実施形態と同様に、モノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が10[V]-150[V]に設定されているため、感光層29Aへのトナー付着及びキャリア付着が抑えられている。感光層29Aの表面電位が低く設定されているため、モノクロ印刷中の感光層29Aの摩耗量が少なくなっている。このように、感光層29Aの表面電位が膜厚に応じて段階的に変化されている。
【0045】
感光層29Aの膜厚が33[μm]以上の場合、モノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が、カラー印刷中の感光層29Aと同じ表面電位に帯電されている。感光層29Aの膜厚が30[μm]以上で33[μm]未満の場合、モノクロ印刷中の感光層29Aの表面電位が、カラー印刷中の感光層29Aの表面電位よりは低い表面電位に帯電されているが、モノクロ印刷中とカラー印刷中とで感光層29Aの摩耗量の変化が小さい。このため、算出部42によってカラー印刷中の感光層29Aの摩耗量と同様にモノクロ印刷中の感光層29Aの摩耗量が算出される。具体的には、カラー印刷中もモノクロ印刷中も式(1)の補正係数に1.0の値が設定される。
【0046】
一方で、感光層29Aの膜厚が30[μm]未満の場合、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中の感光層29Aの実際の摩耗量が少なくなる。このため、算出部42は、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中のOPCドラム21Aの感光層29Aの摩耗量を少なく算出している。具体的には、カラー印刷中には式(1)の補正係数に1.0の値が設定されるのに対して、モノクロ印刷中には式(1)の補正係数に0.5-0.8の値が設定される。カラー印刷中及びモノクロ印刷中のOPCドラム21Aの感光層29Aの摩耗量から感光層29Aの膜厚が求められる。
【0047】
このように、感光層29Aが第1の膜厚(33[μm]以上)の場合には、帯電器22Aはモノクロ印刷中の感光層29Aをカラー印刷中と同じ第1の表面電位(500[V]-700[V])に帯電させている。感光層29Aが第1の膜厚よりも薄い第2の膜厚(30[μm]以上で33[μm]未満)の場合には、第2の実施形態と同様に感光層29Aが帯電されている。この場合、帯電器22Aは、モノクロ印刷中の感光層29Aを第1の表面電位よりも低く、かつモノクロ印刷中とカラー印刷中とで感光層29Aの摩耗量の変化が抑えられる第2の表面電位(300[V]-400[V])に帯電させている。
【0048】
感光層29Aが第2の膜厚よりも薄い第3の膜厚(30[μm]未満)の場合には、第1の実施形態と同様に感光層29Aが帯電されている。この場合、帯電器22Aは、モノクロ印刷中の感光層29Aを第2の表面電位よりも低く、かつOPCドラム21Aへのトナー付着及びキャリア付着を抑える第3の表面電位(10[V]-150[V])に帯電させている。そして、モノクロ印刷中に感光層29Aが第3の表面電位に帯電された場合には、算出部42は、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中の感光層29Aの摩耗量を少なく算出して、感光層29Aの膜厚が精度よく求められる。
【0049】
以上、第3の実施形態によれば、モノクロ印刷中にOPCドラム21Aの感光層29Aが帯電され、電気特性の悪化に伴う感光層29Aの性能劣化が抑えられる。また、現像器23Aに現像電圧Vdcを印加して感光層29Aと現像器23Aの電位差を調整すれば、トナーやキャリア等の現像剤の消費が抑えられる。感光層29Aの膜厚に合わせて帯電電圧を変えることで、帯電電圧の印加によって狙いの表面電位を得ることができる。感光層29Aの表面電位によっては、簡易な算出方法を用いて感光層29Aの摩耗量が算出され、専用のセンサーや離接機能等をプリンター1に追加する必要がない。感光層29Aの膜厚に応じた電圧が印加されることで、カラー印刷時のカブリ現像を抑えて画像品質を向上できる。
【0050】
なお、第1、第3の実施形態において、算出部は補正係数を変更して、カラー印刷中よりもモノクロ印刷中のOPCドラムの感光層の摩耗量を少なく算出しているが、摩耗量の算出方法は特に限定されない。
【0051】
また、本実施形態において、記録メディアの種類は特に限定されず、例えば、普通紙、コート紙、トレーシングペーパー、OHP(Over Head Projector)シートでもよい。
【0052】
また、本実施形態では、画像形成装置として、プリンターを例示したが、この構成に限定されない。画像形成装置は、コピー機及びファクシミリの他、プリント機能、コピー機能及びファックス機能等を複合的に備えた複合機でもよい。
【0053】
なお、本実施形態を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0054】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方によって実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0055】
1 :プリンター(画像形成装置)
21 :OPCドラム
22 :帯電器
23 :現像器
29 :感光層
42 :算出部