(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180446
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20231214BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20231214BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20231214BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231214BHJP
G03G 15/06 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/02 102
G03G15/16 101
G03G21/00 370
G03G15/06 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093779
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】小林 清高
(72)【発明者】
【氏名】岡田 将孝
【テーマコード(参考)】
2H073
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H073AA09
2H073BA13
2H073BA23
2H073BA41
2H073CA03
2H073CA22
2H200GA12
2H200GA45
2H200GA47
2H200GA49
2H200GB12
2H200GB22
2H200GB25
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB28
2H200HB43
2H200JA02
2H200JB06
2H200JB20
2H200JC03
2H200JC12
2H200LA27
2H200LB02
2H200LB09
2H200LB12
2H200LB13
2H200MA04
2H200PA05
2H200PB04
2H200PB38
2H270KA04
2H270KA09
2H270KA22
2H270KA28
2H270KA32
2H270LA02
2H270LA40
2H270LA94
2H270MB27
2H270MC15
2H270MC29
2H270ZC06
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】画像形成装置の使用環境が変化しても、画像形成開始時や画像形成終了時にトナー付着及びキャリア付着を起こすことなく感光体ドラムの表面電位を適切に制御する。
【解決手段】画像形成装置(1)には、表面が感光層(29)によって形成された感光体ドラム(21)と、帯電印加電圧が印加されて感光体ドラムの表面を帯電させる帯電器(22)と、現像印加電圧が印加されて感光体ドラムにトナーを供給する現像器(23)と、帯電印加電圧の印加動作及び現像印加電圧の印加動作を制御する制御部(41)と、が設けられている。制御部は、画像形成開始時及び/又は画像形成終了時に帯電印加電圧及び現像印加電圧を段階的に調整して、感光体ドラムの表面電位と現像器の現像電位の電位差を一定範囲に収めた状態で表面電位及び現像電位を目標電位まで制御する。使用環境に応じて段階毎に帯電印加電圧が調整される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー及びキャリアを含む現像剤を使用する画像形成装置であって、
表面が感光層によって形成された感光体ドラムと、
帯電印加電圧が印加されて前記感光体ドラムの表面を帯電させる帯電器と、
現像印加電圧が印加されて前記感光体ドラムにトナーを供給する現像器と、
帯電印加電圧の印加動作及び現像印加電圧の印加動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、画像形成開始時及び/又は画像形成終了時に帯電印加電圧及び現像印加電圧を段階的に調整して、前記感光体ドラムの表面電位と前記現像器の現像電位の電位差を一定範囲に収めた状態で表面電位及び現像電位を目標電位まで制御し、
使用環境に応じて段階毎に帯電印加電圧が調整されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
使用環境に加えて前記感光層の膜厚に応じて段階毎に帯電印加電圧が調整されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
帯電印加電圧の調整には調整テーブルが用いられ、当該調整テーブルには使用環境に応じて表面電位の大きさ毎に複数の調整値が設定され、
複数の調整値に基づいて帯電印加電圧が段階的に調整されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
帯電印加電圧の調整には前記感光層の膜厚毎の複数の調整テーブルが用いられ、当該複数の調整テーブルには使用環境に応じて表面電位の大きさ毎に複数の調整値が設定され、
複数の調整値に基づいて帯電印加電圧が段階的に調整されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記感光層の膜厚が薄くなるのに従って、帯電印加電圧と表面電位が低い段階でリニアに変化するように、前記複数の調整テーブルには段階毎に調整値が設定されていることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置では、感光体ドラムを帯電させた後に、露光によって感光体ドラムの表面に静電潜像を形成し、静電潜像にトナーを付着させてトナー像が現像されている。このような画像形成装置では、画像形成開始時や画像形成終了時に、感光体ドラムの表面電位と現像器の現像電位の電位差によっては感光体ドラムの表面にトナー又はキャリアが付着する。このため、トナー付着及びキャリア付着が起こらないように、感光体ドラムの表面電位と現像器の現像電位を数段階に分けて目標電位まで制御する画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の画像形成装置では、感光体ドラムの表面電位を精度よく調整することが難しい。画像形成装置の温湿度等の使用環境が変化すると、狙った表面電位を得るために必要な印加電圧が変化する。このため、使用環境の影響を受け難いスコロトロン帯電器を用いることも考えられるが、スコロトロン帯電器は帯電ローラーを用いた場合と比較してオゾンの発生量が多くなる。また、感光体ドラムの表面電位を測定する電位計を用いることも考えられるが、電位計は機械サイズが大きくなると共にコストが増加するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、画像形成装置の使用環境が変化しても、画像形成開始時や画像形成終了時にトナー付着及びキャリア付着を起こすことなく感光体ドラムの表面電位を適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の画像形成装置は、トナー及びキャリアを含む現像剤を使用する画像形成装置であって、表面が感光層によって形成された感光体ドラムと、帯電印加電圧が印加されて前記感光体ドラムの表面を帯電させる帯電器と、現像印加電圧が印加されて前記感光体ドラムにトナーを供給する現像器と、帯電印加電圧の印加動作及び現像印加電圧の印加動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、画像形成開始時及び/又は画像形成終了時に帯電印加電圧及び現像印加電圧を段階的に調整して、前記感光体ドラムの表面電位と前記現像器の現像電位の電位差を一定範囲に収めた状態で表面電位及び現像電位を目標電位まで制御し、使用環境に応じて段階毎に帯電印加電圧が調整される。
【0007】
上記の画像形成装置において、使用環境に加えて前記感光層の膜厚に応じて段階毎に帯電印加電圧が調整される。
【0008】
上記の画像形成装置において、帯電印加電圧の調整には調整テーブルが用いられ、当該調整テーブルには使用環境に応じて表面電位の大きさ毎に複数の調整値が設定され、複数の調整値に基づいて帯電印加電圧が段階的に調整される。
【0009】
上記の画像形成装置において、帯電印加電圧の調整には前記感光層の膜厚毎の複数の調整テーブルが用いられ、当該複数の調整テーブルには使用環境に応じて表面電位の大きさ毎に複数の調整値が設定され、複数の調整値に基づいて帯電印加電圧が段階的に調整される。
【0010】
上記の画像形成装置において、前記感光層の膜厚が薄くなるのに従って、帯電印加電圧と表面電位が低い段階でリニアに変化するように、前記複数の調整テーブルには段階毎に調整値が設定されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様の構成によれば、感光体ドラムの表面電位と現像器の現像電位の電位差が一定範囲に収められた状態で表面電位と現像電位がそれぞれの目標電圧に近づけられる。よって、画像形成開始時や画像形成終了時に感光体ドラムの表面に対するトナー付着及びキャリア付着が抑えられている。また、画像形成装置の使用環境に応じた帯電印加電圧が帯電器に印加されることで、画像形成装置の使用環境が変化しても、トナー付着及びキャリア付着を起こすことなく感光体ドラムの表面電位を適切に制御できる。また、電位計等が不要になってコストの増加や装置サイズが大型化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態のプリンターの模式図である。
【
図2】機外温度毎の帯電印加電圧に対する表面電位の変化を示す図である。
【
図3】第1の実施形態の画像形成ユニットの拡大模式図である。
【
図4】第1の実施形態の調整テーブルの一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態の調整テーブルの一例を示す図である。
【
図6】表面電位及び現像電位の立ち上げ処理の一例を示す説明図である。
【
図7】膜厚毎の帯電印加電圧に対する表面電位の変化を示す図である。
【
図8】第2の実施形態の調整テーブルの一例を示す図である。
【
図9】第2の実施形態の調整テーブルの一例を示す図である。
【
図10】第2の実施形態の調整テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照しつつ、第1の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、画像形成装置としてプリンターを例示して説明する。
図1は、第1の実施形態のプリンターの模式図である。
図2は、機外温度毎の帯電印加電圧に対する表面電位の変化を示す図である。
図3は、第1の実施形態の画像形成ユニットの拡大模式図である。なお、各図に適宜付される矢印Fr、Re、U、Loは、それぞれプリンターの前側、後側、上側、下側を示している。
【0014】
図1に示すように、プリンター1は、各種機器が収容された箱型形状のハウジング10を備えている。ハウジング10の下部にはシート束がセットされる給紙カセット11が収容され、ハウジング10の上部には画像形成済みのシートが積み重ねられる排紙トレイ12が設けられている。排紙トレイ12の下方にはトナーが収容されたトナーコンテナ13がトナーの色(例えば、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色)毎に着脱可能にセットされている。複数のトナーコンテナ13の下方には、一対のローラー14、15に掛け渡された中間転写ベルト16が設けられている。
【0015】
中間転写ベルト16の下側には、中間転写ベルト16の搬送方向にモノクロ用又はカラー用の画像形成ユニット17が並んでいる。各画像形成ユニット17には、中間転写ベルト16に転接する単層の感光体ドラム21が回転可能に設けられている。各感光体ドラム21の周囲には、帯電器22と、現像器23と、1次転写ローラー24と、除電部25と、クリーニング装置26とが1次転写のプロセス順に設置されている。各現像器23の撹拌室にはキャリアが収容されており、各トナーコンテナ13から供給されたトナーとキャリアが撹拌されて2成分現像剤が作られている。
【0016】
各画像形成ユニット17の下方には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)によって構成される露光装置18が設けられている。ハウジング10内の側部には、複数のローラーによって給紙カセット11から排紙トレイ12に向かうシートの搬送経路L1が形成されている。搬送経路L1の上流側(下側)には給紙部31が設けられ、搬送経路L1において給紙部31よりも下流側には中間転写ベルト16の側端に2次転写ローラー32が設けられている。搬送経路L1において2次転写ローラー32の下流側には定着装置33が設けられ、搬送経路L1の下流端側(上側)には排紙口34が設けられている。
【0017】
プリンター1の画像形成時には、帯電器22によって感光体ドラム21の表面が帯電された後、露光装置18からのレーザー光によって感光体ドラム21の表面に静電潜像が形成される。次に、現像器23から感光体ドラム21の表面の静電潜像にトナーが付着されてトナー像が形成され、感光体ドラム21の表面から中間転写ベルト16の表面にトナー像が1次転写される。各画像形成ユニット17において各色のトナー像が中間転写ベルト16に1次転写されることで、中間転写ベルト16の表面にフルカラーのトナー像が形成される。感光体ドラム21に残留した電荷と廃トナーは除電部25及びクリーニング装置26によって除去される。
【0018】
一方で、給紙部31によって給紙カセット11又は手差しトレイ(不図示)からシートが取り込まれ、上記の画像形成動作にタイミングを合わせて2次転写ローラー32に向けてシートが搬送される。2次転写ローラー32によって中間転写ベルト16の表面からシートの表面にフルカラーのトナー像が2次転写され、2次転写ローラー32の下流の定着装置33に向けて転写済みのシートが搬送される。定着装置33においてシートにトナー像が定着され、定着済みのシートが排紙口34から排紙トレイ12上に排出される。このように、シートに転写されたトナー像が定着装置33を通過することによってシートの表面に画像が形成される。
【0019】
ところで、プリンター1の画像形成開始時や画像形成終了時には、感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差によってはトナー付着及びキャリア付着が生じる。感光体ドラム21の表面電位が現像器23の現像電位に対して低すぎるとプラスに帯電したトナーが引き寄せられ、感光体ドラム21の表面電位が現像器23の現像電位に対して高すぎるとマイナスに帯電したキャリアが引き寄せられる。このため、トナー付着及びキャリア付着が生じないように、感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が一定範囲に収められた状態で表面電位及び現像電位が目標電位まで段階的に立ち上げ又は立ち下げられている。
【0020】
帯電器22に帯電印加電圧が印加されることで感光体ドラム21の表面電位が制御され、現像器23に現像印加電圧が印加されることで現像器23の現像電位が制御される。プリンター1の機外温度や機外湿度等の使用環境によっては、感光体ドラム21の表面電位は帯電印加電圧に対してリニアに変化しなくなる。特に、機外温度や機外湿度が低い環境では、帯電印加電圧が低い領域で感光体ドラム21の表面電位が帯電印加電圧に対して曲線的に変化する。一方で、現像器23の現像電位は、プリンター1の使用環境に関わらず、現像印加電圧に対して全体的に略リニアに変化する。
【0021】
例えば、
図2の破線W1に示すように機外温度が27℃よりも高い場合、帯電印加電圧と感光体ドラム21の表面電位が略リニアに変化して感光体ドラム21を狙った表面電位に制御することができる。一方で、
図2の一点鎖線W2に示すように機外温度が14℃よりも高く27℃以下の場合や、
図2の実線W3に示すように機外温度が14℃以下の場合には、帯電印加電圧が低い領域で帯電印加電圧と表面電位がリニアに変化しなくなって感光体ドラム21を狙った表面電位に制御することが難しい。そこで、本実施形態のプリンター1は、使用環境が変化しても狙った表面電位が得られるように、使用環境に応じて帯電印加電圧を調整している。
【0022】
図3から
図5を参照して、画像形成ユニットについて説明する。
図3は、第1の実施形態の画像形成ユニットの拡大模式図である。
図4及び
図5は、第1の実施形態の調整テーブルの一例を示す図である。
【0023】
図3に示すように、画像形成ユニット17の感光体ドラム21は、いわゆるOPC(有機感光体:Organic Photo Conductor)であり、感光体ドラム21の表面が単層の感光層29によって形成されている。感光体ドラム21の転写プロセスの上流に帯電位置が設けられ、帯電位置の下流に露光位置が設けられ、露光位置の下流に現像位置が設けられている。帯電位置では感光体ドラム21に帯電器22が対向し、現像位置では感光体ドラム21に現像器23が対向している。現像位置の下流では、1次転写ローラー24、除電部25、クリーニング装置26が感光体ドラム21に対向している。
【0024】
帯電器22には帯電印加電圧が印加されて、帯電位置を通過した感光体ドラム21の表面が帯電器22によって帯電される。感光体ドラム21の帯電した表面にレーザー光が照射されて、露光位置を通過した感光体ドラム21の表面に静電潜像が形成される。現像器23には現像印加電圧が印加されて、現像位置を通過した感光体ドラム21に現像器23からトナーが供給されてトナー像が形成される。なお、感光体ドラム21の表面電位及び現像器23の現像電位の立ち上げ時には露光処理が行われないため、感光体ドラム21の表面にトナー像は形成されない。
【0025】
画像形成ユニット17には、装置各部を統括制御する制御部41が接続されている。制御部41は、帯電器22や現像器23の電源回路を介して帯電印加電圧の印加動作及び現像印加電圧の印加動作を制御している。画像形成開始時及び/又は画像形成終了時に帯電印加電圧及び現像印加電圧が段階的に調整され、感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が一定範囲に収められた状態で表面電位及び現像電位が目標電位まで制御される。このとき、機外温度や機外湿度等の使用環境に応じて段階毎に帯電印加電圧が調整されている。
【0026】
帯電印加電圧の調整には調整テーブルが用いられている。調整テーブルには表面電位の大きさ毎に複数の調整値が設定され、複数の調整値に基づいて帯電印加電圧が段階的に調整されている。調整テーブルには使用環境に応じた調整値が設定されている。例えば、
図4及び
図5に示すように、本実施形態では機外湿度毎に調整テーブルが用意されており、各調整テーブルには機外温度に応じて表面電位の大きさ毎に複数の調整値が設定されている。ここでは、機外湿度や機外温度が高くなるのに従って、帯電印加電圧と表面電位が低い段階でリニアに変化するように、調整テーブルには段階毎に調整値が設定されている。感光体ドラム21の表面電位が5段階に制御されるように、各調整テーブルに4段の調整値が設定されている。
【0027】
図4に示す機外湿度が30%の調整テーブルの1段目には、機外温度が27℃よりも高い場合、機外温度が14℃よりも高く27℃以下の場合、機外温度が14℃以下の場合に分けて3つの調整値が設定されている。機外温度が27℃よりも高い場合の調整値が-490[V]、機外温度が14℃よりも高く27℃以下の場合の調整値が-530[V]、機外温度が14℃以下の場合の調整値が-600[V]に設定されている。機外温度が低くなるほど、1段目の調整値が大きくなっている。印字中の基準印加電圧から1段目の調整値が差し引かれることで、帯電印加電圧が第1印加電圧に調整される。
【0028】
機外湿度が30%の調整テーブルの2段目から4段目には、上記3つの温度領域で共通の調整値が設定されている。2段目の調整値は150[V]に設定され、3段目の調整値は130[V]に設定され、4段目の調整値は100[V]に設定されている。第1印加電圧に対して2段目の調整値が加えられることで、帯電印加電圧が第2印加電圧に調整される。第2印加電圧に対して3段目の調整値が加えられることで、帯電印加電圧が第3印加電圧に調整される。第3印加電圧に対して4段目の調整値が加えられることで、帯電印加電圧が第4印加電圧に調整される。
【0029】
第1印加電圧から第4印加電圧までの帯電印加電圧が順番に帯電器22に印加されることで、感光体ドラム21の表面電位が段階的に高くなって目標電位に近づけられる。そして、基準印加電圧が帯電器22に印加されることで、感光体ドラム21の表面電位が目標電位に制御される。このように、5段階に分けて感光体ドラム21の表面電位が目標電位まで立ち上げられている。ここでは、画像形成開始時の帯電印加電圧の調整について説明しているが、画像形成終了時にも調整テーブルを用いることで、感光体ドラム21の表面電位を目標電位まで段階的に立ち下げることができる。
【0030】
また、
図5に示す機外湿度70%の調整テーブルの1段目には、3つの温度領域で異なる調整値が設定されている。機外温度が27℃よりも高い場合の調整値が-440[V]、機外温度が14℃よりも高く27℃以下の場合の調整値が-480[V]、機外温度が14℃以下の場合が-550[V]に設定されている。機外湿度が70%の調整テーブルの2段目から4段目には、3つの温度領域で共通の調整値が設定されている。2段目の調整値は130[V]に設定され、3段目の調整値は110[V]に設定され、4段目の調整値は100[V]に設定されている。第1から第4の調整値によって帯電印加電圧が調整され、感光体ドラム21の表面電位が目標電位まで立ち上げられる。
【0031】
なお、制御部41は、プロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサを用いる場合には、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶装置によって構成されている。
【0032】
図6を参照して、感光体ドラムの表面電位及び現像器の現像電位の立ち上げ処理について説明する。
図6は、表面電位及び現像電位の立ち上げ処理の一例を示す説明図である。ここでは、機外湿度30%で機外温度が27℃よりも高い場合の一例について説明する。
【0033】
図6に示すように、画像形成開始直後は帯電器22及び現像器23には印加電圧が印加されておらず、感光体ドラム21の表面電位及び現像器23の現像電位が0[V]に設定されている。時刻t1では基準印加電圧の1000[V]と1段目の調整値の-490[V]から帯電印加電圧が510[V](第1印加電圧)に調整される。帯電器22には510[V]の帯電印加電圧が印加されて、感光体ドラム21の表面電位が100[V]に制御される。感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が100[V]になっている。
【0034】
時刻t2では帯電印加電圧の510[V]に2段目の調整値の150[V]が加えられて帯電印加電圧が660[V](第2印加電圧)に調整される。帯電器22には660[V]の帯電印加電圧が印加されて、感光体ドラム21の表面電位が200[V]に制御される。感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が200[V]になっている。時刻t3では現像器23に100[V]の現像印加電圧が印加されて、現像器23の現像電位が100[V]に制御される。感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が100[V]に調整される。なお、現像電位の立ち上げタイミングは、感光体ドラム21の帯電領域が現像位置に到達する時間分だけ、表面電位の立ち上げタイミングよりも遅れている。
【0035】
時刻t4では帯電印加電圧の660[V]に3段目の調整値の130[V]が加えられて帯電印加電圧が790[V](第3印加電圧)に調整される。帯電器22には790[V]の帯電印加電圧が印加されて、感光体ドラム21の表面電位が300[V]に制御される。感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が200[V]になっている。時刻t5では現像器23に200[V]の現像印加電圧が印加されて、現像器23の現像電位が200[V]に制御される。感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が100[V]に調整される。
【0036】
時刻t6では帯電印加電圧の790[V]に4段目の調整値の100[V]が加えられて帯電印加電圧が890[V](第4印加電圧)に調整される。帯電器22には890[V]の帯電印加電圧が印加されて、感光体ドラム21の表面電位が400[V]に制御される。感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が200[V]になっている。時刻t7では現像器23に300[V]の現像印加電圧が印加されて、現像器23の現像電位が300[V]に制御される。感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が100[V]に調整される。
【0037】
時刻t8では帯電印加電圧が1000[V](基準印加電圧)に調整される。帯電器22には1000[V]の帯電印加電圧が印加されて、感光体ドラム21の表面電位が500[V]に制御される。感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が200[V]になっている。時刻t9では現像器23に400[V]の現像印加電圧が印加されて、現像器23の現像電位が400[V]に制御される。感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が100[V]に調整される。このように、表面電位と現像電位の電位差が100[V]から200[V]に抑えられた状態で表面電位と現像電位が目標電位まで立ち上げられている。
【0038】
以上、第1の実施形態によれば、感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が一定範囲に収められた状態で表面電位と現像電位がそれぞれの目標電圧に近づけられる。よって、画像形成開始時や画像形成終了時に感光体ドラム21の表面に対するトナー付着及びキャリア付着が抑えられている。また、プリンター1の使用環境に応じた帯電印加電圧が帯電器22に印加されることで、プリンター1の使用環境が変化しても、トナー付着及びキャリア付着を起こすことなく感光体ドラム21の表面電位を適切に制御できる。また、電位計等が不要になってコストの増加や装置サイズが大型化することがない。
【0039】
<第2の実施形態>
続いて、
図7から
図10を参照して、第2の実施形態について説明する。
図7は、膜厚毎の帯電印加電圧に対する表面電位の変化を示す図である。
図8から
図10は、第2の実施形態の調整テーブルの一例を示す図である。なお、第2の実施形態のプリンターは、感光体ドラムの感光層の膜厚に応じて帯電印加電圧を調整する点で第1の実施形態のプリンターと相違している。したがって、第2の実施形態については、第1実施形態と同様な構成については説明を省略する。また、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明する。
【0040】
長寿命で低コストの感光体ドラム21の要望により、感光層29の膜厚を大きくする開発が進められている。
図7に示すように、同一の使用環境下で感光層29の膜厚が異なる感光体ドラムA-Cを比較したときに、感光層の膜厚が大きくなるほど帯電印加電圧に対して感光体ドラムの表面電位がリニアに変化しなくなる。特に、膜厚の感光体ドラムA、Bの帯電印加電圧が低い領域では帯電印加電圧に対して表面電位が曲線的に変化する。このように、同一の使用環境下であっても、感光層29の膜厚の変化に応じて、帯電印加電圧に対する表面電位の挙動が変化している。
【0041】
このため、厚膜ドラムに合わせて帯電印加電圧が調整されている場合には、感光体ドラム21の感光層29が摩耗して薄膜化すると、感光体ドラム21の表面電位の立ち上げ時や立ち下げ時に感光体ドラム21を狙った表面電位に制御できない。このため、画像形成開始時や画像形成終了時には感光体ドラム21に対してトナー付着やキャリア付着が生じる場合がある。そこで、本実施形態のプリンター1は、使用環境の変化だけでなく、感光体ドラム21の膜厚の大きさを考慮して、使用環境に加えて感光層の膜厚に応じて帯電印加電圧を調整している。
【0042】
画像形成開始時及び/又は画像形成終了時には、制御部41によって、感光体ドラム21の表面電位と現像器23の現像電位の電位差が一定範囲に収められた状態で表面電位及び現像電位が目標電位まで制御される。このとき、プリンター1の使用環境に加えて感光層29の膜厚に応じて段階毎に帯電印加電圧が調整される。帯電印加電圧の調整には感光層29の膜厚毎の複数の調整テーブルが用いられている。複数の調整テーブルには表面電位の大きさ毎に複数の調整値が設定され、複数の調整値に基づいて帯電印加電圧が段階的に調整されている。調整テーブルには使用環境に応じた調整値が設定されている。
【0043】
例えば、
図8から
図10に示すように、本実施形態では機外湿度及び膜厚毎に調整テーブルが用意されており(機外湿度が30%の調整テーブルのみ図示)、各調整テーブルには機外温度に応じて表面電位の大きさ毎に複数の調整値が設定されている。ここでは、感光層29の膜厚が薄くなるのに従って、帯電印加電圧と表面電位が低い段階でリニアに変化するように、複数の調整テーブルには段階毎に調整値が設定されている。また、感光体ドラム21の表面電位が5段階に制御されるように、各調整テーブルに4段の調整値が設定されている。
【0044】
図8に示す調整テーブルは、機外湿度が30%で膜厚が33[μm]よりも大きな場合に用いられる。調整テーブルの1段目には、3つの温度領域で異なる調整値が設定されている。機外温度が27℃よりも高い場合の調整値が-490[V]、機外温度が14℃よりも高く27℃以下の場合の調整値が-530[V]、機外温度が14℃以下の場合の調整値が-600[V]に設定されている。印字中の基準印加電圧から1段目の調整値が差し引かれることで、帯電印加電圧が第1印加電圧に調整される。なお、基準印加電圧は1000[V]に設定されている。
【0045】
調整テーブルの2段目及び3段目にも、3つの温度領域で異なる調整値が設定されている。機外温度が27℃よりも高い場合に2段目、3段目の調整値が130[V]、110[V]に設定され、機外温度が14℃よりも高く27℃以下の場合に2段目、3段目の調整値が150[V]、130[V]に設定され、機外温度が14℃以下の場合に2段目、3段目の調整値が180[V]、160[V]に設定されている。第1印加電圧に対して2段目の調整値が加えられることで、帯電印加電圧が第2印加電圧に調整される。第2印加電圧に対して3段目の調整値が加えられることで、帯電印加電圧が第3印加電圧に調整される。
【0046】
調整テーブルの4段目には、3つの温度領域で共通の調整値が設定されている。4段目の調整値は100[V]に設定されている。第3印加電圧に対して4段目の調整値が加えられることで、帯電印加電圧が第4印加電圧に調整される。第1印加電圧から第4印加電圧までの帯電印加電圧が順番に帯電器22に印加されることで、感光体ドラム21の表面電位が段階的に高くなって目標電位に近づけられる。そして、基準印加電圧が帯電器22に印加されることで、感光体ドラム21の表面電位が目標電位に制御される。感光体ドラム21の表面電位が100[V]ずつ増加して目標電位の500[V]に制御される。
【0047】
図9に示す調整テーブルは、機外湿度が30%で膜厚が25[μm]よりも大きく33[μm]以下の場合に用いられる。調整テーブルの1段目から3段目には、3つの温度領域で異なる調整値が設定されている。機外温度が27℃よりも高い場合に1段目から3段目の調整値が-480[V]、120[V]、100[V]に設定され、機外温度が14℃よりも高く27℃以下の場合に1段目から3段目の調整値が-510[V]、130[V]、110[V]に設定され、機外温度が14℃以下の場合に1段目から3段目の調整値が-570[V]、150[V]、130[V]に設定されている。調整テーブルの4段目の調整値は100[V]に設定されている。
【0048】
図10に示す調整テーブルは、機外湿度が30%で膜厚が25[μm]以下の場合に用いられる。調整テーブルの1段目及び2段目には、3つの温度領域で異なる調整値が設定されている。機外温度が27℃よりも高い場合に1段目、2段目の調整値が-470[V]、110[V]に設定され、機外温度が14℃よりも高く27℃以下の場合に1段目、2段目の調整値が-490[V]、110[V]に設定され、機外温度が14℃以下の場合に1段目、2段目の調整値が-540[V]、120[V]に設定されている。調整テーブルの3段目、4段目の調整値は、それぞれ100[V]に設定されている。
【0049】
図9及び
図10に示す調整テーブルによっても、第1から第4の調整値によって帯電印加電圧が調整される。感光体ドラム21の表面電位が100[V]ずつ増加して目標電位の500[V]まで立ち上げられる。ここでは、画像形成開始時の帯電印加電圧の調整について説明しているが、画像形成終了時にも調整テーブルを用いることで、感光体ドラム21の表面電位を500[V]から0[V]まで段階的に立ち下げることができる。また、感光体ドラム21の感光層29の膜厚が薄くなると、帯電印加電圧に対する表面電位の変化がリニアに近づくため、膜厚が薄くなるのに伴って調整テーブルの調整値が小さくなっている。
【0050】
以上、第2の実施形態によれば、プリンター1の使用環境や感光層29の膜厚に応じた帯電印加電圧が帯電器22に印加される。このため、プリンター1の使用環境や感光層29の膜厚が変化しても、トナー付着及びキャリア付着を起こすことなく感光体ドラム21の表面電位を適切に制御できる。
【0051】
なお、各実施形態において、帯電印加電圧の調整には調整テーブルが用いられているが、帯電印加電圧は使用環境や感光層の膜厚に応じて段階毎に調整されていればよい。例えば、使用環境や感光層の膜厚毎に帯電印加電圧と表面電位の関係を示す特性線を用意しておき、特性線を用いて帯電印加電圧が調整されてもよい。
【0052】
また、本実施形態において、記録メディアの種類は特に限定されず、例えば、普通紙、コート紙、トレーシングペーパー、OHP(Over Head Projector)シートでもよい。
【0053】
また、本実施形態では、画像形成装置として、プリンターを例示したが、この構成に限定されない。画像形成装置は、コピー機及びファクシミリの他、プリント機能、コピー機能及びファックス機能等を複合的に備えた複合機でもよい。
【0054】
なお、本実施形態を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0055】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方によって実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0056】
1 :プリンター(画像形成装置)
21 :感光体ドラム
22 :帯電器
23 :現像器
29 :感光層
41 :制御部