(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180455
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】電池温度調整システム
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
F25B1/00 304S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093798
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】榎島 史修
(72)【発明者】
【氏名】森 大騎
(72)【発明者】
【氏名】横井 佑樹
(57)【要約】
【課題】温度に起因する各電池セルの性能低下を好適に抑制可能な電池温度調整システムを提供する。
【解決手段】本発明の電池温度調整システムでは、圧縮機1と、第1熱交換器3と、第1~11電池セル5a~5kと、第2熱交換器7と、冷媒流路9と、膨張弁15と、第1開閉弁17と、第2開閉弁19と、制御装置25とを備えている。第2熱交換器7は、冷媒と第1~11電池セル5a~5kとの間で熱交換が可能である。制御装置25は、第1~11電池セル5a~5k同士の温度のばらつきを低減させる調温要求があれば、第1開閉弁17を第1禁止状態に切り替えて第1熱交換器3と第2熱交換器7との間で冷媒の流通を禁止するとともに、第2開閉弁19を第2禁止状態に切り替えて圧縮機1と第2熱交換器7との間で冷媒の流通を禁止する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を吸入するとともに吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
冷媒と熱交換媒体との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
複数の電池セルと、
冷媒と前記各電池セルとの間で熱交換を行う第2熱交換器と、
前記圧縮機、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器と接続し、前記圧縮機、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器の間で冷媒を循環させる冷媒流路とを備え、
前記冷媒流路において、前記第2熱交換器の一端側と前記第1熱交換器とを接続する流路は第1熱交換器側接続流路とされ、前記第2熱交換器の他端側と前記圧縮機とを接続する流路は圧縮機側接続流路とされ、
前記第1熱交換器側接続流路に配置された膨張弁と、
前記第1熱交換器側接続流路に配置され、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間で冷媒の流通を許容する第1許容状態と、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間で冷媒の流通を禁止する第1禁止状態とを切り替え可能な第1切替弁と、
前記圧縮機側接続流路に配置され、前記圧縮機と前記第2熱交換器との間で冷媒の流通を許容する第2許容状態と、前記圧縮機と前記第2熱交換器との間で冷媒の流通を禁止する第2禁止状態とを切り替え可能な第2切替弁と、
前記第1切替弁の切替制御と前記第2切替弁の切替制御とをそれぞれ行う制御装置とをさらに備え、
前記制御装置は、各電池セル同士の温度のばらつきを低減させる調温要求があれば、前記第1切替弁を前記第1許容状態から前記第1禁止状態に切り替えるとともに、前記第2切替弁を前記第2許容状態から前記第2禁止状態に切り替えることを特徴とする電池温度調整システム。
【請求項2】
前記各電池セルの温度を検出可能な複数の温度検出装置を備え、
前記制御装置は、前記各温度検出装置が検出した前記各温度の差が予め設定された閾値を超えれば、前記調温要求があると判断する請求項1記載の電池温度調整システム。
【請求項3】
前記制御装置は前記圧縮機の作動制御を行い、
前記第1切替弁及び前記第2切替弁のうち、前記冷媒流路における冷媒の流通方向の上流側に位置する前記第1切替弁又は前記第2切替弁は上流側切替弁とされる一方、冷媒の流通方向の下流側に位置する前記第1切替弁又は前記第2切替弁は下流側切替弁とされ、
前記制御装置は、前記調温要求があれば、前記下流側切替弁の切替制御と、前記圧縮機の作動停止と、前記上流側切替弁の切替制御とをこの順序で行う請求項2記載の電池温度調整システム。
【請求項4】
一端が前記第1切替弁と前記第2熱交換器との間で前記第1熱交換器側接続流路に接続するとともに他端が前記第2切替弁と前記第2熱交換器との間で前記圧縮機側接続流路に接続し、前記第2熱交換器を迂回させつつ前記冷媒流路で冷媒を循環させるバイパス流路と、
前記第1熱交換器側接続流路及び前記圧縮機側接続流路から前記バイパス流路への冷媒の流通を許容する第3許容状態と、
前記第1熱交換器側接続流路及び前記圧縮機側接続流路から前記バイパス流路への冷媒の流通を禁止する第3禁止状態とを切り替え可能な第3切替弁とを備え、
前記制御装置は、前記調温要求があれば、前記第3切替弁を前記第3禁止状態から前記第3許容状態に切り替える請求項1乃至3のいずれか1項記載の電池温度調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図5に従来の電池温度調整システムが開示されている。この電池温度調整システムは、車両、より具体的にはハイブリッド車に搭載されている。この電池温度調整システムは、圧縮機と、凝縮器と、複数の電池セルと、熱交換器と、蒸発器と、冷媒流路と、第1膨張弁と、第2膨張弁と、制御装置とを備えている。
【0003】
圧縮機は、冷媒を吸入するとともに吸入した冷媒を圧縮して吐出する。凝縮器は、冷媒と凝縮器の周囲の空気との間で熱交換を行う。各電池セルは、車両で発電された電力を充電可能である。熱交換器は、各電池セルに接して設けられており、各電池セルと冷媒との間で熱交換を行う。蒸発器は、冷媒と蒸発器の周囲の空気との間で熱交換を行う。冷媒流路は、圧縮機、凝縮器、熱交換器及び蒸発器と接続しており、圧縮機、凝縮器、熱交換器及び蒸発器の順で冷媒を循環させる。
【0004】
第1膨張弁及び第2膨張弁は、それぞれ冷媒流路に設けられている。より具体的には、第1膨張弁は、冷媒流路において凝縮器と熱交換器との間に配置されている。一方、第2膨張弁は、冷媒流路において熱交換器と蒸発器との間に配置されている。つまり、第1膨張弁は、冷媒流路における冷媒の流通方向で熱交換器の上流側に位置しており、第2膨張弁は、冷媒流路における冷媒の流通方向で熱交換器を挟んで第1膨張弁の下流側に位置している。制御装置は、第1膨張弁の開度の調整と、第2膨張弁の開度の調整とをそれぞれ行う。
【0005】
この電池温度調整システムでは、圧縮機から吐出された冷媒が凝縮器内を流通する。この際、冷媒は、凝縮器において、凝縮器の周囲の空気との熱交換によって冷却されて液化する。そして、凝縮器を経た冷媒は第1膨張弁によって減圧されつつ熱交換器内を流通する。これにより、各電池セルが熱交換器内を流通する冷媒との熱交換によって冷却される。そして、各電池セルとの熱交換を終えた冷媒は、第2膨張弁及び蒸発器を経て圧縮機に吸入される。
【0006】
また、この電池温度調整システムでは、制御装置が第1膨張弁及び第2膨張弁の開度をそれぞれ調整することにより、熱交換器内を流通する冷媒の圧力、ひいては熱交換器内を流通する冷媒の温度を調整することが可能となっている。これにより、この電池温度調整システムでは、熱交換器内を流通する冷媒と、各電池セルとの温度差を小さくしつつ熱交換器内を流通する冷媒と各電池セルとを熱交換させることにより、各電池セル同士の温度のばらつきを低減させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
各電池セルが高温であったり、低温であったりする場合だけでなく、各電池セル同士の温度のばらつきも各電池セルの性能低下の要因となる。そこで、各電池セル同士の温度のばらつきについても可及的に低減させることが求められる。しかし、上記従来の電池温度調整システムでは、冷媒が冷媒流路を循環しつつ、熱交換器において各電池セルと熱交換を行う。つまり、この電池温度調整システムでは、圧縮機から吐出されて凝縮器及び第1膨張弁を経た冷媒が熱交換器内を順次流通する。このため、たとえ各電池セルとの温度差を小さくした状態で冷媒を熱交換器内に流通させても、冷媒の流通方向の上流側に位置する電池セルと、冷媒の流通方向の下流側に位置する電池セルとでは温度差が大きくなり易い。このため、この電池温度調整システムでは、各電池セル同士の全体的な温度のばらつきを好適に低減させ難い。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、温度に起因する各電池セルの性能低下を好適に抑制可能な電池温度調整システムを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電池温度調整システムは、冷媒を吸入するとともに吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
冷媒と熱交換媒体との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
複数の電池セルと、
冷媒と前記各電池セルとの間で熱交換を行う第2熱交換器と、
前記圧縮機、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器と接続し、前記圧縮機、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器の間で冷媒を循環させる冷媒流路とを備え、
前記冷媒流路において、前記第2熱交換器の一端側と前記第1熱交換器とを接続する流路は第1熱交換器側接続流路とされ、前記第2熱交換器の他端側と前記圧縮機とを接続する流路は圧縮機側接続流路とされ、
前記第1熱交換器側接続流路に配置された膨張弁と、
前記第1熱交換器側接続流路に配置され、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間で冷媒の流通を許容する第1許容状態と、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間で冷媒の流通を禁止する第1禁止状態とを切り替え可能な第1切替弁と、
前記圧縮機側接続流路に配置され、前記圧縮機と前記第2熱交換器との間で冷媒の流通を許容する第2許容状態と、前記圧縮機と前記第2熱交換器との間で冷媒の流通を禁止する第2禁止状態とを切り替え可能な第2切替弁と、
前記第1切替弁の切替制御と前記第2切替弁の切替制御とをそれぞれ行う制御装置とをさらに備え、
前記制御装置は、各電池セル同士の温度のばらつきを低減させる調温要求があれば、前記第1切替弁を前記第1許容状態から前記第1禁止状態に切り替えるとともに、前記第2切替弁を前記第2許容状態から前記第2禁止状態に切り替えることを特徴とする。
【0011】
本発明の電池温度調整システムでは、圧縮機、第1熱交換器及び第2熱交換器が冷媒流路によって接続されており、第2熱交換器は、冷媒と各電池セルとの間で熱交換を行う。このため、この電池温度調整システムでは、第2熱交換器を流通する冷媒の温度が各電池セルの温度よりも低ければ、冷媒との熱交換によって各電池セルの冷却を行うことができる。また、この電池温度調整システムでは、第2熱交換器を流通する冷媒の温度が各電池セルの温度よりも高ければ、熱交換によって各電池セルの加熱、すなわち各電池セルの昇温を行うことができる。
【0012】
また、この電池温度調整システムでは、冷媒流路において、第2熱交換器の一端側と第1熱交換器とを接続する流路は第1熱交換器側接続流路とされ、第2熱交換器の他端側と圧縮機とを接続する流路は圧縮機側接続流路とされる。そして、第1熱交換器側接続流路に膨張弁及び第1切替弁が配置されており、圧縮機側接続流路に第2切替弁が配置されている。つまり、冷媒流路において、第2熱交換器は、第1熱交換器側接続流路と圧縮機側接続流路との間、ひいては、第1切替弁と第2切替弁との間に存在する。そして、制御装置は、調温要求があれば、第1切替弁を第1禁止状態に切り替えるとともに、第2切替弁を第2禁止状態に切り替える。
【0013】
このため、第2熱交換器内に存在する冷媒を含め、冷媒流路において、第1切替弁と第2切替弁との間に存在する冷媒は、第1切替弁を越えて第1熱交換器側接続流路を第1熱交換器側に向かって流通したり、第2切替弁を越えて圧縮機側接続流路を圧縮機側に向かって流通したりすることができなくなる。また、第1熱交換器側接続流路において、第1切替弁よりも第1熱交換器側に存在する冷媒が第1切替弁を越えて第2熱交換器の一方側に向かって流通することができなくなるとともに、圧縮機側接続流路において、第2切替弁よりも圧縮機側に存在する冷媒が第2切替弁を越えて第2熱交換器の他方側に向かって流通することができなくなる。つまり、冷媒流路に存在する冷媒の一部は、第1切替弁と第2切替弁との間に閉じ込められた状態となる。
【0014】
これにより、この電池温度調整システムでは、第1切替弁と第2切替弁との間に閉じ込められた状態にある冷媒(以下、閉込冷媒という。)と、各電池セルとが第2熱交換器において熱交換を行う。このため、閉込冷媒は、各電池セルとの熱交換によって各電池セルとほぼ同等の温度となる。これにより、閉込冷媒を含め冷媒の流通方向における各電池セル同士の位置に関係なく、第2熱交換器での熱交換によって各電池セル同士の温度のばらつきを好適に低減させることができる。このため、この電池温度調整システムによれば、各電池セルが性能を十分に発揮できる。
【0015】
したがって、本発明の電池温度調整システムによれば、温度に起因する各電池セルの性能低下を好適に抑制できる。
【0016】
また、本発明の電池温度調整システムは、各電池セルの温度を検出可能な複数の温度検出装置を備え得る。そして、制御装置は、各温度検出装置が検出した各温度の差が予め設定された閾値を超えれば、調温要求があると判断することが好ましい。この場合には、制御装置は、調温要求の有無を好適に判断することができる。
【0017】
本発明の電池温度調整システムは、例えば電気自動車等の車両に用いることができる他、建物等に用いることができる。ここで、電池温度調整システムが車両に用いられた場合、車両の走行時の振動等の影響によって、閉込冷媒が第1切替弁と第2熱交換器と第2切替弁との間で流動し得る。これにより、第2熱交換器において、閉込冷媒と各電池セルとの熱交換が好適に行われることから、各電池セル同士の温度をより好適に略均一化させることができる。
【0018】
ところで、仮に閉込冷媒の全てが液相であった場合には、たとえ車両の走行時の振動等の影響を受けても、閉込冷媒は第1切替弁と第2熱交換器と第2切替弁との間で流動し得えなくなる。一方、閉込冷媒の全部、又は、閉込冷媒の大部分が気相である場合、気相の冷媒は液相の冷媒に比べて熱伝導率が低下するため、各電池セルとの熱交換の効率が低下してしまう。
【0019】
そこで、本発明の電池温度調整システムにおいて、制御装置は圧縮機の作動制御を行い得る。また、第1切替弁及び第2切替弁のうち、冷媒流路における冷媒の流通方向の上流側に位置する第1切替弁又は第2切替弁は上流側切替弁とされる一方、冷媒の流通方向の下流側に位置する第1切替弁又は第2切替弁は下流側切替弁とされ得る。そして、制御装置は、調温要求があれば、下流側切替弁の切替制御と、圧縮機の作動停止と、上流側切替弁の切替制御とをこの順序で行うことが好ましい。
【0020】
この場合、閉込冷媒は、気相に比べて液相の比率が高くなる。これにより、この電池温度調整システムでは、第1切替弁と第2熱交換器と第2切替弁との間における閉込冷媒の流動性を確保しつつ、各電池セルとの熱交換の効率を高くすることができる。
【0021】
また、本発明の電池温度調整システムは、一端が第1切替弁と第2熱交換器との間で第1熱交換器側接続流路に接続するとともに他端が第2切替弁と第2熱交換器との間で圧縮機側接続流路に接続し、第2熱交換器を迂回させつつ冷媒流路で冷媒を循環させるバイパス流路と、第1熱交換器側接続流路及び圧縮機側接続流路からバイパス流路への冷媒の流通を許容する第3許容状態と、第1熱交換器側接続流路及び圧縮機側接続流路からバイパス流路への冷媒の流通を禁止する第3禁止状態とを切り替え可能な第3切替弁とを備え得る。そして、記制御装置は、調温要求があれば、第3切替弁を第3禁止状態から第3許容状態に切り替えることが好ましい。
【0022】
この場合には、閉込冷媒はバイパス流路を経由することで第2熱交換器内を好適に流動することが可能となる。このため、第2熱交換器において、閉込冷媒と各電池セルとの熱交換がより好適に行われることから、各電池セル同士の温度をより一層好適に略均一化させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電池温度調整システムによれば、温度に起因する各電池セルの性能低下を好適に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施例の電池温度調整システムにおいて、冷却モードが行われる際の模式図である。
【
図2】
図2は、実施例の電池温度調整システムにおいて、昇温モードが行われる際の模式図である。
【
図3】
図3は、実施例の電池温度調整システムに係り、調温モードを行う際における制御装置の制御を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、実施例の電池温度調整システムにおいて、調温モードが行われる際の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1に示すように、実施例の電池温度調整システムは、圧縮機1と、第1熱交換器3と、第1~11電池セル5a~5kと、第2熱交換器7と、冷媒流路9と、流路切替部11と、バイパス流路13と、膨張弁15と、第1開閉弁17と、第2開閉弁19と、第3開閉弁21と、第1温度センサ23aと、第2温度センサ23bと、制御装置25を備えている。第1開閉弁17は本発明における「第1切替弁」の一例である。また、第2開閉弁19は本発明における「第2切替弁」の一例である。そして、第3開閉弁21は本発明における「第3切替弁」の一例である。また、第1温度センサ23a及び第2温度センサ23bは、本発明における「温度検出装置」の一例である。
【0027】
この電池温度調整システムは、電気自動車100に搭載されている。つまり、実施例の電池温度調整システムは、車両用電池温度調整システムである。
【0028】
圧縮機1としては、公知のスクロール型電動圧縮機が採用されている。圧縮機1は、内部に圧縮機構(図示略)を有している。また、圧縮機1には、吸入口1aと吐出口1bとが設けられている。圧縮機1は、吸入口1aを通じて冷媒を吸入し、圧縮機構においてその冷媒を圧縮する。そして、圧縮機1は、圧縮機構で圧縮された冷媒を吐出口1bから吐出させる。なお、圧縮機1として、公知のベーン型電動圧縮機等を採用しても良い。
【0029】
第1熱交換器3は、第1接続口3aと、第2接続口3bと、第1熱交換器本体3cとで構成されている。第1熱交換器本体3cは内部を冷媒が流通可能となっている。第1接続口3aは、第1熱交換器本体3cの一方側に設けられており、第1熱交換器本体3cの内部に連通している。第2接続口3bは、第1熱交換器本体3cの他方側に設けられており、第1熱交換器本体3cを挟んで第1接続口3aの反対側に位置している。第2接続口3bは、第1接続口3aの反対側で第1熱交換器本体3cの内部に連通している。第1接続口3aは、第1熱交換器3の一方側を構成しており、第2接続口3bは、第1熱交換器3の他方側を構成している。
【0030】
第1熱交換器3は、第1熱交換器本体3cの内部を流通する冷媒と、第1熱交換器本体3cの周囲に存在する空気との間で熱交換を行うことが可能となっている。空気は、本発明における「熱交換媒体」の一例である。なお、第1熱交換器3は、冷媒と、水やロングライフクーラント等の液体との間で熱交換が可能に構成されていても良い。
【0031】
また、第1熱交換器3の近傍には、ファン27が設けられている。ファン27は、第1熱交換器3に向けて空気を供給する他、冷媒との熱交換を終えた空気を電気自動車100の車室内に供給する。なお、ファン27は、冷媒との熱交換を終えた空気について、の電気自動車100の駆動装置(図示略)等、電気自動車100における電池温度調整システム以外の機器に供給しても良く、電気自動車100の外部に排出しても良い。
【0032】
第1~11電池セル5a~5kは互いに同一の構成であり、電気自動車100の走行によって生じた回生電力等を充電可能となっている他、充電された電力を走行用モータ(図示略)等に供給可能となっている。
【0033】
また、第1~11電池セル5a~5kは、電池パック51を構成している。ここで、第1~11電池セル5a~5kのうち、第1電池セル5aは、電池パック51において最も第2熱交換器7の第3接続口7aに近い位置に配置されており、第11電池セル5kは、電池パック51において最も第2熱交換器7の第4接続口7bに近い位置に配置されている。なお、第1~11電池セル5a~5kは、複数であればその個数は適宜設計可能である。
【0034】
第2熱交換器7は、第3接続口7aと、第4接続口7bと、第2熱交換器本体7cとで構成されている。第2熱交換器本体7cは内部を冷媒が流通可能となっている。第3接続口7aは、第2熱交換器本体7cの一方側に設けられており、第2熱交換器本体7cの内部に連通している。第3接続口7aは、本発明における「第2熱交換器の一方側」を構成している。第4接続口7bは、第2熱交換器本体7cの他方側に設けられており、第2熱交換器本体7cを挟んで第3接続口7aの反対側に位置している。第4接続口7bは、第3接続口7aの反対側で第2熱交換器本体7cの内部に連通している。第4接続口7bは、本発明における「第2熱交換器の他方側」を構成している。
【0035】
第2熱交換器7は、第2熱交換器本体7cが銅板等の熱伝導材71を介して電池パック51、ひいては第1~11電池セル5a~5kに組み付けられている。これにより、第2熱交換器7は、第2熱交換器本体7cの内部を流通する冷媒と、第1~11電池セル5a~5kとの間で熱交換を行うことが可能となっている。なお、熱伝導材71を省略し、第2熱交換器本体7cを電池パック51に直接組み付けても良い。
【0036】
冷媒流路9は、配管9a~9hによって構成されている。配管9a~9hは内部を冷媒が流通可能となっている。配管9aは、一端が圧縮機1の吐出口1bに接続されており、他端が流路切替部11に接続されている。配管9bは、一端が吸入口1aに接続されており、他端が流路切替部11に接続されている。
【0037】
配管9cは、一端が第1熱交換器3の第1接続口3aに接続されており、他端が流路切替部11に接続されている。配管9dは、一端が第1開閉弁17に接続されており、他端が第1熱交換器3の第2接続口3bに接続されている。配管9eは、一端が膨張弁15に接続されており、他端が第1開閉弁17に接続されている。配管9fは、一端が第2熱交換器7の第3接続口7aに接続されており、他端が膨張弁15に接続されている。
【0038】
配管9gは、一端が第2開閉弁19に接続されており、他端が第2熱交換器7の第4接続口7bに接続されている。配管9hは、一端が流路切替部11に接続されており、他端が第2開閉弁19に接続されている。
【0039】
流路切替部11は、具体的には四方弁によって構成されている。流路切替部11は、
図1及び
図4に示す第1接続状態と、
図2に示す第2接続状態とに切り替え可能となっている。具体的には、流路切替部11は、
図1及び
図4に示す第1接続状態では、配管9aの他端と配管9cの一端とを接続させ、かつ、配管9bの他端と配管9hの一端とを接続させる。一方、流路切替部11は、
図2に示す第2接続状態では、配管9aの他端と配管9hの一端とを接続させ、かつ、配管9bの他端と配管9cの他端とを接続させる。
【0040】
冷媒流路9では、配管9d、配管9e及び配管9fによって、第1熱交換器側接続流路91が構成されている。また、配管9a、配管9b、配管9g、配管9h及び流路切替部11によって、圧縮機側接続流路92が構成されている。つまり、膨張弁15及び第1開閉弁17は、第1熱交換器側接続流路91に配置されており、第2開閉弁19は、圧縮機側接続流路92に配置されている。
【0041】
第1開閉弁17は、
図1及び
図2に示す第1許容状態と、
図4に示す第1禁止状態とに切り替え可能となっている。具体的には、第1開閉弁17は、
図1及び
図2に示す第1許容状態では、配管9dと配管9eとを連通させ、冷媒が膨張弁15及び配管9eを介して第1熱交換器3と第2熱交換器7との間で流通することを許容する。一方、第1開閉弁17は、
図4に示す第1禁止状態では、配管9dと配管9eとを非連通とし、冷媒が膨張弁15及び配管9eを介して第1熱交換器3と第2熱交換器7との間で流通することを禁止する。
【0042】
第2開閉弁19は、
図1及び
図2に示す第2許容状態と、
図4に示す第2禁止状態とに切り替え可能となっている。具体的には、第2開閉弁19は、
図1及び
図2に示す第2許容状態では、配管9gと配管9hとを連通させ、配管9gと配管9hと流路切替部11と配管9bとを介して、又は、配管9gと配管9hと流路切替部11と配管9aとを介して、冷媒が圧縮機1と第2熱交換器7との間で流通することを許容する。一方、第2開閉弁19は、
図4に示す第2禁止状態では、配管9gと配管9hとを非連通とし、冷媒が圧縮機1と第2熱交換器7との間で流通することを禁止する。
【0043】
バイパス流路13は、内部を冷媒が流通可能となっている。バイパス流路13は、一端が配管9eに接続されており、他端が配管9gに接続されている。これにより、バイパス流路13の一端は、第1開閉弁17と膨張弁15との間となる個所で配管9e、ひいては第1熱交換器側接続流路91に接続している。そして、バイパス流路13の他端は、第2開閉弁19と第2熱交換器7の第4接続口7bとの間となる個所で配管9g、ひいては圧縮機側接続流路92に接続している。なお、バイパス流路13の一端は、膨張弁15と第2熱交換器との間となる個所、つまり、配管9fに接続しても良い。
【0044】
第3開閉弁21は、バイパス流路13に設けられている。第3開閉弁21は、
図4に示す第3許容状態と、
図1及び
図2に示す第3禁止状態とに切り替え可能となっている。具体的には、第3開閉弁21は、
図4に示す第3許容状態では、バイパス流路13を開放し、冷媒が配管9e又は9gからバイパス流路13へ流通することを許容する。一方、第3開閉弁21は、
図1及び
図2に示す第3禁止状態では、バイパス流路13を閉鎖し、冷媒が配管9e又は9gからバイパス流路13へ流通することを禁止する。こうして、バイパス流路13は、第3開閉弁21が第3許容状態にあるときには、第2熱交換器7を迂回させつつ、冷媒の一部を配管9eと配管9gとの間で流通させる。
【0045】
第1温度センサ23a及び第2温度センサ23bは同一の構成である。第1温度センサ23aは第1電池セル5aに設けられており、第1電池セル5aの温度を検出可能となっている。一方、第2温度センサ23bは第11電池セル5kに設けられており、第11電池セル5kの温度を検出可能となっている。なお、第1温度センサ23a及び第2温度センサ23bは、第1電池セル5a及び第11電池セル5k以外の第2~第10電池セル5b~5jに設けられても良い。また、第1~第11電池セル5a~5kの全てに対して、温度センサを設けても良い。
【0046】
制御装置25は、圧縮機1、流路切替部11、膨張弁15、第1開閉弁17、第2開閉弁19、第3開閉弁21、第1温度センサ23a、第2温度センサ23b及びファン27と電気的に接続されている。これにより、制御装置25は、圧縮機1及びファン27の作動制御を行う他、膨張弁15の開度制御を行う。また、制御装置25は、流路切替部11における第1接続状態と第2接続状態との切替制御を行う。さらに、制御装置25は、第1開閉弁17における第1許容状態と第1禁止状態との切替制御と、第2開閉弁19における第2許容状態と第2禁止状態との切替制御と、第3開閉弁21における第3許容状態と第3禁止状態との切替制御とをそれぞれ行う。
【0047】
また、制御装置25は、第1温度センサ23aが検出した第1電池セル5aの温度と、第2温度センサ23bが検出した第11電池セル5kの温度とをそれぞれ記憶するとともに、第1電池セル5aと第11電池セル5kとの温度差を算出する。そして、制御装置25は、第1電池セル5aの温度及び第2電池セル5kの温度に基づいて、圧縮機1及びファン27の作動制御を行うとともに、膨張弁15の開度制御と、流路切替部11の切替制御とを行う。
【0048】
また、制御装置25には、第1設定温度と、第2設定温度とが設定されている。第1設定温度は、第2設定温度よりも高温とされている。さらに、制御装置25は、第1電池セル5aと第11電池セル5kとの温度差の閾値が設定されている。ここで、本実施例では、閾値としてX1°Cが設定されている。なお、第1設定温度、第2設定温度及び閾値の各値は適宜設定可能である。
【0049】
以上のように構成された電池温度調整システムでは、制御装置25が圧縮機1及びファン27の各作動制御と、流路切替部11及び第1~3開閉弁17、19、21の各切替制御とを行うことにより、冷却モードと、昇温モードと、調温モードとを実行可能である。冷却モードは、電池パック51、ひいては第1~11電池セル5a~5kを冷却する。昇温モードは、第1~11電池セル5a~5kを昇温させる。調温モードは、第1~11電池セル5a~5kの各温度のばらつきを低減させる。
【0050】
具体的には、この電池温度調整システムでは、電気自動車100の走行時又は停止時に第1温度センサ23aが第1電池セル5aの温度を検出するとともに、第2温度センサ23bが第11電池セル5kの温度を検出する。そして、制御装置25は、第1温度センサ23aが検出した第1電池セル5aの温度と、第2温度センサ23bが検出した第11電池セル5kの温度とが、それぞれ第1設定温度を超えていれば、冷却モードを開始する。
【0051】
冷却モードでは、制御装置25は、
図1に示すように、流路切替部11を第1接続状態とし、第1開閉弁17を第1許容状態とし、第2開閉弁19を第2許容状態とし、第3開閉弁21を第3禁止状態とする。そして、この状態で制御装置25は、圧縮機1を作動させるとともに、ファン27を作動させる。
【0052】
これにより、
図1の破線矢印で示すように、圧縮機1で圧縮された高圧かつ高温の冷媒が吐出口1bから吐出されて配管9aを流通する。そして、この冷媒は、流路切替部11及び配管9cを経て、第1熱交換器3の第1接続口3aから第1熱交換器本体3c内を流通する。これにより、第1熱交換器本体3c内を流通する冷媒は、第1熱交換器本体3cの周囲の空気と熱交換を行うことで冷却されるとともに液化する。ここで、第1熱交換器本体3cの周囲の空気がファン27によって電気自動車100の車室に供給されれば、車室内の暖房が行われる。
【0053】
そして、第1熱交換器本体3cの周囲の空気との熱交換を終えた冷媒は、第2接続口3bから流出して配管9d及び配管9eを膨張弁15に向かって流通する。また、制御装置25は、膨張弁15の開度を小さくする。これにより、膨張弁15に至った冷媒は、膨張弁15によって減圧され、配管9fから第2熱交換器7の第3接続口7aを経て、第2熱交換器本体7c内を流通する。つまり、第2熱交換器本体7c内を流通する冷媒は、第1~11電池セル5a~5よりも低温となっている。こうして、第2熱交換器本体7c内を流通する低圧かつ低温の冷媒と、第1~11電池セル5a~5kとが熱交換を行い、第1~11電池セル5a~5kの冷却が行われる。
【0054】
第1~11電池セル5a~5kとの熱交換を終えた冷媒は、第4接続口7bから流出して配管9g及び配管9hを流通し、流路切替部11から配管9bを流通し、吸入口1aから圧縮機1内に吸入される。こうして、冷媒は圧縮機によって再び圧縮されて吐出口1bから配管9a内に吐出される。
【0055】
このように、冷却モードでは、冷媒が圧縮機1、流路切替部11、第1熱交換器3、膨張弁15及び第2熱交換器7の順序で冷媒流路9を循環する。つまり、冷却モードでは、第1熱交換器3、より具体的には、第1熱交換器本体3cが冷媒に対する凝縮器として機能する。
【0056】
また、冷却モードでは、冷媒流路9における冷媒の流通方向において、第1開閉弁17が第2開閉弁19よりも上流側に位置する。このため、冷却モードでは、第1開閉弁17が本発明における「上流側切替弁」となり、第2開閉弁19が本発明における「下流側切替弁」となる。そして、第2熱交換器7では、冷媒流路9における冷媒の流通方向において、第3接続口7aが第4接続口7bよりも上流側となる。換言すれば、第3接続口7aは、第2熱交換器本体7cにおける冷媒の入口側となり、第4接続口7bは、第2熱交換器本体7cにおける冷媒の出口側となる。このため、第1~11電池セル5a~5kのうち、第1電池セル5aは、第2熱交換器本体7cにおける冷媒の流通方向の最も上流側に位置し、第11電池セル5kは、第2熱交換器本体7cにおける冷媒の流通方向の最も下流側に位置する。なお、冷却モードでは、制御装置25が第3開閉弁21を第3禁止状態としている。このため、冷却モードでは、冷媒流路9を流通する冷媒は、バイパス流路13内を流通することはなく、冷媒流路9を流通する冷媒が第2熱交換器7を迂回することはない。
【0057】
また、冷却モードが行われている間においても、第1温度センサ23aは引き続き第1電池セル5aの温度を検出し、第2温度センサ23bは引き続き第11電池セル5kの温度を検出する。そして、第1電池セル5aの温度及び第11電池セル5kの温度がそれぞれ第1設定温度よりも低くなれば、制御装置25は、圧縮機1及びファン27の作動を停止させて、冷却モードを終了させる。
【0058】
一方、制御装置25は、第1温度センサ23aが検出した第1電池セル5aの温度と、第2温度センサ23bが検出した第11電池セル5kの温度とが、それぞれ第2設定温度よりも低ければ、昇温モードを実行する。
【0059】
昇温モードでは、制御装置25は、
図2に示すように、流路切替部11を第2接続状態とし、第1開閉弁17を第1許容状態とし、第2開閉弁19を第2許容状態とし、第3開閉弁21を第3禁止状態とする。そして、この状態で制御装置25は、圧縮機1を作動させるとともに、ファン27を作動させる。
【0060】
これにより、
図2の破線矢印で示すように、圧縮機1で圧縮されて高圧かつ高温となった冷媒は、吐出口1bから吐出されて配管9aを流通し、流路切替部11、配管9h及び配管9gを経て第4接続口7bから第2熱交換器本体7c内を流通する。つまり、第2熱交換器本体7c内を流通する冷媒は、第1~11電池セル5a~5kよりも高温となっている。これにより、第2熱交換器本体7c内を流通する高温の冷媒と、第1~11電池セル5a~5kとが熱交換を行うことで、第1~11電池セル5a~5kの昇温が行われる。また、第1~11電池セル5a~5kとの熱交換により、第2熱交換器本体7c内を流通する冷媒は温度が低下するため、液相となる。
【0061】
第1~11電池セル5a~5kとの熱交換を終えた冷媒は、第3接続口7aから流出して配管9fから膨張弁15を経ることで減圧され、さらに配管9e及び配管9dを経て、第2接続口3bから第1熱交換器本体3c内を流通する。この際、第1熱交換器本体3c内を流通する冷媒と、第1熱交換器本体3cの周囲の空気とが熱交換を行うことで、第1熱交換器本体3cの周囲の空気が冷却される。ここで、熱交換によって冷却された空気がファン27によって電気自動車100の車室に供給されれば、車室内の冷房が行われる。
【0062】
そして、第1熱交換器本体3cの周囲の空気との熱交換を終えた冷媒は、第1接続口3aから配管9cに流出し、流路切替部11及び配管9bを経て、吸入口1aから圧縮機1内に吸入される。
【0063】
このように、昇温モードでは、冷媒が圧縮機1、流路切替部11、第2熱交換器7、膨張弁15及び第1熱交換器3の順序で冷媒流路9を循環する。つまり、昇温モードでは、冷却モードとは反対方向で冷媒が冷媒流路9を循環する。このため、第1熱交換器3、より具体的には、第1熱交換器本体3cは冷媒に対する蒸発器として機能する。
【0064】
また、昇温モードでは、冷媒流路9における冷媒の流通方向において、第2開閉弁19が第1開閉弁17よりも上流側に位置する。このため、昇温モードでは、第2開閉弁19が本発明における「上流側切替弁」となり、第1開閉弁17が本発明における「下流側切替弁」となる。そして、第2熱交換器7では、冷媒流路9における冷媒の流通方向において、第4接続口7bが第3接続口7aよりも上流側となる。つまり、第4接続口7bが第2熱交換器本体7cにおける冷媒の入口側となり、第3接続口7aが第2熱交換器本体7cにおける冷媒の出口側となる。このため、第1~11電池セル5a~5kのうち、第11電池セル5kは、第2熱交換器本体7cにおける冷媒の流通方向の最も上流側に位置し、第1電池セル5aは、第2熱交換器本体7cにおける冷媒の流通方向の最も下流側に位置する。なお、冷却モードと同様、昇温モードにおいても、冷媒流路9を流通する冷媒はバイパス流路13内を流通することはない。
【0065】
また、昇温モードが行われている間においても、第1温度センサ23aは引き続き第1電池セル5aの温度を検出し、第2温度センサ23bは引き続き第11電池セル5kの温度を検出する。そして、第1電池セル5aの温度及び第11電池セル5kの温度がそれぞれ第2設定温度よりも高くなれば、制御装置25は、圧縮機1及びファン27の作動を停止させて、昇温モードを終了させる。
【0066】
そして、制御装置25は、調温モードを開始するに当たっては、
図3に示す制御フローに沿って、圧縮機1の作動制御や第1~3開閉弁17、19、21の各切替制御等を行う。
【0067】
具体的には、上述のように、電気自動車100の走行時又は停止時において、第1温度センサ23aが第1電池セル5aの温度を検出し、第2温度センサ23bが第11電池セル5kの温度を検出する(ステップS101)。そして、制御装置25は、第1電池セル5aと第11電池セル5kとの温度差を算出する(ステップS102)。そして、制御装置25は、算出した温度差が閾値であるX1°Cを超えているか否かを判断する(ステップS103)。
【0068】
ここで、第1電池セル5aと第11電池セル5kとの温度差がX1°Cを超えていなければ(ステップS103:NO)、制御装置25は調温モードを行わない。なお、調温モードを行わない場合であっても、上述のように、第1電池セル5a及び第11電池セル5kの各温度が第1設定温度よりも高ければ、制御装置25は冷却モードを行う。また、第1電池セル5a及び第11電池セル5kの各温度が第2設定温度よりも低ければ、制御装置25は昇温モードを行う。
【0069】
一方、第1電池セル5aと第11電池セル5kとの温度差がX1°Cを超えていれば(ステップS103:YES)、制御装置25は、第1~11電池セル5a~5k同士の温度のばらつきを低減させる調温要求があると判断する。これにより、制御装置25は調温モードに先立って冷却モードを開始する(ステップS104)。これにより、第1開閉弁17は第1許容状態となり、第2開閉弁19は第2許容状態となり、第3開閉弁21は第3禁止状態となる。こうして、冷媒流路9を循環する冷媒は、第1熱交換器3及び膨張弁15を経て、第2熱交換器7の第2熱交換器本体7c内を流通し始める。(
図1参照)。
【0070】
そして、制御装置25は、第2熱交換器本体7c内に液相及び気相の両方の冷媒が存在する状態で冷却モードを終了して調温モードを開始する(
図3のステップS105)。なお、既に冷却モードが行われている間に第1電池セル5aと第11電池セル5kとの温度差がX1°Cを超えた場合には、制御装置25は、ステップS104を省略してステップS105の処理を行う。
【0071】
ここで、冷却モードの開始後は、第2熱交換器本体7c内に液相及び気相の両方の冷媒が存在する状態となる。このため、制御装置25は、ステップS104において冷却モードを開始した後、さらに、ある程度の時間が経過した後に冷却モードを終了して調温モードを開始する。
【0072】
そして、制御装置25は、調温モードを開始することにより、まず初めに、
図4に示すように、第2開閉弁19を第2許容状態から第2禁止状態に切り替える(
図3のステップS106)。次に、制御装置25は、圧縮機1の作動を停止させる(ステップS107)。次に、制御装置25は、
図4に示すように、第1開閉弁17を第1許容状態から第1禁止状態に切り替える(
図3のステップS108)。ここで、ステップS104において冷却モードが開始されているため、第1開閉弁17は本発明における「上流側切替弁」となっており、第2開閉弁19は本発明における「下流側切替弁」となっている。このように、制御装置25は、調温モードを開始することにより、下流側切替弁(第2開閉弁19)の切替制御と、圧縮機1の作動制御と、上流側切替弁(第1開閉弁17)の切替制御とをこの順序で行う。なお、制御装置25は、ステップS107において圧縮機1の作動を停止させる際、ファン27の作動も停止させる。
【0073】
このように、第2開閉弁19が第2禁止状態となり、第1開閉弁17が第1禁止状態となることにより、冷媒流路9では、第1熱交換器側接続流路91において配管9gと配管9hとが非連通となるとともに、圧縮機側接続流路92において配管9dと配管9eとが非連通となる。このため、冷媒流路9では、冷媒は、圧縮機1と第2熱交換器7との間で流通することができなくなるとともに、第1熱交換器3と第2熱交換器7との間で流通することができなくなる。
【0074】
この結果、冷媒流路9に存在する冷媒のうち、第1開閉弁17から第2熱交換器7及びバイパス流路13を挟んで第2開閉弁19までの間に存在する冷媒、すなわち、第2熱交換器7及びバイパス流路13を含め、配管9eから配管9gまでの間に存在する冷媒は、第1開閉弁17と第2開閉弁19との間に閉じ込められた状態となり、冷媒流路9に存在する他の冷媒から区画される。つまり、冷媒流路9に存在する冷媒のうち、第1開閉弁17から第2熱交換器7及びバイパス流路13を挟んで第2開閉弁19までの間に存在する冷媒は閉込冷媒となる。
【0075】
これより、調温モードでは、冷媒流路9における冷媒のうち、閉込冷媒が第2熱交換器本体7c内において第1~11電池セル5a~5kと熱交換を行う。これにより、第1~11電池セル5a~5kの各温度のばらつきが低減される。また、
図4に示すように、制御装置25は、第1開閉弁17を第1許容状態から第1禁止状態に切り替えた後、第3開閉弁21を第3禁止状態から第3許容状態に切り替える(
図3のステップS109)。これにより、閉込冷媒の一部は、配管9e又は配管9gからバイパス流路13へ流通することが可能となる。
【0076】
また、第1温度センサ23a及び第2温度センサ23bは、調温モードが行われている間においても、第1温度センサ23aは引き続き第1電池セル5aの温度を検出し、第2温度センサ23bは引き続き第11電池セル5kの温度を検出する。これにより、制御装置25は、調温モードが行われている間は、第1電池セル5aと第11電池セル5kとの温度差を引き続き算出する。これにより、第1電池セル5aと第11電池セル5kとの温度差がX1°Cを超えている間は、調温モードが継続され、閉込冷媒と第1~11電池セル5a~5kとの熱交換が継続される(ステップS110:NO)。
【0077】
一方、第1電池セル5aと第11電池セル5kとの温度差がX1°C以下となれば(ステップS110:YES)、制御装置25は、調温モードを終了する。なお、制御装置25は、調温モードを終了しても、第1開閉弁17を引き続き第1禁止状態とし、第2開閉弁19を引き続き第2禁止状態とし、第3開閉弁21を引き続き第3許容状態としても良い。また、制御装置25は、調温モードを終了することにより、第1開閉弁17を第1許容状態とし、第2開閉弁19を第2許容状態とし、第3開閉弁21を第3禁止状態とすることにより冷却モード又は昇温モードを行うための準備を行っても良い。
【0078】
ここで、本実施例では、調温モードを開始するに当たって、制御装置25がステップS104において冷却モードを開始しているが、これに限らず、制御装置25は、ステップS104において昇温モードを開始しても良い。この場合においても、昇温モードの開始後は、第2熱交換器7内に液相及び気相の両方の冷媒が存在する状態となるため、制御装置25は、昇温モードを開始した後、さらに、ある程度の時間が経過した後に昇温モードを終了して調温モードを開始する。
【0079】
また、昇温モードでは、第1開閉弁17が本発明における「下流側切替弁」となり、第2開閉弁19が本発明における「上流側切替弁」となるため、制御装置25は、調温モードを開始することにより、第1開閉弁17の切替制御と、圧縮機1の作動制御と、第2開閉弁19の切替制御とをこの順序で行う。これにより、ステップS104において冷却モードを開始した場合と同様、調温モードにおいて、第1~11電池セル5a~5kの各温度のばらつきを低減させることができる。
【0080】
このように、この電池温度調整システムでは、第2熱交換器本体7cにおいて、冷媒流路9を流通する冷媒と、第1~11電池セル5a~5kとが熱交換を行うことにより、第1~11電池セル5a~5kの冷却を行うことができる他、第1~11電池セル5a~5kの昇温も行うことができる。特に、この電池温度調整システムでは、流路切替装部11及び第1~3開閉弁17、19、21の各切替制御を行うことにより、冷媒流路9における冷媒の流通方向を容易に切り替えることができるため、構成の複雑化を抑制しつつ、第1~11電池セル5a~5kの冷却及び昇温を行うことができる。
【0081】
また、この電池温度調整システムでは、調温モードを行うことにより、第1開閉弁17が第1禁止状態となるとともに、第2開閉弁19が第2禁止状態となる。このため、閉込冷媒は、冷媒流路9における他の冷媒から区画される。そして、調温モードでは、第2熱交換器本体7cにおいて、閉込冷媒と、第1~11電池セル5a~5kとが熱交換を行う。
【0082】
ここで、調温モードでは、閉込冷媒は、第1開閉弁17を越えて配管9dを第1熱交換器3に向かって流通したり、第2開閉弁19を越えて配管9hを圧縮機1に向かって流通したりすることがない。また、配管9d内の冷媒が第1開閉弁17を越えて配管9e側、つまり、第2熱交換器7の第3接続口7a側に流通することで新たに閉込冷媒となることもない。さらに、配管9h内の冷媒が第2開閉弁19を越えて配管9g側、つまり、第2熱交換器7の第4接続口7b側に流通することで新たに閉込冷媒となることもない。
【0083】
このため、閉込冷媒は、第1~11電池セル5a~5kとの熱交換により、第1~11電池セル5a~5kとほぼ同等の温度となり易い。これにより、閉込冷媒を含め冷媒の流通方向における第1~11電池セル5a~5k同士の位置に関係なく、第2熱交換器本体7cでの熱交換によって第1~11電池セル5a~5k同士の温度のばらつきを好適に低減させることが可能となっている。
【0084】
また、この電池温度調整システムは電気自動車100に搭載されているため、電気自動車100の走行時の振動等の影響によって、閉込冷媒が第1開閉弁17と第2熱交換器7と第2開閉弁19との間で流動する。ここで、
図4の破線矢印で示すように、閉込冷媒が流動する際の流通方向は必ずしも一方向に限られることはなく、第3接続口7a側から第2熱交換器本体7c内に流入する場合もあれば、第4接続口7b側から第2熱交換器本体7c内に流入する場合もあり得る。
【0085】
さらに、調温モードでは、第3開閉弁21が第3許容状態となることから、閉込冷媒がバイパス流路13を流通することが可能となる。このため、第1開閉弁17と第2熱交換器7と第2開閉弁19との間における閉込冷媒の流動がより促進されることとなる。これらの点においても、第1~11電池セル5a~5k同士の温度のばらつきを好適に低減させることができるため、この電池温度調整システムによれば、第1~11電池セル5a~5k、ひいては電池パック51が性能を十分に発揮できる。
【0086】
したがって、実施例の電池温度調整システムによれば、温度に起因する第1~11電池セル5a~5kの性能低下を好適に抑制できる。
【0087】
また、この電池温度調整システムでは、例えば、冷却モードを終了して調温モードを開始する場合、制御装置25は、第2開閉弁19を第2禁止状態に切り替えた後に圧縮機1の作動を停止させ、その後に、第1開閉弁17を第1禁止状態に切り替える。ここで、調温モードに先立って行われている冷却モードでは、冷媒流路9における冷媒の流通方向で、第2開閉弁19が第1開閉弁17よりも下流側、すなわち、第2熱交換器7における出口側となっている。このため、第2熱交換器7における出口側から先に冷媒の流通を禁止することにより、閉込冷媒は全てが液相とはなり難くなるとともに、また、閉込冷媒は気相に比べて液相の割合が多い状態で気相とが混合した状態となり易い。
【0088】
また、制御装置25は、冷却モードや昇温モードを開始した後、さらに、ある程度の時間が経過した後に上述の第1開閉弁17及び第2開閉弁19の各切替制御と、圧縮機1の作動制御とを行う。このため、閉込冷媒では、液相の割合が十分に多い状態となっている。
【0089】
これらにより、閉込冷媒と第1~11電池セル5a~5kとの熱交換の効率を高くしつつ、閉込冷媒の流動性を高く確保することが可能となっている。この点においても、この電池温度調整システムでは、閉込冷媒との熱交換によって、第1~11電池セル5a~5k同士の温度のばらつきを好適に低減させることが可能となっている。
【0090】
また、制御装置25は、第1電池セル5aと第11電池セル5kとの温度差が閾値であるX1°Cを超えていれば、調温モードを開始し、第1電池セル5aと第11電池セル5kとの温度差がX1°C以下となれば、調温モードを終了する。これにより、制御装置25は、調温要求の有無を好適に判断することが可能となっている。
【0091】
また、第1~11電池セル5a~5kのうち、第1電池セル5aに第1温度センサ23aが設けられており、第11電池セル5kに第2温度センサ23bが設けられている。ここで、第1~11電池セル5a~5kのうち、第1電池セル5aは、第2熱交換器7の第3接続口7aに最も近い位置に配置されており、第11電池セル5kは、第2熱交換器7の第4接続口7bに最も近い位置に配置されている。つまり、第1電池セル5aと第11電池セル5kとは、第2熱交換器本体7cにおける冷媒の流通方向、ひいては第2熱交換器7における冷媒の流通方向で最も離隔している。このため、この電池温度調整システムでは、第1~11電池セル5a~5kの全てに温度センサを設けて第1~11電池セル5a~5k同士の温度差を検出する構成に比べて、温度差の精度を高く確保しつつ、低コスト化が可能となっている。
【0092】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0093】
例えば、実施例の電池温度調整システムでは、本発明における「第1切替弁」、「第2切替弁」及び「第3切替弁」として、それぞれ第1開閉弁17、第2開閉弁19及び第3開閉弁21を採用している。しかし、これに限らず、「第1切替弁」、「第2切替弁」及び「第3切替弁」として、三方弁等の流路切替装置を採用しても良い。
【0094】
また、バイパス流路13及び第3開閉弁21を省略して、電池温度調整システムを構成しても良い。
【0095】
また、実施例の電池温度調整システムでは、流路切替部11として四方弁を採用している。しかし、これに限らず、三方弁又は開閉弁を複数組み合わせたり、三方弁と複数の開閉弁とを組み合わせたりすることで流路切替部11を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に利用可能である他、建物等に利用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…圧縮機
3…第1熱交換器
5a~5k…第1~11電池セル(電池セル)
7…第2熱交換器
7a…第3接続口(第2熱交換器の一端側)
7b…第4接続口(第2熱交換器の他端側)
9…冷媒流路
13…バイパス流路
15…膨張弁
17…第1開閉弁(第1切替弁、上流側切替弁、下流側切替弁)
19…第2開閉弁(第2切替弁、上流側切替弁、下流側切替弁)
21…第3開閉弁(第3切替弁)
23a…第1温度センサ(温度検出装置)
23b…第2温度センサ(温度検出装置)
25…制御装置
91…第1熱交換器側接続流路
92…圧縮機側接続流路